(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282054
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】セメントキルン排ガスの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/60 20060101AFI20180208BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20180208BHJP
B01D 53/34 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
C04B7/60
B01D53/64 100
B01D53/34ZAB
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-144084(P2013-144084)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-17004(P2015-17004A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】輪達 仁司
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−355531(JP,A)
【文献】
特開2000−215811(JP,A)
【文献】
特開昭60−184612(JP,A)
【文献】
特開2009−213999(JP,A)
【文献】
特開2010−116283(JP,A)
【文献】
特開2003−154233(JP,A)
【文献】
特開2011−088770(JP,A)
【文献】
特開2001−263625(JP,A)
【文献】
特開2014−177364(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0000406(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0315055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させる加熱装置と、
該揮発した水銀を前記加熱装置から排出されたガスで搬送するガス管路の管径を調整する管径調整手段と、
該搬送された揮発水銀を回収する水銀回収装置とを備えることを特徴とするセメントキルン排ガスの処理装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、Uターンキルン又は外熱キルンであることを特徴とする請求項1に記載のセメントキルン排ガスの処理装置。
【請求項3】
前記揮発した水銀を搬送する際のガス流量を、前記ダスト1kg当たり0.05m3N以上2.0m3N以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントキルン排ガスの処理装置。
【請求項4】
セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させ、
揮発した水銀を前記加熱に用いたガスで搬送するガス管路の管径を調整し、
該搬送された揮発水銀を回収することを特徴とするセメントキルン排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンから排出される燃焼排ガスから水銀を回収する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルンの排ガスには、極微量の金属水銀(Hg)が含まれている。その起源は、セメントの主原料である石灰石等の天然原料が含有する水銀の他、フライアッシュ等のリサイクル資源に含まれる水銀である。セメントキルン排ガス中の水銀が増加すると、大気汚染の原因となる虞があり、また、フライアッシュ等のリサイクル資源利用拡大の阻害要因となる虞もある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1等には、
図2に示すように、空気A2を加熱する熱風炉12と、熱風炉12から排出されたガスG4に、セメントキルン排ガスに含まれる、水銀を含むキルンダストD4を投入する抽気ダクト13と、キルンダストD4を含む水銀含有ガスG5を集塵して水銀含有ガスG6と水銀除去ダストD5とに分離するサイクロン14と、サイクロン14から排出された水銀含有ガスG6を集塵して水銀含有ガスG7と水銀除去ダストD6とに分離するバグフィルタ15と、バグフィルタ15から排出された水銀含有ガスG7から熱回収するユングストローム型熱交換器16と、ユングストローム型熱交換器16からファン17を介して供給される水銀含有ガスG8に含まれる水銀を回収する活性炭吸着塔19と、ユングストローム型熱交換器16で生じた熱を熱風炉12に供給するファン18とを備えるセメントキルン排ガスの処理装置11が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−88770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1等に記載の処理装置によれば、セメントキルン排ガスに含まれる水銀を効率よく回収することができる。しかし、キルンダストD4を加熱したガスG4によってキルンダストD4や水銀含有ガスG5を搬送するため、加熱に必要なガス量の10倍以上のガス量が必要となる。そのため、ユングストローム型熱交換器16での水銀含有ガスG7と空気A3との熱交換効率が低下すると共に、抽気ダクト13、サイクロン14やバグフィルタ15等の固気分離装置、活性炭吸着塔19等の関連設備も大型化せざるを得ず、設備コスト及び運転コストが高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のセメントキルン排ガスの処理装置は、セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させる加熱装置と、該揮発した水銀を前記加熱装置から排出されたガスで搬送する
ガス管路の管径を調整する
管径調整手段と、該搬送された揮発水銀を回収する水銀回収装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置によれば、
管径調整手段を備えるため、加熱装置から排出されたガスが少量であっても揮発した水銀を安定して搬送することができ、関連設備の小型化が可能となるため、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することができる。
【0009】
上記セメントキルン排ガスの処理装置において、前記加熱装置をUターンキルン又は外熱キルンとすることがで
きる。
【0010】
また、前記揮発した水銀を搬送する際のガス流量を、前記ダスト1kg当たり0.05m
3N以上2.0m
3N以下とすることができる。
【0011】
さらに、本発明のセメントキルン排ガスの処理方法は、セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させ、揮発した水銀を前記加熱に用いたガスで搬送する
ガス管路の管径を調整し、該搬送された揮発水銀を回収することを特徴とする。この方法によれば、加熱に用いたガスが少量であっても揮発した水銀を安定して搬送することができ、関連設備の小型化が可能となるため、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】従来のセメントキルン排ガスの処理装置の一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置の一実施の形態を示し、この処理装置1は、セメントキルン排ガスに含まれる、水銀を含むキルンダストD1及び空気A1が供給され、水銀含有ガスG1と水銀除去ダストD2とに分離するUターンキルン2と、Uターンキルン2にキルンダストD1を加熱するための高温空気Hを供給する熱風炉3と、Uターンキルン2から排出される水銀含有ガスG1を集塵して水銀含有ガスG2と水銀除去ダストD3とに分離するバグフィルタ4と、バグフィルタ4から排出された水銀含有ガスG2に冷却用空気Cを導入する冷風取入部5と、ファン6を介して供給された水銀含有ガスG2から水銀を回収する活性炭吸着塔7とを備える。
【0016】
Uターンキルン2は、水平軸の周りに緩やかに回転する円筒と、傾斜する案内羽根を有する仕切壁とを備え、粉粒体の内筒内充填率(ホールドアップ)を従来の10%以下から30%〜40%と高めたことにより、上記円筒を小型化したものである。また、粉粒体を理想的なピストン流れとすることができ、さらに、仕切壁を円筒内に備えることで、粉粒体の移動速度を大きくすることができる。この構成により、粉粒体に任意の滞留時間特性を与えることができる。Uターンキルン2には、吐出口に絞りが設けられ、これによってガスの流速を調整することができる。Uターンキルン2に代えて、外熱キルン等を用いることもできる。
【0017】
加熱装置としての熱風炉3は、Uターンキルン2に熱風を吹き込むために備えられ、Uターンキルン2の底部に高温空気Hを導入する。この熱風炉3は、Uターンキルン2でキルンダストD1を持ち上げると共に、キルンダストD1を加熱してキルンダストD1中の水銀を揮発させる。
【0018】
バグフィルタ4は、900℃程度までの耐熱性を有する高耐熱型のバグフィルタであることが望ましい。このようなバグフィルタとしては、ハニカムセル化した棒状のセラミック管を複数配列したものや、シート状のセラミックフィルタを用いたものなど、様々なタイプのものが開発されている。本発明においては、水銀含有ガスG1に含まれる微細粒子を回収し得るものであれば、フィルタのタイプは特に限定されない。
【0019】
水銀回収装置としての活性炭吸着塔7は、ファン6によって導入された水銀含有ガスG2中の水銀を回収するために備えられる。ここで、冷風取入部5から導入された冷却用空気Cによって水銀含有ガスG2の温度を活性炭に通ガス可能な温度(例えば100℃程度)まで低下させる。活性炭吸着塔7で使用される活性炭としては、市販の活性炭において、より水銀回収能力に優れる活性炭を選定することが望ましい。特に、水銀吸着用として調整された硫黄添着処理が施されている活性炭が好適である。
【0020】
次に、上記構成を有するセメントキルン排ガス処理装置1の動作について、
図1を参照しながら説明する。
【0021】
キルンダストD1及び空気A1をUターンキルン2に同時に供給する。供給されたキルンダストD1は、Uターンキルン2の回転によって案内羽根の捩り角が前進し、キルンダストD1が送り込まれる。熱風炉3の高温空気HをUターンキルン2の底部に導入し、Uターンキルン2内のキルンダストD1を間接加熱してキルンダストD1に含まれる水銀を揮発させる。Uターンキルン2から排出される水銀除去ダストD2はセメント原料等に利用する。
【0022】
Uターンキルン2の吐出口に設けられた絞りによって、Uターンキルン2から排出されるガスの流速を水銀含有ガスG1の搬送に適した速度に調整し、水銀含有ガスG1をバグフィルタ4に供給する。ここで、水銀含有ガスG1を搬送する際のガス流量は、ダスト1kg当たり0.05m
3N〜2.0m
3N程度である。
【0023】
バグフィルタ4において、水銀含有ガスG2と水銀除去ダストD3とに分離して水銀除去ダストD3を回収し、セメント原料等として利用する。水銀含有ガスG2は、冷風取入部5から取り入れた冷却用空気Cによって冷却し、排気ファン6を介して活性炭吸着塔7に供給する。活性炭吸着塔7において水銀含有ガスG2中の水銀を回収し、回収後の排ガスG3を大気に放出する。
【0024】
以上のように、本実施の形態では、Uターンキルン2の吐出口に設けた絞りでガスの流速を調整し、熱風炉3から排出された少量のガスによって水銀含有ガスG1を安定して搬送することができるため、関連設備の小型化が可能となり、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することができる。
【0025】
尚、上記実施の形態では、Uターンキルン2の吐出口に絞りを設けてガスの流速を調整したが、このような絞り以外にも、Uターンキルン2からバグフィルタ4までのガス管路の管径を調整するなど、水銀含有ガスG1を活性炭吸着塔7まで搬送することのできるものであればよい。
【0026】
また、Uターンキルン2に空気A1を供給したが、セメントキルンに付設されるクリンカクーラからの排ガスをUターンキルン2に供給してキルンダストD1の間接加熱及び水銀含有ガスG1の搬送に利用してもよい。
【0027】
さらに、水銀回収装置として活性炭吸着塔7を用いたが、活性コークス等を用いた装置や、吸着剤により水銀を吸着除去するガス吸着装置等を使用することもできる。
【0028】
また、冷風取入部5からの却用空気Cで水銀含有ガスG2を冷却したが、水銀含有ガスG2を熱交換器に通すことで、水銀含有ガスG2から熱を回収しながらその温度を低下させることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 セメントキルン排ガス処理装置
2 Uターンキルン
3 熱風炉
4 バグフィルタ
5 冷風取入部
6 ファン
7 活性炭吸着塔
A1 空気
C 冷却用空気
D1 キルンダスト
D2、D3 水銀除去ダスト
G1、G2 水銀含有ガス
G3 排ガス