(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテート等のセルロースエステルは一般的に熱可塑性が乏しいため、通常は可塑剤を含む組成物として使用されている。
特許文献1は、セルロースエステル系樹脂組成物に関する発明であり、公知の可塑剤を配合できることが記載されている(段落番号0023)。
特許文献2は、平均置換度2.7以下のセルロースエステル、可塑剤及び充填剤で構成された樹脂組成物に関する発明である。
しかし、樹脂組成物の生成後あるいは成形後、経時によって樹脂中の可塑剤がブリードアウトすることが問題となっている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<(A)成分>
本発明の組成物で用いる(A)成分のセルロースエステルは公知のものであり(例えば、特許文献1、2に記載されているもの)、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
その他、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロース等も挙げることができる。
【0008】
(A)成分のセルロースエステルは、平均置換度が2.7以下のセルロースアセテートが好ましい。
(A)成分のセルロースエステルの重合度は、粘度平均重合度が好ましくは100〜1000、より好ましくは100〜500である。
【0009】
<(B)成分>
本発明の組成物で用いる(B)成分の可塑剤は公知のものである。(B)成分の可塑剤としては、例えば、下記の可塑剤から選ばれる1種を使用することができ、2種以上組み合わせて使用することもできる。
芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸ジC1-12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1-6アルコキシC1-12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1-12アルキル・アリール−C1-3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1-6アルキルフタリルC2-4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸トリC1-12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1-12アルキルエステルなど]、
脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど]、
等が挙げられ、中でもアジピン酸エステルが好ましい。
多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[ジグリセリンテトラアセテートなど]、
グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、
クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチルなど]、
アミド類[N−ブチルベンゼンスルホンアミドなど]、
エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)、
その他、難燃剤としても使用されるトリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、などを挙げることができる。
(B)成分の可塑剤は、芳香族カルボン酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれるものが好ましい。
【0010】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して2〜100質量部であり、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。
【0011】
<(C)成分>
本発明の組成物で用いる(C)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むブロック共重合体の熱可塑性エラストマーである。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を含む意味で使用している。
(C)熱可塑性エラストマーとしては、(メタ)アクリル酸メチルエステル単位からなるブロック(Tg100〜120℃)と、(メタ)アクリル酸ブチルエステル単位からなるブロック(Tg-40〜-50℃)からなるブロック共重合体が好ましい。
【0012】
(C)成分としては市販品を使用することができ、例えば、(株)クラレ製の「KURARITY(登録商標)」などを挙げることができる。
【0013】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは1〜8質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。
【0014】
(B)成分の可塑剤と(C)成分の熱可塑性エラストマーの含有量の割合(質量比)は、(B)/(C)=98/2〜70/30が好ましく、96/4〜80/20がより好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂を含有することができる。
公知の熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等のポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等を挙げることができる。
公知の熱可塑性樹脂の含有割合は、(A)成分のセルロースエステルとの合計量中、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0016】
本発明の組成物は、さらに充填剤を含有することができる。
充填剤としては、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤など)が含まれ、例えば、特許文献2(特開2005−194302号公報)の段落番号0025〜0032に記載のものを挙げることができる。
充填剤の含有割合は、(A)成分のセルロースエステル100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。
【0017】
本発明の組成物は、さらに難燃剤を含有することができる。
難燃剤は公知のものや市販品を使用することができ、特開2003−261711号公報において一般式(I)で示されるナフチルホスフェート化合物や「PX−110」、芳香族縮合リン酸エステル、例えば大八化学工業(株)製の商品名「PX−200」、「CR−741」、「CR−733S」、「TCP」などを使用することができる。
またその他の難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、ジクレジル−2,6−ジメチルフェニルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどのモノマータイプの有機リン系難燃剤、レゾルシンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシンビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ハイドロキノンビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、4,4’−ビフェノールビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]などのオリゴマータイプの有機リン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、リン酸メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、熱硬化性樹脂被覆赤リン、オレフィン被覆赤リン、酸化チタン被覆赤りんおよびチタンアルミニウム縮合物被覆赤リンなどの安定化赤リン粉末などの赤リン粉末、シリコーン樹脂、シリコーングリース、シリコーンゴムおよびシリコーン油などのシリコーン系難燃剤などを使用することができる。
【0018】
本発明の組成物は、特許文献2(特開2005−194302号公報)の段落番号0035〜0042に記載のエポキシ化合物、段落番号0043〜0052に記載の有機酸、チオエーテル、亜リン酸エステル化合物等の安定化剤を含有することができる。
【0019】
本発明の組成物は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、帯電防止剤、難燃助剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤等を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の組成物は、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式又は湿式で混合して調製してもよい。
さらに、前記混合機で予備混合した後、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して調製する方法を適用することができる。
【0021】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等によって各種成形品に成形することができる。
【0022】
本発明の組成物は、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車等の輸送車両分野、家具・建材等の住宅関連分野、雑貨分野等の各パーツ、ハウジング等に使用することができる。
【実施例】
【0023】
実施例および比較例
【0024】
その他の試験項目は、各組成物を使用して、以下に示す方法で各評価試験を実施した。評価結果を表1に示す。
ヘンシェルミキサーを用いて、ミキサー内の摩擦熱で70℃以上となるように各組成物を攪拌混合した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。
得られたペレットを、射出成形機に供給して、シリンダー温度200℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒(射出15秒、冷却時間15秒)の条件で試験片を射出成形して、各評価試験に使用した。
【0025】
<使用成分>
(A)セルロースアセテート
・(株)ダイセル製、商品名「L50」、置換度2.5、粘度平均重合度180
(B)可塑剤
・DAIFATTY 101:大八化学工業(株)製、アジピン酸エステル系可塑剤
(C)熱可塑性エラストマー
・LA 2250:(株)クラレ製、「KURARITY(登録商標)LA2250」(比重:1.08,MFR:25g/10min(190℃,2.16kg),330g/10min(230℃,2.16kg)
・LA 4285:(株)クラレ製、「KURARITY(登録商標)LA4285」(比重:1.11,MFR:1.5g/10min(190℃,2.16kg),31g/10min(230℃,2.16kg)
いずれも(メタ)アクリル酸メチルエステル単位からなるブロック(Tg100〜120℃)と(メタ)アクリル酸ブチルエステル単位からなるブロック(Tg-40〜-50℃)により構成されるブロック共重合体である。
Tg(ガラス転移点)は、DSC(示差熱分析装置)により測定することができる。
【0026】
<測定試験>
(MFR)
220℃、荷重10kgで測定した。
【0027】
(引張強さ・引張呼び歪み)
ISO527に準拠して、試験片の引張強さおよび引張呼び歪みを測定した(引張強さ単位:MPa、引張呼び歪み単位:%)。
【0028】
(曲げ強さ・曲げ弾性率)
ISO178に準拠して測定した(単位:MPa)。
【0029】
(シャルピー衝撃強さ)
ISO179/1eAに準じてシャルピー衝撃強さ(kJ/m
2)を測定した(単位:KJ/m
2)。
【0030】
(可塑剤のブリードアウト)
試験サンプル(5cm×9cm×厚さ3mmの射出成形片)を65℃、85%RHの雰囲気中に50時間または500時間放置したときのブリードアウトの有無を肉眼で観察した。
【0031】
(押出性)
二軸押出機のダイスから押出されたストランドを水槽にて冷却し、ペレタイザーにてペレット化する過程および得られたペレットの形状を肉眼で観察した。
連続的に均一なストランドが形成され、得られたペレットの形状が良好なものを○、均一なストランドが形成されず、良好な形状のペレットが得られなかったのを×とした。
【0032】
【表1】