(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282112
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】懸案の屈曲可能リングを備える無菌コネクタ及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/18 20060101AFI20180208BHJP
F16L 37/30 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
A61M39/18
F16L37/30
【請求項の数】33
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-503849(P2013-503849)
(86)(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公表番号】特表2013-523337(P2013-523337A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011031280
(87)【国際公開番号】WO2011127074
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/320,857
(32)【優先日】2010年4月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512092379
【氏名又は名称】ピーワイ ダニエル
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーワイ ダニエル
【審査官】
落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5492147(US,A)
【文献】
国際公開第2009/120696(WO,A2)
【文献】
米国特許第5573516(US,A)
【文献】
特開平9−327519(JP,A)
【文献】
特開2004−275472(JP,A)
【文献】
特表2008−514891(JP,A)
【文献】
特開2004−195016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコネクタを含む無菌流体コネクタであって、
前記第1のコネクタは、
内部に流体を受け入れる第1流体通路と、
前記第1流体通路と流体連通して、流体を通過させる第1ポートと、
(i)前記第1ポートから径方向に間隔を空けて設けられた第1係合部と、(ii)第1弁と、を含む第1屈曲部材と、
を含み、
前記第1弁は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での前記第1係合部の移動に伴って、それぞれ閉位置と開位置の間で移動可能であり、
実質的に屈曲しない位置において、前記第1弁は、当該第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成して、その間を流体が通過することを防ぐ閉位置に配置され、流体接触面の外部汚染を防止するために前記第1のコネクタの全ての流体接触面を周囲雰囲気に対して液密に閉鎖し、
屈曲した位置において、前記第1弁は、前記第1ポートからの流体の無菌通過を可能にする開位置に配置される、
無菌流体コネクタ。
【請求項2】
前記第1のコネクタに結合可能な第2のコネクタを更に含み、
前記第2のコネクタは、
内部に流体を受け入れる第2流体通路と、
前記第2流体通路と流体連通して、流体を通過させる第2ポートと、
(i)前記第2ポートから径方向に間隔を空けて設けられた第2係合部と、(ii)第2弁と、を含む第2屈曲部材と、
を含み、
前記第2弁は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での前記第2係合部の移動に伴って、それぞれ閉位置と開位置の間で移動可能であり、
実質的に屈曲しない位置において、前記第2弁は、当該第2弁と第2ポートの間に液密シールを形成して、その間を流体が通過することを防ぐ閉位置に配置され、流体接触面の外部汚染を防止するために前記第2のコネクタの全ての流体接触面を周囲雰囲気に対して液密に閉鎖し、
屈曲した位置において、前記第2弁は、前記第2ポートからの流体の無菌通過を可能にする開位置に配置される、
請求項1に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項3】
前記第1及び第2のコネクタは、非結合位置と結合位置の間で移動可能であり、非結合位置において、前記第1及び第2係合部は、実質的に屈曲しない位置にあり、前記第1及び第2弁は、閉位置にあり、結合位置において、前記第1及び第2係合部は、屈曲した位置にあり、前記第1及び第2弁は、開位置にある、請求項2に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項4】
屈曲しない位置において、前記第1弁は、第1ポートと前記第1ポート周辺の周囲雰囲気の間に液密シールを形成して、前記第1ポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止する、請求項1に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項5】
前記第1のコネクタは、前記第1ポートに隣接して形成される第1シール面が画定された第1ボディを更に含み、前記第1シール面は、閉位置において、前記第1弁と係合して第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成することができる、請求項4に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項6】
前記第1シール面は実質的に環状であり、前記第1弁は実質的に環状であり、閉位置において、前記第1弁は、前記第1シール面と係合して、互いの間に環状の液密シールを形成する、請求項5に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項7】
前記第1シール面は比較的剛性であり、前記第1弁は可撓性であり、閉位置において、前記第1弁及び第1シール面は、互いの間で前記環状の液密シールにおける締りばめを形成する、請求項6に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項8】
前記第1係合部は、前記第1弁と一体に形成されて、前記第1弁から径方向に間隔を空けて設けられ、前記第1弁の周りに環状に延び、且つ、前記第1弁の軸方向に延びる、請求項6に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項9】
前記第1のコネクタは、前記第1ポートに隣接して形成される第1シール面が画定された第1ボディを更に含み、前記第1シール面は、閉位置において前記第1弁と係合して、第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成でき、前記第2のコネクタは、前記第2ポートに隣接して形成される第2シール面が画定された第2ボディを更に含み、前記第2シール面は、閉位置において前記第2弁と係合して、第2弁と第2ポートの間に液密シールを形成できる、請求項3に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項10】
屈曲しない位置において、前記第1弁は、前記第1ポートと前記第1ポート周辺の周囲雰囲気の間に液密シールを形成して、第1ポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止し、前記第2弁は、前記第2ポートと前記第2ポート周辺の周囲雰囲気の間に液密シールを形成して、第2ポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止する、請求項9に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項11】
前記第1シール面は実質的に環状であり、前記第1弁は実質的に環状であり、閉位置において、前記第1弁は、第1シール面と係合して、互いの間に環状の液密シールを形成し、前記第2シール面は実質的に環状であり、前記第2弁は実質的に環状であり、閉位置において、前記第2弁は、第2シール面と係合して、互いの間に環状の液密シールを形成する、請求項10に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項12】
各環状の液密シールは、各弁とシール面の間で軸方向に延びて、前記液密シールからの汚染物質の移入を更に防止する、請求項11に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項13】
前記第1シール面は比較的剛性であり、前記第1弁は可撓性であり、閉位置において、前記第1弁及び第1シール面は、互いの間で前記環状の液密シールにおける締りばめを形成し、前記第2シール面は比較的剛性であり、前記第2弁は可撓性であり、閉位置において、前記第2弁及び第2シール面は、互いの間で前記環状の液密シールにおける締りばめを形成する、請求項12に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項14】
前記第1係合部は、前記第1弁と一体に形成されて、前記第1弁から径方向に間隔を空けて設けられ、前記第1弁の周りに環状に延び、且つ、前記第1弁の軸方向に延び、前記第2係合部は、前記第2弁と一体に形成されて、前記第2弁から径方向に間隔を空けて設けられ、前記第2弁の周りに環状に延び、且つ、前記第2弁の軸方向に延びる、請求項13に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項15】
各屈曲部材は実質的にドーム形で、各弁は、前記ドーム形の各屈曲部材の軸に対して横方向に延びる、請求項2に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項16】
各係合部は実質的に円筒状で、各弁は、前記実質的に円筒状の各係合部の軸に対して略垂直に延びる、請求項2に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項17】
結合位置において、前記第1及び第2係合部は、互いに係合して、屈曲した位置に互いを曲げ、前記第1及び第2弁が前記第1及び第2係合部内でそれぞれ開位置に陥入されて、前記第1及び第2ポートが互いに流体連通し、その間を流体が流れることが可能になる、請求項3に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項18】
結合位置において、前記第1及び第2係合部は、前記第1及び第2弁、並びに前記第1及び第2ポートの周りにそれぞれ環状に延びて、周囲雰囲気に対する実質的な液密シールを形成する、請求項3に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項19】
結合位置において、前記第1及び第2弁は、前記第1及び第2ポートの周りにそれぞれ環状に延びて、周囲雰囲気に対する実質的に液密なシールを形成し、前記第1及び第2ポートのあらゆる流体接触面の汚染を防止する、請求項18に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項20】
前記第1のコネクタは雌型コネクタであり、前記第2のコネクタは、結合位置において前記雌型のコネクタ内に収容される雄型のコネクタである、請求項3に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項21】
前記第1のコネクタは、前記第1係合部及び前記第1弁の周りに環状に延び、そこから軸方向外側に延びる第1コネクタハウジングを含み、前記第2のコネクタは、前記第2係合部及び前記第2弁の周りに環状に延び、そこから軸方向外側に延びる第2コネクタハウジングを含み、前記第2コネクタハウジングは、結合位置において、前記第1コネクタハウジング内に収容可能である、請求項20に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項22】
結合位置において、前記第2コネクタハウジングは前記第1コネクタハウジング内に収容され、前記第1及び第2係合部、並びに前記第1及び第2弁は、前記第2コネクタハウジング内に配置される、請求項21に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項23】
前記第1のコネクタは、前記第1ポートが画定された第1ボディを含み、前記第2のコネクタは、前記第2ポートが画定された第2ボディを含み、閉位置において、前記第2ボディの先端部が、前記第1ボディの先端部の中に収容される、請求項22に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項24】
前記第1のコネクタは、互いに角度間隔を空けて設けられた複数の第1ポートを含み、前記第2のコネクタは、互いに角度間隔を空けて設けられた複数の第2ポートを含む、請求項23に記載の無菌流体コネクタ。
【請求項25】
i.全ての流体接触面が、外部汚染を防止するために周囲雰囲気に対して液密に閉鎖されており、第1流体通路と流体連通した第1ポートと、(i)前記第1ポートから径方向に間隔を空けて設けられた第1係合部および(ii)第1弁を含む第1屈曲部材と、を含み、前記第1流体通路は、殺菌流体が流体連通でき、前記第1係合部が実質的に屈曲しない位置において、前記第1弁は、当該第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成して、その間を流体が通過することを防ぐ閉位置に配置され、流体接触面の外部汚染を防止するために、第1のコネクタの全ての流体接触面を周囲雰囲気に対して液密に閉鎖する、第1のコネクタを設けるステップと、
ii.全ての液体接触面が、外部汚染を防止するために周囲雰囲気に対して液密に閉鎖されており、第2流体通路と流体連通した第2ポートを前記第1のコネクタの外部露出面に当接させることなく、第2のコネクタに前記第1のコネクタを結合するステップと、
iii.前記結合するステップ中に、前記第1係合部を屈曲させて前記第1弁を常時の閉位置から開位置に移動させ、前記第1弁が、前記第1ポートからの流体の無菌通過を可能にして、前記第2ポートに前記第1ポートを流体連通させるステップと、
iv.前記第1及び第2ポートを通って殺菌流体が流れることを可能にするステップと、
v.前記可能にするステップ中に、周囲雰囲気に対して気密封止された状態に前記第1及び第2ポートを維持することで、前記第1及び第2ポートの全ての流体接触面の汚染、並びに前記ポートを通って流れる前記殺菌流体の汚染を防止するステップと、を含む方法。
【請求項26】
前記第1弁は、前記第1屈曲部材と一体であり、第2のコネクタは、第2屈曲部材と一体となった第2弁を含み、前記流体連通させるステップは、前記第1及び第2屈曲部材の少なくとも一方を他方と係合させて、前記第1及び第2屈曲部材を曲げることで、常時の閉位置から開位置に前記第1及び第2弁を移動して、前記第1及び第2ポートを互いに流体連通させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結合した開位置において、前記第1屈曲部材と第2屈曲部材の間(i)と、前記第1弁と第2弁の間(ii)の少なくともいずれかの間に液密シールを形成して、周囲環境に対して前記第1及び第2ポートを気密封止することで、前記第1ポート及び第2ポートの全ての流体接触面の汚染、並びに前記ポートを通って流れる流体の汚染を防止するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記結合するステップにおいて、前記第1及び第2屈曲部材は、互いに弾性的に係合して、前記第1及び第2弁を開位置に押し込んで互いに接触させることで、互いの間に環状の液密シールを形成する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載の無菌流体コネクタであって、前記第1のコネクタは、第2コネクタ係合端部を規定する、無菌流体コネクタ。
【請求項30】
請求項1に記載の無菌流体コネクタであって、前記第1弁は、(a)0%から50%までの範囲内または(b)0%から25%までの範囲内、の圧縮歪み値を有する材料を含む、無菌流体コネクタ。
【請求項31】
請求項1に記載の無菌流体コネクタであって、前記第1のコネクタは、前記閉位置において前記第1ポートに液密に重畳し、前記開位置において、前記第1ポートを通過する流体の無菌通過を許容するべく屈折する第1ベースを含む、無菌流体コネクタ。
【請求項32】
請求項31記載の無菌流体コネクタであって、前記第1のコネクタは、前記第1ベースと第1弁との間に屈曲可能ジョイントを含み、前記開位置と閉位置の間を前記第1弁が移動する際、前記ジョイントは、前記第1弁の移動を促進するように屈曲する、無菌流体コネクタ。
【請求項33】
請求項1に記載の無菌流体コネクタであって、さらに、前記開位置において前記第1弁に当接するように構成され、(a)第1弁の損傷防止、および(b)最大開位置または最大屈折位置を超えての屈曲からの第1弁の保護、の少なくとも一つをするように構成された第1支持部を含む、無菌流体コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、2010年4月5日に出願された米国仮出願第61/320,857号の優先権を主張するものであり、前記出願の全ての内容は、その開示内容全体を本開示の一部として明示的に援用する。
【0002】
本発明は、流体コネクタ及び流体の移送方法に関し、特に、無菌流体コネクタ及び流体の無菌移送方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的な流体コネクタは、雄型コネクタを含み、この雄型コネクタが、雌型コネクタ内に収容されることで、これら2つのコネクタが互いに流体連通する。雄型及び雌型のコネクタは、ねじ込み式に係合されても、スナップ嵌めされても、又は、相互連結と切り離しが行える他の方式で互いに着脱可能に連結されてもよい。各コネクタは、管や流体チャンバ等の個別の流体通路と流体連通結合されて、流体通路を互いに流体連通させることで、その間に流体の通路を実現する。
【0004】
このような流体コネクタは、通常、その中を通る流体の汚染を防止していない。例えば、雄型と雌型のコネクタを相互連結する前に、コネクタの流体接触面は、周囲雰囲気に晒されて、風媒性微生物との接触、若しくは汚染された表面との接触、又はその両方によって汚染され得る。このような汚染を防ぐ一つの手法は、相互連結の前に、アルコール拭き布、又は他の殺菌剤で雄型及び雌型のコネクタの流体接触面を拭うことである。この手法の一つの欠点は、この手法では、流体接触面上の全ての微生物を除去しきれないことである。この手法の他の欠点は、流体接触面は、拭き布を適用したとしても、その後、雄型と雌型のコネクタの相互連結前に汚染される可能性があるという点である。また、この手法は、時間がかかり、厄介事として見なされるため、実際面では頼りにならないという更に他の欠点もある。
【0005】
したがって、無菌流体又は殺菌流体は、このような従来のコネクタを通過するときに汚染される恐れがある。このような汚染は、重大な問題をもたらし得る。病院や他の医療施設において、例えば、殺菌された静脈注射用の薬剤又は他の流体の移送等に利用される場合、前述した汚染は、ウィルス性及び他のタイプの感染、重大な疾病、死亡という事態に至る可能性がある。一方、食品加工の用途において、例えば、一つの通路から他の通路に無菌流体又は殺菌流体を移送するために、複数の流体管路を接続することが必要になる場合がある。流体コネクタを通過するときに流体が汚染されると、既に殺菌された食品加工物が汚染されることになり得、このような汚染加工物が摂取された場合には、その加工物が感染症や疾病を引き起こすことになり得る。工業用途においては、コネクタを通過する毒性のある流体が、周囲雰囲気、コネクタを取り扱う作業者、及びコネクタの外側に位置する恐れのある他の表面の少なくともいずれかを汚染することを防止する必要があるであろう。コネクタの流体接触面が、例えば、人と接触したり、人と接触する表面に晒されたりすると、負傷、若しくは疾病、又はその両方を引き起こすことになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前述した従来技術の問題点及び欠点の少なくともいずれかを一つ以上解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、第1のコネクタを含む無菌流体コネクタを対象とし、この第1のコネクタは、内部に流体を受け入れる第1流体通路と、前記第1流体通路と流体連通して、流体を通過させる第1ポートと、第1屈曲部材とを含む。第1屈曲部材は、第1ポートから径方向に間隔を空けて設けられた第1係合部と、第1弁とを含み、前記第1弁は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での第1係合部の移動に伴って、それぞれ閉位置と開位置の間で移動可能である。実質的に屈曲しない位置において、第1弁は、当該第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成して、その間を流体が通過することを防ぐ閉位置に配置され、屈曲した位置において、第1弁は、流体が第1ポートを無菌通過できる開位置に配置される。
【0008】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、無菌コネクタは、第1のコネクタに結合可能な第2のコネクタを更に含む。第2のコネクタは、内部に流体を受け入れる第2流体通路と、前記第2流体通路と流体連通して流体を通過させる第2ポートと、第2屈曲部材とを含む。第2屈曲部材は、第2ポートから径方向に間隔を空けて設けられた第2係合部と、第2弁とを含み、前記第2弁は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での第2係合部の移動に伴って、それぞれ閉位置と開位置の間で移動可能である。実質的に屈曲しない位置において、第2弁は、当該第2弁と第2ポートの間に液密シールを形成して、その間を流体が通過することを防ぐ閉位置に配置され、屈曲した位置において、第2弁は、流体が第2ポートを通過できる開位置に配置される。
【0009】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1及び第2のコネクタは、非結合位置と結合位置の間で移動できる。非結合位置において、第1及び第2係合部は、それぞれ実質的に屈曲しない位置にあり、第1及び第2弁は、それぞれ閉位置にある。このような位置において、各弁は、それぞれのポートと周囲雰囲気との間に液密シールを形成して、それぞれのポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止する。一方、結合位置において、第1及び第2係合部は、屈曲した位置にあり、第1及び第2弁は、互いの間に無菌流体が流れることができる開位置にある。
【0010】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、各コネクタは、各ポートに隣接して形成されるシール面が画定されたボディを更に含み、前記シール面は、閉位置において各弁と係合して、弁とポートの間に液密シールを形成することができる。いくつかのこのような実施形態において、各シール面は実質的に環状であり、各弁は実質的に環状であり、閉位置において、各弁は、各シール面と係合して、そのシール面との間に環状の液密シールを形成する。いくつかのこのような実施形態において、各シール面は、比較的剛性であり、各弁は可撓性である。閉位置において、各弁とそれぞれのシール面とは、互いの間で、環状の液密シールにおける締りばめを形成する。いくつかのこのような実施形態において、各係合部は、各弁と一体に形成され、各弁から径方向に間隔を空けて設けられ、各弁の周りに環状に延び、且つ、各弁の軸方向に延びる。各係合部及び弁は、シリコン等の弾性材料で作製されると好ましい。
【0011】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1のコネクタは、第1ポートに隣接して形成される第1シール面が画定されたボディを更に含み、前記シール面は、閉位置において、第1弁と係合して、第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成することができる。第2のコネクタは、第2ポートに隣接して形成される第2シール面が画定されたボディを更に含み、前記シール面は、閉位置において第2弁と係合して、第2弁と第2ポートの間に液密シールを形成することができる。いくつかのこのような実施形態において、苦屈曲しない位置において、第1弁は、第1ポートと周囲雰囲気の間に液密シールを形成して、第1ポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止する。同様に、第2弁は、第2ポートと周囲雰囲気の間に液密シールを形成して、第2ポートのあらゆる流体接触面の外部汚染を防止する。いくつかのこのような実施形態において、第1シール面は実質的に環状であり、第1弁は実質的に環状であり、閉位置において、第1弁は、第1シール面と係合して、互いの間に環状の液密シールを形成する。同様に、第2シール面は実質的に環状であり、第2弁は実質的に環状であり、閉位置において、第2弁は、第2シール面と係合して、互いの間に環状の液密シールを形成する。現時点での好ましい実施形態において、各環状の液密シールは、それぞれの弁とシール面の間で軸方向に延びて、シールからの汚染物質の移入を更に防止する。
【0012】
また、本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1シール面は、比較的剛性であり、第1弁は可撓性であり、閉位置において、第1弁と第1シール面は、互いの間でそれぞれの環状の液密シールにおける締りばめを形成する。同様に、第2シール面は比較的剛性で、第2弁は可撓性であり、閉位置において、第2弁と第2シール面は、互いの間でそれぞれの環状の液密シールにおける締りばめを形成する。いくつかのこのような実施形態において、第1係合部は、第1弁と一体に形成され、第1弁から径方向に間隔を空けて設けられて、第1弁の周りに環状に延び、且つ、第1弁の軸方向に延びる。同様に、第2係合部は、第2弁と一体に形成され、第2弁から径方向に間隔を空けて設けられて、第2弁の周りに環状に延び、且つ第2弁の軸方向に延びる。いくつかのこのような実施形態において、各屈曲部は実質的にドーム状であり、各弁は、それぞれのドーム状の屈曲部の軸に対して横方向に延びる。いくつかのこのような実施形態において、各屈曲部は略円筒状であり、各弁は、それぞれの略円筒状の屈曲部の軸に対して実質的に垂直に延びる。第1係合部及び第1弁は、シリコン等の弾性材料で形成され、第2係合部及び第2弁は、シリコン等の弾性材料で形成されると好ましい。
【0013】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1及び第2係合部は、結合位置において互いに係合して、屈曲した位置に互いを曲げ、第1弁及び第2弁が第1及び第2係合部内でそれぞれの開位置に陥入されて、第1及び第2ポートが互いに流体連通し、流体が、第1ポートと第2ポートの間を流れることができる。
【0014】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1及び第2係合部は、結合位置において、互いの間に実質的に液密なシールを間に形成する。いくつかのこのような実施形態において、第1及び第2係合部は、結合位置において、第1及び第2弁、並びに第1及び第2ポートの周りにそれぞれ環状に延びて、周囲雰囲気に対する実質的に液密なシールを形成する。いくつかのこのような実施形態において、第1及び第2弁は、結合位置において、第1及び第2ポートの周りにそれぞれ環状に延びて、周囲雰囲気に対する実質的に液密なシールを形成し、第1及び第2ポートのあらゆる流体接触面の汚染を防止する。
【0015】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1のコネクタは、雌型のコネクタであり、第2のコネクタは、結合位置において、前記雌型のコネクタに収容される雄型のコネクタである。いくつかのこのような実施形態において、第1のコネクタは、第1係合部及び第1弁の周りに環状に延び、更にそこから軸方向外側に延びる第1コネクタハウジングを含む。同様に、第2のコネクタは、第2係合部及び第2弁の周りに環状に延び、更にそこから軸方向外側に延びる第2コネクタハウジングを含み、この第2コネクタハウジングは、結合位置において第1コネクタハウジング内に収容可能である。結合位置において、第2コネクタハウジングは、第1コネクタハウジング内に収容され、第1及び第2係合部、並びに第1及び第2弁が第2コネクタハウジング内に配置される。いくつかのこのような実施形態において、第1のコネクタは、第1ポートが画定された第1ボディを含み、第2のコネクタは、第2ポートが画定された第2ボディを含み、閉位置において、第2ボディの先端部が第1ボディの先端部内に収容される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、第1のコネクタは、互いに角度間隔を空けて設けられた複数の第1ポートを含み、第2のコネクタは、互いに角度間隔を空けて設けられた複数の第2ポートを含む。本発明のいくつかの実施形態において、第1流体管路が、第1のコネクタと流体連通接続され、第2流体管路が、第2のコネクタと流体連通接続される。
【0017】
他の態様によれば、本発明は、結合のための第1手段を含む無菌コネクタを対象とする。この第1手段は、内部に流体を受け入れる第1流体通路と、前記第1流体通路と流体連通して流体を通過させる第2手段と、屈曲する第3手段とを含む。第3手段は、第2手段から径方向に間隔を空けて設けられて、他のコネクタと係合し、且つ、第3手段を屈曲させる第4手段と、第5手段とを含み、前記第5手段は、自身と第2手段との間に液密シールを形成することによって第2手段を封止して、流体が第2手段を通過することを防止する閉位置(i)と、第2手段を通って流体が流れることが可能な開位置(ii)との間で移動可能である。第5手段は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での第4手段の移動に伴って、それぞれ閉位置と開位置の間で移動することができる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、無菌コネクタは、結合のための第6手段を更に含む。第6手段は、内部に流体を受け入れる第2流体通路と、前記第2流体通路と流体連通して流体を通過させる第7手段と、屈曲する第8手段とを含む。第8手段は、第7手段から径方向に間隔を空けて設けられて、他のコネクタと係合し、且つ、第8手段を屈曲させる第9手段と、第10手段とを含み、前記第10手段は、自身と第7手段との間に液密シールを形成することによって第7手段を封止して、流体が第7手段を通過することを防止する閉位置(i)と、第7手段から流体が流れることが可能な開位置(ii)の間で移動可能である。第10手段は、実質的に屈曲しない位置と屈曲した位置の間での第9手段の移動に伴い、それぞれ閉位置と開位置の間で移動することができる。
【0019】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、第1手段は第1のコネクタであり、第2手段は第1ポートであり、第3手段は第1屈曲部であり、第4手段は第1係合部であり、第5手段は第1弁であり、第6手段は第2のコネクタであり、第7手段は第2ポートであり、第8手段は第2屈曲部であり、第9手段は第2係合部であり、第10手段は第2弁である。
【0020】
他の態様によれば、本発明は、下記のステップを含む方法を対象とする。
【0021】
第1流体通路と流体連通する第1ポートを、常時の閉位置において気密封止する第1弁を含み、無菌流体が前記第1流体通路と流体連通する第1のコネクタを設けるステップ。
【0022】
第2流体通路と流体連通する第2ポートを含む第2のコネクタに、第1のコネクタを結合するステップ。
【0023】
前記結合するステップ中に、常時の閉位置から開位置に第1弁を屈曲させて、第2ポートに第1ポートを流体連通させるステップ。
【0024】
第1及び第2ポートを通って無菌流体が流れることを可能にするステップ。
【0025】
上記の可能にするステップ中に、周囲雰囲気に対して気密封止された状態に第1及び第2ポートを維持することによって、第1ポート及び第2ポートの全ての流体接触面の汚染、並びに前記ポート内を通る無菌流体の汚染を防止するステップ。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、第1のコネクタは、第1弁及び第1屈曲部材を含み、第2のコネクタは、第2弁及び第2屈曲部材を含む。屈曲させるステップは、第1屈曲部材及び第2屈曲部材の少なくとも一方を他方に係合させて、第1及び第2屈曲部材を曲げることで、常時の閉位置から開位置に第1及び第2弁を移動して、第1ポートと第2ポートとを互いに流体連通させることを含む。
【0027】
いくつかのこのような実施形態において、本方法は、結合した開位置にあるときに、第1屈曲部材と第2屈曲部材の間(i)、若しくは第1弁と第2弁の間(ii)、又はその両方の間に液密シール形成して、周囲雰囲気に対して第1及び第2ポートを気密封止することで、第1及び第2ポートの全ての流体接触面の汚染、並びに前記ポートを通って流れる殺菌流体の汚染を防止するステップを更に含む。
【0028】
いくつかのこのような実施形態において、結合するステップ中に、第1及び第2屈曲部材は、互いに弾性的に係合して、第1及び第2弁を開位置に押し込んで互いに接触させることで、その間に環状の液密シールを形成する。
【0029】
本発明の利点の一つは、結合されないときに、弁が、周囲環境に対して気密封止された状態にポートを維持して、全ての流体接触面コネクタの汚染を防止することである。そして、結合されたときには、弁及び屈曲部材の少なくともいずれかが、周囲雰囲気に対して気密封止された状態にポート及び全ての流体接触面を維持する。したがって、本発明は、無菌流体又は殺菌流体の流体移送に関して特に有利である。例えば、2つの流体管路を本発明のコネクタに相互連結することができ、無菌流体又は殺菌流体は、汚染されずにその中を通過することができる。
【0030】
本発明、及び本発明の現時点における好ましい実施形態の一方、又はその両方の他の目的及び利点は、現時点での好ましい実施形態についての下記の詳細な説明及び付属の図面を参照することでより容易に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】非結合状態の雄型及び雌型のコネクタと共に、周囲雰囲気からコネクタの内部を気密封止する閉位置にあるコネクタの弁を示した、本発明を具現するコネクタの斜視断面図である。
【
図2A】雄型及び雌型のコネクタの相互連結が開始して、雄型のコネクタハウジングが雌型のコネクタハウジング内に収容され始め、対向する屈曲部材の係合面が互いの外周に接触した状態を示した、
図1のコネクタの斜視断面図である。
【
図2B】雄型及び雌型のコネクタの相互連結が進行して、対向する屈曲部材が、互いに係合した状態で更に押圧されて、屈曲部材の間に環状の液密シールを形成すると共に、弁が、各シール面から離れる方向に屈曲し始めて、弁の開動作が始まるところを示した、
図2Aのコネクタの斜視断面図である。
【
図2C】雄型及び雌型のコネクタの相互連結が更に進行して、屈曲部材が、互いに係合した状態で更に曲げられ、弁が、各シール面から離れるように更に径方向に移動して、雄型及び雌型のコネクタのポート間の殺菌流路を更に開いた状態を示した、
図2Bのコネクタの斜視断面図である。
【
図2D】雄型及び雌型のコネクタの相互連結が更に進行して、コネクタの対向する弁が、互いに接触した状態に屈曲又は嵌入されて、弁間に液密シールを形成し始め、コネクタのポート間の殺菌流路を更に開いた状態を示した、
図2Cのコネクタの斜視断面図である。
【
図2E】雄型及び雌型のコネクタの相互連結が更に進行して、コネクタの対向する屈曲部材及び対向する弁の両方が、互いに完全に係合した状態に押圧されて、互いの間に環状の液密シールを形成し、コネクタのポート間の殺菌流路を更に開いた状態を示した、
図2Dのコネクタの斜視断面図である。
【
図3】雄型及び雌型のコネクタが完全に相互連結して、コネクタの対向する弁の間に環状の液密シールが形成され、コネクタのポート間の殺菌流体流路を封止すると共に、略円筒の屈曲部材内の懸案のリングが、殺菌流体流路に対して封止されて、殺菌流体流路、又はコネクタ内を流れる流体が汚染されることを防いだ状態を示した、
図2Eのコネクタの斜視断面図である。
【
図4A】非結合状態にある雄型及び雌型のコネクタと共に、周囲雰囲気からコネクタの内部を気密封止する閉位置にあるコネクタの弁を示した、本発明のコネクタの他の実施形態である、雄型及び雌型のコネクタに連結されて耐久性を向上させる一組の支持部を更に有するコネクタの断面図である。
【
図4B】雄型及び雌型のコネクタが完全に相互連結して、コネクタの対向する弁の間に環状の液密シールが形成され、コネクタのポート間の殺菌流体流路を封止すると共に、略円筒状の屈曲部材内の懸案のリングが、殺菌流体流路に対して封止されて、殺菌流体、又はコネクタ内を流れる流体が汚染されることを防いだ状態を示した、
図4Aのコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1において、本発明を具現するコネクタは、参照番号10によって概括的に示される。コネクタ10は、内部に流体を受け入れる第1流体通路14と、前記第1流体通路14と流体連通して流体を通過させる複数の第1ポート16と、第1屈曲部材18とを含む第1又は雌型のコネクタ12を含む。第1屈曲部材18は、第1ポート16から径方向に間隔を空けて設けられた第1係合部20と、第1弁22とを含み、前記第1弁22は、第1係合部20が実質的に屈曲しない位置(
図1)と完全に屈曲した位置(
図3)の間で移動する際に、それぞれ閉位置(
図1)と開位置(
図3)の間で移動することができる。実質的に屈曲しない位置(
図1)において、第1弁22は、第1弁と第1ポート16の間に液密シールを形成し、そこからの流体の流出を防ぐ閉位置に配置される。完全に屈曲した位置(
図3)において、第1弁22は、流体が第1ポート16を無菌通過できる全開位置に配置される。
【0033】
無菌コネクタ10は、第1又は雌型のコネクタ12に結合可能な第2又は雄型のコネクタ24を更に含む。第2のコネクタ24は、内部に流体を受け入れる第2流体通路26と、前記第2流体通路26と流体連通して流体を通過させる複数の第2ポート28と、第2屈曲部材30とを含む。第2屈曲部材30は、第2ポート28から径方向に間隔を空けて設けられた第2係合部32と、第2弁34とを含み、前記第2弁34は、第2係合部32が実質的に屈曲しない位置(
図1)と完全に屈曲した位置(
図3)の間で移動する際に、それぞれ閉位置(
図1)と全開位置(
図3)の間で移動することができる。実質的に屈曲しない位置(
図1)において、第2弁34は、第2弁34と第2ポート28の間に液密シールを形成し、そこからの流体の流出を防ぐ閉位置に配置される。完全に屈曲した位置(
図3)において、第2弁34は、流体が第2ポート28を通過できる全開位置に配置される。
【0034】
図1〜
図3に示すように、第1及び第2のコネクタ12,24は、非結合位置と結合位置の間で、それぞれ係合状態に移動可能である。非結合位置(
図1)において、第1及び第2係合部20,32は、実質的に屈曲しない位置にあり、第1及び第2弁22,34は、閉位置にある。完全な結合位置(
図3)において、第1及び第2係合部20,32は、完全に屈曲した位置で互いに係合し、第1及び第2弁22,34は、それぞれ全開位置にある。
【0035】
屈曲しない位置(
図1)において、第1弁12は、第1ポート16と周囲雰囲気の間に液密シール36を形成して、第1ポート16の全ての液体接触面の外部汚染を防止する。第1のコネクタ12は、第1ポート16に隣接して形成される第1シール面40が画定された第1ボディ38を更に含み、前記第1シール面40は、閉位置において第1弁22と係合して、第1弁と第1ポートの間に液密シールを形成することができる。図から判るように、第1シール面40は実質的に環状であり、第1弁22は実質的に環状であるため、閉位置において、第1弁22が第1シール面40と係合して、互いの間に環状の液密シール36を形成する。第1シール面40は比較的剛性である一方、第2弁22は可撓性を有する。閉位置において、第1弁22及び第1シール面40は、互いの間で環状の液密シール36における締りばめを形成する。図から判るように、第1係合部20は、第1弁22と一体に形成され、第1弁22から径方向に間隔を空けて設けられ、第1弁22の周りに環状に延び、且つ、第1弁22の軸方向に延びる。一体である第1係合部20及び第1弁22は、シリコン等の弾性材料で作製される。
【0036】
屈曲しない位置(
図1)において、第2弁24は、第2ポート28と周囲雰囲気の間に第2液密シール42を形成して、第2ポート28の全ての液体接触面の外部汚染を防止する。第2のコネクタ24は、第2ポート28に隣接して形成される第2シール面46が画定された第2ボディ44を更に含み、前記第2シール面46は、閉位置において第2弁34と係合して、第2弁と第2ポートとの間に液密シールを形成することができる。図から判るように、第2シール面46は実質的に環状であり、第2弁34は実質的に環状であるため、閉位置(
図1)において、第2弁34が第2シール面46と係合して、互いの間に環状の液密シール42を形成する。第2シール面46は比較的剛性である一方、第2弁34は可撓性を有する。閉位置において、第2弁34及び第2シール面46は、互いの間で環状の液密シール42における締りばめを形成する。図から判るように、第2係合部32は、第2弁34と一体に形成され、第2弁34から径方向に間隔を空けて設けられ、第2弁34の周りに環状に延び、且つ、第2弁34の軸方向に延びる。一体である第2係合部32及び第2弁34は、シリコン等の弾性材料で作製される。
【0037】
各第1係合部20,32は、それぞれの弁22,34と一体に形成され、各弁から径方向に間隔を空けて設けられ、各弁の周りに環状に延びると共に、各弁の軸方向に延びる。図示した実施形態において、各
屈曲部材は、略ドーム状であり、各弁22,34は、各ドーム状の
屈曲部材の軸に対して横方向に延びる。また、図示した実施形態において、各係合部20,32は、略円筒状であり、各弁22,34は、略円筒状の各係合部の軸に対して実質的に垂直に延びる。上記に示したように、各係合部20,32、及び一体型の弁22,34は、シリコン等の可撓性材料又は弾性材料で作製される。
【0038】
一体型の第1弁22及び一体型の第2弁34は、いずれか適切な可撓性材料又は弾性材料で作製されることは理解されるであろう。一部の実施形態において、適切な弾性材料は、シリコン、加硫ラテックス、若しくは加硫ゴム、又はこれら全てを含む。少なくともいくつかの実施形態において、第1及び第2の一体型の弁22,34は、実質的に所定のクリープを有する材料で形成される。圧縮歪みは、圧縮応力が長期に亘った後に弾性特性を維持する、弾性材料の性能の物差しであり、材料のクリープ特性の測定値として利用することができる。一部の実施形態において、第1及び第2の一体型の弁22,34の材料は、約0%から約50%(ASTM(米国材料試験協会)のD412に準拠)までの範囲内、好ましくは約0%から約25%までの範囲内の圧縮歪み値を有する材料から選択される。一部の実施形態において、一体型の弁22,34は、閉位置において、シール面40,46との締りばめを形成する。開位置において、一体型の弁22,34は、シール面40,46から離れる方向に曲げられる。一体型の弁22,34は、かなりの期間に亘って開位置又は閉位置のいずれかに維持され得る。いくつかの実施形態において、一体型の弁22,34は、約6時間、12時間、18時間、24時間、48時間、又は72時間に亘って開位置に維持され、弁の比較的低いクリープ特性により、その後の閉位置においてもシール面40,46と密封係合できる状態のままである。
【0039】
図2E及び
図3に示すように、完全な結合位置において、第1及び第2係合部20,32は、互いに係合して屈曲した位置に互いを変形させ、第1及び第2弁22,34が第1及び第2係合部20,32内で全開位置に陥入され、第1及び第2ポート16,28が互いに流体連通して、流体は、
図3に破線矢印で示すように、そのポート16,28の間で周囲雰囲気に対して気密シールされた殺菌流路を通って流れることができる。完全な結合位置において、第1及び第2係合部20,32は、互いの間に実質的に液密なシールを形成する。第1及び第2係合部20,32は、第1及び第2弁22,34の周り、並びに第1及び第2ポート16,28の周りにそれぞれ環状に延びて、周囲雰囲気に対する実質的に液密なシールを形成する。また、完全な結合位置において、第1及び第2弁22,34は、第1及び第2ポート16,28の周りにそれぞれ環状に延びて、互いに接触した状態に陥入されるか又は曲げられて、互いの間、及び周囲雰囲気に対する実質的に液密なシールを形成し、弁が全開位置にあるときに、第1及び第2ポートの全ての流体接触面の汚染を防止する。図から判るように、屈曲部材18,30上、又はその内部(すなわち、各屈曲部材は、懸案の屈曲リングである)に位置する何らかの微生物又は他の汚染物質は、係合した屈曲部材内に気密封止されるため、係合した対向する弁22,34の間の環状の液密シールによって、コネクタ内を流れる殺菌流体と汚染物質との接触が回避される。
【0040】
第1又は雌型のコネクタ12は、第1又は雌型コネクタハウジング48を含み、このハウジング48は、第1屈曲部材18及び第1弁22の周りに環状に延び、そこから軸方向外側に延びて屈曲部材及び弁をそれぞれ取り囲む。同様に、第2又は雄型のコネクタ24は、第2又は雄型コネクタハウジング50を含み、このハウジング50は、第2屈曲部材30及び第2弁34の周りに環状に延び、そこから軸方向外側に延びる。
図2Aから
図3に示すように、第2又は雄型コネクタハウジング50は、第1又は雌型コネクタハウジング48内に収容可能であり、2つのコネクタを相互連結して互いに流体連通させることができる。結合位置において、第2又は雄型コネクタハウジング50は、第1又は雌型コネクタハウジング48内に収容され、第1及び第2係合部20,32、並びに第1及び第2弁22,34が、第2又は雌型コネクタハウジング50内に配置される。第1のコネクタ12の第1ボディ38には、第1ポート16が画定され、第2のコネクタ24の第2ボディ44には、第2ポート28が画定される。
図2E及び
図3に示すように、全閉位置において、第2ボディ44の先端部52が、第1ボディ38の先端部54内に収容されることで、第1及び第2のコネクタは、容易に位置合わせされて全閉位置に保持される。この分野の当業者であれば本明細書の教示に基づいて認識できるように、第1及び第2のコネクタ12,24は、ネジ接続や、スナップ嵌めや、他の着脱可能な相互結合によるもの等、現在知られているか、又は今後知られるようになる多くの異なる方式で、互いに着脱可能に結合することができる。
【0041】
図示した実施形態において、第1のコネクタ12は、互いに角度間隔を空けて設けられた複数のポート16を含み、第2のコネクタ24は、互いに角度間隔を空けて設けられた複数のポート28を含む。第1流体管路56は、第1のコネクタ12の第1流体通路14と流体連通結合され、第2流体管路58は、第2のコネクタ24の第2流体通路26と流体連通結合される。この分野の当業者であれば本明細書の教示に基づいて認識できるように、前述したポートには、現在知られているか、又は今後知られるようになる多数の異なる構成のいずれが採用されてもよい。例えば、各コネクタは、一つのみのポートを含んでも、2つ以上のポートを含んでもよいことに加え、又はこれに代えて、一方のコネクタが、他方のコネクタとは異なる数のポート及び異なる構成のポートの少なくともいずれかを有してもよい。例えば、一方のコネクタは、より数が少なく広い角度間隔で配置されるポートを備えてもよい。同様に、第1及び第2のコネクタは、図示したように管に結合されても、又は結合されなくてもよく、これらのコネクタは、むしろ現在知られているか、又は今後知られるようになる、多数の異なるタイプの流体供給源、ソケット、又は装置に結合されてよい。
【0042】
図1に示すように、結合されない閉位置において、環状の各液密シール36,42は、各弁22,34と各シール面40,46の間で軸方向に延びて、シールからの汚染物質の侵入を更に防止する。各シール面40,46は、比較的剛性である一方で、各弁22,34は、可撓性であり、閉位置において、各弁22,34及びそれぞれ対応する各シール面40,46は、互いの間でそれぞれの環状の液密シール36,42における締りばめを形成する。
【0043】
図3に典型的に示されように、第1のコネクタは、軸方向に環状に延びて第1ポート16に重畳する第1ベース60を含む。第1の環状の屈曲可能ジョイント62は、第1ベース60と第1弁22との間に延びて、閉位置と開位置の間の第1弁22の移動を容易にする。第1ボディ38には、環状に軸方向に延びて第1ポート16に連続して形成される第1ベース面64、及びベース面64と第1シール面40の間に延びる第1階段面66が画定される。図示した実施形態において、第1階段面66は、第1ベース面64及び第1シール面40に対して略垂直方向に配置される。
【0044】
第1のコネクタ12と同様、
図3に典型的に示されるように、第2のコネクタ24は、軸方向に環状に延びて第2ポート28に重畳する第2ベース68を含む。第2の環状の屈曲可能ジョイント70は、第2ベース68と第2弁34との間に延びて、閉位置と開位置の間の第2弁34の移動を容易にする。第2ボディ44には、環状に軸方向に延びて第2ポート28に連続して形成される第2ベース面72、及びベース面72と第2シール面46の間に延びる第2階段面74が形成される。図示した実施形態において、第2階段面74は、第2ベース面72及び第2シール面46に対して略垂直方向に配置される。
【0045】
第1のコネクタ12の閉位置(
図1)において、第1ベース60は、第1弁ボディ38の第1ベース64と密封係合して、互いの間に液密シールを形成し、第1階段面64は、第1ボディ38の第1階段面66内に収容されて、その第1階段面66と密封係合し、更なる液密シールを実現する一方で、第1弁22は、第1シール面40と密封係合して、弁とボディの間の液密シールを実現する。同様に、第2コネクタ24の閉位置において、第2ベース68は、第2弁ボディ44の第2ベース72と密封係合して、互いの間に液密シールを形成し、第2階段面70は、第2ボディ44の第2階段面74内に収容されて、その第2階段面74と密閉係合し、更なる液密シールを実現する一方で、第2弁34は、第2シール面46と密封係合して、弁とボディの間の液密シールを実現する。図から判るように、常時の閉位置において、第1のコネクタのボディ38及び第2のコネクタのボディ44の外側の全ての流体接触面は、第1弁22及び第2弁34内でそれぞれ気密シールされる。一方、完全に結合した開位置(
図2E及び
図3)において、弁22,34は、全開位置に曲げられるか又は陥入されて互いに係合するため、各シール面40,46から径方向に離れるように移動し、屈曲性ジョイント62,70は、各階段面64,72から径方向に離れるように屈曲し、更に、ベース60,68が、各ボディのベース面64,72から離れるように屈曲することで、2つのコネクタの間で、環状に軸方向に延びる流体通路76が画定される。
図3に破断線矢印で示すように、結合した全開位置において、流体は、第1流体通路14から複数のポート16を通り、更に、環状に軸方向に延びる通路76、複数の第2ポート28を通って第2通路26内に流入することができる。必要に応じて、流体は逆向きに流れてもよい。環状に軸方向に延びる通路76は、第1及び第2弁22,34の突き合わせ係合によって、懸案の屈曲可能リング(すなわち、屈曲部材18,30の表面)、及び周囲雰囲気の両方に対して気密封止される。図から判るように、2つのコネクタの間を通過する流体は、周囲雰囲気に対して封止された状態に維持され、このような流体と接触するコネクタの表面も同様に、周囲雰囲気に対して封止されて、流体を無菌状態に維持すると共に、周囲雰囲気に対して気密封止された状態に維持する。
【0046】
図4Aに移って検討すると、本発明のコネクタの他の実施形態が、概略的に参照番号110で示されている。コネクタ110は、前述したコネクタ10とほぼ同様であるため、数字の「1」を前に付けた同様の参照番号を用いて、同様の要素を示した。コネクタ110とコネクタ10の主な違いは、コネクタ110が、第1及び第2ハウジング148,150のベースと第1及び第2弁122,134の間にそれぞれ第1及び第2支持部180,182を含むことである。第1及び第2支持部180,182は、第1及び第2の一体型の弁122,134のベースとそれぞれ一緒に成形されてよい。いくつかの実施形態において、第1及び第2支持部は、第1及び第2の一体型の弁122,134と一緒に共成形(co-mold)、又は被せ成形(overmold)される。第1及び第2支持部180,182は、第1及び第2ハウジング148,150のベースにそれぞれ設けられた第1及び第2窪み186,188内にそれぞれスナップ嵌めされる。図示した実施形態において、支持部180,182は、リング形状であるが、この分野の当業者であれば理解できるように、支持部180,182には、現在知られているか、又は今後知られるようになる多数の異なる形状及び構成の少なくともいずれかを用いることができる。
【0047】
図4Bは、雄型のコネクタと雌型のコネクタの完全な相互連結状態を示した、
図4Aのコネクタの断面図である。
図4Bに示したように、第1及び第2支持部180,182は、第1及び第2の一体型の弁122,134のベースを支えて、開位置におけるコネクタ110の構造統合性及び耐久性を向上させる。開放された相互連結位置において、第1及び第2支持部180,182は、一体型の弁122,134に当接して、弁の損傷を防止する。第1及び第2支持部180,182の他の実施形態は、第1及び第2支持部180,182により、第1及び第2の一体型の弁122,134が、最大開位置、すなわち最大屈曲位置を超えて曲がる、又は変形することを防ぐことである。
【0048】
本発明のコネクタは、多数の異なる分野のいずれにおいても多くの異なる用途を有する。例えば、本コネクタは、IVチューブ、嚢を、チューブ、充填タンク、及び充填装置の少なくともいずれかと相互連結すること、及び流体結合を必要とする多数の他の各種用途に利用することができる。容易に理解できるように、本発明のコネクタは、無菌結合又は殺菌結合を必要とする用途、又は、移送対象の流体(毒性の流体等)と接触することを防ぐ必要のある用途に特によく適合する。
【0049】
この分野の当業者であれば本明細書の教示に基づいて理解できるとおり、本発明の前述した実施形態及び他の実施形態に対して、付属の請求項に定義した本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更、変形、及び改良を行うことができる。例えば、ポート、弁、係合部、屈曲部材、コネクタボディ、コネクタハウジング、及び、着脱式又は他の方式でコネクタを結合する手段は、現在知られているか、又は今後知られるようになる多くの異なる構成のいずれを有してもよい。また、本明細書に開示した全ての要素又は全ての特徴物を必要とするものではなく、必要に応じて、追加の要素又は特徴物を加えることもできる。また、コネクタの要素又は部品は、現在知られているか、又は今後知られるようになる多くの異なる材料のいずれで作製されてもよい。また、コネクタは、現在知られているか、又は今後知られるようになる多くの異なる流体のいずれの移送に利用されてもよく、このような流体としては、薬品や、調合薬や、ワクチンや、眼病薬製品や、クリームや、軟膏剤や、ゲル状物質や、乳製品、牛乳、クリーム、特殊調製粉乳、チョコレート等の飲料又は食糧加工品や、工業用液体又はガス等の工業製品が挙げられる。また、2つのコネクタのうちの一方のみが弁を必要としてもよく(例えば、結合の片側のみが無菌状態または殺菌状態でなければならない場合)、その場合は、一方のコネクタ(雄型又は雌型)は従来のコネクタであっても、または他方のコネクタと異なるものであってもよい。したがって、現時点において好ましい実施形態の詳細な説明は、限定する意味とは対照的に、例示としてのみ採用されるべきものである。