(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
導電性高分子の中でも、ポリアニリンは、優れた導電性及び空気中での安定性を有し、安価であることから、電子デバイスへの積極的な応用が期待されている。その一方で、導電性高分子は、ポリアニリンも含めて、剛直な化学構造のため、不溶不融で加工し難いという欠点を有していた。
【0003】
これに対しては、近年、長鎖アルキル等の立体障害の大きい部位を有するプロトン酸ドーパントを用いることにより加工性が改善され、各種有機溶媒による分散液を作製することが可能となった(非特許文献1参照)。しかしながら、このような分散液を用いて成形されたフィルムは、スクラッチ特性や耐溶剤性に乏しいため、応用分野が限られるものであった。
そこで、このような課題を解決するために、導電性高分子に硬化性を付与することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スルホン基が主鎖骨格中に導入された自己ドープ型導電性高分子を塗布した基板を加熱して脱水反応させて、導電性高分子内に部分的な架橋構造を形成させることにより、硬化性を発現させる方法が提案されている。
【0005】
また、非特許文献2,3には、導電性高分子であるポリアニリンに、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を加える方法が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、ポリアニリンにラジカル重合性のビニルモノマーを加え、電子線照射によりラジカル重合を誘起させて架橋構造を形成させる方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法は、300℃前後の高温で加熱処理する必要があることから、使用できる材料が制限されるものであった。
また、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を添加する方法は、ポリアニリンと熱硬化性樹脂との相溶性が必ずしも良好ではなく、ポリアニリンを均一に分散制御することが難しい。そのため、所定の導電性を確保するためには厚い塗膜とする必要があり、透過率が低下する等の課題が生じていた。
さらに、特許文献2に記載された方法では、ポリアニリンと相溶性の良いビニルモノマーを用いることにより分散状態は良好となるものの、電子線を照射するための特殊な設備が必要とされる。
【0008】
したがって、より簡便な方法によって、導電性高分子に熱硬化性を付与し、かつ、導電性を低下させることなく、機械的強度を向上させることが求められていた。
【0009】
また、カチオン反応性基を有するモノマーと導電性高分子とプロトン酸ドーパントとの反応生成物であり、前記プロトン酸ドーパントが加熱されてカチオン重合開始剤として働くことにより、モノマーが重合して硬化したものであることを特徴とする熱硬化性導電性高分子組成物が本発明者等により提案されている(本出願と同時係属中の特願2013−138024を参照)。かかる熱硬化性導電性高分子組成物は、導電性高分子とモノマーとの分散状態が良好であり、重合・硬化反応の制御も容易であるという特性を有するものの、保存時にもわずかずつモノマーの反応が起こるため、保存安定性に乏しいという問題がある。また、高導電化を図るために導電性樹脂の添加量を増やすと、高分子組成物が高粘度化するとともに、硬化成分が少なくなることで成形性、硬化性が消失してしまうという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、導電性高分子の導電性と成形加工性、機械的強度を両立させる技術、特に導電性高分子の導電性を失うことなく、成形加工性と機械的特性を飛躍的に向上させることができる硬化性導電性高分子組成物及び導電性高分子複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討したところ、ラジカル反応性基を有する有機酸を用いると、当該有機酸は、導電性高分子と結合して導電性を付与できるドーパント、硬化剤及び分散剤としての役割を果たすことができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は
[
1](1)導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸、及びラジカル開始剤を含む混合物を調製する工程、
(2)前記混合物を加熱することにより、変形可能な固体とする工程、
(3)前記固体を光及び/又は熱にさらして、前記有機酸中のラジカル反応性基を重合させて硬化体を得る工程
を含
み、
前記導電性高分子がポリアニリン又はポリアニリン誘導体であり、
前記ラジカル反応性基を有する有機酸が2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、又はビニルスルホン酸である、
導電性高分子複合体の製造方法。
[
2](1)導電性高分子及びラジカル反応性基を有する有機酸を含む混合物を調製する工程、
(2)前記混合物を加熱することにより、変形可能な固体とする工程、
(3)前記固体を電子線にさらして、前記有機酸中のラジカル反応性基を重合させて硬化体を得る工程
を含
み、
前記導電性高分子がポリアニリン又はポリアニリン誘導体であり、
前記ラジカル反応性基を有する有機酸が2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、又はビニルスルホン酸である、
導電性高分子複合体の製造方法。
[3]前記ラジカル反応性基を有する有機酸が2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、又は2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートである、[1]又は[2]に記載の導電性高分子複合体の製造方法。
[4]前記工程(2)において、前記混合物を60〜180℃の温度で1〜60分加熱する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子複合体の製造方法。
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
導電性高分子に対してラジカル反応性基を有する有機酸を使用することにより、導電性高分子が複合体中に均一に溶解もしくは良好に分散した状態が容易に得られる。これにより、導電性高分子の凝集に伴う導電性の低下、制御の困難さが解決された硬化性導電性高分子組成物を提供することが可能となる。
また、組成物中に多量に添加されるドーパント自体が反応性を有し、硬化成分としてポリマーネットワークを形成することで、機械的な特性の大幅な向上が可能となる。
更に、ラジカル重合の反応を用いることで、導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸及び存在する場合はラジカル開始剤を含む組成物の反応を制御することが可能となり、組成物の保存安定性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の1つの実施態様は、導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸、及び存在する場合はラジカル開始剤を含む、硬化性導電性高分子組成物である。
【0018】
本発明においては、導電性高分子として、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−ジオキシチオフェン)などを用いることができる。本発明においては、好ましくは、導電性高分子はポリアニリン又はポリアニリン誘導体である。
【0019】
ポリアニリンは、下記式(1)に示すエメラルディンベース(EB)状態では絶縁体である。
【0021】
このEB状態のポリアニリンに、プロトン酸ドーパントH
+A
-がドーピングされると、ポリアニリン中のイミノ基と塩を形成し、導電性を示す電子状態である下記式(2)に示すエメラルディンソルト(ES)状態に変化する。
【0023】
なお、ポリアニリンの電子状態は、UV−vis−NIRスペクトルから確認することができる。
図1に、EB状態とES状態のポリアニリンの各UV−vis−NIR吸収スペクトルを示す。
図1に示すスペクトルから、吸収ピークがEB状態では630nm、ES状態では800nmと相違していることが認められる。
【0024】
本発明の硬化性導電性高分子組成物はラジカル反応性基を有する有機酸を含む。本発明におけるラジカル反応性基を有する有機酸は、導電性高分子と結合して導電性を付与できるドーパントとしての機能、硬化剤としての機能、及び分散剤としての機能を果たすことができる。
有機酸の酸性官能基としては、SO
3−基、−PO
32−基、−PO
4(OH)
−基、−OPO
32−基、−OPO
2(OH)
−基、−COO
−基などが挙げられるが、好ましくは、SO
3−基、−PO
4(OH)
−基である。
ラジカル反応性基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などが挙げられるが、好ましくは、アクリル基、メタクリル基である。
【0025】
本発明におけるラジカル反応性基を有する有機酸は、好適には、有機酸部分と、ラジカル反応性基とがリンカーを介して連結した構造を有する。リンカーとしては、エステル基やアミド基などの置換基を含んでも良い炭化水素基が挙げられ、例えば、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルカンなどが挙げられる。
【0026】
本発明で使用することができるラジカル反応性基を有する有機酸としては、例えば、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有有機酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基含有有機酸などが挙げられる。
【0027】
本発明においては、光及び/又は熱をかけることにより、有機酸中のラジカル反応性基を重合して硬化させる場合には、硬化性導電性高分子組成物はラジカル開始剤を含むことが好ましい。一方、電子線を照射することにより有機酸中のラジカル反応性基を重合して硬化させる場合は、硬化性導電性高分子組成物はラジカル開始剤を含まなくてもよい。
本発明で使用することができるラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシラウレート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートなどの過酸化物などが挙げられる。
【0028】
本発明の硬化性導電性高分子組成物においては、導電性高分子と、ラジカル反応性基を有する有機酸と、ラジカル開始剤は、重量比で、1〜30:1〜99:0.1〜10%の範囲内であることが好ましい。また、本発明の硬化性導電性高分子組成物がラジカル開始剤を含有しない場合は、導電性高分子と、ラジカル反応性基を有する有機酸は、重量比で、1〜30:1〜99%の範囲内であることが好ましい。
ラジカル反応性基を有する有機酸が少なすぎると、加熱しても重合・硬化反応が十分に進行しないほか、ポリアニリンの状態がES状態への変化に伴うキャリアの発生が不十分となり、良好な導電性を示さない。一方、ラジカル反応性基を有する有機酸がこの範囲を超えて多く存在すると、ポリアニリンによる導電路形成が困難となり、良好な導電性を示さない。
【0029】
本発明の硬化性導電性高分子組成物は、メタクリル酸メチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどの単官能、多官能ラジカル反応性モノマーなどの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0030】
本発明のもう一つの実施態様は、導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸、及びラジカル開始剤の反応生成物であり、光及び/又は熱をかけることにより前記ラジカル開始剤が反応を開始し、前記有機酸中のラジカル反応性基が重合して硬化したものであることを特徴とする導電性高分子複合体である。
また、本発明の更にもう一つの実施態様は、導電性高分子及びラジカル反応性基を有する有機酸の反応生成物であり、電子線を照射することにより、前記有機酸中のラジカル反応性基が重合して硬化したものであることを特徴とする導電性高分子複合体である。
ここで、導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸及びラジカル開始剤については、前記の硬化性導電性高分子組成物について記載したものと同様である。
【0031】
本発明の導電性高分子複合体の非限定的な例について
図2で模式的に示す。
図2の右図で示すように、ラジカル反応性基を有する有機酸部分は、ラジカル重合後もポリアニリンとの静電的な相互作用を有するため高い導電性を失うことがなく、また、ラジカル反応性基が重合して硬化することにより、ドーパントのポリマーネットワークが形成されることで機械的な特性の大幅な向上が可能となる。
また、本発明においては、ドーパントを硬化成分として利用することにより、ポリアニリンを高添加量にしても硬化成分が十分量存在するようになるため、高導電性と機械的強度の両立が可能となる。
【0032】
本発明の更にもう一つの実施態様は、(1)導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸、及びラジカル開始剤を含む混合物を調製する工程、(2)前記混合物を加熱することにより、変形可能な固体とする工程、(3)前記固体を光及び/又は熱にさらして、前記有機酸中のラジカル反応性基を重合させて硬化体を得る工程を含む、導電性高分子複合体の製造方法である(製造方法1)。
また、本発明の更にもう一つの実施態様は、(1)導電性高分子及びラジカル反応性基を有する有機酸を含む混合物を調製する工程、(2)前記混合物を加熱することにより、変形可能な固体とする工程、(3)前記固体を電子線にさらして、前記有機酸中のラジカル反応性基を重合させて硬化体を得る工程を含む、導電性高分子複合体の製造方法である(製造方法2)。
【0033】
導電性高分子がポリアニリンである場合を例にして本発明の製造方法1を以下に説明する。
工程(1)
導電性高分子、ラジカル反応性基を有する有機酸、及びラジカル開始剤を含む混合物を調製する段階において、室温では、導電性高分子と前記有機酸は相互作用しないため、有機酸中(液状)に導電性高分子凝集体が存在する状態になっている。この液状の混合物では、チキソトロピーによる粘度増加がないため、ポリアニリンを高濃度で添加することが可能である。
混合物を調製するにあたり、上記の3成分を混合し、自転公転ミキサーなどを用い、室温で通常1〜60分間撹拌する。
工程(2)
上記混合物を加熱すると、導電性高分子と有機酸が相互作用することにより、導電性高分子凝集体が分散し、前記混合物を変形可能な固体とすることができる。加熱は、60〜180℃程度の温度で、1〜60分、特に好ましくは80〜140℃程度の温度で、3〜10分行うのが好ましい。
工程(3)
上記の変形可能な固体を光及び/又は熱にさらし、有機酸中のラジカル反応性基を重合させることにより硬化体として導電性高分子複合体を得ることができる。ここで、ラジカル開始剤の種類に応じて、光の照射条件、加熱条件を適宜選択することができる。
【0034】
また、本発明の製造方法2は、上記の製造方法1の工程(1)においてラジカル開始剤を添加する必要がないこと、及び、工程(3)において固体を光及び/又は熱にさらすことに代えて電子線を照射すること以外は、製造方法1と同様の手順で行うことができる。また、電子線の照射条件は、有機酸中のラジカル反応性基の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0035】
本発明の更に別の実施態様は、上記の導電性高分子複合体をマトリックスとして含む複合材料である。なお、上記の導電性高分子複合体以外に、必要に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとして混合しても良い。
より具体的には、本発明の複合材料としては、上記の導電性高分子複合体と、必要に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂とをマトリックスとして、有機フィラー、無機フィラー、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維や硼素繊維などのセラミックス繊維、及び、芳香族ポリアミドや超高分子量ポリエチレンなどからなる有機合成繊維から選ばれる1種又は2種以上のフィラーや繊維を分散させたり、上記の導電性高分子複合体と、必要に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂とを前記の各種繊維に含浸させたりするなどして、複合したものが挙げられる。中でも、繊維の集合体を複合させた、いわゆるセミプレグやプリプレグ、さらには繊維強化樹脂複合体(FRP)などが好ましく挙げられる。
上記の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、特に制限されることなく、上記導電性高分子複合体の特徴を損なわない範囲において、その目的や要求特性に応じて、各種公知の材料を用いることができる。
【0036】
本発明の複合材料を作製する方法としては特に制限されないが、例えば、上記の導電性高分子複合体と、必要に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂と、フィラーを、機械的な攪拌・混合(遊星ミル、ビーズミル、ロールミル、二軸押し出し機など)した後で熱成形する方法や、上記の導電性高分子複合体と、必要に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂と、繊維の集合体をコーティング法などにより複合して、セミプレグやプリプレグを作製する方法、さらに、当該セミプレグやプリプレグを用いてSMCプレスなどの熱プレス法や、オートクレーブ法などによりFRPを成形する方法などを好ましく挙げることができる。加えて、上記の導電性高分子複合体と繊維の集合体を用いて、ハンドレアップ法、スプレーアップ法、注入RTM法、フィラメントワインディング(FW)法などにより直接FRPを作製することもできる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
エメラルディンベース(EB)状態のポリアニリン(株式会社レグルス製)0.005mol(0.5g)に、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名:P−2M(共栄社化学株式会社製))0.018mol(4.5g)、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(商品名:パーブチルE(日油株式会社製))0.002mol(0.5g)を加え、自転公転ミキサー(ARE−310:シンキー社製)を用いて室温で5分間攪拌した。得られた液状の混合物を、ホットプレス機(東洋精機製)を用いて120℃で3分間加熱し、変形可能な固体を得た。
この変形可能な固体0.5gをホットプレス機を用いてさらに120℃で2時間加熱することにより厚さ0.5mmの硬化体(導電性高分子複合体)を得た。
この硬化体について低抵抗率計MCP−T600(三菱化学アナリテック社製)を用いて、四端子法によって測定を行ったところ、3×10
−3S/cmの導電性を示した。
【0039】
[実施例2]
エメラルディンベース(EB)状態のポリアニリン(株式会社レグルス製)2.3gに、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名:P−2M(共栄社化学株式会社製))13.7g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(東京化成工業株式会社製)4.0g、及びtert−ブチルペルオキシラウレート(商品名:パーブチルL(日油株式会社製))2.0gを混合し、自転公転ミキサー(遊星式撹拌脱泡装置マゼルスターKK−100(倉敷紡績株式会社製))を用いて室温で2分間攪拌し、樹脂ペーストを得た。
得られた樹脂ペーストを、塗布圧力を制御可能であるように固定したハンドローラーを用いて炭素繊維クロス(商品名:TR3110 3K平織(三菱レイヨン株式会社製))に圧力0.05MPaで塗布・含浸させ、さらに温度120℃、圧力0.5MPaで10分間プレスを実施し、プリプレグを作製した。
このプリプレグを4枚重ねて、温度120℃、圧力0.7MPaで120分間プレス成形し、厚み0.7mmの複合材料を作製した。この複合材料について、後述の方法で面外導電率の最大値と曲げ剛性を測定した結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例2において、得られた樹脂ペーストを、塗布圧力を制御可能であるように固定したハンドローラーを用いて炭素繊維クロス(商品名:TR3110 3K平織(三菱レイヨン株式会社製))に圧力0.1MPaで塗布・含浸させた以外は、同様にして複合材料を作製した。この複合材料について、後述の方法で面外導電率の最大値と曲げ剛性を測定した結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名:P−2M(共栄社化学株式会社製))16.0g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(東京化成工業株式会社製)4.0g、及びtert−ブチルペルオキシラウレート(商品名:パーブチルL(日油株式会社製))2.0gを混合し、自転公転ミキサー(遊星式撹拌脱泡装置マゼルスターKK−100(倉敷紡績株式会社製))を用いて室温で2分間攪拌し、樹脂ペーストを得た。
この樹脂ペーストを用いて、実施例2と同様にして複合材料を作製した。この複合材料について、後述の方法で面外導電率の最大値と曲げ剛性を測定した結果を表1に示す。
【0042】
(面外導電率の測定)
実施例2、実施例3、及び比較例1の3種の製作した複合材料について、30mm角にサンプルを切り出し、30mm角の上下表面に導電性ペースト(商品名:ドータイト(藤倉化成株式会社製))を塗り、銅線を貼り付けながら、常温乾燥・接着させた。LCRメータ(製品名:LCRハイテスタ3522−50、日置電機株式会社製)を用いて、銅線を端子で挟み込み、上述の3種類の面外導電率(直流)の測定を行った。
【0043】
(曲げ剛性の測定)
実施例2、実施例3、及び比較例1の3種の製作した複合材料について、JIS K7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に従い、曲げ試験(3点曲げ)を実施した。60mm長さ、15mm幅の長方形サイズのサンプルを切り出し、スパン長さ(下支持間距離)40mmとして、ネジ駆動式万能試験機(製品名:Instron5582、インストロン社製)を用いて、試験を実施した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示した通り、実施例2及び実施例3は比較例1に比べ、曲げ剛性はやや劣るが同等レベルのものが得られ、面外導電率は200倍以上もの導電率を発現しうることが示された。すなわち本発明によって、導電性と機械的特性を両立する、導電性高分子を用いた複合材料を得ることができた。