【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(TLC条件)
前処理としてグルコシルセラミド組成物20mgを2mlの0.4N KOH EtOHに溶解し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後は0.4N HCl EtOHを2ml加えて中和し、遠心分離後の上清4μlをTLCに供した。TLCはシリカゲルプレート(メルク社製Silicagel60、層厚0.25m)を使用し、クロロホルム:エタノール:水=65:16:2(容量比)で展開した。展開後はシリカゲルプレートを乾燥させ、アニスアルデヒド硫酸試液を噴霧して加熱することで発色させた。
【0027】
(HPLC−ELSD条件)
前処理としてグルコシルセラミド組成物20mgを2mlの0.4N KOH ETOHに溶解し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後は0.4N HCL ETOHを2ml加えて中和し、塩類をフィルター除去してからHPLCに供した。カラムにはGLサイエンス社製Inertsil 100Aを用い、グルコシルセラミドの検出は蒸発光散乱検出器(島津製ELSD−LTII)で行った。溶出溶媒にはクロロホルムとメタノール:水=95:5(容量比)のグラジエントを用いた。カラム温度は35℃、流速は1ml/min、ドリフトチューブ温度は40℃で窒素ガス圧力は350kPaであった。
【0028】
(酵母の培養)
キャンディダ・ウチリスCS7529株(FERMP−3340)を予めYPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)を含む三角フラスコで種母培養し、これを30L容発酵槽に18L培地に1〜2%植菌した。培地組成は、グルコース4%、燐酸一アンモニウム0.3%、硫酸アンモニウム0.161%、塩化カリウム0.137%、硫酸マグネシウム0.08%、硫酸銅1.6ppm、硫酸鉄14ppm、硫酸マンガン16ppm、硫酸亜鉛14ppmを用いた。培養条件は、pH4.0、培養温度30℃、通気量1vvm、撹拌600rpmで行い、アンモニアを添加しpHのコントロールを行った。16時間菌体培養した後、培養液を回収し、遠心分離により集菌し、180gの湿潤酵母菌体を得た。
【0029】
(酵母エキスの抽出)
菌体培養後の湿潤酵母菌体を蒸留水に懸濁して遠心分離を繰り返すことで洗浄した。洗浄後は湿潤菌体を蒸留水に再度懸濁するか、凍結乾燥または熱風乾燥させた乾燥菌体を蒸留水に懸濁し、以下の条件に調整することでエキス抽出を行った。
自己消化: 1N HClでpH5.0に調整後、55℃で4時間攪拌
酵素抽出:1N NaOHでpH7に調整後、細胞壁溶解酵素(ツニカーゼ)或いはプロテアーゼで55℃、4時間攪拌抽出(再現性確認中)
酸抽出:1N硫酸でpH2以下に調整後、65℃で2分間攪拌抽出
アルカリ抽出:2N NaOHでpH13に調整後、70℃で20分間攪拌抽出
【0030】
(美白効果の確認)
以下の手順に従って美白作用を測定した。サンプルとして比較例にコメ及びトウモロコシ由来のグルコシルセラミドを使用し、実施例に酵母由来グルコシルセラミドを用いた。また乳酸ナトリウムはポジティブコントロールとして使用した。
【0031】
(メラニン産生抑制効果の評価)
比較例1〜2の評価(コメ、トウモロコシ)
植物性グルコシルセラミドであるコメ(比較例1)及びトウモロコシ由来グルコシルセラミド(比較例2)について、美白作用を測定した。
【0032】
B16マウスメラノーマ細胞を6well plateに播種(5×10
3/well)し、24時間前培養した(5%CO
2 、37℃)。培養液は、5%牛胎児血清を含むD−MEM培地を使用した。その後、コメ由来グルコシルセラミド(比較例1)、トウモロコシ由来グルコシルセラミド(比較例2)およびメラニン生成抑制効果が既知となっている乳酸ナトリウム(比較例3)のエタノール溶液を最終濃度が5μg/mLとなるように添加した新鮮な培地に交換した。 播種3日目に再度、比較例1、2のサンプルを添加した培地に交換した。播種6日目に細胞を0.25%トリプシンEDTAで剥がし、遠心(10000rpm.3min)操作によりペレット(細胞)を回収した。回収したペレットはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗ったのち、1mLのPBSで細胞浮遊液を調整して0.8mLをメラニン量の測定に、0.2mLをタンパク質の定量に使用した。
メラニン量の測定用に回収したペレットを150μLの1N NaOHで融解し(100℃、10分)、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの吸光度を測定した。タンパク質の定量用に回収したペレットはBCA法にてタンパク質の定量を行った。エタノールを添加したものをコントロールとし、コントロールを100%として時の比較例1、2を添加して培養した細胞のタンパク質あたりのメラニン量をメラニン生成率として求めた。
【0033】
実施例1の評価(酵母)
次に上記製法により得られた酵母由来グルコシルセラミド組成物(実施例1)について、美白作用を測定した。
【0034】
酵母由来グルコシルセラミド(実施例1)をエタノールに溶解させた。マウスメラノーマB16細胞を6well plateに播種(5×10
3/well)し、24時間前培養した(5%CO
2 、37℃)。培養液は、5%牛胎児血清を含むD−MEM培地を使用した。その後、前記で調整した酵母由来グルコシルセラミド(実施例1)を最終濃度が1、2.5、5、7.5、10、25μg/mLになるように調整して添加した新鮮な培地に交換した。
播種3日目に再度、実施例1の各濃度のサンプルを添加した培地に交換した。播種6日目に細胞を0.25%トリプシンEDTAで剥がし、遠心(10000rpm.3min)操作によりペレット(細胞)を回収した。回収したペレットはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗ったのち、1mLのPBSで細胞浮遊液を調整して0.8mLをメラニン量の測定に、0.2mLをタンパク質の定量に使用した。
メラニン量の測定用に回収したペレットを150μLの1N NaOHで融解し(100℃、10分)、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの吸光度を測定した。タンパク質の定量用に回収したペレットはBCA法にてタンパク質の定量を行った。コントロールを100%としてときの比較例1、2を添加して培養した細胞のタンパク質あたりのメラニン量をメラニン生成率として求めた。
【0035】
比較例1
コメ由来グルコシルセラミドには一般的に市販で入手可能なコメ由来のグルコシルセラミドを使用した。上記のメラニン産生抑制効果の評価法においてコメ由来グルコシルセラミドをグルコシルセラミド濃度5μg/mlとなるように添加したところ、マウスB16メラノーマ細胞におけるメラニン生成率は64%であった。
【0036】
比較例2
トウモロコシ由来グルコシルセラミドには一般的に市販で入手可能なトウモロコシ由来のグルコシルセラミドを使用した。上記のメラニン産生抑制効果の評価法においてコメ由来グルコシルセラミドをグルコシルセラミド濃度5μg/mlとなるように添加したところ、マウスB16メラノーマ細胞におけるメラニン生成率は50%であった。
【0037】
実施例1
菌体培養後に洗浄し、熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体5kgを蒸留水50Lに懸濁し、2N NaOHでpH13.0に調整した後、70℃で30分間エキス抽出した。抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、酵母残渣の蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで洗浄した。洗浄後は酵母残渣を真空乾燥することで3.3kgのエキス抽出酵母残渣が得られた。得られた酵母残渣全量を2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で10時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、酵母残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物300gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC−ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドが2.1%含有されていた。またTLCによる分析の結果、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。繊維芽細胞促進効果の確認には、上記抽出物15gをさらにシリカカラムで精製することで、グルコシルセラミド含量を34%含有する組成物11gが得られた。得られた酵母由来グルコシルセラミド粗精製物を使用してメラニン産生抑制効果を評価した。
【0038】
実施例1の結果を
図1に示す。縦軸は、メラニン生成率(%control),横軸を酵母由来グルコシルセラミドの濃度(μg/ml)とした。、酵母由来グルコシルセラミドは、濃度依存的にマウスメラノーマB16細胞のメラニン生成を抑制した。サンプル添加量2.5μg/mL以上ではコントロールと比較してタンパク質あたりのメラニン量が有意に低値となり、優れた美白作用を示した。
【0039】
また
図2に、実施例1と比較例1、2について、同一濃度で培養した細胞のタンパク質あたりのメラニン量を比較した結果を示した。
図2によれば、酵母セラミド(実施例1) のメラニン生成率は37%であり、比較例1、2のコメやトウモロコシ由来のグルコシルセラミドよりもメラニン生成を効果的に抑制しており、良好な美白作用を示すことが判る。
【0040】
図3には、本願実施例に従って、メラノーマ細胞の黒色の退色を示す写真である。P.Cは、ポジティブコントロールである乳酸ナトリウム、10μg/mlは、本願発明の酵母セラミドの濃度、controlは、ネガティブコントロールである。