【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示において、上述の目的のうちの1つ以上に対処し、または以下の開示および典型的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する態様および実施形態が説明される。
【0009】
本発明の一態様においては、液状の薬剤を投与するための注射装置であって、液状の薬剤を収容するように構成され、出口および可動壁を備えている容積可変のリザーバと、前記可動壁を第1の方向に変位させるように構成されたアクチュエータ部材を備えている注射手段とを備えており、前記アクチュエータ部材へと第2の方向に作用する力(例えば、単一の力、結果として生じる力、力の分布)に応答して前記アクチュエータ部材の前記第2の方向への可逆的な移動を許すように構成された注射装置が提供される。
【0010】
本発明の特定の実施形態においては、前記第2の方向は、前記第1の方向と反対であるか、または少なくとも実質的に反対である。
【0011】
例えば相変化につながる温度の低下に起因して薬剤がリザーバにおいて膨張する場合、力が可動壁を介してアクチュエータ部材に作用し、注射装置の構成が、注射手段に損傷を生じさせることなく第2の方向への可動壁の変位を許す。
【0012】
注射手段または少なくともその構成要素を、第2の方向に作用する力に応答して第2の方向に変形または変位し、第2の方向に作用する力が止んだことに応答して元の状態へと弾性的に戻るように構成することができる。
【0013】
注射装置は、アクチュエータ部材を第1の方向に付勢するための付勢手段をさらに備えることができる。これは、第2の方向に作用する変位の力が止んだときに、アクチュエータ部材が元の位置へと自動的に戻ることを可能にできる。
【0014】
典型的な実施形態においては、付勢手段が注射手段の一部を形成することで、追加の構成部品を必要とすることなく、液状の薬剤の1回分の投薬量を自動的に注射すること、および第2の方向に作用する力が止んだときにアクチュエータ部材を元の位置へと自動的に戻すこと、の両方が可能な注射装置がもたらされる。
【0015】
注射手段は、注射機構であってよく、例えば付勢手段からの付勢力をアクチュエータ部材へと伝えるように構成された操作部材の駆動構成をさらに備えることができる。駆動構成を、単一の可動な駆動要素で構成することができ、または駆動構成は、例えば可動の駆動要素および固定の要素など、複数の相互作用する要素を備えてもよい。具体的には、駆動構成は、アクチュエータ部材に対して一方向に相対移動でき、別の方向においてはアクチュエータ部材に係合してアクチュエータ部材を従動させることができる形式であってよい。
【0016】
本発明の一実施形態においては、注射機構が、第2の方向に作用する力に応答して付勢手段の付勢に逆らって第2の方向にアクチュエータ部材および/または駆動の機構を変位させることができ、第2の方向に作用する力が止んだときにアクチュエータ部材および/または駆動構成を実質的に初期の位置へと戻すように構成される。特に、アクチュエータ部材が、注射の際に可動壁を変位させるときに可動壁に当接または係合するように構成された接触面を備え、注射機構が、第2の方向に作用する力に応答して前記接触面を出口に対して第1の位置から第2の位置へと変位させることができ、第2の方向に作用する力が止んだときに前記接触面を実質的に第1の位置へと戻すように構成される。
【0017】
付勢手段は、注射装置内の弾性的に変形可能な幾何学的構成、注射装置の弾性的に変形可能な幾何学的構成、またはばね部材などのエネルギー手段であってよく、または実際のところ、力伝達手段および/もしくはアクチュエータ部材を特定の方向(例えば、リザーバの出口へと向かう方向)に付勢するために適した任意の手段であってよい。
【0018】
リザーバは、軸方向に変位可能なピストンを備えるカートリッジなど、可動壁を有する剛体容器であってよい。あるいは、リザーバが、圧縮可能な袋などの可撓な容器であってよく、または一部分が剛体であって一部分が可撓である容器であってよい。
【0019】
注射装置は、着脱式のキャップと、キャップが注射装置に取り付けられるときにキャップに当接または係合するように構成されたキャップ受け入れ部とをさらに備えることができる。キャップは、キャップ受け入れ部を介して注射機構と結合するためのインターフェイスを備えることができる。インターフェイスは、駆動の機構または駆動の機構に接続された介在の部品に当接または係合するように構成された接触の点または面であってよい。
【0020】
着脱式のキャップを、注射装置の非使用時に注射装置の出口部分(針保持部またはジェット注射ノズルなど)を覆うように構成することができる。これにより、着脱式のキャップが、例えば針保持部に取り付けられた針を保護し、針の突き刺しを防止し、さらには液状の薬剤が誤ってこぼれることを防止することができる。投薬量の注射が望まれるときに、キャップを取り外し、針保持部を露出させることができる。
【0021】
キャップ受け入れ部は、キャップが注射装置に取り付けられるときに着脱式のキャップを受け入れて保持するように構成された注射装置の一部分であってよい。
【0022】
キャップ受け入れ部は、バヨネットジョイント、ねじ山付きの部位、スナップロック、など、キャップを保持するための手段を備えることができる。キャップ受け入れ部を、キャップが注射装置の遠位部または出口部分を覆うべく注射装置に取り付けられるときにキャップを受け入れるように構成することができる。あるいは、キャップ受け入れ部を、キャップが注射装置の近位部に取り付けられるときにキャップを受け入れるように構成することができる。
【0023】
注射装置は、例えば全体としての長手軸を定める円筒形の形態、箱状の形態、または他の適切な形態のハウジングをさらに備えることができる。本発明の特定の実施形態においては、キャップをキャップ受け入れ部から取り外すことで、アクチュエータ部材および/または駆動構成が軸方向の変位を被る。
【0024】
本発明の別の態様においては、液状の薬剤を投与するための機械式の注射装置が提供され、そのような注射装置が、液状の薬剤を収容しており、出口および可動壁を備えている容積可変のリザーバと、前記可動壁を第1の方向に変位させるように構成されたアクチュエータ部材およびアクチュエータ部材を第1の方向に付勢するための付勢手段を備えている注射機構と、を備えており、注射機構が、前記可動壁へと第2の方向に作用する力に応答して前記可動壁の第2の方向への可逆な移動を可能にするように構成されている。
【0025】
本発明の一実施形態においては、注射機構が、可動壁への第2の方向の力の印加に応答して可動壁が第1の位置から第2の位置へと第2の方向に移動でき、力が止んだときに付勢手段に蓄えられたエネルギーを利用して可動壁を第2の位置から実質的に第1の位置へと第1の方向に移動させるように構成される。これにより、荷重が終了したときに、可動壁および注射機構が自動的に、すなわちユーザが注射装置のいかなる部分も操作することなく、それぞれの初期状態に復帰することが保証される。
【0026】
アクチュエータ部材は、例えば別の構成部品がアクチュエータ部材に接触または相互作用する運搬時または投薬量の設定時など、注射装置の通常の使用環境のもとで、第2の方向の力に曝される可能性がある。しかしながら、投薬量の正確さを保証するためには、アクチュエータ部材が可動壁に対して制御されずに移動することを、不可能にすることが重要である。なぜならば、アクチュエータ部材が可動壁に対して制御されずに移動できると、後の注射の際に両者の同期移動が不可能になるからである。
【0027】
したがって、本発明のさらなる態様においては、液状の薬剤を投与するための機械式の注射装置が提供され、そのような注射装置は、液状の薬剤を収容するように構成され、出口および可動壁を備えている容積可変のリザーバ、前記可動壁の第1の方向の変位を生じさせるように構成されたアクチュエータ部材と、前記アクチュエータ部材の移動を生じさせるように構成された駆動構成と、前記アクチュエータ部材の前記第1の方向への付勢を生じさせる随意による付勢手段とを備えている注射機構、ならびに前記アクチュエータ部材の少なくとも第2の方向への移動に影響を及ぼす連結機構(例えば、係合構造を備えている)を備えている。係合構造は、注射機構(例えば、アクチュエータ部材および/または駆動構成の1つ以上の部品)との結合および注射機構からの切り離しそれぞれに適しており、注射装置は、アクチュエータ部材に作用する力がしきい値未満の大きさである場合には、この力に応答してのアクチュエータ部材の第2の方向への移動を防止すべく、係合構造と注射機構(例えば、アクチュエータ部材)とを結合させ、アクチュエータ部材に作用する力がしきい値以上の大きさである場合には、この力に応答してのアクチュエータ部材の第2の方向への可逆的な移動を許すべく、係合構造と注射機構とを可逆に切り離すように構成されている。
【0028】
そのような構成は、第1の方向および第2の方向の両方について、可動壁およびアクチュエータ部材の完全に同期した移動を提供する。これにより、たとえアクチュエータ部材が例えば投薬量の設定に関連する比較的小さな力に曝された場合(この場合には、アクチュエータ部材が可動壁から離れるように第2の方向に移動することがない)や、アクチュエータ部材がリザーバ内の薬剤の膨張に起因する比較的大きな力に曝された場合(この場合には、アクチュエータ部材が可動壁とともに第2の方向に移動し、薬剤が元の密度へと戻るときに可動壁と一緒に元に戻る)でも、投薬量の正確さが注射装置の寿命の最後まで維持されることが保証される。
【0029】
係合構造とアクチュエータ部材との可逆な切り離しは、係合構造とアクチュエータ部材とを非破壊的に切り離すことで、係合構造とアクチュエータ部材とが後に互いに作用的に結合できることを保証することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態においては、駆動の機構は、アクチュエータ部材と相互作用し、アクチュエータ部材を付勢手段の影響下で第1の方向に押すように構成される。この相互作用は、例えば一方向のラチェット機構またはアクチュエータ部材と駆動構成との間の螺合を含むことができ、前者の場合には、駆動構成が、アクチュエータ部材と係合してアクチュエータ部材を第1の方向に引きずるように構成され、後者の場合には、例えば駆動部材の回転によってアクチュエータ部材の第1の方向への平行移動が生じる。
【0031】
注射装置は、ハウジングをさらに備えることができ、係合構造が、アクチュエータ部材のハウジングに対する第2の方向への移動を防止するために、ハウジングとアクチュエータ部材との間の結合をもたらすことができ、結合は、アクチュエータ部材へと第2の方向に作用するしきい値以上の大きさの力に応答して、ハウジングとアクチュエータ部材とを可逆に切り離すように構成されている。
【0032】
本発明の一実施形態においては、アクチュエータ部材が歯を備えており、係合構造が、アクチュエータ部材にしきい値未満の力が第2の方向に加わるときは歯と係合して第2の方向へのアクチュエータ部材の移動を防止し、アクチュエータ部材にしきい値以上の力が第2の方向に加わるときには歯との係合を可逆的に解除するように構成されたそらすことができる爪である。
【0033】
他の実施形態においては、アクチュエータ部材が、例えば駆動構成の可動部分の時計方向の回転が、アクチュエータ部材の時計方向の回転ならびに駆動構成の固定部分を通っての平行移動による前進につながるようなやり方で、駆動構成の固定部分に位置する該当のねじ山と係合し、かつ駆動構成の可動部分に対して回転に関して固定されるねじ山を備えている。ハウジングの内壁に周状に配置された歯が、接触力がアクチュエータ部材がしきい値未満の第2の方向の力に曝される場合に相当する特定の大きさを下回る限りにおいて、ハウジングと駆動構成の可動部分との間の相対回転運動が一方向については許されるが、反対の方向については阻止されるように、駆動構成の可動部分のそらすことができる爪と係合するように構成される。アクチュエータ部材がしきい値以上の第2の方向の力に曝される場合に、そらすことができる爪とこの爪に接触する歯が可逆に外れ、前記反対の方向の回転を許し、結果としてアクチュエータ部材が駆動の機構の固定部分との螺合によって第2の方向に可逆に平行移動できるように構成される。
【0034】
さらに別の実施形態においては、アクチュエータ部材が、注射装置のナット部材に係合するねじ棒である。係合は、(例えば)棒の時計方向の回転がナット部材との相互作用によって平行移動に変換されるような係合である。ナット部材が、セルフロックのねじ山部分を保持する可撓顎を備えている。これは、棒に第2の方向の軸方向の力(または、平行移動の力)が加わる場合に、棒がねじ山によって反時計方向に後方へと回転することによって第2の方向に移動することが、不可能であることを意味する。しかしながら、棒にしきい値以上の第2の方向の力が加わると、可撓顎が棒から離れるように撓むことで、ねじ山部分がロッドとの係合から外れ、ロッドが回転せずに第2の方向に移動できるようになる。力が止むと、可撓顎が元の位置に復帰し、棒が再びナット部材に螺合する。
【0035】
注射装置は、ただ1回分の投薬量の薬剤だけを送り出すことができる形式の注射装置であってよい。あるいは、注射装置が、1回分の投薬量の薬剤を繰り返し設定および送出できる形式の注射装置であってよい。その場合には、注射装置が、投薬量を設定すべく動作することができる投薬量設定手段をさらに備える。特定の実施形態においては、注射装置が、所定の投薬量を繰り返し設定および送出することができる。
【0036】
投薬量設定手段は、投薬量が設定されるときに作動する注射装置の一部である。投薬量設定手段は、注射装置の構成要素を、注射機構の作動時に所与の量の薬剤が送り出されるような相対位置に位置させる機構を備えている。注射機構は、作動時に設定された投薬量の注射を生じさせる注射装置の一部である。注射機構は、注射機構の作動によってアクチュエータ部材が移動することで、ピストンがリザーバの内部をリザーバからの液状の薬剤の吐出(例えば、リザーバに取り付けられた針アセンブリの針を介する)を生じさせる方向に移動するようなやり方で、リザーバの可動壁(例えば、ピストン)と協働するように構成された力伝達要素(例えば、可動のアクチュエータ部材)を備えている。投薬量設定機構および注射機構は、1つ以上の構造および/または機能要素を共有することができる。
【0037】
付勢手段は、蓄えたエネルギーを投薬量の薬剤の注射の際に放出するように機能するエネルギー手段を備えることができ、放出されるエネルギーが、投薬量の注射を生じさせる。エネルギー手段を、投薬量の設定の際にエネルギー手段にエネルギーが蓄えられるようなやり方で投薬量設定手段に接続することができる。
【0038】
エネルギー手段は、ばね部材を備えることができ、そのようなばね部材を、例えばばねの圧縮または引き伸ばしによって中心軸に沿って蓄勢されるように構成することができる。これに代え、またはこれに加えて、ばねを、例えばばねのそれぞれの端部を相互にねじることによって中心軸を中心にして蓄勢されるように構成することができる。
【0039】
アクチュエータ部材の駆動構成は、駆動部材の移動によってエネルギー手段によるエネルギーの貯蔵および/もしくは放出が生じ、ならびに/または反対に、エネルギー手段からのエネルギーの放出によって駆動部材の移動が生じるようなやり方で、エネルギー手段に接続された駆動部材を備えることができる。その点で、エネルギー手段は、駆動部材を特定の平行移動の方向および特定の回転の方向の両方に付勢すべく、回転による応力があらかじめ加えられた圧縮ばねを備えることができる。したがって、駆動部材が、ばね圧縮要素としても機能することができる。あるいは、エネルギー手段が、例えば各々が平行移動および回転運動に必要なエネルギー部分をもたらすことができる2つ以上のばね(例えば、平行移動のためのエネルギーをもたらすことができる圧縮ばねおよび回転運動のためのエネルギーをもたらすことができるねじりばね)、軸方向に圧縮できるねじり棒、または回転によってあらかじめ応力が加えられた引張ばねを備える構成など、平行移動および回転運動のためにエネルギーを貯蔵および放出することができる他の構成を備えることができる。
【0040】
アクチュエータ部材は、一組の軸方向に間隔を空けて位置する歯を、1つ以上の係合要素との係合のために備えることができ、駆動部材が、アクチュエータ部材の歯と係合するように構成された係合要素を備えることができる。そのような実施形態においては、投薬量設定手段が投薬量を設定すべく動作するときに、駆動部材がアクチュエータ部材に対する相対移動を被ることで、係合要素がアクチュエータ部材の歯との係合から外れるように動かされ、アクチュエータ部材に沿って動かされて、より近位側に位置する歯を過ぎる。その後に注射機構が設定された投薬量を注射すべく作動するとき、係合部材がたった今過ぎた歯に係合し、駆動部材が、アクチュエータ部材を伴いつつハウジング内を遠位方向に移動する。
【0041】
本発明の一実施形態においては、注射機構が、アクチュエータ部材にしきい値以上の力が第2の方向に加わるのに応答して駆動部材が第2の方向に或る距離だけ移動でき、アクチュエータ部材への力が止んだときに駆動部材が元の位置へと戻るように構成される。ひとたびしきい値に達すると、アクチュエータ部材が移動して駆動部材に係合し、駆動部材をばね部材の付勢力に逆らって第2の方向に付勢する。これにより、駆動部材がばね部材をさらに圧縮し、ばね部材が、平衡状態が生じるまで平行移動のための追加のエネルギーを蓄える。アクチュエータ部材への力が止むと、ばね部材が、蓄えた余分なエネルギーを放出し、駆動部材を再び当初のアクチュエータ部材との係合の位置へと第1の方向に移動させる。この戻りの変位の際に、駆動部材がアクチュエータ部材を従動させ、アクチュエータ部材が可動壁を従動させる。
【0042】
案内手段を、駆動部材および/またはアクチュエータ部材の移動を案内するために設けることができる。案内手段は、ハウジングの一部を形成することができ、またはハウジングに対して固定された位置を有する別個の要素を備えることができる。これに代え、またはこれに加えて、案内手段は、ハウジングに対して移動することができる要素を備えることができる。
【0043】
案内手段を、駆動部材およびアクチュエータ部材が相対移動の一部において純粋な平行移動の相対運動を実行でき、相対移動の別の一部において平行移動と回転運動との組み合わせの相対運動を実行できるように、構成することができる。案内手段は、駆動部材を明確な軸方向の位置に支持するための第1の当接面または第1の保持用の台地と、駆動部材を別の明確な軸方向の位置に支持するための第2の当接面または第2の保持用の台地とを備えることができる。一特定の実施形態においては、第1の保持用の台地と第2の保持用の台地との間の軸方向の距離が、注射の際の駆動部材の軸方向の変位に相当する。
【0044】
あるいは、案内手段を、例えば注射の際の駆動部材の回転運動の最大の範囲を定めるように構成することができる。その場合、案内手段は、駆動部材または駆動部材に回転に関して連動する別の部品のための回転ストッパを備えることができる。
【0045】
本発明の特定の実施形態においては、キャップは、駆動部材または駆動部材に組み合わせられた中間の要素へと力を伝達することができる環状の縁を備えており、キャップがキャップ受け入れ部において注射装置に取り付けられたときに、駆動部材がキャップ受け入れ部に対してアクチュエータ部材との係合から外れる特定の位置をとるように強制される。キャップが注射装置に取り付けられている限りにおいて、駆動部材は、付勢手段の付勢力に逆らってこの位置に保持される。
【0046】
キャップがキャップ受け入れ部から取り外されることで、駆動部材が変位を被り、アクチュエータ部材と係合するように強いられ、アクチュエータ部材を可動壁に当接するように移動させて、可動壁に付勢力を作用させることができる。これに代え、またはこれに加えて、キャップがキャップ受け入れ部から取り外されることで、アクチュエータ部材が可動壁を変位させてもよい。
【0047】
本発明のまたさらなる態様においては、出口および可動壁を備えるリザーバと、可動壁の第1の方向への移動を生じさせるように構成されたアクチュエータ部材と、柔軟な係合構造と、柔軟な係合構造と順次に係合するいくつかの構造的な凹凸を有する本体表面とを備えており、少なくとも1つの構造的な凹凸が、柔軟な係合構造にしきい値未満の大きさの力が第1の方向とは実質的に反対の第2の方向に加わるときは、柔軟な係合構造と本体表面との間に固定の係合をもたらし、柔軟な係合構造にしきい値以上の大きさの力が第2の方向に加わるときは、柔軟な係合構造と本体表面の係合が非破壊的に外れるよう、本体表面に対して鈍角に位置する接触面を備えている薬剤送出装置が提供される。
【0048】
構造的な凹凸は、本体表面のくぼみおよび/または突起であってよい。
【0049】
本体表面は、アクチュエータ部材の表面であってよい。あるいは、本体表面が、薬剤送出装置の他の部分の表面であってよい。
【0050】
注射装置を構成するシステムは、通常は動力部およびリザーバという2つの部分を含んでおり、動力部は、注射機構と随意による投薬量設定機構とを備え、注射装置の第1の本体部分に収容され、リザーバは、リザーバホルダと称されることが多い注射装置の第2の本体部分に埋め込まれる。
【0051】
本発明のまたさらなる態様においては、アクチュエータ部材および付勢手段を有する注射機構を備える動力部と、液状の薬剤を収容しており、可動壁を備えている容積可変のリザーバとを備えており、アクチュエータ部材および可動壁が、第1の方向に一緒に変位でき、動力部が、可動壁へと第2の方向に作用する力に応答してアクチュエータ部材と可動壁とが一緒に第2の方向に可逆に変位することを許すように構成されているシステムが提供される。
【0052】
第2の方向は、第1の方向とは反対であってよい。さらに、力は、可動壁に作用することができる。
【0053】
動力部は、アクチュエータ部材との解除可能な係合のための係合構造をさらに備えることができ、係合構造は、アクチュエータ部材にしきい値未満の大きさの力が加わる場合には、アクチュエータ部材と係合してアクチュエータ部材および可動壁が一緒に第2の方向に変位することを防止し、アクチュエータ部材にしきい値以上の大きさの力が加わる場合には、アクチュエータ部材との係合から可逆に外れてアクチュエータ部材および可動壁が一緒に第2の方向に可逆に変位することを許すように構成されている。
【0054】
リザーバおよび動力部を、分離不能に組み合わせることができ、その場合には、注射装置において、リザーバを別のリザーバと交換することが不可能である。これは、ひとたび元のリザーバが空になり、または最後の1回分の投薬量が完全に注射されたならば、装置全体が再使用不可能であり、廃棄されなければならないことを意味する。リザーバの動力部からの分離の試みが成功しても、リザーバホルダまたはリザーバホルダと動力部との間の接続の破壊ゆえに、注射装置が使用できないようになる。
【0055】
本発明の上述の態様および実施形態に関して、アクチュエータ部材および/または可動壁についてそれぞれ許される第2の方向への可逆的な移動が、非破壊的であることに注意すべきである。これを、この文脈において、注射装置の全体的な機能(例えば、注射または投薬量の設定の実行)に不可欠な注射装置のいかなる部品または部材も、前記移動の結果として壊れたり、他のかたちで破壊されたりすることがないことを意味すると、解釈すべきである。換言すると、注射装置が複数回分の投薬量の薬剤を送り出すことができる形式の注射装置である場合に、装置が、該当の1つ以上の構成要素の戻りの移動に続いて、リザーバに残る薬剤の量に対応して、複数回の投薬量の設定および注射のサイクルを実行できる。注射装置が1回限りの形式の注射装置である場合には、装置が、該当の1つ以上の構成要素の戻りの移動に続いて、薬剤の1回分の投薬量の注射を実行することができる。
【0056】
しきい値を、特定の力がアクチュエータ部材へと第2の方向に作用するときにしきい値に達するように、例えば相互に接触する構成要素の間の摩擦の関係および取り合い面の構成を選択することによって、製造者があらかじめ設定することができる。その点で、しきい値は、基本的に任意に設定することが可能である。
【0057】
相互に接触する構成要素の間の摩擦の関係を、相互作用する構成部品の材料の選択によって確立することができる。一実施形態においては、相互作用する構成部品が、プラスチックで製作される。
【0058】
互いに取り合う表面の構成は、歯のそれぞれの角度および/または係合構造の特定の設計を含むことができる。この点で、1つ以上の歯を、歯付き部材の本体表面に対して鈍角にすることができる。これは、例えばアクチュエータ部材が係合構造に約2〜5Nの力を生じさせる場合など、取り合いの領域における接触力が比較的小さい限りにおいて、係合構造と歯付き部材との間のしっかりとした係合をもたらす。しかしながら、接触力がさらに大きいと、斜めの歯ゆえに係合構造と歯付き部材の係合が滑って外れることができる。係合構造が或る程度柔軟である場合、係合構造が撓んで係合が外れ、それぞれの歯を過ぎた後で係合構造が弾性的に元に戻る。
【0059】
本発明の一実施形態においては、しきい値が、ばね部材の付勢の軸方向の力またはトルクに等しい。これにより、係合構造が歯から外れ、アクチュエータ部材が第2の方向に移動するとき、ばね部材が、初期の圧縮もしくはねじりの状態を超えて圧縮され、またはねじられる。
【0060】
しかしながら、しきい値そのものを製造者が知る必要がないことに注意すべきである。しきい値は、しきい値が注射装置の所望の特徴(例えば、係合構造が少なくとも投薬量の設定の際にアクチュエータ部材の第2の方向への移動を防止することができるなど)を得るために充分な特定の最小値よりも大きくなることが保証されるように注射装置を設定することを製造者が選択できるという意味で、しきい値「区間」であってよい。これにより、係合構造がアクチュエータ部材との係合から外れるように動いてアクチュエータ部材の第2の方向の変位が可能になる力の正確な大きさを製造者が知らなくても、注射装置が本明細書において説明されるとおりに機能する。注射装置の所望の特徴を得るために充分な最小値を、実験によって割り出すことができ、随意により安全マージンを含むように選択することができる。
【0061】
上述のような構成は、薬剤が意図的または誤って薬剤の凍結が生じる温度に曝されても、注射装置の構成(例えば、注射機構の設定)ゆえに可動壁が薬剤の注射のための方向とは別の方向に移動することができるため、薬剤が装置に損傷を生じることなくリザーバにおいて自由に膨張できるという効果を有する。さらに、注射の際に送り出される薬剤の量が、アクチュエータ部材と駆動部材との間の堅固な係合および第1の保持用の台地と第2の保持用の台地との間の距離だけに依存するため、この構成により、薬剤の凍結および解凍後に注射される投薬量が、そのようでない場合と同じであることが保証される。これは、薬剤の解凍後に、アクチュエータ部材および駆動部材が、ユーザが注射装置を操作したときに構成部品に通常の状況下で加わると考えられる移動と同じ移動が加わるように、案内部材に対して位置するからである。具体的には、駆動部材およびアクチュエータ部材が、駆動部材が第1の保持用の台地に位置するときにしっかりと係合する。換言すると、薬剤の凍結が、注射装置の投薬量の正確さに影響を及ぼすことがない。
【0062】
本発明の文脈においては、用語「機械式の注射装置」を、電気モータによって駆動される注射装置と反対に、機械的に動作する注射装置を意味するものと解釈すべきである。
【0063】
本発明の文脈において、用語「アクチュエータ部材」は、駆動力をリザーバの可動壁へと伝達する機械的な要素を指して使用される。「アクチュエータ部材」は、ロッドおよびロッドの足を備えることができ、ロッドの足が、可動壁に物理的に接触する要素である。ロッドおよびロッドの足を、2つの別々の部品として製作することができ、または1つの一体の構成要素として製作することができる。あるいは、「アクチュエータ部材」が、足を持たないロッドを備え、その場合には、ロッドそのものが可動壁に物理的に接触するように構成される。リザーバが軸方向に変位することができるピストンを備えているカートリッジ式のリザーバである場合には、「アクチュエータ部材」は、足を有しても有さなくてもよいピストンロッドであってよい。用語「アクチュエータ部材」が、例えば板またはダイアフラムなど、駆動力を可動壁へと伝達するための他の適切な構造も包含することに、注意すべきである。
【0064】
本発明の文脈においては、用語「液状の薬剤」を、例えば溶液または懸濁液などの液体の状態にある薬剤を意味するものと解釈すべきである。
【0065】
本発明の文脈においては、用語「所定の投薬量」を、投薬量設定手段の作動時に特定の固定の投薬量が設定され、すなわち任意の投薬量を設定することはできないようなやり方で解釈すべきである。しかしながら、所定の投薬量は、最初に注射装置を選択された投薬量に設定することができ、その後に投薬量設定手段がこの選択された投薬量を投薬量設定手段が作動するたびに設定するという意味で、可変であってもよい。用語「所定の投薬量」が、注射装置がプライミング機能を有してもよいということを排除していないことに注意すべきである。
【0066】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態への言及(例えば、「一態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「典型的な実施形態」、など)は、それぞれの態様または実施形態に関して説明される個々の特徴、構造、または特性が、少なくとも本発明のその1つの態様または実施形態に含まれるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態に含まれるわけではないことを意味する。しかしながら、本発明の種々の態様および実施形態に関して説明される特徴、構造、および/または特性の任意の組み合わせが、本明細書においてそのようではないと示されず、あるいは明らかに文脈から矛盾しない限り、本発明に包含されることを強調しておかなければならない。
【0067】
本明細書におけるあらゆるすべての例または例示の言葉(例えば、「・・・など」など)の使用は、本発明を分かりやすくしようとするものにすぎず、特にそのようでないと請求項に記載されない限り、本発明の技術的範囲を限定するものではない。さらに、明細書におけるいかなる言葉または表現も、請求項に規制されていない要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈されてはならない。
【0068】
以下で、本発明を、図面を参照してさらに説明する。