【実施例】
【0037】
以下、本発明にかかわるコンデンサ素子の実施例を図面を参照して説明する。まず、コンデンサ素子の概要を
図6〜
図9を用いて説明する。
図6(a)は金属化フィルム多層体9の正面図、
図6(b)は薄肉扁平巻芯部2aの正面図、
図7はコンデンサ素子Cの斜視図、
図8(a),(b),(c)および
図9(a),(b),(c)はコンデンサ素子Cの製造過程を示す正面図である。これらの図において、1は先巻用フィルム、2は巻芯、2aは薄肉扁平巻芯部、3は金属化フィルム、4は金属化フィルム巻回体、5は外装フィルム、6は複合フィルム巻回体、7は熱溶着箇所、8はシールヒータ、9は金属化フィルム多層体、9aは金属化フィルム多層体9における長径方向に沿った平坦面部、9bは金属化フィルム多層体9の幅方向両側の円弧状曲面部、10は電極引出し部(メタリコン)、Cはコンデンサ素子である。
【0038】
図6および
図7に示す薄肉扁平巻芯部2aは元は
図8(a)に示す円筒状の巻芯2であったものが
図9(a),(b),(c)の過程で扁平化されたものであり、
図6(b)に示すようにプラスチックフィルムの重ね巻きの薄肉な扁平体とされたものである。
図8(b)に示す金属化フィルム3は誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成したもので、これが巻芯2の外周部で多重に巻回されて金属化フィルム巻回体4が構成されている。誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルム3は2シート重ねの状態で巻回されている(3U,3L。詳しくは後述する)。
図6、
図7に示す金属化フィルム巻回体4は細長小判状の扁平体に成形されているが、元は
図8(b),(c)に示すように、円筒状の巻芯2の外周部に2シート重ねの金属化フィルム3(3U,3L)を多重に巻回したもので、
図9(a),(b),(c)の過程で扁平化されたものである。外装フィルム5は金属化フィルム巻回体4の外周部に多重に巻回されたもので、
図6、
図7の状態では細長小判状の扁平体をなしている。巻芯2(薄肉扁平巻芯部2a)とその外周の金属化フィルム巻回体4とさらにその外周の外装フィルム5とで複合フィルム巻回体6が構成されている。複合フィルム巻回体6においては、
図8(c)の過程でシールヒータ8によって外装フィルム5の巻き終わりの複数箇所が熱溶着されている。この熱溶着は外装フィルム5をそれ自身の重なり部分どうしで巻回固定するもので、複数の熱溶着箇所7は細長小判状の複合フィルム巻回体6すなわち金属化フィルム多層体9の周方向で等間隔を隔てて均等に配置されている。細長小判状の金属化フィルム多層体9は、上下方向で対向する長径方向に沿った平坦面部9a,9aと幅方向両側の2つの円弧状曲面部9b,9bからなるが、複数の熱溶着箇所7は上下の平坦面部9a,9aの中央位置に配置されるのが好ましい。
【0039】
細長小判状の金属化フィルム多層体9は
図9(a),(b),(c)の過程で複合フィルム巻回体6に対するプレスによって扁平加工されたものである。この金属化フィルム多層体9は、その扁平率が0.7以上となる条件下で扁平加工される。
【0040】
以上のようにして得られた細長小判状の金属化フィルム多層体9は、
図7に示すように、その軸方向両端に電極引出し部(メタリコン)10,10が形成され、高扁平のコンデンサ素子Cが得られる。
【0041】
次に、
図8および
図9を用いて製造の過程を説明する。
図8(a)〜(c)と
図9(a)〜(c)は製造過程の一連の流れを示す。
【0042】
図8(a)に示すように、先巻用フィルム1を多重に巻回することにより薄肉円筒状の巻芯2を作製する。次に、
図8(b)に示すように、巻芯2の外周に対して2シート重ねの金属化フィルム3を多重に巻回することにより、厚肉円筒状の金属化フィルム巻回体4を作製する。金属化フィルム3はポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成したものであり、これの2シートを重ね合わせた状態で巻回される(詳しくは後述する)。金属化フィルム巻回体4はコンデンサ素子Cの主部を形成する。
【0043】
次に、
図8(c)に示すように、金属化フィルム巻回体4に対して外装フィルム5を多重に巻回することにより厚肉円筒状の複合フィルム巻回体6を作製する。外装フィルム5はコンデンサ素子Cの保護機能を有する。複合フィルム巻回体6は巻芯2と金属化フィルム巻回体4と外装フィルム5との複合体である。
【0044】
次に、
図9(a),(b),(c)に示すように、プレス加工により複合フィルム巻回体6に対して直径方向両側から中心軸の方向に向かう押圧力を加え、複合フィルム巻回体6を扁平成形する。
図9(a)→
図9(b)→
図9(c)のようにプレスによる加圧成形が進むにつれて複合フィルム巻回体6の扁平率が次第に大きくなり、細長い小判状の金属化フィルム多層体9が得られる(
図9(c)参照)。この金属化フィルム多層体9は加圧成形巻回体であるとも言える。プレスによる加圧成形は、仕上げられた金属化フィルム多層体9において、その扁平率が0.7以上となるように行われる。
【0045】
次に、金属化フィルム3における金属蒸着のパターンについて
図1〜
図5を用いて詳しく説明する。
【0046】
図1(a)は金属化フィルム3の一部を切り取って示す平面図、
図1(b)は
図1(a)におけるII−II線での断面図、
図1(c)は
図1(a)におけるIII−III線での断面図である。
図2(a)は重ね合わされた2シートの金属化フィルム3(3U,3L)を示す平面図、
図2(b)は
図2(a)におけるII−II線での断面図、
図3は分割電極15と絶縁スリット14の詳細を示す拡大平面図、
図4は保安機構を説明する斜視図、
図5は2シート重ねの金属化フィルム3U,3Lの巻回の様子を示す斜視図である。
【0047】
これらの図において、Xは金属化フィルム3の長さ方向、Yは幅方向である。
図1(b)に示すように、金属化フィルム3は誘電体フィルム11の表面に金属蒸着電極12を形成したものである。その金属化フィルム3の表面は
図1(a)に示すように、金属蒸着電極12が形成された蒸着エリアAと金属蒸着電極12が形成されていない非蒸着エリアBとに分かれている。蒸着エリアAは
図1(a)においてハッチングを施した領域であり、非蒸着エリアBはハッチングを施していない白抜きのI字形およびT字形の絶縁スリット14群ならびに絶縁マージン18の領域である。蒸着エリアAは金属化フィルム3の全面において絶縁スリット14群および絶縁マージン18を除くエリアになる。
【0048】
別の観点から見ると、金属化フィルム3における蒸着エリアAは連続電極領域A1と分割電極領域A2とに分かれている。連続電極領域A1はフィルム長さ方向Xに沿って連続する状態で展開される金属蒸着電極の領域であり、分割電極領域A2はフィルム幅方向Yで連続電極領域A1に隣接し、かつ並行する状態でフィルム長さ方向Xで一定間隔置きに分断された状態に展開された領域である。このようなフィルム長さ方向Xに沿った連続電極領域A1と分割電極領域A2とがフィルム幅方向Yで交互に複数組(図示例では3組、合計6本)配列されている。連続電極領域A1には1列目を形成する第1の連続電極領域A1aと2列目および3列目を形成する第2の連続電極領域A1b,A1cとがある。1列目を形成する第1の連続電極領域A1aはフィルム幅方向Yの一端寄り(
図1で+Y側)に位置し、金属化フィルム多層体9の電極引出し部(メタリコン)10に対して電気的に接続されるべきフィルム側縁に沿う連続領域である。2列目および3列目を形成する第2の連続電極領域A1b,A1cは金属化フィルム3の側縁に対しては臨むことなくフィルム幅方向Yでの中間位置(非側縁位置)でフィルム長さ方向Xに展開する連続領域である。1列目を形成する第1の連続電極領域A1aではフィルム端縁に沿って蒸着金属の厚さが他の領域よりも厚いヘビーエッジ部13が形成されている。
【0049】
分割電極領域A2(A2a,A2b,A2c)はフィルム長さ方向Xで一定間隔を置いて分散配置されたフィルム幅方向Yに細長い多数の絶縁スリット14によってフィルム長さ方向Xで分断配置された多数の分割電極15の集合として構成されている。分割電極15と絶縁スリット14の詳細を示す
図3のように、個々の分割電極15の形状は長方形となっている(ハッチング参照)。絶縁スリット14は形状的な構造をもち、フィルム幅方向Yに沿って細長く延在する細幅長尺スリット部14aと、この細幅長尺スリット部14aの端部から隣接する細幅長尺スリット部14aの端部との間でヒューズ部16(灰色の塗りつぶし参照)を介在させるべくフィルム長さ方向Xに延出される細幅短尺スリット部14bとから構成されている。分割電極15群とヒューズ部16群との構成をもって保安機構17が形成されている。
【0050】
1列目と2列目の分割電極領域A2a,A2bにおいては、絶縁スリット14は細幅長尺スリット部14aとその両端でフィルム長さ方向Xの両側に延びる細幅短尺スリット部14b,14bから構成され、全体として「I字形」となっている(
図3の上段参照)。3列目の分割電極領域A2cにおいては、絶縁スリット14は細幅長尺スリット部14aとその一端のみでフィルム長さ方向Xの両側に延びる細幅短尺スリット部14bから構成され、全体として「T字形」となっている(
図3の下段参照)。金属化フィルム3のフィルム幅方向Yにおける一側(図の上側)の側縁は金属化フィルム多層体9の軸方向(フィルム幅方向Y)の一端面に金属溶射によって接続することとなる電極引出し部(メタリコン)10に対して電気的に接続される。これに対して、金属化フィルム3のフィルム幅方向Yにおける他側(図の下側)の側縁は同様の電極引出し部10に対しては電気的に接続されない。もし、金属化フィルム3の両側縁とも電極引出し部に接続されるとなると、重ね合わせ方向で対向する2枚一対の金属化フィルム3U,3L間がショートしてしまうことになって、これは避けなければならない。これを保障するのが絶縁マージン18であり、電極引出し部10に対して電気的に接続されない側つまり図示例では金属化フィルム3の下側の側縁に沿ってフィルム長さ方向Xに連続して展開される非蒸着エリアBとなっている。そして、3列目の「T字形」の絶縁スリット14(非蒸着エリア)はその細幅長尺スリット部14aの他端側(細幅短尺スリット部14bのない側)が絶縁マージン18(非蒸着エリア)に繋がっている。
【0051】
上記のように構成された金属化フィルム3(3U,3L)を2シート用意する。
図2に示すように、金属化フィルム3Uに対して金属化フィルム3Lを180°反転した状態で上下2層に重ね合わせる。上層の金属化フィルム3Uにおいては、フィルム幅方向Yのプラス側(+Y)からマイナス側(−Y)にかけて、1列目の連続電極領域A1a、1列目の分割電極領域A2a、2列目の連続電極領域A1b、2列目の分割電極領域A2b、3列目の連続電極領域A1c、3列目の分割電極領域A2c、絶縁マージン18の順で並行している。下層の金属化フィルム3Lにおいては、上層の金属化フィルム3Uとはフィルム幅方向Yでの順序が逆で、フィルム幅方向Yのマイナス側(−Y)からプラス側(+Y)にかけて、1列目の連続電極領域A1a、1列目の分割電極領域A2a、2列目の連続電極領域A1b、2列目の分割電極領域A2b、3列目の連続電極領域A1c、3列目の分割電極領域A2c、絶縁マージン18の順で並行している。
【0052】
上層の金属化フィルム3Uの側縁に沿う1列目の連続電極領域A1aに対し、その直下に下層の金属化フィルム3Lの3列目の分割電極領域A2cと絶縁マージン18とが重ね合わせ方向で対向する。上層の金属化フィルム3Uにおける2列目および3列目の連続電極領域A1b,A1cはそれぞれ下層の金属化フィルム3Lにおける2列目および1列目の分割電極領域A2b,A2aに対向している。また、上層の金属化フィルム3Uにおける1列目、2列目および3列目の分割電極領域A2a,A2b,A2cはそれぞれ下層の金属化フィルム3Lにおける3列目、2列目および1列目の連続電極領域A1c,A1b,A1aに対向している。上層の金属化フィルム3Uの絶縁マージン18に対し、その直下に下層の金属化フィルム3Lの側縁の1列目の連続電極領域A1aが重ね合わせ方向で対向している。
【0053】
上記の重ね合わせ方向の対向関係は上層の金属化フィルム3Uを起点として説明したものであるが、下層の金属化フィルム3Lを起点として重ね合わせ方向の対向関係を説明しても全く同様の説明となる。端的に言うと、一方の金属化フィルムにおける分割電極領域は他方の金属化フィルムにおける連続電極領域に対し重ね合わせ方向で対向しているということである。
【0054】
図3に示すように、金属化フィルム3の表面における蒸着部は複数の分割電極15とヒューズ部16からなる保安機構17を有している。金属化フィルム3の表面は、分離される状態で展開する絶縁スリット14(細幅長尺スリット部14aと細幅短尺スリット部14b)によって仕切られた分割電極15群およびヒューズ部16群、さらに連続電極領域A1(A1a,A1b,A1c)を含む蒸着エリアAと、絶縁スリット14群および絶縁マージン18を含む非蒸着エリアBとに分けられている。そして、蒸着エリアAの合計面積S
A に対する非蒸着エリアBの合計面積S
B の割合すなわち非蒸着面積割合γが0.09またはそれ以下に設定されている。つまり、
非蒸着面積割合γ=非蒸着エリアの合計面積S
B /蒸着エリアの合計面積S
A ≦0.09
としている。なお、金属化フィルム3の全面積(蒸着エリアAと非蒸着エリアBの合計面積(S
A +S
B ))に対する非蒸着エリアの合計面積S
B の比で捉えると、9/(100+9)=0.0825であるから、
非蒸着面積比=非蒸着エリアの合計面積/全エリア面積≦0.0825
という不等式と等価になる。
【0055】
以上のように非蒸着面積割合γを0.09以下に設定した点に本発明のポイントが現れている。
【0056】
上記のように構成された2シートの上層の金属化フィルム3Uと下層の金属化フィルム3Lとを上記のように重ね合わせた状態で
図5、
図8(b)のように巻回する。あとは、
図8、
図9で説明したようにして、
図6、
図7に示すようなコンデンサ素子Cを得る。
【0057】
このコンデンサ素子Cは、誘電体フィルム11の表面に金属蒸着電極12を形成した金属化フィルム3(3U,3L)を巻回(または積層)して扁平率0.7以上の扁平体に構成された金属化フィルム多層体9と、この金属化フィルム多層体9の軸方向両端面に接続した電極引出し部(メタリコン)10,10とを有し、金属化フィルム3(3U,3L)の表面における蒸着部が分割電極15とヒューズ部16からなる保安機構17を有し、金属化フィルム3(3U,3L)の表面は、分離される状態で展開する絶縁スリット14によって仕切られた分割電極15群およびヒューズ部16群を含む蒸着エリアA(連続電極領域A1(A1a,A1b,A1c)と分割電極領域A2(A2a,A2b,A2c))と、絶縁スリット14群を含む非蒸着エリアB(絶縁スリット14群と絶縁マージン18)とに分けられており、さらに、蒸着エリアAの合計面積S
A に対する非蒸着エリアBの合計面積S
B の割合である非蒸着面積割合γが0.09以下に設定されている。
【0058】
また、蒸着エリアAは、金属化フィルム3の長さ方向Xに連続する電極部としての連続電極領域A1(A1a,A1b,A1c)と、分割電極15群を金属化フィルム3の長さ方向Xに沿って配列する分割電極領域A2(A2a,A2b,A2c)からなり、かつ個々の分割電極15がヒューズ部16において連続電極領域A1(A1a,A1b,A1c)に繋がっており、非蒸着エリアBは、金属化フィルム3の長さ方向Xに沿って分割電極15の配列用の間隔を置く状態で複数の絶縁スリット14が配列されている。
【0059】
また、金属化フィルム3の長さ方向Xに沿った連続電極領域A1(A1a,A1b,A1c)と分割電極領域A2(A2a,A2b,A2c)とが金属化フィルム3の幅方向Yで交互に複数組配列されている。
【0060】
また、絶縁スリット14は、金属化フィルム3の長さ方向Xに対して交差する方向に沿って細長く延在する細幅長尺スリット部14aと、この細幅長尺スリット部14aの端部から隣接する細幅長尺スリット部14aの端部との間でヒューズ部16を介在させるべく金属化フィルム3の幅方向Yに対して交差する方向に延出される細幅短尺スリット部14b,14bとから構成されている。
【0061】
寸法関係の一例を示すと、次のようなものを挙げることができる。
【0062】
まず、
図7に示すコンデンサ素子Cの長径方向の寸法aと短径方向の寸法bとの関係であるが、扁平率(flattening)は、f=(a−b)/a=1−(b/a)で表される(a,bは
図6参照)ので、例えばa=150mmとして、扁平率f≧0.7とするには、b≦45mmとする。
【0063】
フィルム幅方向Yの寸法c=100mmとして、連続電極領域A1の幅については、1列目の連続電極領域A1aが13〜17mm、2列目の連続電極領域A1bが6〜10mm、3列目の連続電極領域A1cが6〜10mmとし、絶縁マージン18の幅は2〜5mmとする。絶縁スリット14の長さについては、1列目が22〜26mm、2列目が20〜24mm、3列目が18〜22mmとし、フィルム長さ方向Xで隣接する絶縁スリット14,14のピッチは5.7〜6.3mmとする。絶縁スリット14のパターン幅は0.3〜0.5mmとする。フィルム長さ方向Xにおける絶縁スリット14の配列密度については、単位長を60mmとして、単位長当たり10本以下とする。この本数を比較的に少なめに設定したことが本発明の1つのポイントとなっている。
【0064】
そして、以上のような寸法関係のなかで、蒸着エリアAの合計面積S
A に対する非蒸着エリアBの合計面積S
B の割合である非蒸着面積割合γを0.09以下に設定する。ここで、金属化フィルム3の全面積から3列分の絶縁スリット14群の全面積と絶縁マージン18との全面積を差し引いたものを蒸着エリアAの合計面積S
A とする。この蒸着エリアAには、1列目の連続電極領域A1a、2列目の連続電極領域A1b、3列目の連続電極領域A1c、1列目の分割電極領域A2a、2列目の分割電極領域A2b、3列目の分割電極領域A2c、そしてすべてのヒューズ部16が含まれている。蒸着エリアAには絶縁スリット14群と絶縁マージン18とは含まれない。絶縁スリット14群と絶縁マージン18とは非蒸着エリアBを構成する。非蒸着エリアBを構成するのは絶縁スリット14群と絶縁マージン18のみである。
【0065】
誘電体フィルム11の材質をポリプロピレンとするときに定格電圧の関係からフィルム厚さを6μmかそれ以上とし、また所望の体積効率の関係から扁平率を0.7またはそれ以上とする厳しい条件において、所望の高品質の扁平加工性と耐電圧特性を得るための要件は前述のとおり非蒸着面積割合γ(=非蒸着エリア合計面積S
B /蒸着エリア合計面積S
A )を0.09またはそれ以下に設定することであるが、具体的には上述したような寸法関係のもとで、フィルム長さ方向Xにおける絶縁スリット14の配列密度関係において、単位長(60mm)当たり10本以下とすればよいということである。
【0066】
試験前後の静電容量の変化量(ΔCap)を
ΔCap={(試験後静電容量−初期静電容量)/初期静電容量}×100
と定義して、扁平率fと非蒸着面積割合γとの組み合わせを変えた複数の供試体(テストサンプル)について静電容量変化率ΔCap(%)を調べ、絶対値で5%以内を良好(○)、5%超を不良(×)とした(静電容量は減少するので、ΔCapはマイナス値となる)。
図10に耐電圧試験結果を示す。
【0067】
誘電体フィルムとして厚さ6.0μmのPP(ポリプロピレン)を用いて試料を作製し、耐電圧試験は、試験電圧2475VDC、試験時間1分間、周囲温度常温の条件で試料に電圧を印加することで実施した。電圧印加前後の静電容量を測定し、その静電容量変化率ΔCapを求めた。
【0068】
この試験結果によって、本発明では扁平率を0.7以上で非蒸着面積割合を0.09以下と規定した。
【0069】
ちなみに、
図11(b)は比較例を示す。
図11(a)は比較対照のため
図1(a)を再掲したものである。比較例において、フィルム幅方向Yの寸法c=100mm、1列目の連続電極領域A1aの幅17.5mm、2列目の連続電極領域A1bの幅13.5mm、絶縁マージン18の幅は3mm、絶縁スリット14の長さが1列目39mm、2列目27mm、絶縁スリット14のピッチ3mm、絶縁スリット14のパターン幅0.4mmで、フィルム長さ方向Xにおける絶縁スリット14の配列密度は単位長(60mm)当たり14本である。この比較例における非蒸着面積割合γ(=非蒸着エリア合計面積/蒸着エリア合計面積)は0.095である。
【0070】
本発明実施例と比較例との対比において特に重要なことは、金属化フィルム3の単位長当りの分割電極15群の合計面積について、本発明実施例と比較例とで互いに等しく設定してある、換言すれば分割電極領域A2の合計面積を等しく設定してあるという点である。分割電極領域A2の合計面積を一定に保ちながら、単位長当たりの絶縁スリット14の配列密度を異ならせることにより、非蒸着面積割合γを異ならせているのである。
【0071】
比較例についても上記同様の試験を行ったところ、扁平率0.7以上では静電容量変化率において不良(×)の結果を得た。つまり、単位長当たりの絶縁スリット配列密度を一定限度以下に抑えることにより、オイル残渣が充分に減少し、
図9の過程を経て細長小判状に扁平加工された金属化フィルム多層体9は、扁平化が進行するにつれて、金属化フィルム巻回体4の内部におけるフィルム重なり部分の相対滑りがスムーズなものとなり、その結果として、その内部の金属化フィルム巻回体4の部分にス(鬆)、しわ・歪や薄肉扁平巻芯部2aの屈折・屈曲などの不具合が発生しなかった。これをもって、扁平成形性に優れ、高い耐電圧性能をもち(電圧印加時に静電容量の変化が少なく)、リプル電流時の作動音の発生も抑制されたコンデンサ素子Cが得られるに至った。したがって、本発明によれば、比較例では未解決であった扁平加工性の劣化、耐電圧特性の劣化(静電容量減少)およびリップル作動音の問題が解消されたのである。
【0072】
なお、上記の実施例以外に、例えば
図12に示すように、絶縁スリット14の方向性を斜行タイプにしてもよい。また、
図13に示すように、絶縁スリット14をミュラー・リヤー形(所定長さの線分の両端に内向きの矢羽根を有する形状)にしてもよい。