(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282044
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】放射性汚染物質の貯蔵施設および貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/34 20060101AFI20180208BHJP
G01T 1/00 20060101ALI20180208BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20180208BHJP
G01T 1/167 20060101ALI20180208BHJP
G01T 1/169 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
G21F9/34 C
G21F9/34 E
G01T1/00 A
G01T1/16 A
G01T1/167 C
G01T1/169 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-107569(P2013-107569)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228365(P2014-228365A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】須山 泰宏
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−071812(JP,A)
【文献】
実開昭63−099287(JP,U)
【文献】
特開2003−315463(JP,A)
【文献】
特開平10−186034(JP,A)
【文献】
特開2014−002098(JP,A)
【文献】
米国特許第4844840(US,A)
【文献】
米国特許第4063087(US,A)
【文献】
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について,[online],日本,環境省,2011年10月29日,p.1-6,[平成28年7月29日検索],URL,http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/pdf/;roadmap111029_a-0.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/34
G21F 9/36
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
B09B 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性汚染物質の中間貯蔵施設であって,
汚染物質が貯蔵され,周囲が遮水部によって水密に覆われた貯蔵部と,
前記貯蔵部の少なくとも一部に配置され,放射線量を測定する測定器と,
前記貯蔵部から離隔した位置に配置され,前記貯蔵部内の放射性汚染物質の放射線量または放射能濃度の減衰予想曲線と,前記測定器で測定された前記貯蔵部内の実際の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度とを合わせて表示部に表示する放射能濃度算出部と,
を具備することを特徴とする放射性汚染物質の貯蔵施設。
【請求項2】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され,
前記測定器の少なくとも一部が無線送信機を具備し,
前記測定器で測定されたデータを,前記貯蔵部の外部に配置された受信機で受信することを特徴とする請求項1に記載の放射性汚染物質の貯蔵施設。
【請求項3】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され,
前記測定器の少なくとも一部はケーブルによって情報の伝送を行い,
前記ケーブルは,管体により外部に導出され,
前記管体の外周部と前記遮水部との間は,遮水シートによって塞がれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射性汚染物質の貯蔵施設。
【請求項4】
前記測定器および前記ケーブルは光ファイバであり,前記光ファイバによって放射線量を計測することを特徴とする請求項3記載の放射性汚染物質の貯蔵施設。
【請求項5】
放射性汚染物質の中間貯蔵方法であって,
汚染物質が貯蔵され,周囲が遮水部で水密に覆われた貯蔵部の少なくとも一部に,放射線量を測定する測定器を配置し,
前記貯蔵部から離隔した位置に配置される表示部に,前記貯蔵部内の放射性汚染物質の放射線量または放射能濃度の減衰予想曲線と,前記測定器で測定された前記貯蔵部内の実際の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度とを合わせて表示することを特徴とする放射性汚染物質の貯蔵方法。
【請求項6】
前記測定器で測定された前記汚染物質の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度の低減量から,複数の既存の放射性物質の存在比を算出して,前記減衰予想曲線を補正することを特徴とする請求項5に記載の放射性汚染物質の貯蔵方法。
【請求項7】
前記貯蔵部内での条件に対応した条件で,あらかじめ放射線量と放射能濃度の相関を計測し,前記相関を用いて,前記測定器で測定された前記汚染物質の放射線量から,前記汚染物質の放射能濃度情報を取得することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の放射性汚染物質の貯蔵方法。
【請求項8】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され,
前記測定器の少なくとも一部はケーブルによって情報の伝送を行い,
前記ケーブルは,管体により外部に導出され
前記管体の外周部と前記遮水部との間は,遮水シートによって塞がれ,
前記管体は,前記貯蔵部の内部まで配置され,前記測定器は,前記管体の内部に設けられ,
前記測定器を前記管体の内部で上下に移動させて,複数の位置の放射線量を測定することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の放射性汚染物質の貯蔵方法。
【請求項9】
前記貯蔵部内に配置される前記汚染物質と同様の汚染物質を,前記貯蔵部とは異なる,保管部に収容し,
前記保管部から,定期的に内部の前記汚染物質を取り出して,取り出したサンプルの放射線能濃度を測定し,測定されたデータと,前記測定器により測定されたデータを比較して,測定データの信頼性を確認することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれかに記載の放射性汚染物質の貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性汚染物質を一時的に貯蔵する中間貯蔵施設および貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電などで発生する放射性廃棄物は、例えば、地中深くに埋設して処分される方法が考えられていた。この際、地中の廃棄物温度などを地上で監視する方法が提案されている(例えば特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−306299号公報
【特許文献2】特開2003−4895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような地下廃棄物処分場は、半減期が数億年となるような放射性物質を処分するものであり、基本的に内部の放射性廃棄物を再度取り出すことは考慮されていない。
【0005】
一方、原発事故などによって汚染された地域の除染で取り除かれた土や放射性物質に汚染された廃棄物は、最終処分するまでの間、安全に集中的に管理・保管するために、一時的に中間貯蔵施設に貯蔵される。中間貯蔵施設内で貯蔵される放射性汚染物質の放射能濃度は、時間が経過するに従って低減する。このように、中間貯蔵施設での貯蔵によって、放射性汚染物質の放射能濃度が低下することで、その後安全に処分が可能となる。
【0006】
しかし、中間貯蔵施設内部の放射性汚染物質の放射能濃度が、計算通り低減しているかどうかは、付近の住民にとって大きな関心事である。また、貯蔵後の放射性汚染物質の放射能濃度によって、その後の処分方法が変わる可能性があるため、中間貯蔵施設内部の放射性汚染物質の放射能濃度を知ることは、最終処分方法を決定する上でも重要である。
【0007】
しかし、通常、放射性汚染物質の放射能濃度を測定するためには、ゲルマニウム半導体検出器などを用いる必要がある。このため、放射能濃度を測定するためには、中間貯蔵施設内部の放射性汚染物質を取り出す必要がある。しかし、定期的に中間貯蔵施設を解放して内部の放射性汚染物質を取り出すことは、却って住民の不安をあおることになる。また、このような作業は危険を伴う。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、安全に中間貯蔵施設内の放射性汚染物質の放射能濃度を把握することが可能な放射性汚染物質の貯蔵施設および貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため,第1の発明は,放射性汚染物質の中間貯蔵施設であって,汚染物質が貯蔵され,周囲が遮水部によって水密に覆われた貯蔵部と,前記貯蔵部の少なくとも一部に配置され,放射線量を測定する測定器と,前記貯蔵部から離隔した位置に配置され,前記貯蔵部内の放射性汚染物質の
放射線量または放射能濃度の減衰予想曲線と,前記測定器で測定された前記貯蔵部内の実際の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度とを合わせて表示部に表示する放射能濃度算出部と,を具備することを特徴とする放射性汚染物質
の貯蔵施設である。
【0011】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され、前記測定器の少なくとも一部が無線送信機を具備し、前記測定器で測定されたデータを、前記貯蔵部の外部に配置された受信機で受信してもよい。
【0012】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され、前記測定器の少なくとも一部はケーブルによって情報の伝送を行い、前記ケーブルは、管体により外部に導出され前記管体の外周部と前記遮水部との間は、遮水シートによって塞がれてもよい。
【0013】
前記測定器および前記ケーブルは光ファイバであり、前記光ファイバによって放射線量を計測してもよい。
【0014】
第1の発明によれば、貯蔵部内部に放射線量を測定する測定器を配置することで、その測定条件における放射線量を知ることができる。また、その条件における放射線量から、放射性汚染物質の放射能濃度を得ることで、内部の放射性汚染物質を取り出すことなく、放射能濃度を把握することができる。
【0015】
なお、放射線量から放射能濃度を知るためには、例えば、測定された放射線量の低減量を、測定対象となる放射性物質の理論上の減衰特性にあてはめ、この際の放射能濃度の初期値からの低減量を算出することで得ることができる。この場合、放射能濃度の初期値は、別途測定しておけばよい。
【0016】
また、表示部に、理論上の放射線量低減曲線または放射能濃度低減曲線を表示し、その曲線上に、実測した放射線量またはこれを用いて導き出した放射能濃度を合わせることで、実際に、推定通りに放射能濃度が低減していることを視覚的に知ることができる。
【0017】
また、測定器のデータを無線送信機によって外部に送信することで、密封された閉空間にケーブルを貫通させる必要がない。したがって、汚染物質の流出や、水分の混入などの恐れがない。
【0018】
また、データの取得および電力の供給をケーブルによって行うこともできる。この場合、遮水部を貫通する管体を設け、管体の外周面と遮水部とを遮水シートで塞ぐことで、内部への水分の混入を防止することができる。なお、管体の端部は、水が入らないように、キャップを設けてもよく、下方に向けて屈曲させてもよい。
【0019】
また、測定器およびケーブルが光ファイバであれば、設置が容易であり、漏電などの恐れもない。
【0020】
第2の発明は,放射性汚染物質の中間貯蔵方法であって,汚染物質が貯蔵され,周囲が遮水部で水密に覆われた貯蔵部の少なくとも一部に,放射線量を測定する測定器を配置し,前記貯蔵部から離隔した位置
に配置される表示部に,前記貯蔵部内の放射性汚染物質の
放射線量または放射能濃度の減衰予想曲線と,前記測定器で測定された前記貯蔵部内の実際の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度とを合わせて表示することを特徴とする放射性汚染物質の貯蔵方法である。
【0022】
前記測定器で測定された前記汚染物質の放射線量またはこれにより導き出された放射能濃度の低減量から、複数の既存の放射性物質の存在比を算出して、前記減衰予想曲線を補正してもよい。
【0023】
前記貯蔵部内での条件に対応した条件で、あらかじめ放射線量と放射能濃度の相関を計測し、前記相関を用いて、前記測定器で測定された前記汚染物質の放射線量から、前記汚染物質の放射能濃度情報を取得してもよい。
【0024】
前記測定器は前記貯蔵部内に複数配置され、前記測定器の少なくとも一部はケーブルによって情報の伝送を行い、前記ケーブルは、管体により外部に導出され前記管体の外周部と前記遮水部との間は、遮水シートによって塞がれ、前記管体は、前記貯蔵部の内部まで配置され、前記測定器は、前記管体の内部に設けられ、前記測定器を前記管体の内部で上下に移動させて、複数の位置の放射線量を測定してもよい。
【0025】
前記貯蔵部内に配置される前記汚染物質と同様の汚染物質を、前記貯蔵部とは異なる、保管部に収容し、前記保管部から、定期的に内部の前記汚染物質を取り出して、取り出したサンプルの放射線能濃度を測定し、測定されたデータと、前記測定器により測定されたデータを比較して、測定データの信頼性を確認してもよい。
【0026】
第2の発明によれば、放射線量から、放射性汚染物質の放射能濃度を得ることができる。したがって、内部の放射性汚染物質を取り出すことなく、放射能濃度を把握することができる。
【0027】
また、表示部に、理論上の放射線量低減曲線または放射能濃度低減曲線を表示し、その曲線上に、実測した放射線量またはこれを用いて導き出した放射能濃度を合わせることで、実際に、推定通りに放射能濃度が低減していることを視覚的に知ることができる。
【0028】
また、放射線量(放射能濃度)から、複数の放射性物質の存在比を知ることができる。例えば、Cs134とCs137とが混在する場合、これらの半減期は全く異なる。このため、放射線量(放射能濃度)の低減量を把握することで、これらの存在比を算出することができる。このようにすることで、より正確な放射能濃度予測を行うことができる。
【0029】
また、測定器で測定された放射線量から、貯蔵されている放射性汚染物質の放射能濃度を知るためには、あらかじめ放射線量と放射能濃度の相関を取り、これを用いることもできる。この場合、放射線量の測定方法は、中間貯蔵施設内部における測定器での測定条件と同一の条件で行われる。このような相関を用いることで、測定器で実際に得られた放射線量の絶対値から放射能濃度の絶対値を算出することができる。
【0030】
また、管体内部に測定器を設け、管体内で、測定器の上下位置を移動させて、放射線量を測定することで、貯蔵部内の上下の複数の位置での放射線量変化を知ることができる。例えば、内部の水分の移動などによって、貯蔵部内において、放射性物質の移動がないかを把握することができる。
【0031】
また、別に設けられて保管されたサンプルについて、放射能濃度を定期的に測定し、貯蔵部内の放射能濃度データと比較することで、確実に放射能濃度が低減していることを確認することができる。このため、測定データの信頼性を向上させることができる。なお、サンプルは少量でよいため、中間貯蔵施設のような大掛かりな施設は不要であるため、放射能漏れの対策も容易である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、安全に中間貯蔵施設内の放射性汚染物質の放射能濃度を把握することが可能な放射性汚染物質の貯蔵施設および貯蔵方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】
図1のE部拡大図であり、ガス抜き管17と遮水部5との遮水状態を示す図。
【
図3】表示部での表示例を示す図で、(a)は放射線量低減予想曲線を示す図、(b)は、これに実測した放射線量を合わせた状態を示す図。
【
図4】放射能濃度の低減予想曲線と実際に算出した放射能濃度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態にかかる放射性汚染物質の中間貯蔵施設について説明する。
図1は中間貯蔵施設1の立面図である。中間貯蔵施設1は、主に汚染物3を貯蔵する貯蔵部と、貯蔵部を覆う遮水部5と、汚染物3の放射線量を測定する測定器7と、ガス抜き管17と、サンプル保管部13等から構成される。
【0035】
中間貯蔵施設1の貯蔵部は、一部が地下に位置し、上部は覆土12で覆われる。なお、貯蔵部の形態や位置は、図示した例には限られず、貯蔵部全体が完全に地中に位置してもよく、地上に位置して、全体に覆土12が設けられてもよい。また、中間貯蔵施設1は、傾斜地に形成してもよい。なお、覆土12の厚さは、30cm以上であることが望ましく、50cm以上とすることがさらに望ましい。覆土12の厚さが30cmであれば、内部の汚染からの放射線の97.5%を遮蔽することが可能であり、覆土12の厚さが50cmであれば、99.8%の遮蔽が可能である。また、貯蔵部は、コンクリート構造物で形成されてもよい。コンクリートであれば、30cmで放射線の98.6%を遮蔽可能である。
【0036】
貯蔵部には、汚染物3が貯蔵される。汚染物3は、放射能で汚染された地域の除染で取り除かれた土や放射性物質に汚染された廃棄物等である。貯蔵部に貯蔵される汚染物3の形態は、容器やフレキシブルコンテナバック等に入れられた状態であってもよく、または、コンテナバック等から取り出された汚染物のみであってもよい。
【0037】
貯蔵部の外周部には、遮水部5が設けられる。遮水部5は、例えば遮水シートや粘土質の土壌で形成される。遮水部5は、貯蔵部内部への雨水等の浸入や貯蔵部からの水等の流出を防止する。なお、貯蔵部全体に対して遮水性を確保できれば、遮水部5の形態は問わない。例えば、遮水部5をコンクリートで構成してもよい。
【0038】
貯蔵部内部には、汚染物3とともに測定器7が配置される。測定器7は、例えばγ線検出器などである。測定器7は、放射線量(例えばμSv/h)を測定可能である。測定器7は、貯蔵部内において複数個所に配置される。特に、測定器7は、上下方向で異なる位置に配置されることが望ましい。上下方向の複数個所で測定することで、例えば、貯蔵部内部で放射性物質が水分などとともに下方に移動した場合にも、その移動を把握することができる。
【0039】
なお、測定器7による放射線量の測定値は、周囲の測定条件などによって変動する。例えば、周囲の汚染物3の密度などによっても変動する。このため、汚染物3の水分量が変化すると、汚染物3の実際の放射能濃度の変化とは別に、放射線量の測定値が変化する恐れがある。このため、測定器7の近傍に、水分量のセンサを配置し、水分量によって、測定器7による測定値の補正を行ってもよい。すなわち、基準状態の水分量での測定値に補正して、その位置での放射線量としてもよい。
【0040】
中間貯蔵施設1は、覆土12および遮水部5を貫通し、内部の貯蔵部と外部とを連通するガス抜き管17が設けられる。ガス抜き管17は、覆土12の上部から突出し、先端が下方に向けて屈曲する。このため、ガス抜き管17の内部に、外部から水が浸入することを防止することができる。ケーブル18は、ガス抜き管17の内部を通って、外部に導出される。なお、ガス抜き管17が不要である場合には、遮水部5を貫通する他の管体を設ければよい。この場合、雨水の浸透を防止した形状でケーブルを敷設すればよい。
【0041】
図2は、
図1のE部拡大図である。遮水部5が遮水シートで構成されている部位において、遮水部5を貫通するガス抜き管17の外周部と遮水部5との間には遮水シート19が溶着等によって接合される。すなわち、遮水シート19によって、ガス抜き管17と遮水部5の隙間が塞がれる。このようにすることで、ガス抜き管17の外周部から、水分が貯蔵部内に浸入することを防止することができる。なお、ガス抜き管17の遮水部5よりも下方(貯蔵部内)に位置する部位には、複数の孔21が設けられる。このようにすることで、より確実に、内部のガスを外部に放出することができる。
【0042】
測定器7で測定された情報は、例えばケーブルやネットワークを介して、中間貯蔵施設1とは離隔したサーバや端末等に送られ、図示を省略した表示部に表示される。
図3(a)は、表示部での表示例であり、貯蔵初期(または放射能汚染初期)からの放射線量の減衰予想曲線を示す。例えば、放射性物質が、Cs134とCs137の混合物である場合、これらの半減期はそれぞれ、Cs134が2年、Cs137が30年である。したがって、測定開始時の放射線量を1とすると、Cs134は、約2年で放射線量が半分となる(図中B線)。また、Cs137は、約30年で放射線量が半分となる(図中A線)。
【0043】
ここで、Cs134とCs137とが、1:1の存在比である場合、半減期の短いCs134からの放射線量がCs137よりも多くなるため、放射線量の合算値は、Cs134:Cs137=7.33:2.67の比率となる。したがって、放射線量の合算値は、曲線Cのようになる。すなわち、Cs134とCs137とが、1:1の存在比である場合、測定される放射線量の減衰曲線はC曲線のように予測される。
【0044】
図3(b)は、
図3(a)に対して、測定器7によって測定された測定結果(放射線量)を重ねあわせた図である。なお、測定結果は、各測定器7毎に表示させてもよく、これらを平均してもよい。表示部に、減衰予測曲線と測定結果を合わせて表示することで、放射線量が確実に低下していることを視覚的に把握することができる。なお、表示部は、例えばサーバや端末等のディスプレイであればよい。
【0045】
ここで、測定された測定結果を結ぶ曲線が、予測される曲線Cとずれる場合がある。例えば、Cs134とCs137の混合比が、完全に1:1ではない場合である。この場合には、測定結果から、新たな減衰予測曲線Dを算出することができる。例えば、測定結果から、Cs134とCs137の存在比を逆算し、これによって、減衰予想曲線を補正すればよい。このようにすることで、より正確な将来の放射線量を予測することができる。
【0046】
図4は、さらに、貯蔵初期(または放射能汚染初期)からの放射能濃度(Bq/kg)の減衰予想曲線を示す。放射能濃度の算出は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、貯蔵時の放射能濃度を計測等によって得る。この場合には、ゲルマニウム半導体検出器などの公知の装置を用いればよい。次に、前述したように、放射線量の推移を測定器7で測定し、必要に応じて物質割合を算出する。これにより算出された放射線量の推移から、理論上の放射能濃度の減衰量を得ることができる。
【0047】
図示した例では、汚染物のCs134の放射能濃度の推移(曲線E)と、Cs137の放射能濃度の推移(曲線D)と、これらが1:1である場合での放射能濃度の理論値(曲線F)を合わせて表示し、さらに、実測された放射線量から推定される放射能濃度をプロットする。また、放射性物質の存在比を補正した場合には、これによる減衰曲線(曲線G)を合わせて表示する。以上により、現在および将来の汚染物の放射能濃度を知ることができる。なお、このような表示部への表示や、放射線量、放射能濃度の減衰曲線の算出及び補正は、例えばコンピュータ(CPU、記憶部など)によって行うことができる。
【0048】
また、放射線量から放射能濃度を算出する方法としては、あらかじめ、それらの相関を求めておいてもよい。
図5は、線量率と放射能濃度との相関を示す図である。まず、貯蔵部内での測定器7による測定と同条件で、汚染物の線量率の測定を行い、その測定結果と、その際の放射能濃度の測定結果から、相関(図中H)を算出する。この相関を用いて、測定器7により測定された放射線量から放射能濃度を算出してもよい。
【0049】
このように、本発明では、測定器7によって、貯蔵部内の汚染物3の放射線量の変化を監視し、得られた放射線量から、汚染物の放射能濃度情報を算出する。このため、汚染物3の放射能濃度を知ることができる。また、この放射能濃度を表示部に表示することで、周囲の住人が、実際に放射能濃度が減少していることを視覚的に把握することができる。また、貯蔵期間が終了する前に、汚染物の放射能濃度を知ることができるため、その後の最終処理方法を迅速に決定することができる。
【0050】
なお、
図1に示すように、中間貯蔵施設とは別に、例えばコンクリートなどで密封されたサンプル保管部13を設けてもよい。サンプル保管部13には、少量のサンプル15が保管される。サンプル15は、汚染物3と同一の物質である。サンプル保管部13は、内部のサンプル15を取り出すことができる。このため、所定の間隔で、内部のサンプルの放射能濃度を測定することができる。このようにして、サンプル15の実際に測定された放射能濃度を、表示部に表示させることで、放射能濃度が正確であることを確認することができる。なお、測定後のサンプル15は、再度サンプル保管部13内で保管される。
【0051】
以上、本実施形態によれば、貯蔵部からの汚染物3や水分等の漏れが生じることがなく、汚染物3を貯蔵することができる。また、内部の汚染物3を採取することなく、貯蔵部内部の汚染物3の放射能濃度の変化を知ることができる。特に、放射線量の測定器7が貯蔵部の内部に配置されるため、外部からの放射線量の影響を受けることを防止することができる。例えば、測定器を中間貯蔵施設の周辺に配置しただけでは、スカイシャインの影響を受け、貯蔵部内の汚染物3の放射能濃度を正確に把握することは困難である。なお、外部からの放射線量の影響を防止するためには、測定器7は、貯蔵部の外周部(遮水部5)から、1m程度内部に離して配置することが望ましい。
【0052】
また、測定器7が外部とケーブル18で接続されるため、測定器7への電力供給や、測定器7からの情報取得が容易である。また、この際、ケーブル18が、ガス抜き管17を利用して外部に引き出されるため、ケーブル18の導出が容易である。また、ガス抜き管17は、遮水シート19によって、遮水部5との遮水性が確保されるため、貯蔵部内への水の浸入を防止することができる。
【0053】
また、測定器7を貯蔵部内で上下方向に異なる位置に配置することで、貯蔵部内での、放射性物質の移動を把握することができる。このため、より正確な放射能濃度を知ることができる。また、サンプル保管部13で別途サンプル15を保管し、所定の間隔で、放射能濃度を測定することで、貯蔵部内の汚染物3の放射能濃度と比較することができる。したがって、放射線量から求められた放射能濃度が、正確であるかどうかを把握することができる。
【0054】
また、得られた放射線量の低減曲線から、放射性物質の存在比を算出することで、より精度の高い、放射能濃度の低減予想曲線を得ることができる。
【0055】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる中間貯蔵施設1aを示す図である。なお、以下の説明において、中間貯蔵施設1と同様の機能を奏する構成については、
図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。中間貯蔵施設1aは、中間貯蔵施設1と略同様の構成であるが、測定器7がケーシング23内に配置される点で異なる。
【0056】
ケーシング23は、貯蔵部の下方まで配置され、覆土12の上部から、端部が露出する。ケーシング23の底部は、塞がれており、上部には、例えばキャップが設けられて塞がれる。ケーブル18は、キャップから外部に導出される。なお、ケーシング23と遮水部5との遮水性は、
図2と同様の方法で確保される。また、キャップ等によって、ケーシング23内部への水分の浸入も防止される。
【0057】
ケーシング23の内部に配置された測定器7により、ケーシング23外部の汚染物3の放射線量が測定される。なお、ケーシング23によって遮蔽される放射線量は、あらかじめ算出される。
【0058】
中間貯蔵施設1aでは、測定器7は、ケーシング23の内部で、上下に移動させることが可能である。測定器7の移動は、移動装置を配置して遠隔装置で行うこともできる。貯蔵部内の上下方向の複数個所で、放射線量を測定することで、前述したように、貯蔵部内での放射性物質の移動を把握することができる。また、位置による放射線量ばらつきなどを把握することができる。
【0059】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、測定器7がケーシング23内に配置されるため、測定器7へ水分等が付着することを防止することができる。また、ケーシング23内部で、測定器7を上下に移動させることができるため、上下の複数個所で、放射線量を測定することができる。
【0060】
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態にかかる中間貯蔵施設1bを示す図である。中間貯蔵施設1bは、中間貯蔵施設1と略同様の構成であるが、測定器7に無線送信機9が接続される点で異なる。
【0061】
測定器7は、無線送信機9と接続される。無線送信機9は、所定間隔(例えば1日1回)で、測定器7による放射線量測定結果を外部に無線で送信する。貯蔵部の外部には、無線受信機11が配置される。なお、無線受信機11は、無線送信機9からの情報を受信可能な距離に配置される。したがって、必要に応じて、無線受信機11は複数台配置されてもよく、または、1台の無線受信機11で、複数台の無線送信機9からの情報を受信してもよい。なお、無線送信機9から送信される情報としては、例えば、測定器7で測定された放射線量情報と、測定器7の識別情報である。
【0062】
無線受信機11で受信された情報は、例えばケーブルやネットワークを介して、中間貯蔵施設1とは離隔した位置に送信される。無線受信機11から送信された情報は、図示を省略した表示部に表示される。なお、測定器7および無線送信機9は、例えばバッテリーで駆動する。また、無線送信機9は、数kHz程度の低周波で情報を送信することで、土中での減衰の影響を小さくすることができる。なお、低周波とすることで、情報量は少なくなるが、一日一回程度の送信であれば、問題はない。
【0063】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、測定器7による測定結果は、無線送信機9によって外部に送信される。このため、ケーブルなどが遮水部5を貫通することがなく、貯蔵部の遮水性を高めることができる。この際、測定器7等は、バッテリーによって駆動されるが、測定周期や送信周期が比較的長いため、長期の使用にも耐えることができる。
【0064】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、放射線のシンチレーション効果を用いた光ファイバによる放射線量の測定方法が知られている(例えば特開平10−186034号公報)。したがって、測定器7およびケーブル18を光ファイバで構成することで、貯蔵部内部の放射線量を計測することができる。このようにすることで、貯蔵部内部へ電子機器を配置する必要がないため、信頼性が高い。
【符号の説明】
【0066】
1、1a、1b………中間貯蔵施設
3………汚染物
5………遮水部
7………測定器
9………無線送信機
11………無線受信機
12………覆土
13………サンプル保管部
15………サンプル
17………ガス抜き管
18………ケーブル
19………遮水シート
21………孔
23………ケーシング