(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281963
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置および非接触電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20180208BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20180208BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/70
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-503894(P2016-503894)
(86)(22)【出願日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2014054309
(87)【国際公開番号】WO2015125295
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年2月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年8月22日 平成25年度電気関係学会東北支部連合大会プログラム 平成25年度電気関係学会東北支部連合大会実行委員会発行 第239ページに発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月3日 第37回日本磁気学会学術講演概要集2013 公益社団法人日本磁気学会発行 第63ページに発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年1月1日 JOURNAL OF THE MAGNETICS SOCIETY OF JAPAN Vol.38 No.1(通巻269号)公益社団法人日本磁気学会発行 第11−14ページに発表
(73)【特許権者】
【識別番号】598084390
【氏名又は名称】光電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】田倉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文博
(72)【発明者】
【氏名】松木 英敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠邦
(72)【発明者】
【氏名】湯山 昭房
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏明
【審査官】
永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−247822(JP,A)
【文献】
特開2013−207897(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/046453(WO,A1)
【文献】
特開2012−175806(JP,A)
【文献】
特開2013−157944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導を用いて、対向して配置された1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記1次側コイルと前記2次側コイルは対向して配置され、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルであり、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルであり、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルは、それぞれ2個の端子を有していて、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ個別に電源が接続され、当該2個のスパイラルコイルに流す電流を個別に調整可能としたことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを重ねて配置した非接触電力伝送装置であり、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルであり、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルであり、
前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置されており、
前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の1次側コイルのいずれかを電源に接続するように、スイッチが切り替えられるようにして、前記2次側コイルの出力が最大に設定されたことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記複数の1次側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されたことを特徴とする請求項2記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記複数の1次側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定されたことを特徴とする請求項2記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記1次側コイル、2次側コイルに、対向する面と反対側に、軟磁性体の板が配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記軟磁性体の板は、Mn−ZnフェライトもしくはNi-Cu-Znフェライトであることを特徴とする請求項5記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
電磁誘導を用いて対向して配置された1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送方法において、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルとし、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルとし、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ2個の端子を設け、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ個別に電源を接続し、当該2個のスパイラルコイルに流す電流が個別に調整することを特徴とする非接触電力伝送方法。
【請求項8】
隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを重ねて配置する非接触電力伝送方法であり、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルとし、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルとし、
前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置し、
前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の1次側コイルのいずれかを電源に接続するように、スイッチが切り替えられるようにして、前記2次側コイルの出力を最大に設定することを特徴とする非接触電力伝送方法。
【請求項9】
前記複数の1次側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されたことを特徴とする請求項8記載の非接触電力伝送方法。
【請求項10】
前記複数の1次側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定されたことを特徴とする請求項8記載の非接触電力伝送方法。
【請求項11】
前記1次側コイル、2次側コイルに、対向する面と反対側に、軟磁性体の板が配置されることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項記載の非接触電力伝送方法。
【請求項12】
前記軟磁性体の板は、Mn−ZnフェライトもしくはNi-Cu-Znフェライトであることを特徴とする請求項11記載の非接触電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8の字コイルを用いて、非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送装置および非接触電力伝送方法に関する。
【0002】
従来の非接触電力伝送装置は、スパイラルコイルを2個対向させて、一方のスパイラルコイルに電力を投入して電力伝送を行なっていた。
【0003】
特許文献1には、非接触給電装置に関して、記載されており、スパイラルコイルの形状とした、電力伝送用の給電コイルと、受電コイルが開示されている。ここで、前記電力伝送用の給電コイルと、受電コイルの内側に、信号伝送用の送信コイル、および信号伝送用の受信コイルが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の、非接触給電装置では、電力伝送用の給電コイルと、受電コイルに関して、給電コイル自身、および受電コイル自身が、発生するノイズに関しては、ノイズ軽減の対策は、取られていなかった。
【0006】
また、特許文献1では、電力伝送用の給電コイルと、受電コイルの内側に、信号伝送用の送信コイル、および信号伝送用の受信コイルが配置され、前記信号伝送用の送信コイル、および信号伝送用の受信コイルに関しては、いずれも8の字コイル形状であって、ノイズ対策が行われているが、電力伝送用の給電コイルと、受電コイル自身が、発生するノイズについては、ノイズ減少させる対策については、全く開示されてない。
【0007】
本発明の課題は、電力伝送用の1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺することができ、また、1次側コイル、2次側コイルからの漏れ磁束を低減することができ、かつ、1次側コイルの位置ずれにも対応することができ、電力伝送の効率を最良にすることができる非接触電力伝送装置および非接触電力伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項
1の非接触電力伝送装置は、電磁誘導を用いて、
対向して配置された1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記1次側コイルと前記2次側コイルは対向して配置され、
前記1次側コイルは、
それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルであり、
前記2次側コイルは、
それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルであり、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルは、それぞれ2個の端子を有していて、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ個別に電源が接続され、当該2個のスパイラルコイルに流す電流を個別に調整可能としたことを特徴とする非接触電力伝送装置である。ここで、半円形部分の形状は、ほぼ、円の半分の形状が、一般に使用されるが、かならずしも、この形状には、限られない。このように、複数の電源が、
1次側コイルに接続される場合には、
1次側コイルの隣接した複数のコイル、
2個のスパイラルコイルに流す電流を、
個別に調整することが可能となり、伝送効率の良い非接触電力伝送装置を提供できる。
【0013】
本発明の請求項
2の非接触電力伝送装置は、
隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを重ねて配置した非接触電力伝送装置であり、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルであり、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルであり、
前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置されており、
前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の
1次側コイルのいずれか
を電源に接続するように、スイッチが切り替えられるようにして、前記2次側コイルの出力が最大に設定されたことを特徴とす
る非接触電力伝送装置である。
【0014】
本発明の請求項
3の非接触電力伝送装置は、前記複数の
1次
側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されたことを特徴とする請求項
2記載の非接触電力伝送装置である。例えば、複数の
1次側コイルが、3個の場合は、お互いの角度は、120度となる。
【0015】
本発明の請求項
4の非接触電力伝送装置は、前記複数の
1次
側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定されたことを特徴とする請求項
2記載の非接触電力伝送装置である。このように、複数の
1次側コイルをランダムな角度に配置する場合は、より集中させて、複数の
1次側コイルを配置することが可能となり、
2次側コイルの出力を、更に高めることができる。
【0016】
本発明の請求項
5の非接触電力伝送装置は、前記
1次側コイル、
2次
側コイルに、対向する面と反対側に、軟磁性体の板が配置されることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれか1項記載の非接触電力伝送装置である。
【0017】
本発明の請求項
6の非接触電力伝送装置は、前記軟磁性体の板は、Mn−ZnフェライトもしくはNi-Cu-Znフェライトであることを特徴とする請求項
5記載の非接触電力伝送装置である。ここで、Ni−Cu−Znフェライトは、Mn−Znフェライトより、絶縁破壊に対する性能が優れている。
【0020】
本発明の請求項
7の非接触電力伝送方法は、電磁誘導を用いて
対向して配置された1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送方法において、
前記1次側コイルは、
それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルとし、
前記2次側コイルは、
それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルとし、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ2個の端子を設け、
前記1次側コイルの前記2個のスパイラルコイルには、それぞれ個別に電源を接続し、当該2個のスパイラルコイルに流す電流が個別に調整することを特徴とする非接触電力伝送方法である。ここで、半円形部分の形状は、ほぼ、円の半分の形状が、一般に使用されるが、かならずしも、この形状には、限られない。このように、複数の電源が、
1次側コイルに接続される場合には、
1次側コイルの隣接した複数のコイル、
2個のスパイラルコイルに流す電流を、
個別に調整することが可能となり、伝送効率の良い非接触電力伝送方法を提供できる。
【0023】
本発明の請求項
8の非接触電力伝送方法は、
隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを重ねて配置する非接触電力伝送方法であり、
前記1次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ね、電流が流れたときに異なる向きの磁束を発生するように配置して構成されたコイルとし、
前記2次側コイルは、それぞれ一つの線を巻いて形成した半円形部分と直線部分とが合成された形状の2個の独立したスパイラルコイルを、外形が円形となるようにそれぞれの直線部分を重ねて配置して構成されたコイルとし、
前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置
し、
前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の
1次側コイルのいずれか
を電源に接続するように、スイッチが切り替えられるようにして、前記2次側コイルの出力を最大に設定
することを特徴とす
る非接触電力伝送方法である。
【0024】
本発明の請求項
9の非接触電力伝送方法は、前記複数の
1次
側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されたことを特徴とする請求項
8記載の非接触電力伝送方法である。
例えば、複数の1次側コイルが、3個の場合は、お互いの角度は、120度となる。
【0025】
本発明の請求項
10の非接触電力伝送方法は、前記複数の
1次
側コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定されたことを特徴とする請求項
8記載の非接触電力伝送方法である。このように、複数の
1次側コイルをランダムな角度に配置する場合は、より集中させて、複数の
1次側コイルを配置することが可能となり、
2次側コイルの出力を、更に高めることができる。
【0026】
本発明の請求項
11の非接触電力伝送方法は、前記
1次側コイル、
2次
側コイルに、対向する面と反対側に、軟磁性体の板が配置されることを特徴とする請求項
7ないし
10のいずれか1項記載の非接触電力伝送方法である。
【0027】
本発明の請求項
12の非接触電力伝送方法は、前記軟磁性体の板は、Mn−ZnフェライトもしくはNi-Cu-Znフェライトであることを特徴とする請求項
11記載の非接触電力伝送方法である。ここで、Ni−Cu−Znフェライトは、Mn−Znフェライトより、絶縁破壊に対する性能が優れている。
【発明の効果】
【0028】
請求項
1の非接触電力伝送装置によれば、
1次側コイル、
2次側コイルを用いて効率良く電力伝送を行い、更に、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺し、
更に、
複数の電源が、1次側コイルに接続されて、1次側コイルの隣接した複数のコイル、2個のスパイラルコイルに流す電流を、個別に調整することが可能となり、伝送効率の良い非接触電力伝送装置を提供できる。
【0030】
請求項
2、3、4の非接触電力伝送装置によれば、複数の
1次側コイルを切り替えることにより、
1次側コイル、
2次側コイルの相対位置を最適にすることができ、電力の伝送効率を最適とする非接触電力伝送装置を提供できる。
【0031】
請求項
5、6の非接触電力伝送装置によれば、軟磁性体を使用して、漏れ磁束を低減することができる非接触電力伝送装置を提供できる。
【0032】
請求項
7の非接触電力伝送方法によれば、
1次側コイル、
2次側コイルを用いて効率良く電力伝送を行い、更に、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺し、
更に、複数の電源が、1次側コイルに接続されて、1次側コイルの隣接した複数のコイル、2個のスパイラルコイルに流す電流を、個別に調整することが可能となり、伝送効率の良い、近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法を提供できる。
【0034】
請求項
8、9、10の非接触電力伝送方法によれば、複数の
1次側コイルを切り替えることにより、
1次側コイル、
2次側コイルの相対位置を最適にすることができ、電力の伝送効率を最適とする近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法を提供できる。
【0035】
請求項
11,12の非接触電力伝送方法によれば、軟磁性体を使用して、漏れ磁束を低減することができる
近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法を提供できる。
【0036】
本発明によれば、電力伝送用の1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺することができ、また、1次側コイル、2次側コイルからの漏れ磁束を低減することができ、かつ、1次側コイルの位置ずれにも対応することができ、
更に、複数の電源が、1次側コイルに接続されて、1次側コイルの隣接した複数のコイル、2個のスパイラルコイルに流す電流を、個別に調整することが可能となり、電力伝送の効率を最良にすることができる非接触電力伝送装置および
非接触電力伝送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】8の字型コイルの平面図であり、
図1(a)は、スパイラルコイルの平面図、
図1(b)は、8の字型コイルの平面図である。
【
図2】8の字型コイルを2枚重ねた非接触電力伝送装置の図。
【
図3】8の字型コイルを2枚重ね、裏側に磁性体の板を配置した非接触電力伝送装置の図。
【
図4】実施例1の試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図。
【
図5】実施例2の試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図。
【
図6】送信コイル(一次コイルを3個、重ねた構成)と、受信コイル(二次コイル、1個)の図である。
図6(a)は、送信コイル(一次コイル)の構造であり、8の字型コイル3個を、120度の角度で、重ねて配置した図、
図6(b)は、受信コイル(二次コイル)の構造であり、8のコイルであって、
図6(a)の送信コイルでの、1個の8の字コイルと、同一寸法、形状であり、
図6(c)は、送信コイルを重ねる前の状態と、個々の8の字コイルと、回路との接続の図、
図6(d)は、送信コイルを重ねた後の状態と、受信コイルとの位置関係を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、磁性体板を一次側コイルのみに配置した場合、
図8(b)は、磁性体板を二次側コイルのみに配置した場合、
図8(c)は、磁性体板を一次側コイル、および二次側コイルに配置した場合の、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図。
【
図9】磁性体板を一次側コイル、および二次側コイルに配置した条件にて、コイル間距離を変化した図であり、
図9(a)は、コイル間距離が20mmの場合
図9(b)は、コイル間距離が40mmの場合、
図9(c)は、コイル間距離が80mmの場合の、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図。
【
図10】一次コイルと二次コイルのコイル間距離と、電力伝送効率との関係を示す図。
【0038】
1 8の字型のコイル
2 8の字一次側コイル
3 8の字二次側コイル
4、41 軟磁性体の板
11、12 スパイラルコイル
11a スパイラルコイルの半円形部分
11b、11c、11d スパイラルコイルの直線部分
5 第1の8の字一次側コイル
6 第2の8の字一次側コイル
7 第3の8の字一次側コイル
8 8の字二次側コイル
20 重ねられた一次側コイル
101,102,103 切り替えスイッチ
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置は、隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺するように重ねて配置したことを特徴とする非接触電力伝送装置。である。
【0040】
また、本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置は、電磁誘導を用いて1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送装置において、前記1次側コイルは、異なる向きの磁束を発生する隣接した複数のコイルから構成され、前記2次側コイルは、異なる向きの磁束を発生する隣接した複数のコイルから構成され、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺するように重ねて配置したことを特徴とする非接触電力伝送装置。である
【0041】
ここで、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズとは、1次側コイル、2次側コイルの発生する磁界が、他の部材(金属や、磁性体など)と干渉、あるいは反射して発生するノイズであり、外部からのノイズとは、気象上での雷サージ、あるいは、電力線からのノイズ、あるいは他の電子機器が発生するノイズである。更に、1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズとは、一次コイルに、電源から電流が供給された際、その状態で、主として電源系から起因して発生するノイズであり、また前記一次側コイルから電力を受ける2次側コイルからも、同じく発生するノイズである。
【0042】
ここで、前記1次側コイルは、2枚のスパイラルコイルを差動に接続した平面8の字型コイルであり、前記2次側コイルは、2枚のスパイラルコイルを差動に接続した平面8の字型コイルであり、前記スパイラルコイルの形状は、半円形部分と直線部分とが合成された形状であり、2枚のスパイラルコイルの直線部分が重ねられて平面8の字型コイルが形成されている。
【0043】
前記一次側コイルの隣接した複数のコイルには、1個の電源が接続されるか、あるいは
複数の電源が接続される。複数の電源が、一次コイルに接続される場合には、一次側コイルの隣接した複数のコイルに流す電流を、個別に調整することが可能となり、さらに、伝送効率の良い非接触電力伝送装置を提供できる。
【0044】
また、本発明の実施の形態による非接触電力伝送装置は前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置されており、前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の一次側コイルのいずれかを、前記電源に接続するように、スイッチが切り替えられるようにして、前記2次側コイルの出力が最大に設定されたことを特徴とする。
【0045】
前記複数の一次コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されるか、あるいは前記複数の一次コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定される。複数の一次コイルをランダムな角度に配置する場合は、より集中させて、複数の一次コイルを配置することが可能となり、2次コイルの出力を、更に高めることができる。
【0046】
前記一次コイル、二次コイルに、対向する面と反対側に、軟磁性体の板が配置され、前記軟磁性体の板は、Mn−ZnフェライトもしくはNi-Cu-Znフェライトが使用されるが、これに限られない。
【0047】
本発明の実施の形態による非接触電力伝送方法は、隣接した複数のコイルから構成された1次側コイルと、隣接した複数のコイルから構成された2次側コイルとを、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺するように重ねて配置することを特徴とする近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法である。
【0048】
また、本発明の実施の形態による非接触電力伝送方法は電磁誘導を用いて1次側コイルから2次側コイルに非接触にて電力を伝送する非接触電力伝送方法において、前記1次側コイルを、異なる向きの磁束を発生する隣接した複数のコイルから構成し、前記2次側コイルを、異なる向きの磁束を発生する隣接した複数のコイルから構成し、電力伝送時の漏洩電磁界からのノイズ、および、外部からのノイズ、更に、前記1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺するように重ねて配置することを特徴とする近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法である。
【0049】
ここで、前記1次側コイルを、2枚のスパイラルコイルを差動に接続した平面8の字型コイルとし、前記2次側コイルを、2枚のスパイラルコイルを差動に接続した平面8の字型コイルとし、前記スパイラルコイルの形状は、半円形部分と直線部分とが合成された形状であり、2枚のスパイラルコイルの直線部分を重ねて、平面8の字型コイルを形成する。
【0050】
また、本発明の実施の形態による非接触電力伝送方法は、前記半円形部分と直線部分とが合成された形状の1次側コイルが前記直線部分に関して、回転軸方向に角度をずらすように、複数個配置されており、前記複数の1次側コイルと前記2次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、前記複数の一次側コイルのいずれかを、前記電源に接続するように、スイッチを切り替えて、前記2次側コイルの出力を最大に設定することを特徴とする請求項11ないし15のいずれか1項記載の近傍電磁界を用いる非接触電力伝送方法である。
【0051】
ここで、前記複数の一次コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、等しい角度に設定されるか、あるいは、前記複数の一次コイルの、隣り合う回転軸方向の角度は、ランダムな角度に設定されたことを特徴とする。
【0052】
ここで、近傍電磁界について説明する。放射源の近傍で、波動のインピーダンスが、自由空間インピーダンスと大きく異なる領域を、近傍電磁界と呼ぶ。電磁界の波長をλとし、λ/(2π)までを、近傍電磁界とし、それよりも遠方を、遠方電磁界と呼ぶ、例えば、周波数は、100kHzの場合、波長は、およそ3kmであり、λ/(2π)は、およそ0.5kmとなる。この場合は、0.5km以下の範囲が、100kHzでの近傍電磁界の範囲である。
【0053】
(実施例1)
図1(b)は、実施例1の8の字コイルの平面図である。8の字型のコイル1は、 スパイラルコイル11,12が差動接続されている。
図1(a)は、スパイラルコイル11の図である。前記8の字型コイルを、一次側用と、二次側用と構成して、これらを対向させて非接触電力伝送装置を構成する。(
図2)
【0054】
・8の字コイルの構成は、以下のごとくである。
(1)Dの字型に巻いた2枚のコイルを重ね、差動接続して構成
(2)Dの字型コイルのサイズ(
図1)
外径:A=46.5mm、B=75mm
内径:C=20.5mm、D=52mm
巻数:10t
(3)重ねて8の字にした場合のサイズ(
図2)
外径:A=80mm、B=75mm
内径:C=55mm、D=52mm
巻数:10t
(4)コイル特性(L,r)
Dの字型 L=6.6μH、r=64mΩ
8の字 L=15μH、r=128mΩ
【0055】
・検討の結果
<例1>
(1)8の字コイル2枚を対向するよう配置
※向きをそろえる
(2)コイル間距離(Gap)を10mmとし、電力伝送を実施
測定条件
共振コンデンサあり(43nF、直列接続)
負荷:抵抗10Ω
駆動周波数f=200kHz、正弦波入力
パワーメータにて計測
(3)結果
【表1】
効率η=84%の出力を確認
参考:スパイラルコイル(従来型)の効率→91%
(4)試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認
比較のためスパイラルコイルを基準として評価する
【0056】
図4は、実施例1の試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図である。
図4にて、白いラインは、ICNIRPガイドライン値(27μT)となるラインを示す。
ICNIRPガイドライン値(27μT)以下となるまでの距離(@ Gap 10 mm)
・コイル上方(中心軸上): 34 mm(8の字) 71 % < 48 mm(スパイラル)
・コイル側方(机上面)
: 16 mm(8の字) 80 % < 20 mm(スパイラル
【0057】
(実施例2)
図3は、8の字型コイル2,3を重ね、それぞれの8の字型コイル2,3の裏側に磁性体の板4,42を配置した非接触電力伝送装置の図である。
<例2>
(1)Mn-Zn Ferriteを8の字コイル給電面の裏側に配置
磁性体(Mn-Zn Ferrite)のサイズ:90mm×90mm×0.5mm
(2)8の字コイル2枚を対向するよう配置
※向きをそろえる
(3)コイル間距離(Gap)を10mmとし、電力伝送を実施
測定条件
共振コンデンサあり(22nF、直列接続)
負荷:抵抗10Ω
駆動周波数f=200kHz、正弦波入力
パワーメータにて計測
(4)結果
【表2】
効率η=95%の出力を確認
参考:スパイラルコイル(従来型・フェライト付)の効率→97%
(5)試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認
比較のためスパイラルコイルを基準として評価する
【0058】
図5は、実施例2の試作コイルをモデル化し、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図である。
図5にて、白いラインは、ICNIRPガイドライン値(27μT)となるラインを示す。
ICNIRPガイドライン値(27μT)以下となるまでの距離(@ Gap 10 mm,両方あり)
・コイル上方(中心軸上):0 mm(8の字) < 0.89 mm(スパイラル)
・コイル側方(机上面)
:2.6 mm (8の字) < 13.8 mm(スパイラル)
【0059】
(実施例3)
図6は、送電コイル(一次コイルを3個、重ねた構成)と、受電コイル(二次コイル、1個)の図である。
図6(a)は、送信コイル20(一次コイル)の構造であり、8の字型コイル5,6,7を、3個、120度の角度で、重ねて配置した図である。
図6(b)は、受電コイル8(二次コイル)の構造であり、8のコイルであって、
図6(a)の送電コイルでの、1個の8の字コイル5,6,7と、同一寸法、形状である。
図6(c)は、送電コイル20を重ねる前の状態と、個々の8の字コイル5,6,7と、回路との接続の図であり、
図6(d)は、送電コイル20を重ねた後の状態と、受電コイルとの位置関係を示す図である。
【0060】
ここで、送電側の前記8の字型コイル5,6,7と、受電側の8の字二次側コイルとの間に、回転軸方向のずれが生じ、電力伝送の効率が低下した場合、ブリッジ回路のスイッチを切り替えて、前記8の字型コイル5,6,7の中で、最適な8の字型コイルを選択して、切り替えて、前記受電側の2次側コイルの出力を最大に設定することができる。
【0061】
ここで、
図6の例では、送電側の8の字型コイル5,6,7は、120度の等角度の実施例であったが、これに限られない。例えば、等間隔の角度ではなく、ランダムな角度でも良く、また、送電側の8の字型コイルの個数は、3個に限られず、3個以外の複数個
であっても良い。なお、
図7は、8の字コイルの現物の外観を示す図である。
【0062】
(実施例4)
図8は、先の実施例2の条件において、
図8(a)は、軟磁性体板を一次側コイルのみに配置した場合、
図8(b)は、軟磁性体板を二次側コイルのみに配置した場合、
図8(c)は、軟磁性体板を一次側コイル、および二次側コイルに配置した場合の、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図である。駆動周波数は、200kHzである。また、前記軟磁性体の板は、Mn−Znフェライトである。
ここで、
図8(c)は、先の実施例2での
図5の条件と一致する。
明らかに、軟磁性体板を一次側コイル、および二次側コイルに配置した場合
が、最も、漏れ磁束が、減少している。
【0063】
(実施例5)
図9は、軟磁性体板を一次側コイル、および二次側コイルに配置した条件にて、
コイル間距離を変化した図であり、
図9(a)は、コイル間距離が20mmの場合
図9(b)は、コイル間距離が40mmの場合、
図9(c)は、コイル間距離が80mmの場合の、電力伝送中の磁場分布を電磁場解析ソフトウェアで確認した図である。駆動周波数は、200kHzである。
【0064】
図10は、一次コイルと二次コイルのコイル間距離と、電力伝送効率との関係を示す図である。
図10より、実用的なコイル間距離は、20mm以内と判断される。
【0065】
本発明によれば、1次側コイル、2次側コイル自身が外部に出すノイズを相殺することができ、更に、一次側コイル、2次側コイルからの漏れ磁束を低減し、かつ、一次側コイルを角度をずらして、複数個重ねて、適切な一次コイルに切り替えることによって、一次側コイルと2次コイルと、最適位置関係からの、位置ずれにも対応することができ、電力伝送の効率を最良にすることができる非接触電力伝送装置および非接触電力伝送方法を提供し、モバイル機器や、電気自動車、ならびに体内設置型医療機器、他の用途等への非接触給電技術に応用することができ産業の発展に寄与することができる。