(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁材料で形成された基体と、前記基体に固定された複数の固定導体と、前記基体に形成された複数の摺動部と、前記摺動部に設けられた固定接点と、それぞれの前記摺動部を摺動する可動接点を複数支持する切換え可動部と、操作体によって動作させられる操作導体板とを有する切換え装置において、
前記切換え可動部は、可動絶縁体に、支点導体板と前記支点導体板と分離された独立導体板とが固定され、前記支点導体板と前記独立導体板のそれぞれに前記可動接点が設けられ、
前記支点導体板と一部の前記固定導体との当接部を第1の支点として、前記切換え可動部が揺動自在に支持され、前記操作導体板の基部は、他の前記固定導体との当接部を第2の支点として揺動自在に支持されて、前記第1の支点と前記第2の支点とが互いに離れた位置に配置され、前記操作導体板の先部が前記第1の支点側に位置し、前記先部側が前記操作体によって押圧操作可能とされており、
前記第1の支点と前記第2の支点とが対向する方向に沿って延びる複数の引っ張りコイルばねが設けられ、それぞれ前記引っ張りコイルばねの一方の端部が前記操作導体板の前記先部側に掛止され、他方の端部が前記独立導体板に掛止され、前記操作体によって前記操作導体板が揺動させられたときに、その揺動動作に伴って、前記切換え可動部が複数の前記引っ張りコイルばねの付勢力によってスナップアクション動作すると共に、前記可動接点が前記摺動部を摺動し、
前記操作導体板と前記独立導体板とが、複数の前記引っ張りコイルばねを介して導通されており、
前記引っ張りコイルばねと前記独立導体板との掛止部(D1)と前記第1の支点(S1)との間に、前記可動接点と前記摺動部との当接部が位置していることを特徴とする切換え装置。
前記摺動部と前記可動接点との当接部が、前記引っ張りコイルばねの中心線が延びる方向と直交する方向に間隔を空けて配置されており、それぞれの引っ張りコイルばねの中心線が、隣り合う前記当接部の中間に位置している請求項1記載の切換え装置。
前記切換え可動部では、前記独立導体板の両側に前記支点導体板が配置されており、前記引っ張りコイルばねが前記支点導体板の間に配置されている請求項1または2記載の切換え装置。
前記引っ張りコイルばねと前記操作導体板との掛止部(D2)から前記第2の支点(S2)までの距離(La)が、前記引っ張りコイルばねと前記独立導体板との掛止部(D1)から第1の支点(S1)までの距離(Lb)よりも長い請求項1ないし3のいずれかに記載の切換え装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたスイッチ装置は、操作部材を押圧操作することで、複数の可動接点を同時に動作させて、複数の可動接点と複数の固定接点との摺動切換えを迅速に行うことができる点で優れている。しかし、以下に示す課題が未解決である。
【0008】
特許文献1に記載されたスイッチ装置は、第1駆動部材と第2駆動部材とが1本の引っ張りばねで連結されている。そのため、第2の駆動部材の揺動によって、複数の可動接点を有する第1駆動部材を速やかに且つ確実に動作させるためには、引っ張りばねのばね定数を高くする必要がある。しかし、ばね定数を高くすると、引っ張りばねと第1駆動部材との掛止部ならびに引っ張りばねと第2駆動部材との掛止部で摩耗が発生しやすくなる。引っ張りばねは中央の可動接点への通電路としても機能しているため、操作部材による押圧操作が繰り返されて前記摩耗が激しくなると、通電路の信頼性を損ねることになる。
【0009】
特許文献1に記載されたスイッチ装置は、可動接点と固定接点との当接部が、引っ張りばねと第1駆動部材との掛止部よりも、第1駆動部材の支点から離れた位置にある。そのため、引っ張りばねによって第1駆動部材を揺動させるときに、可動接点と固定接点とを摺動させるのに必要な駆動力が大きくなり、引っ張りばねのばね定数をかなり高くしないと、動作の安定性を確保することが難しい。その結果、さらに引っ張りばねと各駆動部材との掛止部が摩耗しやすくなる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、安定した動作を実現するとともに、引っ張りコイルばねを介して通電の信頼性を向上できる切換え装置を提供することを目的としている。
【0011】
また、本発明は、操作体を押圧操作したときに動作力を効率的に伝達できるようにして、動作の信頼性を高め、動作負荷を低減できるようにした切換え装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、絶縁材料で形成された基体と、前記基体に固定された複数の固定導体と、前記基体に形成された複数の摺動部と、前記摺動部に設けられた固定接点と、それぞれの前記摺動部を摺動する可動接点を複数支持する切換え可動部と、操作体によって動作させられる操作導体板とを有する切換え装置において、
前記切換え可動部は、可動絶縁体に、支点導体板と前記支点導体板と分離された独立導体板とが固定され、前記支点導体板と前記独立導体板のそれぞれに前記可動接点が設けられ、
前記支点導体板と一部の前記固定導体との当接部を第1の支点として、前記切換え可動部が揺動自在に支持され、前記操作導体板の基部は、他の前記固定導体との当接部を第2の支点として揺動自在に支持されて、前記第1の支点と前記第2の支点とが互いに離れた位置に配置され、前記操作導体板の先部が前記第1の支点側に位置し、前記先部側が前記操作体によって押圧操作可能とされており、
前記第1の支点と前記第2の支点とが対向する方向に沿って延びる複数の引っ張りコイルばねが設けられ、それぞれ前記引っ張りコイルばねの一方の端部が前記操作導体板の前記先部側に掛止され、他方の端部が前記独立導体板に掛止され、前記操作体によって前記操作導体板が揺動させられたときに、その揺動動作に伴って、前記切換え可動部が複数の前記引っ張りコイルばねの付勢力によってスナップアクション動作すると共に、前記可動接点が前記摺動部を摺動し、
前記操作導体板と前記独立導体板とが、複数の前記引っ張りコイルばねを介して導通されて
おり、
前記引っ張りコイルばねと前記独立導体板との掛止部(D1)と前記第1の支点(S1)との間に、前記可動接点と前記摺動部との当接部が位置していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の切換え装置は、切換え可動部に設けられた独立導体板と操作導体板との間に複数の引っ張りコイルばねが掛けられているため、動作力を複数の引っ張りコイルばねに分担させることができる。そのため、個々の引っ張りコイルばねのばね定数を低下させることができ、引っ張りコイルばねと独立導体板との掛止部ならびに操作導体板との掛止部での掛止負荷を低減でき掛止部の摩耗も減少させることができる。よって、引っ張りコイルばねによって並列の複数の通電路を安定して構成することができる。
【0014】
本発明の切換え装置は、前記摺動部と前記可動接点との当接部が、前記引っ張りコイルばねの中心線が延びる方向と直交する方向に間隔を空けて配置されており、それぞれの引っ張りコイルばねの中心線が、隣り合う前記当接部の中間に位置している。
【0015】
例えば、本発明の切換え装置は、前記切換え可動部では、前記独立導体板の両側に前記支点導体板が配置されており、前記引っ張りコイルばねが前記支点導体板の間に配置されている。
【0016】
上記構成では、引っ張りコイルばねから独立導体板に与える駆動力の作用点が、可動接点と摺動部とが摺動する複数の当接部の中間に位置することになり、前記当接部における負荷と引っ張りコイルばねの付勢力の作用点とをバランスよく配置することができる。その結果、切換え可動部を安定した姿勢で動作させることができ、全ての可動接点を同時に摺動部に対して摺動させることが可能になる。
【0018】
さらに本発明の切換え装置は、前記引っ張りコイルばねと前記操作導体板との掛止部(D2)から前記第2の支点(S2)までの距離(La)が、前記引っ張りコイルばねと前記独立導体板との掛止部(D1)から第1の支点(S1)までの距離(Lb)よりも長いことが好ましい。
【0019】
上記構成の切換え装置では、操作導体板を比較的軽い負荷で動作させることができ、しかも引っ張りコイルばねで切換え可動体を動作させるときの力の伝達効率が良くなり、可動接点を迅速に動作させることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の切換え装置は、複数の引っ張りコイルばねを使用したことで、切換え可動体を安定した姿勢で動作させることができ、複数の引っ張りコイルで形成される並列の通電路の信頼性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の切換え装置は、引っ張りコイルばねによって、複数の可動接点を迅速に安定させて動作させることができ、さらに操作体を押圧操作するときの操作負荷を低減させることも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の実施の形態の切換え装置1の全体斜視図であり、
図2はその分解斜視図である。なお、
図2においては、蓋体3を省略している。
【0024】
切換え装置1は、複数の接点を同時に切換えるものであり、例えば車両用など、高い信頼性が要求される電子回路に使用される。
【0025】
<切換え装置の構造>
図1と
図2に示すように、切換え装置1は、ケース2と蓋体3を有している。ケース2は、絶縁性の合成樹脂材料で形成されており、底部2aと4つの側板部2bを有し上方が開口した直方体形状である。蓋体3は絶縁性の合成樹脂材料で形成されて、ケース2の開口部を塞いで前記ケース2に溶着等の手段で固定される。
【0026】
図3と
図4に切換え装置1の主要動作部が示されている。
図4には、
図3に示す主要動作部のうちの導電性の金属板で形成された通電路の構造のみが示されている。また、
図10には、各通電路で構成される切換え回路の回路図が示されている。
【0027】
図2に示すケース2の底部2aには3カ所に開口部2cが形成されており、それぞれの開口部2cに、側方基体10a,10bと中央基体10cが固定されている。基体10a,10b,10cは絶縁性の合成樹脂材料で形成されている。
【0028】
図2、
図3、
図4に示すように、側方基体10aには第1の固定導体11aが保持され、他方の側方基体10bにも第1の固定導体11bが保持されている。第1の固定導体11aには端子部11cが一体に形成され、端子部11cが側方基体10aから左側方へ延び出ている。第1の固定導体11bにも端子部11dが一体に形成され、端子部11dが側方基体10bから右側方へ延び出ている。
【0029】
側方基体10aには、第1の固定導体11aと間隔を空けた位置に第2の固定導体12aが保持されており、第2の固定導体12aと一体の端子部12cが側方基体10aから左側方へ延び出ている。同様に側方基体10bにも、第2の固定導体12bが保持されており、第2の固定導体12bと一体の端子部12dが側方基板10bから右側方へ延び出ている。
【0030】
側方基体10aには、上部固定接点13aと下部固定接点14aが上下に間隔を空けて保持されている。上部固定接点13aには端子部13cが一体に形成され、下部固定接点14aには端子部14cが一体に形成されている。端子部13c,14cは、側方基板10aから左側方へ延び出ている。側方基板10bには上部固定接点13bと下部固定接点14bが保持されている。上部固定接点13bに端子部13dが一体に形成され、下部固定接点14bに端子部14dが一体に形成されている。端子部13d,14dは、側方基体10bから右側方へ延び出ている。なお、
図3と
図4には、下部固定接点14bと一体の端子部14dが現れておらず、端子部14dは
図10の回路図に示されている。
【0031】
中央基体10cには上部固定接点15aと下部固定接点16aが保持されている。上部固定接点15aには端子部15bが一体に形成されており、端子部15bは中央基体10cから手前側に延び出ている。下部固定接点16aには端子部16bが一体に形成されており、端子部16bは、中央基体10cから奥方向へ延び出ている。
【0032】
切換え装置1の製造方法では、まず、固定導体11a,12aならびに固定接点13a,14aが金型内に配置され金型内に溶融樹脂が射出され、いわゆるインサート成形法で側方基体10aが形成される。同様にして、固定導体11b,12bならびに固定接点13b,14bを保持する側方基体10bがインサート成形法で形成され、また、固定接点15a,16aを有する中央基体10cがインサート成形法で形成される。その後、固定導体と固定接点とを保持した基体10a,10b,10cが金型内に設置され、金型内に溶融樹脂が射出され、いわゆる2色成形法によってケース2が形成される。そのため、ケース2の底部2aの3か所の開口部2cに、基体10a,10b,10cが一体化されて固定されている。なお、一体化された底部2aと基体10a,10b,10cとを含む構成を基台と呼ぶ。
【0033】
図3に示すように、上部固定接点13aと下部固定接点14aとの間に、絶縁性の合成樹脂材料によって側方基体10aと一体に形成された中間絶縁部10dが介在しており、上部固定接点13aと下部固定接点14aならびに中間絶縁部10dによって側方摺動部17aが構成されている。側方摺動部17aでは、上部固定接点13aと下部固定接点14aならびに中間絶縁部10dが同じ幅寸法で形成されている。同様にして、側方基体10bでは、上部固定接点13bと下部固定接点14bならびに中間絶縁部10eによって側方摺動部17bが形成されている。また、中央基体10cでは、上部固定接点15aと下部固定接点16aならびに中間絶縁部10fによって、中央摺動部17cが構成されている。
【0034】
図2と
図3に示すように、主要動作部には切換え可動部20が設けられている。切換え可動部20は、一対の支点導体板21,22と、両支点導体板21,22の間に位置する独立導体板23とを有している。3枚の導体板21,22,23は導電性の金属板で形成されており、それぞれが可動絶縁体27に保持されている。切換え可動部20の製造工程では、3枚の導体板21,22,23が金型内に設置されて金型内に溶融樹脂が射出され、インサート成形法で可動絶縁体27が形成される。
【0035】
図3と
図4に示すように、支点導体板21には、図示手前側に可動端部21aが形成され、支点導体板22には、図示手前側に可動端部22aが形成されている。前記側方基体10aに保持されている第1の固定導体11aには、第1の支点支持部27aが形成され、側方基体10bに保持されている第1の固定導体11bに第1の支点支持部27bが形成されている。可動端部21aが第1の支点支持部27aに掛止され、可動端部22aが第1の支点支持部27bに掛止されており、切換え可動部20は、可動端部21a,22aと第1の支点支持部27a,27bとの当接部を第1の支点として、上下に揺動動作自在に支持されている。
【0036】
図4に示すように、支点導体板21の自由端側の下面に、側方可動接点24が固定されている。側方可動接点24は、弾性変形可能な導電性金属板で形成されており、支点導体板21に電気的に導通している。側方可動接点24には、一対の挟持摺動片24a,24aが左右に対向して設けられており、
図3に示す側方摺動部17aが挟持摺動片24a,24aで挟まれている。同様に、支点導体板22の自由端側の下面に側方可動接点25が導通されて固定されている。側方可動接点25に一対の挟持摺動片25a,25aが設けられ、側方摺動部17bが挟持摺動片25a,25aで挟まれている。同様にして、独立導体板23の下面に中央可動接点26が導通されて固定されている。中央可動接点26に一対の挟持摺動片26a,26aが設けられ、中央摺動部17cが挟持摺動片26a,26aで挟まれている。
【0037】
図2、
図3、
図4に示すように、主要動作部では、基体10a,10b,10cと切換え可動部20との間に操作導体板30が設けられている。操作導体板30は導電性の金属板から形成されている。操作導体板30の一端部である基部側には、一対の可動端部31a,31bが形成されている。
図3と
図4に示すように、側方基体10aに保持されている第2の固定導体12aに第2の支点支持部35aが形成され、側方基体10bに保持されている第2の固定導体12bに第2の支点支持部35bが形成されている。可動端部31aが第2の支点支持部35aに掛止され、可動端部31bが第2の支点支持部35bに掛止されており、操作導体板30は、可動端部31a,31bと第2の支点支持部35a,35bとの当接部を第2の支点として、上下方向へ揺動動作自在に支持されている。
【0038】
可動端部21a,22aと第1の支点支持部27a,27bとの当接部である第1の支点と、可動端部31a,31bと第2の支点支持部35a,35bとの当接部である第2の支点は、
図5において左右に離れた位置に配置されており、切換え可動部20の自由端と、操作導体板30の自由端は、互いに逆方向に延び出ている。すなわち、第1の支点と第2の支点とは、基体10a,10b,10cの延設方向(長手方向)において、互いに離れた位置に配置されている。
【0039】
図3に示すように、切換え可動部20の自由端側では、独立導体板23に一対の掛止穴23a,23bが開口しており、操作導体板30の他端部である自由端側には、一対の掛止穴32a,32bが開口している。主要動作部に一対の引っ張りコイルばね41,42が設けられている。引っ張りコイルばね41の一方のフック部41aは掛止穴23aに掛けられ、他方のフック部41bは掛止穴32aに掛けられている。引っ張りコイルばね42の一方のフック部42aは掛止穴23bに掛けられ、他方のフック部42bは掛止穴32bに掛けられている。
【0040】
引っ張りコイルばね41,42は導電性のばね線材で形成されており、この引っ張りコイルばね41,42によって、切換え可動部20の自由端側と操作導体板30の自由端側とが互いに引かれているとともに、引っ張りコイルばね41,42を介して、独立導体板23と操作導体板30とが電気的に導通されている。
【0041】
操作導体板30の自由端側に位置する先部には操作片33が折り曲げられている。
図1に示すように、蓋体3には摺動穴3aが形成されており、操作体50が摺動穴3aに摺動自在に支持されている。なお正確には、操作体50はケース2内に設けられた図示しない案内部に上下動可能に支持されている。
図5に示すように、ケース2の内部では、操作体50の下端部に押圧部51が形成されており、操作体50がケース2の内部に向けており下げられると、押圧部51によって操作片33が下向きに押される。
【0042】
図4に示すように、切換え可動部20に設けられた独立導体板23には、引っ張りコイルばね41,42の引っ張り力が作用する方向と交差する方向(直交する方向)に保持片23c,23dが一体に形成されている。
図3に示すように、保持片23c,23dは可動絶縁体27に保持されているとともに、その先部が可動絶縁体27から左右へ突出している。独立導体板23には常に引っ張りコイルばね41,42の引っ張り力が作用しているが、保持片23c,23dが可動絶縁体27に保持されているため、独立導体板23が可動絶縁体27から外れるような不具合が生じにくくなっている。
【0043】
<組立作業>
切換え装置1の組立作業について説明する。
【0044】
図2と
図5に示す側方基体10a,10bと中央基体10cは、2色成形法によって、ケース2の底部2aに一体化されて固定されている。
【0045】
引っ張りコイルばね41,42で連結された操作導体板30と切換え可動部20とがケース2の内部に組み込まれる。このとき、操作導体板30の可動端部31a,31bが、ケース2の底部2a(基台)側に位置する第2の固定導体12a,12bに形成された第2の支点支持部35a,35bに掛止される。また、切換え可動部20の支点導体板21,22の可動端部21a,22aが、第1の固定導体11a,11bに形成された第1の支点支持部27a,27bに掛止される。
【0046】
ケース2の内部に、引っ張りコイルばね41,42で連結された操作導体板30と切換え可動部20が組み込まれると、
図5に示すように、引っ張りコイルばね41,42の引っ張り力によって、操作導体板30が反時計方向(α1方向)へ跳ね上げられようとし、切換え可動部20が時計方向(β1方向)へ跳ね上げられようとする。しかし、操作導体板30において支点側で下向きに折り曲げられた規制片37が、ケース2の底部2aに形成された図示しないストッパ部に当接することで、操作導体板30が反時計方向(α1方向)へ跳ね上げられるのが規制される。また、可動絶縁体27から下向きに突出する規制突部28が、側方基体10a,10bに形成されたストッパ部10gに当たって、切換え可動部20が時計方向(β1方向)へ跳ね上げられるのが規制される。
【0047】
したがって、ケース2の内部に操作導体板30と切換え可動部20とが組み込まれた状態で、操作体50と蓋体3とをケース2に組み付ける作業を容易に行うことができる。
【0048】
<動作説明>
次に、切換え装置1の動作を説明する。
【0049】
図6(A)は、操作体50に操作力が作用していない自由状態の主要動作部において、基台(基体10a,10b,10c、底部2a)と可動絶縁体27とを削除した側面図であり、
図6(B)は、自由状態での各部の動作姿勢を示す模式図である。
【0050】
図6ないし
図9では、支点導体板21,22に形成された可動端部21a,22aと、第1の固定導体11a,11bに形成された第1の支点支持部27a,27bとの当接部が、第1の支点S1として示され、操作導体板30に形成された可動端部31a,31bと、第2の固定導体12a,12bに形成された第2の支点支持部35a,35bとの当接部が、第2の支点S2として示されている。また、引っ張りコイルばね41,42のフック部41a,42aと、切換え可動部20に設けられた独立導体板23との掛止部が、第1の付勢力作用点D1として示され、引っ張りコイルばね41,42のフック部41b,42bと、操作導体板30の自由端との掛止部が、第2の付勢力作用点D2として示されている。
【0051】
図6(A)(B)に示す自由状態では、第1の付勢力作用点D1に作用する引っ張りコイルばね41,42の付勢力F1aと、第2の付勢力作用点D2に作用する引っ張りコイルばね41,42の付勢力F2aとの作用線が、第1の支点S1よりも上方に位置している。したがって、操作導体板30は第2の支点S2を中心として反時計方向(α1方向)へ回動させられ、切換え可動部20は第1の支点S1を中心として時計方向(β1方向)へ回動させられている。なお、切換え可動部20の時計方向へのこの回動は、切換え可動部20の図示左側の一部が、蓋体3の天井面に当接することで制限されている。
【0052】
よって、切換え可動部20に設けられた側方可動接点24の挟持摺動片24aが、側方摺動部17aにおいて上部固定接点13aに接触している。同様に、側方可動接点25の挟持摺動片25aが、側方摺動部17bにおいて上部固定接点13bに接触している。また、中央可動接点26の挟持摺動片26aが、中央摺動部17cにおいて上部固定接点15aに導通している。
このときの切換え装置1の回路の導通状態は、
図10に示す通りである。
【0053】
(1)第1の固定導体11aは、第1の支点支持部27aと可動端部21aとの掛止部と、支点導体板21、および側方可動接点24を介して、上部固定接点13aに導通しており、端子部11cと端子部13cとが導通状態である。
【0054】
(2)第1の固定導体11bは、第1の支点支持部27bと可動端部22aとの掛止部と、支点導体板22、および側方可動接点25を介して、上部固定接点13bに導通しており、端子部11dと端子部13dとが導通状態である。
【0055】
(3)第2の固定導体12a,12bは、第2の支点支持部35a,35bと可動端部31a,31bとの掛止部と、操作導体板30と、2つの引っ張りコイルばね41,42と、独立導体板23、および中央可動接点26を介して、上部固定接点15aに導通している。よって端子部12cと端子部12dおよび端子部15bが互いに導通状態である。
【0056】
図7(A)は、操作体50が押されている途中の状態における基台と可動絶縁体27とを削除した側面図であり、
図7(B)は、途中状態での各部の動作姿勢を示す模式図である。
図8(A)は、接点が切り換わった時点における基台と可動絶縁体27とを削除した側面図であり、
図8(B)は、接点が切り換わった時点の各部の動作姿勢を示す模式図である。
【0057】
操作体50に下向きの操作力Pが作用し、操作体50がケース2の内部に向けて
図7(A)の位置まで押し下げられると、操作導体板30が時計方向(α2方向)へ回動させられ、
図7(B)に示すように、第2の付勢力作用点D2が、第1の支点S1を超えてそれよりも下側へ移動する。第1の付勢力作用点D1と第2の付勢力作用点D2とを結ぶ付勢力作用線が、第1の支点S1よりも下側へ移動するため、この時点で、切換え可動部20に反時計方向(β2方向)のモーメントが作用し始める。
【0058】
さらに、操作体50が所定の位置まで押し下げられ、引っ張りコイルばね41,42から切換え可動部20に与えられる反時計方向(β2方向)のモーメントが、各可動接点24,25,26と上部固定接点13a,13b,15aとの静摩擦力による抵抗モーメントよりも大きくなると、
図8(A)(B)に示すように、切換え可動部20が一瞬のうちに反時計方向(β2方向)へ回動する。すなわち、切換え可動部20が、引っ張りコイルばね41,42の付勢力によってスナップアクション動作をする。このとき、側方可動接点24の挟持摺動片24aが側方摺動部17aを摺動して下部固定接点14aに接触し、同時に側方可動接点25の挟持摺動片25aが側方摺動部17bを摺動して下部固定接点14bに接触する。さらに、中央可動接点26の挟持摺動片26aが中央摺動部17cを摺動して下部固定接点16aに接触する。
【0059】
その結果、3か所の全ての摺動部17a,17b,17cにおいて接点が切換えられ、
図10に示す回路図において、端子部11cと端子部14cとが導通状態となり、端子部11dと端子部14dとが導通状態となる。また、端子部12c,12dと端子部16bとが導通状態となる。
【0060】
図9(A)は、操作体50が動作死点まで押し下げられた状態における基台と可動絶縁体27を削除した側面図であり、
図9(B)は、そのときの各部の動作姿勢を示す模式図である。
図9(A)(B)の時点で、切換え可動部20に作用するβ2方向のモーメントが最大になる。よって、操作体50が
図9(A)(B)の位置まで押し下げられる間に、切換え可動部20が確実に回動して、接点が切換えられるようになる。
【0061】
図9(A)(B)では、切換え可動部20がほぼ水平姿勢まで回動し、ケース2に設けられたストッパ部に当たって、それ以上は反時計方向(β2方向)へ回動できなくなる。このとき、第2の付勢力作用点D2が第1の支点S1よりも下方へかなり離れた位置に移動するため、引っ張りコイルばね41,42の引っ張り力(F1b,F2bやF1c,F2c)により、操作導体板30に対して反時計方向(α1方向)の大きなモーメントが作用する。このため、操作体50に与えられている操作力Pが除去されると、操作導体板30が第2の支点S2を中心として反時計方向(α1方向)へ回動する。
【0062】
操作導体板30が、
図6(A)(B)に示す初期姿勢まで戻る途中で、引っ張りコイルばね41,42の付勢力によって切換え可動部20に与えられる時計方向(β1方向)のモーメントが、各可動接点24,25,26と下部固定接点14a,14b,16aとの静摩擦力による抵抗モーメントよりも大きくなると、切換え可動部20が時計方向(β1)へ瞬時に回動し、各可動接点24,25,26が、上部固定接点13a,13b,15aと接触し、回路が
図10に示す初期状態に復帰する。
【0063】
<実施の形態の奏する作用効果>
上記実施の形態では、切換え可動部20に設けられた独立導体板23と、操作導体板30とが2本の引っ張りコイルばね41,42で連結されている。切換え可動部20の自由端と独立導体板23の自由端とを互いに引き付けるための付勢力が、複数本(実施の形態では2本)の引っ張りコイルばねで分担して発揮されるため、個々の引っ張りコイルばねのばね定数を過大にすることがなくなる。そのため、フック部41a,42aと掛止穴23a,23bとの掛止部の摩擦による負荷と、フック部41b,42bと掛止穴32a,32bとの掛止部の摩擦による負荷とを低減できるようになり、フック部と掛止穴のそれぞれの接触部の摩耗が生じにくくなって、引っ張りコイルばね41,42を使用した通電路を安定した状態に設定できる。
【0064】
また、
図10の回路図に示すように、操作導体板30と独立導体板23との間に、導電体である引っ張りコイルばね41,42が並列に介在しているため、引っ張りコイルばね41,42を通電路として使用したときの直流抵抗も低減させることができる。
【0065】
さらに、2本の引っ張りコイルばね41,42から独立導体板23に作用する付勢力の作用点が、切換え可動部20の中心に対して左右に均等な位置に配置されている。さらに2本の引っ張りコイルばね41,42は、左右両側に位置する一対の支点導体板21,21の間に配置されている。そのため、切換え可動部20は、捻じり動作を生じにくく、第1の支点S1を中心として安定した姿勢で回動動作できるようになる。
【0066】
また、一方の引っ張りコイルばね41の中心線が、側方可動接点24と中央可動接点26との間に位置し、他方の引っ張りコイルばね42の中心線が、側方可動接点25と中央可動接点26との間に位置している。切換え可動部20は、引っ張りコイルばね41,42の弾性力によって回動させられるが、引っ張りコイルばね41,42の付勢力の作用線が、隣り合う可動接点の間に位置しているため、それぞれの可動接点24,25,26と各固定接点とを摺動させる力を、各可動接点に均一に与えることができ、複数の接点の切換え動作を安定させることができる。
【0067】
図8(B)に示すように、切換え可動部20の第1の支点S1から第1の付勢力作用点D1までの距離をL1とし、第1の支点S1から、各可動接点24,25,26の挟持摺動片24a,25a,26aまでの距離をL2とすると、L1はL2よりも長くなっている(L1>L2)。すなわち、挟持摺動片24a,25a,26aが、第1の支点S1と第1の付勢力作用点D1との間に位置している。そのため、第1の付勢力作用点D1に作用する駆動力に対し、挟持摺動片24a,25a,26aに作用する動作力を、L1/L2倍に増幅させることが可能になり、例えば
図8(A)(B)の状態で、切換え可動部20を反時計方向へ確実に回動させることが可能になる。
【0068】
図6(B)に示すように、操作導体板30の第2の支点S2と、第2の付勢力作用点D2までの長さLaが、切換え可動部20の第1の支点S1と第1の付勢力作用点D1との距離Lbよりも十分に長くなっている。したがって、
図6(B)に示す自由状態において、操作導体板30の水平方向に対する回動角度θ2を比較的小さくすることができる。よって、切換え可動部20を比較的大きな角度θ1で回動させて、挟持摺動片24a,25a,26aの摺動距離を長くした場合であっても、操作導体板30の動作角度θ2を小さくすることができる。そのため、操作体50を押圧するときに操作導体板30から受ける反力を比較的小さくでき、動作感触が良好となる。