特許第6282010号(P6282010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282010
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20180208BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01D5/12 Q
   G01D5/245 110X
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-132233(P2014-132233)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11843(P2016-11843A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 敬介
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−139469(JP,A)
【文献】 特開2002−286497(JP,A)
【文献】 特開2003−35563(JP,A)
【文献】 特開2004−12346(JP,A)
【文献】 米国特許第6124710(US,A)
【文献】 特開2014−62770(JP,A)
【文献】 特開2008−185557(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0105025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の駆動体の回転に連動して回転可能な軸部と、
前記軸部の一端側に一体的に設けられた磁石と、
前記磁石の磁界を感知するための検出素子が実装された基板と、
前記軸部の一端側および前記基板が配置される有底の配置部を有するケースと、
前記軸部の他端側が外方に突出するよう挿通されるとともに前記配置部を覆うように取り付けられる防護部材と、
前記ケースと前記防護部材との間に配置されるシール部材と、を備えた位置検出装置において、
前記防護部材には、前記軸部の一端側を軸支する支持部材と、前記軸部を回転自在に支持する軸受けとが一体に取り付けられ、
前記防護部材又は前記支持部材のいずれか一方に凸部を備えるとともに、いずれか他方に前記凸部が嵌合する嵌合部を備え、前記凸部と前記嵌合部とが嵌合していることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記防護部材は、前記軸受けを嵌装する筒状部と、前記支持部材に当接する当接部と、前記シール部材が配置される段部と、を備え、
前記支持部材は、前記当接部に当接する面に沿って前記当接部の外周より外方に突出した鍔部を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記軸部の一端側を軸支する突出部を備えており、前記軸部を回転自在に軸支した状態で、前記防護部材に嵌合されて一体化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動体の回転位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石と磁界を検出する検出素子とを用いた非接触式の検出装置が使用されている。非接触式の検出装置は、回転位置等を検出する機構が摩耗等による不具合を発生することが少ないため、種々の産業分野で使用されている。
【0003】
特許文献1には、ホルダー(ケース)とハウジング間に配置されるカップとカップに取り付けられている回転軸がハウジングの軸受けに受けられるように配置された構成が記載されている。
【0004】
図10は、特許文献1に記載の非接触式変位センサ100を示す断面図である。非接触式変位センサ100は、被検出物の変位とともに回転する回転軸109に固定されたカップ108に永久磁石107を設け、永久磁石107の回転を非接触により検出するホール素子105を設けて、被検出物の変位をホール素子105により検出する。
【0005】
ハウジング111は、回転軸109に固定されたカップ108の底面により回転軸109の一方の軸方向の動きを規制する。ホルダー101は、回転軸109に固定されたカップ108の端部108aに複数箇所で当接し、回転軸109の軸方向の他方の動きを規制部101rにより規制する。図10に示すように、カップ108が一体化された回転軸109の傾きを、ハウジング111に設けた軸受け113とホルダー101に設けられた規制部101rとにより抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−156245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ハウジング111とホルダー101とが別体であるため、軸傾きを抑制するための精度出しが困難になっていた。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、精度良く回転軸の傾きを抑制できる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外部の駆動体の回転に連動して回転可能な軸部と、前記軸部の一端側に一体的に設けられた磁石と、前記磁石の磁界を感知するための検出素子が実装された基板と、前記軸部の一端側および前記基板が配置される有底の配置部を有するケースと、前記軸部の他端側が外方に突出するよう挿通されるとともに前記配置部を覆うように取り付けられる防護部材と、前記ケースと前記防護部材との間に配置されるシール部材と、を備えた位置検出装置において、前記防護部材には、前記軸部の一端側を軸支する支持部材と、前記軸部を回転自在に支持する軸受けとが一体に取り付けられ、前記防護部材又は前記支持部材のいずれか一方に凸部を備えるとともに、いずれか他方に前記凸部が嵌合する嵌合部を備え、前記凸部と前記嵌合部とが嵌合していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、防護部材に軸部を支持する支持部材と軸受けとが一体化されているので、軸部を防護部材のみを基準にして軸支することができる。したがって、ケースにシール部材を介して防護部材を取り付ける際の精度出しでばらつくことなく、精度良く回転軸の傾きを抑制できる。
【0011】
また、本発明の位置検出装置において、前記防護部材は、前記軸受けを嵌装する筒状部と、前記支持部材に当接する当接部と、前記シール部材が配置される段部と、を備え、前記支持部材は、前記当接部に当接する面に沿って前記当接部の外周より外方に突出した鍔部を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、シール部材が軸方向に外れることがなくなるので、配置部を外部から気密に封止することができる。
【0013】
また、本発明の位置検出装置において、前記支持部材は、前記軸部の一端側を軸支する突出部を備えており、前記軸部を回転自在に軸支した状態で、前記防護部材に嵌合されて一体化されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、軸部に磁石を嵌め込んだ後で、軸部と防護部材と支持部材とを一体的に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防護部材に軸部を支持する支持部材と軸受けとが一体化されているので、軸部を防護部材のみを基準にして軸支することができる。したがって、ケースにシール部材を介して防護部材を取り付ける際の精度出しでばらつくことなく、精度良く回転軸の傾きを抑制できる位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の位置検出装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の位置検出装置を示す分解斜視図である。
図3図2とは異なる方向から見た分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態の位置検出装置を示す平面図である。
図5図4のV−V線で切断した断面図である。
図6図4のVI−VI線で切断した断面図である。
図7】軸受けが一体に取り付けられ防護部材に軸部を挿通する組み立て図である。
図8】支持部材と、軸部が挿通された防護部材と、を示す組み立て図である。
図9】軸部が挿通された防護部材に支持部材を載置した組み立て図である。
図10】従来の非接触式変位センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の位置検出装置1を示す斜視図である。図2は、位置検出装置1を示す分解斜視図である。図3は、図2とは異なる方向から見た分解斜視図である。図4は、本実施形態の位置検出装置1を示す平面図である。図5は、図4のV−V線で切断した断面図である。図6は、図4のVI−VI線で切断した断面図である。
【0019】
位置検出装置1は、図1図6に示すように、回転可能な軸部10と、軸部10に一体的に設けられた磁石11と、磁石11の磁界を感知するための検出素子41とを備える。さらに、位置検出装置1は、図2図3に示すように、ケース50、基板40、支持部材20、シール部材32、軸受け31、防護部材30を備えている。位置検出装置1は、軸部10が図示しない外部の駆動体の回転に連動して回転し、その回転位置を検出するものである。回転位置検出機構である磁石11と検出素子41とが、図2および図3に示すように支持部材20を挟んで対向配置される。なお、回転可能な磁石11は、検出素子41および支持部材20と接触しないように配置されている(図5図6参照)。このため、回転位置検出機構での接触による摩耗や異物の発生が無いので、信頼性が高いという特徴を有する。
【0020】
ケース50は、合成樹脂を成形したものであり、配置部50aおよびコネクタ部50bが形成されるとともに、金属の端子部材52が埋め込まれるように一体化されている。なお、ケース50は、電気絶縁性を備え、かつ、非磁性の合成樹脂である。
【0021】
磁石11は、中心が空洞の略円筒形のプラスチック磁石であり、軸部10の一端10a側に一体的に設けられている。軸部10は、非磁性の金属からなり、磁石11を固定する形状に加工されている。磁石11は、所望の状態に着磁されており、例えば円周方向にS極とN極とが交互に配置されている。
【0022】
検出素子41は、磁石11が発生する磁界強度を測定するものである。より具体的には、X−Y平面上の所定の向きに検出感度軸を有する1軸素子を少なくとも1個備えて、該1軸素子の検出感度軸方向の磁界強度を測定するものである。本実施形態において、検出素子41にはホール効果素子を用いている。検出素子41は、基板40に実装され、ケース50に設けられた有底の配置部50aに配置される。
【0023】
防護部材30は、配置部50aを覆うようにケース50に取り付けられる。また、防護部材30には、支持部材20と軸受け31とが一体に取り付けられている。図2および図3に示すように、防護部材30は、軸受け31を嵌装する筒状部30bと、支持部材20に当接する当接部30cと、シール部材32が配置される段部30dと、を備える。シール部材32は、図5および図6に示すように、防護部材30の段部30dに配置され、ケース50との隙間を塞ぎ、ケース50の配置部50aに異物や水が侵入しないように考慮されている。
【0024】
軸受け31は、軸部10を回転自在に支持する。軸部10は、この軸受け31を介することによって、防護部材30に軸部10の他端10b側が外方に突出するよう挿通される(図5図6参照)。
【0025】
支持部材20は、図2および図3に示すように、嵌合部20a、鍔部20b、および突出部20cを備えている。嵌合部20aは防護部材30の凸部30aに挿入可能な形状である。これにより、凸部30aと嵌合部20aとが嵌合している。また、鍔部20bは、防護部材30の当接部30cに当接する面に沿って当接部30cの外周より外方に突出している。さらに、図5および図6に示すように、軸部10の一端10aの中心部には磁石11の中央に挿入される係合凸部を有し、該係合凸部の突出端面の中心部には係合凹部が形成され、該係合凹部に支持部材20の突出部20cを挿入することで、軸部10を回転自在に軸支している。これにより、支持部材20は、軸部10を回転自在に軸支した状態で、防護部材30に一体化されて固定されている。
【0026】
端子部材52はコネクタ部50bの内壁面から露出し、外部の接続部材(ケーブル)が接続可能になっている。また、基板40にハンダ等で接続される。これにより、検出素子41で測定された磁界強度を回転位置情報として、外部の電子機器等で利用することができる。
【0027】
次に、本実施形態の位置検出装置1の特徴について、図5図8を用いて説明する。
【0028】
図7は、軸受け31が一体に取り付けられた防護部材30に軸部10を挿通する組み立て図である。図8は、支持部材20と、軸部10が挿通された防護部材30と、を示す組み立て図である。図9は、軸部10が挿通された防護部材30に支持部材20を載置した組み立て図である。
【0029】
図5および図6に示すように、軸部10は、軸受け31によって回転自在に支持されるとともに、軸部10の一端10aの中心部には磁石11の中央に挿入される係合凸部を有し、該係合凸部の突出端面の中心部には係合凹部が形成されており、該係合凹部に支持部材20の突出部20cを挿入することで、軸部10の一端10a側が支持部材20の突出部20cによって軸支される。軸受け31は、防護部材30の筒状部30bに嵌装されて固定されている。
【0030】
図7に示すように、軸受け31が一体に取り付けられた防護部材30と、磁石11が一体に取り付けられた軸部10と、シール部材32と、支持部材20と、を用意して組み立てる。すなわち、図8に示すように、一端10a側に磁石11が一体的に設けられた軸部10を、他端10b側が外方に突出するよう防護部材30に挿通してから、図9に示すように支持部材20を載置する。支持部材20は、鍔部20bが防護部材30の当接部30cに当接し、嵌合部20aが凸部30aと嵌合して固定される。これにより、軸受け31および支持部材20は、防護部材30に一体化されているので、軸部10を防護部材30のみを基準にして軸支することができる。
【0031】
また、軸部10が軸受け31および支持部材20に支持された状態を保持したまま、ケース50に防護部材30を取り付けることができるので、シール部材32を介して防護部材30を取り付けるだけで、軸部10の軸傾きを抑制することが容易である。この組み立て手順とすることによって、組み立てが容易であるとともに、精度良く回転軸の傾きを抑制できる。
【0032】
支持部材20の鍔部20bの外径は、シール部材32が弾性変形で伸長可能な内径よりも小さいことが好ましい。この場合、防護部材30に支持部材20を組み合わせてからシール部材32を段部に嵌め込むことが可能であり、組み立てがさらに容易になる。
【0033】
したがって、ケース50にシール部材32を介して防護部材30を取り付ける際の精度出しでばらつくことなく、精度良く回転軸の傾きを抑制できる。
【0034】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0035】
本実施形態の位置検出装置1は、外部の駆動体の回転に連動して回転可能な軸部10と、軸部10の一端10a側に一体的に設けられた磁石11と、磁石11の磁界を感知するための検出素子41が実装された基板40と、を備える。そして、軸部10の一端10a側および基板40が配置される有底の配置部50aを有するケース50と、軸部10の他端10b側が外方に突出するよう挿通されるとともに配置部50aを覆うように取り付けられる防護部材30と、を備える。さらに、ケース50と防護部材30との間に配置されるシール部材32を備える。防護部材30には、軸部10の一端10a側を軸支する支持部材20と、軸部10を回転自在に支持する軸受け31とが一体に取り付けられ、防護部材30に凸部30aを備えるとともに、支持部材20には凸部30aが嵌合する嵌合部20aを備え、凸部30aと嵌合部20aとが嵌合している。
【0036】
この構成によれば、防護部材30に軸部10を支持する支持部材20と軸受け31とが一体化されているので、軸部10を防護部材30のみを基準にして軸支することができる。したがって、ケース50にシール部材32を介して防護部材30を取り付ける際の精度出しでばらつくことなく、精度良く回転軸の傾きを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態の位置検出装置1において、防護部材30は、軸受け31を嵌装する筒状部30bと、支持部材20に当接する当接部30cと、シール部材32が配置される段部30dと、を備える。さらに、支持部材20は、当接部30cに当接する面に沿って当接部30cの外周より外方に突出した鍔部20bを備える。
【0038】
この構成によれば、シール部材32が軸方向に外れることがなくなるので、配置部50aを外部から気密に封止することができる。
【0039】
また、本実施形態の位置検出装置1において、支持部材20は、軸部10の一端10a側を軸支する突出部20cを備えており、軸部10を回転自在に軸支した状態で、防護部材30に嵌合されて一体化されている。
【0040】
この構成によれば、軸部10に磁石11を嵌め込んだ後で、軸部10と防護部材30と支持部材20とを一体的に組み立てることができる。
【0041】
以上のように、本発明の実施形態の位置検出装置1を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらも本発明の技術的範囲に属する。
【0042】
(1)本実施形態において、防護部材30に凸部30aを備えるとともに、支持部材20には凸部30aが嵌合する嵌合部20aを備えるとしたが、支持部材20に凸部を設けて、防護部材30に嵌合部を形成するように変更してもよい。すなわち、防護部材30又は支持部材20のいずれか一方に凸部を備えるとともに、いずれか他方に凸部が嵌合する嵌合部を備え、凸部と嵌合部とが嵌合していればよい。
【0043】
(2)本実施形態において、支持部材20に突出部20cを備えるとしたが、突出部20cの替わりに軸部10の一端10aを収容する凹部を設けるように変更してもよい。この凹部によって、軸部10を回転自在に軸支できればよい。
【0044】
(3)本実施形態において、検出素子41にはホール効果素子を用いているが、磁気抵抗効果素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 位置検出装置
10 軸部
10a 一端
10b 他端
11 磁石
20 支持部材
20a 嵌合部
20b 鍔部
20c 突出部
30 防護部材
30a 凸部
30b 筒状部
30c 当接部
30d 段部
31 軸受け
32 シール部材
40 基板
41 検出素子
50 ケース
50a 配置部
50b コネクタ部
52 端子部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10