特許第6281891号(P6281891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281891
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】携帯型地絡点探査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20060101AFI20180208BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01R31/08
   H01M2/10 U
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-116403(P2013-116403)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-235071(P2014-235071A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会 第61回電設工業展 JECA FAIR2013 開催日 平成25年 5月29日〜5月31日 公開の形態 出品
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東田 浩典
(72)【発明者】
【氏名】椿 真
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢二
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−273291(JP,A)
【文献】 特開2009−002873(JP,A)
【文献】 実開平07−023285(JP,U)
【文献】 米国特許第04884034(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08−31/11
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体を吊り下げバンドによって首からつり下げ、人の前面位置において装置本体を保持し、汎用電池を電源とする携帯型の地絡点探査装置において、汎用電池の交換時期を表示する表示部と、装置本体の上面に設けられ汎用電池を着脱自在とした電池収容部と、を備える一方、
該電池収容部は汎用電池の長手方向が前後方向に向くように配置されていることを特徴とする携帯型地絡点探査装置。
【請求項2】
前記表示部が装置本体上面に設けられており、該表示部が作業者から見て前記電池収容部より前方にあることを特徴とする請求項1記載の携帯型地絡点探査装置。
【請求項3】
前記電池収容部には電池を覆い隠す電池蓋部が備えられ、該電池蓋部には電池蓋部を開閉操作するための開閉操作部が設けられるとともに、該開閉操作部は作業者から見て前方に設けられていることを特徴とする請求項2記載の携帯型地絡点探査装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池収容部を備えた携帯型の地絡点探査装置に関するものである
【背景技術】
【0002】
発電所または変電所において、その設備の内部や、配線などの絶縁が劣化し、地絡が発生すると、発電や変電などの運転に支障をきたす場合がある。
【0003】
一般に、発電所または変電所においては、電源の上流側から下流側に向かって給電線であるフィーダーが複数枝分かれしている。その線路長は数百メートルから数キロメートルに亘る場合があり、地絡が発生すると、電圧変動や停電などの影響が発電所や変電所配下の広範囲に亘って及ぶおそれがある。このため、速やかに地絡箇所の発見、復旧を行わなければならない。
【0004】
発電所または変電所の設備の電気系統は、直流で動作しているものが多く、線路で発生する地絡は直流の地絡であることが多い。ここで直流の地絡を検出する原理について簡単に説明すると、特許文献1に開示されているように、直流電路の接地線に対して交流の探査信号を注入し、該探査信号を線路上で検出することにより地絡箇所を発見する方法が公知である。
【0005】
より詳しくは、直流電路の正極、負極に、夫々探査信号を発生させるための可変抵抗を介して接地された抵抗を設ける。そして、これらの可変抵抗を可変させ接地線に対して交流の探査信号を発生させる。すると、線路において地絡が発生している箇所においては前記交流の探査信号が流れるから、その探査信号を変流器で検出することにより、地絡電流を検出する。
【0006】
この原理を使った携帯型の地絡点探査装置は、探査信号発生器と携帯器とのセットで構成されている。探査信号発生器は、接地線に探査信号を発生させるものであり、携帯器は前記探査信号発生器から出力される探査信号と予め同期をとった後に分離して持ち運ぶものである。携帯器は、前記同期をとった探査信号を内部で基準信号として用い、同期整流によって地絡電流を検出する。
【0007】
前記携帯器は、前記探査信号発生器の探査信号と、携帯器の内部信号が長時間に渡ってズレないように設定されているため、携帯器を探査信号発生器から分離して持ち運んでも、正確に地絡箇所を探査することが可能な構成となっている。
【0008】
非特許文献1は特許文献1の携帯器を具体化したものである。この携帯器は、分離して持ち運ぶ必要があるため、内部に電源を有するが、電源として汎用電池を用いている。
【0009】
ここで、なぜ汎用電池を電源としているかであるが、携帯器用として専用に作成された専用電池であると、該専用電池を予め準備しておいたり、急な所要時にすぐには入手できない可能性があるからである。汎用電池は一般に入手しやすいため、急に地絡点探査の必要性が生じたときでも、すぐに入手でき、使用可能であるからである。
ここでの汎用電池は乾電池や、汎用電池型の充電電池と定義し、また専用電池は機器専用に作成された電池と定義する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−273291号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】テンパール工業株式会社 営業本部、「直流電路地絡点携帯検出器」、テンパール総合カタログ2009→2010、テンパール工業株式会社、2009年4月1日、p. F-35
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、発電所または変電所の直流設備で地絡が発生したときには、発電や変電などの運転に支障をきたす場合があり、しかもその影響は広範囲に及ぶから、地絡箇所の発見、復旧は緊急度が高い。地絡箇所の探査の必要性が生じた場合、地絡点探査装置においては、その電源である電池を取り付けたり、電池を交換する際に手間取り、時間を要すると、それだけ地絡箇所の発見、復旧作業に遅れが生じてしまい、影響が拡大してしまうおそれがある。
【0013】
しかし、非特許文献1の携帯器においては、その電源となる汎用電池が携帯器の筐体内部に収容されている内部ユニットに設けられている。このため地絡探査の作業にあたり、電池交換を行うためには、まず、筐体の周囲に取り付けられている固定バンドを取り外し、内部ユニットのロックを解除する。次に前記内部ユニットの表面両端に設けられている取手を両手でつかんで、持ち上げ、内部ユニットを取り出す。そして、その内部ユニットから電池を取り出し、又は取り付ける操作を行う必要がある。即ち、この携帯器においては、地絡点探査を行う場合には、該携帯器を首からつり下げ使用するが、電池交換する際には首から吊り下げた状態では電池交換が行えず、該携帯器を地面などに一旦降ろす必要があった。しかも両手を使って内部ユニットを取り出す必要があるため、手に持った変流器などを一旦手放す必要があり、電池交換作業のために約5〜10分の時間を要していた。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、装置本体を吊り下げバンドによって首からつり下げ、人の前面位置において装置本体を保持した状態のまま、素早く電池交換が可能な携帯型の地絡点探査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る携帯型の地絡点探査装置は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、請求項1記載の地絡点探査装置は、装置本体を吊り下げバンドによって首からつり下げ、作業者の前方位置において装置本体を保持し、汎用電池を電源とする携帯型の地絡点探査装置において、汎用電池の交換時期を表示する表示部と、装置本体の上面に設けられ、汎用電池を着脱自在とした電池収容部を備える一方、該電池収容部は汎用電池の長手方向が前後方向に向くように配置されていることを特徴とするものである。なお、前記携帯器とは、作業者が携帯して使用するものと定義する。また、汎用電池は乾電池や、汎用電池型の充電電池と定義する。
【0016】
かかる構成によれば、本体ケース上面に汎用電池が着脱自在となった電池収容部が設けられているため、表示部で汎用電池の交換時期が表示された場合、本体ケースを吊り下げバンドによって首からつり下げ、作業者の前面位置において本体ケースを使用状態のまま、本体ケース上面に設けられた電池収容部から古い電池を取り外し、新しい電池を取り付けることができる。これにより、装置を一旦おろす必要がないため、首から吊り下げた状態のままで素早く、約1分程度で電池交換ができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記表示器が本体上面に設けられており、前記表示部が作業者から見て前記電池収容部より前方に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、前記表示器が本体上面に設けられており、前記表示部が前記電池収容部より前方にあることで、首から吊り下げた状態のまま作業者が表示部と電池収容部を同時に確認することができ、表示部に電池交換の表示があれば、手や汎用電池によって表示部が隠れずに、表示部を確認しながらより素早く電池交換をすることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記電池収容部には電池を覆い隠す電池蓋部が設けられており、前記電池蓋部には前記電池蓋部を開閉操作する開閉操作部が備えてあり、前記開閉操作部は作業者から見て、電池蓋部の前方に設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項3の記載の発明によれば、前記開閉操作部は作業者から見て、電池蓋部の前方に設定されているため、首から吊り下げた状態のまま作業者が表示部と電池収容部を同時に確認することができる。そして、仮に電池蓋部が取り外し出来る場合は、例えば前記開閉操作部が電池蓋部の作業者寄りに設定されていた場合には、該電池蓋部の開閉操作時に表示部が手で隠れてしまうが、前記開閉操作部は作業者から見て前方に設定されているため、前記表示部が手で隠れることがない。また仮にフタが取り外し出来る場合は、前記表示部に電池交換の表示があれば、前記電池蓋部の前記開閉操作部の反対側を仮あずけすることが出来るため、より素早く電池蓋部の取り付けができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記電池収容部は汎用電池の長手方向が前後方向に向くように構成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項4の記載の発明によれば、前記電池収容部は着脱自在の汎用電池の長手方向が前後方向に向くように構成されていることによって、安定して素早く電池交換ができる。仮に電池収容部の方向が前後方向に対し、左右方向に構成されていると、汎用電池の取り付け、取り外しの際に、装置本体を首から吊り下げた状態のまま汎用電池を仮あずけするために力を加えると、装置本体が力を加えた方向に左右に振れて安定せず、電池交換に時間がかかる。これに対し、装置本体を首から吊り下げた状態のまま、前記電池収容部は着脱自在の汎用電池の長手方向が前後方向に向くように構成されている場合には、電池の取り付け、取り外しの際に、装置本体を首から吊り下げた状態のまま、汎用電池を電池収容部の手前に仮あずけしても、加わる力は作業者の方向に伝わり、装置本体が作業者の前面位置において作業者の腹に当たって保持されるため安定し、装置本体の位置が振れずに、素早く電池交換が出来る。
【発明の効果】
【0023】
以上の如く、本発明によれば、本体ケースを吊り下げバンドによって首からつり下げ、作業者の前方位置において本体ケースを保持した状態のまま、素早く電池交換が出来る。発電所または変電所において地絡が発生した場合には、電池交換にかかる時間を短縮し、早期に地絡箇所が特定できることにより、発電や変電などの運転に影響を極力及ぼさないようにして地絡点探査作業を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】正面から見た実施形態にかかる装置の状態図
図2】側面から見た実施形態にかかる装置の状態図
図3】上面から見た実施形態にかかる装置の状態図
図4】実施形態にかかる装置の制御ブロック図
図5】実施形態にかかる装置の作業者を含めた装置の上面図
図6】実施形態にかかる装置の表示部詳細図
図7】実施形態にかかる装置の電池残量表示部の詳細図
図8】実施形態にかかる装置の作業者を含めた開閉操作部に指をかけた状態の上面図
図9】実施形態にかかる装置の作業者を含めた電池収容部に蓋を取り外す途中の状態、また取り付ける状態の上面図
図10】実施形態にかかる装置の作業者を含めた電池収容部に蓋を取り外し、電池がある状態の上面図
図11】実施形態にかかる装置の作業者を含めた電池収容部に蓋を取り外し、電池を取り外す途中の状態、また取り付ける状態の上面図
図12】実施形態にかかる装置の作業者を含めた電池収容部に蓋を取り外し、電池を取り外す途中の状態、また取り付ける状態の上面図
図13】実施形態にかかる装置の作業者を含めた電池収容部に蓋を取り外し、電池がない状態の上面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図1乃至図13を用いて詳細に説明する。
【0026】
携帯型の地絡点探査装置は探査信号発生器(図示略)と組み合わせて使用するものである。発電所または変電所で使用し、該発電所または変電所における配線路に発生する地絡箇所を探査するためのものである。本実施形態では、携帯型の地絡点探査装置を携帯器1とし説明を行う。
【0027】
まず本発明の各部の説明と動作原理について説明する。
【0028】
図1図2図3に示すように、携帯器1における本体ケース11の前後左右の側面、底面の5面はアルミパネル15aで構成され、作業者が臨む表面側の1面は鉄製の表面パネル15bによって長方形状の6面で本体ケース11の外郭が形成される。本体ケース11内部には空間があり、その空間には図中点線で示したプリント基板4が設けられる。前記本体ケースの左右側面4箇所に金属製の輪状金具12が取り付けられている。右側面、左側面それぞれ1つの金具に吊り下げバンド13のフック13aを取り付ける。
【0029】
前記吊り下げバンド13は布製で帯状であり、両端には前記フック13aが取り付けられており、本体ケース11の前記輪状金具12に取り付けられる。このように、本体ケース11を吊り下げバンド13によって首からつり下げ、人の前面位置において本体ケース11を保持する状態にしている。
【0030】
図4に示すように前記プリント基板4には、電池の電圧を変換し各部に供給する電源部41と、変流器で検出した信号を増幅し不要な信号を取り除くフィルター部42と、光ファイバーを介して得たの同期信号を電気信号に変換する同期信号変換部43と、データを記録する不揮発性メモリー部44と、データを処理するCPU部45と、表示部とデータの送受信する表示データ通信部46と、パソコンとデータを送受信するUSB通信部47と、及び同期信号をカウントする発振器部48とを備えている。
【0031】
次に前記プリント基板4のCPU部45の働きについて説明する。
前記CPU部は、前記探査信号発生器(図示略)の探査信号を電気信号よってCPU部45に取り込み、取り込んだ探査信号を前記発信器部48でカウントし、CPU部45の内部に探査信号発生装置と同期した同期信号を発生させる。CPU部45は2つの装置の探査信号と同期信号が長時間に渡ってズレないように設定する。
【0032】
図5に示すように、前記表面パネル15bには、作業者からみて中央の前方位置に表示部3が設けられ、前記表示部3の作業者寄りに電池収容部2が設けられている。前記電池収容部2の左側には電源操作部16が、前記電源操作部16の作業者寄りに光ファイバーケーブル接続部17が設けられ、また前記電池収容部2の右には変流器接続部18が、前記変流器接続部18の作業者寄りにUSBケーブル接続部19が、設けられている。これらはすべて本体ケース11上面の表面パネル15bに配置され、携帯器1を首から吊り下げた状態で作業者から一目で確認操作できるように構成されている。
【0033】
前記電源操作部16は、携帯器の電源のON・OFF操作が出来る様に構成されている。
【0034】
前記光ファイバー接続部17は、前記探査信号発生器(図示略)の光ファイバーケーブル接続部(図示略)と光ファイバーケーブル(図示略)で接続され、地絡探査の準備工程で該探査信号発生器から出力される同期信号を内部に取り込むように構成されている。該同期信号を内部に取り込み、同期が完了した後は、前記光ファイバー接続部17に接続された光ファイバーケーブル(図示略)の接続は取り外す。
【0035】
前記変流器接続部18には、地絡信号を検出する変流器14が接続される。前記変流器14は
探査信号を検出するもので、検査対象の電線をクランプして、地絡箇所を探すためのものである。前記変流器14は先端が割れて開閉操作できる分割型の変流器を用いているため、電線を負荷機器から取り外すことなく、即ち停電させることなく自由な位置で検査対象の電線をクランプし、地絡箇所を探査することができる。
【0036】
前記USBケーブル接続部19には、USBケーブルを接続して、該USBケーブルを介してパソコンと接続することによって、不揮発性メモリー部44に記録した情報をパソコンへ送信するように構成している。
【0037】
前記表示部3は矩形の液晶パネルで構成している。前記表示部はバックライトを備えており、暗い場所でも表示を確認することができる。また、液晶パネルはタッチパネル式でもあるため、指で押圧することによって操作が可能である。
【0038】
前記表示部の表示内容を図6に示す。前記表示部3は抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗32、容量分漏れ電流Ic33、対地静電容量34、漏れ電流Io35、現在の日時30、電池残量36、が表示される。また設定ボタン37、記録ボタン38、閲覧ボタン39、が配置される。
【0039】
前記記録ボタン38を押すと、表示内容が不揮発性メモリー部44に記録される。次に前記閲覧ボタン39を押すと不揮発性メモリー部44に記録されたデータが閲覧できる。また前記設定ボタン37を押すと、時刻設定や、地絡抵抗値32があらかじめ設定した値より小さい値になると、画面の色が赤くなり、ブザーを鳴らすといった設定や、データを自動的に記録するという設定ができる。
【0040】
前記電池収容部2は、図5図10図13に示すように、 単3型の汎用電池23 4本が収容される。これら汎用電池は収納状態においては並列に並べられる。なお、電気的には、前記汎用電池は電池バネ24によって直列に接続され、内部回路が動作し得る電圧を確保している。前記汎用電池はプリント基板の電源部41で電圧変換され各部に電源を供給する。電池収容部2は汎用電池23を覆い隠す電池蓋部21があり、電池収容部2、電池蓋部21は樹脂により、また電池バネ24は金属により、構成されている。
【0041】
図7に示すように、前記表示部3の電池残量36の表示は電池電圧に応じて3段階で表示される。電池電圧が4〜4.5Vの時は1段階、4.6〜5Vの時は2段階、5〜6Vの時は3段階となる。
【0042】
前記単3汎用電池はアルカリ汎用電池、マンガン汎用電池が使用でき、またニッケル水素電池などの二次電池も使用できる。
【0043】
次に、地絡探査作業する前の準備工程について説明する。
【0044】
発電所または変電所の直流の設備地絡が発生し、電源とアース間の電圧バランスを測定する直流地絡過電圧継電器64D(ロクヨンディー)の警報設定値を下回った場合、地絡警報が発報される。地絡が発生すると発電や変電などの運転に支障をきたし、事故が発生する可能性があるため、設備を保守する作業者は、早期に地絡箇所の発見をする必要がある。ここで、64Dとは、JEM1090(日本電機工業会規格1090)で定められた直流地絡過電圧継電器のことである。
【0045】
まず、はじめに、携帯器1の光ファイバーケーブル接続部17に、光ファイバーケーブルを接続する。また変流器接続部18に変流器14を接続する。
【0046】
次に、前記電源操作部16を操作し電源をONし、前記探査信号発生器の探査信号と同期信号を、携帯型の地絡点探査装置1のCPU部45に同期信号を記録する。同期信号の記録が終了すると光ファイバーケーブルを携帯型の地絡点探査装置1から取り外す。また、変流器14を前記探査信号発生器のクランプコイル部から取り外す。以上のような手順で準備工程を行う。
【0047】
次に、地絡点探査作業について説明する。
【0048】
まず、作業者は図1図2に示すように、本体ケース11を吊り下げバンド13によって首からつり下げ、作業者の前面位置において本体ケース11を保持する。続いて、作業者は変流器14を携帯し、発電所または変電所などの直流設備の上流の配線が設置された場所に移動する。
【0049】
次に、上流の配線場所まで移動したら、目の前にあるフィーダーのPN線夫々に変流器14を変流器14でクランプさせていく。そして、各フィーダーに変流器をクランプさせる度に、作業者は携帯器1を首から吊り下げた状態で、図6の表示部を確認する。
【0050】
作業者は図6の表示部の抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗32を確認し、クランプしたフィーダに地絡が発生しているか否かを判断し地絡箇所を特定する。抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗32が表示された場合、現在クランプしているフィーダーの下流位置に地絡が発生していることが判断できる。一方、抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗32が表示されなかった場合には、そのフィーダーは正常であることが分かるため、別のフィーダーのPN線を変流器14でクランプするため場所を移動する。
【0051】
地絡の発生があるフィーダーを特定できた場合は、そのフィーダーの下流において地絡が発生していることであるので、作業者は、該当するフィーダーのさらに下流へ移動する。移動は屋外や、離れた場所に移動することもあり、設備の規模によっては移動距離が長いこともある。
【0052】
そして、下流において複数のフィーダーが分岐している場所において、夫々のフィーダーを順番に変流器14でクランプしていき、この中でどのフィーダーに地絡が発生しているのかを特定する。特定の機器の電源の入り口と出口のPN線を変流器14クランプし、入り口をクランプしたとき抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗R32が表示され、特定の機器の電源の出口をクランプしたとき、抵抗分漏れ電流Ir31、地絡抵抗R32が表示されなければ、その特定の機器で地絡があることが特定できる。
【0053】
フィーダーが更に分岐している場合には、より下流位置で分岐している場所に移動して地絡が発生しているフィーダーを特定する作業を繰り返す。
【0054】
以上のように地絡点探査作業を行うのだが、移動距離が長かったり、フィーダーの特定が難航すると、地絡点探査作業の途中で、汎用電池の電池容量が消耗してしまうことがある。このようなときには、電池交換が必要となる。
【0055】
次に、電池交換を行う場合について説明する。
【0056】
地絡点探査中に電池残量36が少なくなった場合、電池交換を行う。電池交換に時間がかかると地絡点の発見に時間を要し、発電や変電などの運転に支障をきたす場合があるため、電池交換は早急に行う必要がある。
【0057】
地絡探査中は、図1図2に示すように、本体ケース11を吊り下げバンド13によって首からつり下げ、人の前面位置において本体ケース11を保持した状態のままで使用している。
【0058】
初めに、首から吊り下げた状態で本体ケース11上面に設けられた図6の表示部3に電池残量3の状態で確認できる。首から吊り下げた状態で、電池残量36が1段階を表示すれば汎用電池の交換時期を認識することができる。そして、本体ケース11上面に設けられ、汎用電池23が着脱自在となった電池収容部2があるため、首から吊り下げた状態のまま電池交換作業を開始することができる。
【0059】
次に、首から吊り下げた状態のまま、図8に示すとおり、作業者は前記電池収容部2の汎用電池23を覆い隠す電池蓋部21を開閉操作する開閉操作部22に指をかける。そして、図9に示すように手前側に引き上げ、電池蓋部21を取り外す。前記電池収容部2は作業者から見ると前記表示部3の手前側に配置されることで、電池交換の時に手や汎用電池によって表示部が隠れず、表示部3を確認しながらより素早く汎用電池23の取り外しができる。
【0060】
次に、首から吊り下げた状態のまま、図11に示すとおり、前記電池収容部2の古い汎用電池23の長手方向に指をかけて図12のとおり取り外す。この場合も前記電池収容部2は作業者から見ると前記表示部3の作業者の手前に配置されることで、電池交換の時、手や汎用電池23によって表示部3が隠れず、表示部3を確認しながらより素早く汎用電池23の取り外しができる。
【0061】
次に、図11に示すとおり、汎用電池23の長手方向の表示部3側に指をかけて、手前に引き上げて取り外す。このとき、電池収容部2の着脱自在の汎用電池23の長手方向が前後方向に向くように配置されているため、図12に示すとおり汎用電池を電池収容部2の手前に仮あずけし取り外しを行っても、本体が作業者の前面位置において保持されて安定するから、本体ケース11が人の前面位置において本体ケース11が作業者の腹に当たって動かず、素早く、汎用電池23の取り外しができる。
【0062】
次に、古い汎用電池23の取り外しを行った後、新しい汎用電池23を電池収容部2に取り付ける。図12に示すとおり、まず新しい汎用電池23を電池収容部2の手前に仮あずけをし取り付けを行う。前記電池収容部2の着脱自在の汎用電池23の長手方向が前後方向に向くように配置されているため、新しい汎用電池23を取り付けるとき、本体が人の前面位置において本体ケース11を保持されるため、本体ケース11が人の前面位置において本体ケース11が作業者の腹に当たって動かないため、素早く、汎用電池23の取り付けができる。
【0063】
最後に、前記電池収容部2の汎用電池23を覆い隠す電池蓋部21を取り付ける。電池蓋部2の開閉操作部22は作業者からみると表示部3側にあるため、首から吊り下げた状態のまま、図12のとおり、電池蓋部2の開閉操作部22の手前側を仮あずけする位置が確認でき、より素早く電池蓋部21の取り付けができる。
【0064】
以上のように、発電所または変電所において地絡が発生し、地絡が発生した箇所を特定する必要が生じた場合には、作業者は、速やかに地絡点探査作業を行うことができる。本発明における地絡点探査装置においては、地絡点探査作業中に電池交換の必要が生じた場合には、携帯器1を首から吊り下げた状態のまま、簡単に素早く電池交換が行うことができ、電池交換にかかる時間を短縮しつつ、早期に地絡箇所を特定することができる。
なお、本実施形態では、電池収納部を表面パネル15bの中央部に設けたが、例えば、作業者からみて左寄り又は右寄りに左右方向にずらして配置しても、電池交換のときの仮あずけのときに加わる力を作業者が保持できる程度で配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 携帯器
11 本体ケース
12 金具
13 つり下げバンド
13a フック
14 変流器
15a アルミパネル
15b 表面パネル
16 電源操作部
17 光ファイバーケーブル接続部
18 変流器接続部
19 USBケーブル接続部
2 電池収容部
21 電池蓋部
22 開閉操作部
23 汎用電池
24 電池バネ
3 表示部
30 現在の日時
31 Ir
32 抵抗値
33 Ic
34 静電容量値
35 Io
36 電池残量
37 設定ボタン
38 記録ボタン
39 閲覧ボタン
4 プリント基板
41 電源部
42 フィルター部
43 同期信号変換
44 不揮発揮発性メモリー部
45 CPU部
46 表示データ通信部
47 USB通信部
48 発信器部
図1
図2
図3
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