(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282086
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】鱗茎菜類の評価装置および鱗茎菜類の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20180208BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/85 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-234022(P2013-234022)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-62005(P2015-62005A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-170549(P2013-170549)
(32)【優先日】2013年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391017207
【氏名又は名称】三井金属計測機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】平泉 健一
(72)【発明者】
【氏名】平山 正明
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 広志
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 健治
【審査官】
塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−133401(JP,A)
【文献】
特開2010−197151(JP,A)
【文献】
特開2004−020493(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0035108(US,A1)
【文献】
特開2006−098106(JP,A)
【文献】
特開2007−232733(JP,A)
【文献】
特表平09−509477(JP,A)
【文献】
特開平09−005234(JP,A)
【文献】
特開2011−117942(JP,A)
【文献】
特開2010−203781(JP,A)
【文献】
LU, Xiaonan et al.,Determination of total phenolic content and antioxidant capacity of onion (Allium cepa) and shallot (Allium oschaninii) using infrared spectroscopy,Food Chemistry,2011年,Vol. 129,pp. 637-644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ライン上を様々な姿勢で搬送される鱗茎菜類に対して、光源から測定光を照射して、鱗茎菜類を透過した透過光を受光部において受光することによって、鱗茎菜類の内部品質を評価する鱗茎菜類の評価装置であって、
前記光源が少なくとも2つ配置されており、
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが100°≦β≦170°であることを特徴とする鱗茎菜類の評価装置。
【請求項2】
前記光源と受光部との間には、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光が受光部に受光されないように、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光を遮光する遮光板が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の鱗茎菜類の評価装置。
【請求項3】
前記光源または前記受光部のいずれか一方が、前記搬送ラインの搬送方向Xに対して一方の側方側に配置され、
前記光源または前記受光部のいずれか他方が、前記搬送ラインに対して上方向に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鱗茎菜類の評価装置。
【請求項4】
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが110°≦β≦150°であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鱗茎菜類の評価装置。
【請求項5】
搬送ライン上を様々な姿勢で搬送される青果類に対して、光源から測定光を照射して、鱗茎菜類を透過した透過光を受光部において受光することによって、鱗茎菜類の内部品質を評価する鱗茎菜類の評価方法であって、
前記光源が少なくとも2つ配置されており、
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが100°≦β≦170°であることを特徴とする鱗茎菜類の評価方法。
【請求項6】
前記光源と受光部との間には、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光が受光部に受光されないように、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光を遮光する遮光板が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の鱗茎菜類の評価方法。
【請求項7】
前記光源または前記受光部のいずれか一方が、前記搬送ラインの搬送方向Xに対して一方の側方側に配置され、
前記光源または前記受光部のいずれか他方が、前記搬送ラインに対して上方向に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の鱗茎菜類の評価方法。
【請求項8】
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが110°≦β≦150°であることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の鱗茎菜類の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果類の糖度、酸度、熟度などの内部品質を、搬送ラインを使用して光学的にかつ非破壊的に評価(測定)するための青果類の評価装置および青果類の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実、野菜などの青果類の、糖度、酸度、熟度などの内部品質を、青果類を破壊することなく外部から測定する技術が種々提案されている。
このような青果類の内部品質を非破壊的に測定する方法として、近赤外光を青果類に照射する方法があり、透過光を利用する方法が提案されている。
【0003】
透過光を利用する評価方法には、例えば、照射測定光を果肉内部に透過して反対側から出射し、この透過光を受光部で受けて解析し、内部品質を測定評価する方法がある。この透過光を利用する方法では、青果類の果肉内部を透過した光を解析するため、正確に果肉の性状を評価できるという利点がある(特許文献1、特許文献2など参照)。
【0004】
ところで、このように透過光を利用した透過光式評価装置として、
図14に示したような青果類の評価装置100が以前から用いられている。
すなわち、この青果類の評価装置100では、ピアノ鍵盤状のPKコンベアなどからなる搬送ライン102の搬送方向(紙面に対して垂直な方向)に対して直角な幅方向Yにおいて、搬送ライン102の一方の側方側に光源104が配置されている。そして、搬送ライン102の搬送方向に対して直角な幅方向Yにおいて、搬送ライン102の他方の側方側に受光部106が配置されている。
【0005】
このような評価装置100では、光源104から照射された測定光が、青果類108の果肉内部を透過して反対側から出射して、この透過光を受光部106で受けて、別途図示しない解析装置によって解析することによって、内部品質を測定評価するように構成されている。
【0006】
なお、ピアノ鍵盤状のコンベアなどからなる搬送ライン102は、例えば、略球形の青果類108を転がらさずに一個ずつ搬送することができるように、その載置面102aが、テーパ状に傾斜して形成されている。
【0007】
このような搬送ライン102で玉ねぎのような青果類108の内部品質を評価する場合は、青果類108は、様々な姿勢で搬送されてくる。したがって、青果類108の測定時の姿勢は一様ではない。
【0008】
このような評価装置100において、例えば、玉ねぎのような青果類108の内部品質(例えば、腐敗)を透過光で測定した場合に、搬送ライン102上にある青果類108の姿勢によっては、内部品質を正確に測定できない場合があった。
【0009】
測定に誤差が生じるのは、以下の理由からであると思われる。
すなわち、玉ねぎは、
図15(a)の断面図に示したように、りん葉と呼ばれるうろこ状の厚い葉の集合体で形成されている。このようなりん葉は、一部に腐れが生じると、その腐れは、1枚のりん葉全体に広がるのが一般的であり、例えば、
図15(a)に示したように、左右対称に腐った部分111が表れる玉ねぎの場合、その腐った部分を含む1枚のりん葉は、全て腐っている場合が多い。
【0010】
しかも、玉ねぎは、上下の軸芯部分に、茎112と根113が発育しているため、青果類108が玉ねぎである場合は、それら茎112と根113の一部に、あるいはその両方に腐れが生じていることもある。したがって、茎112や根113が存在する青果類の場合には、内部の腐れの測定に影響を及ぼすことがある。
【0011】
さらに、玉ねぎの形状は、略球形である場合もあれば扁平した球形であることもあり、直径も大小様々である。
したがって、玉ねぎのようにりん葉を有し、茎112と根113を有し、略球形や扁平した形状もあり、しかも個体の測定姿勢が常に一定であるとは限らない青果類108の内部品質を、透過光式の評価装置100で評価すると、
図14のように光源104と受光部106とを結び光路に対して、
図15(a)のように青果類108を垂直に配置した場合と、
図15(c)のように平行に配置した場合とを比べてみると、同じ青果類108であっても、姿勢により腐敗を測定するための透過光のスペクトルが一致せず、測定誤差を生じてしまう。
【0012】
実際に、大小異なる玉ねぎを用意し、これら玉ねぎの姿勢を種々変更して、評価装置100により、解析を行うことにより内部品質評価に測定誤差が生じるかの実験を行った。
図16は、光源104と受光部106とを直線上(β=180°)に配置した
図14の評価装置100を用いて、正常品である4個の青果類108について、腐れの内部品質の解析を行った結果である。実験に用いたサンプルA〜サンプルDの青果類(玉ねぎ)108は、内部に腐れが生じていない正常品である。サンプルA〜Dの大きさなどは、
図17の通りである。
【0013】
図16には、これら正常品である4個の青果類108(玉ねぎ)が、それぞれ傾斜姿勢を変えることにより、腐敗計算値にどのような変化をもたらすかが示されている。
なお、実験では、サンプルA〜サンプルDの玉ねぎの姿勢を30°ずつ変化させ、上向きの姿勢0°から始めて、30°、60°、90°、120°、150°まで行った。
【0014】
そして、各サンプルA〜Dを透過した透過光スペクトルから吸光度を計算し、腐敗度を予測できる検量線式で腐敗計算値を算出した。
【0015】
図16において、横軸は、
図15(a)の上向きの姿勢を基準とした場合の青果類108(玉ねぎ)の傾斜角度を示したもので、例えば、30°は
図15(b)の姿勢に相当し、90°は
図15(c)の姿勢に相当している。
また、
図16において、縦軸は腐敗計算値を示しており、本明細書の実験では、腐敗計算値が1より大きい場合に、腐敗していると判断した。
【0016】
このグラフから、測定時の姿勢の傾きが、内部品質測定の結果にどのように影響するか、その傾向を予測することができる。
この実験では、
図14において、光源104から照射され受光部106が受光した測定光のうち、受光波長域500〜1000nmの透過光スペクトル出力から吸光度を計算した。次いで、計算された吸光度から、腐敗を予測する検量線式で腐敗計算値を計算し、その値をグラフに示した。
【0017】
その結果、
図14に示したように、光源104と受光部106とを直線上に配置した場合に、青果類108の測定姿勢が90°の傾きである場合と、測定姿勢が120°の傾きである場合に、腐敗計算値が1を超えた。このように、光源104と受光部106とを直線上に配置した場合には、本来は正常品である玉ねぎであるのに、腐っていると誤った検出をしている。
【0018】
この実験の結果から分かるように、光源104と受光部106とを直線上に配置した場合には、青果類108の姿勢が腐敗の測定に大きく影響することが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】登録実用新案第3049026号公報
【特許文献2】特開2002−139442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、このような実情に鑑み、玉ねぎや、らっきょうのような鱗茎菜類であっても、測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことに寄与する
鱗茎菜類の評価装置および
鱗茎菜類の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、
本発明に係る鱗茎菜類の評価装置は、
搬送ライン上を搬送される鱗茎菜類に対して、光源から測定光を照射して、鱗茎菜類を透過した透過光を受光部において受光することによって、青果類の内部品質を評価する鱗茎菜類の評価装置であって、
前記光源が少なくとも2つ配置されており、
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが100°≦β≦170°であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の鱗茎菜類の評価方法は、
搬送ライン上を搬送される鱗茎菜類に対して、光源から測定光を照射して、鱗茎菜類を透過した透過光を受光部において受光することによって、青果類の内部品質を評価する鱗茎菜類の評価方法であって、
前記光源が少なくとも2つ配置されており、
前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部が傾斜する位置に配置されていることを特徴とする。
【0023】
このように構成することによって、例えば、玉ねぎのりん葉のように内部に方向性を持ち、かつ根や茎といった構造体を上下に有し、さらには形状・大きさにバラツキのある
鱗茎菜類であっても、測定評価の精度が極めて向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0025】
また、複数の光源を設けることによって、測定精度をより向上させることができる。
また、本発明では、前記光源と受光部との間には、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光が受光部に受光されないように、鱗茎菜類を透過する透過光以外の光を遮光する遮光板が配設されていることが好ましい。
【0026】
このような構成であれば、受光部に受光されるのは、
鱗茎菜類を透過する透過光のみである。したがって、
鱗茎菜類を反射する反射光などが受光部に受光されることなく、さらに測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0027】
また、本発明では、前記光源または前記受光部のいずれか一方が、前記搬送ラインの搬送方向Xに対して一方の側方側に配置され、
前記光源または前記受光部のいずれか他方が、前記搬送ラインに対して上方向に配置されていることが好ましい
。
また、本発明では、前記光源からの測定光の入射方向の光軸に対して前記受光部のなす角βが110°≦β≦150°であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、光源からの測定光の入射方向の光軸に対して受光部が傾斜する位置に配置されているので、玉ねぎのような
鱗茎菜類がどのような姿勢で搬送されてきたとしても、測定評価の精度を向上させて、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0029】
また、本発明によれば、光源と受光部との間に配設した遮光板によって、光源からの直接光や、
鱗茎菜類からの反射光、隣接する
鱗茎菜類からの反射光などの
鱗茎菜類周辺からの
鱗茎菜類を透過する透過光以外の光が遮光されるので、これによって、
鱗茎菜類を透過する透過光以外の光が受光部に受光されないので、さらに測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係る青果類の評価装置の第1の実施例の上面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る青果類の評価装置の第2の実施例の上面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る青果類の評価装置の第3の実施例の上面図である。
【
図7】
図7は、本発明の効果を調べるため、正常品(腐れがない)の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=170°で照射した場合に、青果類の姿勢により、腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである。
【
図8】
図8は
図7と同様に、本発明の効果を調べるため、正常品(腐れがない)の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=150°で、光源から測定光を照射した場合に、青果類の姿勢により腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである
【
図9】
図9は
図7と同様に、本発明の効果を調べるため、正常品(腐れがない)の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=120°で、光源から測定光を照射した場合に、青果類の姿勢により腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである。
【
図10】
図10は
図7と同様に、本発明の効果を調べるため、正常品(腐れがない)の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=100°で、光源から測定光を照射した場合に、青果類の姿勢により腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである。
【
図11】
図11は本発明の効果を調べるため、腐敗品の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=110°で、光源から測定光を照射した場合に、青果類の姿勢により腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである。
【
図12】
図12は、
図11の実験で用いた腐敗品の4つのサンプルの形状などを示す一覧である。
【
図13】
図13は、複数の光源22を設けた場合の青果類の評価装置の断面図である。
【
図14】
図14は、従来の透過光式の青果類の評価装置の正面図である。
【
図15】
図15(a)は、青果類の一例である玉ねぎが、茎を上に向けた姿勢での断面図、
図15(b)は
図15(a)を基準として茎の部分が30°傾いた玉ねぎの測定時の姿勢を示す正面図、
図15(c)は
図15(a)を基準として茎の部分が90°傾いた玉ねぎの測定時の姿勢を示す正面図である。
【
図16】
図16、従来の評価装置による実験結果のグラフであり、正常品(腐れがない)の4つのサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源から受光部までの傾斜角度がβ=180°で、光源から照射した場合に、青果類の姿勢により腐敗計算値がどのように変化するかを調べたグラフである。
【
図17】
図17は、
図16の実験で用いた正常品の4つのサンプルの形状などを示す一覧である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明に係る青果類の評価装置の第1の実施例の上面図、
図2は、
図1のA−A線での断面図である。
なお、本明細書において、被評価体となる青果類とは、玉ねぎや、らっきょうのように内部に方向性を有し、根や茎の構造体を持ち、形状・大きさにバラツキのある鱗茎菜類、また、柑橘類においては、芯部の空洞など透過性能を変化させるものがあり、かつ真球に近いものなどをいう。
【0032】
図1において、符号10は全体で、本発明の青果類の評価装置(以下、単に「評価装置」と言う)を示している。
図1および
図2に示したように、評価装置10は、例えば、ピアノ鍵盤状のコンベア14(PKコンベア14)などにより搬送ライン12が構成されている。そして、PKコンベア14の上面には、外方向に傾斜したテーパ面14aを有しており、このテーパ面14a上に、例えば、被評価体である玉ねぎなどの青果類16が載置されて、搬送方向Xに所定間隔おきに1個ずつ搬送されるようになっている。
【0033】
そして、この搬送ライン12の途中には、評価装置部18が設けられている。評価装置部18では、搬送ライン12を囲繞するようにフレーム20が設けられている。
搬送ライン12の搬送方向Xに対して垂直な幅方向Yにおいて、搬送ライン12の一方の側方側に、光源22が配置されている。
光源22としては、ハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)、蛍光体などを適宜用いることができる。
【0034】
また、搬送ライン12の搬送方向Xに対して垂直な幅方向Yにおいて、搬送ライン12の他方の側方側に、受光部24が配置されている。
なお、光源22は、
図2に示したように、所定角度傾斜した位置に配置されており、光軸は水平でなくても良い。
【0035】
すなわち、光源22と受光部24とは、同一直線上に配置されず、相対的に傾斜する位置に配置されている。
光源22の測定光の光軸に対して受光部24のなす角をβとしたとき、
100°≦β≦170°の範囲、
特に、前記βが、
110°≦β≦150°の範囲に設定されている。
【0036】
このような範囲に光源22と受光部24とのなす角βが設定されていれば、光源22から青果類16に向かって照射して、青果類16を透過した透過光を受光部24が受光して、青果類16の内部品質(例えば腐れ)を、別途図示しない解析装置で解析することによって、評価することができる。
【0037】
ここで、受光部24が受光した透過光のうち、例えば受光波長域500〜1000nmの透過光スペクトル出力から吸光度を計算し、その吸光度から、解析に好適な腐敗計算値を得ることができる。
【0038】
また、受光部24を、
図2に示したようにフレーム20に固定し、光源22を傾斜角βとなるように、可動式に配置することが好ましい。しかしながら、光源22をフレーム20などに固定し、受光部24を可動式に配置することもできる。
【0039】
さらに、光源22と受光部24との相対的に傾斜した位置関係は、
図1および
図2の実施例に何ら限定されない。例えば、
図3に示したように、光源22を、搬送ライン12の搬送方向Xに向かって垂直な幅方向Yに対してγだけ斜め前方に配置することもできる。この場合であっても、光源22を、
図2に示したように受光部24からβだけ上方に傾いて配置される。
【0040】
このように、光源22と受光部24との相対的に傾斜した位置関係は、様々な態様をとることができる。
また、光源22の配置位置は、特に限定されるものではなく、青果類16の種類、サイズなどに応じて適宜選択すればよい。
【0041】
さらに、光源22と受光部24との間において、
図2におけるβの傾斜角度を維持できれば、光源22と受光部24とからなる組みを、複数組設けることもできる。あるいはβの傾斜角度内であれば、一つの光源22に対し、受光部24を複数個設けることもできる。または、βの傾斜角度内であれば、複数個の光源22に対し、一つの受光部24を設けることもできる。
【0042】
このような設定であれば、
図2の二点鎖線で示したように、光源22から照射された測定光(近赤外光)が、青果類16の果肉内部を透過して反対側から出射して、この透過光を、相対的に傾斜した位置にある受光部24で受けて、別途図示しない解析装置によって解析することによって、内部品質、特には内部の腐れなどを測定評価するのに効果的である。
【0043】
すなわち、青果類16から出射される透過光は、それぞれの青果類によって吸収スペクトルが異なるため、これにより青果類の腐れ、糖度、酸度、熟度などの内部品質を計測して予め解析装置に入力されたデータと比較することによって、青果類の内部品質を評価することができる。
【0044】
本発明によれば、光源22が、搬送ライン12の搬送方向Xに対して垂直な幅方向Yと測定光の入射方向の光軸がなす角度βが、100°≦β≦170°の範囲であれば、青果類の内部品質を正確に測定することができる。
【0045】
また、このように光源22と受光部24とを相対的に傾斜させることによって、例えば、青果類16が玉ねぎ108である場合に、光源22からの測定光が茎112と根113とを通過するという事態を避けることができる。
【0046】
さらに、青果類16がどのような姿勢であるとしても、りん葉の腐った部分111を透過光が通過するので、腐れを見逃すことがない。
また、光源22から測定光を投射する際には、青果類16の種類による透過率、サイズに応じて光量を調節するのが好ましい。
【0047】
図4は、本発明の青果類の評価装置の第2の実施例の上面図、
図5は、
図4におけるA−A線での断面図、
図5は、遮光板の拡大斜視図である。
この実施例の評価装置10は、基本的には、
図1および
図2に示した評価装置10と同様な構成であり、同一の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0048】
この実施例の評価装置10では、光源22と受光部24との間には、搬送ライン12の上方に、青果類16を透過する透過光以外の光が受光部24に受光されないように、青果類16を透過する透過光以外の光を遮光する遮光板30が配設されている。
【0049】
この遮光板30は、搬送ライン12の搬送方向Xに平行に配置されるとともに、搬送ライン12の幅方向Yに一定間隔離間して平行に配置された複数の遮光板部材32a〜32dを備えている。
【0050】
すなわち、この実施例では、光源22側から、搬送ライン12の幅方向Yに一定間隔離間して平行に、4枚の遮光板部材32a〜32dが、搬送ライン12の上方に、図示しない固定部材によって、光源22と受光部24を結ぶ直線上に位置するように配置されている。
【0051】
また、
図4および
図6に示したように、遮光板部材32a〜32dの長さがそれぞれ、青果類16の外形に沿った下端部33a〜33dを有する長さであるように構成されている。
【0052】
なお、搬送ライン12を搬送されてくる青果類16に対して、遮光板部材32a〜32dによって傷をつけないようにするためには、このような遮光板部材32a〜32dの下端部33a〜33dの位置は、青果類16の外形に沿った長さか、または僅かに、青果類16の外形よりも青果類16の内側の長さにするのが、望ましい。
【0053】
さらに、
図5および
図6に示したように、これらの遮光板部材32a〜32dには、光源22からの測定光を青果類に照射するためのスリット34a〜34dが形成されている。
【0054】
なお、このスリット34a〜34dの幅Lとしては、青果類16の大きさ、光源22から投射される測定光の光量などに応じて、適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0055】
このように構成することによって、複数の遮光板部材32a〜32dによって、光源22からの直接光や、青果類16からの反射光、隣接する青果類16からの反射光などの青果類周辺からの青果類16を透過する透過光以外の光が、搬送ライン12の搬送方向Xの方向に平行に配置されるとともに、搬送ライン12の幅方向Yに一定間隔離間して平行に配置された遮光板部材32a〜32dによって、効率良く遮光される。
【0056】
したがって、青果類16を透過する透過光以外の光が受光部に受光されないので、さらに測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
しかも、遮光板部材32a〜32dの長さがそれぞれ、青果類16の外形に沿った下端部33a〜33dを有する長さであるので、搬送ライン12の搬送方向Xに青果類16の外形に沿ったトンネル形状の青果類の通過経路が形成することになり、遮光板部材によって、搬送ラインを搬送される青果類16を傷つけることがない。しかも、遮光板部材32a〜32dによって、搬送ライン12上の青果類16の位置、姿勢に影響がすることなく、測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0057】
また、遮光板部材32a〜32dの下端部33a〜33dと青果類16との間から、光源22からの直接光や、青果類16からの反射光、隣接する青果類16からの反射光などの青果類周辺からの青果類16を透過する透過光以外の光が、受光部に受光されることがないので、さらに測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0058】
さらに、遮光板部材32a〜32dには、光源22からの測定光を青果類に照射するためのスリット34a〜34dが形成されているので、光源22からの測定光が遮光板部材32a〜32dに遮光されることなく、遮光板部材32a〜32dに形成されたスリット34a〜34dを介して、青果類16に照射することができ、青果類16を透過した透過光が、効率良く受光部に受光されるので、さらに測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
【0059】
なお、遮光板部材32a〜32dは、搬送ライン12上を搬送移動している青果類16に傷をつけないようにするために、また、搬送ライン12上の青果類16の位置、軟質の材料で、光源22から照射される測定光を遮光できる材料から構成すれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、ゴム、布、合成樹脂フィルムなどが使用可能である。また、図示しないが、遮光板部材32a〜32dを、例えば、スダレ状のものから構成することも可能である。
【0060】
さらに、青果類16の種類、サイズに合わせて、遮光板30を、図示しない、例えば、サーボモータなどの駆動機構によって、上下動可能に構成するようにすれば良い。このように構成することによって、サイズの異なる青果類16に対しても、遮光板30によって、青果類を透過する透過光以外の光が、効率良く遮光されることになり、測定評価の精度が向上し、正確な測定評価を行うことが可能である。
また、遮光のために筒体を設け、この筒体を通して光源からの測定光を青果類に導いたり、筒体を通して透過光を受光部に導くこともできる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、遮光板の遮光板部材の配置、形状は上記の実施例のものに限定されるものではなく、透過光以外の光を受光部に入射しないように遮光できる形状、配置であればよく、種々の形状、配置のものを適用することができるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、遮光板は、板状でなく筒状であっても良い。筒状の遮光部材を採用する場合は、光源と青果類との間、および青果類と受光部との間の両方に配置することが好ましい。
このような筒状の遮光部材を設けた場合であっても、測定光以外の光あるいは透過光以外の光が、内部品質の測定に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0063】
[実施例1]
内部に腐敗が生じていない正常品の玉ねぎについて調べた。結果を
図7〜
図10に示す。
図7〜
図10において、縦軸は腐敗計算値を示しており、腐敗計算値が1より大きい場合に、腐敗していることを表している。また、
図7〜
図10において、横軸は青果類の傾斜姿勢を示す角度である。
【0064】
すなわち、この実験では、正常品の玉ねぎについて、光源22の受光部24に対する傾斜角度と、青果類の測定姿勢をそれぞれ変化させて、これらの変化が、腐敗計算値にどのように影響するかを調べた。
先ず、大きさ、形状の異なる正常品の玉ねぎを4個、用意し、これらをサンプルA〜サンプルDとした。実験の方法は、
図16のデータを得るときと同様である。
【0065】
サンプルAにおいて、このサンプルAを
図1、
図2の搬送ライン12の上に、
図15(a)のように、傾斜姿勢を上向きとして、光源22から測定光を照射し、受光部24で透過光を受光した。
次いで、サンプルAの姿勢を時計方向に30°傾けて、同様に光源22から測定光を照射し、受光部24で透過光を受光した。
【0066】
さらに、サンプルAの姿勢を時計方向に60°傾けて、光源22から測定光を照射し、受光部24で透過光を受光した。
この動作を1つのサンプルAにおいて、傾斜角度が150°に至るまで、30°ずつ傾けて実験を行った。
そして、サンプルB、サンプルC、サンプルDについても、サンプルAと同様に行った。
【0067】
解析に当たっては、受光部で受光した光のうち、波長域500〜1000nmの透過光スペクトル出力から吸光度を計算し、その吸光度から、腐敗を予測する検量線式で腐敗計算値を計算し、1つのグラフに示した。
【0068】
本実施例1のように、光源22と受光部24との関係が、β=170°、β=150°、β=120°、β=100°のように、どのように傾斜しているとしても、また、青果類16の傾斜姿勢がどのような姿勢であるとしても、内部品質が正常であると測定した。
【0069】
このような結果から、正常品であるサンプルA〜サンプルDを、全て正常品と正しい評価を行うことができた。
また、青果類16の姿勢がどのような姿勢であったとしても、内部品質の評価に対する影響が少ないことが確認できた。
【0070】
[実施例2]
次に、内部に腐敗が生じている玉ねぎについても調べた。
すなわち、この実験では、光源と受光部とを相対的に傾斜させ、この関係で、内部に腐れがある青果類を測定した場合に、どのように正しく評価できるかを調べた。
結果を
図11に示す。
【0071】
ここでは、大きさ、形状の異なる腐敗が生じている玉ねぎを4個用意し、これらをサンプル1〜4とした。サンプル1〜4の大きさなどは、
図12の通りである。
なお、腐敗りん葉数において、1に満たない場合は、その腐った範囲の全体の割合から算出したものである。
実験の方法は
図7〜
図10のデータを得るときと同様である。
【0072】
図11に示したように、腐敗品である青果類(サンプル1〜4)の内部品質を測定した場合に、サンプル1〜4の腐敗計算値は、全て1を超えており、このような結果から腐敗したサンプル1〜4が傾斜姿勢を変えても、全て腐敗品であると正しく評価することができた。
【0073】
上記した実施例1、実施例2のように、青果類が正常品の場合であれ、腐敗品の場合であれ、本発明に係る評価装置100によれば、従来例のように、誤った判断をすることはない。全て高精度の評価を行うことが可能になった。
【0074】
[実施例3]
次いで、複数のサンプル(玉ねぎ)を用いて、光源22と受光部24とがなす角β及び光源22の灯数が測定精度に及ぼす影響を調べた。
それぞれの測定条件及び測定結果は表1に記載のとおりである。
【0076】
なお、複数の光源22から測定光を照射する場合には、
図13に示すように、上下方向に2つの光源22を配置した。
複数のサンプルについて、上述する実施例と同様に腐敗計算値を算出するとともに、目視観察により表2に示す基準に基づいて腐敗実測値を特定した。
【0078】
表1に示すように、光源22からの測定光の入射方向の光軸に対して受光部24が傾斜する位置、すなわちなす角βが180°とならないように光源22と受光部24を配置した場合には、相関係数が0.8を超え良好な結果が得られた。
【0079】
特に、光源22を2つ配置することによって、光源22を1つだけとした場合に比べて、相関係数が向上し、測定精度を向上させることができる。
一方で、表1に示すように、光源22からの測定光の入射方向の光軸に対して受光部24が傾斜しない位置、すなわちなす角βが180°となるように光源22と受光部24を配置した場合には、相関係数が0.8を下回る結果となった。
【0080】
また、光源22を2つ配置したとしても、なす角βが180°となるように配置された光源22がある場合には、相関係数が0.8を下回ってしまい、満足する測定結果を得られなかった。
【0081】
すなわち、光源22は1つであっても複数であっても、光源22からの測定光の入射方向の光軸に対して受光部24が傾斜する位置に配置されることによって、良好な測定結果を得られることが確認できた。
【0082】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、玉ねぎを被評価体としたが、これに限定されず、例えば、らっきょうのような鱗茎菜類、あるいは様々な姿勢で搬送されてくる一部の柑橘類などにも適用可能である。また、内部品質は、腐れに限定されない。糖度、酸度などにおいても略同様に評価することが可能である。
【0083】
また、光源22から照射される測定光の光軸は、水平でなくても良く、青果類108に対してどのような方向に配置されていても良い。例えば、光源22から照射される測定光の光軸を、青果類の搬送方向に対して斜めになるように配置することもできる。
【符号の説明】
【0084】
10 評価装置
12 搬送ライン
14a テーパ面
14 コンベア
16 青果類
18 評価装置部
20 フレーム
22 光源
24 受光部
30 遮光板
32 遮光板部材
32a〜32f 遮光板部材
33a〜33c 下端部
34a スリット
100 評価装置
102 搬送ライン
104 光源
106 受光部
108 青果類