(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281751
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】位置制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20180208BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
G05D3/12 306Z
G05D3/12 305V
G05B13/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-44238(P2015-44238)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-164697(P2016-164697A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】林 崇
【審査官】
影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−110717(JP,A)
【文献】
特開平4−112690(JP,A)
【文献】
特開2001−211509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/12
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにトルク電流を通流して制御対象を加減速することにより前記制御対象の位置実際値を位置指令値に一致させる位置制御システムであって、
前記位置指令値と前記位置実際値との偏差に位置制御ゲインを乗じた値である速度指令値と速度実際値との偏差が入力されて第1トルク指令値を出力するPI制御手段と、前記制御対象に作用する外乱トルクを推定する外乱推定部と、を有し、
前記第1トルク指令値と前記外乱推定部により推定した外乱トルクとを少なくとも用いて第2トルク指令値を生成し、前記第2トルク指令値に従って前記モータにトルク電流を通流する位置制御システムにおいて、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクに乗じる外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインと前記PI制御手段の速度制御積分ゲインとに基づいて演算する外乱補償ゲイン演算部を備え、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクと前記外乱補償ゲインとの乗算結果を前記第2トルク指令値の生成に用いることを特徴とする位置制御システム。
【請求項2】
モータにトルク電流を通流して制御対象を加減速することにより前記制御対象の位置実際値を位置指令値に一致させる位置制御システムであって、
前記位置指令値と前記位置実際値との偏差に位置制御ゲインを乗じた値である速度指令値と速度実際値との偏差が入力されて第1トルク指令値を出力するPI制御手段と、前記制御対象に作用する外乱トルクを推定する外乱推定部と、を有し、
前記第1トルク指令値と前記外乱推定部により推定した外乱トルクとを少なくとも用いて第2トルク指令値を生成し、前記第2トルク指令値に従って前記モータにトルク電流を通流する位置制御システムにおいて、
前記速度指令値の時間微分に比例する値を生成して前記第1トルク指令値または前記第2トルク指令値に加算する手段と、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクに乗じる外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインと前記PI制御手段の速度制御積分ゲインとに基づいて演算する外乱補償ゲイン演算部と、を備え、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクと前記外乱補償ゲインとの乗算結果を前記第2トルク指令値の生成に用いることを特徴とする位置制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載した位置制御システムにおいて、
前記外乱補償ゲイン演算部は、前記外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインとしてのωpp、前記速度制御積分ゲインとしてのωvi、及び定数Kを用いて、G=1−Kωppωvi/(ωpp+ωvi)(ここで、Gは外乱補償ゲイン)により演算することを特徴とした位置制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した位置制御システムにおいて、
前記外乱補償ゲイン演算部は、前記位置制御ゲインまたは前記速度制御積分ゲインが更新される都度、前記外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を更新することを特徴とした位置制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにトルク電流を通流して制御対象を加減速することにより制御対象を位置決めする位置制御システムに関し、特に、外乱トルクを推定してこれを補償する機能を備えた位置制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、外乱トルクの推定・補償機能を備えた従来の位置制御システムのブロック図である。
図5において、2は位置制御部(ω
ppは位置制御ゲイン)、4は比例制御部(Jは制御対象の慣性、ω
vpは速度制御比例ゲイン)、6は積分制御部(ω
viは速度制御積分ゲイン、sはラプラス演算子)、8はモータ、10は制御対象、11は積分手段、12は外乱推定部、1,3,5,7,9は加減算手段である。また、x
*は制御対象10に対する位置指令値、xは位置実際値、v
*は速度指令値、vは速度実際値を示す。
【0003】
図5の位置制御システムでは、積分手段11、加減算手段1、位置制御部2等を含む位置制御ループの内側に、加減算手段3,5、比例制御部4、積分制御部6等を含む速度制御ループを構成し、速度制御ループの出力である第1トルク指令T
1に後述の外乱トルクの推定値を加算して得た第2トルク指令値T
2に従ってモータ8にトルク電流を通流することにより、制御対象10を加減速してその位置を制御している。ここで、速度制御ループは、上述の比例制御部4、積分制御部6及び加減算手段5からなるPI制御手段(PI調節器)によって構成されている。
【0004】
このような位置制御システムに外乱トルクが加わった場合には、外乱推定部12が、第2トルク指令値T
2と帰還速度vまたは位置情報とに基づいて外乱トルクを推定し、推定した外乱トルクを加減算手段7により第1トルク指令値T
1に加算して第2トルク指令値T
2を得ることにより、外乱トルクの影響を低減させている。
【0005】
また、
図6は、非特許文献1の
図5に記載されている外乱トルク(外乱トルクを含む負荷トルク)推定・補償システムのブロック図である。
図6において、51は電流センサ、52は速度センサ、61はサーボモータモデル、62は一次遅れ要素、i
arefはトルク電流指令値、K
tはモータのトルク定数、T
Mはモータトルク、T
Lは負荷トルク、Jはモータ及び負荷を含む全ての慣性、sはラプラス演算子、J
nは慣性Jのノミナル値、τは推定時定数、ωはモータ速度である。
【0006】
図6の従来技術では、電流センサ51による検出値にトルク定数K
tを乗じて得たトルクと、速度センサ52による検出速度ωに基づく時定数τの一次遅れ演算値との差分から負荷トルク(外乱トルク)を推定し、この推定値をK
tで除算した値をフィードフォワードパスとしてトルク電流指令値i
arefに加算することにより、速度偏差が大きくなる前に外乱トルクを一括して打ち消すようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大西公平,「メカトロニクスにおける新しいサーボ技術」,電気学会論文誌D,107,No.1,P.83〜86,昭和62年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示したように、PI制御手段により速度制御を行い、かつ外乱補償を行う場合、位置指令値x
*を固定するゼロ速度付近において、モータ8や制御対象10に振動が発生することがある。この場合、推定した外乱トルクの補償ゲイン(外乱補償ゲイン)を1より小さくすることで振動を抑制することも可能であるが、外乱補償ゲインを小さくし過ぎると外乱補償が不十分となり、速度制御比例ゲインω
vpや速度制御積分ゲインω
vi等に最適値を与えるための煩雑な調整が必要となっていた。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、PI制御手段により速度制御を行い、かつ外乱補償を行うようにした位置制御システムにおいて、外乱補償ゲインを最適値に自動調整してトルク指令値を生成することにより、モータのゼロ速度付近における振動の発生を抑制しつつシステム全体の調整作業を容易化した位置制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、モータにトルク電流を通流して制御対象を加減速することにより前記制御対象の位置実際値を位置指令値に一致させる位置制御システムであって、
前記位置指令値と前記位置実際値との偏差に位置制御ゲインを乗じた値である速度指令値と速度実際値との偏差が入力されて第1トルク指令値を出力するPI制御手段と、前記制御対象に作用する外乱トルクを推定する外乱推定部と、を有し、
前記第1トルク指令値と前記外乱推定部により推定した外乱トルクとを少なくとも用いて第2トルク指令値を生成し、前記第2トルク指令値に従って前記モータにトルク電流を通流する位置制御システムにおいて、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクに乗じる外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインと前記PI制御手段の速度制御積分ゲインとに基づいて演算する外乱補償ゲイン演算部を備え、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクと前記外乱補償ゲインとの乗算結果を前記第2トルク指令値の生成に用いるものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、モータにトルク電流を通流して制御対象を加減速することにより前記制御対象の位置実際値を位置指令値に一致させる位置制御システムであって、
前記位置指令値と前記位置実際値との偏差に位置制御ゲインを乗じた値である速度指令値と速度実際値との偏差が入力されて第1トルク指令値を出力するPI制御手段と、前記制御対象に作用する外乱トルクを推定する外乱推定部と、を有し、
前記第1トルク指令値と前記外乱推定部により推定した外乱トルクとを少なくとも用いて第2トルク指令値を生成し、前記第2トルク指令値に従って前記モータにトルク電流を通流する位置制御システムにおいて、
前記速度指令値の時間微分に比例する値を生成して前記第1トルク指令値または前記第2トルク指令値に加算する手段と、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクに乗じる外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインと前記PI制御手段の速度制御積分ゲインとに基づいて演算する外乱補償ゲイン演算部と、を備え、
前記外乱推定部により推定した外乱トルクと前記外乱補償ゲインとの乗算結果を前記第2トルク指令値の生成に用いるものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した位置制御システムにおいて、前記外乱補償ゲイン演算部は、前記外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を、前記位置制御ゲインとしてのω
pp、前記速度制御積分ゲインとしてのω
vi、及び定数Kを用いて、G=1−Kω
ppω
vi/(ω
pp+ω
vi)(ここで、Gは外乱補償ゲイン)により演算するものである。
【0013】
なお、請求項4に記載するように、前記外乱補償ゲイン演算部は、前記位置制御ゲインまたは前記速度制御積分ゲインが更新される都度、前記外乱補償ゲインまたは前記外乱補償ゲインの設定上限値を更新することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PI制御手段により速度制御を行いながら外乱補償を行う位置制御システムにおいて、位置制御ゲイン及び速度制御積分ゲインという基本制御パラメータに基づいて外乱補償ゲインを最適値に自動調整することにより、モータのゼロ速度付近での振動発生を抑制しつつ各種パラメータ等の調整に要する時間や工数や削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態における外乱補償ゲインの決定方法を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【
図5】外乱トルクの推定・補償機能を備えた従来の位置制御システムのブロック図である。
【
図6】非特許文献1に記載された外乱トルク推定・補償システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1は本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
図1において、
図5と同様に、2は位置制御部(ω
ppは位置制御ゲイン[1/s]、sはラプラス演算子)、4は比例制御部(Jは制御対象の慣性[kgm
2]、ω
vpは速度制御比例ゲイン[1/s])、6は積分制御部(ω
viは速度制御積分ゲイン[1/s])、8はモータ、10は制御対象、11は積分手段、12は外乱推定部、1,3,5,7,9は加減算手段である。また、x
*は制御対象10に対する位置指令値、xは位置実際値、v
*は速度指令値、vは速度実際値を示す。
【0017】
この第1実施形態では、
図5と異なり、位置制御ゲインω
pp及び速度制御積分ゲインω
viを用いて、外乱補償ゲイン演算部21が外乱補償ゲインGを演算し、この外乱補償ゲインGをゲイン設定部22に設定する。なお、外乱補償ゲインGは、後述するように所定の範囲内で上限値が設定されるものとする。
そして、速度制御ループの出力である第1トルク指令値T
1と、推定した外乱トルクに外乱補償ゲインGを乗じて得た外乱補償トルクとを加減算手段7にて加算することにより、最終的なトルク指令値である第2トルク指令値T
2を得るように構成されている。
【0018】
いま、
図4に示すように、モータの角速度ωが正または負の所定値を超えると飽和して一定値となるような摩擦トルクが存在する場合について考察する。この摩擦トルクは、モータ8のゼロ速度近傍における傾きは∞に近いものであるが、ゼロ速度近傍の挙動を把握するにあたり、傾きをCとして定式化する。このような摩擦トルクが存在する場合、
図5に示したように外乱推定部12のみによって外乱補償を行うとモータ8や制御対象10が振動するおそれがあるため、本実施形態では、以下のようにして外乱補償を行うようにした。
【0019】
まず、外乱トルクの推定値は時定数(1/ω
0)の一次遅れを介して得られるとする。また、速度制御ループの出力に外乱補償トルクを加算したトルク指令値に従ってモータ8にトルク電流が通流され、制御対象10にトルクが印加される過程において、時定数(1/ω
t)の一次遅れを介するものとする。
【0020】
この場合のブロック図は、
図2に示す通りとなる。
なお、
図2において、13はモータに相当する一次遅れ要素、14は摩擦トルクである。また、外乱推定部12における12aは速度vが入力される微分要素、12bは加減算手段、12cは一次遅れ要素である。
【0021】
いま、位置指令値x
*がゼロに固定されている場合(すなわち、位置指令値が停止中である場合)において、摩擦トルク14が速度vに比例する範囲では、トルク指令値Tは数式1のように与えられる。
【数1】
【0022】
トルク指令値Tから時定数(1/ω
t)の一次遅れ要素13を介して制御対象10にトルクが印加されるとき、ゼロ速度付近では、上記のトルクに(−Cv)の摩擦トルク14が加わるため、速度vは数式2に従って変化する。
【数2】
【0023】
数式1、数式2からTを消去して整理すると、数式3が得られる。
[数3]
[Js
5+{C+J(ω
t+ω
0)}s
4+{ω
t(C+Jω
pp)
+ω
0(C+Jω
t)}s
3+{ω
tω
0(C+Jω
pp)
+Jω
tω
vp(ω
vi+ω
pp)−GCω
tω
0}s
2
+Jω
tω
vp{ω
0(ω
vi+ω
pp)+ω
viω
pp}s
+Jω
tω
0ω
vpω
viω
pp]v=0
【0024】
ここで、
図4に示した摩擦トルクの飽和前の傾きCが非常に大きいとし、更に、ω
0と比較してω
vi,ω
ppに設定される値は十分小さいことを考慮した場合、数式3は、各s
nの項の主要項のみを残して数式4のように簡略化される。
[数4]
{Js
5+Cs
4+C(ω
t+ω
0)s
3+C(1−G)ω
tω
0s
2
+Jω
tω
vpω
0(ω
vi+ω
pp)s+Jω
tω
0ω
vpω
viω
pp}v=0
【0025】
ラウスの安定判別法に従って数式4の安定条件を求めると、数式5が得られる。
【数5】
【0026】
図1の外乱補償ゲイン演算部21は、数式5を満たす範囲で最大の外乱補償ゲインGを演算してゲイン設定部22に設定することにより、振動発生などの不安定化を招くことなく、外乱トルクが加わった場合の位置制御系への影響を最小化することができる。
【0027】
なお、数式5において、ω
t及びω
0については、トルク電流アンプやエンコーダ等の位置制御システムの構成要素が定まった時点で最適値が予想されるので、更新を要する頻度は低い。
一方、ω
pp及びω
viについては、制御対象を含む完成後の位置制御システムに応じて最適な制御を実現できるように調整(更新)する必要性が高い。このため、数式5の右辺における(ω
t+ω
0)/ω
tω
0に相当する定数Kを予め用意しておき、定期的に、あるいは、ω
ppまたはω
viが更新される都度、数式6に従って外乱補償ゲインGが自動的に更新されるようにシステムを構成しておくことにより、位置制御システム全体の調整工程を少なくし、調整に要する時間を短縮化することができる。
【数6】
【0028】
以上のように、外乱補償ゲイン演算部21は、位置制御ゲインω
pp及び速度制御積分ゲインω
viというシステムの基本制御パラメータと定数Kとを用いて外乱補償ゲインGを演算すると共に、上記基本制御パラメータの更新に応じて外乱補償ゲインGを更新し、この外乱補償ゲインGをゲイン設定部22に設定する。そして、外乱推定部12が推定した外乱トルクに外乱補償ゲインGを乗じて外乱補償トルクを求め、この外乱補償トルクを加減算手段7により第1トルク指令値T
1に加算して第2トルク指令値T
2を生成する。この第2トルク指令値T
2に従ってモータ8を駆動することにより、外乱トルクの影響を受けずに制御対象10の位置を位置指令値x
*通りに制御することができる。
【0029】
なお、特殊な場合には、外乱補償ゲインGを、数式6によって得られる値よりも低い値に設定したい場合もあり得る。
そこで、数式6に従って外乱補償ゲインG自体を更新する代わりに、数式6に従って外乱補償ゲインGの設定上限値を更新し、その時の外乱補償ゲインGが新しい設定上限値を上回っていた場合に限って、外乱補償ゲインG自体を更新するようにしても良い。
【0030】
上述した第1実施形態は、フィードフォワードループを有しない基本的な位置制御システムに関するものであるが、実際の位置制御システムでは、位置指令値x
*の更新に伴う応答速度を高めるために、
図3に示す第2実施形態のようにフィードフォワード制御を併用する場合がある。
図3において、23は位置制御部2と加減算手段5との間に設けられたフィードフォワード要素であり、速度指令値v
*の時間微分に比例した値を第1トルク指令値T
1に加算する作用を果たしている。
【0031】
この第2実施形態においても、前述した数式6に従って外乱補償ゲインGまたはその設定上限値を更新すれば良いことを以下に説明する。
すなわち、第2実施形態において、位置指令値x
*がゼロに固定されている場合において、摩擦トルクが速度に対して比例する範囲では、トルク指令値Tは数式7のように与えられる。
【数7】
【0032】
なお、トルク指令値Tに対する速度vの変化は、数式2と同様である。
数式7及び数式2から、数式3に対応する関係式は数式8のようになる。
[数8]
[Js
5+{C+J(ω
t+ω
0)}s
4+{ω
t(C+Jω
pp+Jω
vp)
+ω
0(C+Jω
t)}s
3+{ω
tω
0(C+Jω
pp+Jω
vp)
+Jω
tω
vp(ω
vi+ω
pp)−GCω
tω
0}s
2
+Jω
tω
vp{ω
0(ω
vi+ω
pp)+ω
viω
pp}s
+Jω
tω
0ω
vpω
viω
pp]v=0
【0033】
数式8に対して、数式3から数式4を導出した場合と同様の簡略化を行うと、数式4と同じ数式が得られるため、結果として、この第2実施形態においても数式6に従って外乱補償ゲインGまたはその設定上限値を自動更新すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る位置制御システムは、例えばロボットや各種精密機械、工作機械等を対象としたサーボアンプに利用することができる。また、本発明における「位置制御」は「角度制御」を含む概念であり、本発明は、制御対象の角度を指令値に一致させるように制御する角度制御システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,3,5,7,9:加減算手段
2:位置制御部
4:比例制御部
6:積分制御部
8:モータ
10:制御対象
11:積分手段
12:外乱推定部
12a:微分要素
12b:加減算手段
12c:一次遅れ要素
13:一次遅れ要素
14:摩擦トルク
21:外乱補償ゲイン演算部
22:ゲイン設定部
23:フィードフォワード要素