特許第6282198号(P6282198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282198タイヤユニフォミティ試験機及びタイヤユニフォミティ測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282198
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】タイヤユニフォミティ試験機及びタイヤユニフォミティ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/16 20060101AFI20180208BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01M1/16
   G01M17/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-172694(P2014-172694)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-48178(P2016-48178A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英人
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−223843(JP,A)
【文献】 特開2013−083477(JP,A)
【文献】 特表2009−527744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00−1/38
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に、前記スピンドル軸に装着された前記タイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、正回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定すると共に逆回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部と、を有するタイヤユニフォミティ試験機において、
前記ユニフォミティ測定部は、前記スピンドル軸の回転方向を正回転から逆回転させる際に、前記スピンドル軸の回転速度が0となるタイミングと、前記ドラムにかかる荷重が0となるタイミングと、を揃うように同期させる
ことを特徴とするタイヤユニフォミティ試験機。
【請求項2】
タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に、前記スピンドル軸に装着された前記タイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、正回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定すると共に逆回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部と、を有するタイヤユニフォミティ試験機を用いたタイヤユニフォミティ測定方法において、
前記スピンドル軸の回転方向を正回転から逆回転させる際に、前記スピンドル軸の回転速度が0となるタイミングと、前記ドラムにかかる荷重が0となるタイミングと、を揃うように同期させる
ことを特徴とするタイヤユニフォミティ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤユニフォミティの試験技術に関するものであり、特に、タイヤの横方向の力の変動(Lateral Force Variation:LFV)及びコニシティの測定精度を向上させることのできるタイヤユニフォミティの試験技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、製品上がりのタイヤに対してはユニフォミティ(均一性)などを計測して良否を判定するタイヤ試験(ユニフォミティ試験)が行われている。例えば、乗用車用のタイヤについてユニフォミティを計測する場合、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に、スピンドル軸に装着されたタイヤをドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、リム上に着座するタイヤに対して工場空気源から供給された圧縮空気を圧力調整して供給する空気圧回路と、を有するタイヤユニフォミティ試験機(以下、単にタイヤ試験機と呼ぶこともある)を用いて以下のような手順で行われる。
【0003】
まず、検査ラインの上流から流れてきたタイヤを上下に分割されたリムで挟み込む。次に空気圧回路でタイヤを短時間で膨らましリムに固定した後、タイヤの内圧をテスト圧に保持する。
テスト圧に保持されたタイヤにドラムを押し付けて正回転させ、タイヤのユニフォミティを計測する。その後、一旦停止した状態を通過してタイヤを逆回転させ、逆回転時でのタイヤのユニフォミティも計測する。
【0004】
ところで、上記のようなタイヤユニフォミティの測定方法においては、タイヤに一定の圧力が作用している状態、すなわち負荷ドラムとタイヤとが接触状態で、タイヤが回転停止状態になると、負荷ドラムの圧力により生じているタイヤの凹みが後に残留凹みとなる。この残留凹みは、元の状態に復元するまでには時間がかかり、この状態でユニフォミティを測定すると、測定精度に大きく影響する虞がある。
【0005】
そこで、上記した問題の解決方法の一つとして、例えば、特許文献1に開示されている技術などが挙げられる。
特許文献1には、負荷ドラムをタイヤのトレッド面に圧着させて所定の方向へ回転させ、その後、負荷ドラムを反転させる時に、タイヤのトレッド面を負荷ドラムの接触面(模擬路面)から離間させて、タイヤと負荷ドラムとを非接触状態、すなわち離間状態にすることで、タイヤに変形を起させずに精度の高いタイヤユニフォミティを測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−223843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたタイヤユニフォミティの測定方法には、タイヤ逆回転時のタイヤユニフォミティを計測するに際しては、タイヤの回転方向の反転動作と、タイヤと負荷ドラムとの離間動作とが、どのように連動しながら動作しているかが詳細に記載されていない。
また、特許文献1に開示されたタイヤユニフォミティの測定方法では、負荷ドラムを反転させる時、タイヤを負荷ドラムと非接触状態にするが、タイヤと負荷ドラムが非接触状態の時に負荷ドラムを反転させる場合には、負荷ドラムにモータ等の動力源を設ける必要があり、装置のコストが高くなってしまう。タイヤの回転方向を反転させることで、負荷ドラムを反転させる場合には、負荷ドラムが慣性により同方向の回転(正回転)を維持し続けている状態で、タイヤの回転方向を反転(逆回転)させて、再びタイヤと負荷ドラムとを接触させているので、タイヤを保持しているリムとそのリムに当接しているタイヤの内径との間に「すべり」が生じることとなり、タイヤとリムとの間に「ズレ」が発生する虞がある。このように、タイヤとリムとの間にズレが発生した状態のままで、タイヤの逆回転時のユニフォミティを計測すると、LFVやコニシティが所望の精度にて測定できなくなるという問題が生じることとなる。
【0008】
そこで本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正回転時から逆回転時への切り換えを行った直後から精確なタイヤユニフォミティ、特に、タイヤの横方向の力の変動(LFV)及びコニシティを精度よく求めることができるタイヤユニフォミティ試験機及びタイヤユニフォミティ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
本発明のタイヤユニフォミティ試験機は、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に、前記スピンドル軸に装着された前記タイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、正回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定すると共に逆回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部と、を有するタイヤユニフォミティ試験機において、前記ユニフォミティ測定部は、前記スピンドル軸の回転方向を正回転から逆回転させる際に、前記スピンドル軸の回転速度が0となるタイミングと、前記ドラムにかかる荷重が0となるタイミングと、を揃うように同期させることを特徴とする。
【0010】
本発明のタイヤユニフォミティ測定方法は、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、ドラムを回転自在に支持すると共に、前記スピンドル軸に装着された前記タイヤを前記ドラムの外周面に押し当て可能とするドラム機構と、正回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定すると共に逆回転時の前記タイヤのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部と、を有するタイヤユニフォミティ試験機を用いたタイヤユニフォミティ測定方法において、前記スピンドル軸の回転方向を正回転から逆回転させる際に、前記スピンドル軸の回転速度が0となるタイミングと、前記ドラムにかかる荷重が0となるタイミングと、を揃うように同期させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤユニフォミティ試験機及びタイヤユニフォミティ測定方法によれば、タイヤユニフォミティ計測において、タイヤ正回転時から逆回転時への切り換えを行った直後から精確なタイヤユニフォミティ、特に、タイヤの横方向の力の変動(LFV)及びコニシティを精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかるタイヤユニフォミティ試験機の概略図である。
図2】本発明にかかるタイヤユニフォミティ試験機の構成を模式的に示した図である。
図3】スピンドル軸及びドラムの動作パターンを示した図である。
図4図3の拡大図であって、ユニフォミティ測定中のタイヤを正回転から逆回転へと切り換えたときのスピンドル軸及びドラムの動作パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかるタイヤユニフォミティ試験機及びタイヤユニフォミティ測定方法を図面に基づき、説明する。
なお、本発明のタイヤユニフォミティ試験機1の説明においては、図1の紙面の上下を上下とし、紙面の左右を前後とする。
図1及び図2に示すように、本発明のタイヤユニフォミティ試験機1(以下、単にタイヤ試験機と呼ぶこともある)は、製品上がりのタイヤTのタイヤユニフォミティ特性、特に、タイヤTの縦方向の力の変動(Radial Force Variation:RFV)、タイヤTの横方向の力の変動(Lateral Force Variation:LFV)及びコニシティ(タイヤTの進行(回転)方向に関係なく、常に一定方向に発生する横力)を製品検査として評価するものである。
【0014】
具体的には、タイヤ試験機1は、ユニフォミティ測定対象のタイヤTを回転自在に保持するスピンドル軸3と、ドラム8(負荷ドラム)を回転自在に支持すると共に、スピンドル軸3に装着されたタイヤTをドラム8の外周面に押し当て可能とするドラム機構7と、タイヤTのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部(図示せず)と、を有している。
【0015】
また、タイヤ試験機1には、空気供給源(図示せず)で発生した圧縮空気をタイヤT内部に供給したり、タイヤT内部から圧縮空気を大気などの外部に排出したりしてタイヤT内の空気圧を調整する空気圧回路11が配備されている。
スピンドル軸3は、軸心が上下を向くように配備された円筒状のフレーム本体2の上端から上方へ突出状とされており、このフレーム本体2内に軸受部を介して上下軸回りに回転自在となるように取り付けられている。このスピンドル軸3の近傍には、駆動力を発生させるスピンドル軸回転モータ5が配備されていて、タイミングベルト6が巻回されている。このスピンドル軸回転モータ5の駆動力は、タイミングベルト6を介して、スピンドル軸3に伝達されている。
【0016】
また、スピンドル軸3の上方突出部分にタイヤTを固定する上下一対のリム4が設けられている。さらに、リム4で固定されたタイヤTの側方には、ドラム8を備えたドラム機構7が配備されていて、ドラム8の外周面にタイヤTのトレッド面を当接させる模擬路面8aが形成されている。
本実施形態のドラム機構7は、ドラム8と、そのドラム8を水平に移動させるスクリュジャッキ9と、そのスクリュジャッキ9を駆動させるドラム移動モータ10とを有し、ドラム8を上下軸回りに駆動回転できるように支持すると共に、水平に移動してタイヤTのトレッド面に模擬路面8aを接触できる構成となっている。
【0017】
ドラム8の回転軸とスピンドル軸3(タイヤT回転中心)との距離(軸間距離)の調整は、サーボモータで制御されていて、またタイヤTを回転自在に保持しているスピンドル軸3の回転も、別のサーボモータで制御されている。これら各サーボモータの制御は、一つの制御コントローラで行われている。
このドラム機構7は、タイヤTの回転を逆回転させる際に、ドラム8をタイヤTから離間させて、一方向回転(正回転)中のタイヤTの回転速度を減速、瞬間的に0にした上で、他方向回転(逆回転)へと切り換え、その後、ドラム8を前進させて負荷荷重をタイヤTに与えることが可能とされている。
【0018】
次に、上記したタイヤ試験機1を用いて、タイヤユニフォミティを計測する手順を説明する。
まず、正回転時のユニフォミティ計測を行う場合は、検査ラインの上流から流れてきたタイヤTを上下に分割されたリム4で挟み込み、空気圧回路11を用いてそのタイヤTを短時間で膨らませる。そして、タイヤTの内圧をテスト圧に調整する。
【0019】
その後、テスト圧に保持されたタイヤTにドラム8を押付けて「正回転」させ、荷重検出器(ロードセル)を用いてドラム8に発生する力を計測することにより、正回転時タイヤTのユニフォミティ(RFVやLFVなど)を測定する。正回転でのユニフォミティ測定が終わった後、ドラム8をタイヤTから離間させて、タイヤTを「逆回転」させる。そして、逆回転しているタイヤTを押付けて、荷重検出器(ロードセル)を用いてドラム8に発生する力を計測することにより、逆回転時のタイヤTのユニフォミティ(RFVやLFVなど)を測定する。正回転時と逆回転時の測定結果より、コニシティなどを測定する。
【0020】
上記した構成に加え、本発明のタイヤ試験機1は、「スピンドル軸3の回転方向の切換動作とドラム8の離間動作の同期」させる技術を有するため、タイヤ正回転時から逆回転時への切り換えを行った直後から精確なタイヤユニフォミティ、特に、タイヤの横方向の力の変動(LFV)及びコニシティを精度よく求めることができるものとなっている。
以下に、本発明のタイヤ試験機1の特徴である、逆回転時のユニフォミティを計測する際に、タイヤT(スピンドル軸3)の回転速度が0(ゼロ)となるタイミングと、タイヤTのトレッド面とドラム8の模擬路面8aとが非接触となるタイミングと、を一致(同期)させる方法、すなわちタイヤリロードの同期方法について、図を基に述べる。
【0021】
具体的には、ユニフォミティ測定部にて、タイヤTの回転方向を正回転から逆回転させる際に、スピンドル軸3の回転速度が0(ゼロ)になったとき(回転が瞬間停止したような状態)と、タイヤTのトレッド面がドラム8の模擬路面8aから離間したとき(非接触状態)とを、一致させるようにする。
すなわち、タイヤTのトレッド面とドラム8の模擬路面8aとが接触した状態から、徐々にドラム8をトレッド面から後退させるにしたがって、スピンドル軸3の回転を減速させてゆき、そしてタイヤTのトレッド面とドラム8の模擬路面8aとが完全に離れた非接触状態となったときに、スピンドル軸3の回転速度を0(ゼロ)になるようにする。
【0022】
言い換えると、ドラム8に荷重がかかっていない状態(荷重0(ゼロ))となるタイミングと、スピンドル軸3の回転速度が0(ゼロ)となるタイミングとを、揃うように同期させる。
次に、ドラム8に荷重がかかっていない状態となるタイミングと、スピンドル軸3の回転が停止するタイミングとを揃うように同期させる方法、すなわちドラムリロードの同期方法について、図を基に詳細に説明する。
【0023】
まず、ドラムリロードの同期方法についての説明をする前に、図3を参照して、正回転時及び逆回転時におけるユニフォミティ測定工程について、述べる。
図3は、スピンドル軸3及びドラム8の動作パターンを示した図である。
図3に示す実線aはドラム8の位置を示し、実線bはドラム8の移動速度を示している。また、図3に示す実線cはスピンドル軸3の回転速度を示し、実線dはドラム8にかかる荷重を示している。
【0024】
タイヤTをスピンドル軸3のリム4に取り付けた後、ドラム8をスピンドル軸3側に前進させて、ドラム8の模擬路面8aをタイヤTのトレッド面に接触させる(図3中の0〜2秒間)。
このとき、ドラム8は、−50mm/sの移動速度(図3中の実線b)で前進している。ドラム8の模擬路面8aとスピンドル軸3の軸中心の距離は、約330mmから約295mmに近づいている(図3中の実線a)。一方、スピンドル軸3は、約360deg/sの速度で正回転している(図3中の実線c)。そして、ドラム8がスピンドル軸3に近づいているので、ドラム8には5000Nの荷重がかかるようになる(図3中の実線d)。
【0025】
ドラム8の模擬路面8aをタイヤTのトレッド面に接触させて、正回転時のユニフォミティ測定を行う(図3中の2〜6秒間)。
このとき、ドラム8は、前進し終えているので、移動速度が0mm/s(図3中の実線b)で、ドラム8の模擬路面8aとスピンドル軸3の軸中心の距離が約295mmである(図3中の実線a)。
【0026】
また、スピンドル軸3も約360deg/sの速度で正回転し(図3中の実線c)、ドラム8に、5000Nの荷重がかかっている(図3中の実線d)。
逆回転時のユニフォミティ測定を行うために、ドラム8をスピンドル軸3側から後退させて、ドラム8の模擬路面8aをタイヤTのトレッド面から離間させる(図3中の6〜7秒間)。
【0027】
このとき、ドラム8は、50mm/sの移動速度(図3中の実線b)で後退している。ドラム8の模擬路面8aとスピンドル軸3の軸中心の距離は、約295mmから約330mmに離れている(図3中の実線a)。一方、スピンドル軸3は、約360deg/sの速度から減速し、開始から約7秒経過したあたりで回転が一瞬停止するようになる(図3中の実線c)。そして、ドラム8がスピンドル軸3から離れているので、ドラム8には荷重がかかっていない(図3中の実線d)。
【0028】
続いて、逆回転時のユニフォミティ測定を行うために、ドラム8をスピンドル軸3側に前進させて、ドラム8の模擬路面8aをタイヤTのトレッド面に接触させる(図3中の7〜8秒間)。
このとき、ドラム8は、−50mm/sの移動速度(図3中の実線b)で前進している。ドラム8の模擬路面8aとスピンドル軸3の軸中心の距離は、約330mmから約295mmに近づいている(図3中の実線a)。一方、スピンドル軸3は、回転速度が正回転から瞬間的に0(ゼロ)になった後、約360deg/sの速度で逆回転するようになる(図3中の実線c)。そして、ドラム8がスピンドル軸3に近づいているので、ドラム8には5000Nの荷重がかかるようになる(図3中の実線d)。
【0029】
ドラム8の模擬路面8aをタイヤTのトレッド面に接触させて、逆回転時のユニフォミティ測定を行う(図3中の8〜11.5秒間)。
このとき、ドラム8は、前進し終えているので、移動速度が0mm/s(図3中の実線b)で、ドラム8の模擬路面8aとスピンドル軸3の軸中心の距離が約295mmである(図3中の実線a)。
【0030】
また、スピンドル軸3も約−360deg/sの速度で逆回転し(図3中の実線c)、ドラム8に、5000Nの荷重がかかっている(図3中の実線d)。
そして、図4を参照して、タイヤリロードの同期方法について、詳細に述べる。
図4は、図3の拡大図(グレースケール部分)であって、ユニフォミティ測定中のタイヤTを正回転から逆回転へと切り換えたときのスピンドル及びドラム機構7の動作パターンを示した図である。
【0031】
図4に示す実線aはドラム8の位置を示し、実線bはドラム8の移動速度を示している。また、図4に示す実線cはスピンドル軸3の回転速度を示し、実線dはドラム8にかかる荷重を示している。
図4を参照すると、スピンドル軸3(実線c)は、ドラム8が所定位置(実線a)にまで後退したときに、減速を開始する(X点)。このとき、ドラム8は一定速度で後退している(実線b)。そして、ドラム8が所定位置よりさらに後退すると、移動しているドラム8は、減速し始めるようになる(Y点)。このドラム8の移動は、タイヤTのトレッド面とドラム8の模擬路面8aとが非接触状態となった時点で、一瞬停止するようになる(Z点:リロード位置)。
【0032】
一方、ドラム8にかかる荷重は、ドラム8が一定速度で後退するのに伴い、減少するようになる(実線d)。
ここで、タイヤリロードを同期させるにあたっては、図4において、ドラム8を後退させて瞬間的に停止する点(Z点)、すなわちドラム8にかかる荷重(実線d)が0(ゼロ)となる点(Z点垂線(破線)と実線dが交差するN点)に、スピンドル軸3の回転速度を示す実線c(回転速度が0となる点)を通過させる、すなわちN点に実線cを一致させる。
【0033】
なお、ドラム8にかかる荷重が0(ゼロ)となる範囲(範囲M)内で、スピンドル軸3が回転停止する(範囲M内に実線cが通過する)ように制御すると、タイヤリロードの同期が成功したこととなる。
次に、ドラムリロードの同期方法に必要とされる、スピンドル軸3の減速開始点、すなわちスピンドル軸減速ドラム位置(X点)の算出方法を以下に示す。
【0034】
(1)スピンドル軸3の減速時間を求める。
スピンドル軸3の減速時間(s)=スピンドルの回転速度(deg/s)÷スピンドル軸3の減速度(deg/s
(2)ドラム8の移動減速時間を求める。
ドラム8の移動減速時間(s)=ドラム8の移動速度(mm/s)÷ドラム8の移動減速度(mm/s
(3)スピンドル軸3の減速開始後、ドラム8が一定速度で後退する時間を求める。
【0035】
ドラム8の一定速後退時間(s)=スピンドル軸の減速時間(s)−ドラム8の移動減速時間(s)
(4)ドラム8の一定速後退時間のドラム8の移動距離を求める。
ドラム8の一定速移動距離(mm)=ドラム8の移動速度(mm/s)×ドラム8の一定速後退時間(s)
(5)ドラム8の移動減速時間のドラム8の移動距離を求める。
【0036】
ドラム8の減速移動距離(mm)=ドラム8の移動速度(mm/s)×ドラム8の移動減速時間(s)÷2
(6)ドラム8がリロード位置から何mm手前でスピンドル軸3が減速するか計算する。
スピンドル軸減速ドラム距離(mm)=ドラム8の一定速移動距離(mm)+ドラム8の減速移動距離(mm)
(7)ドラム8がどの位置まで下がったらスピンドルが減速するか計算する。
【0037】
スピンドル軸減速ドラム8位置(mm)=ドラム8リロード位置(mm)−スピンドル軸減速ドラム8距離(mm)
このような算出過程を経ることで、正確にスピンドル軸減速ドラム8位置(X点)を算出することができる。
以上述べたように、本発明のタイヤユニフォミティ試験機1及びタイヤユニフォミティ測定方法によれば、逆回転時のタイヤユニフォミティ測定を行う際に、ドラム8の移動位置とスピンドル軸3の回転を制御コントローラで制御することで、ドラム8の模擬路面8aがタイヤTのトレッド面から最も離れるタイミングと、スピンドル軸3(タイヤT)の回転が0となるときのタイミングを同期させることができる。
【0038】
また、タイヤTとドラム8の模擬路面8aが非接触状態になったとき、慣性で回転し続けているドラム8に残っている回転運動の運動エネルギーと、タイヤTがドラム8に再接触した後にドラム8が持つ回転運動の運動エネルギーの差を最小にすることができると共に、タイヤTとドラム8が再接触する時にタイヤTがドラム8から受ける回転運動の運動エネルギーを最小にすることができる。
【0039】
さらに、タイヤTとドラム8が再接触する時のタイヤTとリム4の「ズレ」を最小限に抑えることができるので、タイヤTとリム4の「ズレ」を最小限に抑えることで、LFVやコニシティの計測精度を向上させることが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0040】
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0041】
1 タイヤユニフォミティ試験機
2 フレーム本体
3 スピンドル軸
4 リム
5 スピンドル軸回転モータ
6 タイミングベルト
7 ドラム機構
8 ドラム
8a 模擬路面
9 スクリュジャッキ
10 ドラム移動モータ
11 空気圧回路
T タイヤ
図1
図2
図3
図4