(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記給電用ターミナルは、前記外部電源の陽極と電気的に接続される第1給電用ターミナル、及び、前記外部電源の陰極と電気的に接続される第2給電用ターミナルであり、
前記第1給電用ターミナルが有する前記分岐部は、前記第2給電用ターミナルに向かって延出しており、
前記第2給電用ターミナルが有する前記分岐部は、前記第1給電用ターミナルに向かって延出しており、
前記絶縁層及び前記導電層は、前記第1給電用ターミナルが有する前記分岐部及び前記第2給電用ターミナルが有する前記分岐部の両方において、当該両方が互いに隣り合う部分に跨るように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、雑音防止素子を用いた従来のノイズ防止装置では、数百MHz以下の周波数のノイズを除去するものの、それよりも高周波数の周波数帯域を含むノイズについては除去することが困難であった。そして、高周波数のノイズが十分に除去されない場合には、未除去のノイズがケーシング、給電用ターミナルやワイヤハーネスに伝播する過程で空中に放射され、これに起因して周辺機器に電波障害が生じてしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高周波数のノイズに対する低減効果を向上させた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の回転電機によれば、巻線が巻かれている電機子と、該電機子の前記巻線及び外部電源の電極の双方と電気的に接続される給電用ターミナルと、を備えた回転電機であって、前記給電用ターミナルは、前記電極と電気的に接続される一端部と、前記電機子の前記巻線と電気的に接続される他端部と、前記一端部と前記他端部との間を連結する連結部と、該連結部の中途位置から分岐した分岐部と、を有し、該分岐部には、前記給電用ターミナルが前記双方と電気的に接続された状態において前記分岐部の外周面に隣接している絶縁層と、前記状態において前記外周面とは反対側で前記絶縁層と隣接している導電層と、が形成され
、前記連結部には、前記絶縁層及び前記導電層が形成されていないことにより解決される。
そして、上記の回転電機において、前記導電層は、グランドに接地されているとよい。
【0007】
上記の回転電機では、給電用ターミナルが有する分岐部の外表面と隣接する絶縁層と、当該絶縁層と隣接する導電層とが協働してコンデンサをなし、導電層については、グランドに接地されている。これにより、上記のコンデンサによって高周波数のノイズが給電用ターミナルから放射・伝播されるのを抑制することが可能となる。また、給電用ターミナルが有する分岐部に絶縁層や導電層を形成するので、例えば給電用ターミナルの連結部が比較的短くなる場合にも対応することが可能となる。さらに、給電用ターミナルが有する分岐部に導電層を形成することで、導電層をグランドに接地させる構成の自由度が増えることとなる。
【0008】
また、上記の回転電機において、前記分岐部は、前記一端部、前記他端部及び前記連結部と一体的に形成されているとよい。
上記の構成であれば、分岐部を別部材で構成する場合と比較して部品点数が少なくなり、その分、製造コストを抑えることが可能となる。また、分岐部を接合する作業等が不要となるので、その分、作業の手間を削減することが可能となる。
【0009】
また、上記の回転電機において、前記給電用ターミナルが複数備えられており、少なくとも2以上の前記給電用ターミナルは、前記分岐部を有し、前記絶縁層及び前記導電層は、少なくとも2以上の前記給電用ターミナルが有する前記分岐部に跨るように形成されているとよい。
上記の構成であれば、給電用ターミナル別に絶縁層及び導電層を形成する場合と比較して絶縁層及び導電層の個数を少なくすることができ、その分、製造コストを抑えることが可能となる。
【0010】
また、上記の回転電機において、複数の前記給電用ターミナルは、前記外部電源の陽極と電気的に接続される第1給電用ターミナル、及び、前記外部電源の陰極と電気的に接続される第2給電用ターミナルであり、前記第1給電用ターミナルが有する前記分岐部は、前記第2給電用ターミナルに向かって延出しており、前記第2給電用ターミナルが有する前記分岐部は、前記第1給電用ターミナルに向かって延出しており、前記絶縁層及び前記導電層は、前記第1給電用ターミナルが有する前記分岐部及び前記第2給電用ターミナルが有する前記分岐部の両方において、当該両方が互いに隣り合う部分に跨るように形成されているとよい。
上記の構成であれば、絶縁層及び導電層のうち、各給電用ターミナルの分岐部を跨る部分の長さがより短くなり、その分、製造コストを抑えることが可能となる。
【0011】
また、上記の回転電機において、一つの前記給電用ターミナルが複数の前記分岐部を有し、前記絶縁層及び前記導電層が複数の前記分岐部の各々に形成されているとよい。
上記の構成であれば、分岐部の数が増えるほど分岐部と絶縁層との接触面積、及び絶縁層と導電層との接触面積が増えることになる。この結果、絶縁層と導電層とが構成するコンデンサのキャパシタ容量が増え、高周波数のノイズをより効果的に除去することが可能となる。
【0012】
また、上記の回転電機において、前記絶縁層及び前記導電層は、一つの前記給電用ターミナルが有する複数の前記分岐部に跨るように形成されているとよい。
上記の構成であれば、一つの給電用ターミナルが複数の分岐部を有する構成において、各分岐部別に絶縁層及び導電層を形成する場合と比較して絶縁層及び導電層の個数を少なくすることができ、その分、製造コストを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回転電機では、給電用ターミナルが有する分岐部の外表面と隣接する絶縁層と、当該絶縁層と隣接する導電層とが協働してコンデンサをなし、また、導電層がグランドに接地されている。これにより、上記のコンデンサによって高周波数のノイズが給電用ターミナルから放射・伝播されるのを抑制することが可能となる。また、給電用ターミナルが有する分岐部に絶縁層や導電層を形成するので、例えば給電用ターミナルの連結部が比較的短くなる場合にも対応することが可能となる。さらに、給電用ターミナルが有する分岐部に導電層を形成することで、導電層をグランドに接地させる構成の自由度が増えることとなる。以上に結果、本発明の回転電機によれば、その大型化を抑えつつ、より簡易な構造によって高周波数のノイズの放射・伝播が抑制されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る回転電機を
図1のA−A方向から見たときの図である。
【
図3】参考例に係る給電用ターミナルの側面断面図である。
【
図4】参考例に係る給電用ターミナルの正面断面図である。
【
図5】
図5の(A)は、参考例に係る回転電機の電気回路図であり、(B)は、従来の回転電機の電気回路図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る給電用ターミナルについての説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルを上方から見たときの図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、
図7のV−V断面を示す図である。
【
図9】第1変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルを上方から見たときの図である。
【
図10】第1変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、
図9のW−W断面を示す図である。
【
図11】第2変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルを側方から見たときの図である。
【
図12】第2変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルをその先端側から見たときの図である。
【
図13】第2変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、
図12のX−X断面を示す図である。
【
図14】第3変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルをその先端側から見たときの図である。
【
図15】第3変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルを上方から見たときの図である。
【
図16】第3変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、
図15のY−Y断面を示す図である。
【
図17】第4変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、給電用ターミナルを上方から見たときの図である。
【
図18】第4変形例に係る高周波数ノイズ低減構造についての説明図であり、
図17のZ−Z断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<本発明の一実施形態に係る回転電機の構成>>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、あくまでも一例に過ぎず本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、当然ながら本発明にはその等価物が含まれることとする。
【0016】
また、以下の説明では、ブラシ付きの直流モータ(以下、本モータ1)を回転電機の一例に挙げて説明する。ただし、本発明の適用範囲は、ブラシ付きの直流モータに限定されず、本発明はブラシレスモータにも適用可能である。
【0017】
本モータ1は、電機子(以下、アーマチャ2)に相当する回転子(ロータ)を備える。アーマチャ2は、回転軸5、巻線Cが巻回されたコア6、及び、回転方向に複数並ぶセグメント7aにより構成される整流子7を備えている。コア6には複数種類の巻線Cが巻回されており、各巻線Cの端末は、整流子7を構成する複数のセグメント7aのうち、対応するセグメント7aに接続されている。なお、電機子については回転子に限定されず、固定子(ステータ)であってもよい。
【0018】
また、アーマチャ2は、ヨークに相当する有底筒状のモータヨーク3内に収容されており、その回転軸5は、モータヨーク3の開口端に取り付けられた蓋状体のエンドプレート4を貫通している。つまり、モータヨーク3及びエンドプレート4は、アーマチャ2を内部に収容する収容体として機能する。
【0019】
また、
図1及び
図2に示すように、エンドプレート4の内側部分にはブラシホルダ21が形成されている。本実施形態において、ブラシホルダ21は、絶縁性を有する樹脂により形成されており、互いに略180度離れた位置に2つ設けられている。ブラシホルダ21は、公知の形状や構造を採用しており、その内部には、
図5等に示すブラシ20を収容している。ブラシ20は、一般的なブラシ付き直流モータで採用されているものと同種のものであり、整流子7を構成する複数のセグメント7aの各々に摺接する。
【0020】
さらに、
図1及び2に示すように、エンドプレート4には第1給電用ターミナル11と第2給電用ターミナル12とが組み付けられている。第1給電用ターミナル11は、平板状の部材であり、その一端部11aは、
図3に図示したピッグテール22を介してブラシ20に接続されている。そして、ブラシ20が整流子7のセグメント7aに摺接すると、当該セグメント7aと対応する巻線Cと第1給電用ターミナル11とが電気的に接続する(導通する)ようになる。つまり、第1給電用ターミナル11の一端部11aは、アーマチャ2のコア6に巻回された各巻線Cと電気的に接続されている。また、第1給電用ターミナル11の他端部11bは、不図示の外部電源(例えば12V)の陽極と電気的に接続される。
【0021】
同様に、第2給電用ターミナル12は、平板状の部材であり、その一端部12aは、アーマチャ2のコア6に巻回された各巻線Cと電気的に接続されており、他端部12bは、外部電源の陰極と電気的に接続される。
【0022】
第1給電用ターミナル11と第2給電用ターミナル12とは、モータ回転方向の略同じ位置に配置されており、
図2に示すように互いに横並びになっている。そして、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12が、外部電源の電極のうち、対応する電極に対して電気的に接続されると、ブラシ20及び整流子7を介して外部電源から巻線Cに界磁電流が流れるようになる。
【0023】
ちなみに、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12は、互いにほぼ歩道用の形状及び構成となっている。このため、以下では、特に断る場合を除き、第2給電用ターミナル12の構造及び形状のみを説明することとする。
【0024】
第2給電用ターミナル12は、金属製薄板からなる導電プレートを所定の形状に打ち抜いた後、折り曲げ加工等を施され、
図3に図示するように略L字状に成形される。また、略L字状の第2給電用ターミナル12のうち、一辺をなす部分は、回転軸5の軸方向と略平行に延出している延出部14である。
【0025】
延出部14は、モータヨーク3の外壁面に沿って延出し、その延出方向の中途位置で複数回略直角状に折れ曲っている。換言すると、延出部14の延出方向の中途位置には、モータヨーク3の外壁面から離れるように屈曲した屈曲部14aと、屈曲部14aと隣接した位置でモータヨーク3の外壁面に再び沿うように折り返された折り返し部14bとを有する。また、延出部14の先端(自由端)よりも幾分基端側には、モータヨーク3側に向かって突出した係止部14cが形成されている。この係止部14cは、第2給電用ターミナル12を外部電源に接続するにあたって不図示のコネクタに挿入した際、抜け止めとして機能する。
【0026】
略L字状の第2給電用ターミナル12のうち、残りの一辺をなす部分は、第2給電用ターミナル12がエンドプレート4に組み付けられた状態においてエンドプレート4の開口側に形成されたフランジ4aと対向する対向部13である。この対向部13は、延出部14と直交する向きに延出しており、延出部14とともに第2給電用ターミナル12の連結部を構成している。ここで、連結部とは、第2給電用ターミナル12のうち、その一端部12aと他端部12bとを連結する部分である。
【0027】
また、対向部13は、本モータ1の完成時点において、エンドプレート4のフランジ4aと、モータヨーク3のフランジ3aとの間に挟まれた状態にある。また、対向部13の延出方向中央部には、切り起こし加工によって形成された爪状の弾性接触片13aが設けられている。この弾性接触片13aは、本モータ1の完成時点で、モータヨーク3のフランジ3aに対して弾性変形しながら接触した状態にあり、かかるフランジ3aを押圧する。なお、弾性接触片13aは、少なくとも第2給電用ターミナル12に設けられていればよく、第2給電用ターミナル12のみに設けられてもよく、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12の双方に弾性接触片13aが設けられていてもよい。
【0028】
ここで、本モータ1の電気回路(モータ回路)について説明すると、第2給電用ターミナル12とピッグテール22との間には、
図5に示すように、ノイズ低減用のチョークコイル15が直列状態で配置されている。同様に、第1給電用ターミナル11とピッグテール22の間にもチョークコイル15が直列状態で配置されている。さらに、本モータ1のモータ回路中にはノイズ低減素子用のコンデンサ16が配置されている。当該コンデンサ16が備える2つの端子のうち、一方の端子は、第1給電用ターミナル11側に設けられたチョークコイル15の端子に接続されており、他方の端子は、第2給電用ターミナル12側に設けられたチョークコイル15の端子に接続されている。
【0029】
さらに、第2給電用ターミナル12側に設けられたチョークコイル15とコンデンサ16との間に敷設された配線は、モータヨーク3の外壁に接触している。一方で、モータヨーク3の外壁は、グランドに接地している。より詳しく説明すると、第2給電用ターミナル12の対向部13に設けられた弾性接触片13aがモータヨーク3のフランジ3aに接触している。このため、第2給電用ターミナル12が外部電源の陰極に接続されると、モータヨーク3のフランジ3aを含む外壁の電位が外部電源の陰極の電位、すなわち、グランド電位となる。
【0030】
ところで、モータ回路中にノイズ低減用のチョークコイル15やコンデンサ16を配置する構成は、従来から既に採用されているが、モータ回路中にチョークコイル15やコンデンサ16を配置するだけでは高周波数ノイズが十分に除去されない。このため、高周波数ノイズがモータヨーク3、給電用ターミナル11、12、ワイヤハーネスへ順次伝播したり伝播の途中で空中に放射されたりする結果、モータ周辺機器に電波障害をもたらす虞がある。
【0031】
上記の問題に対する対策としては、例えば、
図3及び
図4に図示の構成が有効である。以下、
図3及び
図4を参照しながら、高周波数ノイズ低減手法に関する参考例について説明する。参考例では、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12の各々に、
図3及び
図4に図示した絶縁層17及び導電層18が形成されている。なお、各給電用ターミナル11、12に形成された絶縁層17及び導電層18は、給電用ターミナル11、12間で同一の材料によって構成されており、かつ、同一の形状となっている。
【0032】
絶縁層17は、各給電用ターミナル11、12のうち、延出部14の基端部(先端部とは反対側の端部)を取り囲むように形成されており、当該基端部に絶縁樹脂(例えば、フェノール、PPポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル)を塗布・貼付等することで形成される。あるいは、各給電用ターミナル11、12の延出部14の基端部に絶縁層17を形成するにあたり、型枠内に給電用ターミナルをセットし、その後に絶縁樹脂を投入するインサート成形を採用してもよい。
【0033】
導電層18は、各給電用ターミナル11、12に形成された絶縁層17を取り囲むように形成されており、導電性を有する樹脂若しくは金属を塗布・貼付等することで形成される。あるいは、導電層18を形成するにあたり、各給電用ターミナル11、12に形成された絶縁層17の表面に金属メッキの塗装や金属テープの貼付を行うこととしてもよい。なお、導電層18の長さ(回転軸5の軸方向における長さ)及び幅(モータ回転方向における長さ)については、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12の間で略揃っている。
【0034】
そして、絶縁層17は、第1給電用ターミナル11及び第2給電用ターミナル12の各々が外部電源の対応する電極に接続された状態(以下、コネクト状態)において、各給電用ターミナル11、12の外周面に隣接する。なお、各給電用ターミナル11、12において、延出部14の外周面は、
図4に示すように4つの平板面から構成されているので、絶縁層17は、延出部14の外周面を構成する4つの平板面の各々に当接する。一方、導電層18は、コネクト状態において各給電用ターミナル11、12の外周面とは反対側で絶縁層17と隣接する。
【0035】
さらに、コネクト状態において、各給電用ターミナル11、12に形成された導電層18は、モータヨーク3の外壁と電気的に接続されている。より具体的に説明すると、参考例では、各給電用ターミナル11、12に形成された導電層18を直接的または間接的にモータヨーク3の外壁に接触させるように構成している。一方、前述したように、コネクト状態では、モータヨーク3の外壁の電位がグランド電位となっている。したがって、コネクト状態では、各給電用ターミナル11、12に形成された導電層18がグランドに接地することになる。
【0036】
そして、参考例の構成では、各給電用ターミナル11、12に絶縁層17及び導電層18が形成されることで、各給電用ターミナル11、12にコンデンサが形成されることになる。すなわち、参考例では、
図5の(A)に示すように、各給電用ターミナル11、12にフレーム構造のコンデンサ19が構築されることとなる。かかるコンデンサ19は、高周波数ノイズに対して比較的に高い低減効果を示す。したがって、コンデンサ19を備えた参考例、すなわち
図5の(A)に示すモータ回路によれば、従来のモータ回路、すなわち
図5の(B)に示すモータ回路に比して、より効果的に高周波数ノイズを除去することが可能となる。これにより、高周波数ノイズが発生したとしても、当該高周波数ノイズがモータヨーク3に重畳して各給電用ターミナル11、12に伝播されたときに、上述したフレーム構造のコンデンサ19にて除去することが可能となる。なお、上記の構成であれば、高周波数ノイズ除去用のコンデンサ(除去素子)を別途設ける場合に比して、より小型で簡易な構造により高周波数ノイズを除去することが可能となる。
【0037】
以上までに参考例の構成について説明してきたが、各給電用ターミナル11、12が比較的大きく、特に延出部14が十分長くなっていれば、絶縁層17及び導電層18の形成スペースを確保し易いため、参考例の構成を採用することが可能である。しかしながら、給電用ターミナル11、12の形状や他部品との位置関係等の制約があるために、絶縁層17及び導電層18の形成スペースを確保し難い状況も考えられる。例えば、
図6に示すように、各給電用ターミナル11、12の延出部14が比較的短い場合には絶縁層17及び導電層18の形成スペースを確保し難くなる。同様に、給電用ターミナル11、12の周りに必要部品(例えば、センサやセンサからの信号線)を配置する場合、当該部品との干渉を回避する必要があるため、絶縁層17及び導電層18の形成スペースを確保し難くなる。
【0038】
一方で、絶縁層17及び導電層18によって構築されるコンデンサ19が効果的に高周波数ノイズを除去する上では、絶縁層17及び導電層18の各々を一定サイズ以上で形成する必要がある。このため、参考例では、給電用ターミナル11、12周りで絶縁層17及び導電層18の形成スペースを確保し難いのであれば、給電用ターミナル11、12やその周辺部品の配置位置を大幅に見直すことになる。
【0039】
これに対して、本発明に係る回転電機、すなわち本モータ1であれば、給電用ターミナル11、12をはじめとする各部品の配置位置を見直すことなく既存の位置に配置させたまま、一定サイズ以上の絶縁層17及び導電層18を形成することが可能である。以下、本モータ1の構成、特に、給電用ターミナル11、12の構成について説明する。
【0040】
本モータ1の給電用ターミナル11、12は、
図7に示すように分岐部11c、12cを備えており、かかる点において参考例に係る給電用ターミナル11、12と異なっている。分岐部11c、12cは、各給電用ターミナル11、12の延出部14の中途位置から分岐した部分である。また、分岐部11c、12cは、給電用ターミナル11、12を製造する際に他の部分と同時に成形される。すなわち、各給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cは、当該各給電用ターミナル11、12の一端部、他端部及び連結部(具体的には、対向部13及び延出部14)と一体的に形成されている。これにより、分岐部11c、12cを別部材で構成する場合と比較して部品点数が少なくなり、その分、製造コストを抑えることが可能となる。また、分岐部11c、12cを接合する作業等が不要となるので、その分、作業の手間を削減することが可能となる。
【0041】
また、本モータ1において、各給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cは、延出部14と略直交する方向に延出している。より具体的に説明すると、第1給電用ターミナル11の延出部14と、第2給電用ターミナル12の延出部14とは、互いに間隔を空けて平行に延出している。そして、第1給電用ターミナル11の延出部14の中途位置から分岐した分岐部11cは、第2給電用ターミナル12の延出部14に向かって直線状に延出している。同様に、第2給電用ターミナル12の延出部14の中途位置から分岐した分岐部12cは、第1給電用ターミナル11の延出部14に向かって直線状に延出している。
【0042】
また、第1給電用ターミナル11の延出部14と第2給電用ターミナル12の延出部14との間に設けられた間隔は、各分岐部11c、12cの長さよりも一回り長くなっている。また、第1給電用ターミナル11の分岐部11cと、第2給電用ターミナル12の分岐部12cとは、互いに平行に延出している。さらにまた、両分岐部11c、12cは、それぞれ、
図7に示すように互いに横並びの状態で隣り合っている部分(以下、横並び部分)を有している。
【0043】
そして、本モータ1では、
図8に示すように分岐部11c、12cに絶縁層17及び導電層18が形成されている。したがって、本モータ1では、分岐部11c、12cに形成された絶縁層17及び導電層18がコンデンサ19を構築し、かかるコンデンサ19により、参考例の場合と同様に高周波数ノイズを効率よく低減させることが可能となる。なお、絶縁層17及び導電層18のそれぞれの形状、材料及び形成手順については、参考例と同様であるため、説明を省略することとする。
【0044】
また、本モータ1では、絶縁層17及び導電層18は、2つの給電用ターミナル11、12が有する分岐部11c、12cに跨るように形成されている。より具体的に説明すると、絶縁層17及び導電層18は、第1給電用ターミナル11が有する分岐部11c及び第2給電用ターミナル12が有する分岐部12cの両方において、当該両方が互いに隣り合う部分、すなわち、横並び部分に跨るように形成されている。つまり、本モータ1では、2つの給電用ターミナル11、12の各々の分岐部11c、12cに形成する絶縁層17及び導電層18が一つにまとめられている。これにより、給電用ターミナル11、12別に絶縁層17及び導電層18を形成する場合と比較して、絶縁層17及び導電層18の個数を少なくすることができ、その分、モータの製造コストを抑えることが可能となる。
【0045】
以上のような構成により、本モータ1では、給電用ターミナル11、12やその周辺部品の配置位置を見直すことなく、給電用ターミナル11、12(厳密には、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12c)に必要サイズの絶縁層17及び導電層18を形成することが可能である。したがって、例えば給電用ターミナル11、12の延出部14が比較的短くなる場合や給電用ターミナル11、12の周りに重要部品が配置される場合にも対応可能となる。
【0046】
また、本モータ1では、参考例と同様、給電用ターミナル11、12に形成された導電層18が、グランドに接地されている。一方、参考例では、導電層18をグランドに接地するにあたり、導電層18をモータヨーク3の外壁に接触させることとしたが、本モータ1では、モータヨーク3の外壁に限定されず、接触することでグランドに接地する部位であればよい。このように導電層18を接触させる部材についての自由度が参考例に比して増えたことも、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cに導電層18を形成したことに因る。
【0047】
なお、本モータ1では、2つの給電用ターミナル11、12が有する分岐部11c、12cに跨った絶縁層17及び導電層18が形成されていることとしたが、これに限定されるものではなく、給電用ターミナル11、12別に絶縁層17及び導電層18を形成することとしてもよい。
また、本モータ1では、2つの給電用ターミナル11、12を備えることとしたが、3つ以上の給電用ターミナルを備える構成であってもよい。かかる構成では、少なくとも2つ以上の給電用ターミナルが分岐部を有し、絶縁層17及び導電層18は、少なくとも2つ以上の給電用ターミナルが有する分岐部の間に跨って形成されているとよい。
【0048】
<<変形例の構成について>>
以下では、本発明の回転電機に関する変形例について、その構成を説明することとする。なお、以下においても、ブラシ付き直流モータを例に挙げることとし、また、上述した構成と重複する内容については説明を省略し、上述した構成と相違する内容のみを説明することとする。
【0049】
(第1変形例について)
上述の構成では、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cが延出部14と直交する方向に延出していることとした。一方、
図9に示すように、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cが、モータの上方から見てL字状に屈曲している構成(以下、第1変形例)であってもよい。以下、第1変形例について
図9及び
図10を参照しながら説明する。第1変形例において、各給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cは、延出部14と直交する方向に延出してから略90度屈曲し、延出部14に沿って延出している。また、2つの給電用ターミナル11、12がそれぞれ有する分岐部11c、12cのうち、延出部14に沿って延出している部分は、互いに横並びの状態で隣り合っている。そして、第1変形例では、
図10に示すように、2つの給電用ターミナル11、12の各々が有する分岐部11c、12cの横並び部分に跨るように絶縁層17及び導電層18が形成されている。
【0050】
(第2変形例について)
上述の構成では、給電用ターミナル11、12の延出部14の中途位置から分岐部11c、12cが分岐していることとした。一方、
図11及び
図12に示すように、分岐部11c、12cが給電用ターミナル11、12の延出部14と対向部13との境界部分、すなわち、給電用ターミナル11、12の折れ曲がり部分から突出している構成(以下、第2変形例)であってもよい。以下、第2変形例について
図11乃至
図13を参照しながら説明する。第2変形例において、分岐部11c、12cは、給電用ターミナル11、12の折れ曲がり部分から突出し、
図11及び12に示すように、対向部13と連続する方向に延出している。そして、第2変形例では、
図13に示すように、各給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cに対して個別に絶縁層17及び導電層18が形成されている。すなわち、第2変形例では、第1給電用ターミナル11の分岐部11cに形成された絶縁層17及び導電層18と、第2給電用ターミナル12の分岐部12cに形成された絶縁層17及び導電層18と、が互いに分離している。ただし、第2変形例においても、第1給電用ターミナル11の分岐部11cと第2給電用ターミナル12の分岐部12cとに跨るように絶縁層17及び導電層18が形成されてもよい。
【0051】
(第3変形例について)
上述の構成では、給電用ターミナル11、12のうち、分岐部11c、12cがそれ以外の部分と一体的に形成されていることとした。一方、
図14及び
図15に示すように、給電用ターミナル11、12において分岐部11c、12cが別部品で構成されている構成(以下、第3変形例)であってもよい。以下、第3変形例について
図14乃至
図16を参照しながら説明する。第3変形例において、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cは、給電用ターミナル11、12の本体(対向部13及び延出部14)とは異なる部材によって構成されている。ここで、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cをなす部品は、給電用ターミナル11、12の本体に対してカシメや溶接等によって接合されている。なお、
図14及び
図15に図示のケースでは、給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cをなす部品が、給電用ターミナル11、12の本体における折れ曲がり部分に接合されている。このため、第3変形例に係る給電用ターミナル11、12は、上述した第2変形例に係る給電用ターミナル11、12と同様の外観を呈している。そして、第3変形例では、
図16に示すように、各給電用ターミナル11、12の分岐部11c、12cに対して個別に絶縁層17及び導電層18が形成されている。ただし、第3変形例においても、第1給電用ターミナル11の分岐部11cと第2給電用ターミナル12の分岐部12cとに跨るように絶縁層17及び導電層18が形成されてもよい。
【0052】
(第4変形例について)
上述の構成では、各給電用ターミナル11、12が1つの分岐部11c、12cをゆすることとした。一方、
図17に示すように、一つの給電用ターミナル11、12あたりに複数の分岐部11c、12cが備えられている構成(以下、第4変形例)であってもよい。以下、第4変形例について
図17及び
図18を参照しながら説明する。第4変形例において、各給電用ターミナル11、12は、2つずつ分岐部11c、12cを有している。具体的に説明すると、第1給電用ターミナル11は、その延出部14の中途位置から2つの分岐部11cが分岐しており、当該2つの分岐部11cは、並列しており、いずれも第2給電用ターミナル12に向かって延出部14と直交する方向に延出している。同様に、第2給電用ターミナル12の延出部14の中途位置からは2つの分岐部12cが分岐しており、当該2つの分岐部12cは、並列しており、いずれも第1給電用ターミナル11に向かって延出部14と直交する方向に延出している。そして、第4変形例では、
図17及び
図18に示すように、各給電用ターミナル11、12に備えられた複数の分岐部11c、12cの各々に対して、絶縁層17及び導電層18が形成されている。より具体的に説明すると、第4変形例では、絶縁層17及び導電層18が、各給電用ターミナル11、12が有する複数の分岐部11c、12cに跨るように形成されている。さらに詳しく説明すると、第4変形例では、第1給電用ターミナル11が有する2つの分岐部11c、及び、第2給電用ターミナル12が有する2つの分岐部12cのすべて、すなわち、計4つの分岐部11c、12cに跨るように絶縁層17及び導電層18が形成されている。以上のように第4変形例では、一つの給電用ターミナル11、12に対して複数の分岐部11c、12cが設けられていることにより、分岐部11c、12cと絶縁層17との接触面積、及び絶縁層17と導電層18との接触面積が増加する。これにより、絶縁層17と導電層18とが構成するコンデンサ19のキャパシタ容量が増え、高周波数ノイズをより効果的に除去することが可能となる。