(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第二領域の断面形状は辺の数が奇数の多角形であって、その辺の数に相当する枚数のプリプレグにより第二領域における一層分の周方向分割層が構成されている請求項1記載の釣竿用竿体。
第二領域の断面形状は辺の数が偶数の多角形であって、その辺の数の1以外の約数に相当する枚数のプリプレグにより第二領域における一層分の周方向分割層が構成されている請求項1記載の釣竿用竿体。
本体層は、前側に位置する細筒部と、後側に位置する太筒部と、細筒部と太筒部との間に位置し、細筒部の勾配及び太筒部の勾配よりも急勾配で後側に向けて内外面共に拡大している急拡大部とを備え、該急拡大部に前記移行領域が位置している請求項1乃至5の何れかに記載の釣竿用竿体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、安定した強度と良好な美観を容易に確保することができる釣竿用竿体とそれを備えた釣竿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿用竿体は、プリプレグから筒状に形成された本体層を
竿体の全長に亘って備えており、該本体層は、前側に位置し、断面形状が第一の形状である第一領域と、後側に位置し、断面形状が前記第一の形状とは異なる第二の形状である第二領域と、第一領域と第二領域との間に位置し、前側から後側に向けて断面形状が徐々に第一の形状から第二の形状へと変化していく移行領域とからな
り、本体層は
、第二領域における一周巻き分未満の幅を有する複数枚のプリプレグを、重ね合わせ部を形成しつつ周方向に並べるように巻回して筒状とされた周方向分割層を有して
おり、該周方向分割層を構成している全てのプリプレグは竿体の全長に対応した長さを有していることを特徴とする。尚、竿先側を前側とし、竿尻側を後側とする。
【0008】
該構成の釣竿用竿体にあっては、
竿体の全長に対応した長さを有する一枚のプリプレグを一周以上巻回して前後異形部を形成するのではなく、
本体層が、第二領域における一周巻き分未満の幅を有する複数枚のプリプレグから筒状とした周方向分割層を有する構成であるので
、断面形状が前後で異なっていてもプリプレグにシワや捻れが生じにくい。即ち、本体層
の周方向分割層は、周方向に隣り合うプリプレグの側縁部同士が重ね合わせられた重ね合わせ部を有しており、このような重ね合わせ部を形成しながら複数枚のプリプレグを周方向に並べて筒状に構成されたものである。また、
竿体の全長に対応した長さを有するプリプレグから周方向分割層が構成されているので、前後に接合された接合部分、即ち前後の繋ぎ目が
周方向分割層に存在せず、
周方向分割層における応力集中が防止されて、曲げ強度を容易に確保できる。更に、重ね合わせ部が前後方向に筋状に延びて
竿体の全長に亘って形成されているので、該筋状の重ね合わせ部があたかもリブとして機能することにもなり
、曲げ強度も容易に確保できる。尚、周方向分割層は一層であってもよいし二層以上設けられていてもよい。また、本体層が全長に亘って一層又は複数層の周方向分割層により構成されていてもよ
い。
【0009】
特に、第二領域の断面形状は辺の数が奇数の多角形であって、その辺の数に相当する枚数のプリプレグにより第二領域における一層分の周方向分割層が構成されていることが好ましい。尚、多角形は、辺と辺との間の頂点である角部を有しているが、その角部は所定の円弧となっていてよく、また、辺も直線ではなく外側凸の曲線であってもよい。第二領域の断面形状が三角形や五角形に代表される奇数の辺を有する多角形の場合には、その辺の数と同数のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層を構成することが好ましく、バランスの良い竿体となる。尚、例えば第二領域の断面形状が五角形である場合には、五枚のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層が構成されることになり、第二領域の断面形状が正五角形である場合には、五枚のプリプレグは、それぞれ正五角形の一周を五つに等分割した各領域を受け持つことになる。
【0010】
また、第二領域の断面形状は辺の数が偶数の多角形であって、その辺の数の1以外の約数に相当する枚数のプリプレグにより第二領域における一層分の周方向分割層が構成されていることが好ましい。この場合も第二領域の断面形状が四角形や六角形に代表される偶数の辺を有する多角形の場合には、その辺の数の1以外の約数に相当する枚数のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層を構成することが好ましく、バランスの良い竿体となる。例えば、第二領域の断面形状が四角形である場合には、二枚あるいは四枚のプリプレグにより一層分の周方向分割層を構成し、第二領域の断面形状が六角形である場合には、二枚、三枚、六枚の何れかの枚数のプリプレグにより一層分の周方向分割層を構成する。尚、例えば正六角形であって、二枚のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層を構成する場合には、それらの二枚のプリプレグは、それぞれ正六角形の一周を二つに等分割した各領域を受け持つことが好ましく、同様に、三枚のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層を構成する場合には、それらの三枚のプリプレグは、それぞれ正六角形の一周を三つに等分割した各領域を受け持つことが好ましく、六枚のプリプレグを使用して第二領域における一層分の周方向分割層を構成する場合には、それらの六枚のプリプレグは、それぞれ正六角形の一周を六つに等分割した各領域を受け持つことが好ましい。
【0011】
更に、第二領域において、前記重ね合わせ部は、多角形の角部に位置していることが好ましく、また、多角形の辺の中央部に位置していることも好ましい。このように、第二領域において、重ね合わせ部が多角形の角部あるいは辺の中央部に位置しているとバランスの良い竿体が得られる。
【0012】
また、本体層は、前側に位置する細筒部と、後側に位置する太筒部と、細筒部と太筒部との間に位置し、細筒部の勾配及び太筒部の勾配よりも急勾配で後側に向けて内外面共に拡大している急拡大部とを備え、該急拡大部に前記移行領域が位置していることが好ましい。本体層が前後異形部を備えると共に急拡大部も備える場合においては、プリプレグを巻回する際により一層シワや捻れが発生しやすいが、細筒部から太筒部までの長さを有する複数枚のプリプレグによって周方向分割層を構成することにより、シワや捻れの発生を抑制できて、安定した強度が確保され、また、良好な美観も得られる。尚、細筒部の勾配や太筒部の勾配は、何れも0であってもよい、即ち、ストレート形状であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る釣竿は、上述したような釣竿用竿体を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、このように、本体層の
周方向分割層が、
竿体の全長に対応した長さを有する複数枚のプリプレグによって筒状とされ
ているので、
竿体の全長に対応した長さを有する一枚のプリプレグを一周以上巻回して筒状とした全周連続
層に比して、プリプレグにシワや捻れが発生しにくく、安定した強度と良好な美観が容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿及びそれに使用されている竿体について
図1〜
図6を参酌しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態における釣竿は、リールを取り付けるためのリールシート1を備えたものである。該リールシート1は、パイプシートとも称される筒状のものであって、リールシート本体10と、可動フード体11と、ナット12とを備えている。リールシート本体10は、合成樹脂等から成形により形成されたものであって、リールの脚部100を載置するためのリール脚載置部13と、リールの脚部100の一方が差し込まれる固定フード部14とを有している。尚、本実施形態ではスピニングリールを取り付けるためのリールシート1を例に説明しており、従って、
図1に示すように、リールシート本体10のリール脚載置部13は使用状態において下側に位置するが、両軸リールを取り付けるためのリールシート1であってもよい。また、リールシート本体10の固定フード部14は前側に位置しているが後側であってもよい。リールシート本体10の第二領域には雄ねじ部15が形成されており、該雄ねじ部15にナット12が螺合している。ナット12の前側に、リールの脚部100の他方が差し込まれる可動フード体11が位置している。可動フード体11はナット12に相対回転可能に係止されているので、ナット12を回転させることで可動フード体11は回転することなくナット12と共に前後に移動する。該可動フード体11を前側に移動させる、即ち、固定フード部14に接近させることでリールの脚部100を前後に狭持しつつリールシート本体10に固定することができる。また、可動フード体11を後側に移動させる、即ち、固定フード部14から離反させることでリールの脚部100の固定状態が解除されて、リールを釣竿から取り外すことができる。更に、リールシート1の前側にはフロントグリップ部7が設けられている。該フロントグリップ部7は、リールシート本体10とは別体であって、EVA等の発泡性合成樹脂やコルク等から形成されている。
【0017】
このようにリールシート1が装着された釣竿は、竿本体2と、該竿本体2の後側に所定長さの前後重ね合わせ部4を形成するようにして接着され一体化されたリアグリップ竿体3とを備えている。竿本体2とリアグリップ竿体3とを前後に接合させた接合部分である前後重ね合わせ部4においては、竿本体2の後端部が内側に位置し、その外側にリアグリップ竿体3の前端部が位置しているが、逆であってもよい。
【0018】
竿本体2は、所定形状に裁断されたシート状のプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成した本体層を備えたものであって、プリプレグの強化繊維としてはカーボン繊維やガラス繊維等が使用でき、特にカーボン繊維が好ましく、またカーボン繊維を使用する場合にはその比率を高くすることが好ましい。
図2にリアグリップ竿体3を示しているが、このリアグリップ竿体3も、所定形状に裁断されたシート状のプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成した本体層を備えており、その本体層がリアグリップ竿体3の全長に亘って形成されているものを例示するが、その製法については後述する。尚、
図2に示しているリアグリップ竿体3は
図1に示しているリアグリップ竿体3とは各部の比率を若干変えて示している。
【0019】
リアグリップ竿体3の肉厚は全長に亘って略一定であり、竿本体2の後端部における肉厚と略等しい。該リアグリップ竿体3にリアグリップ部5が一体的に形成されており、該リアグリップ部5がリールシート1の後側に位置している。該リアグリップ部5は、釣竿を持っている手の肘を当てたり、両手でキャストする場合にはリールシート1を持つ手とは反対側の手で把持したりして使用されるものであり、このリアグリップ部5は、断面が非円形の異形グリップである。即ち、リアグリップ部5は、断面形状が円形ではなく、即ち円筒状ではなく、断面形状が三角形、即ち角筒状である。リアグリップ部5の断面形状が三角形であると、把持した時にグリップ性が向上して滑りにくくなり、また、肘を当てる時にも、三角形の辺の部分に当てれば、接触面積が増して安定性が良くなり、感触も柔らかなものとなる。他の多角形や非円形の場合も同様である。尚、リアグリップ部5の後端における太さは、竿体2よりも太いことが好ましく、フロントグリップ部7と同等の太さあるいはそれ以上の太さとすることが好ましい。
【0020】
図2に示しているように、リアグリップ竿体3は、後側に向けて急勾配で内面及び外面が拡大していく急拡大部31を備えている。具体的には、リアグリップ竿体3は、前側から順に、細い筒状の細筒部30と、後側に向けて徐々に太くなっていく筒状の急拡大部31と、細筒部30よりも太い筒状の太筒部32とから構成されており、急拡大部31の勾配は、細筒部30の勾配よりも大きく、太筒部32の勾配よりも大きい。より詳細には、本実施形態において、細筒部30の勾配と太筒部32の勾配は何れも0であって、従って、細筒部30と太筒部32はストレート形状となっている。但し、細筒部30と太筒部32が例えば数%の勾配で後側に向けて拡大していく形状であっても無論よい。
【0021】
このように急拡大部31を備えることによりリアグリップ竿体3にリアグリップ部5が一体的に形成されており、急拡大部31の主として後部と太筒部32とからリアグリップ部5が構成されている。尚、細筒部30の長さや太筒部32の長さは任意であって一方が他方よりも長くてもよいし互いに同一長さであってもよいが、本実施形態では、太筒部32の長さは、細筒部30の長さよりも短く、また急拡大部31の長さよりも短い。また、リアグリップ竿体3の細筒部30にリールシート本体10が装着され、リアグリップ竿体3は、その細筒部30において竿本体2と重ね合わせられている。尚、リアグリップ竿体3の後端には尻栓33が装着される。
【0022】
本実施形態において、リアグリップ竿体3はその全長に亘って断面形状が一定のものではなく断面形状が前後で異なっているものである。即ち、リアグリップ竿体3は断面形状が前後で異なる前後異形部を備えている。
図3に断面形状を示しているように、細筒部30の断面形状は円形であり、太筒部32の断面形状は非円形、具体的には正三角形であり、急拡大部31のうちの所定部分において断面形状が徐々に円形から正三角形へと変化している。尚、
図3では本体層のみを示している。細筒部30は、その全長に亘って断面形状が円形であり、太筒部32は、その全長に亘って断面形状が正三角形である。そして、急拡大部31における前側の所定長さ領域においては、その断面形状が細筒部30と同様に円形であって、急拡大部31における残る後側の所定長さ領域においては、その断面形状が円形から徐々に正三角形へと変化していく。従って、リアグリップ竿体3の全長を断面形状で分類すると三つの領域に区分することができる。即ち、リアグリップ竿体3は、前側から順に、断面形状が円形である第一領域40と、断面形状が円形から正三角形へと徐々に変化していく移行領域41と、断面形状が正三角形である第二領域42とに区分でき、これら第一領域40と移行領域41と第二領域42とからなる前後異形部を備えた構成となっている。本実施形態において、細筒部30と急拡大部31の前側の所定長さ領域とが第一領域40を構成し、急拡大部31の後側の所定長さ領域が移行領域41を構成し、太筒部が第二領域42を構成する。従って、急拡大部31は、前側の所定長さが第一領域40を構成し、残る後側の所定長さが第二領域42を構成している。
【0023】
図3に示すように、リアグリップ竿体3の本体層は、一周が複数の領域に分割された周方向分割層を有している。本実施形態においては説明の簡略化のために本体層が周方向分割層のみからなる構成について説明する。
図3においては、周方向分割層が一層である場合、即ち本体層が一層である場合について図示しているが、周方向分割層は一層には限られず複数層、即ち二層以上であっても無論よい。本実施形態ではリアグリップ竿体3の太筒部32(第二領域42)の断面形状が正三角形であるので、一周が三つに等分割されて各領域がそれぞれ一枚のプリプレグ71,72,73により構成されていて、合計三枚のプリプレグ71,72,73によって一層分の周方向分割層が構成されている。各プリプレグ71,72,73は本体層における前後異形部の全長に対応した長さを有している。本実施形態においてはリアグリップ竿体3の全長に亘って本体層が設けられると共に、本体層の全長を前後異形部としているため、三枚のプリプレグ71,72,73は何れもリアグリップ竿体3の全長に対応した長さを有している。また、三枚のプリプレグ71,72,73は互いに同一形状であって、太筒部32(第二領域42)において一周巻き分未満の幅となっている。後述するように太筒部32(第二領域42)が正三角形であるので、各プリプレグ71,72,73の後端における幅W2は、太筒部32(第二領域42)の一周分を三等分した寸法に重ね合わせ部74の幅を足した寸法となっている。また、各プリプレグ71,72,73の前端における幅W1は、細筒部30の一周分を三等分した寸法に重ね合わせ部74の幅を足した寸法となっている。
【0024】
三枚のプリプレグ71,72,73はその側縁部同士が内外重ね合わせられて筒状となっており、従って、その側縁部同士が重ね合わせられて形成された重ね合わせ部74は一層の周方向分割層に合計三箇所形成されることになる。また、太筒部32(第二領域42)の断面形状が正三角形であって三枚のプリプレグ71,72,73の幅も同一であるので、三箇所の重ね合わせ部74は周方向に等間隔あけて配置されている。即ち、三箇所の重ね合わせ部74は120度間隔で配置されている。また、重ね合わせ部74は正三角形の角部34に位置しており、従って、三つの辺はそれぞれ一枚のプリプレグ71,72,73が受け持って構成されている。太筒部32(第二領域42)のみならず断面形状が円形である細筒部30乃至第一領域40においても同様であって、一周が三等分されて各分割領域がそれぞれ一枚のプリプレグ71,72,73によって構成されており、重ね合わせ部74も120度間隔で形成されている。これらの重ね合わせ部74は前後方向に筋状に延びていてリアグリップ竿体3の全長に亘って形成されている。このように本実施形態におけるリアグリップ竿体3の本体層はその全長に亘って三枚のプリプレグによって一層分の周方向分割層が形成された構成となっている。
【0025】
このようなリアグリップ竿体3の詳細構造をその製法と共に説明する。
図4のように、マンドレル60は、リアグリップ竿体3の形状に合わせた形状とされる。従って、マンドレル60は、前側から順に細筒部30を形成するための第一の部分61と、急拡大部31を形成するための第二の部分62と、太筒部32を形成するための第三の部分63とを有する形状となっており、第一の部分61の全長と、第二の部分62の前側の部分は断面形状が円形であり、第三の部分63の断面形状は正三角形であって、第二の部分62の後側の部分において断面形状が徐々に円形から正三角形へと変化している。本体層は、リアグリップ竿体3の全長に亘って形成されたものであり、本実施形態においては一層構造であって、一層の周方向分割層からなり、
図4に示すような同一形状の三枚のプリプレグ71,72,73をワンセットとし、その三枚のプリプレグ71,72,73から一周分の周方向分割層が形成される。
【0026】
プリプレグ71,72,73は、前後方向(リアグリップ竿体3の軸線方向)に長い形状であって、その長さLは、リアグリップ竿体3の全長に対応した長さとなっている。即ち、プリプレグ71,72,73の長さLは、加熱焼成後に端部をカットして所定長さのリアグリップ竿体3を形成することができるように所定の余裕を有した長さとなっている。但し、リアグリップ竿体3の全長と同じ長さであってもよい。プリプレグ71,72,73の幅は、マンドレル60の各部における周長の略1/3に相当する幅である。詳細には、前端の幅W1はマンドレル60の第一の部分61の略1/3回巻きに相当する幅であり、後端の幅W2はマンドレル60の第三の部分63の略1/3回巻きに相当する幅であるが、マンドレル60に巻回する際に各プリプレグ71,72,73の幅方向の端部同士を内外重ね合わせるようにするため、周長の1/3に相当する幅に対して重ね合わせ部74の幅に相当する分を足したもの、つまり若干の余裕を持った幅寸法となっている。何れにしても、一周を三等分した各分割領域をそれぞれ一枚のプリプレグ71,72,73で形成し、三枚のプリプレグ71,72,73で一周分とする。従って、プリプレグ71,72,73は、細筒部30の略1/3回巻きに相当する幅W1である第一の長方形の部分71a,72a,73aと、太筒部32の略1/3回巻きに相当する幅W2である第二の長方形の部分71c,72c,73cと、前端の幅がW1で後端の幅がW2であって後側に向けて徐々に幅がテーパ状に広がっていく台形状の部分71b,72b,73bとからなる。第一の長方形の部分71a,72a,73aから細筒部30が形成され、台形状の部分71b,72b,73bから急拡大部31が形成され、第二の長方形の部分71c,72c,73cから太筒部32が形成される。尚、
図4において、第一の長方形の部分71a,72a,73aと台形状の部分71b,72b,73bと第二の長方形の部分71c,72c,73cの各境界部分には二点鎖線を引いて示している。
【0027】
このようなプリプレグ71,72,73には、種々の仕様のシートを使用することができるが、リアグリップ竿体3の軸線方向(前後方向)に沿った強化繊維を含むものであることが好ましい。例えば、
図6に示すように強化繊維が軸線方向に沿った縦シート81と強化繊維が周方向に沿った横シート82とを積層一体化させた積層シート83から所定形状に裁断されたものを使用することができる。強化繊維としては、上述した竿本体2の場合と同様であってカーボン繊維等を使用できる。
【0028】
製法の概略について説明すると、まず一枚目のプリプレグ71をマンドレル60に巻き付ける。一枚目のプリプレグ71をマンドレル60に巻き付けるとマンドレル60の全周のうち略1/3程度が一枚目のプリプレグ71で巻回されることになる。一枚目のプリプレグ71は、マンドレル60の第三の部分63における正三角形の一辺に巻き付けるようにして、その両側縁部は第三の部分63における正三角形の角部63aにそれぞれ位置させる。次に、マンドレル60を軸線まわりに一方向に120度回転させて二枚目のプリプレグ72を同様に巻回する。二枚目のプリプレグ72は一枚目のプリプレグ71の幅方向の一端部(側縁部)の上に所定幅で重なり合うようにして巻き付ける。従って、一枚目のプリプレグ71の側縁部と二枚目のプリプレグ72の側縁部によって所定幅の重ね合わせ部74が形成される。該重ね合わせ部74は前後方向に延びていて全長に亘って略一定幅にて形成される。二枚目のプリプレグ72は、マンドレル60の第三の部分63における正三角形の残る二辺のうちの一方の辺に巻き付けるようにする。従って、重ね合わせ部74はマンドレル60の第三の部分63においては正三角形の角部63aに位置する。
【0029】
更にマンドレル60を軸線まわりに先と同じ一方向に120度回転させて三枚目のプリプレグ73を巻き付ける。この場合も二枚目のプリプレグ72の幅方向の一端部(側縁部)の上に所定幅で重なり合うようにして三枚目のプリプレグ73を巻き付けると共に、一枚目のプリプレグ71の幅方向の他端部(側縁部)の上にも三枚目のプリプレグ73が所定幅で重なり合うようにする。三枚目のプリプレグ73は、マンドレル60の第三の部分63における正三角形の残る一辺に巻き付けるようにする。三枚目のプリプレグ73をマンドレル60に巻き付けると、マンドレル60の全周が三枚のプリプレグ71,72,73によって覆われて全長に亘って一周分の巻回状態となる。プリプレグ71,72,73同士の重ね合わせ部74は、120度毎に合計三箇所形成されることになって、マンドレル60の第三の部分63においてはそれぞれ正三角形の三つの角部63aに位置することになる。また、三枚のプリプレグ71,72,73によってマンドレル60の第一の部分61から第三の部分63まで一周分の巻回状態となり、この三枚のプリプレグ71,72,73によって、三つの重ね合わせ部74を有する一周分の周方向分割層が全長に亘って形成されることになる。このようなマンドレル60と三枚のプリプレグ71,72,73との周方向の位置関係の概略を
図5に示している。
図5に示しているように、三枚のプリプレグ71,72,73はそれぞれマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各辺に対峙するように配置され巻回される。即ち、三枚のプリプレグ71,72,73は、その幅方向の中央部分がそれぞれマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各辺の中央部に位置するようにして巻回される。尚、本実施形態においては、本体層が一層の周方向分割層から構成されているので、このような三枚のプリプレグ71,72,73をワンセットとした一周分の巻回工程を一回のみ行うが、周方向分割層を二層以上形成する場合には、引き続いて二回目以降の巻回工程を同様に行う。
【0030】
そして、このように周方向分割層からなる本体層を形成した後、その外側に図示しない外層を形成する。該外層は、本体層の外側にテープ状のプリプレグを全長に亘って螺旋状に巻回して形成する。即ち、本実施形態においてリアグリップ竿体3は本体層と外層とから構成される。テープ状のプリプレグはその長手方向に沿ってカーボン繊維等の強化繊維が引き揃えられたものであり、種々の厚さのものを使用できる。尚、テープ状のプリプレグは密巻に巻回することが好ましい。密巻とは隙間を空けない巻き状態であって且つオーバーラップすることがない状態で巻き付けていくことであり、この密巻によって外層が隙間なく一定厚さで形成される。その後、図示しない成形テープを巻き付けて締め付ける。該成形テープは所定幅の重なり部分を持たせながら竿軸方向の一方側から他方側に向けて螺旋状に巻回していく。そして加熱焼成した後、成形テープを除去してマンドレル60を引き抜いて両端部をカットしてリアグリップ竿体3が形成される。
【0031】
このようにして形成されるリアグリップ竿体3にあっては、三枚のプリプレグ71,72,73から一周分の周方向分割層を形成しているので、一枚のプリプレグを一周巻き以上巻回して本体層の太筒部32(第二領域42)を形成する構成に比して、前後で断面形状が異なっていても、また、その中途部に急拡大部31が存在していても、プリプレグ71,72,73にシワや捻れが発生しにくくなり、良好な美観と安定した強度を有するリアグリップ竿体3を容易に製造することができる。
【0032】
また、リアグリップ竿体3の全長に亘って前後の接合部分が存在しないので、応力集中の発生を防止でき、十分な曲げ強度を容易に確保できる。しかも、プリプレグ71,72,73同士の重ね合わせ部74が全長に亘って筋状に延びていて、該筋状の重ね合わせ部74がリブとして機能することにもなるので、リアグリップ竿体3の曲げ強度も容易に確保できる。
【0033】
更に、一層分の周方向分割層が正三角形の辺の数と同じ枚数である三枚のプリプレグ71,72,73によって構成されているので、バランスの良いリアグリップ竿体3が得られる。特に、一周を三等分するように三枚のプリプレグ71,72,73が互いに同一形状となっているので、重ね合わせ部74が周方向に一定の間隔をあけて形成されることになり、周方向にバランスの採れたリアグリップ竿体3が得られる。しかも、太筒部32(第二領域42)において、三つの重ね合わせ部74がそれぞれ正三角形の角部34に位置しているので、バランスの良いリアグリップ竿体3となる。更に、リアグリップ竿体3の全長に亘って一周分の周方向分割層となっているので、全長に亘って厚みを略均等にすることができる。
【0034】
また、縦シート80と横シート81が予め積層されて一体化した積層シート83をプリプレグ71,72,73に使用すれば、周方向分割層が一周分の巻き数であっても、リアグリップ竿体3の強度を容易に確保することができる。
【0035】
尚、本実施形態では、三箇所の重ね合わせ部74が太筒部32(第二領域42)における正三角形の各角部34にそれぞれ位置するように、三枚のプレプレグ71,72,73をマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各辺に対峙させて配置したが、
図8に示すように、三枚のプレプレグ71,72,73の幅方向の中央部がマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各角部63aにそれぞれ一致するように配置してもよい。この場合、
図7のように三箇所の重ね合わせ部74は、太筒部32(第二領域42)における正三角形の各辺の中央部にそれぞれ位置する。このように太筒部32(第二領域42)において三つの重ね合わせ部74がそれぞれ正三角形の辺の中央部に位置する構成としても、バランスの良いリアグリップ竿体3が得られる。
【0036】
また、
図9や
図10に示しているように、三枚のプレプレグ71,72,73を全長に亘って幅一定の長方形状としてもよい。その幅は、太筒部32の略1/3回巻きに相当する幅W2とする。
図9は、
図5と同様の配置態様であって、三箇所の重ね合わせ部74が太筒部32(第二領域42)における正三角形の各角部34にそれぞれ位置するように、三枚のプレプレグ71,72,73をマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各辺に対応してそれぞれ配置する場合である。
図10は、
図8と同様の配置態様であって、三箇所の重ね合わせ部74が太筒部32(第二領域42)における正三角形の各辺の中央部にそれぞれ位置するように、三枚のプレプレグ71,72,73をその幅方向の中央部がマンドレル60の第三の部分63における正三角形の各角部63aにそれぞれ一致するように配置する場合である。このように幅一定のプリプレグ71,72,73を使用すると、細筒部30が太筒部32よりも細くて小径であるために、太筒部32においては三枚のプリプレグによって一周分の周方向分割層が形成される一方、細筒部30においては三枚のプリプレグによって一周分を越える巻き数の周方向分割層が形成される。細筒部30の径にもよるが、三枚のプリプレグ71,72,73によって例えば二周分以上の巻き数の周方向分割層を形成することもできる。このように、細筒部30において三枚のプリプレグ71,72,73によって一周分を越える巻き数の周方向分割層を形成すると、細筒部30における厚さを容易に増すことができて細筒部30における強度を上げることができる。但し、太筒部32においては
図5や
図8に示した場合と同様に、三枚のプリプレグ71,72,73によって一周分の巻き数の周方向分割層となるので、プリプレグ71,72,73にシワや捻れが発生しにくい。
【0037】
尚、一周の略三等分である略120度の分割領域に相当する幅を有する合計三枚のプリプレグ71,72,73で一層の周方向分割層を形成したが、略180度の分割領域に相当する幅を有する合計二枚のプリプレグで一層の周方向分割層を形成してもよい。また一周を四分割したり五分割したりしてもよい。複数枚のプリプレグが互いに同幅でなくてもよく、形状についても互いに異なっていてもよい。複数枚のプリプレグは、太筒部32(第二領域42)における一周巻き分未満の幅を有するものであればよい。
【0038】
また、太筒部32(第二領域42)が正三角形である場合について説明したが、その他の多角形であっても無論よい。例えば、
図11に示すように太筒部32(第二領域42)を正五角形としてもよい。尚、
図11及び後述の
図12においてはハッチングを省略している。
図11のように太筒部32(第二領域42)を正五角形とする場合には、正五角形の辺の数と同数である合計五枚の同一形状のプリプレグ91,92,93,94,95から一層の周方向分割層を形成することが好ましい。
図11(a)は五箇所の重ね合わせ部74が太筒部32(第二領域42)における正五角形の各角部34にそれぞれ位置するように、五枚のプレプレグ91,92,93,94,95をマンドレル60の第三の部分63における正五角形の各辺に対応させて配置した場合であり、
図11(b)は五箇所の重ね合わせ部74が太筒部32(第二領域42)における正五角形の各辺の中央部にそれぞれ位置するように、五枚のプレプレグ91,92,93,94,95をその幅方向の中央部がマンドレル60の第三の部分63における正五角形の各角部63aにそれぞれ一致するように配置した場合である。
【0039】
更に、辺の数が奇数の多角形である他、辺の数が偶数の多角形であってもよい。正六角形の場合を例示すると、正六角形の辺の数は6であり、1を除く約数は2、3あるいは6であるので、二枚、三枚あるいは六枚のプリプレグによって一層の周方向分割層を形成することが好ましいが、特に、二枚あるいは三枚のプリプレグによって一層分の周方向分割層を形成することが好ましく、三枚のプリプレグによって一層分の周方向分割層を形成することが特に好ましい。三枚のプリプレグによって一層分の周方向分割層を形成すると、重ね合わせ部74が一層分の周方向分割層に120度毎の三箇所に均等に配置できて、バランスが特に優れたリアグリップ竿体3を形成できる。例えば、
図12(a)のように、三枚のプリプレグ111,112,113によって一層の周方向分割層を形成すると、各プリプレグ111,112,113がそれぞれ正六角形の二つの辺を受け持つことになる。尚、
図12(a)では重ね合わせ部74が角部34に位置するようにプリプレグ111,112,113を配置しているが、重ね合わせ部74が辺の中央部に位置するようにプリプレグを配置してもよい。また、二枚のプリプレグによって一層分の周方向分割層を形成する場合には、一枚のプリプレグが三つの辺を受け持つことになり、一層分の周方向分割層に重ね合わせ部74が180度対向して二箇所形成されることになる。
【0040】
図12(b)は周方向分割層を二層形成した場合であって、三枚のプリプレグがワンセットとなって太筒部32(第二領域42)における一周分の周方向分割層を形成している。内側の三枚のプリプレグ111,112,113で一層目の周方向分割層が形成され、同様にしてその外側に更に三枚のプリプレグ121,122,123によって二層目の周方向分割層が形成されて、合計二層の周方向分割層が形成されている。尚、一層目の周方向分割層においても、また、二層目の周方向分割層においても、何れも、角部34に重ね合わせ部74が位置しているが、一層目の重ね合わせ部74と二層目の重ね合わせ部74は異なる角部34に位置していて互いに周方向に位置ずれした関係にあり、その結果、六つの角部34の何れにも同様に重ね合わせ部74が形成されている。このようにすることでより一層周方向に均等なリアグリップ竿体3を形成できる。尚、周方向分割層は三層以上であってもよい。
【0041】
尚、このように周方向分割層を二層以上形成する場合には、例えば正六角形の場合、一層目の周方向分割層を三枚のプリプレグによって形成し、二層目の周方向分割層を二枚のプリプレグによって形成するようにしてもよく、各層毎にプリプレグの枚数を異なるようにしてもよい。また、各層においてプリプレグの枚数を同数とする一方、各層毎にプリプレグの形状や幅を変えるようにしてもよい。更に、一層目の周方向分割層については重ね合わせ部74を角部34に位置させ、二層目の周方向分割層については重ね合わせ部74を辺の中央部に位置させるようにする等、層毎に重ね合わせ部74の位置を変えてもよい。
【0042】
また、第二領域42の断面形状は正多角形とすることが好ましいが、正多角形以外の多角形としてもよく、多角形以外の楕円形や長円形等の非円形の形状としてもよい。第二領域42の断面形状が円形であって第一領域40の断面形状を多角形等としてもよい。更に、第一領域40の断面形状が三角形で第二領域42の断面形状が六角形であってもよく、第一領域40の断面形状と第二領域42の断面形状とが互いに異なるものであればよい。
【0043】
尚、前後異形部は、リアグリップ竿体3の全長でなくてもよく、第一領域40及び第二領域42の長さは短くてもよい。従って、例えば急拡大部31と太筒部32とから前後異形部が構成されてもよい。また、細筒部30と太筒部32の勾配を何れも0としたが、細筒部30や太筒部32の勾配を0ではなく緩い勾配として、後側に向けて徐々に拡大する形状としてもよい。また、急拡大部31を設けたが、急拡大部31を設けずに、全長に亘って勾配0としたり数%程度の勾配としたりする等、全長に亘って一定の勾配としてもよい。
【0044】
また、上記実施形態ではリアグリップ竿体3に適用した場合について説明したが、リアグリップ竿体3には限られず、各種の竿体に使用することができる。また、リールを装着する釣竿について説明したが、のべ竿等のようにリールを装着しないタイプの釣竿であってもよい。
【0045】
尚、本体層の内側に内層を形成してもよく、その内層も外層と同様にテープ状のプリプレグを螺旋状に巻回することにより形成できる。また、マンドレル60にプリプレグを巻回して中空状の竿体とする以外に、ソリッド体の外側に本体層を形成して中実状の竿体としてもよい。