(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)と、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)よりも平均重合度が500以上高い未変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)とを含有するポリビニルアルコール系樹脂組成物であり、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)と未変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有比(A/B)(重量比)が99.95/0.05〜96/4であり、
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)の平均重合度が300〜4000、ケン化度が75〜99.9モル%、アセトアセチル基含有量が0.1〜10モル%であり、未変性ポリビニルアルコール(B)の平均重合度が1000〜5000、ケン化度が75〜99.9モル%であり、
更に、架橋剤(C)を含有することを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
【0010】
〔AA基含有PVA系樹脂(A)〕
本発明に用いられるアセトアセチル基含有PVA系樹脂(A)は、PVA系樹脂の主鎖に直接、あるいは酸素原子や連結基を介してAA基が結合したもので、例えば一般式(1)で表されるAA基を有する構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
なお、かかるAA基含有PVA系樹脂(A)は、AA基を有する構造単位以外にビニルアルコール構造単位を有し、更に未ケン化部分のビニルエステル構造単位を有する。
【0012】
AA基を有する構造単位の含有量(AA化度)は、通常、構造単位全体の0.1〜10モル%であり、好ましくは0.3〜8モル%、特に好ましくは0.5〜6モル%である。AA化度が小さすぎると、耐水性が低下する傾向がある。
なお、AA化度は、AA基含有PVA系樹脂(A)の総エステル基量と酢酸エステル基量との差から求めることができる。
【0013】
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができる。特に、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
【0014】
原料となるPVA系樹脂としては、一般的にはビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物またはその誘導体が用いられる。かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0015】
また、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもでき、かかる共重合モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0016】
更に、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレン基含有モノマー、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー等も挙げられる。
なお、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリル、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0017】
かかる共重合モノマーの導入量は、モノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下である。共重合モノマーの導入量が多すぎると、水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする傾向がある。
【0018】
また、ビニルエステル系モノマーおよびその他のモノマーを重合、共重合する際の重合温度を高温にすることにより、主として生成する1,3−結合に対する異種結合の生成量を増やし、PVA主鎖中の1,2−ジオール結合を1.6〜3.5モル%程度としたものを使用することが可能である。
【0019】
上記ビニルエステル系モノマーの重合体および共重合体をケン化して得られるPVA系樹脂とジケテンとの反応によるアセトアセチル基の導入には、PVA系樹脂とガス状或いは液状のジケテンを直接反応させても良いし、有機酸をPVA系樹脂に予め吸着吸蔵させた後、不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを噴霧、反応するか、またはPVA系樹脂に有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応する等の方法が用いられる。
【0020】
上記の反応を実施する際の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置が挙げられる。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置を用いることができる。
【0021】
AA基含有PVA系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度は、通常1.5〜20mPa・sであり、好ましくは4〜12mPa・s、更に好ましくは5〜10mPa・sである。かかる粘度が低すぎると耐水性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が上昇し、取り扱いや製造が困難となる傾向がある。
なお、本明細書において、AA基含有PVA系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度は、AA基含有PVA系樹脂(A)の4重量%水溶液を調製し、JIS K6726に準拠して測定した20℃における粘度である。
【0022】
AA基含有PVA系樹脂(A)の平均重合度は、通常、300〜4000、好ましくは400〜2000、更に好ましくは500〜1500である。平均重合度が低すぎると、耐水性が低下する傾向があり、高すぎると、粘度が上昇し、取り扱いや製造が困難となる傾向がある。
なお、平均重合度はJIS K 6726に準拠して測定することができる。
【0023】
AA基含有PVA系樹脂(A)のケン化度は、通常、75〜99.9モル%であり、好ましくは80〜99.5モル%、更に好ましくは85〜99.3モル%である。ケン化度が低すぎると、水への溶解性が低下する傾向がある。
なお、ケン化度は、JIS K 6726に準拠して測定することができ、PVA系樹脂中のビニルエステル構造単位以外の構造単位の含有率を示す。
【0024】
AA基含有PVA系樹脂(A)は、一種類を単独で用いてもよく、また、粘度や平均重合度、ケン化度が異なる二種類以上を組み合わせて用いてもよい。二種類以上を組み合わせて用いる場合には、粘度、平均重合度、ケン化度の平均値が上述の範囲内であることが好ましい。
【0025】
〔未変性PVA系樹脂(B)〕
本発明で用いられる未変性PVA系樹脂(B)は、ビニルアルコール構造単位及びビニルエステル構造単位のみからなるものが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれは、その他のモノマーを共重合したものでもよい。例えば、上記AA基含有PVA系樹脂(A)において記載した、ビニルエステル系モノマーに対して共重合性を有するモノマーを、5モル%以下、好ましくは3モル%以下、更に好ましくは1モル%以下にて共重合したPVA系樹脂を未変性PVA系樹脂(B)として用いることができる。
【0026】
かかる未変性PVA系樹脂(B)は、AA基含有PVA系樹脂(A)の平均重合度よりも高い平均重合度を有する。平均重合度の差は、通常、500以上であり、好ましくは1000以上、更に好ましくは1500以上、特に好ましくは2000以上である。
かかる未変性PVA系樹脂(B)の平均重合度は、通常、1000〜5000、好ましくは1500〜5000、更に好ましくは2000〜4500である。平均重合度が低すぎると、耐水性が低下する傾向があり、高すぎると、製造が困難となる傾向がある。
【0027】
未変性PVA系樹脂(B)のケン化度は、通常、75〜99.9モル%であり、好ましくは80〜99.5モル%、更に好ましくは85〜99.3モル%である。ケン化度が低すぎると、水への溶解性が低下する傾向がある。
【0028】
かかる未変性PVA系樹脂(B)の製造法としては、特に限定されるものではないが、通常はビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られる。
ビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸等が挙げられ、これらのビニルエステル系化合物から選ばれる1種を単独で、又は2種以上を併せて用いることができるが、実用上は経済性の点で酢酸ビニルが好ましい。
【0029】
未変性PVA系樹脂(B)は、一種類を単独で用いてもよく、また、平均重合度やケン化度が異なる二種類以上を組み合わせて用いてもよい。二種類以上を組み合わせて用いる場合には、平均重合度やケン化度の平均値が上述の範囲内であることが好ましい。
【0030】
〔PVA系樹脂組成物〕
本発明のPVA系樹脂組成物は、AA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)とを含有する。
AA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)との含有比(A/B)(重量比)は、通常、99.95/0.05〜96/4であり、好ましくは99.9/0.1〜97/3、更に好ましくは99.5/0.5〜98/2である。AA基含有PVA系樹脂(A)および未変性PVA系樹脂(B)が多すぎても、または少なすぎても、耐水性が低下する傾向がある。
【0031】
本発明のPVA系樹脂組成物は公知の混合方法により調製することができる。例えば、(i)AA基含有PVA系樹脂(A)の粉末と未変性PVA系樹脂(B)の粉末とを混合し、必要に応じて水溶液とし、乾燥する方法、(ii)AA基含有PVA系樹脂(A)の溶液に未変性PVA系樹脂(B)の粉末を添加し、乾燥する方法、(iii)未変性PVA系樹脂(B)の溶液にAA基含有PVA系樹脂(A)の粉末を添加し、乾燥する方法等が挙げられる。AA基含有PVA系樹脂(A)の溶液および未変性PVA系樹脂(B)の溶液に用いられる溶媒としては、水、メタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
乾燥方法としては、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、凝析後の温風乾燥が挙げられる。
【0032】
〔架橋剤〕
本発明のPVA系樹脂組成物は、更に、架橋剤(C)を含有
する。
かかる架橋剤(C)としては、特に限定されず、例えば、AA基含有PVA系樹脂(A)の架橋剤として公知のものを用いることができ、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物等の無機系架橋剤や、グリオキザール、グリオキシル酸及びその金属塩、尿素樹脂、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、N−メチロール系化合物、アクリロイル系化合物、活性ハロゲン系化合物、エチレンイミノ系化合物等の有機系架橋剤や、金属、金属錯塩を挙げることができる。
【0033】
かかる架橋剤(C)の含有量は、AA基含有PVA系樹脂(A)に対して、0.05〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0.08〜20重量%、特に好ましくは0.1〜15重量%である。架橋剤(C)の含有量が少なすぎると、架橋剤(C)による効果が乏しくなる傾向があり、多すぎても耐水性が低下する傾向がある。
【0034】
また、本発明のPVA系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、補強剤、充填剤、可塑剤、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、帯電防止剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤等が含有されていてもよい。
【0035】
本発明のPVA系樹脂組成物の用途としては、下記の用途が挙げられる。
(1)成形物関係:繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用繊維、水溶性繊維など
(2)接着剤関係:木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着剤、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤など
(3)被覆剤関係:紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、繊維製品用ザイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料など
(4)疎水性樹脂用ブレンド剤関係:疎水性樹脂の帯電防止剤、及び親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤など
(5)懸濁分散安定剤関係:塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤など
(6)乳化分散安定剤関係:各種アクリルモノマー、エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤など
(7)増粘剤関係:各種水溶液やエマルジョンや石油掘削流体の増粘剤など
(8)凝集剤関係:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性など
(9)交換樹脂等関係:イオン交換樹脂、キレート交換樹脂、イオン交換膜など
(10)その他:土壌改良剤、感光剤、感光性レジスト樹脂など
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、PVA系樹脂の平均重合度、ケン化度、AA化度は、以下の方法により測定した。
(a)平均重合度
JIS K6726に基づいて測定した値である。
(b)ケン化度
原料PVA系樹脂の残存酢酸エステル基の加水分解に要するアルカリ消費量から求めた値であり、JIS K6726に基づいて測定した値である。
(c)AA化度
ケン化度と同様の方法によってAA基含有PVA系樹脂の総エステル基量(アセト酢酸エステル基+酢酸エステル基)を求め、ケン化度測定で求めた原料PVA系樹脂の酢酸エステル基量との差からAA化度(モル%)を求めた。
【0037】
〔実施例1〕
PVA系樹脂(ケン化度99モル%、4重量%水溶液の粘度5.3mPa・s)をニーダーに100重量部仕込み、これに酢酸30重量部を入れ、膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン5重量部を2.5時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で12時間乾燥してAA基含有PVA系樹脂(A)を得た。かかるAA基含有PVA系樹脂(A)のAA化度は5モル%であり、ケン化度および平均重合度は用いたPVA系樹脂と同じで表1に示すとおりである。
該AA基含有PVA系樹脂(A)99重量部と、平均重合度2500、ケン化度99モル%の未変性PVA系樹脂(B)1重量部とを混合し、90℃の水に溶解させ、濃度10重量%の水溶液を得た。
かかる水溶液を室温まで冷却し、グリオキシル酸ナトリウムの10重量%水溶液を、AA基含有PVA系樹脂(A)に対して5.7重量%(AA基含有PVA系樹脂中のAA基に対して1.0当量)を添加し、よく混合した後、10cm×10cmの型に流し込み、23℃、50%RHの条件下で3日間風乾し、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムをオーブン中で120℃、10分間熱処理をした。
【0038】
(評価方法)
得られたフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X
1)および熱水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X
2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。その結果を表1に示した。
溶出率(%)=[(X
1―X
2)/X
1]×100
【0039】
〔比較例1〕
未変性PVA系樹脂(B)を含有させなかった以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
【0040】
〔比較例2〕
AA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)の含有比(A/B)(重量比)を95/5に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
【0041】
〔比較例3〕
AA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)の含有比(A/B)(重量比)を80/20に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
AA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)の含有比(A/B)が99/1である実施例1では、溶出率が非常に低かった。したがって、実施例1のPVA系樹脂組成物からなるフィルムは、耐水性に優れることがわかる。
【0044】
一方、未変性PVAを含有させなかった比較例1、及びAA基含有PVA系樹脂(A)と未変性PVA系樹脂(B)の含有比(A/B)が95/5である比較例2では、溶出率が4.4及び4.6となり、実施例1と比較すると、約10%も溶出率が増加した。また、未変性PVAの含有量が実施例1よりも多い比較例3のフィルムは、溶出率が更に高く、耐水性に劣るものであった。