(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る送波器及びこれを用いたソナーの実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下では、まず、ソナーで行われる動揺補正について説明し、その後、本実施形態に係るソナー1の構成について説明する。
【0018】
図1は、船Sに搭載されたソナーの送受波器から送信される送信ビームの形状について模式的に示す図である。また、
図2は、ソナーで行われる動揺補正について説明するための模式図である。具体的には、
図2(A)は、動揺していない状態の船から送信される送信ビームを模式的に示す図である。また、
図2(B)は、動揺している状態の船から送信される送信ビームを模式的に示す図であって、動揺補正機能を有さないソナーの送信ビームを示す図である。また、
図2(C)は、動揺している状態の船から送信される送信ビームを模式的に示す図であって、動揺補正機能を有するソナーの送信ビームを示す図である。なお、
図1及び
図2では、船Sに搭載されているソナー及び送受波器の図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、ソナーでは、傘状の送信ビームが全方位へ向けて所定のチルト角θで送信される。よって、波が穏やかで船が動揺していない場合、すなわち、船(送受波器)の水平面が海面の水平面に対して傾いていない場合(
図2(A)参照)、送受波器から送信される送信ビームのチルト角は、全方位に亘って、海面の水平面に対して一様となる。
【0020】
動揺補正機能を有さないソナーの場合、
図2(B)に示すように、波が大きくなって船が動揺すると、海面の水平面に対する送信ビームの角度が変化してしまう。よって、動揺補正機能を有さないソナーでは、船が動揺することにより、水中に対する送信ビームの送信位置が変化してしまう。その結果、船が動揺する度に異なる水中位置を探知していることとなり、物標の位置を正確に把握することができない。
【0021】
これに対して、動揺補正機能を有するソナーでは、船の動揺による送信ビームのずれを補正するように送信ビームのチルト角が調整される(
図2(C)参照)。これにより、船の動揺に関わらず同じ水中位置を探知できるため、物標の位置を正確に把握することができる。
【0022】
[全体構成]
図3は、本発明の実施形態に係るソナー1の構成を示すブロック図である。ソナー1は、
図3に示すように、送受波器10(送波器)と、送受信装置2と、傾き検出部3と、信号処理部4と、操作・表示装置5とを備えている。このソナー1は、例えば、漁船などの船舶に備えられ、主に魚及び魚群等の物標の探知に用いられる。
【0023】
送受波器10は、電気信号を超音波に変換して、所定のタイミング毎に水中へ
図1に示すような傘状の超音波を送信するとともに、受信した超音波を電気信号に変換する。送受波器10は、所定の規則性で配列された複数の超音波振動子TD(送信素子)を有しており、各超音波振動子TDから送信される超音波の位相が互いに対して適宜、ずらされることにより、所定のチルト方向に向かって強度の高い超音波を送信する。送受波器10の具体的な構成については、詳しくは後述する。
【0024】
送受信装置2は、送受切替部6と、送信部7と、受信部8とを備えている。送受切替部6は、送信時には、送信部7から送受波器10に送信信号が送られる接続に切り替える。また、送受切替部6は、受信時には、送受波器10によって超音波から変換された電気信号が送受波器10から受信部8に送られる接続に切り替える。
【0025】
送信部7は、操作・表示装置5において設定された条件に基づいて生成した送信信号を、送受切替部6を介して送受波器10に対して出力する。また、送信部7は、傾き検出部3で検出された検出値(自船の傾き)に応じて、送受波器10に出力する送信信号の位相を調整する。送信部7の具体的な構成については、送受波器10の構成と併せて、詳しくは後述する。
【0026】
受信部8は、検波部と、A/D変換部とを備えている。検波部は、送受波器10が受信した信号を検波して増幅し、増幅した受信信号をA/D変換部に出力する。A/D変換部は、検波部から出力される受信信号をデジタル信号に変換した受信データを、信号処理部4に対して出力する。
【0027】
傾き検出部3は、水平面に対する自船の傾きを検出値として検出し、当該検出値を送信部7に通知する。
【0028】
信号処理部4は、受信部8から出力される受信データを処理し、物標の映像信号を生成する処理を行う。
【0029】
操作・表示装置5は、信号処理部4から出力された映像信号に応じた映像(本実施形態では、PPI画像)を表示画面に表示する。ユーザは、当該PPI画像を見て、自船を中心とした全方位における海中の状態(単体魚、魚群の有無等)を推測することができる。また、操作・表示装置5は、種々の入力キー等の入力手段を備えており、超音波の送受信、信号処理、又は映像表示に必要な種々の設定又は種々のパラメータ等を入力できるように構成されている。
【0030】
[送波ユニットの構成]
本実施形態に係るソナー1は、送波ユニット12を備えている。送波ユニット12は、送受波器10及び送信部7を有している。
【0031】
[送受波器の構成]
図4は、送受波器10の外形を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係るソナー1の送受波器10は、円筒状に構成された筐体部11と、筐体部11の外周面に沿って配列された複数の超音波振動子TDと、を備えたトランスデューサアレイとして設けられている。
【0032】
送受波器10では、筐体部11の円周に沿って配列されたN個の超音波振動子TDで構成された環状アレイARが、筐体部11の中心軸方向に沿ってM段、配列されている。すなわち、送受波器10は、(M×N)個の超音波振動子TDを有している。本実施形態の送受波器10は、例えば一例として、240個(M=12、N=20)の超音波振動子TDを有している。
【0033】
また、送受波器10では、複数の超音波振動子TDは、千鳥状に配列されている。具体的には、送受波器10では、環状アレイARを構成する複数の超音波振動子TDは、筐体部11の中心軸方向に隣接する環状アレイARを構成する各超音波振動子TDに対して、円周方向にずらして配置されている。
【0034】
なお、以下では説明の便宜上、
図4に示すように、第m段目の環状アレイを環状アレイAR
m(m=1,2,…,M)と表記する場合もある。また、
図4に示すように、第m段目の環状アレイAR
mにおいて、円周方向において基準となる超音波振動子から矢印A方向においてn番目(n=1,2,…,N)の超音波振動子を、超音波振動子TD
mn、と表記する場合もある。
【0035】
[送信部の構成]
図5は、送信部7の構成を、送受波器10における各環状アレイAR
m(m=1,2,…,M)と関連付けて示すブロック図である。送信部7は、複数の送信回路群TMを有している。複数の送信回路群TMのそれぞれは、各環状アレイAR
mに対応して設けられ、対応する環状アレイAR
mに超音波を送信させる。なお、以下では説明の便宜上、
図5に示すように、各環状アレイAR
m(m=1,2,…,M)に対応する各送信回路群を、送信回路群TM
m(m=1,2,…,M)と表記する場合もある。
【0036】
図6は、送波ユニット12の一部の構成を示す図であり、
図4におけるm段目の環状アレイAR
mを構成する複数の超音波振動子TD
mn(n=1,2,…,N)と、環状アレイAR
mに対応する送信回路群TM
mを構成する複数の送信回路tm
p(p=1,3,5,…)との対応関係を説明するための模式図である。
図6に示すように、送信回路群TM
mは、複数の超音波振動子TDよりも数が少ない(具体的には、複数の超音波振動子TDの数の半分の)、複数の送信回路tm
p(p=1,3,5,…)を備えている。なお、
図6では、m段目の環状アレイAR
mと、それに対応する送信回路群TM
mのみを図示しているが、他の段の環状アレイとそれに対応する送信回路群との関係についても、
図6の場合と同様である。
【0037】
各送信回路tm
p(p=1,3,5,…)は、直列に接続された送信信号生成部S
p及び1次側コイルL1を有している。送信信号生成部S
pで生成されたパルス波は、1次側コイルL1及び後述する2次側コイルを介して、各超音波振動子TD
mnに伝達される。複数の送信信号生成部S
pは、互いに異なる位相のパルス波を送信することができる。
【0038】
環状アレイAR
mを構成する各超音波振動子TD
mn(n=1,2,…,N)には、2次側コイルL2,L2a,L2bが接続されている。具体的には、
図6を参照して、超音波振動子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…には、2次側コイルL2が1つ、直列に接続されている。一方、超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…には、2次側コイルL2a,L2bが、直列に接続されている。超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…は、第1送信素子として設けられ、超音波振動子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…は、第2送信素子として設けられている。
【0039】
上述した複数の1次側コイルL1及び複数の2次側コイルL2,L2a,L2bは、送信信号生成部S
pで生成されたパルス波の電圧を所定の比率で各超音波振動子TD
mnに分配する回路部15として設けられている。例えば一例として、回路部15では、
図6を参照して、或る送信信号生成部(例えばS
1)で生成されたパルス波の電圧の2分の1が、1次側コイルL1及び2次側コイルL2を介して超音波振動子TD
m1に分配される。また、電圧の4分の1が、1次側コイルL1及び2次側コイルL2bを介して超音波振動子TD
mNに分配される。また、電圧の4分の1が、1次側コイルL1及び2次側コイルL2aを介して超音波振動子TD
m2に分配される。回路部15では、例えば、2次側コイルL2の巻き数は、1次側コイルL1の巻き数の2分の1となっており、2次側コイルL2a,L2bの巻き数は、1次側コイルL1の巻き数の4分の1となっている。これにより、各超音波振動子TD
mnから送信されるパルス波の電圧を同じにすることができる。なお、送信信号生成部S
1以外の送信信号生成部で生成されるパルス波の電圧の分配については、上述した場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0040】
[各超音波振動子から送信されるパルス波の位相及び振幅について]
送信信号生成部S
p及び超音波振動子TD
mnを、
図6に示すように回路部15で接続することで、各超音波振動子TD
mnから送信されるパルス波の位相は、以下に示すようになる。具体的には、第2送信素子としての超音波振動子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…から送信されるパルス波の位相は、これらに対応して設けられる送信信号生成部S
1,S
3,S
5,…で生成されるパルス波の位相と同じ位相になる。
【0041】
一方、第1送信素子としての超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…から送信されるパルス波の位相は、以下のようになる。具体的には、超音波振動子TD
m2から送信されるパルス波の位相は、送信信号生成部S
1で生成されるパルス波の位相と、送信信号生成部S
3で生成されるパルス波の位相との間の値になる。なお、超音波振動子TD
m4,TD
m6,…から送信されるパルス波の位相については、上述した場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0042】
また、本実施形態では、周方向に隣接する送信信号生成部(S
1及びS
3、S
3及びS
5、…)から送信されるパルス波の位相差は、比較的小さい。よって、超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…から送信されるパルス波の振幅は、各超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…に隣接する2つの超音波振動子から送信されるパルス波の振幅とほぼ同じ値になる。
【0043】
[ソナーの基本動作]
本実施形態に係るソナー1では、送受波器10から所定のタイミング毎に
図1に示すような傘状の超音波が送信されるとともに、送信された超音波の反射波が送受波器によって受信される。そして、受信された反射波から得られるエコーデータが信号処理部4によって適宜処理されて映像信号が生成され、当該映像信号に基づくPPI画面が、操作・表示装置5に表示される。
【0044】
[船が動揺した場合におけるソナーの動作]
図7は、本実施形態に係るソナー1において行われる動揺補正について説明するための模式図であり、(A)は、船が動揺していない状態を示す図、(B)は、船が動揺して動揺補正が行われた状態を示す図、である。
【0045】
本実施形態に係るソナー1では、船が動揺していない状態では(
図7(A)参照)、傾き検出部3が船の傾きを検出しない。この場合、船S(送受波器10)の水平面に対するチルト角は、全方位に亘って、海面の水平面に対して一様となる。
【0046】
一方、船Sが動揺した場合、検出部3が船の傾き角度を検出し、当該検出値を送信部7に通知する。送信部7は、当該検出値を受けて、船の動揺による送信ビームのずれを補正するように(
図7(B)参照)、各送信信号生成部S
pの振幅及び位相を調整する。これにより、
図7(B)に示すように、船の動揺に関わらず、水中に対する送信ビームの送信方向を所望の方向に維持することができる。
【0047】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る送波ユニット12では、少なくとも2つの送信信号生成部S
pのそれぞれで生成された送信信号が合成されて、少なくとも1つの超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…(第1送信素子)に出力される。そうすると、第1送信素子としての各超音波振動子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…に1対1で対応する、いわば第1送信素子専用の送信信号生成部、を設ける必要がなくなる。これにより、送信信号生成部S
1,S
3,S
5,…の数を、超音波振動子の数TD
m1,TD
m2,TD
m3,…の数よりも少なくすることができる。そして、各第1送信素子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…から送信される送信波は、上記2つの送信信号生成部のそれぞれで生成された送信信号の合成波である。これにより、各第1送信素子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…から送信される超音波の位相を正確に制御できる。
【0048】
従って、送波ユニット12では、送信信号生成部の数量の増加を抑制しつつ、送信ビームの向きを正確に制御できる。
【0049】
また、送波ユニット12では、
図6を参照して、各第2送信素子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…から送信されるパルス波は、各送信信号生成部S
1,S
3,S
5,…で生成された位相のパルス波のみで構成される。これにより、各第2送信素子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…から送信されるパルス波の位相を、容易に制御することができる。
【0050】
また、送波ユニット12では、
図6を参照して、所定方向(円周方向)に隣接する2つの第2送信素子(TD
m1及びTD
m3、TD
m3及びTD
m5、…)に対応して設けられた2つの送信信号生成部(S
1及びS
3、S
3及びS
5、…)で生成されたパルス波が、隣接する2つの第2送信素子の間に配置された各第1送信素子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…に分配されている。
【0051】
本実施形態では、第2送信素子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…から送信されるパルス波の位相は、円周方向に沿って徐々にずれている。よって、円周方向に隣接する2つの第2送信素子(TD
m1及びTD
m3、TD
m3及びTD
m5、…)から送信されるパルス波の位相のずれは、比較的小さい。よって、このように比較的位相のずれが小さい2つのパルス波を生成する2つの送信信号生成部(S
1及びS
3、S
3及びS
5、…)から生成されるパルス波を各第1送信素子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…に分配して合成することにより、各第1送信素子から送信されるパルス波の振幅を、隣接する第2送信素子の振幅と同程度にできる。その結果、送受波器10から送信される送信ビームの方位を制御しやすくなる。
【0052】
また、送波ユニット12では、第2送信素子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…を円周方向に沿って配列するとともに、各第1送信素子TD
m2,TD
m4,TD
m6,…を、隣接する2つの第2送信素子TD
m1,TD
m3,TD
m5,…の間に配置している。これにより、環状アレイARにおいて、複数の超音波振動子TDに対する送信素子の数を少なくしつつ、各送信素子から送信されるパルス波の位相及び振幅を容易に制御できる。
【0053】
また、送波ユニット12では、環状アレイARの中心軸に沿って配列された複数の環状アレイAR
m(m=1,2,…M)によって形成された円筒状の送受波器10において、複数の超音波振動子TDに対する送信素子の数を少なくしつつ、各送信素子から送信されるパルス波の位相及び振幅を容易に制御できる。
【0054】
また、送波ユニット12では、回路部15を、複数のコイルL1,L2,L2a,L2bによって構成している。これにより、各送信信号生成部S
pで生成されたパルス波を、各送信素子に適切に分配することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るソナー1では、船Sの水平面(送受波器10の水平面)が海面の水平面に対して傾いた場合(船が動揺した場合)であっても、その動揺を正確に補正することができる。従って、船の動揺に関わらず、海中の同じ位置に、正確に送信ビームを送信することができる。
【0056】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0057】
(1)上記実施形態では、各超音波振動子TD
mnから送信されるパルス波の電圧比が同じになるように回路部15を構成したが、これに限らない。具体的には、回路部を構成する第1コイル及び第2コイルの巻き数を適宜、調整することにより、各超音波振動子TD
mnから送信されるパルス波の電圧比を互いに異なる値にすることもできる。
【0058】
(2)上記実施形態では、本発明の適用例として、円筒状の送受波器を例に挙げて説明したが、これに限らず、本発明は、環状の送受波器、平面型の送波器、又はリニア型の送受波器に対しても適用することができる。
【0059】
(3)
図8は、変形例に係る送波ユニット12aの構成を示す図であり、
図6に対応させて示す図である。本変形例では、
図8に示すように、超音波振動子TD
m1,TD
m4,…が第2送信素子として設けられ、超音波振動子TD
m2,TD
m3,TD
m5,…,TD
mNが第1送信素子として設けられている。本変形例によれば、
図8に示すように、上記実施形態の場合よりも、送信信号生成部の数を少なくすることができる。
【0060】
(4)
図9は、変形例に係る送波ユニット12bの構成を示す図であり、
図6に対応させて示す図である。
図9では、2つの送信回路のそれぞれで生成されたパルス波が、回路部15bによって、3つの超音波振動子TD
m1,TD
m2,TD
m3のそれぞれに分配されるとともに、3つの超音波振動子TD
m1,TD
m2,TD
m3は、それぞれ、2つの送信回路のそれぞれで生成された送信波の合成波を送信する。すなわち、本変形例における複数の超音波振動子TD
m1,TD
m2,TD
m3,…には、第2送信素子が含まれず、複数の第1送信素子のみが含まれている。このような構成であっても、送信信号生成部の数を少なくしつつ、第1送信素子としての超音波振動子TD
m1,TD
m2,TD
m3,…から送信される超音波の位相を正確に制御できる。
【0061】
(5)上記実施形態では、送受波器10の超音波振動子TD
mnを千鳥状に配列したが、この限りでなく、超音波振動子TD
mnを、円周方向及び軸方向に沿って、すなわち格子状に配列してもよい。
【0062】
(6)上記実施形態では、本発明の適用例として、ソナーを挙げて説明したが、これに限らず、送波ユニットを備えたその他の装置、例えばレーダ等に適用することもできる。この場合、レーダは、送信波として電磁波を取り扱う。
【0063】
[実施例]
本実施例では、上記実施形態で説明した送波ユニット12によって送信される送信ビームのシミュレーションを行った。
図10は、上記実施形態で説明した送波ユニット12によって送信される送信ビームのシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、
図10(A)は、送波ユニット12によって所定方向に向かって送信される送信ビームの方位毎の強度を示すシミュレーション結果を示す画像である。また、
図10(B)は、ロール角度について説明するための模式図であって、ソナーが搭載された船を後方から視た図である。以下では、本実施例によるシミュレーション結果(
図10(A))と、3つの比較例によるシミュレーション結果(
図11(B)、
図12(B)、及び
図13(B))とを比較した。各図では、送信ビームの強度を、ハッチングの濃さに対応させて示している。具体的には、送信ビームの強度が高い領域を濃いハッチングで示し、送信ビームの強度が低い領域を薄いハッチング(またはハッチングなし)で示している。
【0064】
各図におけるシミュレーション結果は、ソナーが搭載されている船が、後方から視て右方向に15度傾いている場合(
図10(B)参照)において、送信ビームが水平面に沿うように送信された場合における、送信ビームの強度特性を示している。但し、詳しくは後述するが、
図11(B)(比較例1)に示すシミュレーション結果では、船の動揺補正が行われていない。すなわち、
図11(B)は、
図10(B)のように傾いた状態の船の水平面に沿うように送信ビームが送信された場合におけるシミュレーション結果を示している。また、本実施例及び比較例の送波ユニットの送受波器の構成は、
図4に示す構成とした(垂直方向に12素子×円周方向に20素子=240素子の千鳥配列)。また、円周方向において隣接する超音波振動子同士の間隔を0.8λ、垂直方向において隣接する超音波振動子同士の間隔を0.5λ、としてシミュレーションを行った。なお、サイドローブを抑圧するため、垂直方向に−30dBのチェビシェフウェイトを印加している。
【0065】
図11は、比較例1を説明するための図であって、動揺補正機能を有さない送波ユニットによるシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、
図11(A)は、比較例1の送波ユニットの構成を示す模式図であり、
図11(B)は、
図11(A)に示す送波ユニットから送信される送信ビームのシミュレーション結果を示す図である。
図11(A)に示すように、比較例1では、複数の超音波振動子TD
Xのそれぞれが、1つの送信信号生成部tm
Xによって制御されている。
【0066】
図12は、比較例2を説明するための図であって、上述した実施形態とは異なる動揺補正機能を有する送波ユニットによるシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、
図12(A)は、比較例2の送波ユニットの構成を示す模式図であり、
図12(B)は、
図12(A)に示す送波ユニットから送信される送信ビームのシミュレーション結果を示す図である。
図12(A)に示すように、比較例2では、複数の超音波振動子TD
Yのそれぞれが、それぞれに対応する送信回路tm
Yによって、個別に制御されている。すなわち、比較例2では、1つの超音波振動子TD
Yが、対応する1つの送信回路tm
Yによって制御されている。
【0067】
図13は、比較例3を説明するための図であって、比較例2の場合と同様、上述した実施形態とは異なる動揺補正機能を有する送波ユニットによるシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、
図13(A)は、比較例3の送波ユニットの構成を示す模式図であり、
図13(B)は、
図13(A)に示す送波ユニットから送信される送信ビームのシミュレーション結果を示す図である。
図13(A)に示すように、比較例3では、複数の超音波振動子TD
Zを構成する複数の超音波振動子対のそれぞれが、それぞれに対応する送信回路tm
Zによって制御されている。すなわち、比較例3では、2つの超音波振動子TD
Zが、1つの送信回路tm
Zによって制御されている。
【0068】
比較例1のシミュレーション結果(
図11(B)参照)は、送信ビームの方位が水平方向(垂直方位が0度の方向)に対して±15度程度の範囲で変動しており、水中に対する送信ビームの送信方向がずれる結果となっている。また、比較例3のシミュレーション結果(
図13(B)参照)は、送信ビームの方位は、水平方向に対して概ね0度程度となっているものの、送信ビームが水平方向に対してやや広がる結果となっており、また水平方向以外にも、サイドローブに起因すると考えられる比較的強度の高い(ハッチングの濃い)ビームが送信される結果となっている。
【0069】
これらに対して、本実施例のシミュレーション結果(
図10(A)参照)は、船の動揺によらず、送信ビームの送信方向が、水平方位における全方位(0度〜360度)に亘って0度付近(水平方向付近)となっている。また、水平方向(垂直方位が0度の方向)に対して離れた角度方向には、強度の強いビームは送信されていない。このシミュレーション結果は、複数の超音波振動子のそれぞれを個別に制御している比較例2(
図12(B)参照)のシミュレーション結果と概ね同じ結果となっている。
【0070】
以上のように、本実施例及び比較例によって、上記実施形態に係る送波ユニットの構成が、送信信号生成部の数を少なくでき且つ送信ビームを所望の方向に向けるのに適した構成であることが確認できた。