(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スナップロック手段(140、145)が前記薬物送達デバイスの一部として設けられ、対応する協働手段(186)は前記カートリッジの一部として設けられる、請求項1に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段をロック解除して、装填されたカートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段(143、270、370)を備える、請求項2に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段が、一又は複数の柔軟なロッキングアーム(144)を備え、各ロッキングアームが、ロック状態とロック解除状態との間で可逆的に作動可能な遠位把持部分(145)を有する、請求項3に記載の薬物送達システム。
各遠位把持部分が、前記カートリッジホルダ上の対応する遠位作動面(136)に係合するべく適合された傾斜近位面(146)を備え、それによって前記柔軟なロッキングアームの近位側方向の動きが、前記遠位把持部分の、前記ロック解除状態に対応する外向きの動きをもたらす、請求項4に記載の薬物送達システム。
各遠位把持部分が、前記カートリッジホルダ上の対応する近位作動面(137)に係合するべく適合された傾斜遠位面(147)を備え、それによって前記柔軟なロッキングアームの遠位側方向の動きが、前記遠位把持部分の、前記ロック状態に対応する内向きの動きをもたらす、請求項4又は5に記載の薬物送達システム。
前記カートリッジホルダが、前記カートリッジを軸線方向に受容するべく適合された遠位形状安定開口(131、431)を備え、前記スナップロック手段(140、145)は、前記遠位形状安定開口の近位側に、又は前記遠位形状安定開口に対応して配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
装填されたカートリッジに係合し、その上に遠位側向きの軸線方向の力を与えることによって、前記カートリッジを付勢して前記スナップロック手段に係合させるべく適合された第1付勢手段(160、165)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段(483)が前記カートリッジ(480)の一部として設けられ、対応する協働手段(434)は前記薬物送達デバイスの一部として設けられる、請求項1に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段をロック解除して、装填されたカートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段(484)を備える、請求項10に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段が、前記カートリッジ及び前記薬物送達デバイスの両方の一部として設けられ、対応する協働手段は、前記薬物送達デバイス及び前記カートリッジの一部として設けられる、請求項1に記載の薬物送達システム。
前記スナップロック手段は、前記カートリッジホルダに挿入された前記カートリッジを不可逆的にロックするべく適合されている、請求項2、10、及び12のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の点に鑑みて、本発明の目的は、単純で効率的な方式で薬物充填カートリッジを受容するべく適合された薬物送達デバイスであって、費用効率が良好であるとともに、信頼性を有し、エンドユーザにとっては使いやすさをも有する構成のものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開示では、上述の目的の1つ又は複数に取り組むか、又は以下の開示内容及び例示的な実施形態の説明から明らかとなる目的に取り組む、実施形態及び態様について述べる。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様によれば、カートリッジと、薬物送達デバイスとを備える薬物送達システムであって、前記カートリッジは、互いに反対側の遠位部分と近位部分とを有する円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備え、前記薬物送達デバイスは、前記カートリッジを軸線方向に受容して、装填位置に保持するべく適合された前側挿入式カートリッジホルダであって、前記カートリッジを近位側に受容するべく適合された遠位開口を備えた遠位部分を含む前側挿入式カートリッジホルダと、装填されたカートリッジのピストンに係合し、それを軸線方向変位させるべく適合された放出アセンブリとを備える、薬物送達システムが提供される。前記アセンブリは、挿入されたカートリッジを前記装填位置に保持するために、前記カートリッジと前記カートリッジホルダとの間に設けられるスナップロック手段を更に備える。前記放出アセンブリは、薬物送達デバイスの外殻を提供するハウジングに設けられるか、又は、前記ハウジングと一体的に形成されたアセンブリの形態であってもよい。前記カートリッジホルダは、ハウジングと一体的に形成されても、取り付けられてもよい。この構成によって、ユーザ又は製造者は、前記カートリッジホルダにカートリッジを容易かつ安全に挿入することができる。前記スナップロック手段は、前記カートリッジとカートリッジホルダとの間の移動に対する完全なロックを提供するものである必要はない。例えば、前記カートリッジは、依然として回転可能であってもよく、又は例えばバネ力に抗して近位側に押されることが可能であってもよい。
【0008】
スナップロックは、一般的には、それ自体が係合ロック手順において変形する「アクティブな」スナップロック手段と、一般的には変形しない協働する「パッシブな」手段とを備えている。それに対応して、本発明の前記スナップロック手段が前記薬物送達デバイスの一部として設けられ、対応する協働手段は前記カートリッジの一部として設けられてもよく、前記スナップロック手段が前記カートリッジの一部として設けられ、対応する協働手段が前記薬物送達デバイスの一部として設けられてもよく、又は、前記スナップロック手段が前記カートリッジ及び前記薬物送達デバイスの両方の一部として設けられるとともに、対応する協働手段が前記薬物送達デバイス及び前記カートリッジのそれぞれの一部として設けられてもよい。
【0009】
前記薬物送達システムは、例えばユーザが空のカートリッジを新しいカートリッジに交換しなければならないときに、前記スナップロック手段をロック解除して、装填されたカートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段を備えていてもよい。或いは、前記スナップロック手段が、カートリッジを前記カートリッジホルダにカートリッジを不可逆的にロックするべく構成されていてもよく、これは、例えば薬物が充填されたカートリッジが後で即ち製造プロセスの最終ステップとして挿入され得る予め充填された使い捨て型ペンの製造に際して適したものとなる。
【0010】
再使用可能なシステムのために、前記スナップロック手段が、各々が、ロック状態とロック解除状態との間で可逆的に作動可能な遠位把持部分を有する、一又は複数の柔軟なロッキングアームを備えていてもよい。
【0011】
例示的な実施形態では、前記スナップロック手段は、一対の対向する柔軟なロッキングアームを備え、各ロッキングアームは、カートリッジに係合するべく適合され、ロック状態とロック解除状態との間で可逆的に作動可能な遠位把持部分を有する。各遠位把持部分が、前記カートリッジホルダ上の対応する遠位作動面に係合するべく適合された傾斜近位面を備え、それによって前記柔軟なロッキングアームの近位側方向の動きが、前記遠位把持部分の、前記ロック解除状態に対応する外向きの動きをもたらすようにしてもよい。各遠位把持部分が、前記カートリッジホルダ上の対応する近位作動面に係合するべく適合された傾斜遠位面を更に備え、それによって前記柔軟なロッキングアームの遠位側方向の動きが、前記遠位把持部分の、前記ロック状態に対応する内向きの動きをもたらすようにしてもよい。少なくとも1つの作動面が、把持部分上の対応する面に対応して傾斜した面、又はその上に把持部分が摺動する縁面の形態であってもよい。或いは、他の数のロッキングアームを用いることもできる。
【0012】
例示的な実施形態では、前記カートリッジホルダが、前記カートリッジを軸線方向に受容するべく適合された遠位形状安定開口を備える。前記スナップロック手段は、ロック状態及びロック解除状態の両方において、前記遠位形状安定開口の近位側に、又は前記遠位形状安定開口に対応して配置され得る。このようにして、突出するロック手段が他の物体に突入したり、又は絡まったりするリスクが最小化され、同様に、整えられた外観が、単純なデバイスは相応に使用が簡単であるというユーザの印象を支えることにもなる。
【0013】
例示的な実施形態は、装填されたカートリッジに係合し、その上に遠位側向きの軸線方向の力を与えることによって、前記カートリッジを付勢して前記スナップロック手段に係合させるべく適合された第1付勢手段を備えていてもよい。また、前記スナップロック手段を前記ロック状態に保持するための第2付勢手段を備えていてもよい。
【0014】
前記スナップロック手段は、前記カートリッジホルダにカートリッジが配置されていないときに部分的に又は完全に前記ロック状態に配置されてもよく、このとき前記スナップロック手段は、前記カートリッジホルダにカートリッジが挿入されたとき受容状態に移行し、これによって前記カートリッジが前記カートリッジホルダに挿入されて、前記スナップロック手段にスナップ式に係合することが可能となる。前記受容状態は、前記ロック解除状態に対応するか、又は中間状態を表すものであり得る。
【0015】
上記したスナップロック手段は、前記カートリッジホルダに対する前記カートリッジの軸線方向の動きによって作動され得る。即ち、前記スナップロック手段は、前記カートリッジが、軸線方向の力のみを付加することによって軸線方向に挿入されたときにロックすることになる。実際に、前記スナップロック手段の現実の設計は、前記カートリッジが挿入の際にある程度回転されることを可能とするものであり得る。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、薬物送達デバイスであって、円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジを受容して、装填位置に保持するべく適合されたカートリッジホルダであって、前記カートリッジを受容するべく適合された遠位開口を備えた遠位部分を含むカートリッジホルダを備える、薬物送達デバイスが提供される。前記薬物送達デバイスは、装填されたカートリッジの前記ピストンに係合し、それを軸線方向変位させることによって、前記カートリッジから1回分の投与量の薬物を放出させるべく適合された放出アセンブリと、前記カートリッジホルダに挿入されたカートリッジに作用するスナップロック手段であって、前記カートリッジが前記装填位置に保持されるロック状態と、前記カートリッジが前記カートリッジホルダから取り外し可能となるロック解除状態とを有するスナップロック手段と、前記スナップロック手段をロック解除して、カートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段とを更に備える。前記薬物送達デバイスは、薬物送達システムに関連付けて上述したものと同じ特徴を備えていてもよい。
【0017】
本発明の更なる態様によれば、円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジと、前記カートリッジを受容して、装填位置に保持するべく適合されたカートリッジホルダであって、前記カートリッジを受容するべく適合された遠位開口を備える遠位部分を含む、カートリッジホルダと、装填されたカートリッジのピストンに係合し、それを軸線方向変位させることによって、前記カートリッジから1回分の投与量の薬物を放出させるべく適合された放出アセンブリとを備える薬物送達アセンブリが提供される。前記アセンブリは、前記カートリッジホルダに挿入されたカートリッジをロックするために前記カートリッジ上に配置されたスナップロック手段であって、前記カートリッジが前記装填位置に保持されるロック状態と、前記カートリッジが前記カートリッジホルダから取り外し可能となるロック解除状態とを有するスナップロック手段と、前記スナップロック手段をロック解除して、装填されたカートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段とを更に備える。
【0018】
例示的な実施形態では、前記スナップロック手段が、前記カートリッジの遠位端から近位側に延在する1つ又は複数の柔軟な指部(例えば2つの対向する指部)の形態であって、前記指部は、前記カートリッジホルダの対応する開口にスナップ式に係合する突出部を備える。前記指部は、単にそれを内向きに押すことによって解除されるものであってよい。前記アセンブリが、遠位側向きの力を提供する付勢手段を更に備える場合には、前記指部の作動により、解除時に前記カートリッジが前記カートリッジホルダから自動的に押し出されることになる。前記カートリッジが過度に勢いよく押し出されるのを防止するブレーキが、前記カートリッジと前記カートリッジホルダとの間に設けられてもよい。特定のブレーキ部品は、カートリッジホルダ上、カートリッジ上、又はそれらの両方の上に配置され得る。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、円筒形本体部分、遠位出口部分、軸線方向変位可能ピストン、及びスナップロック手段を備えるカートリッジであって、前記スナップロック手段が、前記カートリッジの遠位端から近位側に延在する1つ又は複数の柔軟な指部の形態であって、前記指部は、前記カートリッジホルダの対応する開口にスナップ式に係合するべく適合された突出部を備える、カートリッジが提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジと、前記カートリッジを受容して、装填位置に保持するべく適合されたカートリッジホルダであって、前記カートリッジを受容するべく適合された遠位開口を備える遠位部分を含む、カートリッジホルダと、装填されたカートリッジのピストンに係合し、それを軸線方向変位させることによって、前記カートリッジから1回分の投与量の薬物を放出させるべく適合された放出アセンブリと、前記カートリッジホルダに挿入される前記カートリッジをロックする不可逆的スナップロック手段とを備える薬物送達アセンブリが提供される。前記スナップ式構造は、前記カートリッジ上、前記カートリッジホルダ上のいずれか、又はその両方の上に設けることができる。そのような構成により、前記アセンブリを、予め充填された薬物送達デバイスの製造のために用いることが可能となる。そのようなシステムの利点は、通常は予め充填された薬物送達デバイスの最も高額な部分である薬物充填カートリッジを、製造プロセスの最終ステップで挿入することが可能になることである。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジを受容して、装填位置に保持するべく適合されたカートリッジホルダであって、前記カートリッジを受容するべく適合された遠位開口を備える遠位部分を含む、カートリッジホルダと、装填されたカートリッジのピストンに係合し、それを軸線方向変位させることによって、前記カートリッジから1回分の投与量の薬物を放出させるべく適合された放出アセンブリとを備える薬物送達デバイスが提供される。前記デバイスは、前記カートリッジホルダに挿入されるカートリッジをロックするロック手段であって、前記カートリッジが前記装填位置に保持されるロック状態と、前記カートリッジが前記カートリッジホルダから取り外し可能となるロック解除状態とを有するロック手段と、前記ロック手段をロック解除して、カートリッジを前記カートリッジホルダから取り外し可能とするためのユーザ操作式解除手段とを更に備える。前記デバイスは、装填されたカートリッジに係合し、その上に遠位側向きの軸線方向の力を与えるべく適合された付勢手段を更に備え、これは、前記解除手段が操作されて前記ロック手段をロック解除したとき、装填されたカートリッジを遠位側に動かして、前記カートリッジホルダから少なくとも部分的に外に出す。前記付勢手段は、更に前記カートリッジを前記スナップロック手段に係合するように付勢する役目を果たすものでもよい。
【0022】
上記した本発明の態様による薬物送達デバイスは、円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジであって、前記カートリッジホルダ及び前記カートリッジが協働する結合手段を有する、カートリッジと組み合わせて提供されてもよい。
【0023】
本発明の更に別の態様によれば、薬物送達システムの操作方法であって、(i)互いに反対側の遠位部分と近位部分とを有する円筒形本体部分、遠位出口部分、及び軸線方向変位可能ピストンを備えるカートリッジを準備するステップと、(ii)薬物送達デバイスであって、前記カートリッジを軸線方向に受容して、装填位置に保持するべく適合された前側挿入式カートリッジホルダであって、前記カートリッジを近位側に受容するべく適合された遠位開口を備えた遠位部分を含む前側挿入式カートリッジホルダと、装填されたカートリッジの前記ピストンに係合し、軸線方向変位させるべく適合された放出アセンブリとを備える、薬物送達デバイスを準備するステップと、(iii)前記カートリッジホルダにカートリッジを挿入し、それにより挿入されたカートリッジを前記装填位置に保持するために前記カートリッジと前記カートリッジホルダとの間に設けられるスナップロック手段を作動させるステップとを含む、薬物送達システムの操作方法が提供される。前記薬物送達システムの操作方法は、前記スナップロック手段を解除するステップと、前記カートリッジホルダから前記カートリッジを取り外すステップとを更に含み得る。
【0024】
本明細書において用いられるとき、用語「薬物」は、液体、溶液、ゲル、又は微粒子懸濁液等のようにカニューレ又は中空ニードル等の送達手段を通して制御された形で流通可能で、かつ1つ又は複数の種類の薬剤を含む、あらゆる流動性の医薬製剤を包含する意味である。前記薬物は、1種類の薬物化合物、又は1つのリザーバからの予め混合済みの即ち同時製剤化された複数の薬物化合物の薬剤であり得る。代表的な薬物としては、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬、GLP−1含有薬並びにその誘導体)、タンパク質、及びホルモン、生物学的に誘導された又は活性の薬剤、ホルモン及び遺伝子をベースにした薬剤、栄養調合物、及び固体状(調剤されたもの)又は液体状の両方の他の物質等である調剤が挙げられる。例示的な実施形態の説明では、インスリン及びGLP−1含有薬の使用について述べる。この薬物は、その類似体、並びに1つ又は複数の他の薬物との組み合わせを含む
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を更に説明する。図面において、類似の構造は、類似の参照番号によって概ね特定されている。
【0027】
「上」及び「下」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」等の用語や、類似の相対的な表現が用いられるときには、これらは、添付の図面について述べているに過ぎず、実際の使用状況について述べたものではない。添付の図面は概略的な表現であって、そのため、異なる構造の構成とそれらの相対的な寸法が説明の目的のみに供されるものである。
【0028】
図1を参照すると、ペン形状の薬物送達デバイス100が記載されている。より具体的には、ペン型デバイスは、キャップ部(図示せず)と主要部とを備え、主要部は、ハウジング120を備えた近位側本体部又は駆動アセンブリ部分と、遠位側カートリッジホルダ部分とを有する。ハウジング120内には、薬物放出機構が配置されるか、又は一体的に設けられ、遠位カートリッジホルダ部分内では、遠位側にニードルが貫通可能な隔膜187を備え、薬物が充填された透明なカートリッジ180が配置され、近位部分に取り付けられたカートリッジホルダ110により所定位置に保持される。カートリッジホルダは、カートリッジの一部を検査可能にする開口を有する。カートリッジは、例えば、インスリン、GLP−1、又は成長ホルモン製剤を含み得る。そのデバイスは、新たなカートリッジがユーザにより、カートリッジホルダの遠位側の受容開口を通して装填されるように設計されている。カートリッジはピストンロッド128によって駆動されるピストンを備えており、これは放出機構の一部を形成する。最も近位側の回転可能な投与量リング部材125は、表示ウィンドウ126に示された、後で解除ボタン127が作動されたときに放出され得る薬物の所望の一回の投与量を手で設定するために用いられるものである。薬物送達デバイスに具現化された放出機構のタイプによっては、放出機構は、投与量設定時に蓄勢され、解除ボタンが作動されたときピストンロッドを駆動するべく放勢されるバネを備え得る。或いは、放出機構は完全に手動式のものであり得、この場合には、投与量設定時には、投与量リング部材及び解除ボタンは、設定された投与量サイズに対応して近位側に動き、次に、設定された投与量を放出させるべくユーザによって遠位側に動かされる。その薬物送達デバイスは、設定された投与量を表示し、及び/又は1回又は複数回の放出された量の薬物に関する情報を検出、格納、及び表示するべく適合された電子的手段を備えていてもよく、その電子的手段は、例えば、Novo Nordisk製のNovoPen Echo(登録商標)におけるもののような機械的デバイス自体の近位端に一体化された、解除ボタンに配置されたディスプレイを備える電子的モジュールの形態のものであり得る。カートリッジは、ニードルハブマウント182の形態である遠位側結合手段を備えており、このニードルハブマウント182は、図示された実施例では、対応するニードルアセンブリのハブの内部のネジ山に係合するべく適合された外部ネジ山185を有する。代替的実施形態では、ネジ山は、他の結合手段、例えばバヨネット式連結部と組み合わせるか、それに置き換えることができる。図示された例示的なハブマウントは、多数の遠位側に向いた点状の突起189を備えた周方向フランジ186を更に備えており、この突起189は、後により詳細に説明するように、カートリッジホルダの結合手段としての役目を果たす。図示したタイプのハブマウントは、米国特許5,693,027号に記載されている。カートリッジホルダは、カートリッジを受容して装填位置に保持するべく適合され、カートリッジを近位側方向に軸線方向に受容するべく適合された遠位開口を備える概ね管形状を有し、ホルダ及びカートリッジが対応する結合手段を備えており、それによりカートリッジを取り付け、その後解除することが可能となる。図示した実施形態は、軸線方向に摺動するロック部材140がその上に配置された主カートリッジホルダ部分130を備え、ロック部材は2つの対向するアーム144を備えており、各アームが、カートリッジフランジ186と係合するべく適合された遠位把持手段149を有する。カートリッジホルダの異なる実施形態について、以下より詳細に説明する。ユーザに所望の投与量を設定可能にするとともに、装填時にカートリッジによってピストンロッドが押し戻されることを可能にするカートリッジ作動結合部を備える放出機構の一例は、例えば米国特許出願公開第2004/0210199号に開示されており、その内容は参照により本明細書に一体に組み込まれるものとする。
図2は、カートリッジホルダ110に取り付けられたカートリッジ180を示している。
【0029】
図3は、
図1の薬物送達デバイスの部分分解図であって、図は、カートリッジホルダの個々の部品とともに、それに関連する部品を示している。より具体的には、
図3は、ハウジング120を備えた駆動アセンブリ部分と、長手主軸を定めかつカートリッジ180を受容するべく適合されている概ね管状の主カートリッジホルダ部分130(管部材)と、ロック部材140と、取り付けリング150と、第1コイルバネ151と、結合部材160と、第2コイルバネ165と、リング形状バネ支持体166とを備える、ペン形状の薬物送達デバイス100を示す。主カートリッジホルダ部分130は、カートリッジのための挿入開口を画定する遠位リング部分131と、近位リング形状ベース部分132と、2つの対向する壁部134の間に形成された2つの対向する長さ方向ウィンドウ開口133とを備え、ウィンドウにより装填されたカートリッジの内容をユーザが検査することが可能となる。或いは、主カートリッジホルダ部分が、完全に又は部分的に透明な材料から製造されてもよい。主カートリッジホルダ部分は、遠位リング部分のすぐ近位側に2つの対向する横方向を向いた作動スロット135と、第1の前記スロットの近位側に配置された2つの対向する軸線方向を向いたスロット138とを更に有しており、2対のスロットは、ロック部材上に対応する構造に係合するべく適合されている。ロック部材は、前記管部材の近位部分と摺動して係合するように配置されるべく適合された近位リング部分142と、遊端である遠位端を有する一対の対向する軸線方向に配置された柔軟なアーム144とを有し、近位リング部分は、対向するアームの間のギャップに対応して配置された一対の対向するウィンドウ141と、各アームのすぐ近位側に配置された一対の対向する突出部143とを有する。各アームの遠位端は、複数の把持歯149を備えた、傾斜して内向きに遠位側に向いた肩部分145を備えており、各肩部分は、横方向を向いたスロット135の1つに受容されるべく適合されている。後でより詳細に説明するように、スロットと肩との間の係合は、ロック部材が遠位側及び近位側に動かされるときに、柔軟なアームの遠位端を動かして、装填されたカートリッジに対しそれをロックする係合状態にしたり、そこから外したりする役目を果たす。各アームは、軸線方向に向いたスロット138の1つに受容され、それによって2つの部材の間の軸線方向及び回転方向の動きを制限するべく適合された内側案内突出部148を更に備える。取り付けリング150は、管部材130の最も近位側の端部に取り付けられる内面と、ハウジング120の内面に取り付けられる外面とを有し、それによって管部材とハウジングに取着する。取り付けリングと取り付けられたロック部材との間の周方向ギャップには、第1コイルバネ151が配置され、ロック部材に対して遠位側に向いた付勢力を与える。バネとロック部材の最も近位側の端部とはそれぞれハウジングの内側によって案内されるように配置される。ハウジングの内側に軸線方向に案内される、結合部材が配置されている。結合部材は、結合部材とハウジング内に取り付けられたバネ支持体166との間に配置された第2コイルバネ165によって遠位側に付勢される。最も遠位側の位置にあるとき、結合部材は、ピストンロッド128(
図1参照)が、(回転する動き又は非回転の動きのいずれかによって)近位側に動かされ得るようにする。カートリッジがカートリッジホルダに挿入されたとき、カートリッジの近位端は結合部材に係合し、バネの付勢力に対抗してそれを近位側に動かす。それによって、結合部材は、ピストンロッドが放出機構に直接又は間接に係合できるようにし、その状態でそれは遠位側に動かされ得る。同時に、結合部材は、取り付けられたカートリッジに遠位側に向いた付勢力を与える役目を果たす。
【0030】
図4Aは、
図3のロック部材140の遠位部分とカートリッジ180の詳細図である。傾斜した肩部分145は、内側湾曲面146と外側湾曲面147とを有し、外側湾曲面は、作動スロット135の対応して湾曲した遠位作動面137に係合するべく適合され、内側湾曲面は作動スロットの近位縁面136に係合するべく適合されている。肩部分の遠位縁には、複数のギャップを提供するべく周方向に間隔をおいて配置された複数の把持歯149を備えており、各歯は、近位側に向いた点状の端部を有する三角形の形態を有し、それによって遠位側に向いた点状の形状を有する複数のギャップを形成する。カートリッジ180にはハブマウント182が設けられ、ハブマウントは、多数の遠位側に向いた点状の突起189を備えた周方向フランジ186を更に備えており、この突起189は、歯149の間に受容されるべく適合され、それによってロック部材がそのロック状態に配置されているとき把持手段としての役目を果たす。
【0031】
図4Bは、案内突出部148が、カートリッジのブレーキとしての役目を果たす柔軟なアーム148’によって置き換えられ、これによってカートリッジが解除されたときにカートリッジが付勢バネ151によって過度に勢いよく押し出されるのを防止している代替的実施形態を示す。挿入を容易にするために、アームは、カートリッジ挿入の際に抵抗がより少なくなるように近位側に向けられている。
【0032】
図5A及び
図5Bを参照すると、
図4Aのカートリッジホルダの断面図が示されている。ロック部材は、対応する作動スロット内に配置された傾斜した肩部分を有する管部材上に摺動して係合するように取り付けられる。図に見られるように、取り付けリング及びハウジングの対応する部分は、管部材と一体的に形成される。ロック部材は第1コイルバネによって遠位側に付勢されているので、外側肩部面は傾斜した作動面に係合し、それによって柔軟なアームの遠位端が内側向きに強制され、歯が遠位リング部分131の開口に突入する。アーム突出部148が軸線方向を向いたスロット138に受容され、2つの部材間の回転運動が防止される。
図5Aには、遠位のピストン係合足部即ちワッシャ129を備えたピストンロッド128も示されている。カートリッジホルダが空なので、カートリッジが挿入され、ピストン183がピストンロッドの足部に係合するとき、ピストンロッドは自由に近位側に押される。新しいカートリッジが装填されるとき、ユーザは単にカートリッジの近位端を、遠位カートリッジホルダ部分を通して軸線方向に挿入し、カートリッジホルダ部分において、それが内向きに突出する把持歯149に係合し、それによって柔軟なアーム144は第1コイルバネの付勢力に対抗して近位側に押される。アームが近位側に動かされると、内側傾斜肩部面146は作動スロットの近位縁136に係合することになり、それにより肩部分を外向きに強制し、このことでカートリッジがその時点での開いたアームの間に導入され得るようになり、挿入の際に歯はカートリッジの外側面と摺動して係合することになる。その突出部186を備えた周方向フランジ186が把持歯を通過したとき、肩部は所定位置に反発するが、これは、肩部が、第1コイルバネと、外側傾斜肩部面147と傾斜作動面137の間の係合との複合作用によって内向きに付勢されているためである。通常は、ユーザがカートリッジを、付勢する第2コイルバネ165に対抗してカートリッジホルダ内にわずかに深く押し込み、このことで、ユーザがカートリッジを押すのをやめたときに点状の突出部が点状の把持歯の間にしっかりと収まることが可能となる。歯による係合は、カートリッジのカートリッジホルダ内への軸線方向の固定のためには必須ではないが、提供される回転による固定により、図示されたネジやバヨネット式連結部等の、回転式結合によるニードルアセンブリの取り付け及び取り外しが容易になる。
図5Bに示すように、肩部分が作動スロットの係合面の間に配置されるので、肩部は不注意な操作によって引っ張られて離れることが容易に起こり得なくなり、このことがカートリッジとカートリッジホルダとの間でしっかりしたロック係合を提供する。ユーザがカートリッジを解除して取り外すことを望んでいるときには、カートリッジホルダが、例えば突出部143を把持することによって第1コイルバネ及び第2コイルバネの付勢力に対抗して近位側に動かされ、このことで肩部が近位側かつ外向きに動かされ、そのため把持歯がカートリッジフランジ186との係合から外され、このことで第2コイルバネが結合部材160を介して「ポップ式の」作用でカートリッジを部分的に押し出すことが可能となり、これによってユーザがカートリッジを容易に把持して取り外すことが可能となる。
【0033】
図6A及び
図6Bを参照すると、カートリッジホルダ210の更なる実施形態の断面図が示されており、これは
図5A及び
図5Bの実施形態に概ね対応するが、主な相違点は、把持突出部の代わりに、カートリッジホルダ230の近位ベース部分232に2つの互いに反対側に位置する押しボタン270が設けられている点である。押しボタンは、ボタンの作動により、
図5A及び
図5Bを参照しても説明したようにロック部材と柔軟なアーム244が近位側に動かされ、肩部245が動かされてカートリッジ280との係合から外れて、これによりカートリッジが解除されるように、ロック部材上の面243と相互作用する。挿入は、上述したように生ずる。
【0034】
図7A及び
図7Bを参照すると、カートリッジホルダ310の更なる実施形態の断面図が示されており、これは
図5A及び
図5Bの実施形態に部分的に対応するが、主な相違点は、柔軟なアーム344は近位側及び遠位側に動かされ、それにより、把持肩部345が、管部材のベース部分332上に回転可能に係合するように取り付けられた作動リング370の回転によって作動スロット335に出入りする点である。より具体的には、作動リング370は、ロック部材の近位部分の上に配置された対応する突出部343に係合するべく適合された、互いに反対側にある一対の傾斜スロット371を備えており、それによりリングの回転でロック部材の軸線方向の動きが生ずる。図に示す実施形態では、スロットが長手軸に対してある角度を有し、それによりロック係合がなされる。即ちロック部材の軸線方向の動きは、リングを回転させられない。しかし、代替的実施形態では、その角度は、カートリッジ380の挿入とともに、コイルバネ351のバネ力がリングを回転させることを可能とするように選択され、これにより上述したスナップ結合が提供される。
【0035】
図1乃至
図5Aの実施形態では、装填されたカートリッジは、ロック部材を近位側に動かすことによって解除されるが、そのようなユーザインタフェースに対する代替形態として、カートリッジが、それが装填され所定位置にロックされるのと同じ方式で解除されてもよい。より具体的には、外部作動部材の代わりに、デバイスが、第1の押し込みが上述のようにカートリッジを所定位置にロックし、カートリッジに対する第2の押し込みが、把持肩部を解除して、カートリッジがポップ式に外に出られるようにするペン型の機構を備えたものであってもよい。このようにして、カートリッジが、同じタイプの操作入力、即ちカートリッジの近位側への押し込みによって装填及び取り出しがされる、非常に単純で直感的なカートリッジ機構が設けられる。更に、操作が従来型のボールペンの操作と非常に類似しているので、新たなユーザが使用方法を学び適応することが更に一層容易になる。
【0036】
図8A及び
図8Bは、円筒形本体部分481を有するカートリッジ480と、スナップロック式の係合状態でカートリッジを受容するべく適合されたカートリッジホルダ430とを備えるアセンブリの代替的実施形態を示す。上述の実施形態とは対照的に、軸線方向に作動される結合部が、カートリッジ上に配置される柔軟なアーム(以下、指部と称する)を備えるスナップ式結合部であり、カートリッジホルダは、単に遠位開口431及びアームに係合するべく適合された手段を備える固定的な管部材を含むものである。より具体的には、ニードルハブマウント482は、一対の互いに反対側に位置し近位側に延在する柔軟な指部483の形態の結合手段を備えており、指部483の各々は、遠位側に向いた縁部485と近位側に向いた傾斜面486とを備えた近位側外向きのロック用突出部484を備える。各指部の遠位側には、近位側に向いた縁部489を有する遠位突出部488が配置される。カートリッジホルダ430は、一対の互いに反対側に位置する軸線方向に延在するスロット433の形態の結合手段を内側遠位側面上に有しており、各スロットは、上述のロック用突出部を軸線方向に受容するべく適合された遠位開口を有し、かつ各スロットはその近位端において、ロック用突出部を受容するべく適合された開口434と連通しており、その開口の各々は近位側を向いた縁部435を有する。各スロットに対応して、カートリッジホルダの遠位周方向縁部には一対の切り欠き部438が設けられており、切り欠き部の各々は遠位側に向いた縁部439を有し、その縁部439は、柔軟な指部上の傾斜面486に初めに係合するべく適合された関連する傾斜面436を有する。カートリッジがカートリッジホルダに軸線方向に挿入されると、指部はスロットに係合し、指部の突出部が開口に外向きにスナップ式に留まるまで内向きに曲げられ、各突出部上の遠位縁部はそれによって開口の対応する近位縁部に面した状態となる。同時に、カートリッジの遠位突出部488は、対応する切り欠き部438にスナップ式に留まり、各遠位突出部の近位縁部489はそれによって切り欠き部の対応する遠位縁部439に面した状態となる。このようにして、カートリッジは、軸線方向及び回転方向の両方についてカートリッジホルダにロックされる。上述の実施形態に対応して、遠位側向きの付勢力が挿入されたカートリッジに作用する。カートリッジホルダを解除するために、ユーザは2つの指部の突出部を内向きに押し込むと、次にカートリッジが「ポップ式に」外に出て、その後カートリッジが把持されて、カートリッジホルダから軸線方向に取り出され得るようになる。図に示すように、指部の突出部は、スナップロック手段をロック解除するためのユーザ操作式解除手段としての役目も果たすが、代替的に、解除手段をカートリッジホルダ上に設けることもできる。
図8A及び
図8Bの実施形態では、アクティブなスナップロック要素はカートリッジ上に配置されているが、代替的に、それらはカートリッジホルダ上に配置されてもよい。さらに、スナップロックは、純粋に軸線方向のものとする代わりに、回転可能な部品を備えていてもよい。
【0037】
図7Aの実施形態では、作動リング370の回転を用いて把持肩部を近位側及び遠位側に動かし、それによって把持肩部345が取り付けられたカートリッジと係合状態で脱着するようにしている。前側挿入式カートリッジホルダに組み込まれたカートリッジロック手段を制御するための回転可能部材の使用という概念に基づく、前側挿入式カートリッジホルダの代替的な実施形態について
図9A乃至
図11を参照して説明する。
【0038】
より具体的には、
図9Aは、キャップ部(図示せず)と主要部とを備えた薬物送達デバイス500を示しており、主要部は、ハウジング部分520を備えた近位本体部即ち駆動アセンブリ部分と、遠位カートリッジホルダ部分とを有し、ハウジング部分520内には薬物放出機構が配置されるか、又は一体的に設けられ、遠位カートリッジホルダ部分内では、遠位側にニードルが貫通可能な隔膜を備え、薬物が充填された透明なカートリッジ580が配置され、近位部分に取り付けられたカートリッジホルダ510により所定位置に保持される。カートリッジホルダは、カートリッジの一部分を検査可能にする開口を有する。そのデバイスは、新たなカートリッジがユーザにより、カートリッジホルダの遠位側の受容開口を通して装填されるように設計されている。カートリッジ並びに放出機構は、
図1を参照して説明したものと同じタイプのものであってよい。
【0039】
図に示すように、そのカートリッジホルダは、例えばネジ山付き結合部又はバヨネット式連結部によってハウジングに着脱自在に結合され、近位開口を通してその内部に新しいカートリッジが受容され、かつ取り外すことができる、従来型のカートリッジホルダと同じ全体的な外観を有しており、即ち、
図3に示すような互いに反対側に位置する突出部143等の追加のユーザ操作式解除手段を有していない。その代わりに、単にカートリッジホルダ自体に見えるものは、実際、外側回転可能管部材570の形態のユーザ操作式結合手段である。このユーザ操作式結合手段は、ユーザによって操作されて、内側把持部材540(
図10A参照)の動きを制御し、それにより
図1乃至
図7に示すのと基本的に同様の方式でカートリッジを把持し、保持するべく構成された把持肩部545を開閉する。このようにして、従来型の後側挿入式デバイスのような外観を有し、カートリッジの取り付け及び取り外しのため、回転する動きによって作動されることもできる、使いやすい前側挿入式薬物送達デバイスを提供することができる。外観が類似しているために、従来型の後側挿入式薬物送達デバイスに慣れたユーザが受け入れ、適応することが容易となる。
【0040】
新たなカートリッジを取り付ける時期になったときには、外側管部材を例えば15度回転させると、その作用によって把持肩部545が遠位側かつわずかに外向きに動き、これにより取り付けられたカートリッジが取り外し可能となる。操作を容易にするため、肩部が動かされるとき、カートリッジは、例えば把持肩部を形成するアームとの係合によって及び/又は遠位側向きの力による付勢を提供する追加のバネ手段によって、遠位側にある一定の距離だけ動かされてもよい。
図9Bは、カートリッジが取り外されたデバイスと、カートリッジを取り外しが可能となり新たなものを挿入可能となるロック解除された「開かれた」位置にある把持肩部とを示す。ロック及び作動機構の設計に応じて、把持肩部は、開かれた位置のままに維持されることが可能なものでも、又は外側管部材が戻りバネ手段によって逆に回転されたとき自動的に引っ込められるものでもよい。バネが設けられても設けられなくても、カートリッジホルダは、外側管部材を開かれた位置又は閉じられた位置に例えば回転可能なスナップロックによってしっかりと固定可能にするロック手段を備えていてもよい。
【0041】
上述のユーザインタフェースを提供する機械的構成、即ち外側管状スリーブ部材の回転により把持肩部を内外に動かす構成は、様々な方式で提供することができる。
図10Aに示す実施形態では、カートリッジホルダは、近位リング部分542から延出する2つの対向する柔軟なアームを有し、これらのアームは外側管部材に対して軸線方向に案内されて摺動するように、したがって非回転可能に係合するように配置される。各アームは
図1の実施形態に対応する把持肩部を備えている。この構成により、把持肩部は、外側管部材とともに回転することになり、従ってそれらが軸線方向に移動するときハウジングに対して回転することになる。この構成により、2つの互いに対向するウィンドウ541が、把持部材並びに外側管部材において形成され、回転方向に位置を合わせた状態で一緒に動く。別形態として、把持部材及び外側管部材が、完全に又は部分的に透明な材料から形成されてもよい。
図4の実施形態の構成にいくらか対応して、各アームは、外側湾曲面547と一対の傾斜縁部分546とを有し、外側湾曲面547は、外側管部材570における対応して湾曲した遠位作動縁部577に係合するべく適合され、一対の傾斜縁部分546は、一対の、それに対応して傾斜した作動面576に係合するべく適合されている。この構成により、傾斜した作動面576が、傾斜縁部分545が遠位側に動かされて摺動して作動面に接触したときに、把持肩部を外向きに、それらの開かれた位置に強制することになる。それに対応して、アームが近位側に動かされたとき、外側湾曲面547は、作動縁部577に係合し、それによって内向きにそれらのロック位置に強制されることになる。
【0042】
図11は、
図9及び
図10に示すカートリッジホルダの断面図である。上述のように、遠位側に把持肩部544を有する対向するアーム544を備えた内側の把持部材540は、外側管状スリーブ部材570の内部に収容される。外側部材は、近位側に周方向フランジ572を備えており、この周方向フランジはハウジングに形成された対応する周方向溝522に案内され、これによって外側部材がハウジングに対して回転可能となる。外側部材は、2つの対向する近位側開口573を更に備えており、これによって把持部材に設けられた制御突出部543がハウジング部分に形成されたらせん溝523に係合可能となり、この係合によって、外側管部材が回転されたとき把持部材の軸線方向移動が制御される。ハウジング内に配置されたばね部材525は、取り付けられたカートリッジに対し遠位側方向の付勢力を与える。ハウジング部分は結合機構529を更に備えており、結合機構は、カートリッジホルダの回転作動によって制御されて、ピストンロッドと放出機構の駆動手段との間に係合をロック及びロック解除する。カートリッジホルダの回転により制御される結合機構を設けることにより、結合機構を、カートリッジが所定位置にロックされ、かつピストンロッド528がカートリッジのピストンと適切に接触した状態になった後に駆動されるように設計することが可能となり、このことによって、ピストンとピストンロッドとの間に空隙が形成されないこと、及びピストンが取り付け手順の間に弾性的に変形されないことが確実となる。
【0043】
前に示したように、
図1の薬物送達デバイスは、1回又は複数回の放出された量の薬物に関する情報を検出、格納、及び表示するべく適合された電子的手段を備えていてもよく、その電子的手段は、例えば、Novo Nordisk製のNovoPen Echo(登録商標)におけるもののようなデバイスの近位端に一体化された、解除ボタンに配置されたディスプレイを備える電子的モジュールの形態のものであり得る。WO2010/052275を参照されたい。以下、1回又は複数回分の放出された量の薬物に関する情報を格納及び表示するべく適合された電子投与量記録モジュールの異なるユーザ関連の態様について記す。
【0044】
そのようなモジュールの一実施形態では、最も近位側の解除ボタンにディスプレイが一体化される。その結果、ディスプレイは比較的小型で、ペン形状のデバイスの場合には一般的には円形に近いものとなる。更に、シンプルなユーザインタフェースと外観を提供するために、追加のボタンは設けられないが、このことにより、簡単で効率的でかつ信頼性のある方式で投与歴情報を呼び出して表示することが課題となる。以下、デバイスから放出された最後の投与に関する情報、即ちインスリンの単位での投与のサイズ及びそれが放出されてからの時間を示すべく適合されたディスプレイの実施例がいくつか示される。或いは、デバイスが他の薬物のために適合されている場合には、他の単位、例えばGLP−1製剤や成長ホルモンのためのmg等で表示されてもよい。
【0045】
図12A乃至
図12Dは、数字7セグメント文字をベースにした2ラインLCDをベースにした2ラインLCDを用いたディスプレイ600の実施形態を示す。このタイプのディスプレイ並びに対応するディスプレイドライバは比較的安価である。単位を表す文字「u」、時間を表す文字「h」、及び日数を表す文字「d」が、前もって作られた文字を用いて示されるか、又はセグメントから形成され得る。
図12Aでは全ての情報が同時に示されており、即ち上側ラインには1〜99の単位の数値が、下側ラインには0〜9の日数の数字(ゼロ日に対しては、日数情報が示されなくてもよい)及び0〜23の時間の数字が示されている。或いは、ディスプレイは、
図12B乃至
図12Dに示すように投与量サイズと時間を別々に表示するように制御されてもよい。ディスプレイは、自動的に、又はユーザの操作によって2つの状態の間で切り換えられてもよい。
【0046】
特に
図12A及び
図12Cから明らかなように、2つのラインの情報が表示される場合、文字は比較的小さくなる。この問題に対処するため、
図13A乃至
図13Cのディスプレイ610は2層の7セグメントLCDを備え、上側ディスプレイは使用されないときは透明になり、下側ディスプレイが見られるようにする。この設計により、比較的安価なセグメント型LCDに依拠しつつより大きな数字の表示が可能となる。より具体的には、単位の数値又は時間のみの数値を表示するときは、(上側又は下側であり得る)第1のディスプレイが使用され、小さい文字の2つのラインを備える第2のディスプレイは、日数及び時間の両方でカウントされる期間が示されなければならない場合にのみ用いられる。このようにして、大半の情報はより大きい数字を用いて示されることになる。表示切り換えは、自動的に又は手で行われ得る。
図14A乃至
図14Cのディスプレイ620は、アクティブな2ラインを備えた
図12Aのディスプレイに類似した、従来型の2ラインディスプレイである。
図14Aでは、時間がHH:MM:SSのストップウォッチ設計を用いて示されており、これはデバイスから放出された最終投与からの時間を、動く秒カウンタを用いて示すことができ、ユーザはカウントされている時間値として示された情報を容易に特定することができる。24時間後、ディスプレイはHH:MM:SS形式で時間の表示を継続するか、又は日数及び時間形式に変わってもよい。
図14Bでは、時間が
図12Aのように示され、
図14Cでは日数及び時間がアイコンによって示されている。
図12A、
図13A、及び
図14Aでは、ディスプレイが「水平部」601、611、621を有しており、これは配線のカバー及びディスプレイの読み方の表示部の両方であり得る。
【0047】
1又は2つの7セグメントディスプレイ部分の使用の代替として、マトリクスディスプレイ630を用いることもできるが、そのディスプレイと対応するドライバはより高価である。
図15A乃至
図15D、
図16A乃至
図16C、
図17A乃至
図17Cに示すディスプレイでは、数字が64×64マトリクスディスプレイを模すように形成されている。図に見られるように、2つのラインの情報が
図15Aのディスプレイ630のように示されると、数字のサイズは
図12Aの実施形態と概ね同じ大きさとなるが、「よりきれいに」形成された数字が読みやすさを向上させていると言えよう。
図15B乃至
図15Dでは、マトリクスディスプレイ631は、
図13A乃至
図13Cの2層ディスプレイと同様な方式、即ち大きい数字の1本のラインと小さい数字の2本のラインとで情報を表示する。またここでは、マトリクスディスプレイが読みやすさを向上させていると言えよう。図に見られるように、両方のタイプの情報について、数字は明るい背景上に暗く示されるが、1つのタイプの情報、例えばインスリンの単位又は時間が、
図16A乃至
図16C及び
図17A乃至
図17Cに示すように反転モードでそのような情報を示すべくディスプレイ640を制御することによって表示されてもよく、これはユーザが表示された情報を特定するのを助け得る。
【0048】
上述の意図された目的のために使用されるディスプレイは、毎日数回しか確認されないことが予想されるので、エネルギーの節約のためディスプレイは必要時のみオン状態にされるべきである。ディスプレイは、予め装備されて1回分の投与量の薬物を設定し放出させるために用いられる「固有の」制御手段、又はディスプレイを制御するためのみに設けられる追加の入力手段のいずれかによって作動され、制御され得る。機械的タイプの薬物送達デバイスのための固有の入力手段は、一般的には多くの場合回転可能部材の形態である投与量設定部材であり、
図1に示すようにデバイスの近位端か又は他の部位に配置され得る解除ボタンである。投与量設定部材は、通常はそのゼロ位置から離れる向きに回転させることができるが、追加のタイプの入力を提供するために、ゼロ位置から反対側に2、3度回転させるべく、並びに引き戻しか押し出しを可能とするべく適合されていてもよい。それに対応してかつ実際の設計に応じて、解除押しボタンは、追加のタイプの入力を提供するために更に僅かな引き出しが行えるように適合されていてもよい。
【0049】
例示的な実施形態では、投与記録機構を備えた薬物送達デバイスが、以下のように動作され得る。機械的薬物送達デバイス自体の通常の使用の際には、ユーザは、機械的ディスプレイ126(
図1参照)を用いて投与量を設定し、バネ駆動デバイス上の解除ボタンを押すか、手動デバイスのボタンを押すことによって設定された投与量を放出させる。投与量の設定及びその放出の際にはディスプレイは消した状態にされる。放出された投与量は設定及び/又は放出の際に記録され得るが、設定された投与量が完全に放出されない(例えば、注射がユーザによって中止され、投与量設定部材をダイアルして戻すことによって残りの投与量がキャンセルされることがある)ことがあるので、ここでは投与量は、放出機構の実際の作動の際に記録される。投与量が完全に放出されたとき(又は所定の時間だけ中止されたとき)、ディスプレイは、例えば
図12D、
図13C、又は
図15Dのように単位数で表されるインスリンの量を示す。投与量が放出された直後には、時間の単位を表示する必要はない。
【0050】
ユーザが投与記録をチェックしたいときには、表示モードにシフトする、即ち上述の1つの又は2つのディスプレイビューの何れかを用いて記録情報を表示するように電子機器を制御するためユーザ入力が提供されなければならない。単純で、多くの人にとって直感的な入力は、作動ボタンを押してディスプレイをオン状態にすることであるが、投与量がバネ駆動デバイスにおいて誤ってダイアルされていた場合には、この作用によって機構が解除され薬物の放出が始まることになり、これは実際に望ましくない。これを回避し、かつ固有の入力手段をそのまま使用するために、ユーザは投与量のダイアルをアップさせて、次に投与量をダイアルしてゼロに戻してもよい。これにより電子機器が表示モードになる。或いは、送達デバイスが、もっぱら電子機器を表示モードにするために使用される入力手段を備えていてもよい。例えば、投与量リング部材125を、前に押されるか、僅かな距離だけ押し戻されるか、又は僅かに後方に回転(その操作により、機械的投与量表示がそれに応じて後方に動く必要はない)させられてもよい。それに対応して、記録用電子機器が、多数の投与事象のためにメモリを備えている場合には、上述の入力のタイプについての異なる入力の組み合わせを用いて、ディスプレイを制御することができる。例えば、最終投与事象のみについてのデータを示すためには、ユーザが投与量リング部材を前に押すようにしてよく、一方、その部材を後方に引っ張ることで、ユーザを前回の注射の記録データの中に踏み込ませる。次に、このモードがタイムアウトするか、又は投与量リング部材を前に押すことによってこのモードをキャンセルすることができる。ユーザに古い記録データに関する情報を提供するために、ディスプレイは追加の印を備えていてもよい。例えば、周辺部の「5分」セグメントが、それぞれ12個のメモリ位置の1つを表示してもよい。更なる代替形態として、電子モジュールが、他のタイプの入力手段、例えばユーザが振ったりタッピングすることによってディスプレイをオンにできるようにするモーションセンサや、例えばユーザがディスプレイをスワイプすることによってディスプレイをオンにできるスマートフォンでよく知られているようなディスプレイに一体化されたタッチセンサを備えていてもよい。
【0051】
本発明の例示的な実施形態の説明では、全体形状がペン型の薬物送達デバイスが示されたが、薬物送達デバイスは、他の形状要素を有していてもよく、例えばNovo Nordisk製のInnovo(登録商標)デバイスのような箱状に形成されたものでもよく、また、モータ付きの放出機構を備えていてもよい。
【0052】
上記の例示的な実施形態の説明では、異なる構成部品のために上述の機能性を与える異なる構造及び手段について、本発明の概念が当業者の読者に明らかになる程度に説明してきた。異なる構成部品の構造及び仕様の詳細は、本明細書の記載内容に沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象の事項と考えられる。