特許第6281808号(P6281808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281808
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20180208BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20180208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M4/38 Z
   H01M10/052
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-209155(P2013-209155)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-112526(P2014-112526A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-245452(P2012-245452)
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正義
(72)【発明者】
【氏名】獨古 薫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和生
(72)【発明者】
【氏名】文 喜俊
(72)【発明者】
【氏名】万代 俊彦
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−109223(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133899(WO,A1)
【文献】 特開2005−243321(JP,A)
【文献】 特開2012−146399(JP,A)
【文献】 特開2012−099342(JP,A)
【文献】 米国特許第06248883(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/36− 4/62
H01M 4/13− 4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電/放電により炭化リチウムと可逆的に変化する炭素であるグラファイトを負極活物質として有する負極と、
充電/放電により硫化リチウムと可逆的に変化する単体硫黄を正極活物質として有する正極と、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
リチウム金属塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)と分子中のエーテル酸素[O]が4個又は5個のグライムとが錯体を形成している溶媒和イオン液体と、前記溶媒和イオン液体と混和すると共にリチウムと化学反応しない、ドナー数が10未満のハイドロフルオロエーテルと、を含み、(グライム分子中のエーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比が6未満であり、イオン伝導率(30℃)が、1mS/cm以上であり、粘度(30℃)が、10mPa・s以下で、ポリスルフィド(Li)の溶解度が、前記ハイドロフルオロエーテルを含まない電解液の1/5以下である電解液と、を具備することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロエーテルが、以下のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
HFCFCHC−O−CFCF
CHC−O−CFCF
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素負極を有するアルカリ金属/硫黄系の二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、特開2012−109223号公報において、グライムを含む電解液を有する、リチウム硫黄二次電池を開示している。正極活物質として硫黄を有するリチウム二次電池の理論容量は、1672mAh/gであり、普及している正極活物質としてLiCoOを有する二次電池の理論容量137mAh/gの10倍と非常に高い。また硫黄は、低コストで資源が豊富である。
【0003】
そして、発明者らは、電解液のグライムに対するリチウム金属塩の混合比がモル換算で0.50以上であれば、充電時の副反応が抑制されることを開示している。
【0004】
しかし、上記グライムを含む電解液はイオン伝導率が高くはないため反応抵抗が大きく、上記リチウム硫黄二次電池は常温での放電容量が大きくはなく、常温動作は容易ではないことがあった。
【0005】
また、リチウム等のアルカリ金属が導電性を担う二次電池では、負極に、金属リチウムよりも安全性の高い炭素を負極に用いることが要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−109223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、常温で動作する炭素負極を有するアルカリ金属/硫黄系の二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の二次電池は、充電/放電により炭化リチウムと可逆的に変化する炭素であるグラファイトを負極活物質として有する負極と、充電/放電により硫化リチウムと可逆的に変化する単体硫黄を正極活物質として有する正極と、前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、リチウム金属塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)と分子中のエーテル酸素[O]が4個又は5個のグライムとが錯体を形成している溶媒和イオン液体と、前記溶媒和イオン液体と混和すると共にリチウムと化学反応しない、ドナー数が10未満のハイドロフルオロエーテルと、を含み、(グライム分子中のエーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比が6未満であり、イオン伝導率(30℃)が、1mS/cm以上であり、粘度(30℃)が、10mPa・s以下で、ポリスルフィド(Li)の溶解度が、前記ハイドロフルオロエーテルを含まない電解液の1/5以下である電解液と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、炭素負極を有し、常温で動作する放電容量の大きなアルカリ金属/硫黄系の二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の二次電池の構成を示す断面図である。
図2】溶媒和イオン液体の熱重量分析結果を示す図である。
図3】予備実験の二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図4】予備実験の二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図5】溶媒添加による粘度、イオン伝導率の変化を示す図である。
図6】溶媒添加のスルフィド溶解性に及ぼす影響を示す図である。
図7】実施形態の二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図8】実施形態の二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図9】実施形態の二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図10】グラファイト電極のX線回折パターンを示す図である。
図11】実施形態の放電開始型二次電池の充放電試験結果を示す図である。
図12】実施形態の充電開始型二次電池の充放電試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の二次電池50は、電気伝導を担うアルカリ金属(以下「M」で示すことがある)がリチウムで、硫黄を正極活物質として有する、リチウム/硫黄二次電池である。
【0013】
図1に示すように、二次電池50は、負極4と、正極2と、セパレータ6と、電解液7と、を必須構成要素として具備する。負極4は、負極活物質層4aと集電体4bとからなり、正極2は正極活物質層2aと集電体2bとからなる。
【0014】
より具体的には、コイン型の二次電池50では、正極2と負極4とは、電解液7が注入されたセパレータ6を介して積層されてコインセルケース20に封入されている。すなわち、負極4の上にスプリング14が配設され、蓋22でコインセルケース20は封止されている。なお、コインセルケース20の側壁にはガスケット10が介装されている。
【0015】
次に、各構成要素について説明する。
【0016】
負極4は、アルカリ金属イオン、すなわち、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質として炭素を有する。以下の(式1)に示すように、炭素は、炭化リチウムと可逆的に変化するため、リチウムイオンの吸蔵(充電)/放出(放電)が可能である。
【0017】
6C + Li + e ←(放電)←→(充電)→ LiC (式1)
【0018】
一方、正極2は、リチウムイオン(アルカリ金属イオン)を吸蔵放出可能な正極活物質として、以下の(式2)に示すように硫化リチウム等の硫黄の還元生成物に可逆的に変化する硫黄(S)を有する。なお、硫黄の還元生成物とは、LiS、多硫化物Li2SN(2≦N≦8)、その他のアルカリ金属多硫化物である。
【0019】
+ 16Li + 16e ←(充電)←→(放電)→ 8LiS (式2)
【0020】
二次電池50は、製造されたときに充電状態または放電状態となっていることが必要である。このため、二次電池50の製造方法は、リチウム化炭素を有する極を作製する工程及び単体硫黄を有する極を作製する工程(充電状態)、又は、単体炭素を有する極を作製する工程及び硫化リチウムを有する極を作製する工程(放電状態)と、を具備する。
【0021】
ここで、単体硫黄とはリチウム化していない硫黄を意味し、単体炭素とはリチウム化していない炭素を意味する。
【0022】
単体硫黄を有するは、例えば、活物質として単体硫黄(S8)を60重量%、導電剤としてケッチェンブラック(KB)を30重量%、結着剤としてポリビニルアルコールを10重量%の割合で混合し熱処理した後に適量のNMP (N-メチルピロリドン)を加え混錬したスラリーを、アルミニウム箔等の集電体bに塗布し、乾燥/プレスすることで作製された。すなわち、極の活物質層aは、硫黄系活物質と、導電剤と、結着剤を含む。
【0023】
リチウム化硫黄(LiS)を有する極は、上記単体硫黄を有する極に後述する電解液を滴下した後に放電処理することで作製された。
【0024】
一方、単体炭素を有する極は、例えば、活物質としてグラファイト(日立化成社製:MAG)を90重量%、結着剤としてアセチレンブラック(AB:電気化学工業社製)を3重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:クレハ社製)を7重量%の割合で混合し熱処理した後に適量のNMPを加え混錬したスラリーを、銅箔等の集電体bに塗布し、乾燥/プレスすることで作製された。すなわち、極の活物質層aは、炭素系活物質と、結着剤を含む。活物質層aの厚みは49μmであり、グラファイトの重量は4.0mg/cm(負極4の単位面積当たり)である。
【0025】
リチウム化炭素(LiC)を有する極は、単体炭素を有する極に後述する電解液を添加した後にリチウム金属と接触することで作製された。
【0026】
セパレータ6には、電解液を吸収保持する機能を有する厚さ200μmのガラス性フィルター(東洋濾紙社製:GA−55)を用いた。
【0027】
電解液7は、エーテルとリチウム金属塩とが錯体を形成した非プロトン性溶媒和イオン液体が、溶媒で希釈されている。後述するように、溶媒は電解液7の伝導率を高くし反応抵抗を低くするための本発明の特徴的構成要素である。
【0028】
エーテルとして、テトラヒドロフラン(THF:和光純薬工業社製)、及び、キシダ化学社製のモノグライム(G1:1,2‐ジメトキシエタン)、ジグライム(G2:ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(G3:トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(G4:テトラエチレングリコールジメチルエーテル)を用いた。THF、G1、G2、G3、G4は、それぞれ一分子中にエーテル酸素[O]を、1個、2個、3個、4個、5個有する。
【0029】
リチウム金属塩として、以下の(式3)で示すリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド (LiTFSA)を用いた。
(式3)
【0030】
【0031】
例えば、G3とLiTFSAとの混合溶液は、以下の(式4)に示す構造の錯体を形成している溶媒和イオン液体(以下、「イオン液体」ということがある)である。
(式4)
【0032】
【0033】
この溶媒和イオン液体、[Li(G3)][TFSA]は、イオン液体にリチウム金属塩を溶解した従来の電解液と比較すると、難揮発性、低粘性、高リチウムイオン濃度、高いリチウムイオン導電性を有する。
【0034】
なお、溶媒和イオン液体であることは、熱重量測定法にて確認できる。
例えば、図2に、溶媒和イオン液体、[Li(G3)][TFSA]の混合比(モル換算)の異なる溶液の熱重量測定結果を示す。測定には、示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツル社製:TG/DTA 6200)を用い、昇温速度は、10℃/minである。
【0035】
もし、G3とLiTFSAとが錯体を形成していなければ、破線で示すように、G3は沸点近傍で蒸発し、LiTFSAは400℃付近で熱分解するため、それぞれが特定の温度で重量が減少する。これに対して、錯体を形成している溶媒和イオン液体の重量減少は、以下の(1)〜(3)の3段階で進行する。
【0036】
(1)100〜200℃までの重量減少は、錯形成していないグライムの蒸発に由来する
(2)200〜400℃までの重量減少は、錯形成しているグライムの蒸発に由来する
(3)400℃以上での重量減少は、アルカリ金属塩(LiTFSA)の熱分解に由来する
【0037】
そして、上記 (2)の段階、すなわち、G3の沸点とLiTFSAの熱分解温度との間で重量減少がある場合には、G3とLiTFSAとの混合溶液は錯体を形成している溶媒和イオン液体であると見なすことができる。
【0038】
グライムに対するLiTFSAの混合比(モル換算)が1より大きい系では、すべてのグライムが錯体を形成しているため、(1)の段階がなく、200℃以上から重量減少が始まる。
【0039】
そして、溶媒和イオン液体、[Li(G3)][TFSA]は、リチウムポリスルフィド(Li)に対する溶解度が極めて低いため、リチウム/硫黄二次電池に用いると高サイクル特性を実現できる。
【0040】
すなわち、硫黄を活物質とする二次電池の放電反応では硫黄がLiSまで還元される過程で、リチウムポリスルフィドと呼ばれるLi、Li、Liの化学種を経由する。リチウムポリスルフィドの電解液への溶解度が高いと、電極からリチウムポリスルフィドが溶出し、電池反応に寄与できなくなるため、放電容量が低下する。これは、電池反応は電極上でしか起こらないためである。
【0041】
そして、充放電特性の評価は、電流密度をC/20レート(20時間率:電極活物質の理論容量をn(時間) で放電または充電する電流値をC/nと表す)とした。なお、C/20レートは、硫黄の単位重量当たり83.6mA/g、電極の単位面積当たり80μA/cmの電流密度に相当する。評価は、所定温度の恒温槽中で実施した。
【0042】
なお、グラファイト負極を有する二次電池では、グラファイトにLiが吸蔵される還元反応が充電で、グラファイトからLiが放出される酸化反応が放電である。
【0043】
充電容量と放電容量(mAh/g:gはグラファイトの質量当り)から、充放電サイクルの各サイクルで、クーロン効率(%)=放電容量/充電容量を求めた。クーロン効率は、充電した電気量を放電でどれだけ取りだせるかを示す値であり、値が100(%)に近いほど良い。
【0044】
<予備実験>
最初に予備実験として、単体炭素を有する負極とLi金属板からなる正極2とを有する、いわゆるハーフセル構造で、溶媒を含まない電解液(溶媒和イオン液体)の組成(混合比)の異なる二次電池を作製し、充放電特性を評価した。なお、以下、電解液(イオン液体)の組成は、エーテル分子中のエーテル酸素[O]のモル数と、リチウム金属塩のモル数との比 ([O]/[Li])で示す。
【0045】
すなわち、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、正極2に電解液を適量加え、60℃で60分間、電解液を正極2に浸漬させた。正極2と負極4とを、セパレータ6を介して積層し電解液を注入した後、コインセルケース20(SUS304製の厚さ3.2mm)に封入し、負極4の上にスペーサ12を載置した。スペーサ12の上にスプリング14を配置した。スプリング14の上から蓋22でコインセルケース20を封止した。
【0046】
図3図4に、一例として([O]/[Li])=4.0の電解液を用いた二次電池の充放電曲線を示す。図3に示すように、30℃でも充放電試験可能、すなわち、二次電池として機能している。しかし、放電容量は60mAh/g程度と高くはない。これは、電解液の粘度が高くイオン導電率が低いためである。これに対して図4に示す60℃では、放電容量は300mAh/g以上とよい。このため、以下の予備実験の充放電試験は60℃にて行った。
【0047】
表1に、組成の異なる電解液(溶媒和イオン液体)を用いた二次電池の充放電評価結果を示す。
【0048】
(表1)
【0049】
エーテルがTHFの場合には、([O]/[Li])が8未満(モル比)である場合、3サイクル目の放電容量が130mAh/g以上で、かつクーロン効率が65%以上である。一方、([O]/[Li])が8以上での場合、3サイクル目のクーロン効率が65%未満であった。
【0050】
なお、分子中に[O]を2つ以上有するG1〜G4をエーテルに用いた場合には、([O]/[Li])が6未満(モル比)である場合、3サイクル目の放電容量が130mAh/g以上で、かつクーロン効率が65%以上となった。一方、([O]/[Li])が6以上の場合、3サイクル目の放電容量が130mAh/g未満となるか、又はクーロン効率が65%未満であった。
【0051】
すなわち、(エーテルの分子中のエーテル酸素[O]/アルカリ金属塩)のモル比が、8未満の場合には、8以上の場合よりも放電容量/クーロン効率がよい。そして、エーテルが分子中にエーテル酸素[O]を2個以上有するグライムの場合には、6未満の場合に放電容量/クーロン効率がよい。
【0052】
放電容量/クーロン効率は、電解液のエーテルが錯体を形成しているかどうかで左右されると考えられる。すなわち、溶媒和イオン液体はエーテルと比べると、リチウムポリスルフィドの溶解度が非常に低い。
【0053】
リチウムポリスルフィド(Li2S; 2 ≦ N ≦ 8)の電解液への溶出量は以下の方法で測定できる。S8 (和光純薬工業社製の粉末)と、Li2S (Aldrich社製の粉末)を混合し、その過剰量を添加する。そして添加した電解液を60℃、100時間撹拌し、さらに室温で48時間静置後に遠心分離し、上澄み溶液を飽和Li2S溶液として採取する。この飽和Li2S溶液を電気化学的にすべてS8に酸化させ、S8の紫外可視吸収スペクトルから、全S濃度として溶解度が算出される。
【0054】
最も溶解しやすいリチウムポリスルフィドLiのG3への溶解度は、エーテルが十分に錯体を形成していない[Li(G3)][TFSA]では5899.0mM/Lである。これに対して溶媒和イオン液体、[Li(G3)][TFSA]では28.9mM/Lである。そして、(エーテルの分子中のエーテル酸素[O]/アルカリ金属塩)のモル比が、8未満又は6未満において、溶解度は顕著に低下する。
【0055】
すなわち、錯体を形成していない、いわゆるフリーのエーテルは沸点が低いだけでなく、副反応の原因となりうる。このため、全てのエーテルが錯体を形成していることが好ましい。
【0056】
一方、イオン液体中のリチウム金属塩のうち、エーテルと錯体を形成していないリチウムイオンは、錯体を形成していないエーテルとは異なり、電池特性への影響は小さい。しかし、電解液中のリチウム金属塩濃度が飽和濃度を超えることは好ましくない。すなわち、(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比の下限は、リチウム金属塩の飽和濃度で決まる値で決定される。(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比の下限は、2以上8未満であり、より厳密には2以上7未満である。なお、エーテル中のアルカリ金属塩の飽和濃度は、30℃のエーテルにアルカリ金属塩を溶解させたとき、アルカリ金属塩の固形分が目視で確認できたときの濃度とする。
【0057】
なお、全てのエーテルが錯体を形成している溶媒和イオン液体における(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比は、錯体の構造により異なる。例えば、分子中のエーテル酸素[O]の数が4個のG3では、(式4)に示したように、G3とLiTFSAとからなる溶媒和イオン液体、[Li(G3)][TFSA]は、(式4)に示したように、LiイオンとG3とが1:1の割合で、陽イオンを形成している。G4もG3と同様である。
【0058】
このため、全てのエーテルが錯体を形成している溶媒和イオン液体における(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比は、分子中のエーテル酸素[O]の数と同じになる。すなわち、最も好ましい(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比は、モノグライムG1では2であり、ジグライムG2では3であり、トリグライムG3では4であり、テトラグライムG4では5である。」
【0059】
例えば、LiTFSAのG3への溶解限度(30℃)は、LiTFSA/G3モル比では1.67、[O]/[LiTFSA]では2.39、であり、LiTFSAのG4への溶解限度(30℃)は、LiTFSA/G4モル比で2.00、[O]/[LiTFSA]では2.5である。
【0060】
すなわち、(エーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比は、LiTFSAとG3とからなる電解液では、1.67以上4以下、LiTFSAとG4とからなる電解液では、2.5以上5以下が好ましい。
【0061】
一方、分子中のエーテル酸素[O]の数が2個のG1とLiTFSAとからなる溶媒和イオン液体では、LiイオンとG1とが1:(1、2又は、3)の割合で、陽イオンを形成する。また、分子中のエーテル酸素[O]の数が3個のG2とLiTFSAとからなる溶媒和イオン液体では、LiイオンとG2とが1:(1又は、2)の割合で、陽イオンを形成する。
【0062】
更に、分子中に[O]を1つしか有していない環状エーテルであるTHFでは、Liイオン1個に対して、より多くのTHFが対応する複雑な錯体を形成していると考えられる。
【0063】
このため、全てのエーテルが錯体を形成している溶媒和イオン液体は、(エーテル/リチウム金属塩)のモル比ではなく、(分子中のエーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比で規定することが好ましい。
【0064】
全てのエーテルが錯体を形成していることは、ラマン分光法や核磁気共鳴分光法により確認することができる。なお、「全ての」エーテルとは、エーテルの90モル%以上が錯体を形成していることを意味する。
【0065】
上述のように、エーテルとリチウム金属塩とが錯体を形成している溶媒和イオン液体を電解液に用いた二次電池は、室温(30℃)では反応抵抗が大きく、放電容量が小さい。しかし、作動温度を60℃とし、更に、電解液中のエーテルとアルカリ金属塩の混合比を特定の範囲内に限定すると、炭素負極を有する二次電池であっても高い放電容量が得られる。
【0066】
<実施形態>
上記予備実験で作製した二次電池は、サイクル回数を更に増加すると、サイクル回数の増加につれて放電容量が減少した。これは、60℃と高温のため、活物質である硫黄が何らかの副反応により失活したりしたためと考えた。
【0067】
このため、溶媒和イオン液体に溶媒を加えて希釈した電解液を用いてハーフセル構造の二次電池を作製し評価した。
【0068】
溶媒和イオン液体を希釈する溶媒は、溶媒和イオン液体と混和すると共にアルカリ金属と化学反応しない疎水性溶媒を選択する必要がある。
【0069】
表2に各種の溶媒の評価結果を示す。
【0070】
(表2)
【0071】
なお、フッ素系溶媒としては、以下の(式5)、(式6)に示す2種類のハイドロフルオロエーテル(HFE−A、HFE−B:ダイキン工業社製)を用いた。
【0072】
HFCFCHC−O−CFCFH (式5)
【0073】
CHC−O−CFCFH (式6)
【0074】
なお、HFE−Aは、ドナー数が6〜7、粘度1.3mPa・s、沸点93.2℃で、不燃性である。ドナー数は電子供与性を表し、ドナー数が大きいほど電子供与性が強い。
【0075】
また、[P13][TFSA]は、(N−メチルーN−プロピルピロリジニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなるイオン液体を示す。
【0076】
溶媒の疎水性は、溶媒と蒸留水を体積比1:1で混合し、静置後に相分離の有無を目視で評価した。相分離が確認できた場合は疎水性(○)と判断し、一様な溶液の場合には親水性(×)と評価した。
【0077】
イオン液体と溶媒との混和性は、イオン液体と溶媒とを体積比1:1で混合し、静置後に相分離の有無を目視で評価した。一様な混合溶液の場合は混和する(○)と判断し。相分離が確認された場合には混和しない(×)と評価した。なお、トルエンは僅かに相分離することがあった。
【0078】
溶媒とリチウムとの化学反応性は、2mLの溶媒に、リチウム金属箔(1cm角、0.02mm厚)を1日、浸漬した後に、箔の光沢及び溶媒の色変化を目視にて評価した。光沢が初期より低下したか、又は溶媒の色が変化した場合は反応する(×)と判断し、光沢及び溶媒の色の変化がなかった場合は反応しない(○)と評価した。
【0079】
Liイオンと溶媒和イオン液体を形成しているエーテルはドナー数が10以上であり、電子供与性が強い。例えば、ドナー数が。THFは20、G1は18.6、G2は19.2、G3は14.0、G4は、16.6である。すでに説明したように、ドナー数が大きいほど、アルカリ金属イオンに電子を供与して錯体を形成する力が強い。このため、ドナー数が10未満と、エーテルに比べて配位能が弱い溶媒は、溶媒和イオン液体の錯体構造に影響を及ぼすことがなく、希釈可能であると判断できる。
【0080】
表2より、フッ素系溶媒とトルエン(和光純薬工業社製)だけが溶媒和イオン液体の希釈に適していることがわかる。すなわち、溶媒和イオン液体の希釈に用いることのできる溶媒の種類は多くは無い。
【0081】
図5に、[Li(G4)][TFSA]溶媒和イオン液体に、所定量のHFE−Aを添加したときの、イオン導電率と、粘度の変化を示す。リチウム塩濃度の減少、すなわち、HFE−A添加量の増加に比例して、電解液が低粘度、高導電率となる。
【0082】
以下の実験では、希釈後の電解液中のLiイオン濃度を、1モル/L(1M)とした。このための溶媒添加量は、例えば、HFE−Aの場合には、イオン液体:HFE−A=1:4(モル比)である。
【0083】
図7図8図9に溶媒和イオン液体を溶媒で希釈した電解液を用いた二次電池の充放電特性の例を示す。図7は溶媒としてHFE−Aを用いた電解液、図8は溶媒としてHFE−Bを用いた電解液、図9は溶媒としてトルエンを用いた電解液を、それぞれが有する二次電池の特性である。
【0084】
そして、表3〜表5に、溶媒和イオン液体を溶媒で希釈した電解液を用いた二次電池の評価結果を示す。なお、表4において、[*1]は、粘度が非常に高く固体状態に近いため測定不能であったことを示す。[O]/[Li]は、エーテル中のエーテル酸素だけをカウントしたものであり、溶媒中に含まれるエーテル酸素を含まない。
【0085】
(表3)
【0086】
(表4)
【0087】
(表5)
【0088】
表3〜表5に示すように、溶媒和イオン液体を溶媒で希釈した電解液を用いた二次電池は、30℃においても大きな放電容量が得られた。
【0089】
すなわち、溶媒希釈により、イオン伝導率(30℃)が、0.1mS/cm以上であり、粘度(30℃)が、10mPa・s以下となった電解液を用いることで、30℃においても動作する放電容量の大きなリチウム−硫黄系の炭素負極を有する二次電池を得ることができた。
【0090】
この理由は明確ではないが、電解液が溶媒を含有すると、イオン伝導率が増大して電流が流れやすくなり、粘性率が低下し、電極と電解液が電気化学反応できる界面が増大するためと考えられる。また、電解液の粘性率が低下すると、電極反応の反応速度定数が増大する傾向があり、これによっても放電容量が増大すると考えられる。
【0091】
また、ポリスルフィドの電解液への溶解性が、溶媒の添加により更に小さくなることも大きな原因と考えられる。すなわち、図6に示すように、特に溶解性の大きいLiの溶解性は、HFE−Aの添加により、さらに1/5以下にまで減少する。
【0092】
なお、電解液によっては、グラファイト負極の結晶構造を破壊してしまう可能性がある。すなわち、グラファイト負極では、充電時に還元反応(6C + Li+ +e- → LiC6)が起こり、グラファイトの結晶構造中にLiが挿入(吸蔵)される。リチウムイオンLi+は電解液中で溶媒によって溶媒和されているが、グラファイトで(6C + Li+ +e- → LiC6)の反応が起こる際に、溶媒和されたLi+がグラファイトの結晶構造中に挿入されることがある。
【0093】
例えば、プロピレンカーボネート(PC)を電解液の溶媒として用いた場合には、グラファイトの結晶構造中に溶媒和されたLi+が挿入されてしまうことが報告されている。このような、溶媒和されたLi+の挿入(溶媒の共挿入)が起きると、グラファイトの結晶構造が破壊されたり、グラファイトの結晶構造の中で溶媒の不可逆的な分解反応が起こったりして、グラファイト負極の充放電容量が減少したり、充放電効率(クーロン効率)が低下したりするなどの悪影響を及ぼす。このため、PCを含む電解液はグラファイト負極を有する二次電池に使用できない。
【0094】
このため、1回目の充電後の負極の表面を大気に曝されないようにポリエチレンフィルムで覆った後、XRD(X線回折)で分析した。その結果、図10に示すように、([O]/アルカリ金属塩)が4の[Li(G3)][TFSA]電解液からなる二次電池の場合(B)、充電前(A)の負極(グラファイト)を示す回折角(2θ)が27度付近の鋭いピークが、低角側(24.5度付近)にシフトした。しかし、これは、グラファイトの結晶構造中にLiが挿入されて、LiC6となり、面間隔が拡大したに過ぎず、グラファイトの結晶構造は破壊されてはいない。
【0095】
これに対して、([O]/アルカリ金属塩)が16の[Li(G3)][TFSA]電解液からなる二次電池の場合(図10(C))、回折角27度付近のピークが消失し、20度付近にブロードなピークが観測された。これは、初回充電時にエーテル(G3)がリチウムイオンとともにグラファイトに挿入(共挿入)された結果、グラファイト結晶の層状構造が破壊されたことを示す。
【0096】
電解液が負極(グラファイト)の結晶構造を破壊するか否かは、充放電試験を行って3サイクル目のクーロン効率が65%未満の場合を、副反応が生じ、グラファイトの結晶構造が不可逆的に破壊されたと判断できる。これは、図10(C)で示した[Li(G3)][TFSA]電解液では、3サイクル目のクーロン効率が65%未満に低下していると共に、XRDにより負極の結晶構造が破壊されたことが確認されたことより、妥当である。
【0097】
なお、充放電サイクル回数を3サイクルから50サイクルに増加したところ、電解液にトルエン、THFを用いた電解液を有する二次電池は、グライムを用いた電解液を有する二次電池に比べると放電容量およびクーロン効率の減少が大きく、サイクル特性が劣っていた。
また、エーテル酸素の数が少ないG1を用いた電解液を有する二次電池は、エーテル酸素の数が多いG2、G3、G4と比較すると、やはりサイクル特性が劣っていた。
【0098】
これは、形成された溶媒和イオン錯体の安定性が弱いためと考えられる。例えば、エーテル中のエーテル酸素[O]の数にもとづく配位子数が少ないTHF、G1は、錯体構造が維持されにくく、リチウムポリスルフィド(Li)に対する溶解度が増加しやすいためと考えられる。
【0099】
このため、電解液に用いるエーテルとしては、エーテル酸素を3個以上有するG2、G3、G4等の鎖状エーテルが好ましく、特に好ましくは、G3、又は、G4である。また、溶媒としては、ハイドロフルオロエーテルが好ましく、特に好ましくは、HFE−A、HFE−Bである。
【0100】
<フルセル二次電池>
次に、製造されたときに充電状態となっている、リチウム化炭素を有する極と、単体硫黄を有する極と、を有する、いわゆるフルセルの二次電池を作製し30℃にて評価した。
【0101】
既に説明したように、リチウム化炭素を有する極は、単体炭素を有する極に金属リチウムを48時間接触することで作製した。なお、電解液としては、1M[Li(G3)][TFSA]in HFE-A、すなわち、[Li塩]/[G3]=1.0([O]/[Li]=4.0)の溶媒和イオン液体を、HFE−Aで希釈しリチウムイオン濃度が1Mの溶液を用いた。充電状態の二次電池の充放電試験は、いわゆる「放電開始」である。
【0102】
図11に示すように、サイクル数の増加により放電容量は減少するが、100サイクル後においても400mAh/g以上でクーロン効率も90%以上であった。
【0103】
また、製造されたときに放電状態となっている、単体炭素を有する負極と、硫化リチウム(LiS)を有する正極と、を有する二次電池を作製した。放電状態の二次電池の充放電試験は、いわゆる「充電開始」である。
【0104】
そして、図12に示すように、充電開始型二次電池も、放電開始型二次電池と同様に、100サイクル後においても、放電容量が600mAh/g以上でクーロン効率も90%以上であった。
【0105】
以上の説明のように、実施形態の二次電池は、炭素電極を有するリチウム/硫黄系であるが、直ちに生産が可能なフルセル構造においても、高い放電容量、高いクーロン効率、及び100サイクル以上という優れたサイクル特性が確認された。
【0106】
特に、エーテル酸素[O]の数が3以上のグライム(G2、G3、G4)とリチウム金属塩とが錯体を形成している、(グライム分子中のエーテル酸素[O]/リチウム金属塩)のモル比が6未満の溶媒和イオン液体と、ハイドロフルオロエーテルと、を含み、イオン伝導率(30℃)が、1mS/cm以上であり、粘度(30℃)が、10mPa・s以下である電解液と、を具備するリチウム/硫黄二次電池は、フルセル構造においても100サイクル後において高い放電容量、高いクーロン効率の優れたサイクル特性を示した。
【0107】
さらに、エーテル酸素[O]の数が2以上のグライム(G3、G4)が、エーテル酸素[O]の数が2のグライム(G2)よりも、サイクル特性が優れていた。
【0108】
なお、以上の説明においては、具体的な構成要素を用いて説明したが、構成要素としては、上記で説明した材料等に限られるものではない。
【0109】
例えば、炭素を含む負極4としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの結晶性炭素材や非結晶性炭素材等の炭素材料を用いることができる。
【0110】
すなわち、負極4は、炭素活物質と、結着剤と導電剤とを含む。そして、これら電極材料のスラリー(ペースト)を、導電性の担体(集電体)に塗布して乾燥することにより、電極材料を担体に担持させて負極を製造できる。集電体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの導電性の金属を、箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタルなどに形成したものが挙げられる。また、導電性を有する樹脂または導電性フィラーを含有させた樹脂を集電体として使用してもよい。集電体の厚さは、例えば5〜30μmであるが、この範囲に限定されない。
【0111】
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリビニルアルコール(PVA)等の公知の材料を用いることができる。
【0112】
導電剤は、導電性を向上させるために配合される添加物であり、黒鉛、ケッチェンブラック、逆オパール炭素、アセチレンブラックなどのカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)などの種々の炭素繊維、金属粉末などが挙げられる。又、電極材料が支持塩(下記電解液に含まれる成分)を含んでもよい。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0113】
また、負極材料としては、上記した炭素と、炭素以外の負極活物質を併用してもよい。但し、炭素以外の負極活物質が、負極の全体重量(ただし、集電体を除いた重量)に対して50質量%未満であることが好ましい。
【0114】
炭素以外の負極活物質としては、リチウム、ナトリウム、リチウム合金、ナトリウム合金、ケイ素、アルミニウム、スズ、アンチモン、マグネシウム、リチウム/不活性硫黄の複合物、及び遷移金属酸化物からなる群から選択される1又は2以上の負極活物質を含むものがよい。より具体的には、チタン酸リチウム、リチウム金属、ナトリウム金属、リチウムアルミ合金、ナトリウムアルミ合金、リチウムスズ合金、ナトリウムスズ合金、リチウムケイ素合金、ナトリウムケイ素合金、リチウムアンチモン合金、ナトリウムアンチモン合金等の金属材料、といった従来公知の負極活物質を用いることができる。負極に含まれる負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵脱離するよう作用する。
【0115】
正極2は、硫黄系電極活物質、すなわち、単体硫黄、金属硫化物、金属多硫化物、有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む。2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0116】
硫黄系金属硫化物としては、リチウム多硫化物;Li2Sx(1≦x≦8)が挙げられ、硫黄系金属多硫化物としては、MSx (M=Ni、Co、Cu、Fe、Ti、1≦x≦4) が挙げられる。又、有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物が挙げられる。
【0117】
また、硫黄系電極活物質以外の活物質を含んでいても良い。例えば、アルカリ金属又はアルカリ金属の酸化物を含んでいても良い。アルカリ金属の酸化物としては、アルカリ金属−遷移金属複合酸化物、アルカリ金属の過酸化物が挙げられる。アルカリ金属−遷移金属複合酸化物としては、LiMn、LiCoO、LiNiO、LiFePO等が挙げられ、アルカリ金属の過酸化物としては、過酸化リチウム(Li)等が挙げられる。
【0118】
正極は、上記した正極活物質と結着剤と導電剤とを含んでもよい。そして、これら電極材料を、導電性の担体(集電体)に担持して対極を製造できる。集電体、結着剤及び導電剤としては上記負極に用いたのと同様のものを使用できる。集電体をアルミニウム製とすると、電極を軽量化できるため、好適である。
【0119】
正極材料の厚さ(塗布層の片面の厚さ)は、好ましくは、20〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。
【0120】
正極と負極の間にはセパレータが配置されている。セパレータとしては、例えば、後述する電解液を吸収保持するガラス繊維製セパレータ、ポリマーからなる多孔性シートおよび不織布を挙げることができる。多孔性シートは、例えば、微多孔質のポリマーで構成される。このような多孔性シートを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。特にポリオレフィン系微多孔質セパレータおよびガラス繊維製セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質があり、電解液との反応性を低く抑えることができることから好ましい。多孔性シートからなるセパレータの厚みは限定されないが、車両のモータ駆動用二次電池の用途においては、単層又は多層で全体の厚み4〜60μmであることが好ましい。また、多孔性シートからなるセパレータの微細孔径は、最大で10μm以下(通常、10〜100nm程度)、空孔率は20〜80%であることが好ましい。
【0121】
不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン(登録商標)、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大する場合がある。
【0122】
電解液7は、エーテル結合(R−O−R’)を有する有機化合物であるエーテルとアルカリ金属塩(MX)とが錯体を形成しているイオン液体と、前記イオン液体と混和すると共にアルカリ金属と化学反応しないフッ素系溶媒と、を含み、エーテル中のエーテル酸素を[O]、アルカリ金属をMとしたとき、[O]/Mのモル比が、8未満である。
【0123】
電解液に用いるエーテルは、一種が単独で使用されても、二種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0124】
ここで、エーテル中のエーテル酸素を[O]としたとき、分子中に[O]を1つ有するエーテルは、(式7)で表される。[O]を1つ有するエーテルは、具体的には、例えばテトラヒドロフランが例示される。
【0125】
−O−R (式7)
【0126】
ここで、R及びRは、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかであり、環を形成してもよい。
【0127】
分子中に[O]を2つ以上有するエーテルは、(式8)で表される。[O]を2つ以上有するエーテルは、具体的には、例えばグライムや、1、3-ジオキソラン、1、4-ジオキサンが例示される。
【0128】
−(OCHR−CH)x−OR (式8)
【0129】
ここで、R、Rは、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかであり、環を形成してもよく、RとRは同一であっても異なっていてもよく、RはH又はCHであり、xの繰り返しごとに異なっていてもよく、xは1〜10である。
【0130】
式8中のxは、エチレンオキシド単位の繰り返し数を表す。xが1〜10であるグライムを使用すると、電解液の熱安定性、イオン伝導性、電気化学的安定性をより向上でき、高電圧に耐え得る電解液となる。難燃性を向上させる点から、グライムにおけるxは1〜5が好ましく、より好ましくは2〜5、最も好ましくは3または4である。
【0131】
上記式7及び式8中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、任意の位置がフッ素で置換されていてもよい。アルキル基の炭素数が9を超えると、エーテルの極性が弱くなるため、アルカリ金属塩の溶解性が低下する傾向がある。そのため、アルキル基の炭素数は少ない方が好ましく、好ましくはメチル基およびエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0132】
ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基としては、特に制限はないが、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4−ヨードフェニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基としては、特に制限はないが、2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、4−ブロモシクロヘキシル基、2,4−ジブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、3−ヨードシクロヘキシル基、4−ヨードシクロヘキシル基、2,4−ジヨードシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0133】
上記したアルカリ金属塩はMXで表され、Mはアルカリ金属、Xは対の陰イオンとなる物質である。上記アルカリ金属塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合物の形態で使用してもよい。
【0134】
Mとしては特に制限はなく、通常の電池に支持塩や活物質として使用されているアルカリ金属がいずれも使用可能である。具体的には、Li、Na、K、RbおよびCsが挙げられる。より好ましくはLi、NaおよびKであり、汎用性の点から最も好ましくはLiである。
【0135】
Xとしては、特に制限はないが、Cl、Br、I、BF、PF、CFSO、ClO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、N(CFSO、N(CFCFSO、PF(C、N(FSO、N(FSO)(CFSO)、N(FSO)(CFCFSO)、 N(CFSO)(CFCFSO)、N(C)、N(C)、N(CN)、N(CFSO)(CFCO)、C(CFSO、RFBF(但し、RF=n-C2m+1、m=1〜4の自然数、nはノルマル)およびRBF(但し、R=n−C2p+1、p=1〜5の自然数、nはノルマル)からなる群から選ばれる少なくとも一種であると好ましい。グライムに対する溶解性や、錯構造の形成しやすさの点から、より好ましくはN(CFSO、N(FSO、およびN(CFCFSOである。
【0136】
すでに説明したように、電解液中のエーテルとアルカリ金属塩の比を規定すると、負極における副反応(溶媒の分解や、グラファイト等の炭素の結晶構造の破壊)が抑制され、炭素を有する負極を用いても、大きな放電容量が得られる。
【0137】
([O]/アルカリ金属塩)が所定範囲を超えると、副反応を抑制できず、上述のように放電容量又はクーロン効率が低下する。これは、アルカリ金属塩に対してエーテルが相対的に多くなり過ぎ、アルカリ金属塩と錯体を形成しないで遊離したエーテルが増え、充電時に負極上でエーテルが分解したり、負極の結晶構造の不可逆的な破壊が起きたりするためである
【0138】
溶媒希釈電解液中のアルカリ金属塩の濃度が、0.5〜3.5 mol/Lの範囲であれば、電解液の粘度は低くなり、イオン伝導性は高くなるので、電池の内部抵抗を低減できる。
【0139】
上記アルカリ金属塩の濃度が0.5 mol/L未満の場合には、イオン伝導率が低下し、上述した効果が生じない可能性がある。一方、アルカリ金属塩の濃度が3.5 mol/Lを超えても、電解液の粘度が高くなり、イオン伝導率の低下や電極反応速度の低下などを引き起こす可能性がある。
【0140】
電解液をゲル状のゲル電解質としてもよい。ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、電解液が注入されてなる構成を有する。電解液は、上記の本発明の電解液を使用する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VDF−HEP)の共重合体、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム金属塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0142】
本発明に係るアルカリ金属/硫黄二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して離間して配置し、セパレータ内に電解液を含ませてセルを構成しているが、このセルを複数個積層又は巻回してケースに収容した構造でもよい。正極及び負極の集電体は、それぞれケース外部に引き出され、タブ(端子)に電気的に接続される。
【0143】
以上の説明のように、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせ、及び応用が可能である。
【符号の説明】
【0144】
2・・・正極(2a:活物質、2b:集電体)
4・・・負極(4a:活物質、4b:集電体)
6・・・セパレータ
7・・・電解液
10・・・ガスケット
14・・・スプリング
20・・・コインセルケース
22・・・蓋
50・・・二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12