【実施例1】
【0024】
本発明の実施の形態に係る実施例1の水中酸素溶解装置について、
図1乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例1に係る水中酸素溶解装置の構成図である。
図1に示すように、本実施例に係る水中酸素溶解装置1は、周壁2と、この周壁2で囲まれる底部3と、この底部3に設けられる平面視で円形状をなす落下孔4を備える箱型タンク5と、第1の流体50を箱型タンク5の内部5aに注入する第1の注入管6と、第2の流体51を箱型タンク5の内部5aに注入する第2の注入管7と、落下孔4に連通する直管型の下降管8を備える。なお、第1の流体50及び第2の流体51として、例えば、浄化設備や湖沼、ため池、ダム等に貯留された水が対象にされるが、これ以外の流体が対象とされても良い。
【0025】
このうち、周壁2は、平面視で円形状の落下孔4の中心点x2を中心としてその外形が円形状をなしており(
図2(a)参照)、第1の流体50の一部の流れ方向を変化させる流れ変化部2aを有する。
また、第1の注入管6は、その第1の開口部6aが流れ変化部2aの内側の上方に開口する円筒であり、第2の注入管7は、その第2の開口部7aが落下孔4の上方に開口する円筒である。なお、第1の注入管6の内径サイズと、第2の注入管7の内径サイズは等しい。しかし、次に説明する流量率調節手段9,10によって、第1の開口部6aを通過する第1の流体50の流量率と、第2の開口部7aを通過する第2の流体51の流量率は、適宜調節可能である。
この構成に関し、より詳細に説明すると、水中酸素溶解装置1は、第1の開口部6aを通過する第1の流体50の単位時間当たりの流量である第1の流量率FR
1が、第2の開口部7aを通過する第2の流体51の単位時間当たりの流量である第2の流量率FR
2以上となるように、第1の流量率FR
1及び第2の流量率FR
2を調節する流量率調節手段9,10を備える。具体的には、流量率調節手段9,10は、第1の注入管6及び第2の注入管7の途中にそれぞれ備えられる手動開閉バルブである。また、第1の流体50の流量及び第2の流体51の流量は、いずれも体積又は重量で表される。
したがって、水中酸素溶解装置1においては、流量率調節手段9によって流量率を調節された第1の流体50が、第1の開口部6aを通過して箱型タンク5の内部5aへ自然落下する。加えて、流量率調節手段10によって流量率を調節された第2の流体51が、第2の開口部7aを通過して箱型タンク5の内部5aへ自然落下する。
【0026】
次に、下降管8は、その上端12aが落下孔4に連通するとともにその側壁12bに複数の吸気孔11が穿設される内管12と、この内管12の周囲に設けられ内管12との間で閉鎖空間14を形成するとともにこの閉鎖空間14へ空気を流入する空気流入手段15が設けられる外管13と、からなる。なお、内管12及び外管13は、いずれも円筒直管である。
このうち、複数の吸気孔11は、内管12の長手方向に沿って、一定間隔を空けながら複数段設けられる。ただし、この段数については、特に具体的な制限はない。また、空気流入手段15としては、例えば、空気流入量調整バルブが用いられ、閉鎖空間14への空気の流入量を自在に調節可能である。したがって、第1の流体50及び第2の流体51が内管12を通過する際に、空気流入手段15及び複数の吸気孔11を介し、周囲の空気が第1の流体50及び第2の流体51へ吸引される。
さらに、下降管8は、後述するように、箱型タンク5の内部5aに注入された第1の流体50及び第2の流体51が落下孔4に流入する際に、この落下孔4を上方開口端52aとする空洞52(
図3参照)が形成されることで、周囲の空気が空洞52を介して第1の流体50及び第2の流体51へ吸引され、第1の流体50及び第2の流体51に気泡が形成される。
【0027】
次に、
図2を用いて、実施例1に係る水中酸素溶解装置を構成する箱型タンクの内部に、第1の流体及び第2の流体が注入された場合の作用について説明する。
図2(a)は箱型タンクの平面図であり、
図2(b)は(a)におけるA−A線断面図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。さらに、
図2(b)においては、空気流入手段の図示を省略する。
図2(a)に示すように、箱型タンク5の内部5aにおいて、第1の注入管6(
図1参照)の中心軸が底部3に投影された点x1と、点x1を通り第1の注入管6の中心軸と直交する平面と落下孔4の中心軸との交点(以下、中心点x2という。)を結ぶ直線をXとするとともに、この直線Xと落下孔4の中心軸の双方に直交し、かつ中心点x2を通る直線をYとする。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1の注入管6を介して箱型タンク5の内部5aに注入された第1の流体50は、底部3に衝突してその流れの方向を変え、水平方向Hに沿って点x1を中心として放射状に拡散しようとする。なお、第1の注入管6及び第2の注入管7は、それぞれの中心軸が鉛直方向Vに対して平行となるように設置されている。
しかし、第1の注入管6は、その第1の開口部6a(
図1参照)が周壁2の内側の上方に開口することから、放射状に拡散しようとする第1の流体50は、大まかには、周壁2の内側に衝突しない流れf
1と、周壁2の内側に衝突してその流れの方向を変化させ、一例として、周壁2の内側に沿って直線Yを横切って進む流れf
2が形成される。なお、第1の流体50の一部の流れ方向を元の方向と異なる方向に変化させることが可能な、周壁2の一部分が流れ変化部2aである。この流れ変化部2aは、本実施例の場合、平面視で滑らかに湾曲した形状であるが、第1の流体50の一部の流れ方向を変化させ得る限り、多角形状であっても良い。
【0028】
図2(a)に示すように、流れf
1と流れf
2の流れ方向は、直線Xに関し、それぞれ対称的となる。したがって、流れf
1,f
1は、直線Xに関し対称的なまま底部3に沿って落下孔4に流入しようとする。また、流れf
2,f
2は、直線Yを横切って周壁2の内側に沿って進んだ結果、直線X上で互いに衝突することで、二回目の流れ方向の変化を起こす。これにより、流れf
2,f
2の流れ方向は、落下孔4に向かうよう変化し、流れf
3,f
3となる。その後、この流れf
3,f
3は、落下孔4に流入しようとする。
【0029】
また、第2の注入管7は、その第2の開口部7aが落下孔4の上方に開口する(
図1参照)ことから、直線X上には、第2の流体51が鉛直方向Vに沿って流下している。よって、この第2の流体51によって、流れf
3,f
3の進行が遮られることになる。そのため、
図2(a)に示すように、流れf
3,f
3は、流れf
2,f
2が二回目にその流れ方向を変化させた位置側から、第2の流体51の周囲に沿って回り込むように進行する一対の分岐流f
4,f
4(白抜矢印)を形成する。
このように、一対の分岐流f
4,f
4は、第1の開口部6aから注入される第1の流体50に起因したものである。そのため、仮に、第1の流体50の流量率FR
1が第2の流体51の流量率FR
2より低い場合には、流れf
3,f
3が、第2の流体51の周囲に沿って回り込むように進行し難くなってしまうおそれがある。したがって、流量率調節手段9,10によって、第1の流量率FR
1が、第2の流量率FR
2以上となるよう調節されることにより、一対の分岐流f
4,f
4の流量を一定以上に確保することができる。
【0030】
この一対の分岐流f
4,f
4は、第2の注入管7の中心軸が底部3に投影された点x3と落下孔4の中心点x2を結ぶ直線X´に関し、対称的な流れとなる。なお、本実施例の場合、直線X´は直線Xと一致する直線である。
そして、一対の分岐流f
4,f
4は、第2の流体51から点x1の方向にやや離隔した位置において互いに合流しようとする。一方、第2の流体51の大部分は、直接落下孔4に流入する。
また、第1の注入管6から注入された第1の流体50の一部である流れf
1,f
1は、底部3に沿って落下孔4に流入しようとするが、第2の流体51と一対の分岐流f
4,f
4によって、その進行が遮られる。
このように第2の流体51等によって流れf
1,f
1の進行が遮られることと、一対の分岐流f
4,f
4が、第2の流体51から点x1の方向にやや離隔した位置で互いに合流しようとすることによって、第2の流体51の側方のうち、点x1寄りの側方には、いずれの流れも存在しない領域が出現する。
【0031】
ここで、
図3を用いて、実施例1に係る水中酸素溶解装置において形成される空洞について説明する。
図3は、実施例1に係る水中酸素溶解装置を構成する下降管の
図1におけるB−B線矢視断面の拡大図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。さらに、
図3においては、空気流入手段の図示を省略する。
図3に示すように、第2の流体51の側方において、いずれの流れも存在しない領域が空洞52である。空洞52は、落下孔4が設けられる高さ付近を上方開口端52aとし、下降管8の内管12を貫通するように細長形状をなして形成される。なお、内管12の内部において、空洞52以外の空間(斜線部)は、内管12を流下する第1の流体50及び第2の流体51で満たされている。
【0032】
再び、
図2(a)に戻ると、第1の注入管6が注入した第1の流体50は、一部の流れf
1,f
1が底部3に沿って落下孔4に流入し、残りの流れf
2,f
2が流れf
3,f
3への変化を経て一対の分岐流f
4,f
4に変化した後に、落下孔4に流入する。また、第2の注入管7が注入した第2の流体51は、大部分が直接落下孔4に流入する。したがって、
図2(b)に示すように、第1の流体50と第2の流体51は落下孔4に流入し、空洞52の周囲を流下して下降管8の内管12を通過する。
【0033】
しかし、第1の流体50と第2の流体51が内管12を通過するとき、第2の流体51の鉛直方向V成分の流速v
2が大きいことから、空洞52のうち、
図2(b)の負圧Pのグラフに示すように、第2の流体51が接する部分付近の圧力P
2が低くなるので、この部分付近に空気がより強く吸引される。なお、第1の注入管6が注入した第1の流体50の鉛直方向V成分の流速v
1は、流速v
2よりも小さいため、空洞52のうち、第2の注入管7が接する部分付近の圧力P
2は、圧力P
1よりも低いものとなる。
したがって、下降管8の内管12は、内部5aに注入された第1の流体50及び第2の流体51が落下孔4に流入する際に、この落下孔4を上方開口端52aとする空洞52(
図3参照)が形成されることで、周囲の空気が空洞52を介して第1の流体50及び第2の流体51へ吸引され、第1の流体50及び第2の流体51に気泡が形成されることとなる。
【0034】
そして、気泡が形成された第1の流体50及び第2の流体51は、内管12を通過して落下した後に完全に混合し合うことで形成される混合流体中で、気泡が拡散する。気泡は拡散するにつれ徐々に消滅し、気泡に含まれていた酸素が混合流体中に溶解する。なお、混合流体は、一定容積を有する貯留槽に投入される他、湖沼や水路等に直接投入されても良い。また、混合流体が貯留槽等に投入された後、気泡に対して超音波を照射し、この気泡を圧壊可能な構成にしても良い。
【0035】
次に、実施例1に係る水中酸素溶解装置と従来技術との効果を比較した実験結果について、
図4を用いて詳細に説明する。
図4は、実施例1に係る水中酸素溶解装置の溶解酸素濃度を従来技術と比較した結果である。
図4は、実施例1に係る水中酸素溶解装置及び従来技術にかかるばっき装置(以下、装置αという。)を水道水に対して使用した場合の、酸素の飽和度(%)を時間を追って計測した結果を示すグラフであって、横軸が使用開始からの経過時間T(分)、縦軸が飽和度(%)である。そして、グラフ中の丸印が実施例1に係る水中酸素溶解装置1、四角印が従来技術に係る装置αの結果をそれぞれ示している。なお、飽和度(%)は[{計測時の酸素濃度(mg/L)/飽和酸素濃度(mg/L)}×100]で算出され、使用された水道水の量は、水中酸素溶解装置1及び装置αともに20(L)である。また、計測時の酸素濃度(mg/L)として、溶存酸素計が実測した酸素濃度(mg/L)に水温補正を行った値を用いた。
【0036】
図4において、使用開始時点(経過時間T=0)での飽和度46(%)から、飽和度95(%)までに増加するまでの経過時間Tに注目すると、実施例1に係る水中酸素溶解装置1は、経過時間T
1は10(分)であった。これに対し、装置αでは、経過時間T
2は160(分)であった。すなわち、水中酸素溶解装置1では、装置αと比較して、上記の経過時間Tが、(T
1/T
2)=1/16に短縮された。
このように、水中酸素溶解装置1によれば、単位時間当たりに酸素を水道水中に溶存させる能力が極めて高いという点において、装置αと比較して顕著な優位性を発揮する結果となった。
【0037】
以上説明したように、本実施例の水中酸素溶解装置1によれば、落下孔4が設けられる箱型タンク5と、第1の注入管6と、第2の注入管7と、下降管8によって、落下孔4を上方開口端52aとし、下降管8の内管12を貫通する空洞52を形成することができる。この空洞52のうち、第2の流体51が接する部分付近に強い負圧領域が形成されることから、少なくとも第2の流体51中での気泡の形成効率が良好である。加えて、内管12では、空気流入手段15及び複数の吸気孔11を介し、周囲の空気が第1の流体50及び第2の流体51へ吸引されるので、内管12を通過して落下した第1の流体50及び第2の流体51が混合された混合流体中に、大量の気泡を発生させることができる。
【0038】
また、本実施例の水中酸素溶解装置1は、特許文献1に係る従来技術のように、流体が渦の状態を維持しつつ下降管の内管の横断面全体を満たしながら下降管を下降するという作用を有するものではない。よって、本実施例の水中酸素溶解装置1において、下降管8の内管12を流下する第1の流体50及び第2の流体51の流量を増加させるために内管12の内径を大きくした場合であっても、内管12を流下する第1の流体50及び第2の流体51中に、複数の空洞がランダムに発生して負圧領域が形成されず、その結果空気が吸引されないといった不利益が発生しない。
【0039】
すなわち、水中酸素溶解装置1によれば、内管12を流下する第1の流体50及び第2の流体51の流量をそれぞれ増加させた場合であっても、空洞52を確実に形成することができる。そのため、空洞52を介して第1の流体50及び第2の流体51中に、空気を大量に吸引し多くの気泡を発生させることが可能である。これらの気泡は第1の流体50と第2の流体51の混合流体中で拡散するにつれ徐々に消滅し、気泡に含まれていた酸素が混合流体中に溶解することから、大量の第1の流体50及び第2の流体51の中へ酸素を極めて短時間に溶解させることが可能である。
【0040】
しかも、水中酸素溶解装置1によれば、超音波発振器やコンプレッサーといった電力を消費する機器を使用する必要がないため、消費エネルギーを抑制可能でありながら、上記の酸素溶解効果を実現させることが可能である。
また、流量率調節手段9,10により、一対の分岐流f
4,f
4の流量を一定以上に確保することができるので、空洞52を確実に形成することができる。したがって、第1の流体50及び第2の流体51中における気泡の形成効率を高い状態に維持することができる。また、第1の注入管6及び第2の注入管7がそれぞれ注水する流量が時間的に変動した場合であっても、酸素の溶解量を一定以上に保つことができる。
このように、水中酸素溶解装置1によれば、簡易な構成でありながら、
図4に示したように、従来技術と比較して、水中に対する酸素の溶解効率を顕著に向上させることが可能である。
【0041】
次に、実施例1の第1の変形例に係る水中酸素溶解装置について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施例1の第1の変形例に係る水中酸素溶解装置を構成する箱型タンクの平面図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、実施例1の第1の変形例に係る水中酸素溶解装置1aにおいて、箱型タンク16の周壁17は、その外形が平面視で楕円形状をなし、楕円の長軸両端に相当する位置にそれぞれ流れ変化部17a,17a´を有する。底部18は、その中心部18aの周辺に、この中心部18aを挟んで対称的な位置に落下孔19,19´が設けられる。また、下降管8は、複数の落下孔19,19´とそれぞれ連通して合計2本設けられる。すなわち、落下孔19,19´毎に1本の下降管8が設けられる。
【0042】
また、第1の注入管6及び第2の注入管7(
図1参照)は、それぞれ複数の落下孔19,19´と同数の2本設置される。すなわち、落下孔19,19´毎に1本の第1の注入管6と、1本の第2の注入管7が設けられる。
第1の注入管6,6は、底部18を平面視した場合に、落下孔19,19´の各中心軸を挟んで、第2の注入管7,7の反対側にそれぞれ開口する。したがって、落下孔19の中心軸を挟んで、第1の流体50及び第2の流体51が箱型タンク16の内部16aに注入され、かつ落下孔19´の中心軸を挟んで、第1の流体50及び第2の流体51が箱型タンク16の内部16aに注入される。水中酸素溶解装置1aにおけるこの他の構成は、実施例1の水中酸素溶解装置1の構成と同様である。
【0043】
次に、水中酸素溶解装置1aの作用について、説明する。
図5に示すように、箱型タンク16の内部16aにおいて、第1の注入管6,6の中心軸が底部18にそれぞれ投影された点x3,x3´と、点x3,x3´を通り第1の注入管6,6の中心軸と直交する平面と落下孔19,19´の中心軸との交点(以下、中心点x4,x4´という。)を結ぶ直線をX
aとするとともに、この直線X
aと落下孔19,19´の中心軸の双方に直交し、かつ底部18の中心部18aを通る直線をY
aとする。
内部16aのうち、直線Y
aを境界とした右側領域では、実施例1の水中酸素溶解装置1と同様に、周壁17の内側に衝突しない流れm
1と、流れ変化部17aの内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れm
2が形成される。
【0044】
また、内部16aのうち、直線Y
aを境界とした左側領域でも同様に、周壁17の内側に衝突しない流れn
1と、流れ変化部17a´の内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れn
2が形成される。なお、流れm
1と流れn
1の流れ方向は、直線Y
aに関して互いに対称的である。また、流れm
2と流れn
2の流れ方向も直線Y
aに関して互いに対称的である。
【0045】
次に、流れm
1と流れn
1は、それぞれ落下孔19,19´に直接流入しようとするが、流れm
2と流れn
2は、直線Y
a上で互いに衝突して直線X
aに向かうよう変化し、それぞれ流れm
3と流れn
3となる。
さらに、流れm
3と流れn
3は、直線X
aに関して対称的に形成されるので、流れm
3,m
3は、直線X
a上で互いに衝突して落下孔19に向かうよう変化し、流れm
4,m
4となる。同様に、流れn
3,n
3は、直線X
a上で互いに衝突して落下孔19´に向かうよう変化し、流れn
4,n
4となる。
【0046】
また、第2の注入管7,7の第2の開口部7a,7aが落下孔19,19´の上方にそれぞれ開口するため、直線Y
a上に流下する第2の流体51,51によって、流れm
4,m
4と流れn
4,n
4の進行がそれぞれ遮られることになる。そのため、流れm
4,m
4は、直線Y
aから、第2の流体51の周囲に沿って回り込むように進行する一対の分岐流m
5,m
5(白抜矢印)を形成する。流れn
4,n
4についても同様に、一対の分岐流n
5,n
5(白抜矢印)を形成する。
【0047】
そして、直線Y
aを境界とした右側領域では、一対の分岐流m
5,m
5は、直線X
aに関し、対称的な流れとなっており、第2の流体51から点x3の方向にやや離隔した位置において、互いに合流しようとする。直線Y
aを境界とした左側領域に形成された一対の分岐流n
5,n
5についても、これと同様に、第2の流体51から点x3´の方向にやや離隔した位置において、互いに合流しようとする。一方、第2の流体51,51の大部分は、直接落下孔19,19´にそれぞれ流入する。
したがって、直線Y
aを挟んだ両側の領域において、水中酸素溶解装置1の場合と同様に、第2の流体51,51の点x3,x3´寄りの側方に、いずれの流れも存在しない領域である空洞53,53´がそれぞれ出現する。すなわち、落下孔19,19´と同数の空洞53,53´が形成されるので、空洞53を介して周囲の空気が第1の流体50及び第2の流体51に吸引されるとともに、空洞53´を介して周囲の空気が第1の流体50及び第2の流体51に吸引される。
【0048】
このような構成の水中酸素溶解装置1aによれば、複数の空洞53,53´を形成可能であり、これらの空洞53,53´を介して大量の空気を第1の流体50,50及び第2の流体51,51中に吸引することができる。したがって、単位時間当たりに形成される気泡の数を大幅に増加させることができる。
水中酸素溶解装置1aにおけるこの他の作用及び効果は、実施例1の水中酸素溶解装置1の作用及び効果と同様である。
【0049】
さらに、実施例1の第2の変形例に係る水中酸素溶解装置について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施例1の第2の変形例に係る水中酸素溶解装置を構成する箱型タンクの平面図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6に示すように、実施例1の第2の変形例に係る水中酸素溶解装置1bにおいて、箱型タンク20の周壁21は、その外形が平面視で4個の円が十字形をなすように一部重複してそれぞれ組み合わされた形状であり、十字形の4箇所の端部に相当する位置にそれぞれ流れ変化部21a
1〜21a
4を有する。底部22は、その中心部22aを中心として1個の円形状をなす落下孔23が設けられる。また、下降管8は、1個の落下孔23と連通して1個設けられる。
【0050】
次に、第1の注入管6(
図1参照)は、底部22を平面視した場合に、落下孔23の中心軸23a、すなわち中心部22aを中心として互いにそれぞれ角度θをなすように落下孔23の周方向に沿って合計4本配置される。なお、合計4本の第1の注入管6の中心軸が底部22にそれぞれ投影された4箇所の点をそれぞれx5〜x8とする。
また、第2の注入管7(
図1参照)についても、第1の注入管6と同様に、合計4本配置される。ただし、合計4本の第2の注入管7は、底部22を平面視した場合に、それぞれ中心軸23aを中心として合計4本の第1の注入管6と異なる位相に配置され、その位相の差φの絶対値は、第1の角度θの大きさの1/2である。なお、合計4本の第2の注入管7の中心軸が底部22にそれぞれ投影された4箇所の点を、それぞれx9〜x12とする。水中酸素溶解装置1bにおける。水中酸素溶解装置1bにおけるこの他の構成は、実施例1の水中酸素溶解装置1の構成と同様である。
【0051】
次に、水中酸素溶解装置1bの作用について、説明する。
図6に示すように、箱型タンク20の内部20aにおいて、点x5,x7を通り落下孔23の中心軸23aと直交する平面と点x5,x7との交点を結ぶ直線をX
bとするとともに、この直線X
bと中心軸23aの双方に直交し、かつ中心軸23aを通る直線をY
bとする。また、直線X
b,Y
bを、中心軸23aを中心として時計周りに45度回動させた直線を、それぞれ直線X
c,Y
cとする。
内部20aのうち、直線Y
bを境界とした右側領域では、実施例1の水中酸素溶解装置1と同様に、周壁21の内側に衝突しない流れq
1と、流れ変化部21a
1の内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れq
2が形成される。
また、内部16aのうち、直線Y
bを境界とした左側領域でも同様に、周壁21の内側に衝突しない流れr
1と、流れ変化部21a
3の内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れr
2が形成される。なお、流れq
1と流れr
1の流れ方向は、直線Y
bに関して互いに対称的である。また、流れq
2と流れr
2の流れ方向も直線Y
bに関して互いに対称的である。
【0052】
さらに、内部20aのうち、直線X
bを境界とした上側領域では、実施例1の水中酸素溶解装置1と同様に、周壁21の内側に衝突しない流れs
1と、流れ変化部21a
4の内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れs
2が形成される。
また、内部16aのうち、直線X
aを境界とした下側領域でも同様に、周壁21の内側に衝突しない流れt
1と、流れ変化部21a
2の内側に衝突してその流れの方向を変化させて進む流れt
2が形成される。なお、流れs
1と流れt
1の流れ方向は、直線X
bに関して互いに対称的である。また、流れs
2と流れt
2の流れ方向も直線X
bに関して互いに対称的である。
ここで、直線X
bと直線Y
bによって区分される4つの領域のうち、右上に位置する領域をS
1とし、右下に位置する領域をS
2とする。また、上記4つの領域のうち、左下に位置する領域をS
3とし、左上に位置する領域をS
4とする。
【0053】
次に、領域S
1〜S
4において、流れq
1,流れr
1,流れs
1及び流れt
1は、それぞれ落下孔23に直接流入しようとする。しかし、領域S
1において、流れq
2と流れs
2は、直線Y
c上で互いに衝突して落下孔23へ向かうよう変化する。
また、領域S
2において、流れq
2と流れt
2は、直線X
c上で互いに衝突して落下孔23へ向かうよう変化する。
さらに、領域S
3において、流れt
2と流れr
2は、直線Y
c上で互いに衝突して落下孔23へ向かうよう変化する。
そして、領域S
4において、流れr
2と流れs
2は、直線X
c上で互いに衝突して落下孔23へ向かうよう変化する。
【0054】
また、第2の注入管7は、落下孔23の周方向に沿って合計4本配置されるため、直線X
c,Y
c上の4箇所に流下する第2の流体51によって、実施例1の水中酸素溶解装置1の場合と同様に、領域S
1において、それぞれ第2の流体51の周囲に沿って回り込むように落下孔23に向かって進行する一対の分岐流w
1,w
1(白抜矢印)が形成される。領域S
2〜S
4についても同様に、それぞれ一対の分岐流w
2,w
2〜w
4,w
4(いずれも白抜矢印)が形成される。
したがって、領域S
1〜S
4のそれぞれにおいて、水中酸素溶解装置1の場合と同様に、第2の流体51の点x6寄りの側方に、いずれの流れも存在しない領域である空洞54がそれぞれ出現する。すなわち、1個の落下孔23について4個の空洞54が形成されるので、それぞれの空洞54を介して周囲の空気が第1の流体50及び第2の流体51中に吸引される。
【0055】
このような構成の水中酸素溶解装置1bによれば、1個の落下孔23の周辺に所望する数の第1の注入管6及び第2の注入管7を設置することができる。これにより、1本の下降管8に形成される空洞54の数を増加させることができるため、単位時間当たりに形成される気泡の数を増加させることが可能である。また、落下孔の数が1個で済むため、箱型タンク20を容易に製造可能である。
水中酸素溶解装置1bにおけるこの他の作用及び効果は、実施例1の水中酸素溶解装置1の作用及び効果と同様である。