(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るニッケル水素二次電池(以下、単に電池と称する)2を、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明が適用される電池2としては特に限定されないが、例えば、
図1に示すAAサイズの円筒型の電池2に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0018】
図1に示すように、電池2は、容器として、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の開口には、封口体11が固定されている。この封口体11は、蓋板14及び正極端子20を含み、外装缶10を封口するとともに正極端子20を提供する。蓋板14は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0019】
ここで、蓋板14は中央に中央貫通孔16を有し、そして、蓋板14の外面上には中央貫通孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
【0020】
通常時、中央貫通孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、中央貫通孔16を開き、この結果、外装缶10内から中央貫通孔16及び正極端子20のガス抜き孔を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
【0021】
外装缶10には、アルカリ電解液(図示せず)とともに電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、これらは正極24と負極26との間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁と接触している。即ち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
【0022】
そして、外装缶10内には、電極群22と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極24に接続され、その他端が蓋板14に接続されている。従って、正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリット39を通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0023】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。注入されたアルカリ電解液の大部分は電極群22に保持されており、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。このアルカリ電解液としては、NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液が用いられる。NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液は、KOH等を溶質の主体とする他のアルカリ電解液に比べて電池の自己放電反応を大幅に抑制する働きをする。ここで、NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液とは、アルカリ電解液に含まれるアルカリ金属元素のモル数の総和に対し、Naのモル数が50%以上となるようにNaOHが含まれているアルカリ電解液のことをいう。本実施形態におけるアルカリ電解液としては、溶質として、NaOHに加えて、KOH及びLiOHのうちの少なくとも一方を含んでいるものが好適に用いられる。本発明において採用可能なアルカリ電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられ、また、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液に、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液が適宜添加された混合水溶液が挙げられる。このとき、溶質全体の50%以上をNaOHが占めている態様とすることが好ましい。また、前記混合水溶液中の各溶質であるKOH、NaOH及びLiOHの量の比としてはNaOHの量を最も多くすることが好ましい。より好ましくは、KOH、NaOH及びLiOHのモル比が、例えば、次の(I)式で示される関係とする。
KOH:NaOH:LiOH=0.8:7.0:0.02・・・(I)
【0024】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。具体的には、スルホン化処理が施されてスルホン基が付与されたポリオレフィン繊維からなる不織布を用いることが好ましい。ここで、スルホン基は、硫酸又は発煙硫酸等の硫酸基を含む酸を用いて不織布を処理することにより付与される。このようにセパレータにスルホン化処理を施すと、親水性が付与されるだけではなく電池の自己放電を抑制する効果を発揮する。
【0025】
正極24は、多孔質構造をなし多数の空孔を有する導電性の正極基材と、前記した空孔内及び前記正極基材の表面に保持された正極合剤とからなる。
【0026】
このような正極基材としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体、あるいは、発泡ニッケル(ニッケルフォーム)を用いることができる。
【0027】
正極合剤は、正極活物質粒子、導電材、正極添加剤及び結着剤を含む。この結着剤は、正極活物質粒子、導電材及び正極添加剤を結着させると同時に正極合剤を正極基材に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
【0028】
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。なお、これら水酸化ニッケル粒子には、亜鉛、マグネシウム及びコバルトのうちの少なくとも一種を固溶させることが好ましい。
【0029】
導電材としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH)
2)などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。この導電材は、必要に応じて正極合剤に添加されるものであり、添加される形態としては、粉末の形態のほか、正極活物質の表面を覆う被覆の形態で正極合剤に含まれていてもよい。
【0030】
正極添加剤は、正極の特性を改善するために、必要に応じ適宜選択されたものが添加される。主な正極添加剤としては、例えば、酸化イットリウムや酸化亜鉛が挙げられる。
【0031】
正極24は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記したようにして得られた正極活物質粒子からなる正極活物質粉末、導電材、正極添加剤、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えばニッケルフォームに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填されたニッケルフォームは、ロール圧延されてから裁断される。これにより、正極合剤を保持した正極24が作製される。
【0032】
次に、負極26について説明する。
負極26は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
負極芯体は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
【0033】
負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子、負極添加剤、導電材及び結着剤を含む。ここで、水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出可能な合金である。上記した結着剤は水素吸蔵合金の粒子、負極添加剤及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯体に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電材としては、カーボンブラック、黒鉛、ニッケル粉等を用いることができる。
【0034】
負極添加剤は、負極の特性を改善するために、必要に応じ適宜選択されたものが添加される。主な負極添加剤としては、例えば、フッ素樹脂等の撥水剤が挙げられる。この撥水剤により、水素吸蔵合金の過度な酸化が抑制され電池の寿命特性が改善される。
【0035】
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、少なくとも希土類元素及びNiを含み、且つ、Co及びMnを除いた組成の水素吸蔵合金が用いられる。この水素吸蔵合金は、具体的には、以下に示す一般式(II)で表される組成を有している。
【0036】
Ln
1-xMg
xNi
y-zM
z・・・(II)
ただし、一般式(II)中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びZrから選ばれる1種以上の元素、Mは、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Fe、Ga、Zn、Sn、In、Cu、Al、Si、P、Bから選ばれる1種以上の元素、添字x、y、zは、それぞれ、0≦x≦0.05、3.3≦y≦3.6、0≦z≦0.50で示される関係を満たし、前記Laは、Ln内における比率が25%以下である。
【0037】
ここで、本発明に係る水素吸蔵合金は、Co及びMnを除いた組成を有することから、CoやMnに起因する、いわゆるシャトル反応が低減されるため、電池の自己放電抑制に寄与する。詳しくは、シャトル反応とは、CoやMnがアルカリ電解液に溶解し、正極及び負極の間で酸化還元反応を繰り返して電池容量を消費する反応であり、このシャトル反応が起こると自己放電量が増加する。Co及びMnが存在しなければ、シャトル反応は減少するので、電池の自己放電が抑制され容量残存率が向上する。
【0038】
また、本発明に係る水素吸蔵合金は、Lnとして選ばれた元素にLaが含まれる場合、Ln中のLaの比率を25%以下とするとともに、Mgの含有量を示す添字xの値を0.05以下としており、水素吸蔵合金中におけるLa及びMgの量が従来の自己放電抑制型の水素吸蔵合金に比べて少なめに設定されている。このような水素吸蔵合金においては、その表面に分布するLa及びMgの量も比較的少なめになっている。このようにLa及びMgが少ない合金表面に対し、上記したNaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液が作用すると、負極電位に関係する水素放出の平衡圧は低下しない。このため、長期間放置後の作動電圧の低下を抑制することができると考えられる。なお、Mgの含有量を示す添字xの値は、0.01以下とすることがより好ましい。
【0039】
NiとMの合計値を表す添字yの値は、3.3未満では水素吸蔵合金の水素吸蔵量が減少し、3.6を上回ると電池の寿命特性を劣化させるため、3.3≦y≦3.6の関係を満たすことが好ましい。
【0040】
更に、電池のサイクル寿命特性を良好にするために、一般式(II)中のMとしてAlを選択することが好ましい。ここで、Mの元素としてのAlの量を示す添字zの値は0.17以上とすることが好ましい。一方、Alの量は多くなりすぎると水素吸蔵合金の水素吸蔵量を減少させるため、zの値は0.50以下とすることが好ましく、より好ましくは0.30以下とする。
【0041】
また、本発明に係る水素吸蔵合金は、一般式(II)におけるLn及びMgをA成分とし、Ni及びMをB成分としたき、AB
2型サブユニット及びAB
5型サブユニットが積層されてなるA
2B
7型構造又はA
5B
19型構造をとる、いわゆる超格子構造をなしている。このような超格子構造をなす水素吸蔵合金は、AB
5型合金の特徴である水素の吸蔵放出が安定しているという長所と、AB
2型合金の特徴である水素の吸蔵量が大きいという長所とを併せ持っている。このため、本発明に係る水素吸蔵合金は、水素吸蔵能力に優れるので、得られる電池2の高容量化に貢献する。
【0042】
次に、上記した水素吸蔵合金粒子は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるよう金属原材料を計量して混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中にて、例えば高周波誘導溶解炉で溶解した後、冷却してインゴットにする。得られたインゴットには、不活性ガス雰囲気中にて900〜1200℃に加熱し5〜24時間保持する熱処理を施す。この後、室温まで冷却したインゴットを粉砕し、篩分けを行うことにより所望粒径の水素吸蔵合金粒子が得られる。
【0043】
ここで、水素吸蔵合金粒子の表面を酸やアルカリ等の溶液で処理することが好ましい。酸性溶液による表面処理では、電池の初期放電特性が改善される。また、アルカリ溶液による表面処理では、電極の活性化が図られて電池のサイクル寿命特性が改善される。
【0044】
また、負極26は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子からなる水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤スラリーを調製する。なお、必要に応じて負極添加剤を更に添加しても構わない。得られた負極合剤スラリーは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極芯体はロール圧延及び裁断が施され、これにより負極26が作製される。
【0045】
以上のようにして作製された正極24及び負極26は、セパレータ28を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群22が形成される。
【0046】
このようにして得られた電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内にはアルカリ電解液が所定量注入される。
【0047】
その後、電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた蓋板14により封口され、本発明に係る電池2が得られる。得られた電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0048】
以上のようにして得られた本発明に係る電池2は、上記したようなアルカリ電解液と水素吸蔵合金との相乗効果により放置後の自己放電を抑制しつつ作動電圧の低下も抑制することができる優れた電池となっている。詳しくは、NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液を用いていることにより自己放電反応を抑制する効果を得ている。そして、一般式(II)で示されるようなLa及びMgの量を規定した組成の水素吸蔵合金を用いることにより、水素放出の平衡圧の低下を抑制して作動電圧の低下を抑制する効果を得ている。
【0049】
[実施例]
1.電池の製造
(実施例1)
【0050】
(1)正極の作製
ニッケルに対して亜鉛3質量%、マグネシウム0.4質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム及び硫酸コバルトを計量し、これらを、アンモニウムイオンを含む1Nの水酸化ナトリウム水溶液に加え、混合水溶液を調整した。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に10Nの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させ、ここでの反応中、pHを13〜14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛、マグネシウム及びコバルトを固溶した水酸化ニッケル粒子を生成させた。
【0051】
得られた水酸化ニッケル粒子を10倍の量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥した。
【0052】
次に、上記したように作製した水酸化ニッケル粒子からなる正極活物質粉末100質量部に、水酸化コバルトの粉末10質量部を混合し、更に、0.5質量部の酸化イットリウム、0.3質量部の酸化亜鉛、40質量部のHPCディスバージョン液を混合して正極合剤スラリーを調製し、この正極合剤スラリーを正極基材としてのシート状のニッケルフォームに充填した。正極合剤を保持したニッケルフォームを乾燥後、ロール圧延した。正極合剤を保持したニッケルフォームは、圧延加工後に所定形状に裁断された。これによりAAサイズ用の正極24が得られた。
【0053】
(2)水素吸蔵合金及び負極の作製
先ず、20質量%のLa及び80質量%のSmを含む希土類成分を調製した。得られた希土類成分、Mg、Ni、Alを計量して、これらがモル比で次の(III)式の割合となる混合物を調製した。
希土類成分:Mg:Ni:Al=0.95:0.05:3.30:0.20・・・(III)
【0054】
得られた混合物は、アルゴンガス雰囲気中にて高周波誘導溶解炉で溶解され、その溶湯が鋳型に流し込まれた後、室温まで冷却され水素吸蔵合金のインゴットとされた。このインゴットより採取したサンプルにつき、高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって組成分析を行った。その結果、水素吸蔵合金の組成は、(La
0.20Sm
0.80)
0.95Mg
0.05Ni
3.30Al
0.20であった。
【0055】
次いで、このインゴットに熱処理を施した。この熱処理としては、前記インゴットをアルゴンガス雰囲気中にて温度1000℃に加熱して10時保持するというものである。そして、この熱処理の後、室温(25℃)まで冷却された水素吸蔵合金のインゴットをアルゴンガス雰囲気中で機械的に粉砕して水素吸蔵合金粒子からなる粉末を得た。得られた水素吸蔵合金粒子の体積平均径(MV)は、60μmであった。
【0056】
得られた水素吸蔵合金粒子からなる粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、スチレンブタジエンゴム(SBR)のディスバージョン1.0質量部、カーボンブラック1.0質量部、および水30質量部を添加して混練し、負極合剤スラリーを調製した。
【0057】
この負極合剤スラリーを負極芯体としての鉄製の孔あき板の両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。なお、この孔あき板は60μmの厚みを有し、その表面にはニッケルめっきが施されている。
【0058】
スラリーの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末等を含む負極合剤を保持した孔あき板を更にロール圧延して体積当たりの合金量を高めた後、裁断し、水素吸蔵合金を含むAAサイズ用の負極26を作成した。
【0059】
(3)ニッケル水素二次電池の組み立て
得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を作製した。ここでの電極群22の作製に使用したセパレータ28はスルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維製不織布から成り、その厚みは0.1mm(目付量53g/m
2)であった。
【0060】
一方、溶質としてKOH、NaOH及びLiOHを含む水溶液からなるアルカリ電解液を準備した。ここで、KOH、NaOH及びLiOHは、上記した(I)式で示される比でアルカリ電解液中に含まれている。すなわち、KOH:NaOH:LiOH=0.8:7.0:0.02である。なお、かかるアルカリ電解液の濃度は7.82mol/lである。
【0061】
次いで、有底円筒形状の外装缶10内に上記した電極群22を収納するとともに、上記したアルカリ電解液を2.2g注入した。この後、封口体11で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量2000mAhのAAサイズのニッケル水素二次電池2を組み立てた。このニッケル水素二次電池を電池aと称する。ここで、公称容量は、0.2Aで16時間充電後、0.2Aで電池電圧が1.0Vになるまで放電した際の電池の放電容量とした。
【0062】
(4)初期活性化処理
電池aに対し、温度25℃の環境下にて、0.1Itで16時間の充電を行った後に、0.2Itで電池電圧が0.5Vになるまで放電させる初期活性化処理を2回繰り返した。このようにして、電池aを使用可能状態とした。
【0063】
(実施例2)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.97Mg
0.05Ni
3.33Al
0.17としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池b)を作製した。
【0064】
(実施例3)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.97Mg
0.03Ni
3.30Al
0.20としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池c)を作製した。
【0065】
(実施例4)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池d)を作製した。
【0066】
(実施例5)
水素吸蔵合金の組成をLa
0.20Sm
0.80Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池e)を作製した。
【0067】
(実施例6)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.95Mg
0.05Ni
3.30Al
0.20としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池f)を作製した。
【0068】
(実施例7)
水素吸蔵合金の組成を(Sm
1.00)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池g)を作製した。
【0069】
(実施例8)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25としたこと、アルカリ電解液に含まれるKOH、NaOH及びLiOHのモル比をKOH:NaOH:LiOH=4.0:4.0:0.0としてアルカリ電解液の濃度を8.0mol/lとしたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池h)を作製した。
【0070】
(比較例1)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.91Mg
0.09Ni
3.30Al
0.20としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池i)を作製した。
【0071】
(比較例2)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.40Sm
0.60)
0.95Mg
0.05Ni
3.30Al
0.20としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池j)を作製した。
【0072】
(比較例3)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.60Sm
0.40)
0.91Mg
0.09Ni
3.30Al
0.20としたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池k)を作製した。
【0073】
(比較例4)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.20Sm
0.80)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25としたこと、アルカリ電解液に含まれるKOH、NaOH及びLiOHのモル比をKOH:NaOH:LiOH=8.0:0.0:0.0としてアルカリ電解液の濃度を8.0mol/lとしたこと以外は、実施例1の電池aと同様にしてニッケル水素二次電池(電池l)を作製した。
【0074】
2.ニッケル水素二次電池の評価
初期活性化処理済みの電池a〜電池lに、以下に示すような手順で充放電試験を行った。
まず、各電池を25℃の環境下に置き、1.0Itで充電を行った。このとき、電池電圧が最大値に達した後、この最大値から10mV低下したときに充電を終了する、いわゆる−ΔV制御での充電(以下、単に−ΔV充電という)を行った。この−ΔV充電終了後に1時間休止した後、0.2Itで電池電圧が1.0Vに到達するまで放電し、その後1時間休止した。そして、このときの電池の放電容量を測定した。この放電容量を初期容量Cとした。また、上記した放電の開始から終了までの間で放電容量が半分の値になった時点の電圧を測定した。この電圧を初期作動電圧Dとした。
【0075】
次いで、各電池を25℃の環境下に置き、1.0Itで−ΔV充電を行った。その後、これら電池を60℃の恒温槽内に14日間放置して電池の自己放電を進行させた。60℃で14日間放置した後の電池を25℃の環境下に置き、0.2Itで電池電圧が1.0Vに到達するまで放電した。このときの放電容量を測定した。この放電容量を放置後容量Eとした。また、14日間放置した後の電池について、放電の開始から終了までの間で放電容量が半分の値になった時点の電圧を測定した。この電圧を放置後作動電圧Fとした。
【0076】
得られた初期容量Cの値及び放置後容量Eの値から、以下の(IV)式より容量残存率を求めた。その結果を容量残存率として表1に示した。この容量残存率が高いほど自己放電が抑制されていることを表す。
容量残存率(%)=(放置後容量E/初期容量C)×100・・・(IV)
【0077】
また、各電池につき、以下の(V)式より、放置後作動電圧低下量を求めた。この結果を放置後作動電圧低下量として表1に示した。この放置後作動電圧低下量の値が小さいほど作動電圧の低下が抑制されていることを示す。
放置後作動電圧低下量(mV)=初期作動電圧D−放置後作動電圧F・・・(V)
【0079】
3.考察
(1)La及びMgを比較的多く含む比較例3の電池kは、容量残存率が80.7%であり、放置後作動電圧低下量が76mVであった。比較例3よりもLa及びMgの量が少ない各実施例の電池は、容量残存率が比較例3と同等かそれ以上であり、放置後作動電圧低下量は比較例3よりも少なくなっている。このことから、水素吸蔵合金に含まれるLa及びMgの量をなるべく少なくすると、容量残存率を従来の電池と同程度に維持しつつ作動電圧の低下を抑制することができることがわかる。
【0080】
(2)Ln中のLaの比率が20%であり、Mgの量を示す添字xの値が0.01である実施例4の電池dは、容量残存率が83.2%であり、放置後作動電圧低下量が55mVであった。また、Ln中のLaの比率が20%であり、Mgを含んでいない実施例5の電池eは、容量残存率が83.3%であり、放置後作動電圧低下量が56mVであった。このことから、Ln中のLaの比率が20%で、Mgの量を示す添字xの値が0.01以下であると、長期間放置後において、容量残存率を従来よりも向上させることができるとともに作動電圧の低下を従来よりも抑制することができるということがわかる。
【0081】
(3)このように、水素吸蔵合金中におけるLa及びMgの量をなるべく少なくする、好ましくはLn中のLaの比率が20%で、Mgの量を示す添字xの値が0.01以下とすることで、水素吸蔵合金表面に存在するLa及びMgの量が減る。このLa及びMgが少ない合金表面にNaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液が作用すると、負極電位に関係する水素放出の平衡圧が低下しないため、作動電圧の低下が抑制されていると考えられる。
【0082】
(4)NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液を用いた実施例4の電池dや実施例8の電池hに比べ、NaOHを含まずKOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液を用いた比較例4の電池lは、容量残存率が低く、作動電圧低下量が多くなっている。このことから、水素吸蔵合金に含まれるLa及びMgの量をなるべく少なくした水素吸蔵合金を用いるとともに、NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液を用いることで、容量残存率を従来よりも向上させることができるとともに、作動電圧の低下を従来よりも抑制することができるということがわかる。
【0083】
なお、本発明は、上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、ニッケル水素二次電池は、角形電池であってもよく、機械的な構造は格別限定されることはない。