【実施例】
【0032】
以下、本発明にかかわる系統連系システムの異常判定装置・異常判定方法の実施例を、
図1〜
図6を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施例における系統連系システムの異常判定装置の主要部の構成を示すブロック図、
図2は系統連系システムの異常判定装置の動作説明に供する波形図である。
【0033】
図1において、11は商用の系統電源の電圧W1(Vpu)を入力として、その系統電源電圧における位相変化成分Δθを抽出する位相変化成分抽出手段、12はノイズ成分除去手段、13はランプ・レート・リミテーション手段、14は減算手段、15は跳躍周波数演算手段、16は跳躍位相演算手段、17は単独運転判定手段である。以下、これらの構成要素について順次説明する。
【0034】
まず、位相変化成分抽出手段11について、
図2(a)を参照しつつ説明する。
【0035】
図2(a)において、波形のW1は系統電源電圧、W2は系統電源電圧W1についてPLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)にて同期させた正弦波信号、θは系統電源電圧W1についてPLLにて生成した位相、Δθは位相変化成分である。
【0036】
位相変化成分抽出手段11は、例えば乗算型PLLを利用するもので、系統電源電圧W1を入力として、位相同期演算により系統電源電圧W1に位相同期した正弦波信号W2を生成する過程で中間的に生成される位相変化成分Δθを抽出する機能を有している。用いる乗算型PLLについては、厳密型や近似型その他があるが、いずれの型式を用いてもよい(例えば非特許文献1参照)。この非特許文献1のPLLは三相交流の場合であるが、単相交流のPLLでも同様である(特許文献7参照)。また、ソフトウェア方式、ハードウェア方式のいずれも用いることができる。
【0037】
ソフトウェア方式の場合、今回n回目の計測サイクルで検出した位相θ
n と前回(n−1)回目の計測サイクルで検出した位相θ
n-1 との差分が今回の位相変化成分Δθ
n として求められる。すなわち、
Δθ
n =θ
n −θ
n-1 ……………(1)
である。
【0038】
計測サイクルに関する周波数をfc とすると、計測タイミングの周期Tは、T=1/fc であり、例えば、fc =16kHzとすると、T=62.5μsとなる。具体的には、計測タイミング(n−1)から計測タイミングnまでの時間間隔が62.5μsということである。
【0039】
次に、ノイズ成分除去手段12について
図2(b)を参照しつつ説明する。
【0040】
系統電源電圧には様々な不平衡成分や歪成分が含まれており、それを原因とするノイズ成分が系統電源電圧の位相変化成分Δθに影響を与える。そこで、ノイズ成分除去手段12は、このノイズ成分の影響を避けるために、フィルタリングにより系統電源電圧の位相変化成分Δθの波形情報からノイズ成分を位相オフセットとして除去し、オフセット補正された位相変化成分Δθ′を得る。ここで、「オフセット補正された位相変化成分」を単に「補正位相変化成分」と記載することとする。補正位相変化成分Δθ′は系統電源電圧の位相につき、真に変化している成分のみを抽出したものとなる。
【0041】
具体的には、系統電源電圧の周期(60Hzの場合は約16.7ms、50Hzの場合は20ms)において移動平均をとることにより、基本周波数や高調波に同期した揺らぎをカットする。ノイズ成分除去手段12としては、非巡回型のFIR(Finite Impulse Response)フィルタや巡回型のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどのローパスフィルタあるいはディジタルフィルタ、電子回路におけるローパスフィルタなどを用いることができる。
【0042】
次に、ランプ・レート・リミテーション手段13について
図2(c)を参照しつつ説明する。
【0043】
補正位相変化成分Δθ′に対して与えるランプ・レート・リミテーションは、補正位相変化成分Δθ′の変化率に対して制限をかける処理である。詳しいことは
図4、
図5のフローチャートを用いて後述するが、ランプ・レート・リミテーション手段13の概要は、補正位相変化成分Δθ′の変化率(単位計測サイクルでの変化量)が規定値(リミット値Lim )以下のときは補正位相変化成分Δθ′に追従させ、一方、補正位相変化成分Δθ′の変化率が規定値(リミット値Lim )を超えるときは補正位相変化成分Δθ′への追従をやめるというものである。
【0044】
補正位相変化成分Δθ′に対してランプ・レート・リミテーションを与えた関数を制限付与位相変化成分Δθrampとする。この制限付与位相変化成分Δθrampは、補正位相変化成分Δθ′の変化率が制限値であるリミット値Lim 以下のときは、補正位相変化成分Δθ′に追従させて、補正位相変化成分Δθ′の変化率と同じ値で変化させる一方、補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim を超えるに至ったときには、補正位相変化成分Δθ′への追従をやめて、補正位相変化成分Δθ′の変化率に対して制限を与えた前記のリミット値Lim だけ変化させる。
【0045】
図2(c)において、期間T1では、補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim 以下であることから、制限付与位相変化成分Δθrampは補正位相変化成分Δθ′に追従しており、補正位相変化成分Δθ′と一致している。一方、期間T2では、補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim を超えていることから、制限付与位相変化成分Δθrampは補正位相変化成分Δθ′から外れている。
図2(c)ではΔθ′>Δθrampの状態が示されているが、もちろん逆のΔθ′<Δθrampの場合も起こり得る。
【0046】
より具体的には次のとおりである。前回(n−1)回目の計測サイクルでの制限付与位相変化成分を(Δθramp)
n-1 、今回n回目の計測サイクルでの制限付与位相変化成分を(Δθramp)
n として、前回の制限付与位相変化成分(Δθramp)
n-1 に調整用の変数δ(マイナス値の場合を含む)を与えることによって今回の制限付与位相変化成分(Δθramp)
n を生成する。すなわち、
(Δθramp)
n =(Δθramp)
n-1 +δ ……………(2)
とする。そして、この方式の場合に、補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim 以下のときは、調整用の変数δとして、今回の補正位相変化成分(Δθ′)
n と前回の制限付与位相変化成分(Δθramp)
n-1 との差分値(追従中での補正位相変化成分Δθ′の変化量)を与え(これについては後述する)、補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim を超えるときは、調整用の変数δとして、リミット値Lim を与えるものである。まとめると、
補正位相変化成分Δθ′の変化率≦Lim のとき、
δ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 ……………(3)
補正位相変化成分Δθ′の変化率>Lim のとき、
δ=Lim (プラス値またはマイナス値) ……………(4)
である。
【0047】
図3(a),(b)は補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim 以下の場合の制限付与位相変化成分Δθrampの推移を示す。
図3(a)は補正位相変化成分Δθ′の変化を示し、
図3(b)は同じ計測サイクルでの制限付与位相変化成分Δθrampの変化を示す。ここで、制限付与位相変化成分Δθrampはタイミング(n−1)まで補正位相変化成分Δθ′に追従してきているとする。すなわち、
(Δθ′)
n-1 =(Δθramp)
n-1 ……………(5)
であるとする。そして、
(Δθ′)
n −(Δθ′)
n-1 =(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 <Lim …………(6)
である。ゆえに、タイミングnにおける制限付与位相変化成分(Δθramp)
n として、タイミング(n−1)における制限付与位相変化成分(Δθramp)
n-1 に、調整用の変数δとして、ランプ・レート・リミテーションによる制限を与えない、期間〔(n−1)〜n〕での補正位相変化成分Δθ′の変化量δをそのまま採用する。ただし、
δ=(Δθ′)
n −(Δθ′)
n-1 ……………(7)
とするのではなく、数式(5)を利用した
δ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 ……………(8)
を用いる。その理由については後述する。
【0048】
図3(c),(d)は補正位相変化成分Δθ′の変化率がリミット値Lim より大きい場合の制限付与位相変化成分Δθrampの推移を示す。
図3(c)は補正位相変化成分Δθ′の変化を示し、
図3(d)は同じ計測サイクルでの制限付与位相変化成分Δθrampの変化を示す。
【0049】
タイミングnでの制限付与位相変化成分(Δθramp)
n を求めるに際して、タイミング(n−1)での制限付与位相変化成分(Δθramp)
n-1 に加算する調整用の変数δとして、上記の場合の変化量δ(=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 )に代えて、δ=±Lim が用いられる。ただし、δ=+Lim は、期間〔(n−1)〜n〕での補正位相変化成分Δθ′の変化量δがプラスの場合に採用され、δ=−Lim は、変化量δがマイナスの場合に採用される。
図3(c),(d)はプラスの場合に対応している。
【0050】
ここでの議論は、
図4、
図5のフローチャートを用いた動作説明でより明瞭なものとなる。
【0051】
ランプ・レート・リミテーション手段13は、以上のような手法で、補正位相変化成分Δθ′に対してランプ・レート・リミテーションを与えた制限付与位相変化成分Δθrampの関数を得る。
【0052】
減算手段14は、ノイズ成分除去手段12によって生成されるところの、系統電源電圧の位相につき真に変化している成分のみを抽出した補正位相変化成分Δθ′に対して、ランプ・レート・リミテーション手段13が生成したところの、補正位相変化成分Δθ′に対してランプ・レート・リミテーションを与えた制限付与位相変化成分Δθrampを減算する。なお、制限付与位相変化成分Δθrampの値がマイナスのときは、減算手段14が行う実際上の演算は加算となる。減算手段14による演算結果をFRT判定指標Δθ″とする。
【0053】
Δθ″=Δθ′−Δθramp ……………(9)
である。このFRT判定指標Δθ″が
図2(c)に表示されている。
【0054】
図2(d)は跳躍周波数演算手段15がFRT判定指標Δθ″から求めた跳躍周波数成分Fと、跳躍位相演算手段16がFRT判定指標Δθ″から求めた跳躍位相成分φを表している。
【0055】
跳躍周波数演算手段15は、能動的単独運転検出方式にかかわるもので、FRT判定指標Δθ″から跳躍周波数成分Fを求める機能を有している。ここでは、FRT判定指標Δθ″を定数倍(k倍)することにより跳躍周波数成分Fを求める。すなわち、
F=k・Δθ″ ……………(10)
である。kは計測サイクルに関する周波数fc を2πで割った値とする。
【0056】
k=fc /2π ……………(11)
であり、例えば、fc =16kHzの場合は、k≒2546.5となる(一例)。
【0057】
跳躍位相演算手段16は、受動的単独運転検出方式にかかわるもので、FRT判定指標Δθ″から跳躍位相成分φを求める機能を有している。ここでは、FRT判定指標Δθ″を積分することにより跳躍位相成分φを求める。すなわち、
φ=∫Δθ″dt ……………(12)
である。ソフトウェア処理としては、総和(数列の和)Σを用いて、
φ=ΣΔθ″ ……………(13)
となる。
【0058】
なお、一度位相跳躍が発生すると、前段で算出された位相跳躍の値が残ったままとなるので、跳躍位相演算手段16においては、次の位相跳躍に備えて、予め値をゼロに近づけておく積分値ゼロリセットの演算を行うものとする。例えば、
φ←0.9999・φ ……………(14)
の演算を繰り返し実行する。
【0059】
単独運転判定手段17は、跳躍周波数演算手段15によって求められた跳躍周波数成分Fと跳躍位相演算手段16によって求められた跳躍位相成分φとによって、真に問題となる分散型電源の単独運転状態の発生の有無を判定する。
【0060】
受動的単独運転検出方式の場合には、逆潮流バランス時に変化が現れず、単独運転が検出されないことがある。そこで、受動的単独運転検出方式を補完して逆潮流バランス時でも検出可能とするために能動的単独運転検出方式が用いられる。
【0061】
次に、
図4、
図5のフローチャートと
図6の系統電源電圧に応じて決まるリミット値指標の特性図を用いて、系統連系システムの異常判定方法の具体的な動作を説明する。このフローチャートはタイミングn(nは任意の自然数)から始まるn回目の計測サイクルでの動作を示している。
【0062】
まず、ステップS10において、調整用の変数δとして、
δ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 ……………(15)
の演算を行う。ここで、(Δθ′)
n はタイミングnにおいてノイズ成分除去手段12によって生成された補正位相変化成分であり、(Δθramp)
n-1 は前回のタイミングであるタイミング(n−1)においてランプ・レート・リミテーション手段13によって生成された制限付与位相変化成分である。
【0063】
ここで、δをδ=(Δθ′)
n −(Δθ′)
n-1 としない理由は、次のとおりである。もし、そのようにすれば、補正位相変化成分Δθ′が急峻に変化して制限付与位相変化成分Δθrampが補正位相変化成分Δθ′に追従しなくなった後に、補正位相変化成分Δθ′の変化率(1回の計測サイクルにおける変化量)が急にゼロになった場合には、δの値もゼロになってしまう。しかし、補正位相変化成分Δθ′と制限付与位相変化成分Δθrampがリミット値Lim 以上乖離していれば、δはリミット値Lim に等しくなっている必要があり、この原則に反することになってしまう。このような理由により、上式(15)が用いられる。
【0064】
次いで、ステップS20において、以下に説明するリミット値取得のサブルーチン(ステップS21〜S26)に従って、今回n回目の計測サイクルで用いるリミット値Lim を取得する。
【0065】
リミット値取得のサブルーチン(ステップS21〜S26)での処理は次のとおりである。
【0066】
まず、ステップS21において、
図6に示す系統電源電圧Vpu([p.u.](per-unit)…基準値に対する相対値での表記)に応じて決まるリミット値指標の特性データに従って、リミット値指標xを取得する。
【0067】
次いで、ステップS22において、前ステップで取得したリミット値指標xがリミット値Lim より大きいか否かを判断する。リミット値指標xがリミット値Lim より大きいときはステップS23に進み、リミット値指標xがリミット値Lim 以下のときはステップS24に進む。
【0068】
図6のリミット値指標xの特性図に従うと、系統電源電圧Vpuが正常値に対する相対値として0.8[p.u.]以上あるときは、リミット値指標xは実質的に0となる値βであり、系統電源電圧Vpuが0.7[p.u.]未満のときは、リミット値指標xは1.0である。そして、系統電源電圧Vpuが0.7〜0.8[p.u.]の領域では、リミット値指標xは1またはβに急速接近する。
【0069】
交流電力系統が瞬低を起こして系統電源電圧Vpuが0.7[p.u.]未満となり、リミット値指標xが1となった場合、ステップS22(x>Lim ?)の判断が肯定的となって、ステップS23に進む。一方、系統電源電圧Vpuが正常で0.8[p.u.]以上あり、リミット値指標xがβ(≒0)となっている場合はもとより、交流電力系統が瞬低から正常へ回復しつつあって系統電源電圧Vpuが0.7〜0.8[p.u.]の推移領域でも、ステップS22(x>Lim ?)の判断が否定的となって、ステップS24に進む。
【0070】
交流電力系統の瞬低の結果、リミット値指標xがリミット値Lim より大きいことから進んだステップS23においては、リミット値Lim としてステップS21で取得したリミット値指標xを設定する。すなわち、
Lim =x ……………(16)
とする。そして、メインルーチンのステップS30に進む。
【0071】
一方、リミット値指標xがリミット値Lim 以下であることからステップS24に進む場合においては、リミット値Lim を実質的に0となる値βに戻す処理へと進む(ステップS24〜S26)。ただし、1回のステップで一気に戻すのではなく、一定の時間をかけて戻すようにしている。
【0072】
すなわち、ステップS24において、リミット値Lim として前回(n−1)回目の計測サイクルでのリミット値Lim から微小な規定値αを差し引いて、リミット値Lim を漸減させる。すなわち、
Lim =Lim −α ……………(17)
である。この動作を複数サイクルにわたって繰り返すことになる。
【0073】
次のステップS25では、漸減中のリミット値Lim が実質的に0となる値βより小さくなったか否かを判断する。実質的に0となる値βに接近中のリミット値Lim がβ以上のときは、ステップS26をジャンプして、次の計測サイクルへと進み、ステップS24で再び微小な規定値αを減算する。しかし、漸減しているリミット値Lim が実質的に0となる値βより小さくなるに至ったときには、ステップS26に進んで、リミット値Lim を実質的に0となる値βに設定する(ジャストβ)。すなわち、
Lim =β ……………(18)
である。交流電力系統が瞬低を起こした後に系統電源電圧Vpuが正常状態に復帰すれば、リミット値Lim は実質的に0となる値βに戻され、保持される。
【0074】
図6の傾斜線上での推移は急峻なものである。ちなみに、漸減にかかわる微小な規定値αは次のように決められる(一例)。計測サイクルに関する周波数fc =16kHz、計測サイクルの周期T=1/fc =62.5μsの場合に、例えば40msの時間をかけてリミット値Lim を1から0まで戻すとすると、
(40×10
-3)÷(62.5×10
-6)=640 ……………(19)
で、640回の計測サイクルの繰り返しが必要となる。したがって、漸減にかかわる微小な規定値αは1回当りの数値であるから、
α=1/640≒1.56×10
-3 ……………(20)
となる(一例)。なお、実質的に0となる値βについて参考までに一例を挙げると、β=0.00012という極小値である。
【0075】
ステップS21〜S26のリミット値取得のサブルーチンを抜けると(リミット値Lim を取得すると)、次はメインルーチンのステップS30に進む。
【0076】
ステップS30において、調整用の変数δがステップS20(サブルーチン(S21〜S26))で取得したリミット値Lim より大きいか否かを判断する。数式(8)を再掲すると、
δ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 ……………(8)
である。調整用の変数δがリミット値Lim 以下のときには、補正位相変化成分Δθ′の変化が比較的緩やかで、制限付与位相変化成分Δθrampにはランプ・レート・リミテーションを与える必要はなく、制限付与位相変化成分Δθrampは補正位相変化成分Δθ′に追従していることになる。このときは、ステップS50に進む。
【0077】
一方、調整用の変数δがリミット値Lim より大きくなるときには、補正位相変化成分Δθ′の変化が急峻で、制限付与位相変化成分Δθrampにランプ・レート・リミテーションを与えることになる。このときは、ステップS40に進む。
【0078】
ステップS40において、調整用の変数δとしてリミット値取得のサブルーチン(S21〜S26)で取得した今回n回目の計測サイクルのリミット値Lim を設定する。すなわち、
δ=Lim ……………(21)
とする。前述したように、系統電源電圧Vpuが正常なときは、リミット値Lim =実質的に0となる値βであり、瞬低時にはリミット値Lim =リミット値指標x=1である。
【0079】
ステップS30、ステップS40の処理は調整用の変数δがプラス(補正位相変化成分Δθ′が増加中)の場合に対応している。調整用の変数δがマイナス(補正位相変化成分Δθ′が減少中)の場合に対応するのがステップS50、ステップS60である。
【0080】
ステップS50において、調整用の変数δがステップS20(サブルーチン(S21〜S26))で取得したリミット値Lim のマイナス値(−Lim )より小さいか否かを判断する。
【0081】
調整用の変数δがリミット値Lim のマイナス値(−Lim )以上のときには、補正位相変化成分Δθ′の変化が比較的緩やかで、制限付与位相変化成分Δθrampにはランプ・レート・リミテーションを与える必要はなく、制限付与位相変化成分Δθrampは補正位相変化成分Δθ′に追従していることになる。このときは、ステップS70に進む。
【0082】
一方、調整用の変数δがリミット値Lim のマイナス値(−Lim )より小さくなるときには、補正位相変化成分Δθ′の変化が急峻で、制限付与位相変化成分Δθrampにランプ・レート・リミテーションを与えることになる。このときは、ステップS60に進む。
【0083】
ステップS60において、調整用の変数δとしてサブルーチンで取得した今回n回目の計測サイクルでのリミット値Lim のマイナス値(−Lim )を設定する。すなわち、
δ=−Lim ……………(22)
とする。
【0084】
ステップS30〜ステップS60の処理を総合すると、調整用の変数δがリミット値Lim より大きくなるときには、調整用の変数δは、δ=Lim となり、調整用の変数δがリミット値Lim のマイナス値(−Lim )より小さくなるときには、調整用の変数δは、δ=−Lim となり、それ以外のときは、調整変化分δは、ステップS10で求めた調整用の変数δ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 そのものを採用する。δ=Lim とδ=−Lim とはランプ・レート・リミテーションを与えるということであり、それ以外のδ=(Δθ′)
n −(Δθramp)
n-1 はランプ・レート・リミテーションを与えずに、制限付与位相変化成分Δθrampは補正位相変化成分Δθ′に追従させるということである。
【0085】
次いで、ステップS70において、前回(n−1)回目の計測サイクルにおける制限付与位相変化成分(Δθramp)
n-1 に対して、上記のステップで求めた調整用の変数δを加えることにより、今回n回目の計測サイクルでの制限付与位相変化成分(Δθramp)
n を求める。すなわち、
(Δθramp)
n =(Δθramp)
n-1 +δ ……………(23)
とする。これは、既に概要を説明したときの数式(2)と同じものである。
【0086】
さらに、ステップS80において、得られた補正位相変化成分Δθ′と制限付与位相変化成分ΔθrampとからFRT判定指標Δθ″を算出する。すなわち、
Δθ″=Δθ′−Δθramp ……………(24)
である。
【0087】
次いで、ステップS90において、FRT判定指標Δθ″を定数倍(k倍)することにより跳躍周波数成分Fを求める。すなわち、
F=k・Δθ″ ……………(25)
である。
【0088】
次いで、ステップS100において、FRT判定指標Δθ″の総和を取ることにより跳躍位相成分φを求める。すなわち、
φ=ΣΔθ″ ……………(26)
である。
【0089】
次いで、ステップS110において、求めた跳躍周波数成分Fと跳躍位相成分φとによって、真に問題となる分散型電源の単独運転状態の発生の有無を判定する。これにより、単独運転状態であると判定したときは、パワーコンディショナを交流電力系統から解列するための指示を与える。ここでの単独運転状態の判定は、跳躍周波数成分Fのみを用いて行うのでもよいし、あるいは跳躍位相成分φのみを用いて行うのでもよいし、さらにはそれらの双方を用いて行うのでもよい。
【0090】
本発明実施例の系統連系システムの異常判定方法によれば、交流電力系統の瞬低(瞬時電圧低下)や系統周波数変動のような系統擾乱の発生に対してパワーコンディショナを解列せずに運転継続することに関して、全体的な構成が比較的簡単でありながら、高精度な制御を実現することができる。