(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281903
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】差込接続ユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 83/20 20060101AFI20180208BHJP
H01H 83/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
H01H83/20
H01H83/02 F
H01H83/02 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-24073(P2014-24073)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-153485(P2015-153485A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】東田 浩典
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−327119(JP,A)
【文献】
特開平9−147728(JP,A)
【文献】
特開2009−81929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/20−83/22
H01H 83/02
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセント回路に接続して用いられる差込接続ユニットであって、
コンセントに設けられた夫々の極におけるプラグ受けに対応して差し込まれるプラグ刃と、
該プラグ刃に電気的に接続されて駆動用電源を取得する電源回路と、
該電源回路から電源が供給されて、地震による揺れを検知し出力信号を出力する感震センサ部と、
該感震センサ部からの出力信号を受けて前記コンセント回路に地絡電流を発生させる地絡電流発生部とを有するとともに、
前記夫々のプラグ受けにおける極間の電圧を測定し極性の確認を行う極性確認部を備えたことを特徴とする差込接続ユニット。
【請求項2】
前記極性確認部により確認された極性確認結果を表示する極性表示部を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の差込接続ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグ受けを備えたコンセントに接続される差込接続ユニットに関し、より詳しくは、地震による揺れを検出して前記コンセントが接続された電気回路上の回路遮断器を作動させる機能を備えた差込接続ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から地震による揺れを検出してコンセントが接続された電気回路上の回路遮断器を作動させる機能を備えた差込接続ユニットは種々開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された例について
図4を用いて説明する。
図4に記載された差込接続ユニットは、低圧電源の母線1に通じるコンセントタップ2及びコンセントプラグ4に接続される中間コンセントプラグ3として構成されている。母線1には前記回路遮断器としての漏電ブレーカ11が配設され、前記コンセントタップ2は分岐ブレーカ12を経て屋内の適宜箇所に配設されている。コンセントタップ2には、差込電極受け金具21、21と差込アース電極受け金具22が設けられ、この差込アース電極受け金具22は接地されている。
【0004】
前記中間コンセントプラグ3には、異常状況としての地震による揺れを検知する異常検出器35が備えられており、該異常検出器35が揺れを感知すると電気信号が地絡発生回路のスイッチ部37に出力される。そして、このスイッチ部37が作動し、差込電極受け金具が設けられた給電電路と差込アース電極受け金具が設けられた接地電路との間に微弱な地絡電流を発生させる。これにより、電路に生じた電気回路上の不平衡電流を母線1に配設された漏電ブレーカ11が検知して回路遮断器が作動し、電路全体の電流を遮断する。
【0005】
このように、特許文献1においては、従来から用いられている漏電ブレーカ11を備えた給電回路において、通常に配置されている任意のコンセントタップ2に異常検出器35等を備えた中間コンセントプラグ3を備えて構成し、特別な取付工事を必要とすることなく、希望する場所における地震などの異常を検知し、前記漏電ブレーカ11を作動させることにより、電路の電流を遮断して電気火災を未然に防止している。
【0006】
また、特許文献2に開示された例について
図5を用いて説明する。
図5に記載された差込接続ユニットは、特許文献1と同じく、低圧電源の母線24に通じるコンセントタップ26に接続されるコンセントプラグ10として構成されている。差込接続ユニットを構成するケース12内には漏電発生部が備えられており、地震による揺れを検知すると、漏電発生部を作動させて屋内商用電線に不平衡電流を発生させることによって、各家屋に通常設置されている漏電ブレーカを作動させて家屋の通電を遮断する。このように、特許文献2においても、特別な取付工事を必要とすることなく、地震などの異常を検知した場合には、コンセント回路が接続される漏電ブレーカを作動させて、電路の電流を遮断して電気火災を未然に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−327119号公報
【特許文献2】特開平9−147728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地震を検知した場合に、電気回路上に漏電電流を発生させることにより、回路遮断器を作動させて電流を遮断させるコンセントプラグ型の差込接続ユニットは、その導入にあたり特別な取付工事を必要とすることなく導入できるため大変利便性がよいが、その一方で、該差込接続ユニットが正常に動作し得る前提条件として、コンセント回路における電気配線が正しく配線されている必要がある。
【0009】
即ち、コンセントに接続される極として、電圧極(L)、中性極(N)、接地極(E)の3つの極があるが、これら極の接続が、所定の端子に正しく接続されている場合にのみ、前記差込接続ユニットは初めて正常に動作し得るものなのである。
【0010】
全てのコンセントにおける配線は、正しく配線されていることが望ましいが、稀に、配線工事の際に極性が誤って接続されたり、経年的な使用を経るうちに、端子の接触不良が生じ、導通不良に至るおそれがあった。
【0011】
このような場合において、差込接続ユニット自体には電源が供給されて動作しているにも関わらず、発生させた不平衡電流たる擬似的な漏電電流が電気回路上の回路遮断器によって検出されなかったり、また、差込接続ユニットに正しい電源供給が行われず、正しい動作が行われない状況が発生し得るという課題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、差込接続ユニットが接続されるコンセントにおいて、正常に動作し得る配線状態が確保されているか否かを確認する機能を備えた差込接続ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明においては、コンセント回路に接続して用いられる差込接続ユニットであって、コンセントに設けられた夫々の極におけるプラグ受けに対応して差し込まれるプラグ刃と、該プラグ刃に電気的に接続されて駆動用電源を取得する電源回路と、該電源回路から電源が供給されて、地震による揺れを検知し出力信号を出力する感震センサ部と、該感震センサ部からの出力信号を受けて前記コンセント回路に地絡電流を発生させる地絡電流発生部とを有するとともに、前記夫々のプラグ受けにおける極間の電圧を測定し極性の確認を行う極性確認部を備えたことを特徴として差込接続ユニットを提供したものである。
【0014】
上記の構成によれば、差込接続ユニットに極性確認部を備えて構成したため、該差込接続ユニットが正常に動作し得る前提条件となる、コンセント回路における電気配線が正しく配線されているか否かを確認したうえで、差込接続ユニットの使用を行うことができる。また、経年的に生ずるおそれがある配線不良についても検出できるため、常に正常な待機状態であるか否かを確認できる。
【0015】
第2の発明は、前記極性確認部により確認された極性確認結果を表示する極性表示部を更に備えたことを特徴とするものである。
【0016】
上記の構成によれば、差込接続ユニットの使用時において、接続するコンセントにおける配線が正しいか否かをその場で視覚的に確認することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、差込接続ユニットが接続されるコンセントにおいて、正常に動作し得る配線状態が確保されているか否かを確認できる差込接続ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係る差込接続ユニットが適用される電路の概略図である。
【
図2】実施形態1に係る差込接続ユニットのブロック構成図である。
【
図3】各極間における電圧の状態と、配線の状態を対応させたテーブル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的には例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限するものではない。
【0020】
実施の形態に示した電路は、該電路に介在する変圧器2の2次巻線の中性線側が大地に第一の電気的端子21を設けて接地されるとともに、該変圧器の負荷側において分電盤1が設けられ、該分電盤1側から大地に向けて設けられた第二の電気的端子104によって電気機器などの接地を行うよう構成された接地系統を有する電路である。
【0021】
また、本願では、社団法人日本電気協会発行の内線規程 電気技術規程使用設備編 JEAC8001に定められたとおり、中性線は多線式電路の電源の中性極に接続される電線をいい、低圧電路において技術上の必要により接地された中性線又は接地された一線のことを接地側電線という。例えば単相3線式電路においては、電圧極として2つの電圧極、即ちL1極、L2極があり、中性極としてN極がある。また、単相2線式電路においては、電圧極と接地された接地側電線がある。接地極をE極とする。
【0022】
図1において、1は分電盤,101は回路遮断器たる主幹ブレーカで漏電検出機能を有しているものである。102は主幹ブレーカ101の負荷側に接続される分岐ブレーカで複数存在する。103は大地に接続される接地線を接続するとともに、分岐回路における接地線を接続するための集中接地端子である。
【0023】
105は、分岐回路におけるコンセントである。該コンセント105には、通常、前記L1極、L2極のうち一方の電圧極と中性極とアース極とが接続される。
【0024】
3は差込接続ユニットである。
図2において、差込接続ユニット3は、電圧極に接続するプラグ刃31と、中性極に接続するプラグ刃32と、接地極に接続するプラグ刃33と、これらプラグ刃に電気的に接続されて駆動用電源を取得する電源回路34と、電源回路34から電源を供給されて、地震による揺れを検知し出力信号を出力する感震センサ部35と、感震センサ部35からの出力信号を受けて信号処理を行う信号処理部30と、該信号処理部30からの出力信号を受けて、前記コンセント回路105に地絡電流を発生させる地絡電流発生部36と、夫々のプラグ受けにおける極間の電圧を測定し極性の確認を行う極性確認部37とを備えて構成されている。該極性確認部37からの信号は信号処理部30に出力され、該信号処理部30による処理を受けて、極性表示部39に表示内容が表示される。
【0025】
極性表示部39はLEDを用いて構成されており、極性が正常であるか否かを、点灯色を変化させて表示することにより視認可能としている。極性が正常である場合には青色を点灯させ、極性が異常である場合には赤色を点灯させている。また、LEDの近傍にはその点灯がどういう意味であるのかを識別し得るように、例えば「青:正常,赤:異常」などと付記している。
【0026】
次に、コンセント105に接続される配線について説明する。接地極付きコンセントは極配置に応じてそれぞれ分電盤のL極(L1,L2)、N極、E端子に導体で接続される。コンセントの各極が分電盤の各極導体に正常に接続されている場合は、コンセントのL−N極間は約100V、L−E極間も約100V、N−E極間は無電圧となる。
【0027】
極性確認部37では、前述の各極間の電圧を測定し、その結果をテーブルに基づいて判定する。なお、テーブルにおいて100V、0Vと記載している箇所については夫々判断に電圧範囲があり、その範囲内であれば100V、あるいは0Vと判断するようにする。例えば100Vの場合は90〜110Vの範囲内であれば100Vと判断し、0Vの場合は0〜5Vの場合に0Vと判断する。
【0028】
本テーブルに基づき、接続極性が正常であると判断できれば、極性表示部39により配線の接続は正常であることを表示する。一方、接続極性が間違っている場合、例えば、中性極(N)と接地極(E)の接続が違っている場合には、地絡電流発生部から地絡電流を出力させても、該地絡電流は電圧極(L)と中性極(N)の間を流れるため、主幹ブレーカ101は作動しないこととなり、差込接続ユニットの正しい動作が行えない。
【0029】
コンセントの配線に異常がある場合には、そもそも差込接続ユニット1が動作しても主幹ブレーカが作動しないおそれがあるばかりか、差込接続ユニット1自体に正しい電圧が供給されず、単に形だけコンセントに差込接続ユニット1を取り付けられている状態になるおそれがあるが、このような状況を早期に回避できる。
【0030】
また、38は電源回路34および信号処理部品配置スペース30と接続される蓄電部である。地震発生後、電力会社等からの給電が停止した場合に、地震が発生したことを一定時間信号処理部にて記憶しておくために設けている。蓄電部38は、コンデンサを用いて構成しているが、その他一次電池や二次電池を用いて構成してもよい。
【0031】
また、40はテスト動作回路である。該テスト動作回路40は操作スイッチを用いて構成しており、信号処理部30に接続されている。該操作スイッチが操作されるとスイッチ回路が閉回路となり、信号処理部30から、地絡電流発生部36に出力信号が送られ、前記コンセント回路105に地絡電流を発生させる。
【0032】
地絡電流は、電圧極に接続するプラグ刃31と接地極に接続するプラグ刃33の間に印加される。なお、地絡電流を、中性極に接続するプラグ刃32と接地極に接続するプラグ刃33との間に印加するよう構成してもよい。
【0033】
このように、夫々のプラグ受けにおける極間の電圧を測定し極性の確認を行う極性確認部を備えて差込接続ユニットを構成したので、そもそも差込接続ユニットが正常に動作し得る配線状態が確保されているか否かを確認することができる差込接続ユニットを提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 分電盤
101 主幹ブレーカ
102 分岐ブレーカ
103 集中接地端子
104 第二の電気的端子
105 コンセント
2 変圧器
21 第一の電気的端子
3 差込接続ユニット
30 信号処理部
31 電圧極のプラグ刃
32 中性極のプラグ刃
33 接地極のプラグ刃
34 電源部
35 感震センサ部
36 地絡電流発生部
37 極性確認部
38 蓄電部
39 極性表示部
40 テスト動作部