特許第6281859号(P6281859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281859
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/00 20090101AFI20180208BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20180208BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20180208BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20180208BHJP
【FI】
   H04W8/00 110
   H04W74/08
   H04W84/18
   H04W4/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-93751(P2013-93751)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-216898(P2014-216898A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】李 還幇
(72)【発明者】
【氏名】三浦 龍
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−215064(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/104483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期が確立されていない複数の無線端末間でグループを形成して無線通信を行う無線通信方法であって、前記グループは、コモンモードと、オペレーションモードとを実行することで形成され、
前記コモンモードは、
一の端末が予め定められた専用チャネルに対してクリアチャネルアセスメントを行うアセスメント工程と、
前記クリアチャネルアセスメントの結果、前記専用チャネルを利用可能である場合、前記一の端末が、グループの形成に必要な時刻情報を含むトリガーシグナルの送信回数をランダムに決定する回数決定工程と、
前記一の端末が、自機の時刻情報に基づき前記トリガーシグナルを、所定の間隔で前記回数、前記専用チャネルを用いてブロードキャストするブロードキャスト工程と、
前記トリガーシグナルの前記送信回数の送信完了時、前記一の端末が前記送信回数をリセットするリセット工程と、
を含み、
前記オペレーションモードは、
前記トリガーシグナルを受信した他の端末が、自機の時刻情報を前記トリガーシグナルに含まれる前記時刻情報に同期させ、前記トリガーシグナルの受信後に所定の時間間隔を空けた後に、さらにランダムに設定される第2時間間隔を空けて、前記グループへの参加リクエストを前記一の端末に、前記コモンモードで用いる前記専用チャネル以外の指定チャネルを用いて送信する参加リクエスト送信工程と、
前記参加リクエストを受信した前記一の端末が、前記参加リクエストを送信した前記他の端末のリストを作成し、前記リストを前記他の端末に、前記指定チャネルを用いて送信するリスト送信工程と、
前記リスト送信工程から所定時間が経過した場合、前記一の端末が、グループが確立されたことを示す情報を前記他の端末に送信する移行情報送信工程と、
含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記一の端末は、前記アセスメント工程、前記回数決定工程、前記ブロードキャスト工程および前記リセット工程を、上位層からの終了指示があるまで繰り返すことを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記参加リクエスト送信工程において前記参加リクエストを送信した前記他の端末であって、前記リストに含まれていない前記他の端末は、再度前記参加リクエスト送信工程を行い、再送された前記参加リクエストを受信した前記一の端末は、前記リストを、前記参加リクエストを再送した前記他の端末を加えて更新するとともに、更新された前記リストを、再度前記リスト送信工程を行い送信することを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記トリガーシグナルは、広告の種類に関する情報を包含可能であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記トリガーシグナルは、緊急情報を包含可能であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の端末間で非同期分散制御により行われる無線通信方法に関し、特に、多数の端末間のディスカバリに要する時間の短縮と、ディスカバリのスループットの向上とを実現することのできる無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークモデルの一例として、OSI(Open Systems Interconnection)の7層モデルが用いられている。その中のMAC(Media Access Control)層は、端末の無線チャネルへのアクセスや、端末の無線チャネルリソースの共用についての制御を行う役割を果たしている。こうしたMAC層を効率的に設計することは、無線通信ネットワークを形成する上で非常に重要なことである。
【0003】
MAC層は、IEEE802.11(非特許文献1参照)やIEEE802.15.4(非特許文献2参照)等に基づき規格化されているが、これらの規格の基本モデルでは、AP(Access Point)やコーディネータのような固定の中心制御機構が存在し、この中心制御機構によりMAC制御が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11TM−2007
【非特許文献2】IEEE Std 802.15.4TM−2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したMAC制御は、固定された中心制御機構の存在を前提としているため、端末間で自由にグループを形成し終結する非同期分散制御型の通信には適していない。
【0006】
一方、IEEE802.11sには、アドホックモードが定義されているため、中心制御機構を臨機的に選び、一部分散制御を図ることが可能となっている。
【0007】
しかし、こうしたアドホックモードを用いて多数の端末間でグループを形成し終結する場合でも、端末間のディスカバリには長時間を要するため、これを頻繁に行う場合に対応することは難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、端末間で自由にグループを形成、終結する非同期分散制御による無線通信方法であって、多数の端末により複数個のグループを構成するときであっても、ディスカバリに要する時間を短縮し、ディスカバリのスループットを向上することのできる無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る無線通信方法は、同期が確立されていない複数の無線端末間でグループを形成して無線通信を行う無線通信方法であって、前記グループは、コモンモードと、オペレーションモードとを実行することで形成され、前記コモンモードは、一の端末が予め定められた専用チャネルに対してクリアチャネルアセスメントを行うアセスメント工程と、前記クリアチャネルアセスメントの結果、前記専用チャネルを利用可能である場合、前記一の端末が、グループの形成に必要な情報を含むトリガーシグナルの送信回数をランダムに決定する回数決定工程と、前記一の端末が、自機のクロックに基づき前記トリガーシグナルを、所定の間隔で前記回数、専用チャネルを用いてブロードキャストするブロードキャスト工程と、前記トリガーシグナルの前記送信回数の送信完了時、前記一の端末が前記送信回数をリセットするリセット工程と、を含み、前記オペレーションモードは、前記トリガーシグナルを受信した他の端末が、自機のクロックを前記トリガーシグナルに含まれる時刻情報に同期させ、前記トリガーシグナルの受信後に所定の時間間隔を空けた後に、さらにランダムに設定される第2時間間隔を空けて、前記グループへの参加リクエストを前記一の端末に、前記コモンモードで用いる前記専用チャネル以外の指定チャネルを用いて送信する参加リクエスト送信工程と、前記参加リクエストを受信した前記一の端末が、前記参加リクエストを送信した前記他の端末のリストを作成し、前記リストを前記他の端末に、前記指定チャネルを用いて送信するリスト送信工程と、前記リスト送信工程から所定時間が経過した場合、前記一の端末が、グループが確立されたことを示す情報を前記他の端末に送信する移行情報送信工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る無線通信方法は、第1発明に係る無線通信方法において、前記一の端末は、前記アセスメント工程、前記回数決定工程、前記ブロードキャスト工程および前記リセット工程を、上位層からの終了指示があるまで繰り返すことを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る無線通信方法は、第1または第2発明に係る無線通信方法において、前記参加リクエスト送信工程において前記参加リクエストを送信した前記他の端末であって、前記リストに含まれていない前記他の端末は、再度前記参加リクエスト送信工程を行い、再送された前記参加リクエストを受信した前記一の端末は、前記リストを、前記参加リクエストを再送した前記他の端末を加えて更新するとともに、更新された前記リストを、再度前記リスト送信工程を行い送信することを特徴とする。
【0013】
発明に係る無線通信方法は、第1乃至第の何れかの発明に係る無線通信方法において、前記トリガーシグナルは、広告の種類に関する情報を包含可能であることを特徴とする。
【0014】
発明に係る無線通信方法は、第1乃至第の何れかの発明に係る無線通信方法において、前記トリガーシグナルは、緊急情報を包含可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明によれば、完全分散制御方式で多数の端末により複数のグループを構成するときであっても、ディスカバリに要する時間を短縮するとともに、ディスカバリのスループットを向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る無線通信方法を適用した無線通信システムにおけるシステム構成を示す図である。
図2】本発明に係る無線通信方法のコモンモードの使用方法を示す図である。
図3図2のコモンモードの詳細を示す図である。
図4】グループ形成が行われる様子を示すタイミングチャートである。
図5】グループオペレーション時に用いられるスーパーフレームの構成を示す図である。
図6】グループオペレーションで用いるスーパーフレームとコモンモードで用いるTSの対応関係を示す図である。
図7図6において、コモンモードで合間にCCAが行われることによるTSとスーパーフレームの対応関係を示す図である。
図8】本発明に係る無線通信方法を広告の送受信に応用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態としての無線通信方法について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る無線通信方法を適用した無線通信システム1におけるシステム構成を示す図である。この無線通信システム1には、ピアアウェアコミュニケーション(Peer-aware Communication:PAC)を行うピアアゥエアデバイス(Peer-aware Device:PD)として、同一の機能を有する端末2、3A、3B、3C、3Dおよび3Eが含まれている。
【0019】
ここで、PACは、固定の基地局やアクセスポイントの存在を前提とせず、非同期の複数の端末同士が自律的かつ即席的に(アドホックに)ルーティングを行い、マルチホップ通信を行う通信方式であり、インフラや固定されたネットワークを必要としない通信方式である。
【0020】
図1に示す例では、端末2、3A、3B、3C、3Dおよび3Eのうち、端末2がネットワークグループの確立を行う親機(イニシエーション端末)である。そして、端末2は、自機の通信可能範囲A内にある他の端末3A、3B、3C、3Dおよび3Eに対して、自機が親機となるグループの形成をする旨の交信を行い、その結果、端末2、3A、3Bおよび3CからなるグループBが形成されている。
【0021】
本発明に係る無線通信方法では、PACを行うにあたり、コモンモードとオペレーションモード2つの通信モードが用いられている。
【0022】
コモンモードは、グループ形成時であって、通信可能な周辺端末のディスカバリの開始時に用いられるモードである。コモンモードによる通信は、専用のチャネルを介して行われる。また、コモンモードには、変調方式や、前方誤り訂正(FEC)、データレート等、所定の物理層パラメータが割り振られ、用いられている。
【0023】
オペレーションモードはグループ形成開始以降に用いられるモードである。オペレーションモードによる通信は、コモンモードで用いる専用チャネル以外のチャネルを介して行われる。また、オペレーションモードでは、異なる変調方式や、FEC、データレート等から選択された物理層パラメータが割り振られ、用いられている。
【0024】
図2は、このコモンモードの使用方法を示す図であり、図3は、図2のコモンモードの詳細を示す図である。
【0025】
コモンモードでは、イニシエーション端末になることを希望する端末が、クリアチャネルアセスメント(CCA)を行うとともに、CCAの結果チャネルが使用可能である場合にトリガーシグナル(TS)をブロードキャストする。図2および図3に示す例では、PD_x、PD_y、PD_zの3つのPDが、イニシエーションデバイスになることを希望し、CCAの実行と、TSのブロードキャストを行っている。
【0026】
CCAは、コモンモード用に割り当てられているチャネルが使用可能か否かを判定する動作である。
【0027】
TSは、イニシエーションデバイスになることを希望するPDによりブロードキャストされる、信号長が最長でTcoMAX sendである短い信号である。信号長TcoMAX sendは、予め全PDにおいて設定されている共通の信号長である。このTSは、全てのPDで共通の信号長が設定されていて、グループ形成後に当該グループを構成するPDにより用いられる時刻情報(クロック)、後述するオペレーションモードに関する情報およびグループの種類等に関する情報が含まれている。
【0028】
上述したCCAの実行およびTSのブロードキャストは、各PDがそれぞれの時刻情報に基づき行っている。
【0029】
まず、各PDは、CCAを実行し、コモンモード用のチャネルが使用可能であるか否かの判定を行う。このCCAは、各PDのクロックに従い行われる。
【0030】
CCAの結果、コモンモード用のチャネルが使用可能である場合、次に、PDは、ブロードキャストするTSのブロードキャスト回数(Nco send)をランダムに決定する。図3に示す例では、最初のCCAの後、PD_xは2回(Nco send(x)=2)、PD_yは1回(Nco send(y)=1)、PD_zは3回(Nco send(z)=3)、TSをブロードキャストしている。なお、このブロードキャスト回数の上限はNcoMAX sendで規定されていて、各PDはこの上限以下の回数となるよう、すなわち、1〜NcoMAX sendの範囲でブロードキャスト回数をランダムに決定する。
【0031】
ここで、TSのブロードキャストの最小の時間間隔は、TcoMIN durationにより表されている。全てのPDは、CCAとTSのブロードキャスト、またはTSと次のTSのブロードキャストとを、全てのPDで共通する時間間隔であって、少なくともTcoMIN durationだけ空けるようにして行う。
【0032】
次に、各PDは、ランダムに決定された回数、TSのブロードキャストを行った後、最後のブロードキャスト後に、引き続きTSをブロードキャストする場合は、再びCCAを行う。このとき、上記ランダムに決定されたTSのブロードキャスト回数がリセットされるとともに、TSのブロードキャスト回数が再びランダムに決定される。
【0033】
そして、各PDは、2度目のCCAからTcoMIN durationの時間間隔を空けて、再びランダムに決定された回数、TSのブロードキャストを行う。このときの各TSのブロードキャストの最小時間間隔も、TcoMIN durationとなっている。
【0034】
なお、上述したCCA、TSのブロードキャスト回数のランダムな決定、TSのブロードキャストおよびブロードキャスト回数のリセットは、上位層からの終了指示があるまで繰り返される。
【0035】
ところで、図3に示す例では、PD_yの1回目に行われるTSのブロードキャスト(TS(y)_1)と、PD_zの1回目に行われるTSのブロードキャスト(TS(z)_1)とが行われる時間帯が一部重複しているため、このままの時間間隔でTSのブロードキャストを繰り返してしまうと、以後も互いのTSのブロードキャストタイミングが重複するため混信が生じ、グループ形成を適切に行えない恐れがある。
【0036】
しかし、本発明に係る無線通信方法では、先にPD_yについてランダムに決定された回数(ここでは1回)のTSのブロードキャストTS(y)_1が終了し、再びCCAが行われる。これにより、当該CCA後に再開されるTSのブロードキャストのタイミングは、当初のブロードキャストに対してCCAに要する時間だけずれて行われることになる。
【0037】
こうしてTSのブロードキャストのタイミングがずれることにより、PD_zのTSのブロードキャストの時間帯と、2度目のCCA後のPD_yのTSのブロードキャストの時間帯との重複を解消することができる。
【0038】
すなわち、本発明においては、各PDについて、TSのブロードキャスト回数がランダムに決定されると共に、TSのブロードキャスト終了後にCCAが行われることで、各PDのTSがブロードキャストされる時間帯が重複した場合でもこれを効果的に解消することができる。
【0039】
次に、上述したコモンモードとオペレーションモードとによるグループ形成について説明する。図4は、グループ形成が行われる様子を示すタイミングチャートである。
【0040】
なお、図4に示すグループ形成は、上述した図1に示す端末2、3A、3Bおよび3Cにより行われる。端末2は、他の端末にグループ形成を呼びかけるとともに、グループ形成後には親機となるイニシエーティング端末として機能している。また、端末3A、3Bおよび3Cは、端末2が親機となるグループBへの加入を希望する加入端末として機能している。
【0041】
まず、イニシエーティング端末2は、コモンモードにより、他の端末にグループ形成を呼びかける情報であるインビテーションをTSの一部としてブロードキャストする(ステップS1)。このインビテーションには、その他にグループ形成後に当該グループで用いるクロック、グループで用いるオペレーションモードの情報、グループの種類(メールの送受信を行うグループ、オンラインゲームを行うグループ等)等の情報が含まれている。
【0042】
次に、ブロードキャストされたインビテーションは、図1に示すように、イニシエーション端末2の通信可能範囲A内にある端末3A、3B、3C、3Dおよび3Eにより受信される。そして、端末3A、3B、3C、3Dおよび3Eは、それぞれインビテーションの内容に基づき、自機がこのグループに参加するか否かの判定を行う。
【0043】
当該判定の結果、図4の例では、端末3A、3B、3Cがこのグループへの参加を希望し、端末3A、3B、3C(以後、加入端末3A、3B、3C)は、参加リクエストを上記指定されたオペレーションモードによりイニシエーティング端末2に送信する(ステップS2、S3、S4)。
【0044】
ここで、加入端末3A、3B、3Cからの参加リクエストの送信は、それぞれインビテーションの受信後、共通する所定の時間間隔(図5を用いて後述するTBとCFPに相当)を空けた後に、更にこの所定の時間間隔に続く時間帯(図5を用いて後述するCAPに相当)内においてランダムに決定される、それぞれ異なる時間間隔a、b、cを空けて行われる。これにより、加入端末3A、3B、3Cからの参加リクエストが混信することなく、イニシエーティング端末2により受信される。
【0045】
次に、加入端末3A、3B、3Cからの参加リクエストを受信したイニシエーティング端末2は、当該参加リクエストに基づきグループに参加する端末のリストを作成し、当該リストを、グループに関する各種情報と共に、指定オペレーションモードにより後述するTBの中でブロードキャストする(ステップS5)。
【0046】
イニシエーティング端末2からのリストを受信した加入端末3A、3B、3Cは、それぞれ自機が当該リストに含まれているか否かの確認を行う。そして、イニシエーティング端末2に参加リクエストを送信したにも関わらず当該リストに自機が含まれていない端末(図4の例では端末3A)は、イニシエーティング端末2に対して、参加リクエストの送信と同様、TBとCFPに相当する時間間隔を空けた後に、更にCAP内においてランダムに決定される時間間隔dを空けて、指定オペレーションモードにより再送リクエストを送信する(ステップS6)。
【0047】
再送リクエストを受信したイニシエーティング端末2は、当該再送リクエストに基づき上述したリストの修正を行い、修正後のリストをグループ情報とともに指定オペレーションモードを用いて後述するTBの中でブロードキャストする(ステップS7)。
【0048】
そして、イニシエーティング端末2は、再送リクエストの送受信のために設けられた、所定時間の経過後、グループオペレーションの開始を伝える情報、すなわち、グループが確立され、グループ内で情報の送受信を開始することを示す情報を、指定オペレーションモードにより後述するTBの中でブロードキャストする(ステップS8)。
【0049】
こうしてイニシエーティング端末2および端末3A、3B、3Cによりグループが形成され、グループオペレーションが開始される。
【0050】
次に、グループオペレーションについて説明する。グループオペレーションの方式は、本発明においては特に限られていないが、ここではテンポラリービーコン(TB)を用いる方式を例に説明を行う。
【0051】
グループ形成後、指定オペレーションモードにおいてグループオペレーションが行われる。このとき、イニシエーティング端末2は、暫定的なコーディネータ端末として機能する。
【0052】
TBは、上述したTSと同様の情報およびその他の各種情報を含み、かつ、TSよりも長い、グループ制御用の信号である。グループ内の他の端末3A、3B、3Cは、このTBを受信し、TBに含まれる情報を参照することで、同期を維持したり、グループ内で要求される各種機能を発揮したりすることができる。
【0053】
TBに含まれるTSと共通する情報以外の情報として、例えば、グループ形成後に新たにグループに加入した端末がある場合に用いられる、当該端末を加えて更新したリストに関する情報がある。この更新されたリストをTBの中でブロードキャストすることで、グループ内の端末は、新たに加入した端末とすみやかに通信可能な状態となる。さらに、TBに各加入デバイスへ割り当てる、通信するスロット等の情報が含まれている。
【0054】
また、こうしたTBを用いたオペレーションモードは、図5に示すように、IEEE802.15.4MAC(Media Access Control)のスーパーフレームに類似するものに基づいて行ってもよい。図5は、グループオペレーション時に用いられるスーパーフレームの構成を示す図である。
【0055】
スーパーフレームとは、無線通信端末が行う無線通信の時間帯と周波数帯を分割し、無線端末間の通信のタイミングと、通信のタイミングごとの周波数/周波数帯域が規定された通信テンプレートのことである。
【0056】
グループオペレーション時に用いられるスーパーフレームは、図5に示すように、先頭にTB用のタイム区間が設けられている。このTB用のタイム区間のうち、先頭にTSに相当するスロットがある。また、TB用のタイム区間に続き、特定の端末にスロットが割り当てられ通信を行うことのできるCFP(Contention Free Period)用の区間と、各端末が競争してスロットを獲得して通信を行うことのできるCAP(Contention Access Period)用の区間が設けられている。
【0057】
次に、スーパーフレームを用いてグループオペレーションが行われている最中に他のPDからの加入リクエストを受け付ける場合について説明する。図6は、グループオペレーションで用いるスーパーフレームとコモンモードで用いるTSの対応関係を示す図である。
【0058】
各端末は、グループオペレーションとコモンモードを、コモンモードでブロードキャストされたTSに含まれる時刻情報に基づいて同期をとる。
【0059】
このとき、イニシエーティング端末は、グループオペレーションを行うと同時にコモンモードにおけるTSの送信を継続する。
【0060】
一方、加入端末は、TSを受信し、TSに示されているグループへの加入を希望する場合には、グループオペレーションにおけるTBとCFPを合わせた時間間隔を一定の時間間隔として空けるとともに、さらにCAPの区間をバックオフ区間として、その中でランダムな時間間隔を空けて加入リクエストを送信する。
【0061】
次に、加入端末が加入リクエストの送信の合間にCCAを行う場合の処理について説明する。図7は、図6において、コモンモードで合間にCCAが行われることによるTSとスーパーフレームの対応関係を示す図である。
【0062】
各端末は、コモンモードでブロードキャストされたTSに含まれる時刻情報に基づいて同期をとる。このとき、最初のCCAから2回目以降のCCAまでの間は、TBとTSのブロードキャストのタイミングが一致している。
【0063】
しかし、図7に示すように、2回目のCCAが行われると、以後のTSのブロードキャストタイミングは、当該TSに要した時間だけ遅い時間にずれ込むことになる。
【0064】
こうした状況においても、コモンモードでブロードキャストされたTSに含まれる時刻情報を維持しつつ、コモンモードを用いたグループ形成を行えるようにする必要がある。
【0065】
そこで、各端末は、2回目以降のCCAが行われていない場合のTSのブロードキャスト時間T_startと、2回目以降のCCAが行われたため本来のタイミングからずれて行われたTSのブロードキャスト時間T_nowとを測定する。
【0066】
そして、T_nowとT_startとの差から、現在のT_nowがバックオフ区間、すなわちCAPにあるか否かの判定を行う。
【0067】
T_nowがCAP内にある場合には、加入端末は、TSの受信後から参加リクエストの送信までの間に設けられるランダムな時間間隔を、CAPの残りの時間に納まるように設けることで、上記クロックを維持することができる。
【0068】
一方、T_nowがCAP後の次のフレームのTBまたはCFP内に位置する場合には、加入端末は、当該次のフレームのCAP内で上記ランダムな時間間隔を設ける。
【0069】
なお、グループ形成後、暫定的なコーディネータ端末として機能しているPDは、自機の電池残量が所定の値以下になった場合や、他の端末がコーディネータ端末になった方がより効率的に通信を行える場合等には、コーディネータとしての機能を他のPDに譲ることが可能となっている。
【0070】
上述した実施形態に係る無線通信方法によると、ディスカバリの開始時に専用のチャネルを介してTSをブロードキャストするときにのみコモンモードを用いて行うことにより、ディスカバリに要する時間を短縮し、ディスカバリのスループットを向上することができる。
【0071】
また、TS送信後の処理はオペレーションモードで行うことにより、通信によるコモンモード占拠を最小限に留め、各端末のコモンモードへのアクセスの迅速性と公平性とを保つことができる。
【0072】
なお、本発明に係る無線通信方法は、例えば、ショッピングモールや商店街等において、広告に関する情報を送受信する場合に応用することができる。図8は、本発明に係る無線通信方法を広告の送受信に応用した例を示す図である。
【0073】
図8に示す例では、イニシエーション端末である広告発信端末2が、広告に関する情報、すなわち、広告のブロードキャストに用いられる指定オペレーションモード、クロック、広告の種類等の情報を、コモンモードによりTSを用いてブロードキャストする(ステップS11)。
【0074】
このTSを受信した各端末は、TSに含まれる広告の種類に関する情報に基づき、自機が受信すべき広告か否かの判断を行う。自機が受信すべき情報は、例えばユーザにより予め設定されていてもよい。
【0075】
そして、広告発信端末2と、広告発信端末2から発せられる広告を受信すべきと判断した端末(受信端末)3A、3Bは、TSに含まれていた指定オペレーションモードやクロックの情報に従い、その後に広告発信端末2から指定オペレーションモードにより指定チャネルにおいてブロードキャストされる広告の情報(ステップS12)を受信する。
【0076】
このように、本発明を広告の送受信に応用した場合でも、広告の配信を迅速に行うことができる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施形態の他、災害発生時や周辺地域における犯罪発生時、あるいは天候悪化時の防災用等に用いられる、緊急情報の送信に応用することもできる。
【0078】
この場合、上述したTSとして緊急情報を含めるとともに、このTSを、MAC層よりも上位の階層の要求に応じて、コモンモードで複数回連続してブロードキャストする。
【0079】
また、この場合に用いられるTSは、緊急情報の送受信以外に用いられる通常のTSの長さであるTcoMAX sendよりも長くしても良く、例えば数倍の長さにしても良い。
【0080】
さらに、この場合のTSのブロードキャストの間隔は、緊急情報の送受信以外に用いられる通常のTSのブロードキャスト間隔であるTcoMIN durationよりも短くしても良く、例えば数分の一の間隔にしても良い。
【0081】
このように、本発明を緊急情報の送信に応用した場合も、専用のチャネルを用いるコモンモードによるブロードキャストが行われることから、他のチャネルの使用状況に影響されることなく、緊急情報を迅速に発信することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 無線通信システム
2 イニシエーション端末
3A、3B、3C、3D、3E 端末
A イニシエーション端末の通信可能範囲
B グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8