特許第6282035号(P6282035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6282035-りん酸肥料及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282035
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】りん酸肥料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05B 13/00 20060101AFI20180208BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20180208BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C05B13/00ZAB
   B09B3/00 303Z
   C02F11/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-279233(P2012-279233)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122132(P2014-122132A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月30日
【審判番号】不服2017-4681(P2017-4681/J1)
【審判請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592012384
【氏名又は名称】小野田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中村 寛
(72)【発明者】
【氏名】西村 靖正
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−80979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B13/00
C05F3/00
C05F7/00
C02F11/00
B09B3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屎尿汚泥、屎尿汚泥乾燥物、屎尿汚泥炭化物、屎尿汚泥焼却灰、及び屎尿汚泥溶融スラグから選ばれる1種以上と、カルシウム源とを含む調合原料を焼成してなるりん酸肥料であって、
該りん酸肥料中の、(A)AlとFeの合計、(B)CaO、及び(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=42/36/22〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/46/19〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=27/56/17〕、
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=17/57/26〕、及び、
点(オ)〔(A)/(B)/(C)=32/37/31〕
で囲まれる範囲内にあるりん酸肥料。
【請求項2】
りん酸のく溶率が60%以上である請求項1に記載のりん酸肥料。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のりん酸肥料の製造方法であって、
(1)屎尿汚泥、屎尿汚泥乾燥物、屎尿汚泥炭化物、屎尿汚泥焼却灰、及び屎尿汚泥溶融スラグから選ばれる1種以上と、カルシウム源とを調合して調合原料を得る調合工程と、
(2)該調合原料を焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成して、焼成物であるりん酸肥料を得る焼成工程と
を含むりん酸肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿・浄化槽汚泥やその焼却灰等とカルシウム源とを含む調合原料を焼成してなるりん酸肥料、及びその製造方法に関する。
以下、「りん(リン)」の用語の表記について、肥料取締法に規定する用語はひらがな表記で「りん」と記載し、それ以外はカタカナ表記で「リン」と記載する。
【背景技術】
【0002】
従来、我が国ではリンは天然資源として産出されず全てを輸入に頼っていた。しかし、近年、天然のリンは世界的に枯渇しつつあり、リンの価格が高騰してリンの確保が難しくなっている。そこで、りん肥料の製造分野では天然のリンを補完又は代替するものとして、屎尿・浄化槽汚泥(以下「屎尿汚泥」という。)の焼却灰(以下「屎尿汚泥焼却灰」という。)等の廃棄物に含まれるリンが考えられている。ちなみに、「屎尿・浄化槽汚泥からのリン回収・利活用の手引き 平成23年3月」によれば、屎尿汚泥の発生量は24553千kL/年で、その中のリンの含有量は5295t/年と推定されている。
しかし、水質保全等の観点から、該リンは凝集剤により凝集した汚泥中に固定され、該汚泥の大部分は焼却等して埋め立てられるため、肥料として利用されるリンは一部に過ぎない。
【0003】
ところで、前記凝集剤は、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)やポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム化合物、ポリ硫酸第二鉄や塩化第二鉄等の鉄化合物、及び有機高分子等が用いられている。したがって、屎尿汚泥はアルミニウムや鉄を多量に含むものが多い。例えば、後掲の表1に示すように、アルミニウムや鉄の化合物を凝集剤に用いた屎尿汚泥焼却灰中には、Alが30質量%程度、Feが36質量%程度含まれている。
【0004】
一般に、アルミニウムや鉄を含む汚泥焼却灰中のリンは、リン酸アルミニウム(AlPO)やリン酸鉄(FePO)が固溶したリン酸鉄アルミニウム(鉱物)の形態で固定されている。
例えば、非特許文献1の110〜111頁と表1に示すように、Alを17質量%程度、Feを6質量%程度含む下水汚泥焼却灰中のリン酸鉄アルミニウムの含有率は40質量%程度と高い。しかし、該鉱物中のリンは2質量%のクエン酸水溶液に溶解しないためりんのく溶率は低い。
まして、アルミニウムや鉄を下水汚泥焼却灰の2倍以上含む屎尿汚泥焼却灰では、りんのく溶率がさらに低下して、屎尿汚泥焼却灰のリン酸肥料化は難しいと予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】秋山堯、「下水汚泥の肥料への利用」、季刊雑誌「肥料」、109号、110〜114頁(2008年2月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、屎尿汚泥焼却灰等を原料に用いたりん酸肥料であって、く溶率が高いりん酸肥料とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的にかなうりん酸肥料とその製造方法を検討したところ、屎尿汚泥、屎尿汚泥乾燥物、屎尿汚泥炭化物、屎尿汚泥焼却灰、及び屎尿汚泥溶融スラグから選ばれる1種以上(以下「屎尿汚泥類」という。)と、カルシウム源とを含む調合原料を焼成してなるりん酸肥料であって、CaO等の質量比が特定の範囲内にあるりん酸肥料は、前記目的にかなうことを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成を有するりん酸肥料等を提供する。
[1]屎尿汚泥類とカルシウム源とを含む調合原料を焼成してなるりん酸肥料であって、
該りん酸肥料中の、(A)AlとFeの合計、(B)CaO、及び(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=42/36/22〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/46/19〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=27/56/17〕、
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=17/57/26〕、及び、
点(オ)〔(A)/(B)/(C)=32/37/31〕
で囲まれる範囲内にあるりん酸肥料。
[2]りん酸のく溶率が60%以上である前記[1]に記載のりん酸肥料。
[3]前記[1]又は[2]のいずれかに記載のりん酸肥料の製造方法であって、
(1)屎尿汚泥類とカルシウム源とを調合して調合原料を得る調合工程と、
(2)該調合原料を焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成して、焼成物であるりん酸肥料を得る焼成工程と
を含む、りん酸肥料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のりん酸肥料は、りん酸のく溶率やけい酸の可溶率が高く、また、本発明のりん酸肥料の製造方法によれば、屎尿汚泥類の資源化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)AlとFeの合計、(B)CaO、及び(C)Pの質量比を示す三角線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記のとおり、屎尿汚泥類及びカルシウム源を含む調合原料を焼成してなるりん酸肥料であって、りん酸肥料中のCaO等の質量比が、図1に示す三角線図の範囲内にあるりん酸肥料とその製造方法である。以下に、本発明について、りん酸肥料とその製造方法に分けて説明する。なお、以下、%は特に示さない限り質量%である。
【0012】
1.りん酸肥料
(1)調合原料
本発明に用いる調合原料は、屎尿汚泥類とカルシウム源を含むものである。
(i)屎尿汚泥類
屎尿処理施設(汚泥再生処理センター)に集められた屎尿や浄化槽汚泥は、一般に、異物を除去した後に、濃縮、乾燥、加熱、焼却、及び堆肥化等の処理が行われる。そして、本発明で用いる屎尿汚泥類は、前記処理において得られる、屎尿汚泥(濃縮汚泥及び消化汚泥を含む。)、屎尿汚泥乾燥物、屎尿汚泥炭化物、屎尿汚泥焼却灰、及び屎尿汚泥溶融スラグから選ばれる1種以上である。
屎尿汚泥乾燥物は、屎尿汚泥を天日干し又は乾燥機により乾燥して、含水率を概ね50%以下にしたものである。屎尿汚泥炭化物は、屎尿汚泥又はその乾燥物を加熱して屎尿汚泥に含まれる有機物の一部又は全部を炭化物としたものである。前記加熱温度は好ましくは300〜800℃、より好ましくは500〜700℃である。加熱温度が300℃未満では炭化に時間がかかり、800℃を超えると炭化物が燃焼するおそれがある。炭化物の燃焼を抑制するために、好ましくは無酸素又は低酸素状態で加熱する。炭化物は、本発明のりん酸肥料の製造(焼成)において燃料の一部にもなるため、その分、焼成に要するエネルギーを節約できる。
また、屎尿汚泥焼却灰は屎尿汚泥を焼却して得られる残渣であり、屎尿汚泥溶融スラグは屎尿汚泥焼却灰を1350℃以上で溶融したものである。
【0013】
(ii)カルシウム源
カルシウム源は、りん酸肥料中のCaO等の質量比が図1に示す三角線図の範囲内になるように、屎尿汚泥類と混合する。該カルシウム源として、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、生石灰、消石灰、及び石灰石等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
(2)化学組成
本発明のりん酸肥料は、該りん酸肥料中の、(A)AlとFeの合計、(B)CaO、及び(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=42/36/22〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/46/19〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=27/56/17〕、
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=17/57/26〕、及び、
点(オ)〔(A)/(B)/(C)=32/37/31〕
で囲まれる範囲内にあるものである。該質量比が該範囲内にあれば、りん酸のく溶率が高い。ちなみに、後掲の表2に示すように、前記質量比が図1に示す範囲内にある実施例1〜9のりん酸のく溶率は67%以上である。なお、前記(A)、(B)及び(C)の合計は100であり、前記「囲まれる範囲内」には境界線上も含まれる。
【0015】
本発明のりん酸肥料中のAl/Feの質量比は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは1.0以下である。該比が5.0以下であれば、りん酸のく溶率はより高くなる。また、屎尿汚泥類中の凝集剤は、好ましくは有機高分子及び鉄化合物であり、より好ましくは有機高分子である。りんのく溶率は、有機高分子及び鉄化合物を含む汚泥類を原料にしたりん酸肥料の方が、アルミニウム化合物を含む汚泥類を原料にしたりん酸肥料より高い傾向がある。
【0016】
前記りん酸のく溶率とは、りん酸肥料中のりん酸(リン、P)全量に対するく溶性りん酸(量)の比率(%)であり、前記けい酸の可溶率とは、りん酸肥料中のけい酸(ケイ素、SiO)全量に対する可溶性けい酸(量)の比率(%)である。
く溶性りん酸は肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されているバナドモリブデン酸アンモニウム法により、可溶性けい酸は同法に規定されている過塩素酸法により測定できる。また、調合原料やりん酸肥料中の酸化物の定量は、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法や、前記肥料分析法に規定する方法により行うことができる。
【0017】
2.りん酸肥料の製造方法
該製造方法は、(1)屎尿汚泥類とカルシウム源とを調合して調合原料を得る調合工程と、(2)前記調合原料を、焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成して、焼成物であるりん酸肥料を得る焼成工程とを含む。また、肥料の粉末度等を調整する必要がある場合は、さらに、(3)該焼成物を粉砕して造粒する粉砕及び造粒工程を含むものである。以下に、各工程について説明する。
【0018】
(1)調合工程
該工程は、りん酸肥料中の前記(A)、(B)及び(C)の質量比が、図1に示す三角線図の範囲内になるように、少なくとも屎尿汚泥類とカルシウム源を調合して調合原料を得る必須の工程である。
該工程において、前記原料は、含水スラリー、脱水ケーキ、及び粉粒体等の何れの形態でも用いることができる。
前記原料が含水スラリーや脱水ケーキの場合、水分を有したままで混合するか、又は、各原料を別々に若しくは一緒に乾燥した後に粉砕し混合してもよく、さらには、混合を兼ねて粉砕を行ってもよい。
また、カルシウム源が粉末状であれば、屎尿処理施設においてカルシウム源を屎尿汚泥に直接添加することも可能である。その場合には、カルシウム源も脱水機による汚泥の固液分離の対象となるが、カルシウム源の添加量と汚泥の含水率を考慮すると調合原料の重量増加は少なく、脱水機の負荷が増加しても問題となる程度ではない。
また、焼成炉としてロータリーキルンを用いる場合、ロータリーキルンの前段の位置(例えば、窯尻又は仮焼炉等)に前記各原料を投入し、ロータリーキルンの転動を利用して混合してもよい。
なお、前記原料が粉粒体の場合、さらに混合し易い粒度になるように、必要に応じてボールミル、ローラーミル、又はロッドミル等で粉砕してもよい。
【0019】
各原料の調合方法として、例えば、各原料の一部を電気炉等で焼成した後、該焼成灰中の酸化物を定量し、該定量値と所定の配合に基づき、各原料を調合する方法が挙げられる。該酸化物の定量は、例えば、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。
後記するように、焼成前の調合原料の化学組成は、焼成後のりん酸肥料の化学組成と、焼成による揮発成分を除きほぼ同一であるから、焼成物(りん酸肥料)中の前記(A)、(B)及び(C)の質量比が前記範囲内になるためには、通常、該重量比が前記範囲を満たす調合原料を用いれば十分である。ただし、正確を期すためには、調合原料の一部を電気炉等で焼成して、調合原料中の該重量比と焼成物中の該重量比との相関を事前に把握しておき、該相関に基づき、各原料の調合割合を、目的とする焼成物中の重量比になるように修正することが好ましい。
【0020】
(2)焼成工程
該工程は、調合原料を、焼成炉を用いて焼成する必須の工程である。調合原料は、(i)粉末の状態、(ii)該粉末に水を添加して得たスラリー、又はその脱水ケーキの状態、又は(iii)該粉末にセメント等の造粒助材を添加して、パンペレタイザー等の造粒機、ブリケットマシンやロールプレス等の成形機により造粒や成形した状態で焼成する。
該焼成温度は1150〜1350℃、好ましくは1200〜1300℃である。1150〜1350℃の温度範囲で焼成したりん酸肥料は、りん酸のく溶率やけい酸の可溶率が高い。また、焼成時間は、好ましくは10〜60分、より好ましくは20〜40分である。該時間が10分未満では焼成が不十分であり、60分を超えると製造効率が低下する。
また、焼成工程において用いる焼成炉は、例えば、ロータリーキルン、電気炉等が挙げられる。
【0021】
(3)粉砕及び造粒工程
該工程は、前記焼成物の粒度を調整する工程であり、粉塵の発生を抑制して肥料の取り扱いを容易にするか、又は肥料効果を十分に発揮させるなどの目的で、肥料の粒度を調整する必要がある場合に選択される任意の工程である。該粒度は0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
粉砕手段として、例えば、ジョークラッシャー、ローラーミル、ボールミル、又はロッドミル等を用いることができる。また、造粒手段として、例えば、パン型ミキサー、パンペレタイザー、ブリケットマシン、ロールプレス、又は押出成型機等を用いることができる。
なお、該工程において、肥料の用途に応じて、適宜、りん酸やけい酸を追加したり、窒素、加里、苦土等のその他の肥料成分を新たに添加することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.りん酸肥料の製造
(1)電気炉による焼成
表1に示す化学組成を有する屎尿汚泥焼却灰(a〜f)、及びカルシウム源として炭酸カルシウムを用いて、表2の調合割合に従い調合原料を調製した。
次に、該調合原料を一軸加圧成形機により成形し、直径15mm、高さ20mmの円柱状の調合原料を作製した。そして、該円柱状の調合原料を電気炉内に載置した後、昇温速度20℃/分で表2に示す焼成温度まで昇温し、該温度の下で10分間焼成して焼成物を得た。
該焼成物の肥料特性を確認するため、該焼成物を、目開き212μmのふるいを全通するまで鉄製乳鉢を用いて粉砕し、粉末状のりん酸肥料(実施例1〜9、比較例)を製造した。なお、焼成後のりん酸肥料(焼成物)の化学組成は、揮発成分を除き焼成前の調合原料の化学組成とほぼ同一であった。
【0023】
【表1】
【0024】
2.く溶性りん酸及び可溶性けい酸の測定
りん酸肥料中のく溶性りん酸の測定は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定するバナドモリブデン酸アンモニウム法により、また、可溶性けい酸は同法に規定する過塩素酸法により測定した。また、これらの測定値を用いて、常法により、りん酸のく溶率及びけい酸の可溶率を算出した。その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示すように、本発明のりん酸肥料(実施例1〜9)は、りん酸のく溶率が67%(実施例9)〜100%(実施例1等)、けい酸の可溶率が37%(実施例6)〜100(実施例1等)といずれも高かった。
これに対し、比較例のりん酸肥料は、りん酸のく溶率が33%、けい酸の可溶率は23%であり、実施例と比べ、りん酸のく溶率は著しく低く、けい酸の可溶率も低かった。
図1