特許第6281918号(P6281918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281918
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】プレス機及びプレス加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/28 20060101AFI20180208BHJP
   B21D 28/24 20060101ALI20180208BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   B21D22/28 E
   B21D28/24 A
   B21D22/20 B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-17596(P2016-17596)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-182640(P2016-182640A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-63286(P2015-63286)
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(72)【発明者】
【氏名】北島 勲
(72)【発明者】
【氏名】加来 明徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿司
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214381(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/162350(WO,A1)
【文献】 特開平11−226661(JP,A)
【文献】 米国特許第04095544(US,A)
【文献】 特開2012−210643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
B21D 22/20
B21D 28/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、
前記ダイ孔の奥部に配置され、前記筒形ワークの先端部が突き当てられるワーク当接部と、前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールと、を有し、
前記アシストツールは、前記筒形ワークの軸方向で前記筒形ワークに当接する第1ツール構成部と、前記第1ツール構成部を前記筒形ワークの軸方向に往復動可能に支持する第2ツール構成部と、前記第1ツール構成部と前記第2ツール構成部との間に設けられて、前記第1ツール構成部が前記筒形ワークから受ける押圧反力によって弾性変形する弾性部材とを備えてなり、
前記アシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んで前記筒形ワークの先端部を前記ワーク当接部に突き当ててから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させて前記筒形ワークの先端部に前記パンチを押し付けて前記プレス加工を行うプレス機。
【請求項2】
前記パンチ挿通孔は、前記第1ツール構成部と前記第2ツール構成部とを貫通し、
前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔における前記ダイ側に設けられて、前記筒形ワークの基端部が嵌合されるワーク嵌合部と、
前記第1ツール構成部に筒状に形成されて、内側が前記パンチ挿通孔をなしかつ、前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔に前記ダイと反対側から嵌合された状態で直動して、先端面で前記筒形ワークを押圧する押圧筒部と、を備える請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔の端部又は中間部に、前記第1ツール構成部を直動可能に収容するツール収容部が設けられ、そのツール収容部の内面と前記第1ツール構成部との間に圧縮状態にして収容された圧縮コイルばねが前記弾性部材として備えられている請求項2に記載のプレス機。
【請求項4】
ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、
前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールを備え、そのアシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させるプレス機であって、
前記アシストツールには、前記パンチ挿通孔の端部を段付き状に拡径してなり、前記筒形ワークの基端部が嵌合されるワーク嵌合部が設けられて、前記ワーク嵌合部の段差面で前記筒形ワークを押圧して前記ダイ孔に押し込むプレス機。
【請求項5】
前記パンチが、前記パンチ挿通孔に案内されて前記筒形ワーク内に突入する請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のプレス機。
【請求項6】
ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、
前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールを備え、そのアシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させるプレス機であって、
前記筒形ワークを挟持して前記ダイ孔上に保持するクランパーが設けられると共に、前記クランパーに、前記筒形ワークの基端面に係止する基端係止部が備えられ、
前記筒形ワークのプレス加工後、前記アシストツールを、前記パンチ及び前記筒形ワークに対して相対的に後退させて前記アシストツールと前記筒形ワークとの間に隙間を形成してから、前記クランパーで前記筒形ワークを挟持しかつ前記基端係止部を前記筒形ワークの基端面に係止させて、前記パンチを前記筒形ワークから抜き取るプレス機。
【請求項7】
前記アシストツールにより、前記筒形ワークを、その全長の30%以上前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記筒形ワーク内に突入させる請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のプレス機。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載のプレス機を使用して、前記筒形ワークの先端部を前記パンチで内側からプレス加工し、前記筒形ワークからプレス加工品を製造するプレス加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側からプレス加工するプレス機及びプレス加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレス機では、パンチで筒形ワークをダイ孔に押し込んでプレス加工を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−260740号公報(図2図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のプレス機では、パンチが破損することがあった。その破損の原因として、筒形ワークがダイ孔に挿入される際に傾いて挿入抵抗が大きくなることや、パンチが筒形ワーク内に挿入されずに筒形ワークの基端部端面に当接することが挙げられる。特に、長細い筒形ワークでは、パンチの先端部が細くかつ長くなるので破損が頻繁に起こり得た。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、パンチが破損し難いプレス機及びプレス加工品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、前記ダイ孔の奥部に配置され、前記筒形ワークの先端部が突き当てられるワーク当接部と、前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールと、を有し、前記アシストツールは、前記筒形ワークの軸方向で前記筒形ワークに当接する第1ツール構成部と、前記第1ツール構成部を前記筒形ワークの軸方向に往復動可能に支持する第2ツール構成部と、前記第1ツール構成部と前記第2ツール構成部との間に設けられて、前記第1ツール構成部が前記筒形ワークから受ける押圧反力によって弾性変形する弾性部材とを備えてなり、前記アシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んで前記筒形ワークの先端部を前記ワーク当接部に突き当ててから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させて前記筒形ワークの先端部に前記パンチを押し付けて前記プレス加工を行うプレス機である。
【0009】
請求項の発明は、前記パンチ挿通孔は、前記第1ツール構成部と前記第2ツール構成部とを貫通し、前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔における前記ダイ側に設けられて、前記筒形ワークの基端部が嵌合されるワーク嵌合部と、前記第1ツール構成部に筒状に形成されて、内側が前記パンチ挿通孔をなしかつ、前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔に前記ダイと反対側から嵌合された状態で直動して、先端面で前記筒形ワークを押圧する押圧筒部と、を備える請求項に記載のプレス機である。
【0010】
請求項の発明は、前記第2ツール構成部の前記パンチ挿通孔の端部又は中間部に、前記第1ツール構成部を直動可能に収容するツール収容部が設けられ、そのツール収容部の内面と前記第1ツール構成部との間に圧縮状態にして収容された圧縮コイルばねが前記弾性部材として備えられている請求項に記載のプレス機である。
【0011】
請求項の発明は、
ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールを備え、そのアシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させるプレス機であって、前記アシストツールには、前記パンチ挿通孔の端部を段付き状に拡径してなり、前記筒形ワークの基端部が嵌合されるワーク嵌合部が設けられて、前記ワーク嵌合部の段差面で前記筒形ワークを押圧して前記ダイ孔に押し込むプレス機である。
【0012】
請求項の発明は、前記パンチが、前記パンチ挿通孔に案内されて前記筒形ワーク内に突入する請求項乃至の何れか1の請求項に記載のプレス機である。
【0013】
請求項の発明は、ダイに備えたダイ孔に筒形ワークが先端部側から押し込まれた状態で、その筒形ワークの先端部をパンチで内側から加圧してプレス加工するプレス機において、前記パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつ前記パンチに対して直動するアシストツールを備え、そのアシストツールにより前記筒形ワークを前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記パンチ挿通孔から前記筒形ワーク内に突入させるプレス機であって、前記筒形ワークを挟持して前記ダイ孔上に保持するクランパーが設けられると共に、前記クランパーに、前記筒形ワークの基端面に係止する基端係止部が備えられ、前記筒形ワークのプレス加工後、前記アシストツールを、前記パンチ及び前記筒形ワークに対して相対的に後退させて前記アシストツールと前記筒形ワークとの間に隙間を形成してから、前記クランパーで前記筒形ワークを挟持しかつ前記基端係止部を前記筒形ワークの基端面に係止させて、前記パンチを前記筒形ワークから抜き取るプレス機。
【0015】
請求項の発明は、前記アシストツールにより、前記筒形ワークを、その全長の30%以上前記ダイ孔に押し込んでから、前記パンチを前記筒形ワーク内に突入させる請求項1乃至の何れか1の請求項に記載のプレス機である。
【0016】
請求項の発明は、請求項1乃至の何れか1の請求項に記載のプレス機を使用して、前記筒形ワークの先端部を前記パンチで内側からプレス加工し、前記筒形ワークからプレス加工品を製造するプレス加工品の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のプレス機及び請求項のプレス加工品の製造方法では、パンチを挿通可能なパンチ挿通孔を有しかつパンチに対して直動するアシストツールで筒形ワークをダイ孔に押し込む。ここで、アシストツールは、パンチのように筒形ワーク内に挿入されないので、筒形ワークが細長い形状であってもパンチのようには細長くならず、破損しない強度にすることができる。そして、パンチは、ダイ孔に押し込まれた状態の筒形ワークに対して挿入されるので、従来に比べて負荷を受け難く、パンチの破損が防がれる。しかも、筒形ワークがダイ孔内で心だしされた状態でパンチが筒形ワーク内に挿入されるので、パンチが筒形ワークの基端部端面に突き当たる事態も防がれ、この点においても、パンチの破損が防がれる。即ち、本発明によれば、従来に比べて、パンチが破損し難くなる。
【0018】
また、アシストツールにより筒形ワークをダイ孔に押し込み、ワーク当接部に筒形ワークの先端部を突き当てた後に、筒形ワークの先端部にパンチを押し付けるので、筒形ワークの先端部におけるパンチの押し付け位置が安定し、加工品質が向上する。
【0019】
又、本発明によれば、筒形ワークの軸方向の長さ(即ち、軸長)のばらつきを、第2ツール構成部に対する第1ツール構成部の往復動で吸収して、筒形ワークに過度の力をかけずに筒形ワークの先端部をワーク当接部に当接させることができる。これにより、軸長が正規より長い側にばらついた筒形ワークが、アシストツールとワーク当接部との間で過度に加圧されて変形したり、軸長が正規より短い側にばらついた筒形ワークの先端部がワーク当接部に当接しなくなるような事態の発生を防ぐことができる。
【0020】
請求項及び請求項4の構成によれば、筒形ワークは、アシストツールのワーク嵌合部に基端部を位置決めされた状態でダイ孔に押し込まれる。これにより、筒形ワークが傾いだ状態でダイ孔に押し込まれる事態の発生を防ぐことができると共に、パンチに対しても筒形ワークが位置決めされ、パンチが筒形ワークの基端部端面に突き当たる事態の発生を確実に防ぐことができる。また、請求項の構成では、第2ツール構成部のパンチ挿通孔の中間部に備えたツール収容部に、第1ツール構成部を直動可能に収容されているので、第1と第2のツール部品の間に異物が挟まるような不具合を防ぐことができる。さらには、請求項のプレス機によれば、パンチがパンチ挿通孔に案内されて筒形ワーク内に突入するので、パンチが筒形ワークの基端部端面に突き当たる事態の発生をより確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項のプレス機では、筒形ワークのプレス加工後、アシストツールを、パンチ及び筒形ワークに対して相対的に後退させてアシストツールと筒形ワークとの間に隙間を形成する。即ち、筒形ワークの基端部からアシストツールを抜く。そして、クランパーで筒形ワークを挟持しかつ基端係止部を筒形ワークの基端面に係止させて、パンチを筒形ワークから抜き取る。このようにして、本発明によれば、筒形ワークからパンチ及びアシストツールをスムーズに離脱させることができる。
【0023】
請求項のプレス機では、パンチより高強度のアシストツールで筒形ワークをダイ孔に押し込むので、筒形ワークが傾いて挿入抵抗が大きくなっても、容易に筒形ワークをダイ孔に押し込むことが可能になり、従来ではあり得なかった筒形ワークの軸長の30%以上をダイ孔に押し込むことが可能となる。しかも、アシストツールにより、筒形ワークを、その軸長の30%以上ダイ孔に押し込んでから、パンチを筒形ワーク内に突入させるので、筒形ワークをより正確に心だししてから、パンチを突入させることができ、一層パンチが破損し難くなる。これらにより、安定したプレス加工が可能になり、加工品質が安定する。



【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るプレス機の正面図
図2】プレス機の側断面図
図3】プレス機の側断面図
図4】プレス機の側断面図
図5】プレス機の側断面図
図6】プレス機の正断面図
図7】アシストツールの平面図
図8】アシストツールとワークの正断面図
図9】アシストツールとワークの正断面図
図10】アシストツールとワークの正断面図
図11】プレス機の正断面図
図12】プレス機の正断面図
図13】プレス機の正断面図
図14】第2実施形態のアシストツールとワークの正断面図
図15】アシストツールとワークの正断面図
図16】第3実施形態のアシストツールとワークの正断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1図13に基づいて説明する。図1には、本発明に係るプレス機10の全体が示されている。このプレス機10は、左右1対のサイドフレーム11,11の間にラム12とボルスター13とを上下に対向配置して備え、ラム12がボルスター13に対して上方から接離するように直動する。ラム12の下面には、複数のパンチ20が横一列に並べて固定され、それらパンチ20に対応させて複数のダイ30(図2参照)がボルスター13に固定されている。そして、それぞれ上下で対向した複数組のパンチ20及びダイ30により複数の加工ステージが構成され、図1の左端の加工ステージから右側の加工ステージに、順次、筒形ワーク91(図3参照)が搬送されてプレス加工が施されて本発明に係る「プレス加工品」が製造される。
【0026】
具体的には、図1の左端の加工ステージでは、パンチ20により帯状板金90から円板が打ち抜かれてダイ30が有するダイ孔30A(図3参照)に押し込まれ、一端有底の円筒状の筒形ワーク91が成形される。そして、ラム12が上方に移動する度に、筒形ワーク91が、次述するトランスファ装置14によって、順次、右隣の加工ステージに搬送され、中間の複数の加工ステージを経る間に徐々に細長くなるように絞られていく。そして、右端(以下、「終端」という)の加工ステージで、図4に示すように筒形ワーク91の底部92が打ち抜かれる。本実施形態では、この終端の加工ステージのパンチ20の破損を防ぐために本発明が適用されている。
【0027】
トランスファ装置14は、加工ステージ群の並び方向に延びかつ加工ステージ群を間に挟んで対向した1対のトランスファスライド15,15(図3参照)を有し、それらトランスファスライド15,15の対向面に複数組のフィンガー16,16(図3には、1組のフィンガー16,16のみが示されている)を備えている。
【0028】
フィンガー16,16は、トランスファスライド15,15の対向方向に直動可能に支持されかつコイルばね17により加工ステージ側に付勢されている。また、トランスファスライド15,15における隣り合ったフィンガー16,16のピッチ(間隔)は、隣り合ったパンチ20,20のピッチ及びダイ30,30のピッチと同じになっている。そして、それらピッチと同じストロークでトランスファスライド15,15が長手方向(図3の紙面と直交する方向)に往復動する。
【0029】
以下の説明において、トランスファスライド15,15の対向方向を、適宜「前後方向」といい、トランスファスライド15の長手方向を適宜「横方向」という。
【0030】
フィンガー16,16の先端形状は、加工ステージ毎に変化していく筒形ワーク91の形状に応じて異なる。図3及び図4には、終端から2番目のフィンガー16,16の形状が示され、図5には、終端のフィンガー16,16の形状が示されている。終端以外のフィンガー16,16は、図3に示すように上方に向かって徐々に開いた上端ガイド面16A,16Aを備えると共に、横方向に向かって徐々に開いたサイドガイド面(図示せず)を備えている。一方、終端のフィンガー16,16においては、図5に示すように筒形ワーク91を挟持する挟持面の上端部が段付き状に突出していて、その段差面が本発明に係る基端係止部16Kになっている。また、終端のフィンガー16,16にも、他のフィンガー16,16と同様のサイドガイド面(図示せず)が備えられている。なお、終端の1対のフィンガー16,16によって本発明に係る「クランパー」が構成されている。
【0031】
トランスファ装置14は、以下のように動作する。トランスファスライド15,15は、ラム12が下死点の近傍に位置している間にストロークの始端側(図1の左側)に移動して待機する。そして、ラム12の上昇に伴ってダイ孔30Aから抜き出される筒形ワーク91がフィンガー16,16の間に割り込んで把持され、その状態でトランスファスライド15,15がストロークの終端側(図1の右側)に移動する。
【0032】
このとき、終端のフィンガー16,16は、トランスファスライド15の移動先で待ち受けている図示しない待受ガイドにサイドガイド面を摺接させて開き、把持された筒形ワーク91が放されて図示しないワーク収容ボックスに収容される。
【0033】
終端以外のフィンガー16,16に関しては、トランスファスライド15,15がストロークの終端側に移動することで、筒形ワーク91を隣の加工ステージのダイ孔30A上に保持する。この状態でラム12が降下し、筒形ワーク91がダイ孔30Aに押し込まれてプレス加工される。そのラム12の降下過程で、フィンガー16,16の上端ガイド面16A,16Aにパンチ20に備えた図示しない後述するシンブル又は、図4に示した後述する本発明に係るアシストツール23が摺接し、フィンガー16,16が開いて筒形ワーク91を放す。そして、プレス加工中にトランスファスライド15,15が始端側(図1の左側)に移動して最初の状態に戻る。このようにして、図1の左端の加工ステージから右側の加工ステージに、順次、筒形ワーク91が搬送されてプレス加工が施される。
【0034】
上記したシンブルは、終端以外の加工ステージに備えられ、パンチ20の外側に直動可能に嵌合されかつ先端が先細り状の筒状をなし、フォークレバー29と図示しないカム機構により原点位置に配置されている。そして、パンチ20の先端が筒形ワーク91に突入してからシンブルがフィンガー16,16の上端ガイド面16A,16Aに摺接してフィンガー16,16の間を押し拡げる。また、例えば、パンチ20により筒形ワーク91がダイ孔30Aに押し込まれるときにシンブルは、その下面と筒形ワーク91の上面との隙間を保ちながら下降する。そして、パンチ20が筒形ワーク91をプレス加工した後、シンブルは、パンチ20と同時かそれより早く上昇し、ストリップ位置で一旦停止して、下方から上昇してきたパンチ20から、筒形ワーク91をストリップする。筒形ワーク91は、このストリップ開始時に、フィンガー16により把持される。そして、パンチ20が筒形ワーク91から完全に抜け切りストリップが完了するとシンブルは上昇し原点位置で停止する。
【0035】
アシストツール23は、終端の加工ステージに備えられている。図2図13には、終端の加工ステージにおけるプレス機10の断面が示されている。以下、終端の加工ステージのパンチ20、ダイ30及びアシストツール23の詳説構造について説明する。
【0036】
図3に示すように、パンチ20は、上端部に段付き状に拡径した基端大径部20Aを備え、下方に向かって段階的に縮径された形状をなしている。そして、パンチ20の中間位置から下端までの間が、ダイ孔30Aに突入するパンチ本体20Bになっている。また、パンチ20の外側のうちパンチ本体20Bの上端部から基端大径部20Aの下面までの範囲には、摺動メタルで構成された摺接スリーブ21が嵌合されている。そして、摺接スリーブ21の上側の略半分となる部分がパンチ20と共にラム12のパンチ支持孔12Aに嵌合された状態で固定され、摺接スリーブ21の下側の略半分となる部分がラム12の下方に突出し、さらにその摺接スリーブ21の下端からパンチ本体20Bが下方に延びている。
【0037】
図5に示すように、ダイ30は、上側ダイ31と下側ダイ32とを上下に重ねてなり、上側ダイ31の中心部を貫通する中心孔と下側ダイ32の中心部を貫通する中心孔とが連通してダイ孔30Aが形成されている。また、下側ダイ32の中心孔の方が上側ダイ31の中心孔より小さくなっていて、上側ダイ31と下側ダイ32との間の段差部がワーク当接部30Dになっている。そして、図11(B)に示すように、筒形ワーク91の軸長の30〜40%がダイ孔30Aに押し込まれたところで、筒形ワーク91の下端部(本発明における筒形ワーク91の「先端部」に相当する)がワーク当接部30Dに当接し、その状態で図12(A)に示すようにパンチ20が筒形ワーク91の底部92を打ち抜く。これにより、筒形ワーク91が本発明に係る「プレス加工品」となる。なお、打ち抜かれた底部92は、ダイ孔30Aの下方から連通した排出孔13Aを通ってプレス機10の下方に備えた図示しない回収ボックスに収容される。
【0038】
アシストツール23は、図3図6及び図7に示すように、例えば、上端部に角柱状の基端ベース部23Cを有し、その基端ベース部23Cより下側部分は、図3に示すように、前後方向で基端ベース部23Cより段付き状に薄くなったツール本体部23Dになっている。また、ツール本体部23Dの下端部には、前後の両角部を面取りして下端ガイド面23Gが形成されている。
【0039】
図6に示すように、ツール本体部23Dには、その中間部より下側部分を両側方に張り出させてなるサイド突部26,26が備えられている。また、図7に示すように、各サイド突部26は、側方に向かうに従って先細りになるように面取りされてサイドガイド面26G,26Gを備えている。そして、フィンガー16,16の前記した図示しないサイドガイド面が、アシストツール23のサイドガイド面26G,26Gに摺接してフィンガー16,16の間が開かれる。
【0040】
図6に示すように、アシストツール23の中心部には、パンチ挿通孔24が上下方向に貫通している。パンチ挿通孔24のうち上端から下端寄り位置まで大径孔部23Aをなし、下端寄り位置より下方が大径孔部23Aの略半分程度の内径を有する小径孔部になっている。そして、前述した摺接スリーブ21が、図6に示すように大径孔部23Aに直動可能に嵌合されている。なお、大径孔部23Aの軸方向の中間部より下側は、図8に示すように僅かに段付き状に拡径されている。
【0041】
パンチ挿通孔24の小径孔部における中間位置より下側は、段付き状に拡径され、その段差面より上側部分は、パンチ本体20Bが丁度嵌合可能な内径を有するパンチガイド部24Gになっている。また、段差面より下側部分は、筒形ワーク91が丁度嵌合可能な内径を有する本発明に係るワーク嵌合部25になっている。そして、図9に示すように、ワーク嵌合部25に筒形ワーク91の上端部(本発明に係る筒形ワーク91の「基端部」に相当する)が嵌合され、ワーク嵌合部25の上端の段差面であるワーク突当部25Dに、筒形ワーク91の上面(即ち、基端部端面)が当接する。その状態で、図10に示すように、パンチ本体20Bがパンチガイド部24Gに案内されて筒形ワーク91内に挿入される。
【0042】
なお、図8に示すように、パンチガイド部24Gには、その上端開口縁を面取りしてパンチ導入面24Aが形成されている。また、ワーク嵌合部25には、下端部を徐々に拡径してワーク導入面25Aが形成されている。
【0043】
アシストツール23をパンチ20と別個に直動させるために、図2図4に示すようにフォークレバー29がアシストツール23に連結されている。詳細には、その連結のために基端ベース部23Cのうち横方向を向いた両側面には、前端から後端まで通しの溝23B,23Bが形成されている。また、フォークレバー29の先端は二股に分割されていると共に、そのフォークレバー29の2つの先端部には互いに対向する円形孔が貫通形成され、その円形孔に有底円筒状のブッシュ29A,29A(図6参照)が圧入されている。ブッシュ29A,29Aには、ピン23P,23Pが回動自在に嵌合されていて、フォークレバー29の2つの先端部から内側に突出している。ピン23P,23Pのうち、これら突出している内側先端部には、外周面の周方向の2箇所に互いに平行な平坦面が形成されている(所謂、2方取り)。この平坦面同士の間隔は、溝23Bの幅と略同じになっていて、ピン23P,23Pの内側先端部は、前後方向へ摺動自在に溝23B,23Bに嵌合される。以上のようにして、フォークレバー29は、その2つの先端部の間に基端ベース部23Cを受容するようにして、アシストツール23に連結される。これにより、フォークレバー29の回動に応じてアシストツール23がパンチ20に対して相対的に直動する。そして、図6に示すように、アシストツール23は、パンチ挿通孔24のパンチガイド部24Gがパンチ本体20Bの先端より下方に位置したパンチ保護位置と、図12(B)に示すように、パンチ挿通孔24のパンチガイド部24Gがパンチ本体20Bの基端部に嵌合してアシストツール23の先端からパンチ本体20Bが突出したパンチフル突出位置との間を移動する。なお、フォークレバー29は、例えば、ラム12を上下動させる駆動源とは別個の駆動源である図示しないサーボモータから動力を受けて回動する。
【0044】
次に、終端の加工ステージにおける1サイクルの動作について説明する。図3には、トランスファスライド15がストロークの終端側に移動し、終端より1つ前のフィンガー16,16が把持する筒形ワーク91が、終端の加工ステージのダイ孔30A上に配置されたときに、プレス機10を横方向から見た状態が示され、図6には同じ状態をプレス機10の前方から見た状態が示されている。このとき、図3に示すように、筒形ワーク91の上端部はフィンガー16,16より上側に位置し、アシストツール23はパンチ保護位置に配置され、アシストツール23の先端が筒形ワーク91に上方から対向する。そして、アシストツール23をパンチ保護位置に維持したままアシストツール23及びパンチ20が降下する。すると、図9及び図11(A)に示すように、筒形ワーク91の上端部がアシストツール23のワーク嵌合部25に嵌合され、筒形ワーク91の基端面がワーク嵌合部25の上端のワーク突当部25Dに当接する。そこから、アシストツール23をパンチ保護位置に維持したままさらにアシストツール23及びパンチ20がさらに降下し、図11(B)に示すようにアシストツール23により筒形ワーク91がダイ孔30Aに押し込まれ、ワーク当接部30Dに筒形ワーク91の下端部が押し付けられる。この間に、図4に示すように、アシストツール23の先端部がフィンガー16,16の間に割り込み、フィンガー16,16による筒形ワーク91の把持が解除される。
【0045】
筒形ワーク91の下端部がダイ孔30Aのワーク当接部30Dに当接すると、アシストツール23は停止し、パンチ20のみが降下を続けて、図10に示すようにパンチ本体20Bがパンチ挿通孔24のパンチガイド部24Gに案内されて筒形ワーク91内に突入していく。そして、図12(A)に示すように、パンチフル突出位置の手前位置でパンチ20の先端が筒形ワーク91の底部92を加圧して打ち抜く。また、この間に、トランスファ装置14のトランスファスライド15がストロークの始端側に移動して、トランスファ装置14のうち終端のフィンガー16,16(図5参照)がアシストツール23の下端部を間に挟んで開いた状態となって待機する。
【0046】
そして、図12(B)に示すように、パンチ20が停止したまま、アシストツール23のみが上昇してパンチフル突出位置へと移動してから、そのパンチフル突出位置を維持したままアシストツール23及びパンチ20が上昇する。すると、筒形ワーク91がパンチ20との摩擦係合によりパンチ20と共に上昇し、ダイ孔30Aから抜けたところでアシストツール23の下端部がフィンガー16,16の間から抜ける。これにより、フィンガー16,16の間に筒形ワーク91が把持され(図5参照)、図13(A)に示すように筒形ワーク91の基端面がフィンガー16の基端係止部16Kに係止する。この状態で、アシストツール23が上昇すると共にそれより速い速度でパンチ20が上昇して、図13(B)に示すように、パンチ本体20Bが筒形ワーク91から離脱する。そして、アシストツール23が停止し、パンチ20のみが上昇して図5に示すようにアシストツール23がパンチ保護位置に配置された状態になる。そして、トランスファスライド15がストロークの終端側に移動し、終端のフィンガー16,16が、トランスファスライド15の移動先で待ち受けている図示しない待受ガイドに摺接して開き、把持していた筒形ワーク91を図示しないワーク収容ボックスへと落下させると共に、終端より1つ前のフィンガー16,16が次の筒形ワーク91を、終端の加工ステージのダイ孔30A上に配置して最初の状態に戻る。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のプレス機10及びプレス加工品の製造方法では、パンチ20を挿通可能なパンチ挿通孔24を有しかつパンチ20に対して直動するアシストツール23で筒形ワーク91をダイ孔30Aに押し込む。ここで、アシストツール23は、パンチ20のように筒形ワーク91内に挿入されないので、筒形ワーク91が細長い形状であってもパンチ20のようには細長くならず、破損し難い強度にすることができる。そして、パンチ20は、ダイ孔30Aに押し込まれた状態の筒形ワーク91に対して挿入されるので、従来に比べて負荷を受け難く、パンチ20の破損が防がれる。しかも、筒形ワーク91がダイ孔30A内で心だしされた状態でパンチ20が筒形ワーク91内に挿入されるので、パンチ20が筒形ワーク91の上面に突き当たる事態も防がれ、この点においてもパンチ20の破損が防がれる。即ち、本実施形態のプレス機10及びプレス加工品の製造方法によれば、パンチ20が破損し難くなる。また、パンチ20より高強度のアシストツール23で筒形ワーク91をダイ孔30Aに押し込むので、筒形ワーク91が傾いて挿入抵抗が大きくなっても、容易に筒形ワーク91をダイ孔30Aに押し込むことが可能になり、従来ではあり得なかった筒形ワーク91の軸長の30%以上をダイ孔30Aに押し込むことが可能になる。しかも、アシストツール23によりパンチ20をガイドするので、パンチ20をより正確に筒形ワーク91内に突入させることができる。これらにより、安定したプレス加工が可能になり、加工品質が安定する。なお、筒形ワーク91が心だしされているので、パンチ20との摩擦係合によりパンチ20と共に筒形ワーク91を引き抜く際、より小さな抵抗で引き抜くことができる。
【0048】
さらには、筒形ワーク91は、上端部をアシストツール23のワーク嵌合部25に位置決めされた状態でダイ孔30Aに押し込まれるので、多大な負荷がアシストツール23にかかる事態が防がれる。また、パンチ挿通孔24のワーク嵌合部25及びパンチガイド部24Gにより、パンチ20に対しても筒形ワーク91が位置決めされるので、パンチ20が筒形ワーク91の上面に突き当たる事態の発生を確実に防ぐことができる。
【0049】
[第2実施形態]
本実施形態は、図14及び図15に示されており、アシストツール23Vの構造のみが第1実施形態と異なる。図14に示すように、本実施形態のアシストツール23Vは、本発明の「第2ツール構成部」に相当するアシストツール本体41と、「第1ツール構成部」に相当するフローチング押圧部材45と、「弾性部材」に相当する圧縮コイルばね50とを備えてなる。
【0050】
アシストツール本体41は、前記第1実施形態のアシストツール23の一部を変更した形状をなしている。以下、その変更点に関してのみ説明する。アシストツール本体41は、サイド突部26,26における上端寄り位置に備えた分割面41Aで上下の2部品に分割され、それら2部品が図示しない螺子等で合体状態に固定されている。アシストツール本体41のパンチ挿通孔24Vは、大径孔部23Aより僅かに大きい内径の第1孔部43と、筒形ワーク91が丁度嵌合可能な第2孔部44とを上下に連ねて備える。また、第1孔部43のうち上下方向の中間位置より上側部分には、180度離れた2箇所を側方に拡張して1対の突片受容部42,42が形成されている。なお、本実施形態では、本発明に係る「ツール収容部」は、1対の突片受容部42,42と第1孔部43と第2孔部44の一部とから構成されている。
【0051】
フローチング押圧部材45は、アシストツール本体41の第1孔部43より軸長が短い筒体45Aの内面下端部からインナーフランジ45Bが内側に張り出しかつ、筒体45Aの外面中間部から180度離れた2方向に1対の突片45F,45Fが張り出した構造をなしている。また、フローチング押圧部材45の内側全体は、パンチ挿通孔47をなしている。そして、1対の突片45F,45Fがアシストツール本体41の突片受容部42,42に受容された状態で、筒体45Aが第1孔部43に嵌合されて上下に直動可能に支持されている。
【0052】
フローチング押圧部材45の下面のうちパンチ挿通孔47の開口縁からは、本発明に係る押圧筒部46が突出して、第2孔部44に嵌合されている。この押圧筒部46は、フローチング押圧部材45が可動ストロークS(図14参照)の上端に移動しても第2孔部44から抜けない大きさになっている。また、フローチング押圧部材45の可動ストロークSは、筒形ワーク91の軸長のばらつき幅(ばらつきにより筒形ワーク91がとり得る最大軸長と最小軸長との差分)より大きくなっている。そして、第2孔部44のうち押圧筒部46より下側部分が、本発明に係るワーク嵌合部25になって、ここに筒形ワーク91の上端部が嵌合される。また、パンチ挿通孔47のうちインナーフランジ45B及び押圧筒部46の内側部分は、前記第1実施形態のパンチガイド部24Gと同様のパンチガイド部47Aになっていて、このパンチガイド部47Aをパンチ20が貫通して筒形ワーク91内へと案内される。
【0053】
なお、第1実施形態と同様に、パンチガイド部47Aの上端縁にはパンチ導入面47Cが形成され、ワーク嵌合部25の下端縁にはワーク導入面25Aが形成されている。また、筒体45Aのインナーフランジ45B及より上側部分の内径は、アシストツール本体41の大径孔部23Aの内径と略同一になっている。
【0054】
圧縮コイルばね50は、各突片45Fとアシストツール本体41の下面との間にそれぞれ突っ張り状態になって収容されて、フローチング押圧部材45を下方に付勢している。ここで、筒形ワーク91をダイ孔30A(図6)に挿入するために必要な押圧力を第1押圧力とし、筒形ワーク91を座屈変形させ得る押圧力を第2押圧力とすると、圧縮コイルばね50は、第1押圧力で僅かに撓み、第2押圧力より小さい押圧力、即ち、筒形ワーク91を座屈変形させ得ない押圧力で最大限に(即ち、図15に示すように可動ストロークSの上端部に移動するまで)撓むようになっている。
【0055】
なお、上記した1対の突片45F,45Fの代わりに、筒体45Aから側方に張り出した環状のフランジを設け、筒体45Aの外側に挿通した圧縮コイルばねを、フランジとアシストツール本体41の下面との間に突っ張り状態になって収容した構成としてもよい。
【0056】
アシストツール23Vの構成に関する説明は以上である。筒形ワーク91の上端部がワーク嵌合部25に嵌合されアシストツール23Vが降下していくと、筒形ワーク91が押圧筒部46の先端面46Aに押圧されてダイ孔30Aに押し込まれていく。その際、フローチング押圧部材45は、可動ストロークSの下端位置より僅かに上方に位置した状態で筒形ワーク91を押圧していく。すると、やがて筒形ワーク91の下端部がワーク当接部30Dに当接して位置決めされる(図11(B)参照)。
【0057】
ここで、その筒形ワーク91の軸長が設計値通りであれば、フローチング押圧部材45は可動ストロークSの丁度中間位置に配置された状態になる。また、筒形ワーク91の軸長が設計値より長い側にばらついてた場合には、フローチング押圧部材45が可動ストロークSの中間位置より上方に位置し、筒形ワーク91の軸長が設計値より短い側にばらついてた場合には、フローチング押圧部材45が可動ストロークSの中間位置より下方に位置する。そして、その状態で第1実施形態と同様にパンチ20が筒形ワーク91に突入し、筒形ワーク91の底部92がパンチ20によって打ち抜かれる(図12(A)参照)。このようにして、本実施形態の構成によれば、筒形ワーク91の軸長のばらつきをフローチング押圧部材45の上下動にて吸収し、筒形ワーク91に過度の負荷をかけずに、筒形ワーク91の下端部をワーク当接部30Dに確実に当接させることができる。これにより、パンチ20の押し付け位置が安定し、加工品質が向上する。また、本実施形態のアシストツール23Vでは、アシストツール本体41のパンチ挿通孔24Vの中間部にフローチング押圧部材45が収容されているので、アシストツール本体41とフローチング押圧部材45との間に異物が挟まるような不具合を防ぐことができる。
【0058】
[第3実施形態]
本実施形態は、図16に示されており、アシストツール23Wの構造のみが第1実施形態と異なる。図16に示すように、本実施形態のアシストツール23Wは、第1実施形態のアシストツール23を下端寄り位置で上側ツール構成部52(本発明の「第2ツール構成部」に相当する)と下側ツール構成部53(本発明の「第1ツール構成部」に相当する)とに2分割し、上側ツール構成部52の下面から嵌合突部52Aを突出せる一方、その嵌合突部52Aが嵌合する嵌合凹部53Aを上側ツール構成部52の上面に形成した構造をなしている。そして、嵌合突部52Aの先端面と嵌合凹部53Aの底面との間に皿ばね54(本発明の「弾性部材」に相当する)が受容され、その皿ばね54が弾性変形する範囲で、下側ツール構成部53が上側ツール構成部52に対して直動可能となるように、複数の吊りボルト55で上側ツール構成部52と下側ツール構成部53とが連結されている。本実施形態の構成によっても、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
(1)前記実施形態の筒形ワーク91は、円筒状であったが、本発明に係る筒形ワークは、筒形状であれば円筒に限定されるものではなく、断面四角形や断面楕円形や断面長円形の筒状であってもよい。
【0061】
(2)また、前記実施形態の筒形ワーク91は、一端有底の筒状であって、パンチ20により底部92が打ち抜かれていたが、本発明に係る筒形ワークは、両端開放の筒形状であってもよい。即ち、本発明を、両端開放の筒形ワークの底部をパンチでしごいて薄肉にするものに適用してもよい。
【0062】
(3)前記実施形態のアシストツール23,23V,23Wは、筒形ワーク91の上端部が嵌合するワーク嵌合部25を備えていたが、ワーク嵌合孔を備えず、アシストツールの下端面におけるパンチ挿通孔の開口縁で筒形ワークを押圧してダイ孔に押し込む構成としてもよい。また、その場合、アシストツールがプレス加工された筒形ワークをパンチから抜き取るストリッパとして利用してもよい。
【0063】
(4)前記実施形態では、パンチ20は、筒形ワーク91の下端部がダイ孔30Aのワーク当接部30Dに当接した後に筒形ワーク91内に突入しているが、筒形ワーク91の下端部がワーク当接部30Dに当接する前に筒形ワーク91内に突入してもよい。
【0064】
(5)前記第2及び第3の実施形態では、アシストツール23V,23Wの一部を可動状態に支持し、それら可動部分を圧縮コイルばね50等で付勢して、筒形ワーク91の軸長のばらつきを吸収していたが、例えば、アシストツール23をサーボモータで駆動し、そのサーボモータのサーボ剛性により筒形ワーク91の軸長のばらつきを吸収してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 プレス機
16 フィンガー(クランパー)
16K 基端係止部
20 パンチ
23,23V,23W アシストツール
24,24V,47 パンチ挿通孔
25 ワーク嵌合部
30 ダイ
30A ダイ孔
30D ワーク当接部
41 アシストツール本体(第2ツール構成部)
42 突片受容部(ツール収容部)
43 第1孔部(ツール収容部)
44 第2孔部(ツール収容部)
45 フローチング押圧部材(第1ツール構成部)
46 押圧筒部
50 圧縮コイルばね(弾性部材)
52 上側ツール構成部(第2ツール構成部)
53 下側ツール構成部(第1ツール構成部)
54 皿ばね(弾性部材)
91 筒形ワーク
92 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16