特許第6282148号(P6282148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282148
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   B23Q17/09 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-53584(P2014-53584)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-174198(P2015-174198A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】五味 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 大樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 豊
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−312011(JP,A)
【文献】 特開2002−059342(JP,A)
【文献】 特開平10−288547(JP,A)
【文献】 特開2000−146762(JP,A)
【文献】 特開2005−091103(JP,A)
【文献】 特開平08−318449(JP,A)
【文献】 特開2007−222997(JP,A)
【文献】 特開平06−011387(JP,A)
【文献】 特開昭59−073264(JP,A)
【文献】 実開昭57−136635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09,
G01M 13/00−13/04,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
加工室と、
前記加工室内の音を集めるためのマイクと、
前記工作機械の動作を規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、
前記工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、前記加工室内で集められた音を抽出するための音声選択手段と、
前記音声選択手段によって抽出された音を前記加工室の外に出力するための音声出力手段とを備え
前記音声選択手段は、
前記加工室内の音の抽出基準として選択された周波数または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、前記設定により規定された範囲に含まれる音声成分を抽出し、または、
前記加工室内の音の除外基準として選択された周波数または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、前記設定により規定された範囲に含まれる音声成分を除去し、前記音声成分が除去された残りの音を抽出する、工作機械。
【請求項2】
工作機械であって、
加工室と、
前記加工室内の音を集めるためのマイクと、
前記工作機械の動作を規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、
前記工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、前記加工室内で集められた音を抽出するための音声選択手段と、
前記音声選択手段によって抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲から逸脱した場合に、前記信号レベルが前記範囲から逸脱したことを報知するための報知手段とを備え
前記音声選択手段は、
前記加工室内の音の抽出基準として選択された周波数または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、前記設定により規定された範囲に含まれる音声成分を抽出し、または、
前記加工室内の音の除外基準として選択された周波数または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、前記設定により規定された範囲に含まれる音声成分を除去し、前記音声成分が除去された残りの音を抽出する、工作機械。
【請求項3】
工作機械であって、
加工室と、
前記加工室内の音を集めるためのマイクと、
前記工作機械の動作を規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、
前記工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、前記加工室内で集められた音を抽出するための音声選択手段と、
前記音声選択手段によって抽出された音を前記加工室の外に出力するための音声出力手段と、
前記工作機械の動作音として予め取得された音の信号を格納するための記憶手段とを備え、
前記音声選択手段は、
前記予め取得された音の信号と類似する音声成分を抽出し、または、
前記予め取得された音の信号を前記加工室内で集められた音から除去する、工作機械。
【請求項4】
工作機械であって、
加工室と、
前記加工室内の音を集めるためのマイクと、
前記工作機械の動作を規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、
前記工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、前記加工室内で集められた音を抽出するための音声選択手段と、
前記音声選択手段によって抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲から逸脱した場合に、前記信号レベルが前記範囲から逸脱したことを報知するための報知手段と、
前記工作機械の動作音として予め取得された音の信号を格納するための記憶手段とを備え、
前記音声選択手段は、
前記予め取得された音の信号と類似する音声成分を抽出し、または、
前記予め取得された音の信号を前記加工室内で集められた音から除去する、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は工作機械に関し、より特定的には、工作機械の運転中の音の出力に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械による加工において、オペレータは、工具とワークとの接触や刃先の切削状態を判断する際、その経験に基づき、刃先から発生する音を頼りに、当該判断を行なっていた。しかしながら、工作機械の運転中は、主軸、ワーク、工具の回転音も発生するため、判断に必要な音のみを聞き分けることは困難であった。
【0003】
また、工作機械の運転中は、加工室のドアを開けることができず(たとえば、特許文献1参照)、オペレータは必要な音を聞き分けることは、より困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、工作機械のオペレータが安全かつ容易に音を聞き分ける技術が必要とされている。本開示は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、オペレータが運転状態を安全かつ容易に判断できる工作機械を提供することである。他の局面における目的は、オペレータが運転状態を安全かつ容易に判断できるように工作機械を制御するためのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に従う工作機械は、加工室と、加工室内の音を集めるためのマイクと、工作機械の動作モードを規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、加工室内で集められた音の一部を抽出するための音声選択手段と、音声選択手段によって抽出された音を加工室の外に出力するための音声出力手段とを備える。
【0007】
他の実施の形態に従う工作機械は、加工室と、加工室内の音を集めるためのマイクと、工作機械の動作モードを規定する設定の入力を受け付けるための入力手段と、工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、加工室内で集められた音の一部を抽出するための音声選択手段と、音声選択手段によって抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲から逸脱した場合に、信号レベルが範囲から逸脱したことを報知するための報知手段とを備える。
【0008】
好ましくは、音声選択手段は、加工室内の音の抽出基準として選択された周波数、位相または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、設定により規定された範囲に含まれる音声成分を音の一部として抽出し、または、加工室内の音の除外基準として選択された周波数、位相または振幅のうちの少なくとも一つ以上について、設定により規定された範囲に含まれる音声成分を除去し、音声成分が除去された残りの音を音の一部として抽出する。
【0009】
好ましくは、工作機械は、当該工作機械の動作音として予め取得された音の信号を格納するための記憶手段をさらに備える。音声選択手段は、予め取得された音の信号と類似する音声成分を音の一部として抽出し、または、予め取得された音の信号を加工室内で集められた音から除去することにより音の一部を抽出する。
【0010】
他の実施の形態に従うと、工作機械を制御するためのプログラムが提供される。このプログラムは、工作機械のコントローラに、工作機械の加工室内の音を集めるステップと、工作機械の動作モードを規定する設定の入力を受け付けるステップと、工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、加工室内で集められた音の一部を抽出するステップと、抽出された音を加工室の外に出力するステップとを実行させる。
【0011】
さらに他の実施の形態に従う、工作機械を制御するためのプログラムは、工作機械のコントローラに、工作機械の加工室内の音を集めるステップと、工作機械の動作モードを規定する設定の入力を受け付けるステップと、工作機械の外部に音を出力するために入力された設定に従って、加工室内で集められた音の一部を抽出するステップと、抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲から逸脱した場合に、信号レベルが範囲から逸脱したことを報知するステップとを実行させる。
【0012】
ある局面において、工作機械のオペレータは、運転中の音から必要な音(たとえば、異音)を安全かつ容易に認識することができる。
【0013】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に従う工作機械100によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。
図2】工作機械100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
図3】プロセッサ221が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
図4】工作機械400によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。
図5】工作機械400のプロセッサ221が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
図6】モニタ224における画面の表示の一例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
[概要]
図1を参照して、本実施の形態に係る工作機械100の概要について説明する。図1は、本実施の形態に従う工作機械100によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。工作機械100は、入力部110と、記憶部120と、集音部130と、音声選択部140と、音声出力部150とを備える。
【0017】
入力部110は、工作機械100の複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードの設定の入力を受け付ける。入力された設定は、記憶部120に格納される。入力部110は、たとえば、工作機械100の操作面に設けられるタッチパネル、物理スイッチ、入力インターフェイスその他の入力装置によって実現される。
【0018】
本実施の形態において、当該複数の動作モードは、たとえば、工作機械100による加工動作を規定するモードに加えて、工作機械100の運転中に発生する音を工作機械100の外部に出力するモードと、当該音を外部に出力しないモードとを含み得る。また、運転中に発生する音を外部に出力するモードは、工作機械100で発生する音を全て出力するモードと、工作機械100のオペレータによって指定された音を出力するモードとを含み得る。
【0019】
記憶部120は、工作機械100に対して与えられたデータまたはプログラムを格納する。たとえば、記憶部120は、ある一定の条件の下で工作機械100が正常に運転している場合に発生する音の信号パターンを格納する。このような信号パターンは、たとえば、工作機械100の稼動が行なわれる前にサンプルデータ(教示データ)として取得される。この信号パターンは、工作機械100の運転中に、その他の音を抽出するためのフィルタとして用いられる。
【0020】
また、記憶部120は、工作機械100の動作を規定するプログラムを格納する。当該プログラムは、工作機械100の運転中の音から指定された音を抽出するためのプログラムを含み得る。他の局面において、プログラムは、工作機械100の外部に音を出力する処理を実現するプログラムを含み得る。
【0021】
また別の局面において、記憶部120は、工作機械100において取得されたデータを格納する。記憶部120は、たとえば、ハードディスク装置、フラッシュメモリその他の不揮発性のデータ記録媒体、RAM(Random Access Memory)その他の揮発性のデータ記録媒体、あるいは、メモリカードその他の着脱可能なデータ記録媒体等によって実現される。他の局面において、工作機械100がネットワークに接続可能な場合には、記憶部120は、ネットワークに接続される記憶装置のような外部記憶装置によって実現されてもよい。
【0022】
集音部130は、工作機械100の加工室内の音を集める。加工室内の音は、主軸の回転音、切削音、クーラントの排出音その他の正常な音のみに限られず、びびり音その他の異音も含み得る。集音部130は、たとえば、防塵および防滴機能を有するマイクとして実現される。
【0023】
音声選択部140は、音声フィルタとして機能する。より具体的には、音声選択部140は、工作機械100の外部に音声を出力するために入力された設定に従って、当該加工室内で集められた音声の一部を抽出する。音声選択部140は、音声抽出処理プログラムを実行するプロセッサによって、あるいは、音声抽出回路によって実現される。
【0024】
音声出力部150は、音声選択部140によって抽出された音声を加工室の外に出力する。音声出力部150は、たとえば、スピーカ、あるいは、ヘッドホンの接続端子その他の音声信号出力インターフェイスなどを含み得る。
【0025】
たとえば、ある局面において、オペレータは、出力対象の音を指定するため、周波数、波形、振幅のうちの少なくとも一つ以上について、範囲あるいは形状をタッチパネルにおいて指定あるいは選択する。選択のためのメニューは、たとえば、ワークの種類ごとに、工作機械100の加工条件ごとに規定されている。このような選択は、工作機械100の運転前、運転中のいずれにおいても可能である。
【0026】
当該範囲あるいは形状は、たとえば、工作機械100が正常に運転している場合に発生する正常な音を表わす範囲あるいは形状である。この正常な音は、工作機械100で加工されるワークの種類、工具の種類、加工条件等によって異なる。指定あるいは選択された範囲あるいは形状は、記憶部120に格納される。
【0027】
集音部130は、工作機械100の運転中の音を集める。集められた音の信号は、音声選択部140に入力される。一例として、音声選択部140は、オペレータによって指定された周波数、波形、振幅のうちの少なくとも一つ以上の範囲あるいは形状に属する音成分を除去し、残りの音成分の信号を音声出力部150に送出する。音声出力部150は、当該残りの音成分の信号に基づく音を出力する。
【0028】
たとえば、工作機械100が正常に運転している場合、音声選択部140は、当該正常な音の成分を除去する。したがって、この場合、音声出力部150からは、ほとんど音が出力されない。一方、工作機械100の加工中にびびり音その他の異音が発生している場合、当該異音の周波数、波形あるいは振幅の成分は、音声選択部140によって除去されない。したがって、音声出力部150は、当該異音を工作機械100の外部に出力することになる。
【0029】
[ハードウェア構成]
図2を参照して、工作機械100の構成についてさらに説明する。図2は、工作機械100のハードウェア構成を表わすブロック図である。工作機械100は、加工室210と、制御部220とを備える。
【0030】
加工室210は、モータ211と、主軸212と、クーラントホース213と、マイク214とを含む。制御部220は、プロセッサ221と、操作盤222と、メモリ223と、モニタ224と、ライト225と、スピーカ226とを含む。
【0031】
クーラントホース213は、クーラント液を供給する。したがって、加工室210において発生する音は、クーラント液が放出される音を含み得る。
【0032】
加工室210において、マイク214は、集音部130として、たとえば、主軸212の駆動によって発生する音を拾うように主軸212の近傍に取り付けられる。マイク214が取り付けられる場所は、音声が発生する場所の近傍が望ましいが、主軸212の近傍に限られない。また、マイク214が取り付けられる位置は、変更可能であってもよい。
【0033】
また別の局面において、複数のマイクが加工室210に設けられてもよい。この場合、各マイクは、主軸212、クーラントホース213、その他音が発生し得る場所の近傍にそれぞれ配置され得る。
【0034】
制御部220において、マイク214によって集められた音の信号は、プロセッサ221に入力される。ある局面において、プロセッサ221は、音声選択部140として、加工室210において発生した音のうち異音を抽出する。たとえば、プロセッサ221は、工作機械100の運転中に取得された音から、工作機械100の通常の動作音としてメモリ223に予め登録されている音の成分を取り除き、残りの音(たとえば、びびり音)の信号を異音として出力する。
【0035】
操作盤222は、入力部110として、工作機械100のオペレータによる指令の入力を受け付ける。操作盤222は、たとえば、タッチパネル式の操作パネル、物理スイッチ、その他の入力インターフェイスとして構成される。
【0036】
メモリ223は、記憶部120として、工作機械100の動作モードを規定する設定を保持する。また、メモリ223は、加工室210で発生する音を抽出するために用いられる教示データ、サンプルデータ等を保持する。
【0037】
モニタ224は、プロセッサ221から出力されるデータに基づいて工作機械100の動作状態および工作機械100の動作を規定する設定を表示する。ある局面において、モニタ224は、液晶モニタ、有機EL(Electro Luminescence)モニタ、その他の表示装置によって実現される。他の局面において、モニタ224は、タッチパネル式のモニタであって、工作機械100の設定の入力を受け付けられる構成であってもよい。
【0038】
ライト225は、工作機械100の運転状態を示す。ライト225は、たとえば赤、緑、青、その他の少なくとも1つ以上の色を点灯可能な照明装置として実現される。ライト225は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)によって実現される。
【0039】
スピーカ226は、音声出力部150として、プロセッサ221の命令に基づいて、加工室210において集められた音の一部を出力する。他の局面において、スピーカ226は、工作機械100が正常に稼働していることを表わす音あるいは工作機械100において異常が発生したことを示す音などを出力し得る。他の局面において、スピーカ226は、工作機械100の状態を管理する別の部屋に設けられてもよい。
【0040】
[制御構造]
図3を参照して、本実施の形態に係る工作機械100の制御構造について説明する。図3は、プロセッサ221が実行する一連の処理の一部を表わすフローチャートである。
【0041】
ステップS310にて、プロセッサ221は、操作盤222に対して与えられた命令に基づいて、工作機械100の運転を開始する。
【0042】
ステップS320にて、プロセッサ221は、マイク214を介して、加工室210の内部の音を収集する。プロセッサ221は、収集した音をメモリ223のワーク領域に一時的に格納する。ある局面において、プロセッサ221は、工作機械100の運転中のすべての音をメモリ223に順次格納してもよい。他の局面において、プロセッサ221は、予め定められた周期で集められた一定時間の音だけをメモリ223に保存してもよい。また、運転後の分析に備えて、収集した音がハードディスクその他の不揮発性のデータ記録装置に保存されてもよい。
【0043】
ステップS330にて、プロセッサ221は、音声選択部140として、メモリ223に保存されている工作機械100の設定に従って、マイク214によって集められた音の一部を抽出する。たとえば、工作機械100のオペレータが工作機械100の運転モードを工作機械100に入力する。プロセッサ221は、正常時の音として、その設定に適合する音をメモリ223から読み出す。さらに、プロセッサ221は、工作機械100の運転中に、マイク214で集められた音から、当該設定に適合する音を取り除いて、残りの音を抽出する。
【0044】
ステップS340にて、プロセッサ221は、抽出した音をスピーカ226を用いて加工室210の外部に出力する。
【0045】
このような構成により、工作機械100は、その運転中に定常状態の音(すなわち、設定に適合する音)とは異なる音を、スピーカ226から出力し得る。仮に、工作機械100の運転中に工具欠損、回転軸の軸受け摩耗のような異常が発生すると、スピーカ226は、異音を出力する。工作機械100のオペレータは、その異音を聞くことにより、工作機械100の運転中に異常が発生したことを認識できるので、工作機械100の非常停止、点検、修理その他の措置を速やかに取ることができる。
【0046】
[他の局面]
図4を参照して、他の局面に従う工作機械400について説明する。図4は、工作機械400によって実現される機能の構成を表わすブロック図である。なお、工作機械100が備える構成と同様の構成には同様の番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。また、工作機械400のハードウェア構成は、図2に示されるハードウェア構成と同様である。したがって、ハードウェア構成の説明も繰り返さない。
【0047】
工作機械400は、工作機械100の構成に加えて、判断部410と、報知部420とを備える。判断部410は、音声選択部140によって選択された音の信号レベルが予め規定された範囲から逸脱したか否かを判断する。たとえば、判断部410は、記憶部120に格納されている音の周波数、形状、振幅のいずれかの許容範囲を表わすデータ(基準値)と、音声選択部140によって選択された音の信号レベル(実測値)とを比較する。判断部410は、音声選択部140によって抽出された音の信号レベル(実測値)が予め規定された範囲(基準値)から逸脱した場合に、当該信号レベルがその範囲から逸脱したことを報知するための指令を報知部420に出力する。報知部420は、そのような指令を受け取ると、工作機械400において異音が発生したことを報知する。
【0048】
[制御構造]
図5を参照して、工作機械400の制御構造について説明する。図5は、工作機械400のプロセッサ221が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同様の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、それらの説明は繰り返さない。
【0049】
ステップS510にて、プロセッサ221は、抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲に含まれるか否かを判断する。プロセッサ221は、当該信号レベルが当該範囲に含まれると判断すると(ステップS510にてYES)、制御をステップS320に戻す。プロセッサ221は、マイク214を用いて加工室210の内部の音を収集し続ける。そうでない場合には(ステップS510にてNO)、プロセッサ221は、制御をステップS520に切り換える。
【0050】
ステップS520にて、プロセッサ221は、抽出された音の信号レベルが予め規定された範囲外であることを報知する。たとえば、スピーカ226は、その旨を知らせる音声を出力する。他の局面において、ライト225は、そのことを報知するものとして予め規定された色で点滅する。あるいは、モニタ224は、抽出された音の信号レベルが規定された範囲外であることを示すメッセージを表示する。工作機械400がネットワークを介して監視システム(図示しない)に接続されている場合には、工作機械400は、異音が発生したことを通知する信号を中央監視システムに送信し得る。
【0051】
[報知態様]
そこで、図6を参照して、ある局面に従う工作機械400の報知態様の一例について説明する。図6は、モニタ224における画面の表示の一例を表わす図である。
【0052】
ある局面において、工作機械400の加工室210において異音が検知されると、モニタ224は、メッセージ610を表示する。メッセージ610は、加工室の内部の音の異常であることを表わす。工作機械400のオペレータは、このようなメッセージ610を認識すると、工作機械400において何らかの異常が生じていることを安全かつ容易に認識できる。
【0053】
以上のようにして、本実施の形態に係る工作機械100,400によれば、加工室210のドアを閉じた状態で、工作機械のオペレータが監視したい音(異音)をスピーカから出力し得る。オペレータは、工作機械の運転状態を安全かつ容易に知ることができるので、安全性を維持することができる。
【0054】
また、オペレータは、入力部110を介して設定を入力することにより、抽出したい音を容易に選択することができる。したがって、工具の接触を検知したい場合、びびりの有無を検出したい場合、工具の刃先の欠損を検知したい場合等、オペレータは、目的に応じて容易に設定を切り換えることができるので、工作機械の操作性が向上し得る。
【0055】
また、工作機械400は、音の検出状態をメッセージその他の態様で報知できるので、オペレータは、常にスピーカの音を聞いている必要はなく、報知の内容で工作機械の状態を安全かつ容易に知ることができる。なお、当然の事ながら、加工室内で発生する音につき、オペレータが監視したい音をリアルタイムに出力するようにしても良い。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
100,400 工作機械、110 入力部、120 記憶部、130 集音部、140 音声選択部、150 音声出力部、210 加工室、211 モータ、212 主軸、213 クーラントホース、214 マイク、220 制御部、221 プロセッサ、222 操作盤、223 メモリ、224 モニタ、225 ライト、226 スピーカ、410 判断部、420 報知部、610 メッセージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6