(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,上記した一般的な手法は,群速度分散によって変化した[搬送波・上部側波帯成分]と[搬送波・下部側波帯成分]の位相差を直接計測することに相当するため,光変調信号の周波数帯域と計測可能な群速度分散値が互いに反比例することとなる。つまり,この手法では,光ファイバが十分に大きい群速度分散値を有していなければ,リーズナブルな変調信号(例えば10GHzなど)を利用して,光ファイバの特性を測定することが困難であるという問題があった。例えば,従来の手法によって,群速度分散値が17ps/nm/kmである通常の光ファイバの測定では,60GHzの変調信号を用いると,400m程度の地点でRFパワーがゼロとなるため,数100mの光ファイバ長が必要となる。10GHzの変調ではさらに長い光ファイバが必要なことは自明である。
【0009】
また,周波数掃引信号を発生させることのできるレーザを用いる方法は,このレーザそのものが特殊であるという問題がある。この特殊なレーザは,光ファイバの構築及び設計用の専用システムであり,既存部品を流用することが困難になっている。
【0010】
従って,本発明は,光ファイバの群速度分散値が小さい場合であっても高速かつ高精度に光ファイバの群速度分散値を測定することができ,しかも既存の光ファイバ通信コンポーネントを流用して簡易的に構築することのできる光ファイバ特性測定装置及び方法を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,下記の構成を有する測定装置及び測定方法によれば,光ファイバの群速度分散値が小さい場合であっても高速かつ高精度に光ファイバの群速度分散値を測定することができ,しかも既存の光ファイバ通信コンポーネントを流用して簡易的に構築することができるという知見を得た。
【0012】
本発明の第1の側面は,光ファイバの特性の測定装置に関する。
本発明に係る測定装置は,光源1と,信号源2と,光変調器3と,第1の光カプラ4と,測定対象たる光ファイバ5と,第2の光カプラ6と,検波器7と,演算手段8と,を含む。
光源1は,所定の光周波数の光信号を出力する。
信号源2は,変調信号を出力する。
光変調器3は,信号源2からの変調信号によって,光源1からの光信号に対して両側波帯・搬送波抑圧変調(DSB−SC)の光変調を施した変調光を出力する。
第1の光カプラ4は,光変調器3からの変調光を2つに分波する。これにより,第1の光カプラ4からは,第1の変調光(光DSB−SC信号)と第2の変調光(光DSB−SC信号)が出力される。
測定対象たる光ファイバ5には,第1の光カプラ4によって分波された一方の変調光が入射する
第2の光カプラ6は,光ファイバ5の端にて反射した又は光ファイバ5を透過した一方の変調光と,第1の光カプラ4によって分波された他方の変調光を合波する。
検波器7は,第2の光カプラ6によって合波された光信号の周波数を検出する。
演算手段8は,検波器7によって検出された光信号の周波数に基づいて,光ファイバ5の特性としての群速度分散値(D)を測定する。
【0013】
本発明の測定装置において,信号源2は,変調信号の周波数を掃引することで,光変調器3から出力される変調光の上部側波帯及び下部側波帯の周波数を掃引することが好ましい。
【0014】
本発明の測定装置において,演算手段8は,検波器7によって検出した光信号の上部側波帯成分由来のピーク周波数(f
det+)と光信号の下部側波帯成分由来のピーク周波数(f
det−)との周波数差(Δf
det)に基づいて,光ファイバ5の特性としての群速度分散値(D)を測定することが好ましい。
【0015】
本発明の測定装置において,演算手段8は,上記の周波数差(Δf
det),一方の変調光が光ファイバ5の中を伝送した距離(L),真空中の光速(c),光源1から発せられた光信号の周波数(f
0),掃引された変調信号の下限周波数(f
1)と上限周波数(f
2),及び下限周波数(f
1)と上限周波数(f
2)間の掃引期間(T)に基づいて,光ファイバ5の特性としての群速度分散値(D)を測定することが好ましい。
【0016】
本発明の第2の側面は,光ファイバの特性の測定方法に関する。
本発明の測定方法は,
光源1から所定の光周波数の光信号を出力する工程と,
信号源2から変調信号を出力する工程と,
光変調器3が,信号源2からの変調信号によって,光源1からの光信号を対して両側波帯・搬送波抑圧変調(DSB−SC)の光変調を施した変調光を出力する工程と,
第1の光カプラ4により光変調器3からの変調光を2つに分波する工程と,
第1の光カプラ4によって分波された一方の変調光を,測定対象たる光ファイバ5に入射する工程と,
第2の光カプラ6により,光ファイバ5の端にて反射した又は光ファイバ5を透過した一方の変調光と,第1の光カプラ4によって分波された他方の変調光を合波する工程と,
検波器7により,第2の光カプラ6によって合波された光信号の周波数を検出する工程と,
演算手段8により,検波器7によって検出された光信号の周波数に基づいて,光ファイバ5の特性としての群速度分散値を測定する工程と,を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明は,基本的に,光ファイバの群速度分散値の測定に,光周波数領域リフレクトメトリの手法を応用するという知見に基づく。この光周波数領域リフレクトメトリは,基本的には,光の光路長を計測するための手法である。ここで,本発明では,両側波側帯・搬送波抑圧(DSB−SC)信号における上部側波帯及び下部側波帯に周波数掃引信号を発生させ,それぞれ帯域の周波数差から光路長差を計測することで,光ファイバの実効屈折率差,つまり群速度分散値を実測することとしている。
【0018】
本発明は,従来手法のように,[搬送波・上部側波帯成分]及び[搬送波・下部側波帯成分]の位相差を直接計測するものではない。本発明は,掃引した両側波側帯・搬送波抑圧(DSB−SC)信号における上部側波帯成分由来のピーク周波数と下部側波帯成分由来のピーク周波数の周波数差を検出して,光ファイバの群速度分散値を測定することができる。従って,本発明は,光ファイバの群速度分散値が小さい場合であっても,リーズナブルな変調信号(例えば10GHzなど)を利用して,光ファイバの群速度分散値を効率的に測定することができる。
【0019】
また,本発明は,従来技術のように,周波数掃引信号を発生させることのできる特殊なレーザを用いる必要がない。本発明は,例えば,公知の光変調器と,公知の変調信号を発生する電気シンセサイザと,公知の電気スペクトラムアナライザを用いて,光ファイバの特性(群速度分散値)を計測可能である。従って,本発明に係る測定装置は,その構成が容易になる。
【0020】
また,本発明は,電気シンセサイザ(信号源)による周波数掃引速度を調整することで,ほぼあらゆる長さの光ファイバの特性を測定することができる。また,本発明は,測定対象たる光ファイバの反射光を検出する方式(反射型方式)だけでなく,光ファイバの透過光を検出する方式(透過型方式)にも対応することができる。従って,本発明の測定装置は,すでに敷設された光ファイバの特性を計測することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0023】
図1は,本発明の好ましい実施形態に係る測定装置の構造を示した概略図である。
図1に示した実施形態の測定装置は,いわゆる反射型方式で,光ファイバの特性を測定する。反射型方式とは,変調光を測定対象たる光ファイバの一端に入射し,その光ファイバの他端で反射した変調光を検出する方式である。
【0024】
図1に示された実施形態において,測定装置は,光源1と,信号源2と,光変調器3と,第1の光カプラ4と,測定対象となる光ファイバ5と,第2の光カプラ6と,検波器7と,演算手段(PC)8と,光サーキュレータ9と,光電変換器10と,を有している。
【0025】
光源1は,所定の周波数の光信号を出力する。光源1から出力される光信号の周波数は,“f
0”で表される。光源1は,連続光を出力するCW光源であることが好ましい。光源1の具体的な例として,例えば,レーザーダイオードやLEDが挙げられる。ただし,光源1は,これらに限定されず,適宜公知のものを用いることができる。
【0026】
信号源2は,光変調器3に対して伝達すべき変調信号を出力するためのデバイスである。信号源2としては,公知の信号源を採用することができる。信号源の例は,FSK信号源である。FSKとしての信号源2は,光FSK変調器である光変調器3の電極へ伝達される信号を制御する。信号源2から光変調器3の電極に入力される信号としては,1GHz〜300GHzの周波数成分をもつ信号が挙げられ,5GHz〜100GHz,若しくは10GHz〜50GHzであることが好ましい。
【0027】
また,本発明において,信号源2は,光変調器3に対して印加する変調信号の周波数を掃引することのできるものであることが好ましい。周波数の掃引としては,例えば,上り掃引と下り掃引とが挙げられる。例えば,掃引される周波数の下限周波数を“f
1”とし,上限周波数を“f
2”とする。この場合に,上り掃引とは,変調信号の周波数が下限周波数f
1から上限周波数f
2に達するように一定のペースで周波数を上げていくことをいう。これに対し,下り掃引とは,変調信号の周波数が上限周波数f
2から下限周波数f
1に達するように一定のペースで周波数を下げていくことをいう。また,上り掃引又は下り掃引において,下限周波数f
1から上限周波数f
2に達するまでの期間,又は上限周波数f
2から下限周波数f
1に達するまでの期間を「掃引期間」という。この掃引期間は,“T”で表される。
【0028】
また,信号源2による変調信号の周波数掃引の形態としては,上り掃引又は下り掃引のみが連続して行われるノコギリ波型の掃引や,上り掃引と下り掃引とが交互に繰り返される三角波型の掃引が挙げられる。
【0029】
光変調器3は,信号源2から供給される変調信号に応じて,光源1から出力された光信号を変調するデバイスである。本発明において,光変調器3は,光信号に対して,両側波帯・搬送波抑圧変調(DSB−SC:Double Side Band Suppressed Carrier)を行う光DSB−SC変調器である。光変調器3としては,公知の光DSB−SC変調器を適宜用いることができる。例えば,公知の光SSB変調器や光FSK変調器を,光DSB−SC変調器として用いてもよい。また,例えば,光変調器3としては,特開平2004−252386号公報の
図37に示されるように,マッハツェンダー型の光DSB−SC変調器を用いることとしてもよい。例えば,光DSB−SC変調器は,LN導波路上に形成されたマッハツェンダー導波路(MZ)と,マッハツェンダー導波路(MZ)の両アームに設けられた位相変調器(PM)と,マッハツェンダー導波路(MZ)の一方のアームに設けられた固定位相器を有する。
【0030】
上記のように,光変調器3から出力される変調光は,光DSB−SC信号となる。光DSB−SC信号は,上部側波帯(USB)信号と下部側波帯(LSB)信号とを有し,搬送波が抑圧された信号である。信号源2から光変調器3に供給される変調信号の周波数を“f
m”とし,搬送波の中心周波数を“f
0”とすると,上部側波帯信号の中心周波数は,“f
0+f
m”で表され,下部側波帯信号の中心周波数は,“f
0−f
m”で表される。
【0031】
図1に示されるように,光変調器3から出力された光DSB−SC信号は,第1の光カプラ4に入力される。第1の光カプラ4は,光DSB−SC信号を2つに分波(強度分離)する。すなわち,第1の光カプラ4は,光変調器3から出力された光DSB−SC信号を,第1の光DSB−SC信号と第2の光DSB−SC信号とに分離して出力する。
図1に示されるように,第1の光カプラ4により分離された一方の光DSB−SC信号は,第2の光カプラ6に入力され,他方の光DSB−SC信号は,光サーキュレータ9に入力される。
【0032】
また,
図1に示されるように,光サーキュレータ9には,測定対象たる光ファイバ5の一端が接続されている。このため,光サーキュレータ9に入力された変調光は,測定対象たる光ファイバ5へと導入される。
図1に示された実施形態において,光ファイバ5は,他端がどのデバイスにも接続されていない自由端となっている。このため,光ファイバ5に導入された変調光は,この光ファイバ5の他端において反射される。反射された変調光は,光ファイバ5の一端側から光サーキュレータ9に再度導入される。光サーキュレータ9は,光ファイバ5で反射した変調光を,第2の光カプラ6へと導入する。
【0033】
図1に示されるように,第2の光カプラ6には,第1の光カプラ4において分波された一方の変調光(光DSB−SC信号)と,第1の光カプラ4において分波されて光ファイバ5に入射された他方の変調光(光DSB−SC信号)とが導入される。これにより,第2の光カプラ6では,一方の変調光と他方の変調光とが合波される。
【0034】
第2の光カプラ6において合成された光信号は,光電変換器10にて電気信号へと変換された後,検波器7において信号検出される。検波器7は,入力された光信号/電気信号の周波数を検出するデバイスである。検波器7としては,公知の電気スペクトラムアナライザを利用すればよい。
【0035】
検波器7は,コンピュータ(PC)8(「演算手段」に相当)に接続されている。PC8は,検波器7によって検出された光信号/電気信号の周波数に基づいて,測定対象たる光ファイバ5の特性を求める演算を行う。具体的には,PC8は,光ファイバ5の群速度分散値を求める。以下では,PC8において行われる演算について説明する。
【0036】
まず,本実施形態において,信号源2から光変調器3に対して供給される変調信号の形態を
図2(a)に示す。
図2(a)に示されるように,本実施形態では,信号源2は,変調信号に対して,上り掃引のみが連続して行われるノコギリ波型の掃引を行っている。このように,信号源2から供給される電気信号は,ノコギリ波型電気信号である。ノコギリ波型電気信号の周波数は,以下の数式により表される。
【0038】
ここで,“f
1”は下限周波数であり,“f
2”は上限周波数であり,“T”は下限周波数f
1から上限周波数f
2に達するまでの掃引期間である。
【0039】
また,上記の掃引された変調信号に応じて,光変調器3により両側波帯・搬送波抑圧変調(DSB−SC)が施された変調光の光スペクトルを,
図2(b)に示す。
図2(b)に示されるように,変調信号が掃引されることで,光変調器3から出力される光DSB−SC信号の上部側波帯と下部側波帯に周波数掃引信号が発生する。上部側波帯f
USB及び下部側波帯f
LSBについて,光DSB−SC信号の光周波数遷移を周波数領域で数式化すると,以下の数式により表される。
【0041】
また,測定対象たる光ファイバ5の端で反射されて第2の光カプラ6へ到達する一方の変調光(光DSB−SC信号)は,光源1の光周波数を“f
0”とすると,以下の数式により表される。
【0043】
ここで,“τ”は,変調光が光ファイバ5の中を伝送した時間である。
【0044】
また,第2の光カプラ6には,第1の光カプラ4において分波されて光ファイバ5の中を伝送した一方の変調光と,第1の光カプラ4において分波された他方の変調光とが導入される。第2の光カプラ6において,一方の変調光(反射波)と他方の変調光(入力波)とが合成された信号は,例えば
図3のように書き表すことができる。すなわち,検波器7により検出される信号は,第2の光カプラ6で合成された一方の変調光(反射波)と他方の変調光(入力波)の差分をとった中間周波数となる。従って,一方の変調光(反射波)と他方の変調光(入力波)の差分は,上部側波帯と下部側波帯の両方とも,以下の数式により表される。
【0046】
ここで,“f
RefxSB”は,光ファイバ5の中を伝送した一方の変調光(反射波)における上部側波帯又は下部側波帯の周波数であり,“f
xSB”は,第1の光カプラ4から第2の光カプラ6に直接導入された他方の変調光(入力波)における上部側波帯又は下部側波帯の周波数である。
【0047】
また,光ファイバ5の中を光信号が伝送した時間“τ”は,一般的に,以下の数式により表される。
【0049】
ここで,“n”は,光ファイバ5の屈折率であり,“L”は,変調光が光ファイバ5の中を伝送する距離であり,“c”は,真空中の光速である。なお,一般的に,光ファイバ5の屈折率は,その中を伝送する光信号の光周波数に依存するため,n(f)と書くこともできる。ただし,ここでは簡単化のため,上部側波帯から下部側波帯にわたり,屈折率変化が線形かつ変化が十分に小さいものとして考える。このため,光ファイバ5の屈折率は,光周波数f
0に対応する屈折率n
0からの差として,Δn(光周波数f
0±(f
2−f
1)/2に対して)とする。従って,光ファイバ5の中を伝送する光信号の上部側波帯成分の伝送時間“τ
USB”と下部側波帯成分の伝送時間“τ
LSB”は,それぞれ,以下の数式により表される。
【0051】
また,上述のように,検波器7により検出される周波数は,第2の光カプラ6で合成された一方の変調光(反射波)と他方の変調光(入力波)の差分をとった中間周波数となる。検波器7により検出される中間周波数は,例えば
図4のように書き表される。
図4において,“f
det+”は,検波器7によって検出された上部側波帯成分由来のピーク周波数であり,“f
det−”は,検波器7によって検出された下部側波帯成分由来のピーク周波数である。f
det+とf
det−は,それぞれ,以下の数式により表される。
【0053】
また,もしΔn=0である場合,検波器7によって検出される周波数は,以下の数式により表されるものとなる。
【0055】
ここで,
図4にも示されるように,上記の数式における“f
det”が,f
det+とf
det−の中点に相当するものであることは自明である。
【0056】
さらに,f
det+とf
det−の差分から求められる周波数差“Δf
det”は,以下の数式により表される。
【0058】
また,一般的に,光信号の周波数に応じた光ファイバの屈折率変化は,群速度分散値D[s/m/m](単位ファイバあたり,離調波長における伝播時間差)で表される。例えば,光周波数f
0(屈折率n
0)の光信号と,光周波数f
0+(f
2−f
1)/2(屈折率n+Δn)の光信号が,長さLの光ファイバの中を伝送した場合,それぞれの光信号の到達時間(伝送時間)は,以下の数式により表される。
【0060】
従って,以上の数式をまとめると,光ファイバ5の屈折率差Δnと群速度分散値Dの関係は,以下の数式により表される。
【0062】
さらに,上記の数式を,Δf
detを求める数式に書き直すと以下のとおりとなる。
【0064】
よって,長さ(伝送距離)Lが自明な光ファイバ5については,
図4に示されるような離れた検出ピークの周波数を測定することで,上記の数式(17)に基づいて,群速度分散値Dを計算することが可能となる。従って,
図1に示された構成の測定装置によれば,簡易的な構成で,測定対象たる光ファイバ5の群速度分散値Dを測定することができる。
【0065】
すなわち,本発明において,PC8は,以下の(a)〜(g)の値に基づいて,
図1に示された実施形態に係る測定装置の構成により,光ファイバ5の特性としての群速度分散値Dを測定することが可能である。
(a)検波器7によって検出した光信号の上部側波帯成分由来のピーク周波数f
det+と光信号の下部側波帯成分由来のピーク周波数f
det−との周波数差Δf
det
(b)変調光が光ファイバ5の中を伝送した距離L
(c)真空中の光速c
(d)光源1から発せられた光信号の周波数f
0
(e)掃引された変調信号の下限周波数f
1
(f)掃引された変調信号の上限周波数f
2
(g)下限周波数f
1と上限周波数f
2間の掃引期間T
【0066】
また,本発明では,検波器7により検出された離れた検出ピークの中点をf
detとすることで,上記式(11)に基づいて,光周波数f
0に対応する光ファイバ5の屈折率n
0を計算することもできる。
【0067】
続いて,
図5は,本発明の他の実施形態に係る測定装置の構造を示した概略図を示している。
図5に示されるように,本発明の測定装置は,いわゆる透過型方式で,光ファイバの特性を測定することもできる。透過型方式とは,測定対象たる光ファイバの一端から変調光を入射し,光ファイバの他端から射出された変調光を検出する方式である。
図5に示されるように,測定装置が透過型方式である場合,第1の光カプラ4に,測定対象たる光ファイバ5の一端を接続し,第2の光カプラ6に,測定対象たる光ファイバ5の他端を接続すればよい。このように,測定装置が透過型方式である場合,
図1に示した反射型方式の測定装置と比較して,光サーキュレータ9が不要となる。
【0068】
なお,
図1に示した反射型方式の測定装置及び
図5に示した透過型方式の測定装置どちらにおいても光ファイバ5の長さはLであるが,光信号が伝送した距離は,反射型方式の場合は2L,透過型方式の場合はLとなり,伝送する距離が異なる点に注意が必要である。
【0069】
具体的に説明すると,透過型方式の測定装置(
図5)においても,上述した反射型方式の測定装置(
図1)と同様に,(1)〜(6)の数式を適用することができる。
【0070】
他方,透過型方式の測定装置では,上述した反射型方式の測定装置とは異なり,光ファイバ5の中を光信号が伝送した時間“τ”は,一般的に,以下の数式により表される。
【0072】
このように,透過型方式の測定装置と反射型方式の測定装置とでは,光ファイバ5の中を光信号が伝送した時間“τ”の定義が異なる。従って,透過型方式の測定装置において,上述した(7)〜(17)の数式は,以下に示す(7)´〜(17)´の数式に置き換えられる。
【0073】
すなわち,透過型方式の測定装置において,光ファイバ5の中を伝送する光信号の上部側波帯成分の伝送時間“τ
USB”と下部側波帯成分の伝送時間“τ
LSB”は,それぞれ,以下の数式により表される。
【0075】
また,検波器7によって検出された上部側波帯成分由来のピーク周波数“f
det+”と,検波器7によって検出された下部側波帯成分由来のピーク周波数“f
det−”は,それぞれ,以下の数式により表される。
【0077】
従って,透過型方式の測定装置において,もしΔn=0である場合,検波器7によって検出される周波数は,以下の数式により表されるものとなる。
【0079】
ここで,
図4にも示されるように,上記の数式における“f
det”が,f
det+とf
det−の中点に相当するものであることは自明である。
【0080】
さらに,透過型方式の測定装置において,f
det+とf
det−の差分から求められる周波数差“Δf
det”は,以下の数式により表される。
【0082】
また,一般的に,光信号の周波数に応じた光ファイバの屈折率変化は,群速度分散値D[s/m/m](単位ファイバあたり,離調波長における伝播時間差)で表される。例えば,光周波数f
0(屈折率n
0)の光信号と,光周波数f
0+(f
2−f
1)/2(屈折率n+Δn)の光信号が,長さLの光ファイバの中を伝送した場合,それぞれの光信号の到達時間(伝送時間)は,以下の数式により表される。
【0084】
従って,以上の数式をまとめると,光ファイバ5の屈折率差Δnと群速度分散値Dの関係は,以下の数式により表される。
【0086】
さらに,透過型方式の測定装置では,上記の数式を,Δf
detを求める数式に書き直すと以下のとおりとなる。
【0088】
よって,透過型方式の測定装置(
図5)においても,反射型方式の測定装置(
図1)と同様に,長さ(伝送距離)Lが自明な光ファイバ5については,
図4に示されるような離れた検出ピークの周波数を測定することで,上記の数式(17)´に基づいて,群速度分散値Dを計算することが可能となる。従って,本発明の測定装置によれば,簡易的な構成で,測定対象たる光ファイバ5の群速度分散値Dを測定することができる。
【0089】
また,透過型方式の測定装置(
図5)においても,検波器7により検出された離れた検出ピークの中点をf
detとすることで,上記式(11)´に基づいて,光周波数f
0に対応する光ファイバ5の屈折率n
0を計算することができる。
【0090】
以上に説明したとおり,本発明の測定装置及び測定方法は,光ファイバの実効屈折率,つまり群速度分散系数の評価に利用することができる。具体的には,反射型方式の測定装置を利用して,敷設前の新規な光ファイバの特性を効率的に測定することができる。また,透過型の測定装置を利用すれば,既に敷設された光ファイバの特性を効率的に測定することも可能となる。特に,既に敷設された光ファイバの特性を測定することで,光ファイバ経路の実効距離を求めることができる。また,既に敷設された光ファイバについては,群速度分散値を計測することで,光ファイバ通信用補償係数を推定することができ,さらには信号劣化の度合を評価することも可能となる。
【0091】
また,既に敷設された光ファイバに関し,例えばトラブルにより光ファイバが切断された場合には,光ファイバの故障箇所や,光ファイバに与えられたダメージをチェックする必要がある。この点,本発明の測定装置及び測定方法によれば,光周波数領域リフレクトメトリ手法を応用して,光ファイバの実効距離を測定することで切断された箇所を同定することができる。また,光ファイバが曲げ延びストレスにより群速度分散値が変化することがあるため,本発明の測定装置及び測定方法によって群速度分散値を測定すれば,光ファイバのダメージの度合いを推定することも可能となる。
【0092】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。