(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離ステップでは、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分に剥離用テープを貼付し、前記剥離用テープとともに前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分を前記第1基材より剥離する
請求項4に記載の接合体の製造方法。
前記被覆ステップでは、セパレータ層と前記未硬化シート状樹脂材との積層構造を有するシート材を用い、前記未硬化シート状樹脂材で前記第1基材上の前記第1領域と前記第2領域を被覆するように、前記セパレータ層及び前記未硬化シート状樹脂材を前記第1基材に積層し、
前記切断ステップでは、前記セパレータ層の外側よりレーザ照射を行い、前記セパレータ層と前記未硬化シート状樹脂材とを前記第1領域と前記第2領域との境界でレーザ光により切断し、
前記分離ステップでは、前記セパレータ層の前記第2領域を被覆する部分を剥離し、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分と前記セパレータ層の前記第1領
域を被覆する部分とにわたって前記剥離用テープを貼付し、前記剥離用テープとともに前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分と前記セパレータ層の前記第1領域を被覆する部分とを前記第1基材より剥離する
請求項5に記載の接合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明の態様>
本発明の一態様に係る接合体の製造方法は、第1基材の第1領域及び第2領域を未硬化シート状樹脂材で被覆する被覆ステップと、被覆ステップ後、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分を前記第1基材より分離する分離ステップと、分離ステップ後、前記第1基材に対し、前記未硬化シート状樹脂材の前記第1領域を被覆する部分を介して第2基材を対向配置し、前記未硬化シート状樹脂材の前記第1領域を被覆する部分を硬化させることにより、前記第1基材及び前記第2基材を接合する接合ステップとを有し、前記分離ステップにおける前記分離の際、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分の応力と歪の位相差δが48°以下であるものとする。
【0012】
ここで本発明の一態様として、前記分離ステップにおける前記分離の際、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分の温度が60℃以下とすることもできる。
【0013】
また本発明の一態様として、前記未硬化シート状樹脂材は、紫外線硬化性樹脂を含むこともできる。
【0014】
或いは本発明の一態様として、前記未硬化シート状樹脂材は、熱硬化性樹脂を含むこともできる。
【0015】
また本発明の一態様として、前記未硬化シート状樹脂材は、分離ステップより前において、前記位相差δを48°より大きくすることもできる。
【0016】
また本発明の一態様として、前記未硬化シート状樹脂材は、アクリル系樹脂材、エポキシ系樹脂材、シリコーン系樹脂材、オレフィン系樹脂材の少なくともいずれかを含むこともできる。
【0017】
また本発明の一態様として、前記第1領域及び前記第2領域は互いに隣接し、前記被覆ステップ後且つ前記分離ステップ前において、前記第1領域と前記第2領域との境界で前記未硬化シート状樹脂材を切断する切断ステップを有することもできる。
【0018】
また本発明の一態様として、前記分離ステップでは、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分に剥離用テープを貼付し、前記剥離用テープとともに前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分を前記第1基材より剥離することもできる。
【0019】
また本発明の一態様として、前記被覆ステップでは、セパレータ層と前記未硬化シート状樹脂材との積層構造を有するシート材を用い、前記未硬化シート状樹脂材で前記第1基材上の前記第1領域と前記第2領域を被覆するように、前記セパレータ層及び前記未硬化シート状樹脂材を前記第1基材に積層し、前記切断ステップでは、前記セパレータ層の外側よりレーザ照射を行い、前記セパレータ層と前記未硬化シート状樹脂材とを前記第1領域と前記第2領域との境界でレーザ光により切断し、前記分離ステップでは、前記セパレータ層の前記第2領域を被覆する部分を剥離し、前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分と前記セパレータ層の前記第1領域を被覆する部分とにわたって前記剥離用テープを貼付し、前記剥離用テープとともに前記未硬化シート状樹脂材の前記第2領域を被覆する部分と前記セパレータ層の前記第1領域を被覆する部分とを前記第1基材より剥離することもできる。
【0020】
また本発明の一態様として、前記第1領域と対向する前記第2基材の領域には、複数の発光素子を形成することもできる。
【0021】
また本発明の一態様として、前記第1領域には複数のカラーフィルタ層を形成することもできる。
【0022】
また本発明の一態様として、前記第2領域で前記第1領域を取り囲むこともできる。
≪本発明を実施するための形態に至った経緯について≫
本発明を実施するための形態に至った経緯として、製造ステップを示す
図13の斜視図及び
図14の断面図を参照しながら、シート材を用いた従来の接合体の製造方法に対する検討内容を説明する。
【0023】
製造工程では、まず
図13(a)のように、一対のセパレータ層(第1セパレータ層140A及び第2セパレータ層140B)の間にシート状の未硬化シート状樹脂封止材140を配してなるシート材40を用意する。未硬化シート状樹脂封止材140としては例えば紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。
【0024】
次に第2セパレータ層140Bを剥離し、外部露出した未硬化シート状樹脂封止材140Xの面を反転させ、第1基材20Xの表面に密着させる。
【0025】
その後
図13(b)のように、第1セパレータ層140Aの外側からレーザ照射を行い、第1セパレータ層140Aと未硬化シート状樹脂封止材140Xとを同時に切断する。
図13(b)及び
図14(a)において、142はレーザ光線の軌跡(切断領域)を示す。レーザ照射により、レーザ光軌跡142の内側には残留樹脂封止材143Xとこれを被覆する内側第1セパレータ層143Aが形成され、レーザ光軌跡142の外側には不要樹脂材141Xとこれを被覆する外側第1セパレータ層141Aが形成される(
図14(b))。
【0026】
次に、
図13(c)のように外側第1セパレータ層141Aを除去し、
図14(a)のように内側第1セパレータ層143Aと不要樹脂材141Xにわたって剥離テープ145を一様に貼着する。そして
図14(b)のように、X方向に沿った第1基材20Xの一端から他端に向けて、剥離テープ145を不要樹脂材141Xと内側第1セパレータ層143Aとともに、第1基材20X側より剥離する。これにより不要樹脂材141Xを除去し、第1基材20X上に残留樹脂材143Xを残留させる。
【0027】
続いて第1基材20Xに対し、残留樹脂材143Xを介して不図示の第2基材を対向配置させる。その後は加熱処理等を行い、残留樹脂材143Xを硬化させて樹脂封止層を形成し、接合体を得る。
【0028】
このような従来の接合体の製造方法を実施する場合、シート状樹脂材を配してなるシート材から不要樹脂材を剥離する際に、不要樹脂材の一部が分断されて基材上に残留する場合がある。
【0029】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたものであり、以下に示す各実施の形態のように、基材上に不要樹脂材が残留するのを防止し、基材の所望の位置にシート状樹脂材を配設することにより、高品質の接合体の製造を期待できる接合体の製造方法を提供するものである。
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態における接合体である、有機EL表示パネル100について説明する。
(有機EL表示パネル100)
図1は、有機EL表示パネル100(以下、単に「パネル100」と称する。)の1画素周辺を含む部分を示す正面図(XY正面図)である。
【0030】
図2は、
図1のW1−W2矢視断面図(XZ断面図)である。
【0031】
パネル100は
図1に示すように、全体として矩形状主面を持つディスプレイである。パネル100は全体構造としては
図2に示すように、第1基材(EL基板10)と、第2基材(CF基板20)と、樹脂封止層14と、樹脂硬化部15とを有し、EL基板10が樹脂封止層14及び樹脂硬化部15を介してCF基板20と接合された接合体構造を有している。
図1では、CF基板20を紙面手前側、EL基板10を紙面奥側にそれぞれ配置したパネル100の様子を示す。
[EL基板10]
EL基板10は
図1に示すように、画面表示を行う発光領域A1と、発光領域A1と隣接して発光領域A1を取り囲む周縁領域A2とを有する。
【0032】
発光領域A1には、
図2に示すように、隔壁(バンク)4と、赤(R)色、青(B)色、緑(G)色の各発光色に対応する有機EL素子100R、100G、100Bとが配設される。隣接する隔壁(バンク)4の間の開口部101R、101G、101Bに対応して、有機EL素子100R、100G、100BがX方向に沿って繰り返し配設される。パネル100では有機EL素子100R、100G、100Bの各々がサブピクセルを構成する。そして、隣接する3つの有機EL素子100R、100G、100Bが1組となり、1画素(ピクセル)を構成する。
【0033】
有機EL素子100R、100G、100Bは、TFT基板1(以下、単に「基板1」と記載する。)と、その上面に順に積層された陽極2と、ホール注入層3と、有機発光層5と、電子輸送層6と、陰極7とを有する。
【0034】
陽極2及び有機発光層5は、有機EL素子100R、100G、100B毎に個別に形成される。ホール注入層3、電子輸送層6、陰極7は基板1の基板の平面全体にわたり一様に形成される。ここでは陽極2を可視光反射材料で構成し、陰極2を可視光透過材料で構成することで、有機EL素子100R、100G、100Bをトップエミッション型としているが、基板1及び陽極2を可視光透過材料で構成し、陰極7を可視光反射材料で構成することで、ボトムエミッション型とすることもできる。
【0035】
尚、発光領域A1にはY方向に沿って、例えば1画素毎や数画素毎に補助配線領域を設けることもある。
[CF基板20]
CF基板20は
図1に示すように、EL基板10の発光領域A1と対向する第1領域A3と、第1領域A3と隣接して第1領域A3を取り囲み、EL基板10の周縁領域A2と対向する第2領域A4とを有する。
【0036】
CF基板20は
図2に示すように、ベース基板11と、その上面にEL基板10の隔壁4の位置に対応して形成されたブラックマトリクス(BM)12と、EL基板10有機発光層5の位置に対応して設けられたカラーフィルタ(CF)層13R、13G、13Bとを有する。ブラックマトリクス12とカラーフィルタ層13R、13G、13Bは、第1領域A3に形成されている。
[樹脂封止層14]
樹脂封止層14は、EL基板10の発光領域A1とCF基板20の第1領域A3をそれぞれ被覆し、各領域A1、A3間を密に封止する封止層として形成される。樹脂封止層14は、例えば紫外線硬化性樹脂等のエネルギー線硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂で構成される。
(パネル100の製造方法)
次に、パネル100の製造方法を、製造ステップの断面図(
図3、
図4、
図7)、製造ステップの斜視図(
図5、
図6)に従って説明する。
【0037】
製造ステップの全体的な流れとして、まずEL基板10、CF基板20をそれぞれ作製する。その後、シート状樹脂封止材付CF基板30(
図6(c)参照)を作製し、シート状樹脂封止材付CF基板30にEL基板10を接合してパネル100を作製する。
[EL基板10の作製]
まず、基板1の所定領域(発光領域A1)上に、スパッタリング法や真空蒸着法に基づいてAg材料等からなる金属薄膜を成膜する。これをフォトリソグラフィー法でパターニングすることにより、基板1上に所定間隔毎に陽極2を形成する。
【0038】
続いて陽極2を形成した発光領域A1の全体にわたり、スパッタリング法等に基づき、遷移金属薄膜を形成する。その後、遷移金属薄膜を酸化することでホール注入層3を成膜する。
【0039】
その後、ホール注入層3の表面に対し、スピンコート法等に基づき、隔壁材料層を配設する。次に隔壁材料層の上に、例えば紫外線硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系フェノール樹脂等の感光性レジスト層を一様に配設する。フォトリソグラフィー法に基づき、パターンマスクを介して露光処理を行い、隔壁材料層を部分的に硬化させる。次に隔壁材料層に対して現像処理、ベーク処理を順次実施することで、開口部101R、101G、101Bを存在させつつ、隔壁4、4Aを形成する(
図3(a))。
【0040】
次に、有機発光材料と溶媒を含むインクを調製し、隣接する隔壁4、4A間の各開口部101R、101G、101Bに対し、インクジェット法に基づくウエットプロセスでインクを塗布する。インクの溶媒を蒸発させて有機発光層5を形成する(
図3(b))。
【0041】
次に、真空蒸着法等に基づき、有機発光層5及び隔壁4、4Aにわたり、電子輸送層7を形成する(
図3(c))。また、同様の手順で真空蒸着法等に基づき、電子輸送層7の上に陰極7を形成する(
図3(d))。
【0042】
以上でEL基板10が完成する。
[CF基板20の作製]
ガラス材料を用いてベース基板11を作製する。ベース基板11の表面における所定領域(第1領域A3)に、黒色顔料を含む紫外線熱硬化性樹脂材料を塗布する。フォトリソグラフィー法に基づきパターニングを行い、ブラックマトリクス12を形成する(
図4(a))。このときブラックマトリクス12は、EL基板10の隔壁4の位置に合わせて配置する。
【0043】
次に、隣接するブラックマトリクス12の間に、EL基板10の開口部101R、101G、101Bの各位置に合わせ、RGBいずれかの色のカラーフィルタ材料を含むインクを塗布する。インク中の溶媒を蒸発させると、カラーフィルタ層13R、13G、13Bが形成される(
図4(b))。
【0044】
以上でCF基板20が完成する。
[シート状樹脂封止材付CF基板30の作製]
次にCF基板20を用い、以下の準備ステップ、被覆ステップ、切断ステップ、分離ステップ、接合ステップを順に経ることでシート状樹脂封止材付CF基板30を作製する。
(準備ステップ)
図5(a)に示すように、第1セパレータ層(厚手の樹脂フィルム層)140A及び第2セパレータ層(薄手の樹脂フィルム層)140Bの間に、シート状の未硬化シート状樹脂封止材140を配してなるシート材40を用意する。未硬化シート状樹脂封止材140は、エネルギー線硬化性樹脂である紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含むように構成することができる。未硬化シート状樹脂封止材140の具体的材料として、アクリル系樹脂材、エポキシ系樹脂材、シリコーン系樹脂材の少なくともいずれかを利用できる。ここで本発明の実施の形態のポイントとして、分離ステップの際、応力と歪の位相差δが48°以下である特性を有するように未硬化シート状樹脂封止材140を構成する。なお、シート材40では両面にセパレータ層140A、140Bを配置しているが、剥離性の重い方(ここでは第1セパレータ層140A)を重セパレータ層、剥離性の軽い方(ここでは第2セパレータ層140B)を軽セパレータ層とも称する。剥離性の違いは、セパレータ層の厚みや使用する離型剤の特性等により生じる。
(被覆ステップ)
シート材40の第2セパレータ層140Bを剥離し、露出した未硬化シート状樹脂封止材140の表面を反転させて、ブラックマトリクス12及びカラーフィルタ層が形成されたCF基板20の表面に対して一様に密着させる(
図5(a))。これにより第1領域A3と第2領域A4とを一様に未硬化シート状樹脂封止材140で被覆する。なお
図5(a)では未硬化シート状樹脂封止材140及び第1セパレータ層140Aを反転させているが、CF基板20を反転させて未硬化シート状樹脂封止材140に密着させてもよい。
(切断ステップ)
次に、第1セパレータ層140Aの外側より未硬化シート状樹脂封止材140に対してエネルギー線を照射し、第1セパレータ層140Aと未硬化シート状樹脂封止材140とを切断する。
【0045】
具体的にはレーザ照射装置を用意し、レーザ出力を調整する。ここでは第1セパレータ層140A及び未硬化シート状樹脂封止材140を切断可能な程度であり、且つCF基板20を損傷させない程度のレーザ出力に調節する。このレーザ出力の設定例として、例えば第1セパレータ層140Aの厚みが50μm、未硬化シート状樹脂封止材140の厚みが20〜30μmの場合、レーザのエネルギー密度を40mJ/cm
2以上65mJ/cm
2以下の範囲に設定する。
【0046】
その後は
図5(b)及び
図7(a)に示すように、第1セパレータ層140Aの外側より、レーザ照射装置の加工ヘッド200からCF基板20の第1領域A3と第2領域A4の境界位置(
図5(a)参照)に対してレーザ光L1を照射する。レーザ光L1の照射位置が第1領域A3と第2領域A4の境界位置に沿うように、加工ヘッド200を移動させることで、レーザ光軌跡142直下の第1セパレータ層140Aと未硬化シート状樹脂封止材140とを同時に切断する。これにより、第1領域A3を被覆する残留樹脂材143とこれを被覆する内側第1セパレータ層143Aが形成され(
図7(a)参照)、第2領域A4を被覆する不要樹脂材141とこれを被覆する外側第1セパレータ層141Aが形成される(
図5(c)参照)。
(分離ステップ)
分離ステップは、以下の外側第1セパレータ層剥離ステップ、不要樹脂剥離用テープ貼着ステップ、剥離ステップを順次行って実施する。
[外側第1セパレータ層剥離ステップ]
外側第1セパレータ層141Aを、一の方向(ここではX方向)に沿って一方の端部側から他方の端部側(ここでは紙面左側から右側)に向けて剥離する(
図5(c))。この剥離方法としては、外側第1セパレータ層141Aを一方の端部側から他方の端部側に向けて順に捲り上げていく方法が確実で好ましい。外側第1セパレータ層141Aを剥離することで、不要樹脂材141が露出する。
[テープ貼着ステップ]
内側第1セパレータ層143Aと不要樹脂材141の表面にわたって剥離テープ145を一様に貼着する(
図6(a)、
図7(a))。このとき、剥離テープ145のテープ貼付部146を不要樹脂材141に密着させ、テープ貼付部147を内側第1セパレータ層143Aに密着させる。
[剥離ステップ]
一の方向(ここではX方向)に沿って、CF基板20の一端から他端に向けて、剥離テープ145を不要樹脂材141と内側第1セパレータ層143Aとともに、CF基板20側より剥離する(
図6(b)、
図7(b))。
【0047】
ここで剥離テープ145の剥離の際、不要樹脂材141は、応力と歪の位相差δ(以下、単に「位相差δ」と称する。)が48°以下である特性を有しており、適度な固体的挙動を取る。このため不要樹脂材141を剥離する際に途中で千切れない。よって不要樹脂材141はCF基板20より捲り上げられる剥離テープ145の動きに追随し、千切れて細かな塊に分断されることなく一体的な形態で維持され、剥離テープ145とともにCF基板20側から剥離する。これにより、CF基板20上における不要樹脂材141の残留物の発生が抑制される(
図7(b))。よって本発明の実施の形態では、CF基材20の第1領域A3のみに樹脂材(残留樹脂材143)を配設することができ、接合体の不要な部分に不要樹脂材141の残留物が付着してパネル100の品質低下を生じる問題を防止できる。
【0048】
尚、未硬化シート状樹脂封止材140は、少なくとも分離ステップでCF基板20側より剥離される部分(ここでは不要樹脂材141)において、位相差δが48°以下の特性を有していればよい。本発明の実施の形態では一例として、未硬化シート状樹脂封止材140の全体にわたり、位相差δが48°以下の特性を有する場合を例示している。
【0049】
剥離ステップを終了すると、
図6(c)に示すシート状樹脂封止材付CF基板30が得られる。
(接合ステップ)
次に
図6(c)に示すように、シート状樹脂封止材付CF基板30の上面に対し、EL基板10を、残留樹脂材143に発光領域A1が対向するように配置する。その後、EL基板10の陰極7側の面を残留樹脂材143に接触させる。これにより発光領域A1を残留樹脂材143で被覆する。
【0050】
その後、CF基板20側より加熱処理または紫外線照射処理を実施することで残留樹脂材11を硬化させ、樹脂封止層14を形成する(
図6(d))。
【0051】
以上でパネル100が完成する。
<剥離ステップの効果確認>
図8は、比較例としてガラス基板からなる第1基材の第1領域と第2領域に、従来の未硬化シート状樹脂封止材(応力と歪の位相差δ>48°)を配設し、その後、第2領域を被覆する不要樹脂材を剥離テープで剥離した後の様子を示す写真である(写真中、「樹脂材」)。この写真では第2領域の複数の領域において、不要樹脂材の残留物が発生しているのを確認できる。これらの残留物は不要樹脂材の位相差δが48°よりも高いため液状に近く、剥離テープによる剥離の際に分断されて残留したものと推測される。
【0052】
次に示す
図9は、実施例のガラス基板からなる第1基材の第1領域と第2領域に、本発明の実施の形態における未硬化シート状樹脂封止材(応力と歪の位相差δ≦48°)を配設し、比較例と同様に第2領域の不要樹脂材を剥離テープで剥離した後の様子を示す写真である。この写真では、第2領域に不要樹脂材が残留物を生じず、ガラス基板のみが露出しているのを確認できる。これは不要樹脂材の位相差δが48°よりも低く、不要樹脂材が適度に固体的挙動を取るため、剥離テープによる剥離の際に分断されずに剥離されたことによるものと考えられる。
【0053】
尚、従来のパネルの樹脂封止層に使用される樹脂材には、表示領域の外周に配置されるシート状樹脂封止材と、表示領域内に充填される充填樹脂封止材とが存在する。パネルの製造プロセスの主な環境温度において、シート状樹脂封止材の位相差δは概ね75°以上85°以下の範囲にあり、また液状の充填封止樹脂材の位相差δは概ね90°に近い。
<応力正弦波に対する歪について>
図10に、未硬化シート状樹脂封止材に加えた応力正弦波と、これに伴って生じる歪の正弦波の位相差δに係るグラフを示す。
図10では、レオメータを用いてシート状樹脂封止材に加えた応力正弦波に対し、これに伴って生じた位相差δが0°、48°、90°の各歪の正弦波を重ねて示している。応力は単位面積当たり(Pa)で示され、応力に対する歪はシート状樹脂封止材の元の寸法からの変化量(%)で表わされる。
【0054】
位相差δが0°の場合、応力正弦波と歪の正弦波との位相は一致し、シート状樹脂封止材はフックの法則で定義される理想弾性体の特性を有する。すなわち応力を加えると、これによる歪は時間遅れなく生じる。
【0055】
一方、位相差δが90°の場合、応力正弦波と歪の正弦波の位相はπ/2ラジアン(90°)だけずれ、未硬化シート状樹脂封止材はニュートンの粘性法則で定義される理想粘性体(液体)の特性を有する。すなわち応力を加えると、これによる歪は位相差δ90°分だけ、時間遅れを生じた後に現れる。
【0056】
ここで位相差δが48°の場合、応力正弦波と歪の正弦波の位相は一定のずれ(48°)を生じ、未硬化シート状樹脂封止材は概ね理想弾性体と理想粘性体の中間の特性を有する。この場合、未硬化シート状樹脂封止材は位相差が大き過ぎず、ある程度の固体的挙動を示すため、応力を受けた際に分断されにくい性質を発揮する。実施の形態では、このような未硬化シート状樹脂封止材の弾性を利用して、不要樹脂材を基材から分離する際に分断し、基材上に不要な残留物が発生するのを抑制している。
【0057】
尚、本発明の実施の形態では、不要樹脂材の位相差δが48°以下のいずれの値であっても(δ≦48°)、基材上における残留物の発生を抑制する効果を期待できる。<正弦損失及び複素弾性率を用いたシート状樹脂封止材の評価法について>
図11に、損失弾性率、貯蔵弾性率、複素弾性率の関係を示す。
【0058】
一般に、複素弾性率は損失弾性率と貯蔵弾性率の合成により算出される。また複素弾性率は、
図11に示すように応力σと歪γの比で表わされる。
【0059】
一方、損失弾性率と貯蔵弾性率の比によって、正接損失tanδが算出される。未硬化シート状樹脂封止材の正接損失を測定した場合、その正接損失の値が大きければ液体的な性質となり、小さければ固体的な性質であると評価できる。本発明の実施の形態における、不要樹脂材の位相差δの範囲(δ≦48°)を考慮すると、不要樹脂材の正接損失は概ね1.11以下の値が望ましいと言える。
<性能確認試験>
(位相差δの温度依存性について)
紫外線硬化性のシート状樹脂封止材1、及び熱硬化性のシート状樹脂封止材2(いずれも未硬化)を用意した。これらのシート状樹脂封止材につきレオメータを用い、位相差δの温度依存性を調べた。レオメータの測定条件は以下の通りとした。
【0060】
パラレルプレート半径:20mm
ギャップ:100um
歪:1%
振り角=(歪×ギャップ)/プレート半径=(0.1×100um)/20mm
=5.0×10
-5rad
ここで、測定条件の歪1%は構造破壊が生じる前の歪であり、歪に対する応力に線形性がある範囲内である。
[試験条件]
使用機器:TAインスツルメント株式会社製 レオメータ(ARシリーズレオメータ)
測定法:レオメータを用いてオシレーション(振動)をシート状樹脂封止材に正弦的に加えることで、シート状樹脂封止材に応力正弦波を与え、これに伴って生じる歪を測定した。このときの応力正弦波に伴って生じる歪の正弦波の位相差がδとして測定される。
【0061】
シート状樹脂封止材の温度調整:レオメータの試料載置用プレートの温調を行い、シート状樹脂封止材を20℃以上90℃以下の温度範囲で変化させるように調整した。
【0062】
温度依存性の調査方法:20℃以上90℃以下の温度範囲内の複数の温度点で、シート状樹脂封止材をガラス基板より分離し、シート状樹脂封止材の残留物の有無及び樹脂の状態を光学顕微鏡にて確認した。残留物がある場合をNG、残留物が無い場合をOKとそれぞれ評価した。
[試験結果と考察]
シート状樹脂封止材1の試験結果を表1、シート状樹脂封止材2の試験結果を表2にそれぞれ示す。
【0063】
また、表1、2の測定値を用いて作製したシート状樹脂封止材1とシート状樹脂封止材2の位相差δの温度依存性のグラフを
図12に示す。
【0064】
図12において、位相差δが90°のものはニュートンの法則に従う理想粘性体である。また、位相差が0°のものはフックの法則に従う理想弾性体である。温度上昇に伴うδの増減は、シート状樹脂封止材の軟化と、シート状樹脂封止材及び基板間の密着性向上により繰り返していると考えられる。
【0065】
シート状樹脂封止材の軟化の影響がシート状樹脂封止材と基板間の密着性向上の影響より大きい場合、δが増加する。また、シート状樹脂封止材の軟化の影響がシート状樹脂封止材と基板間の密着性向上の影響より小さい場合、δが減少する。
【0068】
本試験結果において、シート状樹脂封止材1では表1に示すように、25℃〜90℃の温度範囲のいずれの各温度点でもガラス基板上に残留物が発生し、シート状樹脂封止材1の評価はNGであった。
【0069】
このうち比較的低温度(25℃、30℃、40℃)では、シート状樹脂封止材1は未硬化状態であり、軟化度の高い液状の残留物を生じた。未硬化シート状樹脂封止材が高軟化度であると位相差δの値も大きく、ガラス基材より分離する際に分断しやすいため、残留物を生じやすいと考えられる。
【0070】
シート状樹脂封止材1の温度が上昇するにつれ(50℃、60℃、70℃)、残留物がやや固体となり、高温(80℃、90℃)では残留物は固体となった。これは比較例1が熱硬化性樹脂であり、温度上昇に伴って樹脂硬化が進行したためである。高軟化度のシート状樹脂封止材がガラス基板に接触すると、ガラス基板上の微細な凹凸の内部にシート状樹脂封止材が行き渡り、シート状樹脂封止材とガラス基板との密着度が高まるが、この状態でシート状樹脂封止材が硬化するとシート状樹脂封止材がガラス基板と嵌合するアンカー効果によって、不要樹脂材がガラス基板より分離しにくくなる。シート状樹脂封止材1では、温度上昇による樹脂硬化とともに位相差δが48°より大きくなるので、不要樹脂材のアンカー効果とシート状樹脂封止材が千切れ易くなることの両面によって、不要樹脂材を分離するのが困難となり、残留物が生じたものと考えられる。
【0071】
表1及び
図12に示すように、温度範囲が25℃〜70℃の範囲において、シート状樹脂封止材1の位相差δは51°〜77°の範囲で推移している。温度範囲が80℃〜90℃の範囲において、シート状樹脂封止材1の位相差δは41°〜43°であり、48°以下に収まっているが、このような高温下では基板と、シート状樹脂封止材1の密着性が向上して不要樹脂材141が綺麗に剥離できなかったり、シート状樹脂封止材1の硬化が進行していまい、EL基板との貼り合わせ時に、十分に接着強度が得られない可能性がある。
【0072】
一方、本試験結果において、シート状樹脂封止材2は表2及び
図12に示すように、比較的低温の各温度点(25℃、30℃、40℃、50℃、60℃)では未硬化状態(ゲル状態)であって、位相差δが48°以下であり、ガラス基板上に残留物を発生しないことが確認された。これにより25℃〜60℃の温度範囲において、シート状樹脂封止材2の評価はOKであった。
【0073】
このように残留物が発生しなかった理由として、シート状樹脂封止材2の不要樹脂材をガラス基板より分離する際、細かい塊に分断されるのが抑制されて一体的に分離されたことが考えられる。
【0074】
シート状樹脂封止材2の温度が上昇するにつれ(70℃、80℃、90℃)、位相差δが同順に51°、58°、62°まで上昇し、軟化度が高くなった。このためガラス基板上に液状の残留物が生じるのを確認した。これにより70℃〜90℃の温度範囲において、シート状樹脂封止材2の評価はNGであった。
【0075】
以上の本試験結果より、シート状樹脂封止材が未硬化状態であって、且つ、位相差δが48°以下である場合には、残留物の発生を防止して不要樹脂材を基材側より良好に分離できると考えられる。
【0076】
尚、未硬化シート状樹脂封止材は高温になると流動性を帯び、基材表面の凹凸に隙間なく密着して基材との密着性が過度に上昇して、不要樹脂材を基材側よりきれいに分離できないおそれがある。よって分離ステップにおける分離の際には、
図12の点線で示す最適範囲のように、未硬化シート状樹脂封止材の温度をなるべく低温(例えば60℃以下)にすることが望ましい。
【0077】
尚、
図12のグラフを見ると、シート状樹脂封止材2では30℃〜50℃の温度範囲で位相差δが低下し、外見上、固体へ変化するような傾向が見られる。しかし、これはレオメータで計測する場合、単にシート状樹脂封止材の物性値だけでなく、基板との密着性も加味した計測値となったためである。従って実際は、シート状樹脂封止材2は温度上昇により液状化が進行しているものと考えられる。
【0078】
また上記考察したように、不要樹脂材を分離する際に基材上に残留物を生じるか否かは、未硬化シート状樹脂封止材の位相差δに依存しており、その樹脂硬化の態様によらないと考えられる。従って本試験ではシート状樹脂封止材1を熱硬化性樹脂、シート状樹脂封止材2を紫外線硬化樹脂としたが、未硬化シート状樹脂封止材が熱硬化性或いは紫外線硬化性のいずれであっても、その位相差δが48°以下であれば、不要樹脂材を分離する際により固体的な挙動を示すため、剥離途中に千切れることなく剥離が可能であると考えられる。
<その他の事項>
上記実施の形態では、接合体として有機EL表示パネルを例示したが、本発明の接合体は当然ながらこれに限定されない。その他、例えば静電容量型タッチパネルや液晶パネル等が挙げられる。
【0079】
上記実施の形態では、第1基材をCF基板20、第2基材をEL基板10としたが、第1基材をEL基板10、第2基材をCF基板20とすることもできる。
【0080】
なお、第1基材を帯状体とし、第1基材上に複数の第1領域を形成することもできる。例えば第1基板がCF基板20である場合、帯状体のベース基板11に対し、その長手方向に複数の第1領域A3を形成し、各第1領域A3内にブラックマトリクス12及びカラーフィルタ層13R、13G、13Bを形成することもできる。この場合、第2基材である基板1も帯状体とし、基板1上に複数の発光領域A1を形成し、各発光領域A1と各第1領域A3を未硬化シート状樹脂封止材140を介して対向配置させ、接合体である有機EL表示パネルを形成することもできる。
【0081】
上記実施の形態では、第1基材及び第2基材を板状体として例示したが、第1基材及び第2基材は板状体以外の形態であってもよい。例えば直方体や球体であってもよい。
【0082】
上記実施の形態では、一対のセパレータ層(フィルム)の間に未硬化シート状樹脂封止材を配設したシート材を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば一方のセパレータ層を省略し、他方のセパレータ層の上に未硬化シート状樹脂封止材を配してなるシート材を用いることもできる。
【0083】
本発明の未硬化シート状樹脂封止材は、少なくとも分離ステップで第1基材より分離する際に位相差δが48°以下であればよい。このため、第1基材より分離する際以外は、位相差δが48°より高くても構わない。
【0084】
尚、発明者の行った確認試験によれば、位相差δが75°以上のシート状樹脂封止材を用いる場合でも、その位相差δを分離ステップの際までに48°以下まで下げると、シート状樹脂封止材の軟化度が低減され、良好に不要樹脂材を分離できることが分かっている。このため、分離ステップより前の段階では、シート状樹脂封止材の位相差δ48°より大きい場合であってもよい。
【0085】
尚、シート状樹脂封止材の位相差δを下げる方法としては幾つかの方法が挙げられる。第一に、分離ステップの際のシート状樹脂封止材の温度を下げること、第二に、不要樹脂材を分離するまでに、不要樹脂材を少しだけ重合させる(数%程度の重合度)ことが挙げられる。
【0086】
上記実施の形態では、第2領域A4が第1領域A3と隣接し、第1領域A3を第2領域A4で取り囲む構成を例示したが、本発明における第2領域は同じ基材において、第1領域と別に存在していればよい。