(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281954
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】改善された加硫後の接合
(51)【国際特許分類】
C09J 5/02 20060101AFI20180208BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20180208BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20180208BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20180208BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20180208BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20180208BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20180208BHJP
C09D 109/00 20060101ALI20180208BHJP
C09D 107/00 20060101ALI20180208BHJP
C09D 123/28 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
C09J5/02
C09J175/04
C09J133/00
C09J163/00
C09J11/02
C09J11/06
C09D5/00 D
C09D109/00
C09D107/00
C09D123/28
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-524448(P2015-524448)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公表番号】特表2015-527442(P2015-527442A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】US2013052074
(87)【国際公開番号】WO2014018761
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/675,370
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507381329
【氏名又は名称】ロード コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, ジョン イー.
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−171162(JP,A)
【文献】
特開2003−251746(JP,A)
【文献】
特開2001−354912(JP,A)
【文献】
特許第2927369(JP,B2)
【文献】
特開2003−268333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウレタン系、アクリル系又はエポキシ系接着剤のうち少なくとも一種を含み、金属部分を含む基材に塗布される基材接着剤、及び
(b)ハロゲン化ポリオレフィンを含み、任意選択的にニトロソ化合物も含み、加硫後のエラストマーに塗布されるエラストマー−プライマー
を含む、金属部分と加硫後のエラストマーとを接合させるための、2液型接着システム。
【請求項2】
前記ハロゲン化ポリオレフィンが、臭素化ポリ(ジクロロブタジエン)を含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項3】
前記ハロゲン化ポリオレフィンが、塩素化天然ゴムを含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項4】
前記ハロゲン化ポリオレフィンが、クロロスルホン化ポリエチレンを含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項5】
前記ニトロソ化合物が、ポリ−ジニトロソベンゼンを含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項6】
前記基材接着剤が、ウレタン系接着剤を含み、触媒を更に含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項7】
前記基材接着剤が、エポキシ系接着剤を含み、アミン硬化剤を更に含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項8】
前記基材接着剤が、アクリル系接着剤を含み、レドックス開始剤システムを更に含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項9】
前記基材接着剤が、フェノールエポキシ材料以外のフェノール樹脂を含まない、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項10】
前記基材接着剤が、ハロゲン化ポリオレフィンを含まない、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項11】
前記エラストマー−プライマーが、フェノールエポキシ材料以外のエポキシ樹脂を含まない、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項12】
前記エラストマー−プライマーが、フェノール樹脂を含まない、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項13】
前記エラストマー−プライマーが、ビスマレイミド材料を含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項14】
前記エラストマー−プライマーが、溶剤系プライマーを含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項15】
前記エラストマー−プライマーが、水性プライマーを含む、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項16】
前記エラストマー−プライマーが加硫エラストマー部分に塗布されており、且つ、前記基材接着剤が金属部分に塗布されている、請求項1に記載の2液型接着システム。
【請求項17】
エラストマー部分と金属部分とが接触されており、その結果、エラストマー−プライマーと基材接着剤とが互いに接触して接合部品を形成する、請求項16に記載の2液型接着システム。
【請求項18】
(a)加硫エラストマーを供給すること、
(b)エラストマー−プライマー組成物がハロゲン化ポリオレフィン及びジニトロソベンゼンを含み、加硫エラストマーにエラストマー−プライマー組成物を塗布すること、
(c)接着する基材を供給すること、
(d)基材接着剤がエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤又はウレタン系接着剤のうち少なくとも一種を含み、基材接着剤を基材に塗布すること、
(e)エラストマー−プライマーをコーティングした加硫エラストマーを、基材接着剤をコーティングした基材に接触させ、その結果、エポキシ接着剤の少なくとも一部がハロゲン化ポリオレフィンプライマーの少なくとも一部と接触して部品を形成すること
を含む、加硫後のエラストマーの接合方法。
【請求項19】
(f)前記部品を加熱してエラストマー−プライマーを硬化させる工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記部品を約5分にわたり少なくとも250°Fに加熱する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前処理工程を経ることなくエラストマー−プライマーをエラストマーに塗布する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「改善された加硫後の接合」と題する2012年7月25日に出願された米国仮特許出願第61/675370号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張し、米国仮特許出願第61/675370号の開示は、出典明示により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、2液型の加硫後の接着システム、及びエラストマー基材の加硫後の接合のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
強固な接着剤及び加硫ゴム又は他の硬化エラストマーを金属及び他の基材に接着させる方法に対するニーズが長い間存在している。ほとんどのゴム接着プロセスにおいて、LORDCorporationから販売されているChemlok(登録商標)接着剤等の従来のゴム−基材接着剤を金属部分に塗布し、次いで金属部分を型に装填して未加硫ゴム又はその他のエラストマーを型に注入する。次いで、ゴムが充填された型を加熱してゴムの加硫中に接着剤を共硬化させる。これにより、ゴムと金属基材との間が強固に接着するようになる。
【0004】
しかし、接着剤とゴムとの共硬化が非実用的である又は不可能である用途がある。例えば、ある種のマウント及びブッシング等の部品の製造中に、ゴム部分を形成して加硫した後に接着させる必要がある。状況によっては、加硫後のゴム−基材接着は、型内接着と比較してコスト面での大きな利点ももたらし得る。これらの例では、加硫ゴムと金属等の剛性基材との間に接着を形成する必要がある。
【0005】
先行技術の解決策は、一般に、エポキシ系金属接合接着剤を用いて金属側に接着性を付与し、ゴム表面が化学的に処理されてゴムとエポキシ金属接合接着剤との間の接着性が高められる。これらの方法は、効果的である場合があるものの、所望された程の良好な接着を付与することができない場合が多く、特に、このシステムの高温下で接着を維持する能力が不足していることが多い。
【0006】
したがって、天然ゴム等のエラストマーをスチール及び人工ポリマー等の非エラストマー基材に加硫後に接合するための材料及び方法を提供することが望ましい。
【0007】
本発明は、これらの認識されているニーズに向けられている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の態様において、(a)ウレタン系、アクリル系又はエポキシ系接着剤のうち少なくとも一種を含む基材接着剤、及び(b)ハロゲン化ポリオレフィンを含み、任意選択的にニトロソ化合物も含むエラストマー−プライマーを含む2液型接着システムが提供される。本発明の一実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンは、臭素化ポリ(ジクロロブタジエン)を含む。本発明の別の実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンは、塩素化天然ゴムを含む。本発明の更なる実施態様において、ハロゲン化ポリオレフィンは、クロロスルホン化ポリエチレンを含む。本発明の別の実施態様において、ニトロソ化合物は、ポリ−ジニトロソベンゼンを含む。
【0009】
本発明の更なる態様において、基材接着剤は、ウレタン系接着剤を含み、更に触媒を含む。本発明の更なる態様において、基材接着剤は、エポキシ系接着剤を含み、更にアミン硬化剤を含む。本発明の更に別の態様において、基材接着剤は、更にレドックス開始剤システムを含むアクリル系接着剤を含む。
【0010】
本発明の別の実施態様において、基材接着剤は、フェノールエポキシ材料以外のフェノール樹脂を本質的に含まないか、又は含まない。本発明の更なる実施態様において、基材接着剤は、ハロゲン化ポリオレフィンを本質的に含まないか、又は含まない。本発明の更に別の実施態様において、エラストマー−プライマーは、フェノールエポキシ材料以外のエポキシ樹脂を本質的に含まないか、又は含まない。本発明の更に別の実施態様において、エラストマー−プライマーは、フェノール樹脂を本質的に含まないか、又は含まない。本発明の更なる実施態様は、エラストマー−プライマーがビスマレイミド材料を含む2液型接着システムを含む。本発明のなお更なる実施態様において、エラストマー−プライマーは、溶剤系プライマーを含む。本発明の代替の実施態様において、エラストマー−プライマーは、水性プライマーを含む。
【0011】
本発明の別の態様において、エラストマー−プライマーは、加硫エラストマー部分に塗布されており、基材接着剤が金属部分に塗布されている。本発明の更なる態様において、エラストマー部分と金属部分とが接触されており、その結果、エラストマー−プライマーと基材接着剤とが互いに接触して接合部品を形成する。本発明のなお更なる実施態様において、接合部品は、ASTMD 429に従って90°の角度において100℃を超える温度で引っ張られる場合に、少なくとも90%のゴム保持率を示す。
【0012】
本発明の別の態様において、(a)加硫エラストマーを供給すること、(b)エラストマー−プライマー組成物がハロゲン化ポリオレフィン及びジニトロソベンゼンを含み、加硫エラストマーにエラストマー−プライマー組成物を塗布すること、(c)接着する基材を供給すること、(d)基材接着剤がエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤又はウレタン系接着剤のうち少なくとも一種を含み、基材接着剤を基材に塗布すること、並びに(e)エラストマー−プライマーをコーティングした加硫エラストマーを基材接着剤をコーティングした基材に接触させ、その結果、エポキシ接着剤の少なくとも一部がハロゲン化ポリオレフィンプライマーの少なくとも一部と接触して部品を形成することを含むエラストマーの加硫された後の接合のための方法は提供される。
【0013】
本発明の別の実施態様において、該方法は、(f)該部品を加熱してエラストマー−プライマーを硬化させる工程を更に含む。本発明の更なる実施態様において、該部品は、約5分間250°F以上に加熱される。本発明の別の実施態様において、前処理工程を経ることなく、エラストマー−プライマーはエラストマーに塗布される。
【0014】
したがって、以下の詳細な説明がより良く理解され得るように、及び当分野への本貢献がより良く認められ得るように、本発明のより重要な特徴をかなり幅広く概説している。以下で説明される及び本明細書に添付した特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴が存在することは明白である。この点に関して、本発明のいくつかの実施態様を詳細に説明する前に、本発明が、詳細についてのその応用、構成、及び以下の説明で明らかにされる構成要素の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明はその他の実施態様が可能であり、本発明を様々な方法で実施する及び実行することができる。
【0015】
また、本明細書における表現及び用語は説明を目的とするものであり、いかなる点においても限定するとみなすべきはないことも理解すべきである。当業者は、本開示が基づく概念を認識し、本開発のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基準として容易に利用され得ることを認識するであろう。そのような等価の構成が本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限りにおいて、そのような等価の構成を特許請求の範囲が含むとみなすことは重要である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一の態様において、基材接着剤及びエラストマー−プライマーを含む2液型接着システムが提供される。基材接着剤は、好ましくは金属又は設計されるポリマー等の基材の結合に対する親和性を有するエポキシ系、アクリル系又はウレタン系接着剤を含む。エラストマー−プライマーは、好ましくはエラストマーを結合することに対する親和性を有するプライマーを含む。この2液型接着システムの使用は、加硫された後のゴム及び他のエラストマーの金属及び他の剛性基材への非常に強固な接合を提供する。特に、このような接着システムの高温性能は先行技術の解決策を超えて著しく改善される。
【0017】
基材接着剤は、好ましくはエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、又はウレタン系接着剤を含む。このようなエポキシ接着剤の例は、LORDCorporationから販売されているエポキシ接着剤であるFusor(登録商標)品目を含む。このようなウレタン接着剤及びアクリル接着剤の例は、LORDCorporationから販売されている接着剤であるLORD(登録商標)品目を含む。
【0018】
本発明の好ましい実施態様において、基材接着剤は高いTgを含み、高温でより良好な接着を提供する。本発明の一実施態様において、金属接合接着剤のTgは、少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも95℃、最も好ましくは110℃を超える。十分に高い温度では、基材接着剤がゴム接着プライマーへの接着性を失う場合に破壊が生じるので、高いTgが好ましいことは推測される。金属接合接着剤部分中のより高いTgを伴う材料を選択するは、最終的な接着剤接合の作動温度を高くする。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、エラストマー−プライマーは、ハロゲン化ポリオレフィン系接着剤を含み、好ましくはニトロソ化合物を含有する該接着剤を含む。これらのエラストマー−プライマーに関連する化学物質を含む市販品の例は、LORDCorporationから販売されている接着剤である多くのChemlok(登録商標)品目を含む。このようなエラストマープライマーは、当分野で知られているように、溶剤、水溶液、又は粉末で運ばれ得る。
【0020】
エポキシ
本発明の好ましい実施態様において、基材接着剤はエポキシ系接着剤を含む。本発明のエポキシ化合物は、エポキシ(オキシラン)基を含有するいかなる材料であり得る。含まれるエポキシ樹脂は、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラック及びこれらのうちのいずれかとビスフェノールAエポキシ樹脂とのブレンドである。エポキシ化合物の単量体及びポリマー型のエポキシドは、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環であり得る。1分子当たりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有材料中のエポキシ基の総数を存在するエポキシ分子の総数で割ることにより決定される。有用なエポキシ材料は、一般に、1分子当たり平均して少なくとも1.5個の重合可能なエポキシ基を含有する。好ましくは、1分子当たり2個以上のエポキシ基が存在する。重合体のエポキシドは、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートのポリマー又はコポリマー)を含む。エポキシドは純粋な化合物であり得るが、一般に、1分子当たり1個、2個又はより多くのエポキシ基を含有する混合物である。
【0021】
エポキシ含有材料は、低分子量のモノマー材料から高分子量のポリマーまで様々であり得、その主鎖及び置換基の性質を大幅に変化させ得る。例えば、主鎖は任意の種類であってもよく、活性水素原子のない主鎖上の置換基であってもよい。許容される置換基の例示は、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、ホスフェート基等を含む。エポキシ含有材料の分子量は、約50から100,000以上まで様々であり得る。様々なエポキシ含有材料の混合物も、本発明の組成物で使用され得る。
【0022】
本発明のエポキシ化合物は、脂環式エポキシドであり得る。脂環式エポキシドの例は、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)シュウ酸、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジピン酸、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメリン酸等のジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシドを含む。ジカルボン酸の脂環式エステルの他の適切なジエポキシドは、例えば米国特許第2750395号に記載されており、米国特許第2750395号は出典明示により本明細書に援用される。
【0023】
ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂は、固体でキャリア中で溶解可能か又は液体であり、比較的安価なので好ましい。無数の入手可能なエポキシ材料があり、樹脂状か単純な化合物かに関係なく集合的にエポキシ樹脂と呼ばれ、特に、容易に入手可能である単純エポキシ化合物は、オクタデシレンオキシド、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、ShellChemical Co.から入手可能な商品名EPON、DowChemical Co.から入手可能な商品名DER)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4206)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4221)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4201)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4289)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−0400)、ポリプロピレングリコールで変性した脂肪族エポキシ(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4050及びERL−4052)、ジペンテンジオキシド(例えば、UnionCarbide Corp.からERL−4269)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMCCorp.からOXIRON 2001)、エポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、DowChemical Co.から入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂であるDER−580)、フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、DowChemical Co.からDEN−431及びDEN−438)、及びレゾルシノールジグリシジルエーテルを含む。
【0024】
本発明の更なる実施態様において、エポキシ系接着剤は、エポキシ樹脂用のアミン型硬化剤を含むアミン硬化剤を含む。例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、第3級アミン、ポリアミノアミド及びこれらの様々な混合物は、本目的のために使用される。本発明の目的のためのアミン硬化剤の例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサ-メチレンジアミン、オレイルアミン、ジプロピレントリアミン、1,3,6−トリス−アミノメチルヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、1,3−ビス−アミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン等を含む。エポキシ樹脂若しくはアクリロニトリルの付加、又は脂肪酸との縮合により変性されている脂肪族ポリアミンもアミン硬化剤として利用され得る。加えて、本発明の目的のためのアミン硬化剤として様々なMannich塩基は用いられ得る。
【0025】
キシレンジアミン等のアミン基が芳香環に直接結合している芳香族ポリアミンも本発明の実施で使用され得るが、脂肪族ジアミンに比べて好ましくない。芳香族ポリアミンの例は、ジアミノフェニルメタン、アニリン-ホルムアルデヒドの低分子量縮合体、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニル-スルホン等を含む。
【0026】
本明細書において、妨げられない脂肪族アミン硬化剤は、第1級炭素原子に結合した第1級アミン基を含有するアミン化合物を指す。アミン硬化剤は基材接着剤組成物の主成分の約10から50重量パーセントの範囲の量で利用されてもよく、好ましくは約20から40重量パーセントの範囲の量で利用されてもよい。
【0027】
基材接着剤としてアミン硬化エポキシを用いる本発明の更なる実施態様において、EEW/AHEW比(エポキシ換算重量対アミン水素換算重量)は、0.5−1.5、好ましくは0.8−1.2である。
【0028】
アクリル
本発明の更なる実施態様において、基材接着剤はアクリル系接着剤を含む。本発明の実施態様に従う好ましいフリーラジカル−重合可能なモノマーは、--C=C--基の存在により特徴づけられるオレフィンモノマーを含む。代表的なオレフィンモノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸エチル、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルオキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル及びメタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアクリル酸(メタクリル酸)エステル;メタクリル酸;アクリル酸;イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びメタクリルアミド等の置換アクリル酸(メタクリル酸);スチレン;ビニルスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン及びn-ブチルスチレン等の置換スチレン;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;並びに2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及び2-クロロ-1,3-ブタジエン等のブタジエンが挙げられる。その他のオレフィンモノマーとして、マレイン酸エステル;フマル酸エステル;並びにスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン及びビニルスチレン等のスチレン化合物を含む。
【0029】
本発明の一実施態様では、モノマーは、アクリル接着剤中に主成分の10−90重量パーセントの量で存在する。本発明の更なる実施態様において、モノマーは主成分の20−70重量パーセントの量で存在する。本発明のなお更なる実施態様において、モノマーは主成分の30−60重量パーセントの量で存在する。
【0030】
一実施態様において、アクリル接着剤は、周囲温度反応型のレドックス開始剤又は触媒システムを含有する。周囲温度反応型の触媒システムは、よく知られているレドックス対システムであり、本明細書中に広範囲にわたり詳細に論じる必要はないが、該触媒システムは、追加の重合反応を開始させて接着剤を硬化させるのに効果的なフリーラジカルを生成するために、周囲温度で同時活性的である少なくとも一種の酸化剤及び少なくとも一種の還元剤を含む。適切なレドックス(酸化−還元)開始剤は、過硫酸塩開始剤と二亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤との組合わせ;有機過酸化物と第3級アミン(例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリン)に基づくシステム;及び有機ヒドロペルオキシドと遷移金属、例えば、クメンヒドロペルオキシドとナフテン酸コバルトに基づくシステムを含むがこれらに限定されない。
【0031】
本発明の一実施態様において、実質的に任意の既知の酸化剤を用いることができる。代表的な酸化剤として、限定されないが、過酸化ベンゾイル及び他のジアシル過酸化物等の有機過酸化物、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド、β-ブチルペルオキシベンゾエート等のペルエステル;メチルエチルケトンヒドロペルオキシド等のケトンヒドロペルオキシド、ナフテン酸コバルト等の遷移金属の有機酸塩、及び塩化スルホニル等の反応性塩素を含有する化合物を含む。エラストマー−プライマー中でニトロソ化合物が用いられる本発明の実施態様において、ニトロソ化合物が過酸化物の硬化メカニズムを妨げ得る可能性があるので、基材接着剤は過酸化化合物を好ましくは含まない。
【0032】
代表的な還元剤として、限定されないが、スルフィン酸;アゾイソ酪酸ジニトリル等のアゾ化合物;ビス(トリスルホンメチル)ベンジルアミン等のアルファ−アミノスルホン;ジイソプロパノール−p−トルイジン(DIIPT)、ジメチルアニリン、p−ハロゲン化アニリン誘導体及びジメチル−p−トルイジン等の第3級アミン;並びにアミンアルデヒド縮合生成物、例えば、ブチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒドとアニリン又はブチルアミン等の第1級アミンとの縮合生成物を含む。好ましい還元剤は、p−ハロゲン化アニリン誘導体である。例示的な還元剤として、N,N−ジイソプロパノール−p−クロロアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモ−m−メチルアニリン、N,N−ジメチル−p−クロロアニリン、N,N−ジメチル−p−ブロモアニリン、N,N−ジエチル−p−クロロアニリン及びN,N−ジエチル−p−ブロモアニリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0033】
酸化剤は、好ましくは重合可能な接着剤組成物の約0.5から約50重量パーセントの範囲の量で存在し、同時に、還元剤の量は、重合可能な接着剤組成物の約0.05から約10重量パーセント、好ましくは約0.1から約6重量パーセントの範囲である。
【0034】
強化剤ポリマーは、アクリル接着剤の主成分の約0から80重量パーセント、より好ましくは2から50重量パーセントで任意選択的に使用され得る。典型的な低分子量の強化剤は、約18,000未満の重量平均分子量(Mw)を有し、又は約10,000未満の数平均分子量(Mn)を有する。強化剤ポリマー材料は、それ自体で重合されることが可能であるか又は上記のフリーラジカル重合可能なモノマーの内の少なくとも一種と共重合されることが可能であるオレフィン性不飽和構造を含んでもよく、又は含まなくてもよい。ポリマー材料は、例えば、様々な固体及び液体のエラストマー重合材料であり得、特に、米国特許第4223115号、米国特許第4452944号、米国特許第4769419号、米国特許第5641834号及び米国特許第5710235号に記載されている液体のオレフィン末端エラストマー、並びに米国特許第4223115号、米国特許第4452944号、米国特許第4467071号及び米国特許第4769419号に記載されているイソシアネート官能性プレポリマーとヒドロキシ官能性モノマーとのオレフィンウレタン反応生成物であり得、これらの開示全体が出典明示により本明細書に援用される。
【0035】
本発明の別の実施態様において、アクリル接着剤は接着促進剤を更に含む。本発明の実施態様に従う接着促進剤は、アクリル接着剤の接着を促進するのに有用であるような当業者に知られている任意の接着促進剤を含む。本発明の実施態様に従う好ましい接着促進剤は、金属接着を高めるリン含有化合物であり、少なくとも1個のP−OH基と、オレフィン基の存在により特徴づけられる少なくとも1個の有機部分とを有するホスフィン酸、ホスホン酸又はリン酸の任意の誘導体であり得、該化合物は、好ましくは末端に位置する。そのようなリン化合物のリストが米国特許第4223115号に見出される。
【0036】
本発明の更なる実施態様において、アクリル接着剤組成物はエポキシ成分を含んでもよい。本発明の一実施態様において、エポキシ成分は、1分子(ポリエポキシド)当たり統計的に一個を超えるオキシラン環を含有する硬化可能なエポキシ官能性化合物(液体樹脂)を含む。好ましいエポキシ官能性材料は、1分子当たり二個のエポキシ基を含有する。単官能性エポキシ化合物は、反応性希釈剤として作用する粘度調整剤としてのポリエポキシド成分とも組み合わされ得る。本明細書での使用に適したエポキシ樹脂は、多価アルコールのポリグリシジルエーテル及びポリカルボン酸のポリグリシジルエステルを含む。ポリグリシジルエステルは、エピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンと、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び二量体化リノール酸等の脂肪族又は芳香族のポリカルボン酸とを反応させることにより得られうる。芳香族ポリオールのポリグリシダルエーテルが好ましく、アルカリの存在下でエピハロドリンとポリヒドロキシフェノール化合物とを反応させることにより調製される。適切な出発ポリヒドロキシフェノールは、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールAとしても知られているビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェノール)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−メタン及び1,5−ヒドロキシナフタレン並びにビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む。
【0037】
ポリウレタン
本発明の更なる実施態様において、基材接着剤はポリウレタン系接着剤を含む。本発明のポリウレタン接着剤は、ある種のポリヒドロキシ化合物と、接着剤接着を生成するのに利用することができるイソシアネート化合物、好ましくは多官能性イソシアネートとから調製されるポリウレタンプレポリマーに基づく。
【0038】
適切な多官能性イソシアネートは、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を含有する脂肪族の、脂環式及び/又は芳香族のポリイソシアネートを含む。それらのUV光に対する良好な耐性により、脂肪族ジイソシアネートは黄変傾向が低い生成物を生じるが、芳香族ポリイソシアネートに比べてより高価である。第一部分中のイソシアネート成分は、二から四個、好ましくは二から三個のイソシアネート官能基を本質的に有するいかなる脂肪族又は芳香族の、環状又は直鎖状の有機イソシアネート化合物であり得る。接着剤混合物中で必要とされるポリイソシアネート成分は、二より大きい官能基のポリイソシアネートの部分も含有し得る。トリイソシアネートは、ジイソシアネートの三量体化若しくはオリゴマー化、又はジイソシアネートとOH基若しくはNH基を含有する多官能性化合物との反応により得られうる。
【0039】
イソシアネートは、低、高又は中間の分子量であり得、幅広い種類の有機ポリイソシアネートのいずれかであり得る。本明細書で有用である典型的な脂肪族イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及びヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(それらの二量体及び三量体を含む)、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラエチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、2,3−ジメチルテトラメチレンジイソシアネート、ブチレン−1,3−ジイソシアネート、ブチレン−1,3−ジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、エチルエチレンジイソシアネート並びにトリメチルヘキサンジイソシアネート等を含む。少なくとも二イソシアネート官能基を有するポリイソシアネートが米国特許第3350362号及び米国特許第3382215号に開示されている。全ての種類のイソシアネートプレポリマーを本質的に含むポリマーであるポリイソシアネートは、本発明に含まれる。
【0040】
脂環式ポリイソシアネートは、シクロブタンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、例えば、シクロペンテン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、例えばメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、例えばビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、例えば1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。
【0041】
使用され得る芳香族ポリイソシアネートの例は、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビスフェニレンジイソシアネートの異性体、ナフタレンジイソシアネートの異性体、ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体、p−フェニレンジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンプロパンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。
【0042】
第二部分中のポリヒドロキシ化合物は、第一部分中のイソシアネート化合物との反応に使用され、主として第2級ポリオールの主として短鎖及び長鎖を主に含む混合物である。場合によっては、約25重量パーセント以下のポリオール混合物は第1級ポリオールから構成される。より好ましくは、15重量パーセント以下のポリオール混合物は第1級ポリオールを含有し、存在する第1級ポリオールの最も好ましい限度は、全ポリオールの重量に対し最大約5重量%である。
【0043】
「長鎖」という用語は、2000から12000の分子量を有するポリオールを指す。長鎖ポリオールは、ポリエーテル型、ポリエステル型、ポリカプロラクトン型、ポリカーボネート型、アクリルポリオール型及びポリブタジエン型等の幅広い種類を含む。長鎖第2級ポリオールの官能基は重要でない。長鎖第2級ポリオールの官能基は、1.6から約4個の範囲であり得る。本明細書で使用される長鎖ポリオールは、主として第2級ポリオールであり、優先的には、例えば、第2級水酸基でキャップされ又は末端にされ、例えば、プロピレンオキシドに付加するポリエーテルポリオールであり、最も好ましくはポリオキシプロピレン基だけを含有する。25重量パーセント以下の第1級水酸基は、1から25重量パーセントのエチレンオキシドを末端としたポリオール等に含まれ得る。好ましくは、第1級ポリオールの量は15%以下、より好ましくは5%以下である。
【0044】
任意選択的に、約2.0重量%以下の触媒は、ポリウレタン系接着剤に使用され得る。好ましい触媒は、遅効性触媒と呼ばれる。これらは、アミンとイソシアネートとの間及び/又はポリオールとイソシアネートとの間のような接着剤中での連鎖成長及び架橋反応を促進することが知られているものを含む。触媒化合物は、当分野で知られているジアルキルスズメルカプチド、ジアルキルスズメルカプトアセテート及びジアルキルスズジメルカプト酸等の混合物を含むスズ触媒を含む。スズ触媒の具体例は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、ジエチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、マレイン酸ジブチルスズ、ジヘキシルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート及びジブチルスズジイソオクチルマレエートを含む。ジアルキルスズメルカプチドは、ジメチルスズジメルカプチド及びジブチルスズジメルカプチド及びジオクチルスズジメルカプチドを含む。ジアルキルスズメルカプトアセテートは、ジブチルスズジイソオクチルメルカプトアセテート及び混合物を含む。アセトナート鉄、アセチルアセトナートニッケルも適している。スズ触媒は、0.001から0.5重量%で使用され得る。スズ触媒は、AirProducts and Chemical,Inc.から市販で入手可能である。
【0045】
当分野で知られているように、充填剤、増量剤、可塑剤、レオロジー改質剤、顔料、ガラス球、阻害剤、酸化防止剤等の様々な一般的な添加剤は、ポリウレタン系接着剤中に任意に含まれる。典型的な充填剤は、シリケート、タルク及び粘土、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、モレキュラーシーブ等を含み、無機及び/又は有機顔料は、TiO
2等を含み、典型的な可塑剤は、フタレート、アジペート、アゼレート等を含み、典型的な酸化防止剤は、CibaSpecialty Chemicalsから商標IRGANOX及びAOXとして販売されている抗酸化剤等のヒンダードポリフェノールを含む。典型的な商業用のUV安定剤は、商標TINUVINでCibaSpecialty Chemicalsから入手可能である。
【0046】
エラストマー−プライマー
本発明の更なる実施態様において、エラストマー−プライマーは、ハロゲン化ポリオレフィン系プライマーを含む。ハロゲン化ポリオレフィンは、任意の天然又は合成ハロゲン化ポリオレフィンエラストマーを含む。ハロゲン化ポリオレフィンエラストマーで用いられるハロゲンは、フッ素も使用され得るが、典型的には塩素又は臭素である。ハロゲンの混合物も、ハロゲン含有ポリオレフィンエラストマーが一種よりも多いハロゲン置換を有する場合に用いられ得る。ハロゲンの量は重要とは思われず、基礎となるエラストマー又はポリマーの性質に依存して約3重量パーセントくらい低くから70重量パーセントより多くまでの範囲であり得る。ハロゲン化ポリオレフィン及びそれらの調製は当業者によく知られている。
【0047】
代表的なハロゲン化ポリオレフィンは前述したポリクロロプレン、塩素化ポリクロロプレン、塩素化ポリブタジエン、ヘキサクロロペンタジエン、ブタジエン/ハロゲン化環状共役ジエン付加物、塩素化ブタジエンスチレンコポリマー、塩素化エチレンプロピレンコポリマー及びエチレン/プロピレン/非共役ジエンターポリマー、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、臭素化ポリ(2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン)、α−ハロアクリロ-ニトリルと2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンとのコポリマー、塩素化ポリ(ビニルクロリド)等、及びこのようなハロゲン含有エラストマーの混合物を含む、塩素化天然ゴム、塩素及び臭素含有合成ゴムを含む。したがって、天然エラストマー及び合成エラストマーの混合物を含む実質的に任意の天然エラストマー及び合成エラストマーの既知のハロゲン含有誘導体も本発明の実施に用いられ得る。
【0048】
本発明の更なる実施態様において、エラストマー−プライマー組成物は、好ましくはニトロソ化合物を含む。ニトロソ化合物は、それ自体がニトロソ化合物であり得、又はニトロソ化合物前駆体であり得る。本発明の架橋剤として有用なニトロソ化合物は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等、いかなる芳香族炭化水素であり得、非隣接環の炭素原子に直接結合された少なくとも2個のニトロソ基を含有する。とりわけ、このようなニトロソ化合物は、1から3個の芳香核を有し、縮合芳香核を含み、非隣接核の炭素原子に直接結合した2から6個のニトロソ基を有する芳香化合物として記載される。好ましい本ニトロソ化合物は、ジニトロソ芳香族化合物であり、特にメタ−又はパラ−ジニトロソベンゼン及びメタ−又はパラ−ジニトロソナフタレン等のジニトロソベンゼン及びジニトロソナフタレンである。芳香核の核水素原子は、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、アリールアミン、アリールニトロソ、アミノ、ハロゲン等の基で置換され得る。芳香核上でのこのような置換基の存在は、本発明におけるニトロソ化合物の活性にほとんど影響を及ぼさない。現在知られている限りでは、置換基の特性に関して制限はなく、このような置換基は本質的に有機又は無機であり得る。したがって、本明細書においてニトロソ化合物に言及する場合、特記しない限り、置換ニトロソ化合物及び非置換ニトロソ化合物の両方を含むと理解されるであろう。
【0049】
特に好ましいニトロソ化合物は、次式により特徴づけられ、:
(R)m−Ar−(NO)
2
式中、Arはフェニレン及びナフタレンからなる群から選択され、Rは、1から20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、アリールアミン、及びアルコキシ基、アミノ又はハロゲンからなる群から選択される1価の有機基であり、好ましくは1から8個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは、0、1、2、3又は4であり、好ましくは0である。
【0050】
本発明の実施における使用に適するニトロソ化合物の部分的な非限定の一覧は、m−ジニトロソベンゼン、p−ジニトロソベンゼン、m−ジニトロソナフタレン、p−ジニトロソナフタレン、2,5−ジニトロソ-p-シメン、2−メチル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メチル−5−クロロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メトキシ−1,3−ジニトロソベンゼン、5−クロロ−1,3−ジニトロソベンゼン、2−ベンジル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−シクロヘキシル−1,4−ジニトロソベンゼン及びこれらの組合わせを含む。特に好ましいニトロソ化合物は、p−ジニトロソベンゼン及びm−ジニトロソ-ベンゼンを含む。
【0051】
本発明の目的のためにニトロソ化合物架橋剤として機能し得るニトロソ化合物の前駆体は、高温で、典型的に約120℃から200℃の範囲で、典型的に酸化によりニトロソ化合物に変換され得る、本質的にいかなる化合物であり得る。最も一般的なニトロソ化合物の前駆体は、キノン化合物の誘導体である。本発明におけるニトロソ化合物の前駆体として有用であるキノン化合物誘導体の例は、キノンジオキシム、ジベンゾキノンジオキシム、1,2,4,5−テトラクロロベンゾキノン、2−メチル−1,4−ベンゾキノンジオキシム、1,4−ナフトキノンジオキシム、1,2−ナフトキノンジオキシム及び2,6−ナフトキノンジオキシムを含む。
【0052】
本発明の更なる実施態様において、エラストマー−プライマー組成物は、接着プロセス中に産生されるいかなる酸化合物副生成物も消費することを目的とする酸捕捉化合物を含んでもよい。酸捕捉化合物は、好ましくは、金属酸化物又は鉛含有化合物である。本発明の金属酸化物は、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、鉛、及びジルコニウムの酸化物;リサージ;鉛丹;ジルコニウム塩;及びこれらの組み合わせ等のいかなる既知の金属酸化物であり得る。様々な鉛含有化合物は、金属酸化物の代わり、又は金属酸化物に添加して酸捕捉化合物としても利用され得る。このような鉛含有化合物の例は、亜リン酸の多塩基鉛塩等の鉛塩、飽和及び不飽和有機ジカルボン酸、及び酸無水物を含む。鉛塩の具体例は、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛一水和物、三塩基性フマル酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及びこれらの組合わせを含む。鉛含有化合物の他の例は、塩基性炭酸鉛、酸化鉛、及び二酸化鉛を含む。環境上の理由により、金属酸化物は、本発明の目的のために鉛含有化合物よりも好まれる。
【0053】
本発明の更なる実施態様において、本発明のエラストマー−プライマー組成物は、マレイミド化合物架橋剤も含有し得る。マレイミド化合物架橋剤は、少なくとも2個のマレイミド基を本質的に含有するいかなる化合物でもあり得る。マレイミド基は、互いに結合され、又はアルキレン、シクロ−アルキレン、エポキシジメチレン、フェニレン(全3種の異性体)、2,6−ジメチレン−4−アルキルフェノール、若しくはスルホニル等の間にある2価の基に連結され、及び該2価の基により分離され得る。マレイミド基がフェニレン基に結合しているマレイミド化合物の例は、m−フェニレンビスマレイミドであり、E.I.DuPont de Nemours&Co.からHVA−2として入手可能である。
【0054】
本発明の更なる実施態様において、本発明の基材接着剤組成物及びエラストマー−プライマー組成物の両方は、所望の色彩及び粘度を得るために接着剤の分野の当業者が用いる量で、可塑剤、充填剤、顔料、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、補強剤等を含む他のよく知られた添加剤を含有してもよい。任意成分の例は、カーボンブラック、フュームドシリカ等のシリカ、アルミノケイ酸ナトリウム及び二酸化チタンを含む。
【実施例】
【0055】
以下の実施例において、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化天然ゴム、ジニトロソベンゼン、有機溶媒又は水、並びに任意選択的に一種以上の酸捕捉剤、ポリビスマレイミド化合物、塩素化パラフィン、エポキシノボラック、セレン及びカーボンブラックを含むエラストマー−プライマーが、米国特許第5268404号に従って調製された。これらは、実施例において、EP−1からEP−7と表記される。基材接着剤Aは、0.8から1.2のEEW/AHEW比(エポキシ換算重量対アミン水素換算重量)を有するアミン硬化エポキシ接着剤である。
【0056】
次いで、標準ゴム接着試験法ASTM D 429に沿って、接合試験片は、引張試験に供された。報告する結果の用語は、R=ゴムの破壊を示す;RC=ゴム/ゴム−プライマー界面での破壊を示す;CP=ゴム−プライマー/基材接着剤界面での破壊を示す;M=基材/基材接着剤界面での破壊を示す、を含む。2つの破壊モード間の中間、例えば50%R、50%RCは、ゴムの50%が試験片上に残留し、試験片の50%にゴムはないが基材接着剤が試験片上に残留する破壊モードを示すことから、混合した結果は破壊の表面積の割合を示す。強固な接合により、100%R又はほぼ100%Rの試験結果がもたらされる。
【0057】
実験1−EP−1及びエポキシSA−Aを使用したPV接合の評価
イソプロピルアルコール(IPA)で最初に拭かれ、いかなる遊離性の表面汚染物質も除去されている1”×5”×1/4”の加硫ゴム試験片の中心部に、EP−1がブラシで塗布された。EP−1は、2時間をわずかに超えて室温で乾燥された。E−コーティングされたスチール試験片(1”×5”)はマスクを外され、1”×1”の中心領域を露出させた。SA−Aは、スチール試験片の中心領域上に分注され、次いで、0.030”のステンレス鋼シムを使用して接合線の厚さを調整しつつ調製されたゴム試験片上に置かれた。組み合わせた試料は、加熱されたプレス機中に置かれ、≦300°Fに設定された温度でのみ上部から加熱された。プレス機中でシムを使用し、プレートギャップの調整を補助した。硬化時間は≦5分であった。
【0058】
次いで、試料を120℃のオーブン中に置き、120℃の引張試験用に調整した。試料を約30分間その温度で平衡化させた。試料がオーブンから取り出された直後に、ゴムは、90°から180°の引張角度で、加熱された試験片から引っ張られた。
SA−A接着剤の一部が接合線から絞り出され、4分で不完全に硬化され、3分及び2分では未硬化であることがわかった。
【0059】
実験2−SA−AによるPV RTM接合におけるEP−2、EP−3及びEP4の評価
試料は、前述のように調製され、ゴムに塗布されたエラストマー−プライマー及びe−コーティングされたスチール上に塗布されたSA−Aにより、300°Fで5分の硬化時間を使用して接合された。次いで、試料は、試験のため120℃に加熱された。
【0060】
実験3−PV RTM接合に関する250°Fの硬化温度評価
試料は、前述のようにe−コーティングされたスチール試験片上に塗布されたSA−Aを用いて調製され、250°Fで5分間接合され、次いで、室温及び120℃引張試験された。
【0061】
実験4−SA−AによるPV接合におけるEP−6の評価
試料は、前述のようにエラストマー−プライマーとしてEP−6を、及び基材接着剤としてSA−Aを使用して調製された。試料は、以下に記載した温度で硬化され、次いで室温で引張試験された。
【0062】
実験5−PV接合におけるSA−A膜厚評価
試料は、前述のように基材接着剤としてSA−Aを、及びエラストマー−プライマーとしてEP−1を使用し調製された。EP−1の目標乾燥膜厚は1−2ミルであった。組合わされた試験片は、プラテンプレス機中、5分の硬化時間300°Fのみでスチール側から加熱された。SA−A接合線の厚さを低減するため、圧力は様々なレベルで印加された。試料は室温で乾燥され、次いで90°の角度で引っ張られた。次いで、スチール試験片は断面に切断され、200倍の倍率でデジタル顕微鏡を使用して接着膜厚が測定された。
【0063】
実験6−PV接合における基材接着剤としてのポリウレタン化学の使用
試料は前述のように、エポキシ系SA−Aを2種のウレタン系接着剤SA−B及びSA−Cに置き換えて調製され、以下に記載するように試験された。ポリウレタン接着剤は、300°Fの加熱硬化前に、組み合わされた部品中に室温(RT−20℃+/−5℃)で様々な程度に硬化された。
【0064】
実験7−ゴムの炭素繊維複合基材への接合
複合試験片の光沢のある平滑面を傷つけ/砂で磨き、次いで1”×1”領域でマスクを外した。加硫ゴム試験片をIPAで拭き、EP−1の薄層(1−2ミルのDFT)を塗布して室温で乾燥させた。SA−Aは、複合試験片のマスク領域に塗布され、次いで0.030”のスチールシムを使用して接合線の厚さを調整しつつゴムに組合わされた。一個の試験片は、8分間≦300°Fで直ちに硬化された。他の試験片は、>24時間室温で硬化され、次いで8分間≦300°Fに加熱された。室温まで冷却した後、ゴムは引っ張られた。両方の試験片が100%Rの引き裂き破壊を生じ、ゴムと複合基材との間に優れた接着性を示した。
【0065】
実験8−環境試験
接合試験片の環境耐性は、ゴムA及びゴムB(市販の天然ゴム配合物)、並びにHC−130(内製の天然ゴム配合物)を含む3種の異なるゴム試料と共に試験された。リン酸亜鉛化スチール試験片は基材として用いられ、表示されるゴムプライマーが1.5ミルのDFTで塗布される前に、ゴムは、キシレン拭取で準備された。SA−A接着剤が塗布され、接合線が300°Fに達した時点で部品を5分間硬化させた。
【0066】
接合試験片は、最初の接着性、7日間吊下げ塩水噴霧、4時間加圧沸騰水、15分間250°Fプルホット(pullhot)オーブン浸漬、1週間0°F、1週間200°F加圧Plurasafe 800浸漬、及び1週間200°F加圧ASTM油#3浸漬に関して試験された。結果を以下に示す。