特許第6282037号(P6282037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282037リチウムイオン電池のセルのカソード、その製造プロセスおよびこれを組み込んだ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282037
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池のセルのカソード、その製造プロセスおよびこれを組み込んだ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20180208BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180208BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180208BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/58
   H01M4/36 C
   H01M4/139
   H01M10/052
   H01M10/0569
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-5493(P2013-5493)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-152932(P2013-152932A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】1250457
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワルカン バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】エイム−ペロ ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】デュフール ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ソンタグ フィリップ
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−191557(JP,A)
【文献】 特開平02−114446(JP,A)
【文献】 米国特許第09112200(US,B1)
【文献】 米国特許第05749927(US,A)
【文献】 特開2010−287470(JP,A)
【文献】 特表2006−505914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − H01M 4/62
H01M10/05 − H01M10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩および非水電解質溶媒を基礎とする電解質を含むリチウムイオン電池のセルにおいて使用可能なカソードであって、前記カソードは、溶融加工によりかつ溶媒蒸発なしに得られる、活物質と、高分子バインダおよび導電性充填剤を含む添加剤との溶融配合の生成物である架橋された高分子組成物を基礎とし、
前記活物質は少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物を含み、
前記高分子バインダは少なくとも1つの架橋ジエンエラストマーを基礎とし、
前記添加剤は、前記非水電解質溶媒において使用可能な少なくとも1つの不揮発性有機化合物をさらに含み、前記不揮発性有機化合物は、大気圧1.013x105Paで150℃を超える沸点を有し、かつカーボネートであり、
前記架橋された高分子組成物は前記活物質を90%以上の質量分率で含むことを特徴とするカソード。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物は、4V未満の動作電圧を有し、化学式がLiMPO4リチウム化金属Mリン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物は、炭素被覆されており、Mは鉄原子であることを特徴とする、請求項2に記載のカソード。
【請求項4】
前記少なくとも1つの架橋ジエンエラストマーは過酸化物架橋されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項5】
前記少なくとも1つの架橋ジエンエラストマーは水素化ニトリルゴム(HNBR)であり、前記添加剤は有機過酸化物および共架橋剤を含むことを特徴とする、請求項4に記載のカソード。
【請求項6】
前記少なくとも1つの架橋ジエンエラストマーは、前記架橋された高分子組成物内に1%から5%の質量分率で存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項7】
前記少なくとも1つの不揮発性有機化合物は、少なくとも1つのオレフィンの炭酸塩であるカーボネートを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項8】
前記少なくとも1つのオレフィンの炭酸塩は、エチレンカーボネートである請求項7に記載のカソード。
【請求項9】
前記少なくとも1つの不揮発性有機化合物は、前記架橋された高分子組成物内に0.1%から5%の質量分率で存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項10】
前記添加剤はさらに、前記架橋された高分子組成物内に0.05%から0.20%の質量分率で存在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項11】
前記導電性充填剤は、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびこれらの混合体より成る群から選ばれ、かつ前記架橋された高分子組成物内に1%から5%の質量分率で存在することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のカソードを製造するためのプロセスであって、前記カソードは架橋された高分子組成物を基礎とし、前記プロセスは、
a)溶媒蒸発なしに、密閉式混合機または押出機内で、前記活物質と、前記高分子バインダおよび前記不揮発性有機化合物を固体状態で含む前記添加剤とを溶融配合して架橋可能状態にある高分子組成物を得ることであって、この活物質は、少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物を含むこと、及び
b)前記架橋可能状態にある高分子組成物を架橋しかつ場合により熱間成形して、前記架橋された高分子組成物を得ること、を含む製造プロセス。
【請求項13】
ステップa)は、前記高分子バインダを、内部ミキサーにおいて前記架橋可能状態にある高分子組成物の他の成分の粉末プレミックスに配合することによって実行されることを特徴とする、請求項12に記載の製造プロセス。
【請求項14】
ステップa)は60℃から80℃の温度で行われる請求項13に記載の製造プロセス。
【請求項15】
ステップb)は、前記架橋可能状態にある高分子組成物を熱間圧縮することによって実行されることを特徴とする、請求項12または請求項13に記載の製造プロセス。
【請求項16】
次に、前記架橋された高分子組成物を、前記カソードに装備される金属電流コレクタ上へ蒸着するために圧延するステップc)を含むことを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項17】
アノード、カソードおよびリチウム塩および非水電解質溶媒を基礎とする電解質を備える少なくとも1つのセルを備えるリチウムイオン電池であって、前記カソードは請求項1〜8のいずれか一項に規定されたものであることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項18】
前記非水電解質溶媒は前記カソードの前記少なくとも1つの不揮発性有機化合物を含むことを特徴とする、請求項17に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記カソードは、前記架橋された高分子組成物製の少なくとも1つの薄膜と接触する金属電流コレクタを備えることを特徴とする、請求項17または請求項18に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池のセルにおいて使用可能なカソード、このカソードを製造するためのプロセスおよびこのカソードを組み込んだ1つまたは複数のセルを有するリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム蓄電池には、負極がリチウム金属(この材料は、液体電解質が存在する場合に安全上の問題を引き起こす)で製造されるリチウム金属電池、およびリチウムがイオン状態のままであるリチウムイオン電池、という主たる2つのタイプが存在する。
【0003】
リチウムイオン電池は、極性が異なる少なくとも2つの導電性クーロン電極、すなわち負極またはアノード(概して、グラファイト製)と、正極またはカソード(概して、バナジウムまたはコバルトの酸化物等の遷移金属の酸化物製、または、例えば文献、米国登録特許第6514640号明細書または国際出願公開第2011/092283号パンフレットに記述されているもの等のリチウム化リン酸鉄製)とから成り、これらの電極の間にはセパレータが位置決めされ、このセパレータは、イオン伝導率を保証するLi陽イオンを基礎として非プロトン性電解質を吸収する電気絶縁体から成る。これらのリチウムイオン電池に使用される電解質は、通常、アセトニトリル、テトラヒドロフランまたはより高頻度で例えばエチレンまたはプロピレンの炭酸塩等の非水溶媒の混合物中で溶解される、例えば化学式がLiPF、LiAsF、LiCFSOまたはLiClOであるリチウム塩から成る。
【0004】
リチウムイオン電池のカソード活物質は、リチウムのこのカソードへの、かつカソードからの可逆的挿入/除去を可能にし、カソード内のこの活物質の質量分率が高いほど、その容量は高くなる。またカソードは、カーボンブラック等の導電性化合物、およびカソードへ十分な機械的凝集性を与えるために高分子バインダも含んでいなければならない。したがって、リチウムイオン電池は、電池の充電および放電中のアノードとカソードとの間の可逆的なリチウムイオン交換を基礎とし、かつ超軽量に起因してリチウムの物理的性質に負うものであるが、このような電池は高いエネルギー密度を有する。
【0005】
リチウムイオン電池のカソードは、ほとんどの場合、溶媒内にカソードの様々な成分を溶解または分散させるステップと、得られた溶液または分散液を金属電流コレクタ上で拡散するステップと、最後に、この溶媒を蒸発させるステップとを連続して含むプロセスを用いて製造される。高分子バインダは多くのタイプを使用可能であり、まずは、フッ素の存在に起因して高い動作電圧(4Vを超える)で動作するカソードへより容易に適合するPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を挙げることができるが、例えばポリアクリル酸ブチルラテックスを有するポリアクリロニトリル(PAN)も挙げることができる。
【0006】
有機溶媒を用いるリチウムイオン電池のカソードを製造するためのプロセスは、環境および安全性に関して多くの欠点を有する。具体的には、この場合、毒性がある、または可燃性であるこのような溶媒を大量に蒸発させる必要がある。
【0007】
水性溶媒を用いてこれらのカソードを製造するプロセスの場合、その主たる欠点は、カソードがその使用前に徹底的に乾燥されなければならないことにあり、微量の水でもリチウム蓄電池の有効寿命を制限することが知られている。
【0008】
したがって、リチウムイオン電池の場合、溶媒を用いることなく製造されるカソードを作製することが極めて望ましい。文献において、溶融加工技術(例えば、押出成形)を用いてリチウムイオン電池のカソードを製造するためのプロセスが記述されているのは、この文脈によるものである。
【0009】
残念ながら、これらの溶融プロセスは、リチウムイオン電池の場合には重大な難題を引き起こし、既知であるように、カソードがリチウムイオン電池において十分な容量を有するためには、カソードの高分子混合物において少なくとも90%の活物質質量分率が必要とされる。しかしながら、活物質のこのような含有率では、カソード高分子混合物の粘度が極めて高くなり、かつ使用されれば、混合物が過熱する、またはその機械的凝集性を失う危険性が生じる。
【0010】
文献、米国登録特許第6939383号明細書は、リチウムポリマー電池のカソードを溶媒なしに実装するための、イオン伝導性高分子用のポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(グリシジルエーテル)コポリマーを含む高分子組成物の押出成形について記載している。しかしながら、この文献において製造される単カソード高分子組成物における活物質の質量分率は、64.5%でしかない。
【0011】
文献、米国登録特許第5749927号明細書は、リチウムポリマー電池の押出成形による連続的製造のためのプロセスを開示していて、このプロセスは、活物質に、導電体と、ポリマ−、リチウム塩およびこのポリマ−を覆う遙かに過剰なプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート混合物を含む固体電解質組成物とを配合することを含む。この文献においても、カソードの高分子組成物内に存在する活物質の質量分率は70%より少ない。
【0012】
このように、リチウム蓄電池のカソードを製造するためのこれらの既知の溶融プロセスの主たる欠点は、カソード高分子組成物における活物質の質量分率が、特にリチウムイオン電池用の高性能カソードを達成するには不十分であることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国登録特許第6514640号明細書
【特許文献2】国際出願公開第2011/092283号パンフレット
【特許文献3】米国登録特許第6939383号明細書
【特許文献4】米国登録特許第5749927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、これまでに述べた欠点を全て克服する、カソードを製造するためのプロセスを提供することにあり、この目的は、出願人が、意外にも、活物質と、架橋エラストマーマトリクス、導電性充填剤および不揮発性(すなわち、大気圧1.013x10Paで150℃を超える沸点を有する)有機化合物を含む添加剤とが、溶媒蒸発なしに高温配合されれば、リチウム塩および非水溶媒を基礎とする電解質を含むリチウムイオン電池において使用可能なカソード高分子組成物が得られ、組成物におけるこの活物質の分率は明らかに溶融加工によってこれまでに達成されたものより高く、かつ効果的には90%以上であり、1つまたは複数の有機化合物は効果的には電解質用溶媒として使用されることを発見した、という理由で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、リチウム塩および非水溶媒を基礎とする電解質を含むリチウムイオン電池のセルにおいて使用可能な本発明によるカソードは、溶融加工によりかつ溶媒蒸発なしに得られる、活物質と、高分子バインダおよび導電性充填剤を含む添加剤との高温配合反応の生成物である高分子組成物を基礎とし、かつこのカソードは、バインダが少なくとも1つの架橋エラストマーを基礎とするものでありかつこれらの添加剤がさらにこの電解質溶媒において使用可能な少なくとも1つの不揮発性有機化合物を含むものであり、前記組成物は活物質を効果的には90%以上の質量分率で含む。
【0016】
本発明によるカソードにおける活物質のこの極めて高い質量分率は、達成される前記または各セルが高性能セルであること、かつ故に、これらを組み込んだリチウムイオン電池が高性能電池であることを保証する点は留意されるであろう。
【0017】
また、前記組成物における前記少なくとも1つの架橋エラストマーの一様な分布がカソードの機械的強度を保証する点も留意されるであろう。
【0018】
効果的には、前記活物質は、4V未満の動作電圧を有しかつ好ましくは炭素被覆された、化学式C−LiFePOを有する炭素被覆されたリン酸鉄リチウム等の化学式がLiMPOであるリチウム化金属Mリン酸塩(ホスホ−オリビンとも呼ばれる)のような、少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物を含んでもよい。
【0019】
具体的には、本発明の組成物において使用される活物質は、炭素被覆された基本粒子、または炭素被覆または蒸着を含む基本粒子の凝集物より成ってもよいことが留意されるであろう。
【0020】
好ましくは、前記少なくとも1つのエラストマーは過酸化物架橋されたジエンエラストマーであり、さらに好ましくは水素化ニトリルゴム(HNBR)である。同じく好ましくは、前記少なくとも1つのエラストマーは、前記組成物内に1%から5%の質量分率で存在してもよい。
【0021】
効果的には、前記少なくとも1つの不揮発性有機化合物は、好ましくはエチレン等の少なくとも1つのオレフィンの炭酸塩であるカーボネートを含んでもよく、これは、好ましくは電解質組成物において使用される。
【0022】
エチレンカーボネート等のこのようなカーボネートの使用が、効果的には、
− 組成物内の充填剤含有率が増大されることと、
− カソードを製造する従来プロセスで使用される揮発性有機化合物(VOC)の毒性に関する固有のリスクは、このカーボネートが、室温で固体であって取扱いの危険性が遙かに低い生成物であることに起因して回避されることと、
− カソード高分子組成物が、カーボネートを事前に蒸発させることなく使用されること、かつカソードへの電解質の混合は、このカーボネートが現時点でリチウムイオン電池に使用される電解質の主成分の1つであることに起因してより容易にされること、を可能にする点は留意されるであろう。
【0023】
同じく効果的には、前記少なくとも1つの有機化合物は、前記組成物内に0.1%から5%の質量分率で存在してもよい。
【0024】
本発明が、カソードの動作に必要とされる塩類をその製造中に混合できるようにすることは留意されるであろう。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、前記添加剤はさらに、組成物内に0.05%から0.20%の質量分率で存在し、かつ好ましくは、前記少なくとも1つのエラストマーが水素化ニトリルゴム(HNBR)等のジエンエラストマーである場合に有機過酸化物および共架橋剤を含む架橋系を備えてもよい。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、前記導電性充填剤は、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびこれらの混合体より成る群から選ばれてもよく、かつ組成物内に1%から5%の質量分率で存在する。
【0027】
本発明による、先に規定したようなカソードを製造するためのプロセスは、
a)溶媒蒸発なしに、内部ミキサーまたは押出機内で、前記活物質と、前記バインダおよび前記有機化合物を固体状態で含む前記添加剤とを溶融配合して架橋可能状態にある前記組成物を得ることであって、この活物質は、好ましくは化学式がC−LiFePOである炭素被覆されたリチウム化されたリン酸鉄等の少なくとも1つのリチウム化されたポリアニオン化合物または複合物を含むことと、
b)この組成物を架橋しかつ場合により熱間成形して、前記架橋組成物を得ること、を含むことによって特徴づけられる。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、ステップa)は、前記バインダを、例えば内部ミキサーにおいて60℃から80℃の温度で組成物の他の成分の粉末プレミックスに配合することによって実行されてもよい。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、ステップb)は、架橋可能組成物を熱間圧縮することによって実行されてもよい。
【0030】
効果的には、本発明のプロセスは、次に、前記架橋組成物を、前記カソードに装備される金属電流コレクタ上へ蒸着するために圧延するステップc)を含んでもよい。
【0031】
本発明によるリチウムイオン電池は、例えばグラファイトベースのアノードであるアノード、先に規定したようなカソードおよびリチウム塩および非水溶媒を基礎とする電解質を備える少なくとも1つのセルを備える。
【0032】
本発明の別の効果的な特徴によれば、前記電解質溶媒は、カソードの前記少なくとも1つの不揮発性有機化合物を含んでもよい。
【0033】
本発明の別の態様によれば、前記カソードは、前記高分子組成物製の少なくとも1つの薄膜と接触する金属電流コレクタを備える。
【0034】
本発明の他の特徴、優位点および詳細は、例示として行う本発明の実施形態例に関する下記の非限定的説明を読めば明らかとなるであろう。
【実施例】
【0035】
実施例1:
ハーケ内部ミキサーにおいて、70℃でカソード高分子組成物を作製した。本組成物は、質量分率(%)で表記した下記の構成要素を含む。
HNBRバインダ(「テルバン4307」) 2.68
カーボンブラック 2.68
エチレンカーボネート 0.54
活物質 C−LiFePO93.97
架橋系
過酸化ジクミル 0.08
トリアリルシアヌレート(TAC) 0.05
【0036】
この内部ミキサー内へ様々な化合物を、まずは水素化ニトリルゴムを架橋可能ジエンエラストマー(HNBRバインダ)として、次には上述の他の成分の粉末状プレミックスを連続して入れた。この配合、およびバインダの架橋を同時に許容する170℃で10分間の熱間圧縮の後に、リチウムイオン電池のセル内部にカソードを形成することができる厚さ1mmの電極を、このカソードに装備される電流コレクタ上への蒸着後に直接得た。
【0037】
このカソードにおける活物質の(93%を超える)極めて高い質量分率は、得られる前記または各セルが高性能セルであること、故にこれらを組み込んだリチウムイオン電池が高性能電池であることを保証する点は留意されるであろう。
【0038】
本発明によらない「制御」例
実施例1の場合と同じ配合(すなわち、同量の同一成分)を有する「制御」組成物を、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶媒内で前記成分を分散/溶解することによって−すなわち、本発明の溶融プロセスに一致しないプロセスを用いて作製した。この「制御」組成物は、電流コレクタ上を被覆することにより蒸着される。
【0039】
分散/溶解により得られる「制御」カソードは、下記表1に見受けられるように、特に形態学(走査電子顕微鏡「SEM」の顕微鏡写真)、嵩密度および導電性に関連して実施例1のカソードの場合とは極めて異なる固有の物理的性質を有することが観察された。
【0040】
具体的には、溶融加工(例1、溶媒なし)により得られるカソードの嵩密度が1.5から2であって明らかに1より高いこと、すなわち溶媒を伴って得られる「制御」カソードの嵩密度の2倍を超えることは留意されてもよい。
【0041】
【表1】