特許第6282181号(P6282181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282181
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   E02F9/16 B
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-117628(P2014-117628)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229902(P2015-229902A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本図 誠
(72)【発明者】
【氏名】入野 照男
(72)【発明者】
【氏名】浦瀬 広平
(72)【発明者】
【氏名】木原 聖一
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202357(JP,A)
【文献】 特開2005−336735(JP,A)
【文献】 特開2007−063777(JP,A)
【文献】 特開2012−225028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0119320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
E02F 9/18
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、
支持構造体をなす旋回フレームと、
前記作業装置との重量バランスをとるために該旋回フレームの後部に取付けられたカウンタウエイトと、
該カウンタウエイトの上面に左,右方向に延びて設けられた平板体からなるスペーサと、
前記旋回フレーム上に前側位置を傾転支点としてチルトアップ、チルトダウン可能に設けられ前側の足乗せ部、該足乗せ部の後側から立上った運転席台座および該運転席台座から後側に延びた取付板体からなるチルトフロアと、
前記スペーサの上側に配置され該チルトフロアがチルトダウンしたときに該チルトフロアの取付板体が取付けられるリヤブラケットと、
該リヤブラケットに取付けられた前記チルトフロアの取付板体を防振状態で支持するために該リヤブラケットと前記スペーサとの間に設けられた防振部材とを備えてなる建設機械において、
前記カウンタウエイトの上面には、当該カウンタウエイトを吊上げるときに吊具を取付けるための吊具取付穴を設け、
前記スペーサには、当該スペーサを前記カウンタウエイトに取付けた状態で、前記カウンタウエイトの吊具取付穴と異なる位置に、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体よりも後側に張出すように張出し部位を設け、
前記スペーサの張出し部位には、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体と異なる位置にボルト挿通孔を設け、
前記スペーサは、前記ボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトを前記カウンタウエイトの上面に螺着することにより、前記カウンタウエイトに取付ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記スペーサは、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体が載置される載置部位と、当該載置部位よりも後側に位置して後方に張出した前記張出し部位とにより形成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記吊具取付穴は、前記カウンタウエイトの上面に左,右方向に間隔をもって2個設け、
前記スペーサの張出し部位は、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体の後方で前記各吊具取付穴間に位置する第1の張出し部位と、該第1の張出し部位と前記吊具取付穴を挟んだ左,右方向の外側に位置する第2の張出し部位とからなり、
前記スペーサのボルト挿通孔は、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体の後方位置に左,右方向に間隔をもって3個設け、
前記3個のボルト挿通孔のうち、1個のボルト挿通孔は、前記第1の張出し部位に設け、残りの2個のボルト挿通孔は、前記第2の張出し部位に設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記スペーサは、前記張出し部位の前側に位置して前記チルトフロアがチルトダウンしたときに前記取付板体が載置される載置部位と、該載置部位と左,右方向で隣接し外部に対して露出する露出部位とを有し、
前記スペーサの露出部位には、前記ボルト挿通孔と別個のボルト挿通孔を設け、
前記別個のボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトを前記カウンタウエイトの上面に螺着する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記スペーサの露出部位から前記チルトフロアの側面に沿って前側に延びるメンテナンスカバーを有し、
前記スペーサの露出部位は、前記メンテナンスカバーによって覆い隠す構成としてなる請求項4に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、旋回フレームに対してフロアが傾転可能となった建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
油圧ショベルには、運転時の総重量となる運転質量が6トン未満に設定されたミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがあり、この小型の油圧ショベルでは、上部旋回体が小型化されている。
【0004】
ここで、小型の油圧ショベルは、上部旋回体が小さく機器類の設置スペースが限られているから、例えばエンジン、制御弁装置等の機器類はフロアの下側のスペースを利用して配設されている。このため、小型の油圧ショベルでは、フロアが旋回フレームの前側位置を支点としてチルトアップ、チルトダウン可能に支持されている。
【0005】
即ち、小型の油圧ショベルの上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、作業装置との重量バランスをとるために該旋回フレームの後部に取付けられたカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの上面に左,右方向に延びて設けられた平板体からなるスペーサと、前記旋回フレーム上に前側位置を傾転支点としてチルトアップ、チルトダウン可能に設けられ前側の足乗せ部、該足乗せ部の後側から立上った運転席台座および該運転席台座から後側に延びた取付板体からなるチルトフロアと、前記スペーサの上側に配置され該チルトフロアがチルトダウンしたときに該チルトフロアの取付板体が取付けられるリヤブラケットと、該リヤブラケットに取付けられた前記チルトフロアの取付板体を防振状態で支持するために該リヤブラケットと前記スペーサとの間に設けられた防振部材とにより構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
このように構成された小型の油圧ショベルの上部旋回体は、カウンタウエイトの上部にボルトを用いてスペーサを取付け、このスペーサには、防振部材を介してリヤブラケットを取付けている。これにより、チルトフロアをチルトダウンしたときには、該チルトフロアの取付板体をリヤブラケット上に防振状態で配置することができ、この状態で、チルトフロアの取付板体は、ボルトを用いてリヤブラケットに取付ける構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−202357号公報
【特許文献2】特開2013−237984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した各特許文献によるものでは、カウンタウエイトの上部にボルトを用いて取付けられたスペーサに対し、リヤブラケットやチルトフロアの取付板体を取付ける構成としている。ここで、カウンタウエイトは、一般的に鋳造によって形成されるものであるから、製造時に収縮や変形が生じ易く、寸法精度を高めることが難しい。
【0009】
このために、旋回フレーム上にチルトフロア等を取付ける組立作業では、カウンタウエイト側のリヤブラケットとチルトフロア側の取付板体との間で位置ずれを生じるから、この組立作業時には、カウンタウエイトに対しスペーサの位置を適宜に調整する必要がある。
【0010】
カウンタウエイトに対するスペーサの位置合わせ作業は、チルトフロアをチルトダウンさせて取付板体に設けられたボルト挿通孔とリヤブラケットに設けられためねじ孔とが一致するか確認し、位置がずれている場合には、スペーサをカウンタウエイトに取付けているボルトを緩め、スペーサを適宜に移動させる。
【0011】
この場合、各特許文献では、スペーサをカウンタウエイトに取付けているボルトは、チルトフロアをチルトダウンさせたときに、取付板体が邪魔になって締めたり、緩めたりできない位置に配置されている。従って、上述した位置合わせ作業では、チルトフロアのチルトアップとチルトダウンとを繰り返さなくてはならず、手間を要してしまうという問題がある。
【0012】
そこで、スペーサが取付けられるカウンタウエイトの上部に機械加工(切削加工)を施して寸法精度を向上し、位置合わせ作業を省略することが考えられる。しかし、この場合には、加工作業に手間を要してしまい、生産性が低下するという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、チルトフロアをチルトダウンさせた状態で、カウンタウエイトに対するスペーサの位置合わせ作業を行うことができ、チルトフロアの組立作業を容易に行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、前記作業装置との重量バランスをとるために該旋回フレームの後部に取付けられたカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの上面に左,右方向に延びて設けられた平板体からなるスペーサと、前記旋回フレーム上に前側位置を傾転支点としてチルトアップ、チルトダウン可能に設けられ前側の足乗せ部、該足乗せ部の後側から立上った運転席台座および該運転席台座から後側に延びた取付板体からなるチルトフロアと、前記スペーサの上側に配置され該チルトフロアがチルトダウンしたときに該チルトフロアの取付板体が取付けられるリヤブラケットと、該リヤブラケットに取付けられた前記チルトフロアの取付板体を防振状態で支持するために該リヤブラケットと前記スペーサとの間に設けられた防振部材とを備えてなる。
【0015】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記カウンタウエイトの上面には、当該カウンタウエイトを吊上げるときに吊具を取付けるための吊具取付穴を設け、前記スペーサには、当該スペーサを前記カウンタウエイトに取付けた状態で、前記カウンタウエイトの吊具取付穴と異なる位置に、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体よりも後側に張出すように張出し部位を設け、前記スペーサの張出し部位には、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体と異なる位置にボルト挿通孔を設け、前記スペーサは、前記ボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトを前記カウンタウエイトの上面に螺着することにより、前記カウンタウエイトに取付ける構成としたことにある。
【0016】
請求項2の発明は、前記スペーサは、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体が載置される載置部位と、当該載置部位よりも後側に位置して後方に張出した前記張出し部位とにより形成したことにある。
【0017】
請求項3の発明は、前記吊具取付穴は、前記カウンタウエイトの上面に左,右方向に間隔をもって2個設け、前記スペーサの張出し部位は、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体の後方で前記各吊具取付穴間に位置する第1の張出し部位と、該第1の張出し部位と前記吊具取付穴を挟んだ左,右方向の外側に位置する第2の張出し部位とからなり、前記スペーサのボルト挿通孔は、チルトダウンした前記チルトフロアの取付板体の後方位置に左,右方向に間隔をもって3個設け、前記3個のボルト挿通孔のうち、1個のボルト挿通孔は、前記第1の張出し部位に設け、残りの2個のボルト挿通孔は、前記第2の張出し部位に設ける構成としたことにある。
【0018】
請求項4の発明は、前記スペーサは、前記張出し部位の前側に位置して前記チルトフロアがチルトダウンしたときに前記取付板体が載置される載置部位と、該載置部位と左,右方向で隣接し外部に対して露出する露出部位とを有し、前記スペーサの露出部位には、前記ボルト挿通孔と別個のボルト挿通孔を設け、前記別個のボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトを前記カウンタウエイトの上面に螺着する構成としたことにある。
【0019】
請求項5の発明は、前記スペーサの露出部位から前記チルトフロアの側面に沿って前側に延びるメンテナンスカバーを有し、前記スペーサの露出部位は、前記メンテナンスカバーによって覆い隠す構成としたことにある。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、カウンタウエイトの上面に設けられたスペーサには、チルトフロアがチルトダウンしたときに該チルトフロアの取付板体よりも後側に張出すように張出し部位を設けている。この張出し部位には、チルトダウンしたチルトフロアの取付板体と異なる位置にボルト挿通孔を設ける構成としている。
【0021】
従って、スペーサは、張出し部位のボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトをカウンタウエイトの上面に螺着することにより、このカウンタウエイトに取付けることができる。この場合、スペーサをカウンタウエイトの上面に取付けているスペーサ取付ボルトは、チルトダウンしたチルトフロアの取付板体と異なる位置、即ち、締めたり、緩めたりするときに取付板体が邪魔にならない位置に配置されている。
【0022】
これにより、旋回フレーム上にチルトフロア等を取付ける組立作業において、カウンタウエイト側のリヤブラケットとチルトフロア側の取付板体との間に位置ずれを生じた場合でも、この組立作業時には、チルトフロアをチルトダウンさせたままの状態で、スペーサによるリヤブラケットと取付板体との位置合わせ作業を行うことができる。
【0023】
即ち、スペーサによる位置合わせ作業では、チルトダウンしたチルトフロアの取付板体とリヤブラケットとが互いに適正な位置に配置されているか否かを確認する。このときに、リヤブラケットが適正な位置からずれている場合には、カウンタウエイトに対するスペーサの取付位置を移動させることにより、チルトフロアの取付板体とリヤブラケットとを適正な位置に配置する。この状態で、スペーサ取付ボルトを締めることにより、旋回フレーム上にチルトフロア等を取付けることができる。
【0024】
この結果、上述したスペーサの位置合わせ作業では、チルトフロアのチルトアップとチルトダウンを繰り返す必要がなくなるから、チルトフロアの組立作業を容易に行うことができる。
【0025】
また、スペーサに設けた張出し部位は、カウンタウエイトを吊上げるときに吊具を取付けるための吊具取付穴と異なる位置に配置している。これにより、スペーサは、カウンタウエイトの吊上げ作業の邪魔にならない位置で、スペーサ取付ボルトを用いてカウンタウエイトに取付けることができる。
【0026】
請求項2の発明によれば、スペーサは、チルトダウンしたチルトフロアの取付板体が載置される載置部位と、当該載置部位よりも後側に位置して後方に張出した前記張出し部位とにより形成しているから、載置部位を避けた位置に張出し部位を配置することができる。
【0027】
請求項3の発明によれば、スペーサの張出し部位は、チルトダウンしたチルトフロアの取付板体の後方で、左,右方向に間隔をもって2個設けられた各吊具取付穴間に位置する第1の張出し部位と、該第1の張出し部位と前記吊具取付穴を挟んだ左,右方向の外側に位置する第2の張出し部位とにより構成している。この上で、第1の張出し部位に1個のボルト挿通孔を設け、第2の張出し部位に2個のボルト挿通孔を設けている。
【0028】
従って、第1の張出し部位に設けた1個のボルト挿通孔に1本のスペーサ取付ボルトを挿通し、第2の張出し部位に設けた2個のボルト挿通孔に2本のスペーサ取付ボルトを挿通する。この状態で、各スペーサ取付ボルトをカウンタウエイトの上面に螺着することにより、3本のスペーサ取付ボルトを用いてスペーサをカウンタウエイトに取付けることができる。
【0029】
請求項4の発明によれば、スペーサは、チルトフロアがチルトダウンしたときに、該チルトフロアの取付板体が載置される載置部位と、該載置部位と左,右方向で隣接し外部に対して露出する露出部位とを有している。このスペーサの露出部位には、前述したボルト挿通孔と別個のボルト挿通孔を設ける構成としている。
【0030】
これにより、別個のボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトは、チルトフロアをチルトダウンさせた状態で、締めたり、緩めたりすることができる。この結果、別個のボルト挿通孔に挿通したスペーサ取付ボルトと前述したスペーサ取付ボルトとを用い、カウンタウエイトに対しスペーサを強固に取付けることができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、スペーサの露出部位からチルトフロアの側面に沿って前側に延びるメンテナンスカバーを設けているから、このメンテナンスカバーによってスペーサの露出部位、即ち、この露出部位に設けられるスペーサ取付ボルトを覆い隠すことができ、いたずらを防止でき、また外観上の見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態によるキャノピ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
図2図1の油圧ショベルをチルトフロアをチルトアップさせた状態で示す正面図である。
図3】作業装置の一部を省略した油圧ショベルを拡大して示す平面図である。
図4図3の油圧ショベルをキャノピとメンテナンスカバーを取外した状態で示す平面図である。
図5】旋回フレームを単体で示す平面図である。
図6】上部旋回体を作業装置、運転席、キャノピ等を省略した状態で示す要部拡大の斜視図である。
図7図6中の化粧カバーとメンテナンスカバーを取外してチルトフロアをチルトアップさせた状態を示す要部拡大の斜視図である。
図8】旋回フレームの後部、カウンタウエイト、スペーサ、リヤブラケット等を示す要部拡大の斜視図である。
図9】旋回フレームの後部とカウンタウエイトを示す要部拡大の斜視図である。
図10】スペーサとリヤブラケットとチルトフロアの取付板体との取付関係を図6中の矢示X−X方向から見た要部拡大の断面図である。
図11】カウンタウエイトとスペーサとチルトフロアと化粧カバーと防振部材とリヤブラケットとの分解斜視図である。
図12】スペーサを単体で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、キャノピ仕様の小型の油圧ショベル、所謂ミニショベルを例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
【0034】
図1において、1は建設機械としてのキャノピ仕様の小型の油圧ショベル(ミニショベル)を示している。この油圧ショベル1は、図1図2に示すように、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行うオフセット式の作業装置4とにより構成されている。
【0035】
ここで、上部旋回体3は、図3図4に示すように、下部走行体2の車幅とほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有し、かつ旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C(図3参照)内に収まるように、上方から見てほぼ円形状に形成されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回中心Oを中心として旋回したときに、この上部旋回体3がほぼ下部走行体2の車幅内に収まる超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0036】
上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト6、スペーサ7、チルトフロア10、リヤブラケット22、防振部材23等により構成されている。また、上部旋回体3は、チルトフロア10を運転席16等と一緒に前側位置を支点としてチルトアップ(図2図7の状態)、チルトダウン(図1図6の状態)することができる。
【0037】
5は上部旋回体3の支持構造体を構成する旋回フレームを示している。この旋回フレーム5は、図5に示す如く、左,右方向の中央部を前,後方向に延びて設けられた底板5Aと、該底板5A上を前,後方向に延びて立設された左前縦板5Bと、該左前縦板5Bの右側に間隔をもって平行に立設された右前縦板5Cと、各前縦板5B,5Cの後端に位置して左,右方向に延びて立設された横板5Dと、該横板5Dの左側から後側に延びた左後縦板5Eと、該左後縦板5Eの右側に間隔をもって平行に立設された右後縦板5Fと、各後縦板5E,5Fの後端を連結して設けられたウエイト取付板5Gと、前記底板5Aの左側に設けられた円弧状の左サイドフレーム5Hと、前記底板5Aの右側に設けられた円弧状の右サイドフレーム5Jとを含んで構成されている。
【0038】
左,右の前縦板5B,5Cには、作業装置4が俯仰動可能に取付けられる。一方、左サイドフレーム5Hの前部上側には、左,右方向に延びて前側支持台5Kが設けられ、該前側支持台5Kには、後述の傾転支持部材21を介してチルトフロア10の前側部位が上,下方向に回動可能に取付けられている。
【0039】
次に、本実施の形態の特徴部分をなすカウンタウエイト6、スペーサ7の構成について説明する。
【0040】
6は作業装置4との重量バランスをとるために旋回フレーム5の後部に取付けられたカウンタウエイトを示している。このカウンタウエイト6は、前述した仮想円Cにほぼ収まるように、後向きに突出した凸湾曲形状をなしている。また、カウンタウエイト6は、所望の高さ寸法をもって形成されており、その下部は、旋回フレーム5のウエイト取付板5Gにボルト止めされている。
【0041】
ここで、カウンタウエイト6の上面6Aの形状について述べる。まず、上面6Aの後側位置には、2個の吊具取付穴6B,6Cが左,右方向に所望の間隔をもって配置されている。この左吊具取付穴6Bと右吊具取付穴6Cは、カウンタウエイト6の着脱作業を行うときにワイヤ等を掛ける吊具を取付けるためのめねじ穴となっている。従って、2個の吊具取付穴6B,6Cは、カウンタウエイト6をバランスよく吊るすことができるように、左,右方向の中央寄りに配置されている。
【0042】
また、上面6Aの前側は、段差部6Dを介して1段低いスペーサ取付面6Eとなっている。この上面6Aの一部をなすスペーサ取付面6Eは、後述のスペーサ7を取付けるための平坦面となっている。スペーサ取付面6Eには、2個の吊具取付穴6B,6C間に位置して該各吊具取付穴6B,6C間に向け後方に突出した第1の突出面6E1と、該第1の突出面6E1と左吊具取付穴6Bを挟んだ左,右方向の外側、即ち、左側に位置して後方に突出した第2の突出面6E2とを有している。
【0043】
第1の突出面6E1と第2の突出面6E2は、図4図6に示すように、後述するチルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14と異なる位置、具体的には、化粧カバー14の後端縁14Bよりも後方で、チルトフロア10がチルトダウンしたときに外部に露出する位置に配置されている。第1の突出面6E1は、左,右方向に狭幅なD字状の延長面として形成され、第2の突出面6E2は、第1の突出面6E1よりも左,右方向に広幅なD字状の延長面として形成されている。
【0044】
一方、スペーサ取付面6Eの深さ寸法(段差部6Dの高さ寸法)は、スペーサ取付面6Eにスペーサ7を取付けたときに、このスペーサ7が上面6Aから上側に突出しない程度の寸法に設定されている。これにより、チルトフロア10をチルトダウンしたときには、カウンタウエイト6と化粧カバー14とを一体的に配置でき、外観上の見栄えを良好にすることができる。
【0045】
さらに、スペーサ取付面6Eには、複数個、例えば5個のめねじ穴6F〜6Kが設けられている。この5個のめねじ穴6F〜6Kは、スペーサ7をカウンタウエイト6に取付ける後述のスペーサ取付ボルト8が螺合するものである。各めねじ穴6F〜6Kのうち、めねじ穴6Fは第1の突出面6E1に配置され、めねじ穴6G,6Hは第2の突出面6E2に配置され、めねじ穴6J,6Kはスペーサ取付面6Eの右側部位に配置されている。このめねじ穴6J,6Kは、チルトフロア10がチルトダウンした状態で、取付板体13、化粧カバー14よりも右側で外部に露出する位置に配置されている。
【0046】
なお、カウンタウエイト6には、その中央に位置してメンテナンス開口6Lが設けられている。このメンテナンス開口6Lは、後述のエンジン9のメンテナンスを行うための開口で、常時はエンジンカバー31Cによって閉塞されている。
【0047】
7はカウンタウエイト6の上面6Aに設けられたスペーサを示している。図7図8に示すように、スペーサ7は、左,右方向に延び平板状をした平板体7Aを有し、この平板体7Aの前端は、屈曲して下側に延びた立下り部位7Bとなっている。さらに、スペーサ7の平板体7Aは、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13が載置される後述の載置部位Aと、該載置部位Aと左,右方向の右側で隣接し外部に対して露出する後述の露出部位Bと、前記載置部位Aよりも後側に位置して後方に張出した後述の張出し部位7A1,7A2とにより形成している。
【0048】
平板体7Aの後側には、スペーサ7をカウンタウエイト6のスペーサ取付面6Eに取付けた状態で、カウンタウエイト6の吊具取付穴6B,6Cと異なる位置に第1の張出し部位7A1と第2の張出し部位7A2が設けられている。この2個の張出し部位7A1,7A2は、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14よりも後側、具体的には、後述する載置部位Aよりも後側に位置して後方に張出すことにより、外部に対して露出している。
【0049】
第1の張出し部位7A1は、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13の後方で2個の吊具取付穴6B,6C間、即ち、カウンタウエイト6のスペーサ取付面6Eの第1の突出面6E1に収まるように形成されている。一方、第2の張出し部位7A2は、第1の張出し部位7A1と左吊具取付穴6Bを挟んだ左,右方向の外側となる左側、即ち、カウンタウエイト6のスペーサ取付面6Eの第2の突出面6E2に収まるように形成されている。
【0050】
第1の張出し部位7A1には、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14と異なる位置に1個のボルト挿通孔7Cが設けられている。また、第2の張出し部位7A2には、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14と異なる位置に2個のボルト挿通孔7D,7Eが左,右方向に間隔をもって設けられている。これにより、スペーサ7には、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13の後方位置に左,右方向に間隔をもって3個のボルト挿通孔7C,7D,7Eが設けられている。さらに、スペーサ7には、右側に位置する後述の露出部位Bに位置して前述した各ボルト挿通孔7C,7D,7Eと別個の2個のボルト挿通孔7F,7Gが左,右方向に間隔をもって設けられている。
【0051】
ここで、スペーサ7の各ボルト挿通孔7C,7D,7E,7F,7Gは、カウンタウエイト6のスペーサ取付面6Eに設けられた各めねじ穴6F,6G,6H,6J,6Kに対応している。従って、スペーサ7は、各ボルト挿通孔7C〜7Gに挿通したスペーサ取付ボルト8を、スペーサ取付面6Eの各めねじ穴6F〜6Kに螺着することにより、カウンタウエイト6の上面6Aに取付けられている。
【0052】
この場合、各ボルト挿通孔7C〜7Gは、スペーサ取付ボルト8の軸部よりも十分に大きな寸法に設定されている。これにより、スペーサ取付ボルト8を緩めた状態では、スペーサ取付ボルト8とボルト挿通孔7C〜7Gとの隙間分だけ、スペーサ7をカウンタウエイト6に対して水平方向に移動させることができる。このスペーサ7の移動によってカウンタウエイト6とチルトフロア10の取付板体13との位置ずれを吸収することができる。
【0053】
しかも、5本のスペーサ取付ボルト8は、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14と異なる位置、即ち、当該スペーサ取付ボルト8を締めたり、緩めたりするときに、取付板体13、化粧カバー14が邪魔にならない位置に配置されている。これにより、チルトフロア10をチルトダウンさせた状態で、各スペーサ取付ボルト8を緩めてスペーサ7による後述のリヤブラケット22と取付板体13との位置合わせ作業を行うことができる。
【0054】
一方、スペーサ7の前側位置には、左,右方向の両側に大きく離れた位置に2個の取付孔7Hが形成されている。この左,右の取付孔7Hには、後述する防振部材23が取付けられている。
【0055】
さらに、スペーサ7を構成する平板体7Aについて具体的に述べる。平板体7Aは、各張出し部位7A1,7A2の前側に位置してチルトフロア10がチルトダウンしたときに取付板体13が載置される載置部位Aと、該載置部位Aと左,右方向の右側で隣接し外部に対して露出する露出部位Bとを有している。
【0056】
平板体7Aの載置部位Aは、左,右方向の中間部から左側部分、即ち、図12中に網掛け模様で示された範囲に配置されている。この載置部位Aは、チルトフロア10がチルトダウンしたときに、取付板体13および該取付板体13の一部をなす化粧カバー14が載置される部位となっている。
【0057】
一方、平板体7Aの露出部位Bは、載置部位Aの右側に隣接した部分、即ち、図12中にドット模様で示された範囲に配置されている。この露出部位Bは、チルトフロア10がチルトダウンしたときに、取付板体13、化粧カバー14から外れた部位で、外部に対して露出している。これにより、露出部位Bは、チルトフロア10がチルトダウンした状態でも、スペーサ取付ボルト8の着脱作業を行うことができる範囲となっている。また、露出部位Bは、後述のメンテナンスカバー32によって覆い隠すことができる。
【0058】
9は旋回フレーム5の後側に搭載されたエンジンで、該エンジン9は、図7に示すように、左,右方向に延在する横置き状態に配置されている。エンジン9は、後述するチルトフロア10の下側に入り込むように配設されている。エンジン9の左側には、該エンジン9によって駆動される油圧ポンプが設けられ、エンジン9の右側には、ラジエータ、オイルクーラ等からなる熱交換器(いずれも図示せず)が配設されている。なお、エンジン9にアシスト用の電動モータを設けることによりハイブリッド化する構成としてもよい。
【0059】
10は旋回フレーム5上の左側寄り、即ち、左前縦板5Bの左側に設けられたチルトフロアである。このチルトフロア10は、旋回フレーム5の前側支持台5Kに対し、その前側位置を傾転支点としてチルトアップ(図2図7の状態)、チルトダウン(図1の状態)することができる。即ち、チルトフロア10は、足乗せ部11の前端が後述の傾転支持部材21を介して旋回フレーム5の前側支持台5Kに上,下方向ないし前,後方向に回動可能に支持されている。一方、チルトフロア10は、チルトダウンした状態で、後側の取付板体13がカウンタウエイト6の上面6Aに設けられたスペーサ7に取付け、取外し可能に取付けられている。
【0060】
チルトフロア10は、図6図7等に示すように、前側に位置してオペレータが足を乗せる足乗せ部11と、該足乗せ部11の後側から立上った運転席台座12と、該運転席台座12から後側に延びた取付板体13とにより構成されている。
【0061】
足乗せ部11は、後述の運転席16にオペレータが着座したときに脚を乗せるもので、ほぼ平坦に形成されている。また、足乗せ部11の前側は、レバー・ペダル取付部11Aとなり、該レバー・ペダル取付部11Aには、後述する走行用の操作レバー18と操作ペダル19A,19Bが設けられている。
【0062】
運転席台座12は、エンジン9等の前側および上側を覆うもので、足乗せ部11の後端から立ち上がったステップ状に形成されている。運転席台座12は、その上側が平坦な運転席取付板12Aとなり、該運転席取付板12Aの後側は斜めに立ち上がった背板12Bとなっている。
【0063】
さらに、取付板体13は、運転席台座12の背板12Bの上部から後側に延びて設けられている。この取付板体13は、図7図11に示すように、左,右方向に延びる略長方形状の板体からなり、右側位置に1個、左側位置に2個のボルト挿通孔13Aが設けられている。これらのボルト挿通孔13Aは、チルトフロア10をチルトダウンした状態で、取付板体13を後述のリヤブラケット22に取付けるときに、フロア取付ボルト15を挿通するもので、リヤブラケット22のめねじ孔22Bに対応している。
【0064】
14はチルトフロア10の取付板体13を覆うように取付けられた化粧カバーである。この化粧カバー14は、前端縁14Aが左,右方向に直線状に延び、後端縁14Bが後述するカウンタウエイト6の円弧形状に合わせて湾曲し、全体として船底状に形成されている。さらに、化粧カバー14には、取付板体13の各ボルト挿通孔13A(リヤブラケット22のめねじ孔22B)に対応する位置にボルト挿通孔14Cが設けられている。
【0065】
化粧カバー14は、チルトフロア10をチルトダウンした状態で、各ボルト挿通孔14Cと取付板体13の各ボルト挿通孔13Aに挿通したフロア取付ボルト15をリヤブラケット22のめねじ孔22Bに螺着することにより、取付板体13、キャノピ20の後側部位と一緒にリヤブラケット22に取付けられている。この状態では、化粧カバー14は、チルトフロア10の取付板体13の一部を構成している。
【0066】
16はチルトフロア10の運転席台座12上に設けられた運転席(図1参照)で、該運転席16は、油圧ショベル1を操作するときにオペレータが着座するものである。運転席16の左,右両側には、図4に示すように、作業装置4等を操作するための作業用の操作レバー17が配設されている。さらに、運転席16の前方となる足乗せ部11のレバー・ペダル取付部11Aには、下部走行体2を走行させるときに操作する走行用の操作レバー18が設けられている。さらに、レバー・ペダル取付部11Aには、走行用の操作レバー18を挟む左,右位置に操作ペダル19A,19Bが設けられ、該各操作ペダル19A,19Bは、例えばオプションで装備される油圧機器等を操作するものである。
【0067】
20はチルトフロア10上に設けられたキャノピを示し、該キャノピ20は、図1図3に示すように、運転席16の上方および右側方を覆うもので、作業装置4の左側に配置されている。キャノピ20は、運転席16の右側を覆う右側面部20Aと、運転席16の上方を覆う上面部20Bと、右前ピラー20C、左後ピラー20D、右後ピラー20Eとを備えた3柱式のキャノピとして構成されている。キャノピ20は、右前ピラー20Cの下端部が足乗せ部11の前部に取付けられ、左後ピラー20D、右後ピラー20Eの下端部が化粧カバー14と一緒に取付板体13に取付けられている。なお、3柱式のキャノピ20以外にも、2柱式、4柱式のキャノピを用いる構成としてもよい。
【0068】
ここで、チルトフロア10、運転席16、キャノピ20等は、旋回フレーム5上に搭載された一つのユニットとして構成され、図2に示す如く、前側の傾転支持部材21を支点として後側が上,下方向に傾転可能となっている。
【0069】
21は旋回フレーム5の前側位置とチルトフロア10の前側位置との間に設けられた左,右の傾転支持部材を示している(図2中に左側のみ図示)。この傾転支持部材21は、旋回フレーム5の前側支持台5Kと足乗せ部11のレバー・ペダル取付部11Aとの間を回動可能に支持するものである。そして、各傾転支持部材21は、旋回フレーム5の左,右方向に延びる軸線を回動軸線とし、旋回フレーム5に対してチルトフロア10をチルトアップ、チルトダウン(傾転)可能に取付けるものである。
【0070】
これにより、チルトフロア10は、各傾転支持部材21により前側ないし上側となる方向に向けて傾転(チルトアップ)させることができ、該チルトフロア10の後側を持上げて傾転位置(図2に示す位置)に配置することができる。また、チルトフロア10は、その後側を後側ないし下側となる方向に向けて傾転(チルトダウン)させることにより、ほぼ水平となる運転位置(図1に示す位置)に配置することもできる。この運転位置では、チルトフロア10の取付板体13を後述のリヤブラケット22に取付けることができる。
【0071】
22はスペーサ7の上側に配置されたリヤブラケットで、該リヤブラケット22は、チルトフロア10がチルトダウンしたときに、該チルトフロア10の取付板体13が取付けられるものである。リヤブラケット22は、左,右方向に延びる長方形状の強度板からなり、左,右両側位置には、スペーサ7の取付孔7Hに対応して取付ボス22A(図8参照)が設けられている。この取付ボス22Aは、後述の防振部材23をリヤブラケット22に取付けるもので、取付ボス22A内はねじ穴となっている。
【0072】
また、リヤブラケット22には、取付板体13の3個のボルト挿通孔13Aに対応するように、中央位置に1個、左側位置に2個、合計3個のめねじ孔22Bが形成されている。そして、各めねじ孔22Bに対し、取付板体13のボルト挿通孔13Aに挿通したフロア取付ボルト15を螺着することにより、リヤブラケット22にチルトフロア10の取付板体13を着脱可能に取付けることができる。
【0073】
23はスペーサ7とリヤブラケット22との間に設けられた左,右の防振部材である。この左,右の防振部材23は、リヤブラケット22に取付けられたチルトフロア10の取付板体13を防振状態で支持するものである。各防振部材23は、図10図11に示すように、後述の上側弾性体24、下側弾性体25、スリーブ26、防振用ボルト27、ストッパ板28を含んで構成されている。
【0074】
24はリヤブラケット22とスペーサ7との間に設けられた上側弾性体で、該上側弾性体24は、例えばゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成されている。そして、上側弾性体24内には、リヤブラケット22の取付ボス22Aが挿通されている。
【0075】
25はスペーサ7の下面側に設けられた下側弾性体で、該下側弾性体25は、スペーサ7を挟んで上側弾性体24と上,下方向で対をなすものである。そして、下側弾性体25は、上側弾性体24と同様にゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成されている。
【0076】
26は上,下の弾性体24,25内に挿通された円筒状のスリーブで、該スリーブ26は、その内周側に挿通した防振用ボルト27を取付ボス22A内に螺着することにより、リヤブラケット22に固定されるものである。
【0077】
28は下側弾性体25の下側に配置されたストッパ板で、該ストッパ板28は、U字型の板体として形成されている。そして、ストッパ板28は、防振用ボルト27の頭部とスリーブ26との間で挟持され、屈曲した両端部がスペーサ7の下面と間隔をもって対面している。
【0078】
また、29はスペーサ7の上面側に配置された上側ワッシャ、30はスペーサ7の下面側に配置された下側ワッシャで、上側ワッシャ29は上側弾性体24の下端部が当接し、下側ワッシャ30は下側弾性体25の上端部が当接するものである。
【0079】
このように、リヤブラケット22は、上述の防振部材23を介してスペーサ7上に防振状態に取付けられている。即ち、防振部材23は、油圧ショベル1の作業時等において旋回フレーム5からリヤブラケット22(チルトフロア10)に伝わる振動を、上側弾性体24、下側弾性体25の弾性変形によって吸収して緩和するものである。
【0080】
31はチルトフロア10の周囲に設けられた外装カバーで、該外装カバー31は、図1ないし図4に示すように、カウンタウエイト6の左端から前方に延びた左カバー31Aと、カウンタウエイト6の右側から前方に延びた右後カバー31Bと、後側に位置してカウンタウエイト6のメンテナンス開口6Lを閉塞するエンジンカバー31Cと、作業装置4の右側に位置して作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)を覆った開閉可能な右前カバー31Dと、後述のメンテナンスカバー32とにより構成されている。
【0081】
32はチルトフロア10と外装カバー31の右後カバー31Bとの間に設けられたメンテナンスカバーである。このメンテナンスカバー32は、スペーサ7の露出部位Bからチルトフロア10の側面に沿って前側に延びた長方形状の板体として形成されている。これにより、メンテナンスカバー32は、上部旋回体3に取付けられた状態では、エンジン9の一部やスペーサ7の露出部位Bを覆い隠すことができる。一方、メンテナンスカバー32を取外した状態では、図4に示すように、エンジン9の一部やスペーサ取付ボルト8等を外部に対して露出させることができ、各種メンテナンス作業を行うことができる。
【0082】
なお、33はチルトフロア10の右側方に設けられた傾転駆動機構である。この傾転駆動機構33は、例えばねじ部材の螺合を利用してチルトフロア10を傾転動作(チルトアップ、チルトダウン)させるものである。傾転駆動機構33は、旋回フレーム5側の構造物とチルトフロア10との間に設けられている。
【0083】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0084】
オペレータは、チルトフロア10上に設けられた運転席16に着座し、走行用の操作レバー18を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場まで自走させる。そして、作業現場では、作業用の操作レバー17を操作し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0085】
次に、チルトフロア10を旋回フレーム5に対して取付ける場合の組立作業について説明する。
【0086】
まず、チルトフロア10の足乗せ部11の前側を、各傾転支持部材21を介して旋回フレーム5の前側支持台5Kに回動可能に取付ける。一方、チルトフロア10をチルトダウンさせ、後側の取付板体13をリヤブラケット22上に載置する。このときに、取付板体13の各ボルト挿通孔13Aとリヤブラケット22の各めねじ孔22Bとが位置ずれしている場合がある。この位置ずれは、カウンタウエイト6が鋳造されたもので、寸法精度が低くいことが原因の1つとなっている。
【0087】
そこで、チルトフロア10の組立作業の一部をなす取付板体13とリヤブラケット22との位置合わせ作業について述べる。チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13の各ボルト挿通孔13Aとリヤブラケット22の各めねじ孔22Bとが互いに適正な位置に配置されているか否かを確認する。リヤブラケット22が適正な位置からずれている場合には、カウンタウエイト6の上面6Aにスペーサ7を固定している各スペーサ取付ボルト8を工具を用いて緩める。このときに、各スペーサ取付ボルト8は、チルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14と異なる位置に配置しているから、チルトフロア10をチルトダウンした状態で簡単に緩めることができる。各スペーサ取付ボルト8を緩めたら、スペーサ7を移動させることにより、取付板体13の各ボルト挿通孔13Aとリヤブラケット22の各めねじ孔22Bとを合わせる。位置合わせ作業が済んだら、各スペーサ取付ボルト8を締付けることにより、取付板体13とリヤブラケット22とを位置合わせすることができる。
【0088】
かくして、本実施の形態によれば、カウンタウエイト6の上面6Aには、当該カウンタウエイト6を吊上げるときに吊具を取付けるための吊具取付穴6B,6Cを設け、スペーサ7には、当該スペーサ7をカウンタウエイト6に取付けた状態で、カウンタウエイト6の吊具取付穴6B,6Cと異なる位置に、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13よりも後側に張出すように張出し部位7A1,7A2を設ける。この上で、スペーサ7の張出し部位7A1,7A2には、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13と異なる位置にボルト挿通孔7C,7D,7Eを設け、スペーサ7は、各ボルト挿通孔7C,7D,7Eに挿通したスペーサ取付ボルト8をカウンタウエイト6の上面6Aに螺着することにより、該カウンタウエイトに取付ける構成としている。
【0089】
従って、スペーサ7は、各張出し部位7A1,7A2のボルト挿通孔7C,7D,7Eに挿通したスペーサ取付ボルト8をカウンタウエイト6の上面6A、即ち、スペーサ取付面6Eの各めねじ穴6F,6G,6Hに螺着することにより、このカウンタウエイト6に取付けることができる。この場合、各スペーサ取付ボルト8は、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13(化粧カバー14)と異なる位置、即ち、締めたり、緩めたりするときに取付板体13等が邪魔にならない位置に配置されている。
【0090】
これにより、旋回フレーム5上にチルトフロア10等を取付ける組立作業において、カウンタウエイト6側のリヤブラケット22とチルトフロア10側の取付板体13との間に位置ずれを生じた場合でも、この組立作業時には、チルトフロア10をチルトダウンさせたままの状態で、スペーサ7によるリヤブラケット22と取付板体13との位置合わせ作業を行うことができる。
【0091】
この結果、スペーサ7によるリヤブラケット22と取付板体13との位置合わせ作業では、チルトフロア10のチルトアップとチルトダウンを繰り返す必要がなくなるから、チルトフロア10の組立作業を容易に行うことができる。しかも、カウンタウエイト6に切削加工等を施す必要がないから、カウンタウエイト6を安価に製造することができる。
【0092】
また、スペーサ7に設けた各張出し部位7A1,7A2は、カウンタウエイト6を吊上げるときに吊具を取付けるための吊具取付穴6B,6Cと異なる位置に配置している。これにより、スペーサ7は、カウンタウエイト6の吊上げ作業の邪魔にならない位置で、スペーサ取付ボルト8を用いてカウンタウエイト6に取付けることができる。
【0093】
一方、スペーサ7の各張出し部位7A1,7A2は、チルトダウンしたチルトフロア10の取付板体13の後方、具体的には、化粧カバー14の後端縁14Bの後方で、左,右方向に間隔をもって2個設けられた各吊具取付穴6B,6C間に位置する第1の張出し部位7A1と、該第1の張出し部位7A1と左吊具取付穴6Bを挟んだ左側に位置する第2の張出し部位7A2とにより構成している。この上で、第1の張出し部位7A1に1個のボルト挿通孔7Cを設け、第2の張出し部位7A2に2個のボルト挿通孔7D,7Eを設けている。
【0094】
従って、第1の張出し部位7A1に設けた1個のボルト挿通孔7Cに1本のスペーサ取付ボルト8を挿通し、第2の張出し部位7A2に設けた2個のボルト挿通孔7D,7Eに2本のスペーサ取付ボルト8を挿通する。この状態で、各スペーサ取付ボルト8をカウンタウエイト6の上面6Aに螺着することにより、3本のスペーサ取付ボルト8を用いてスペーサ7をカウンタウエイト6に取付けることができる。
【0095】
また、スペーサ7は、チルトフロア10がチルトダウンしたときに、該チルトフロア10の取付板体13、化粧カバー14に覆われる載置部位Aと、該載置部位Aと左,右方向の右側で隣接し外部に対して露出する露出部位Bとを有している。このスペーサ7の露出部位Bには、前述したボルト挿通孔7C,7D,7Eと別個のボルト挿通孔7F,7Gを設ける構成としている。
【0096】
これにより、別個のボルト挿通孔7F,7Gに挿通したスペーサ取付ボルト8は、チルトフロア10をチルトダウンさせた状態で、締めたり、緩めたりすることができる。この結果、別個のボルト挿通孔7F,7Gに挿通した2本のスペーサ取付ボルト8と前述した3本のスペーサ取付ボルト8とを用い、カウンタウエイト6に対しスペーサ7を強固に取付けることができる。
【0097】
さらに、スペーサ7の露出部位Bからチルトフロア10の側面に沿って前側に延びるメンテナンスカバー32を設けているから、このメンテナンスカバー32によってスペーサ7の露出部位B、即ち、この露出部位Bに設けられるスペーサ取付ボルト8を覆い隠すことができる。これにより、いたずらを防止でき、また外観上の見栄えを良好にすることができる。
【0098】
なお、実施の形態では、チルトフロア10に運転席16の上側と右側とを覆うキャノピ20を備えたキャノピ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばチルトフロア10に運転席16の周囲と上側を覆うキャブボックスを備えたキャブ式の油圧ショベルに適用してもよい。
【0099】
また、実施の形態では、オフセット式の作業装置4を備えた油圧ショベル1に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスイング式の作業装置を備えた油圧ショベル、あるいはスイング動作やオフセット動作を行わないモノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベルにも適用することができる。
【0100】
さらに、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
6 カウンタウエイト
6A 上面
6B 左吊具取付穴
6C 右吊具取付穴
6F,6G,6H,6J,6K めねじ穴
7 スペーサ
7A 平板体
7A1 第1の張出し部位
7A2 第2の張出し部位
7C,7D,7E,7F,7G ボルト挿通孔
8 スペーサ取付ボルト
10 チルトフロア
11 足乗せ部
12 運転席台座
13 取付板体
14 化粧カバー
22 リヤブラケット
23 防振部材
32 メンテナンスカバー
A 載置部位
B 露出部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12