特許第6281870号(P6281870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281870
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】吊り金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/06 20060101AFI20180208BHJP
   F16B 2/24 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16B2/06 Z
   F16B2/24 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-44048(P2014-44048)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-169255(P2015-169255A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月28日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】513185906
【氏名又は名称】野田 拓未
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 拓未
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−185470(JP,U)
【文献】 特表2003−531591(JP,A)
【文献】 実開昭58−58109(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00−2/26
F16B 45/00−47/00
F16B 1/00
A01K 65/00−91/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止対象物に引っ掛けることが可能で、かつ、線条部材を吊り下げることが可能な、曲げられた1本の金属製線材により形成された吊り金具であって、
前記係止対象物に引っ掛けられるために鉤状に形成された鉤状部と、前記線条部材を吊り下げるために環状に形成された環状部と、前記鉤状部と前記環状部とを接続する接続部と、前記接続部に対して間隔をあけて設けられた対向部と、前記鉤状部とともに閉空間を形成する閉空間形成部とを備え、
前記接続部と前記対向部とを互いに近づける外力が当該接続部および当該対向部の少なくとも一方に対して作用するときに、前記金属製線材が弾性変形して、前記閉空間に前記係止対象物を通すことが可能な開口部が生じ、
前記環状部は、前記金属製線材が1周以上巻かれて形成されており、当該環状部の下端には、当該金属製線材が交差する交差部が設けられている
ことを特徴とする吊り金具。
【請求項2】
前記鉤状部および前記環状部および前記接続部および前記対向部および前記閉空間形成部は、前記金属製線材の一端から、前記鉤状部、前記接続部、前記環状部、前記対向部、前記閉空間形成部の順に繋がっている
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り金具。
【請求項3】
前記閉空間形成部は、前記鉤状部の両側方のうちの一方である第1側方に配置された第1移動規制部と、前記鉤状部の両側方のうちの他方である第2側方に配置された第2移動規制部とを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の吊り金具。
【請求項4】
前記閉空間が閉じている状態において、前記鉤状部の側方から見て、前記鉤状部の先端を構成する前記金属製線材の一端が、前記接続部と前記対向部との間に位置する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吊り金具。
【請求項5】
前記閉空間が閉じている状態において、前記鉤状部の側方から見て、前記金属製線材の両端が、当該金属製線材の外形から突出していない
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げられた金属製線材により形成される吊り金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
係止対象物に引っ掛けることが可能で、かつ、線条部材を吊り下げることが可能な吊り金具として、特許文献1には、誘引線に引っ掛けられるとともに誘引紐を吊り下げる誘引紐吊り具が記載されている。以下、図6図8を参照して、特許文献1に記載される吊り金具を説明する。
【0003】
図6に示すように、1本の金属製線材101Aにより形成された吊り金具101は、係止対象物に引っ掛けられるために鉤状に形成された鉤状部110と、線条部材を吊り下げるために環状に形成された環状部120と、鉤状部110と環状部120とを接続する接続部130と、鉤状部110とともに閉空間S101を形成する閉空間形成部140とを備えている。金属製線材101Aの一端は、鉤状部110に連なる閉空間形成部140により構成されており、金属製線材101Aの他端は、環状部120により構成されている。環状部120は、金属製線材101Aが1周半以上巻かれることによって、螺旋として形成されている。
【0004】
次に、図7を参照して、吊り金具101を係止対象物である紐R101に引っ掛ける方法の一例について説明する。図7(A)に示すように、吊り金具101を紐R101に引っ掛ける際には、金属製線材101Aと紐R101とを接触させ、矢印M111の方向に閉空間形成部140が動くように、金属製線材101Aに対して外力を付与する。閉空間S101が開いたとき、接続部130と閉空間形成部140との隙間から紐R101を通して、紐R101に鉤状部110を引っ掛ける。紐R101に鉤状部110を引っ掛けた後、図7(B)に示すように、閉空間形成部140を動かす外力が付与されなくなると、金属製線材101Aの弾性によって、矢印M112の方向に閉空間形成部140が動いて、紐R101を含む閉空間S101が形成される。
【0005】
次に、図8を参照して、吊り金具101に線条部材である紐R102を吊り下げる方法の一例について説明する。図8(A)に示すように、吊り金具101に紐R102を吊り下げる際には、環状部120と接続部130との境界付近において金属製線材101Aに紐R102を巻きつけ、矢印M121の方向に紐R102を引っ張ることによって、環状部120において金属製線材101Aで紐R102を挟む。次いで、図8(B)に示すように、紐R102を矢印M122の方向に巻くことによって、環状部120と接続部130との境界付近において金属製線材101Aに紐R102をさらに巻きつける。そして、紐R102を引っ張ることによって、紐R102の結び目(図示略)を環状部120に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3116875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、紐R102の結び目を環状部120に形成することによって吊り金具101に紐R102を吊り下げる場合には、金属製線材101Aに紐R102を巻きつける必要が生じるため、紐R102の吊り下げ作業が煩雑であるという問題がある。また、金属製線材101Aに紐R102を巻きつけずに、環状部120において金属製線材101Aで紐R102を挟むことによって、環状部120に紐R102を吊り下げる場合には、金属製線材101Aが紐R102を挟む力が小さければ、環状部120から紐R102が外れ落ちるという問題がある。金属製線材101Aが紐R102を挟む力が大きければ、環状部120から紐R102が外れ落ちることは抑制されるものの、金属製線材101Aに紐R102を挟むことが容易ではないため、紐R102の吊り下げ作業が煩雑である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、線条部材の吊り下げ作業を容易に行うことができ、かつ、線条部材が外れ落ちることを抑制することができる吊り金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の吊り金具は、係止対象物に引っ掛けることが可能で、かつ、線条部材を吊り下げることが可能な、曲げられた1本の金属製線材により形成された吊り金具であって、前記係止対象物に引っ掛けられるために鉤状に形成された鉤状部と、前記線条部材を吊り下げるために環状に形成された環状部と、前記鉤状部と前記環状部とを接続する接続部と、前記接続部に対して間隔をあけて設けられた対向部と、前記鉤状部とともに閉空間を形成する閉空間形成部とを備え、前記接続部と前記対向部とを互いに近づける外力が当該接続部および当該対向部の少なくとも一方に対して作用するときに、前記金属製線材が弾性変形して、前記閉空間に前記係止対象物を通すことが可能な開口部が生じ、前記環状部は、前記金属製線材が1周以上巻かれて形成されており、当該環状部の下端には、当該金属製線材が交差する交差部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の吊り金具は、請求項1に記載の吊り金具において、前記鉤状部および前記環状部および前記接続部および前記対向部および前記閉空間形成部は、前記金属製線材の一端から、前記鉤状部、前記接続部、前記環状部、前記対向部、前記閉空間形成部の順に繋がっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の吊り金具は、請求項1または2に記載の吊り金具において、前記閉空間形成部は、前記鉤状部の両側方のうちの一方である第1側方に配置された第1移動規制部と、前記鉤状部の両側方のうちの他方である第2側方に配置された第2移動規制部とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の吊り金具は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吊り金具において、前記閉空間が閉じている状態において、前記鉤状部の側方から見て、前記鉤状部の先端を構成する前記金属製線材の一端が、前記接続部と前記対向部との間に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の吊り金具は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吊り金具において、前記閉空間が閉じている状態において、前記鉤状部の側方から見て、前記金属製線材の両端が、当該金属製線材の外形から突出していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、線条部材の吊り下げ作業を容易に行うことができ、かつ、線条部材が外れ落ちることを抑制することができる吊り金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る吊り金具を示す図であって、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は上面図、(D)は下面図である。
図2】(A)および(B)は、本発明の吊り金具を係止対象物に引っ掛ける作業工程を示す説明図である。
図3】(A)および(B−1)は、本発明の吊り金具に線条部材を吊り下げる作業工程を示す説明図であり、(B−2)は、(B−1)のD−D線断面図である。
図4】(A−1)および(B−1)は、本発明の吊り金具の移動が規制される状態を示す説明図であり、(A−2)は、(A−1)の一部分の拡大断面図であり、(B−2)は、(B−1)の一部分の拡大断面図である。
図5】本発明の変形例に係る吊り金具を示す図であって、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は上面図、(D)は下面図である。
図6】従来の吊り金具を示す図であって、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は上面図、(D)は下面図である。
図7】(A)および(B)は、従来の吊り金具を係止対象物に引っ掛ける作業工程を示す説明図である。
図8】(A)および(B)は、従来の吊り金具に線条部材を吊り下げる作業工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を参照して、本発明の一例である吊り金具1を説明する。なお、図中の矢印Xで示すX方向と、図中の矢印Yで示すY方向と、図中の矢印Zで示すZ方向とは、互いに直交する方向である。また、吊り金具1の使用時は、Z方向が上下方向となる。
【0017】
図1に示すように、吊り金具1は、曲げられた1本の金属製線材1Aにより形成されている。金属製線材1Aとしては、ばね用のステンレス鋼等の金属材料からなり、断面形状が円形である直径1.5mmの丸線を用いることができる。吊り金具1は、例えば、X方向に約2.5cmの寸法、Y方向に約0.7cmの寸法、およびZ方向に約4cmの寸法を有する。
【0018】
吊り金具1は、鉤状部10、環状部20、接続部30、対向部40、閉空間形成部50、および延長部60を備えている。金属製線材1Aは、当該金属製線材1Aを構成する各部10〜60が、鉤状部10、接続部30、環状部20、対向部40、閉空間形成部50、延長部60の順で繋がるように曲がっている。したがって、金属製線材1Aの一端は、鉤状部10の先端により構成され、金属製線材1Aの他端は、延長部60の先端により構成されている。金属製線材1Aの両端は、鉤状部10の側方から見て、金属製線材1Aの外形から突出していない(図1(A)参照)。吊り金具1の使用時は、鉤状部10が吊り金具1の上端部を構成し、環状部20が吊り金具1の下端部を構成する。
【0019】
鉤状部10は、係止対象物に引っ掛けられるために鉤状に形成されている。具体的には、鉤状部10は、鋭角が形成されるように曲げられた屈曲形状を有しており、Y方向に垂直な仮想平面(図示略)において、吊り金具1の上端で約135°曲がり、先端が下方を向くように形成されている。鉤状部10は、係止対象物を通す閉空間S1を閉空間形成部50とともに形成しており、鉤状部10の先端は、閉空間S1の隣に設けられた他の閉空間S2に配置されている。鉤状部10の一端部は、接続部30の上端部に連なる。
【0020】
環状部20は、線条部材を吊り下げるために環状に形成されている。具体的には、環状部20は、当該環状部20の下端に金属製線材1Aが交差する交差部21が設けられるように、Y方向に平行な仮想軸(図示略)の周りに金属製線材1Aが約1周半巻かれて形成されている。環状部20は、Z方向に対して斜めに設けられており、環状部20の上端は、接続部30および対向部40に密着していない。すなわち、環状部20の上端と、接続部30および対向部40との間には、上方に開口する開空間S3が形成されており、開空間S3の下方に交差部21が設けられている。
【0021】
接続部30は、Z方向に延びるように直線状に形成されている。接続部30は、鉤状部10と環状部20とを接続する。すなわち、接続部30の上端部は、鉤状部10に連なり、接続部30の下端部は、環状部20に連なる。
【0022】
対向部40は、接続部30に対向しながらZ方向に延びるように直線状に形成されている。対向部40は、X方向において接続部30に対して間隔をあけて設けられており、閉空間形成部50と環状部20とを接続する。すなわち、対向部40の上端部は、閉空間形成部50に連なり、対向部40の下端部は、環状部20に連なる。
【0023】
閉空間形成部50は、鉤状部10の側方で当該鉤状部10と交差するために、X方向に延びるように形成されている。閉空間形成部50は、鉤状部10とともに閉空間S1を形成するとともに、接続部30および対向部40とともに他の閉空間S2を形成する。閉空間形成部50は、対向部40の上端部に連なる第1移動規制部51と、延長部60の上端部に連なる第2移動規制部52とを有する。第1移動規制部51は、Y方向における鉤状部10の両側方のうちの一方である第1側方に配置され、第2移動規制部52は、鉤状部10の両側方のうちの他方である第2側方に配置されている。すなわち、鉤状部10の上方から見て、鉤状部10は、第1移動規制部51と第2移動規制部52の間に位置する。第1移動規制部51は、Y方向に垂直な仮想平面(図示略)において、対向部40の上端部から約95°曲がっている。第1移動規制部51と第2移動規制部52との接続部分は、Z方向に垂直な仮想平面(図示略)において金属製線材1Aが180°曲げられて形成されており、鉤状部10の側方から見て、第1移動規制部51と第2移動規制部52とは重なっている。
【0024】
延長部60は、鉤状部10の側方から見て対向部40と重なるように直線状に形成されている。すなわち、延長部60は、Y方向に垂直な仮想平面(図示略)において、先端が下方を向くように閉空間形成部50の第2移動規制部52から約95°曲がっており、Z方向に延びるように形成されている。
【0025】
次に、図2を参照して、吊り金具1を係止対象物である紐R1に引っ掛ける方法の一例について説明する。
図2(A)に示すように、吊り金具1を紐R1に引っ掛ける際には、一方の片手(図示略)で吊り金具1を握り、矢印M11で示すように接続部30と対向部40とを互いに近づける外力を接続部30および対向部40に対して付与することによって、閉空間S1(図1参照)が下方に開くように金属製線材1Aを弾性変形させる。金属製線材1Aが変形することによって、閉空間S1に紐R1を通すことが可能な開口部S4が生じる。次いで、他方の片手(図示略)で、矢印M12で示すように、紐R1を開口部S4に通して、紐R1に鉤状部10を引っ掛ける。そして、図2(B)に示すように、接続部30と対向部40とを互いに近づける外力が金属製線材1Aに付与されなくなると、金属製線材1Aの弾性によって、矢印M13で示すように接続部30および対向部40が動いて、紐R1を含む閉空間S1が形成される。
【0026】
次に、図3を参照して、吊り金具1に線条部材である紐R2を吊り下げる方法の一例について説明する。
図3(A)に示すように、吊り金具1に紐R2を吊り下げる際には、矢印M21で示すように紐R2を上方から開空間S3に通す。そして、図3(B−1)および図3(B−2)に示すように、紐R2を下方に垂れ下げることによって、交差部21に紐R2を食い込ませ、環状部20に紐R2を吊り下げる。
【0027】
次に、図4を参照して、第1移動規制部51および第2移動規制部52の作用について説明する。図4(A−1)および図4(A−2)は、紐R1に引っ掛けられた吊り金具1の下端を、第1側方(図1参照)に引っ張った状態を示しており、図4(B−1)および図4(B−2)は、紐R1に引っ掛けられた吊り金具1の下端を、第2側方(図1参照)に引っ張った状態を示している。
図4(A−1)および図4(A−2)に示すように、紐R1に引っ掛けられた吊り金具1の下端を、鉤状部10の第1側方に向けて引っ張ると、鉤状部10と紐R1との接触圧が大きくなり、かつ、第1移動規制部51と紐R1との接触圧が大きくなる。また、図4(B−1)および図4(B−2)に示すように、紐R1に引っ掛けられた吊り金具1の下端を、鉤状部10の第2側方に向けて引っ張ると、鉤状部10と紐R1との接触圧が大きくなり、かつ、第2移動規制部52と紐R1との接触圧が大きくなる。すなわち、吊り金具1の下端を引っ張って吊り金具1を紐R1に沿って移動させようとすると、吊り金具1が紐R1を挟み込む。
【0028】
本実施形態の吊り金具1においては以下の効果が得られる。
(1)環状部20は、金属製線材1Aが1周以上巻かれて形成されており、環状部20の下端には、金属製線材1Aが交差する交差部21が設けられている。このため、環状部20の交差部21に線条部材(紐R2)を掛けることによって、線条部材が交差部21に食い込み、環状部20に線条部材を結ぶことなく環状部20から線条部材が外れ落ちないようにすることが可能である。すなわち、線条部材の吊り下げ作業を容易に行うことができ、かつ、線条部材が外れ落ちることを抑制することができる。
【0029】
(2)接続部30と対向部40とを互いに近づける外力が当該接続部30および当該対向部40の少なくとも一方に対して作用するときに、金属製線材1Aが弾性変形して、閉空間S1に係止対象物(紐R1)を通すことが可能な開口部S4が生じる。このため、接続部30および対向部40に対して外力が付与されていない状態において、閉空間S1に係止対象物が通されているときには、係止対象物から吊り金具1が外れることを防ぐことができる。また、接続部30と対向部40とを互いに近づける外力が付与されることによって、係止対象物から吊り金具1を取り外すことが可能となる。すなわち、吊り金具1の使用者は、接続部30と対向部40とを互いに近づける外力を付与する簡単な操作で、係止対象物から吊り金具1を取り外すことができる。
【0030】
(3)鉤状部10と係止対象物(紐R1)との接触圧を高め、かつ、鉤状部10の第1側方に配置された第1移動規制部51と係止対象物との接触圧を高めることによって、係止対象物に引っ掛けられた吊り金具1が、当該係止対象物に対して、第1側方に移動することを規制することができる。また、鉤状部10と係止対象物との接触圧を高め、かつ、鉤状部10の第2側方に配置された第2移動規制部52と係止対象物との接触圧を高めることによって、係止対象物に引っ掛けられた吊り金具1が、当該係止対象物に対して、第2側方に移動することを規制することができる。
【0031】
(4)閉空間S1が閉じている状態において、鉤状部10の側方から見て、鉤状部10の先端を構成する金属製線材1Aの一端が、接続部30と対向部40との間に位置する。このため、閉空間S1が閉じている状態において、鉤状部10の側方から見て、鉤状部10の先端を構成する金属製線材1Aの一端が対向部40と重なる構成に比べて、接続部30と対向部40とを互いに近づける外力が金属製線材1Aに対して作用したときに閉空間S1が直ちに開かない。したがって、接続部30と対向部40とを互いに近づける外力が金属製線材1Aに対して不意に作用したときであっても、係止対象物(紐R1)から吊り金具1が外れることを抑制することができる。
【0032】
(5)閉空間S1が閉じている状態において、鉤状部10の側方から見て、金属製線材1Aの両端が、当該金属製線材1Aの外形から突出していない。このため、鉤状部10の側方から見て、金属製線材1Aの両端が当該金属製線材1Aの外形から突出している構成に比べて、金属製線材1Aの両端が、他の物体(図示略)に引っ掛かったり、他の物体に突き刺さったりすることを防ぐことができる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態の構成を適宜変更することもできる。例えば、上記構成を以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0034】
・上記実施形態では、延長部60は、対向部40と重なるように直線状に形成されているが、延長部60の形状を適宜変更してもよい。例えば、図5に示すように、延長部60が、先端が上方を向くように円弧状に形成されていてもよい。図5の延長部60は、Y方向に平行な仮想軸(図示略)の周りに金属製線材1Aが約半周巻かれて形成されており、延長部60の先端は、閉空間S2に配置されている。
【0035】
・閉空間S1を形成することができるのであれば、鉤状部10および閉空間形成部50の形状を適宜変更してもよい。例えば、上記実施形態における鉤状部10は、鋭角が形成される屈曲形状に形成されているが、円弧状に形成されていてもよい。すなわち、本発明において「鉤状」の形状は、上記実施形態に限定されない。
【0036】
・上記実施形態に記載される閉空間S1から係止対象物が抜けないのであれば、鉤状部10の側方から見て、閉空間S1が僅かに開口していてもよい。すなわち、本発明における「閉空間」は、隣り合う他の空間に対して完全に仕切られた空間であることを意味しない。
【0037】
・上記実施形態では、金属製線材1Aが約1周半巻かれて環状部20が形成されているが、交差部21を形成することができるのであれば、環状部20における金属製線材1Aの巻き数は適宜変更してもよい。すなわち、環状部20は、金属製線材1Aが1周以上巻かれて形成されていればよい。
【0038】
・上記実施形態に記載された作用効果を得ることができるのであれば、例えば、鉄またはアルミニウム等の金属材料からなる金属製線材1Aにより吊り金具1を形成してもよく、また、金属製線材1Aは、断面形状が非円形である角線であってもよい。すなわち、金属製線材1Aの材質、線径、断面形状等は適宜変更してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、吊り金具1は、片手に収まる程度の寸法を有しているが、上記実施形態に記載された作用効果を得ることができるのであれば、係止対象物および線条部材に応じて、吊り金具1の寸法を適宜変更してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、係止対象物は紐R1であるが、吊り金具1を引っ掛けることができるのであれば、係止対象物を適宜変更してもよい。例えば、係止対象物は、金属からなるワイヤーであってもよい。また、上記実施形態では、線条部材は紐R2であるが、吊り金具1に吊り下げることができるのであれば、線条部材を適宜変更してもよい。例えば、線条部材は、糸であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 吊り金具
1A 金属製線材
10 鉤状部
20 環状部
21 交差部
30 接続部
40 対向部
50 閉空間形成部
51 第1移動規制部
52 第2移動規制部
60 延長部
R1 紐(係止対象物)
R2 紐(線条部材)
S1 閉空間
S2 閉空間
S3 開空間
S4 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8