(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケース本体に回転可能に軸支された入出力軸の回転を内サイクロイドの原理に従い、偏心カムに対して直交配置された複数のピストン組の往復運動に変換されるロータリ式シリンダ装置であって、
前記入出力軸と平行に配置された複数のガイド軸が、前記偏心カムに軸方向に位置決めされて組み付けられた第一,第二ピストン組を有するピストンユニットを収容する前記ケース本体に保持されており、
各ガイド軸には、第一ピストン本体の両側面に各々当接して往復動による側圧のみを受ける第一ガイド軸受と第二ピストン本体の両側面に各々当接して往復動による側圧のみを受ける第二ガイド軸受とが軸方向に離間させて同軸に組み付けられていることを特徴とするロータリ式シリンダ装置。
前記各ガイド軸には、径方向外側に突起部が各々突設されており、該突起部を含む軸部が前記ケース本体に設けられた軸孔に嵌め込まれて回り止めされている請求項1記載のロータリ式シリンダ装置。
前記各ガイド軸は、前記ケース本体内で前記第一ピストン本体と前記第二ピストン本体が交差するコーナー部に両軸端部を保持され、前記第一ガイド軸受が前記第一ピストン本体の両側部に当接し前記第二ガイド軸受が前記第二ピストン本体の両側部に当接する位置に各々組み付けられている請求項1又は請求項2記載のロータリ式シリンダ装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2のロータリ式シリンダ装置は、偏心カムに直交して組み付けられたピストン組の直線往復運動をピストン本体の移動方向両側に設けられたガイド軸受若しくはピストン本体の長手方向に設けられたガイド孔内に設けられたガイド軸受でガイドすることで、ピストンヘッド部とシリンダとの摺動抵抗を軽減するようになっている。
【0007】
しかしながら、自宅や病院等に据え置きの装置においては上記構成で足りるが、利用者のQOL(Quality of life)を向上させるため、可搬性を有する酸素濃縮装置としては、ガイド軸受をピストン本体の移動方向両側に合計8カ所設ける構成(特許文献2:
図4参照)は、ガイド軸受の本数が多く、ガイド軸受をピストン本体の長手方向に設けられたガイド孔内に設ける構成(特許文献2:
図10参照)は、ピストン本体径が大型化するため、いずれも設置面積が増えて、小型化のニーズに応えられないという実情があった。特に、小型化を図って従来のポンプ性能を維持するためには駆動源である小型モータをより高速回転させて小径のピストン組を直線往復移動させる必要があるが、ガイド軸受を省スペースに組み付けることができなかった。
また、各ガイド軸受はケース本体に対して片持ち状に支持されているため、ピストン本体の往復動によりガイド軸の耐久性が低下するおそれもあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に述べるいくつかの実施形態に適用される開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ピストンユニットのピストン本体を長手方向に短くして設置面積を減らし、ガイド軸受も必要最小限の配置で部品点数を省略して小型化を促進しかつ耐久性を向上させたロータリ式シリンダ装置を提供することにある。
【0009】
以下に述べるいくつかの実施形態に関する開示は、少なくとも次の構成を備える。
ケース本体に回転可能に軸支された入出力軸の回転を内サイクロイドの原理に従い、偏心カムに対して直交配置された複数のピストン組の往復運動に変換されるロータリ式シリンダ装置であって、前記入出力軸と平行に配置された複数のガイド軸が、前記偏心カムに
軸方向に位置決めされて組み付けられた第一,第二ピストン組を有するピストンユニットを収容する前記ケース本体に保持されており、各ガイド軸には、第一ピストン本体の
両側面に各々当接して往復動による側圧
のみを受ける第一ガイド軸受と第二ピストン本体の
両側面に各々当接して往復動による側圧
のみを受ける第二ガイド軸受とが軸方向に離間させて同軸に組み付けられていることを特徴とする。
【0010】
このように、入出力軸と平行に配置された複数のガイド軸が、第一ピストン本体の
両側面に各々当接して往復動による側圧
のみを受ける第一ガイド軸受と第二ピストン本体の
両側面に各々当接して往復動による側圧
のみを受ける第二ガイド軸受とが軸方向に離間させて同軸配置でケース本体に組み付けられているので、ピストンユニットを収容するケース本体の設置面積を大幅に縮小することができる。
よって、ピストンユニットに組み付けられる各ピストン本体を長手方向に短くできるので小型化を図り、複数のガイド軸受も第一ピストン本体と第二ピストン本体の交差位置に4箇所配置で足りるので、部品点数を省略して小型化を促進することができる。
【0011】
前記各ガイド軸には、径方向外側に突起部が各々突設されており、該突起部を含む軸部が前記ケース本体に設けられた軸孔に嵌め込まれて回り止めされていることが望ましい。
これにより、突起部を含む軸部がケース本体の軸孔に嵌め込まれて回り止めされるので、ガイド軸とケース本体との摩耗を防いでガイド軸が振動することがなくなり、耐久性を高めることができる。
【0012】
前記各ガイド軸は、前記ケース本体内で前記第一ピストン本体と前記第二ピストン本体が交差するコーナー部に両軸端部を保持され、前記第一ガイド軸受が前記第一ピストン本体の両側部に当接し前記第二ガイド軸受が前記第二ピストン本体の両側部に当接する位置に各々組み付けられていることが好ましい。
これにより、必要最小限のガイド軸及びガイド軸受を第一ピストン本体と第二ピストン本体が交差するコーナー部に配置すれば足りるので、小型化に寄与できる。また、ガイド軸はケース本体に両軸端部を保持されているので、ガイド軸の振れは抑えられるので、低振動、低騒音で耐久性を高めることもできる。
【発明の効果】
【0013】
上述したロータリ式シリンダ装置を用いれば、ピストンユニットに組み付けられる各ピストン本体を長手方向に短くして設置面積を減らすことができ、ガイド軸受も必要最小限の配置で部品点数を省略して小型化を促進しかつ耐久性を向上させることができる。また、高速回転駆動を行っても、摩擦損失が少なく、省エネルギー化を実現した小型のロータリ式シリンダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための一実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。先ず、
図1乃至
図13を参照して一例として流体ポンプに用いられるロータリ式シリンダ装置を中心として説明する。ロータリ式シリンダ装置は、シリンダに対するピストンの直線往復運動と入出力軸の回転運動とが相互に変換されて入出力される装置を想定している。
【0016】
図1において、第一ケース体1と第二ケース体2とで構成されるケース本体3に入出力軸が各々回転可能に軸支されている。入出力軸は、第一入出力軸4aと第二入出力軸4bに分割されて設けられている(
図4参照)。第一ケース体1と第二ケース体2とは、後述するように固定ねじ3a(
図11参照)をねじ孔にねじ嵌合させて一体に組み付けられる。第二入出力軸4bは、端面に凹部4cが設けられており(
図4参照)、図示しないモータ軸と連結されてダイレクトドライブが可能になっている。第一入出力軸4aと第二入出力軸4bの軸端は、第一ケース体1及び第二ケース体2の端面に設けられた貫通孔より各々露出して支持されている。
【0017】
円筒状のシリンダ5は、ケース本体3の4側面に対向配置されている。本実施形態ではケース本体3の各側面に第一ケース体1と第二ケース体2に挟み込まれて保持されている。また、ケース本体3の4側面に設けられるシリンダ5の開口は、シリンダヘッド部6及びヘッドカバー7により各々閉止されている。各シリンダヘッド部6は、ヘッドカバー7と共にケース本体3(第一ケース体1及び第二ケース体2)の側面に対して固定ねじ7aでねじ止め固定されている(
図4参照)。
【0018】
図2に示すように、第一ケース体1の端面(
図1上面)には、シール材8を介して第一端面カバー1aが固定ねじ1bによりねじ止め固定されている。また、第二ケース体2の端面(
図1下面)には、シール材8を介して第二端面カバー2aが固定ねじ2bによりねじ止め固定されている。第一ケース体1の端面上には、取付板9が固定ねじ10(
図11参照)によりねじ止め固定されている。
【0019】
図2に示すように、第二ケース体2には、第一軸受2cを介して第一入出力軸4aが回転可能に軸支されている。第一ケース体1には、第一軸受1cを介して第二入出力軸4bが回転可能に軸支されている。第一入出力軸4aは第一バランスウェイト11aと一体に組み付けられている。また、第二入出力軸4bは第二バランスウェイト11bと一体に組付けられている。第一,第二バランスウェイト11a,11bは、後述する第一クランク軸12及びピストンユニットPを含む入出力軸(第一入出力軸4a,第二入出力軸4b)を中心とした回転部品間の質量バランス(静バランス)をとるために設けられている。
【0020】
図2において、第一クランク軸12は、入出力軸の軸心に対して偏心して設けられている。具体的には第一クランク軸12の一端(
図2下端)は、第一バランスウェイト11aに嵌め込まれてピン12aを挿入された状態で固定ねじ12bにより一体にねじ止め固定される。同様に第一クランク軸12の他端(
図2上端)は、第二バランスウェイト11bに嵌め込まれてピン12cを挿入された状態で固定ねじ12dにより一体にねじ止め固定される。
【0021】
図2に示すように第一クランク軸12を中心に相対回転可能な筒状の偏心カム13、該偏心カム13に対して第一ピストン組14及び第二ピストン組15(以下、これらを「ピストンユニットP」という)が相対回転可能に組み付けられる。尚、ピストン組とは、ピストン単体のピストンヘッド部にシールカップ及びシールカップ押さえ部材やピストンリングなどのシール材が一体に組み付けられたものを言う。以下、具体的に説明する。
【0022】
また、偏心カム13は中心に筒孔13aが形成された中空筒状に形成されており、第一クランク軸12の軸心に対して偏心した第二クランク軸16a,16b(
図12参照)を有する。本実施形態では、第一ピストン組14及び第二ピストン組15が互いに交差配置されているため、第二クランク軸16a,16bは、第一クランク軸12を中心として180度位相がずれた位置に各々存在する。偏心カム13は、例えばステンレススチール系の金属材が用いられ、MIM(メタルインジェクションモールド)により一体成形される。
【0023】
上述したピストンユニットPにおいて、入出力軸と第一クランク軸12の軸心間を連結する部位(第一バランスウェイト11a、第二バランスウェイト11b)が第一クランクアームとなる。また、第一クランク軸12と第二クランク軸16a,16bの軸心間を連結する部位が第二クランクアームとなる(
図12参照)。
【0024】
図2において、偏心カム13には回転中心となる第一クランク軸12が挿通する筒孔13aに対して偏心した筒体13bが軸心方向両側に各々連続して形成されている。筒体13bの軸心は、第二クランク軸16a,16b(
図12参照)と一致するようになっている。筒孔13aには両側から軸受ホルダ17a,17bが圧入されるか或いは筒孔壁に接着されて組み付けられる。軸受ホルダ17a,17bは、偏心カム13の軸方向端面に突き当てて組み付けられる。一対の軸受ホルダ17a,17bには、少なくとも筒孔13aより大径の第二軸受18a,18bを各々保持可能な軸受保持部17c,17dが形成されている。これにより、耐荷重の大きな軸受を組み付けることができるため第二軸受18a,18bの耐久性を向上させることができる。
【0025】
軸受ホルダ17a,17bの軸受保持部17c,17dに組み付けられた第二軸受18a,18bは、偏心カム13を第一クランク軸12に対して相対的に回転可能に支持する。第一クランク軸12は、偏心カム13の相対回転の中心となる。
また、筒孔13aの軸心に対して偏心して長手方向両側に形成された一対の筒体13bの外周には、第三軸受19a,19bが各々組み付けられている。第一,第二ピストン組14,15は、互いに交差したまま第三軸受19a,19bを介して偏心カム13に対して相対的に回転可能に組み付けられる。
【0026】
ここで、入出力軸(第一入出力軸4a,第二入出力軸4b)を中心とする第一クランク軸12、第二クランク軸16a,16bの回転運動と複数のピストン組の直線往復運動(内サイクロイド運動)の原理の概要について
図12A〜
図12Dを参照して説明する。
図12A〜
図12Dは、入出力軸の回転にしたがって第一クランク軸12が中心O(第一入出力軸4a,第二入出力軸4b)の周りを反時計回り方向に90°ずつ回転した状態を模式的に示したものである。入出力軸の回転により第一クランク軸12が中心O(第一入出力軸4a,第二入出力軸4b)の周りを回転すると、第二クランク軸16aは仮想円20の転がり円21の直径R1上を往復移動し、第二クランク軸16bは転がり円21の直径R2上を往復移動する。
【0027】
即ち、第一入出力軸4a及び第二入出力軸4bの軸心(中心O)を中心とした半径rの反時計回り方向の回転軌道22に沿った第一クランク軸12及び偏心カム13(
図2参照)の回転運動に伴い、第二クランク軸16a,16bを軸心に有する偏心カム13と連繋するピストン組のうち、第一ピストン組14が第三軸受19a(
図2参照)を介して相対的に回転しながら半径2rの転がり円21(軸心Oを中心とする同心円)の直径R1上で往復動を繰り返し、第二ピストン組15が第三軸受19b(
図2参照)を介して相対的に回転しながら半径2rの転がり円21の直径R2上で往復運動を繰り返すことになる。実際の装置では、偏心カム13は第一クランク軸12を中心に第二軸受18a,18bを介して相対回転し、第一ピストン組14及び第二ピストン組15は第三軸受19a,19bを介して相対回転しながら直交配置されたシリンダ5内を往復運動する。
【0028】
以上の構成により、入出力軸の軸心(中心O)と第一クランク軸12を結ぶ第一クランクアームの回転半径をr、第一クランク軸12と第二クランク軸16a,16bを結ぶ第二クランクアームの長さが筒体13bの回転半径rとなるように設定することで、第一クランク軸12を中心として偏心カム13及び第一,第二ピストン組14,15(ピストンユニットP)を軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる(
図7参照)。
【0029】
また、
図2において、第一,第二ピストン本体14a,15aの長手方向両端部には、第一ピストンヘッド部14b,第二ピストンヘッド部15b(
図8参照)が形成されている。第一ピストンヘッド部14b,第二ピストンヘッド部15b(
図8参照)には、リング状のシールカップ14c,15c(
図7参照)、シールカップ押さえ部材14d,15d(
図7参照)が各々固定ねじ23により組み付けられている。シールカップ14c,15cは、オイルフリーのシール材(例えばPEEK(ポリエーテエーテルケトン)樹脂材等)が用いられる。
【0030】
また、
図2おいて、ケース本体3(第一ケース1体及び第二ケース体2)の側面部(4面)に設けられた開口部には、シリンダ5が各々組み付けられている。第一ピストンヘッド部14b,第二ピストンヘッド部15b(
図8参照)は、シールカップ14c,15c(
図7参照)によって、各シリンダ5の内壁面5aとのシール性を保ちながら摺動するようになっている。シールカップ14c,15cの外周縁部にシリンダ5の内周面との間に折り曲げられている。シールカップ14c,15cは、シールカップ押さえ板14d,15dを重ね合わせて固定ねじ23(
図7参照)を第一ピストンヘッド部14b,第二ピストンヘッド部15b(
図8参照)にねじ止め固定して組み付けられる。
【0031】
また、
図3Aにおいて、第二ケース体2の各コーナー部2dには、固定ねじ3a(
図11参照)をねじ篏合するねじ孔2eが4か所に設けられている。また、第二ケース体2の内底部2fには、筒状のボス部2gが、各ねじ孔2eより径方向内側に4か所に設けられている。
図4において、第一ケース体1の天面部におけるコーナー部1dのうち一対の対角位置には固定ねじ3a(
図11参照)が挿入される挿入孔1eが穿孔され、一対の対角位置には後述する取付板9を固定するねじ孔1gが設けられている(
図1参照)。また、
図3Bにおいて、第一ケース体1の対角に設けられた挿入孔1e,ねじ孔1gより径方向内側の内底部1hには、上記第二ケース体2のボス部2gに対向して筒状のボス部1iが4か所に設けられている。第一ケース体1及び第二ケース体2の対向するボス孔1j,2hに後述するガイド軸24の軸端部が各々嵌め込まれて支持され、ボス孔1jに突起部24aが嵌め込まれて回り止めされる。ボス部1iより径方向内側には第一端面カバー1a(
図1参照)を固定ねじ1bによりねじ止め固定するためのねじ孔1kが複数箇所に設けられている。また、
図4において、第一ケース体1の側面には流体の通路孔1f、第二ケース体2の側面には流体の通路孔2iが各々複数箇所に形成されている。(尚、シリンダ装置への流体の入口及び出口は、流路が任意に設置することができるので図示を省略した。)
【0032】
図6において、第二ケース体2に設けられた各ボス部2gのボス孔2h(
図4参照)には、入出力軸(第一入出力軸4a、第二入出力軸4b)と平行に配置されたガイド軸24が各々嵌め込まれている。
図7及び
図8に示すように、各ガイド軸24には、第一ピストン本体14aの側圧を受ける第一ガイド軸受25と第二ピストン本体15aの側圧を受ける第二ガイド軸受26とが軸方向に離間させて同軸に組み付けられている(
図8参照)。
各ガイド軸受24には、径方向外側に突起部24aが各々突設されている。該突起部24aが
図3Bに示す第一ケース体1のボス孔1jに嵌め込まれて回り止めされる。これにより、突起部24aがケース本体3により回り止めされるので、ガイド軸24が振動することがなく、ガイド軸24とケース本体3との摩耗も防ぐことができる。尚、突起部24aは、第二ケース体2のボス孔2h(
図4参照)に嵌め込まれて回り止めされていてもよい。
【0033】
また、
図3に示すように、各ガイド軸24は、ケース本体3内で第一ピストン本体14aと第二ピストン本体15aが交差するコーナー部に両軸端部を保持され、第一ガイド軸受25が第一ピストン本体14aの両側部に当接し、第二ガイド軸受26が第二ピストン本体26の両側部に各々当接して組み付けられる(
図4参照)。
これにより、必要最小限のガイド軸24及びガイド軸受25,26を第一ピストン本体14aと第二ピストン本体15aが交差するコーナー部に配置すれば足りるので、小型化に寄与できる。また、ガイド軸24はケース本体3(第一ケース体1及び第二ケース体2)に両軸端部を保持されているので、第一ピストン本体14a及び第二ピストン本体15aの往復動に伴うガイド軸24の振れは抑えられるので、低振動、低騒音で耐久性を高めることもできる。
【0034】
以上説明したように、入出力軸(第一入出力軸4a、第二入出力軸4b)と平行に配置された複数のガイド軸24が、第一ピストン本体14aの側圧を受ける第一ガイド軸受25と第二ピストン本体15aの側圧を受ける第二ガイド軸受26とが軸方向に離間させて同軸配置でケース本体3に組み付けられているので、第一ピストン組14及び第二ピストン組15の往復動をガイドする軸受がガイド軸24に集約して組み付けられ、設置面積を最小化することができる。
【0035】
具体的には、公知例である
図13Aに示すように一対のガイド軸24及びガイド軸受25,26を第一ピストン本体14aと第二ピストン本体15aが交差するケース本体3のコーナー部に対応する位置に各々設け、一方のガイド軸24には第一ピストン本体14a用の第一ガイド軸受25を設け、他方のガイド軸24には第二ピストン本体15a用の第二ガイド軸受26を設けた場合のケース本体3の設置面積をS1とし、本実施形態のケース本体3の設置面積をS2(二点鎖線部分)とすると、S1/S2=1.45となるため、概ね30%を超える小型化が可能となる。
【0036】
また、公知例である
図13Bに示すようにガイド軸24を第一ピストン本体14aの長手方向に2か所に設けた長孔14fに挿通し、各長孔14f内に第一ガイド軸受25を各々設け、ガイド軸24を第二ピストン本体15aの長手方向に2か所に設けた長孔15fに挿通し、各長孔15f内に第二ガイド軸受26を各々設けた場合のケース本体3の設置面積をS1´とし本実施形態のケース本体3の設置面積をS2(二点鎖線部分)とすると、S1´/S2=1.8となるため、概ね45%を超える小型化が可能となる。
【0037】
よって、いずれの場合にも、第一,第二ピストン本体14a,15aを長手方向に短くできるので設置面積を減らすことができ、第一,第二ガイド軸受25,26も第一ピストン本体14aと第二ピストン本体15aの交差位置に4箇所配置で足り、部品点数を省略して小型化を促進することができる。
【0038】
図11において、ロータリ式シリンダ装置の組立構成の一例を示す。
ピストンユニットPを組み立てる。偏心カム13の筒体13bの外周に第三軸受19a,19bを介して第一ピストン組14、第二ピストン組15を交差して組み付け、筒孔13aに軸受ホルダ17a,17bを第二軸受18a,18bと共に組み付ける。
偏心カム13の筒孔13aには第一クランク軸12を嵌め込み、その両側軸端部に第一バランスウェイト11aと第一入出力軸4a、第二バランスウェイト11bと第二入出力軸4bを嵌め合わせる。そしてピン12a,12cを第一バランスウェイト11a,第二バランスウェイト11bを貫通し第一クランク軸12の軸端部に各々挿入してこれらを位置合わせする。この状態で、第一バランスウェイト11aに対してピン12aと固定ねじ12b、第二バランスウェイト11bに対してピン12cと固定ねじ12dとが各々直交するようにねじ篏合させて一体に組み付ける。
【0039】
第二ケース体2は、予め第二端面カバー2aが固定ねじ2bによりねじ止めされ、第一軸受2cが組み付けられている(
図2参照)。ピストンユニットPは、第二ケース体2に保持された第一軸受2cに第一入出力軸4aを嵌め込んで組み付けられる。また、第二ケース体2の内底部2fに4箇所に形成されたのボス部2gに(
図4参照)、第一,第二ガイド軸受25,26が所定間隔で同軸に組み付けられたガイド軸24が各々嵌め込まれる。これにより、第一ガイド軸受25は第一ピストン本体14aの両側面に当接し(
図10参照)、第二ガイド軸受26は第二ピストン本体15aの両側面に当接して(
図9参照)、第一ピストン組14、第二ピストン組15の往復動による側圧を受けるようになる。
【0040】
また、第二ケース体2の側面部には、シリンダ5(
図5参照)が第一ピストンヘッド部14b及び第二ピストンヘッド部15bを挿入して4箇所に組み付けられる。各シリンダ5を挟み込むように第一ケース体1を重ね合わせ、第二入出力軸4bを第一軸受1cにより回転可能に軸支する。第一ケース体1の天面部に対角位置に設けられた挿入孔1eより固定ねじ3aを挿入して第二ケース体2の対向する対角位置に設けられたねじ孔2eにねじ篏合させてケース体3が一体に組み立てられる。
各シリンダ5には、シール材27を介してシリンダヘッド部6、シール材28を介してヘッドカバー7を重ね合わせて、固定ねじ7aによって、ケース体3の各側面に組み付けられる。シリンダヘッド部6には、各シリンダ室から流路への流体の出入りを切り替える弁体6aが組み付けられている。
【0041】
第一ケース体1の天面部には、シール材8を介して第一端面カバー1aを重ね合わせ、固定ねじ1bによりねじ止め固定する。また、第一ケース体1には、取付板9が固定ねじ10を挿入孔9aに挿入して第一ケース体1の対角位置に設けられたねじ孔1gにねじ止め固定され、ロータリ式シリンダ装置が組み立てられる。
【0042】
上述のように組み立てられたロータリ式シリンダ装置は、第一,第二ピストン組14,15の第二クランク軸16a,16bを中心とした第一の静バランス、ピストンユニットPの第一クランク軸12を中心とする第二の静バランス及び第一クランク軸12及びピストンユニットPの入出力軸を中心とする第三の静バランスが第一,第二バランスウェイト11a,11bによりバランス取りされて組み立てられている。
【0043】
これにより、入出力軸を中心とする第一クランク軸12の回転運動と、第一クランク軸12を中心とする偏心カム13の相対回転運動により、筒体13bに組み付けられた第一,第二ピストン組14,15が入出力軸を中心とする第二クランク軸16a,16bの半径2rの転がり円21(
図12(a)参照)の径方向に沿って直線往復運動を行なう際に、回転による振動を抑えて静音化を図ることができ、入出力軸を中心とした回転による振動を低減することで機械的な損失が少なくエネルギー変換効率を高めることができる。
【0044】
図14は、1回転あたり吐出量50cc圧力150kPaのコンプレッサについて仕事量(入力)と回転数との関係を示したグラフ図の一例である。グラフ線Aは、従来の入出力軸の静バランス取りしているレシプロ駆動方式のコンプレッサのデータを示す。グラフ線Bは、本実施形態のロータリ駆動方式のコンプレッサのデータを示す。グラフ線Cは、レシプロ駆動方式のピストン及びコンロッドの往復動による機械的損失の大きさを示す。
【0045】
このグラフ図を参照すると、回転数が1500rpm以下では、グラフ線A及びグラフ線Bに示すように仕事量に差異は目立たないが、モータ回転数が3000rpmを超える3200rpmで回転させた場合、グラフ線Aではおよそ267Wの入力を要するのに対してグラフ線Bではおよそ179Wの入力を要し、88W程度(
図13の矢印部分)入力が少なくて済む。よって、本実施形態のロータリ駆動方式を採用すれば33%程度の省エネルギー化を実現することができる。
また、3000rpmを超える高速回転を行うと、グラフ線Cに示すようにレシプロ駆動では、機械的な損失が増えるため、仕事量の無駄が増えることがわかる。
【0046】
以上説明したように、第一,第二ピストン本体14a,15aを長手方向に短くできるので設置面積を大幅の減らすことができ、第一,第二ガイド軸受25,26も第一ピストン本体14aと第二ピストン本体15aの交差位置に4箇所配置で足りるので、部品点数を省略して小型化を促進することができる。
入出力軸を中心とした回転による振動を低減(低振動)することで騒音も少なく(低騒音)、機械的な損失も少ないため、低発熱で低消費電力化を実現することができる。特に3000rpmを超える高速回転駆動する場合、従来のレシプロ駆動方式に比べて30%前後の省電力が期待できる。
特に駆動源として30%程度の小出力の安価な小型のモータを使用できるので低消費電力化を促進することができ、バッテリーも小型化することができるので長時間にわたって稼働させることができる。
したがって、圧縮機、真空ポンプ、流体回転機等の装置本体の小型軽量化を促進して、例えば酸素濃縮器においては可搬性を高めることができる。また、バッテリー容量が同一であれば、約30%程度の長時間使用が可能となる。
【0047】
尚、第一,第二ピストン本体14a,15aとその側圧を受ける第一,第二ガイド軸受25,26との隙間は構成部品の加工誤差や温度上昇による寸法変化を考慮して機械的な干渉が生じないように最小となるように設定される。
【課題】ピストンユニットのピストン本体を長手方向に短くして設置面積を減らし、ガイド軸受も必要最小限の配置で部品点数を省略して小型化を促進しかつ耐久性を向上させたロータリ式シリンダ装置を提供する。
【解決手段】入出力軸(第一入出力軸4a,第二入出力軸4b)と平行に配置された複数のガイド軸24が、第一,第二ピストン組14,15が往復動するシリンダ5を保持するケース本体3に組み付けられており、各ガイド軸24には、第一ピストン本体14aの側圧を受ける第一ガイド軸受25と第二ピストン本体15aの側圧を受ける第二ガイド軸受26とが軸方向に離間させて同軸に組み付けられている。