(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極付ガイドワイヤは、コアワイヤと、前記コアワイヤの最先端部を除いた先端部分を少なくとも内包する樹脂シャフトと、金属シャフトを介してまたは介さずに前記樹脂シャフトの後端側に接続されたコネクタと、前記樹脂シャフトの外周に装着された複数のリング状電極と、前記リング状電極の各々に接続されるとともに、前記樹脂シャフトの内部に挿通されて前記コネクタに接続される複数の導線とを有することを特徴とする請求項1に記載のケミカルアブレーション装置。
前記電極付ガイドワイヤは、前記コアワイヤの最先端部において当該コアワイヤの軸方向に沿って装着されたコイルスプリングを有していることを特徴とする請求項2に記載のケミカルアブレーション装置。
前記電極付ガイドワイヤは、前記コアワイヤの最先端部における前記コイルスプリングの装着位置より先端側にも電極が装着されていることを特徴とする請求項3に記載のケミカルアブレーション装置。
前記バルーンカテーテルを構成する前記先端チップの外周に複数の側孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のケミカルアブレーション装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マーシャル静脈にエタノールを注入投与する方法として、親ガイディングカテーテルと、この親ガイディングカテーテルのルーメンに挿通可能な子ガイディングカテーテルと、マーシャル静脈における電位を測定(ペーシングおよび/またはマッピング)するための電極カテーテルと、先端チップからエタノールを噴射するバルーンカテーテルとを備えたケミカルアブレーションシステムを使用し、下記(1)〜(9)のような手順で実施する方法が考えられる。
【0005】
ここに、このシステムを構成する電極カテーテルおよびバルーンカテーテルは、ガイドワイヤに沿ってマーシャル静脈に挿入抜去されるものであり、このため、電極カテーテルはガイドワイヤルーメンが形成された筒状体であり、バルーンカテーテルは、ガイドワイヤルーメンおよび拡張ルーメンを有するオーバーザワイヤ型のダブルルーメン構造である。
【0006】
(1)親ガイディングカテーテルの挿入:
先ず、上大静脈からのアプローチにより、親ガイディングカテーテルの先端を冠状静脈洞の入口部にエンゲージする。
【0007】
(2)子ガイディングカテーテルの挿入:
次に、親ガイディングカテーテルのルーメンに子ガイディングカテーテルを挿入して、親ガイディングカテーテルの先端開口から延び出させた子ガイディングカテーテルの先端をマーシャル静脈の入口部の近傍に位置させる。
【0008】
(3)ガイドワイヤの挿入:
次に、子ガイディングカテーテルのルーメンにガイドワイヤを挿入し、子ガイディングカテーテルの先端開口から延び出させたガイドワイヤの先端部分をマーシャル静脈に挿入する。この操作は、通常、透視下でX線像を見ながら行われる。
【0009】
(4)電極カテーテルの挿入(電位測定):
次に、筒状の電極カテーテルを、ガイドワイヤに沿って子ガイディングカテーテルのルーメンに挿入し、電極が装着されている先端部分を、子ガイディングカテーテルの先端開口から延び出させてマーシャル静脈に挿入し、治療前の電位測定(ペーシング・マッピング)を行う。
【0010】
(5)電極カテーテルの抜去とバルーンカテーテルの挿入:
次に、ガイドワイヤに沿って電極カテーテルを抜去し、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルを、ガイドワイヤに沿って、子ガイディングカテーテルのルーメンに挿入し、子ガイディングカテーテルの先端開口から延び出させた先端部分をマーシャル静脈に挿入する。
【0011】
(6)ガイドワイヤの抜去とアブレーション治療:
次に、バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンに挿通された状態のガイドワイヤを抜去し、バルーンを拡張させた後に、バルーンカテーテルの後端に接続されている止血弁からガイドワイヤルーメンにエタノールを注入する。注入されたエタノールは、バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンおよび先端チップのルーメンを経由して、先端チップの開口からマーシャル静脈に注入され、これにより、ケミカルアブレーションが行われる。なお、ケミカルアブレーション(エタノールの注入)は、通常、毛細血管が位置している奥側から開始して、バルーンカテーテルを入口部が位置する方向に段階的に移動させながら複数回(3〜4回)に分けて行われる。
【0012】
(7)ガイドワイヤの再挿入:
次に、アブレーション治療時に抜去したガイドワイヤを、バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンに沿ってマーシャル静脈に再度挿入する。
【0013】
(8)バルーンカテーテルの抜去:
次に、再挿入したガイドワイヤに沿って、バルーンカテーテルを抜去する。
【0014】
(9)電極カテーテルの再挿入(電位測定):
次に、上記(4)で使用した電極カテーテルを、ガイドワイヤに沿って親ガイディングカテーテルのルーメンに挿入し、電極が装着されている先端部分をマーシャル静脈に再度挿入して治療後の電位測定(ペーシング・マッピング)を行う。
【0015】
ここに、電位測定の結果、アブレーションが不十分であると判断された場合には、上記(5)〜(9)の操作を繰り返す。
【0016】
しかしながら、上記のようなケミカルアブレーションシステムを使用して行われる手技(治療前後の電位測定を含むアブレーション治療)はきわめて煩雑である。
【0017】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、治療前後の電位測定を含むケミカルアブレーション治療を簡便に行うことのできるケミカルアブレーション装置およびケミカルアブレーションシステムを提供することにある。
本発明の他の目的は、マーシャル静脈へのエタノール注入法に係る手技を簡便に行うことのできるケミカルブレーション装置およびケミカルアブレーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のケミカルアブレーション装置は、心内電位を測定可能な電極付ガイドワイヤと;
前記電極付ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンを有するインナーチューブと、前記インナーチューブの外側に配置されて拡張ルーメンを形成するアウターチューブと、前記アウターチューブの先端にその後端が装着されて前記インナーチューブの外側に配置されたバルーンと、前記インナーチューブに連続して、前記バルーンの先端より延び出た位置にある先端チップとを有するオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルと;
前記バルーンカテーテルの後端側に接続され、前記バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンと連通するガイドワイヤポートと、前記バルーンカテーテルの拡張ルーメンと連通する拡張ポートとを有するY字コネクタと;
前記Y字コネクタのガイドワイヤポートに接続され、前記バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンにアブレーション用の薬液を供給するための側注チューブを備えた止血弁とを備えてなり;
前記バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンに供給された薬液を、前記先端チップの開口から噴射することを特徴とする。
【0019】
このような構成のケミカルアブレーション装置によれば、これを構成する電極付ガイドワイヤが、従来の装置におけるガイドワイヤの機能と電極カテーテルの機能を兼ね備えているとともに、バルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンには、Y字コネクタのガイドワイヤポートに接続された止血弁に備えられた側注チューブから薬液が供給されるので、この薬液を電極付ガイドワイヤが挿通されているガイドワイヤルーメンおよび先端チップのルーメンを通して、先端チップの開口から目的部位に噴射することにより、電極付ガイドワイヤを体内に留置した状態で治療を行うことができ、治療後の電位測定を直ちに実施することができる。そして、測定電位から治療が不十分であると判断すれば、直ちに治療を再開することができる。
【0020】
従って、従来の装置において、治療前の電位測定のために挿入した電極カテーテルを、治療の際に抜去したり(上記の手順(5))、治療の際にガイドワイヤを抜去したり(上記の手順(6))、治療後の電位測定のために、ガイドワイヤを再挿入し、バルーンカテーテルを抜去し、電極カテーテルを再挿入したり(上記の手順(7)〜(9))するような煩雑な操作を行う必要はない。
【0021】
本発明のケミカルアブレーション装置において、前記電極付ガイドワイヤは、コアワイヤと、前記コアワイヤの最先端部を除いた先端部分を少なくとも内包する樹脂シャフトと、金属シャフトを介してまたは介さずに前記樹脂シャフトの後端側に接続されたコネクタと、前記樹脂シャフトの外周に装着された複数のリング状電極と、前記リング状電極の各々に接続されるとともに、前記樹脂シャフトの内部に挿通されて前記コネクタに接続される複数の導線とを有することが好ましい。
【0022】
更に、前記電極付ガイドワイヤは、前記コアワイヤの最先端部において当該コアワイヤの軸方向に沿って装着されたコイルスプリングを有していることが好ましい。
【0023】
更に、前記電極付ガイドワイヤは、前記コアワイヤの最先端部における前記コイルスプリングの装着位置より先端側にも電極が装着されていることが好ましい。
【0024】
更に、前記電極付ガイドワイヤは、前記コアワイヤの最先端部に装着されている前記電極の外径および前記コイルスプリングのコイル外径が何れも0.76mm以下であり、
前記樹脂シャフトの外径が0.89mm以下であることが好ましい。
【0025】
更に、前記バルーンカテーテルを構成する前記先端チップの開口径と、前記電極付ガイドワイヤを構成する前記樹脂シャフトの外径との差が0.05〜0.50mmであり、
前記先端チップの開口から前記樹脂シャフトの先端部分を延び出させた状態で、前記先端チップと前記樹脂シャフトとの間隙から前記薬液を噴射することが好ましい。
【0026】
本発明のケミカルアブレーション装置において、前記バルーンカテーテルを構成する前記先端チップの外周に複数の側孔が形成されていることが好ましい。
このような構成のケミカルアブレーション装置によれば、先端チップの開口より基端側に位置する部位に対して薬液を投与することができる。
【0027】
本発明のケミカルアブレーションシステムは、内径が1.9〜2.6mmの親ガイディングカテーテルと、前記親ガイディングカテーテルのルーメンに挿通可能で、内径が1.5〜2.2mmの子ガイディングカテーテルと、本発明のケミカルアブレーション装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明のケミカルアブレーション装置およびケミカルアブレーションシステムによれば、治療前後の電位測定を含むケミカルアブレーション治療、特に、マーシャル静脈へのエタノール注入法に係る手技を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
この実施形態のケミカルアブレーション装置は、コアワイヤ31と、コアワイヤ31の最先端部において軸方向に沿って装着されたコイルスプリング33と、コアワイヤ31の最先端部を除いた先端部分を内包する樹脂シャフト35と、樹脂シャフト35の後端側に接続された金属シャフト37と、金属シャフト37の後端側に接続されたコネクタ39と、コアワイヤ31の最先端部に装着された電極361,362と、樹脂シャフト35の外周に装着されたリング状電極363,364,365,366と、電極361〜366の各々に接続されるとともに、樹脂シャフト35および金属シャフト37の内部に挿通されてコネクタ39に接続される導線381〜386とを有する、心内電位を測定可能な電極付ガイドワイヤ30と;
電極付ガイドワイヤ30が挿通されるガイドワイヤルーメン415を有するインナーチューブ41と、インナーチューブ41の外側に配置されて拡張ルーメン435を形成するアウターチューブ43と、アウターチューブ43の先端にその後端が装着されてインナーチューブ41の外側に配置されたバルーン45と、インナーチューブ41に連続して、バルーン45の先端より延び出た位置にある先端チップ47とを有するオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテル40と;
バルーンカテーテル40の後端側に接続され、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415と連通するガイドワイヤポート51と、バルーンカテーテル40の拡張ルーメン435と連通する拡張ポート53とを有するY字コネクタ50と;
Y字コネクタ50のガイドワイヤポート51に接続され、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415にアブレーション用の薬液であるエタノールを供給するための側注チューブ65を備えた止血弁60とを備えてなり;
バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415に供給されたエタノールを当該ガイドワイヤルーメン415および先端チップ47のルーメンを通して、先端チップ47の開口から噴射する装置である。
【0031】
この実施形態のケミカルアブレーション装置は、電極付ガイドワイヤ30と、バルーンカテーテル40と、Y字コネクタ50と、止血弁60とを備えてなる。
【0032】
<電極付ガイドワイヤ30>
本実施形態のケミカルアブレーション装置を構成する電極付ガイドワイヤ30は、ガイドワイヤとして使用することができる細径の電極カテーテルである。
電極付ガイドワイヤ30は、コアワイヤ31と、コイルスプリング33と、樹脂シャフト35と、金属シャフト(ハイポチューブ)37と、コネクタ39と、電極361〜366と、導線381〜386とを有している。
なお、
図4〜
図5、
図6Bおよび
図6Dにおいて、341および342は、それぞれ、接着剤から構成されるリング状の絶縁部材である。
また、345は、樹脂材料から構成されるストレインリリーフである。
【0033】
電極付ガイドワイヤ30を構成するコアワイヤ31は、通常、先端側小径部311と、先端側小径部より外径の大きな基端側大径部312とを有している。
図5に示すように、本実施形態においては、先端側小径部311によって、コアワイヤ31の最先端部が構成されている。
なお、先端側小径部311と基端側大径部312との間に、軸方向に沿って外径が変化するテーパ部が形成されていてもよい。
コアワイヤ31の先端は、電極361(先端電極)の内部に挿入されてハンダ等により固定され、コアワイヤ31の基端は、例えば、金属シャフト37の基端に固定されている。
【0034】
コアワイヤ31の先端側小径部311の外径としては、例えば0.01〜0.15mm、好ましくは0.04〜0.08mmとされる。
また、コアワイヤ31の基端側大径部312の外径としては、例えば0.10〜0.20mm、好ましくは0.12〜0.16mmとされる。
【0035】
コアワイヤ31の構成材料としては、特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)、金、白金、アルミニウム、タングステン、タンタルまたはこれらの合金、Ni−Tiなどを挙げることができ、これら金属の表面は樹脂被覆されていてもよい。
ここに、コアワイヤ31の好適な構成材料としてステンレスを挙げることができる。
【0036】
コアワイヤ31の最先端部(先端側小径部311)には、当該コアワイヤ31の軸方向に沿って、コイルスプリング33が装着されている。
コイルスプリング33のコイル外径は0.76mm以下であることが好ましく、好適な一例を示せば0.36mm(0.014インチ)である。
コイルスプリング33の長さとしては、例えば5〜30mmとされ、好ましくは8〜15mmとされる。
コイルスプリング33の構成材料としても特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)などを挙げることができ、コイルスプリング33の表面は樹脂被覆されていてもよい。
【0037】
コイルスプリング33の先端は、絶縁部材342を形成する接着剤によってコアワイヤ31に固定され、コイルスプリング33の後端は、ストレインリリーフ345を形成する樹脂材料により、コアワイヤ31および樹脂シャフト35の先端に固定されている。
【0038】
上記のようなコアワイヤ31とコイルスプリング33との構造により、ガイドワイヤに要求される柔軟性、曲げ剛性、トルク伝達性を確保することができ、ガイドワイヤとしての操作性を満足することができる。
【0039】
コイルスプリング33が装着されている最先端部を除いたコアワイヤ31の先端部分(基端側大径部312)は、樹脂シャフト35により内包されている。
【0040】
電極付ガイドワイヤ30を構成する樹脂シャフト35は、中央ルーメン350と、その周囲に60°間隔で配列された6つのサブルーメン351〜356とを有するマルチルーメン構造体である。
【0041】
樹脂シャフト35において、中央ルーメン350およびサブルーメン351〜356は、例えば、低硬度のナイロンエラストマーからなるインナー部357に形成されている。 また、これらのルーメン350〜356を有するインナー部357の外周面は、例えば、高硬度のナイロンエラストマーからなるアウター部359によって被覆されている。
【0042】
樹脂シャフト35の外径としては、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415に挿入可能であり、樹脂シャフト35が挿入された状態においてもエタノールの流路(隙間)を確保する観点から0.89mm以下であることが好ましく、好適な一例を示せば0.64mm(0.025インチ)である。
樹脂シャフト35の長さとしては、例えば10〜40mmとされ、好ましくは15〜25mmとされる。
【0043】
樹脂シャフト35に形成されている中央ルーメン350の径は、例えば0.13〜0.20mmとされ、好ましくは0.15〜0.18mmとされる。
また、樹脂シャフト35に形成されているサブルーメン351〜356の径は、例えば0.10〜0.20mmとされ、好ましくは0.12〜0.16mmとされる。
【0044】
樹脂シャフト35の中央ルーメン350には、コアワイヤ31の基端側大径部312が挿通されている。
【0045】
樹脂シャフト35は、その後端部におけるアウター部359を剥離して露出させたインナー部357が金属シャフト37の先端開口に挿入されることにより、当該金属シャフト37と接続している。
電極付ガイドワイヤ30を構成する金属シャフト37は、ステンレス、Ni−Ti、Cu−Mn−Al合金などから構成されたシングルルーメン構造体である。
金属シャフト37の後端側にはコネクタ39が接続されている。
【0046】
金属シャフト37の外径としては、樹脂シャフト35の外径と同じか、僅かに小さいことが好ましい。
金属シャフト37の長さとしては、例えば800〜2200mmとされ、好ましくは1200〜1600mmとされる。
【0047】
コアワイヤ31の最先端部には、コイルスプリング33の装着位置より先端側において、心内電位(バイポーラ電位)を測定するための電極361および362が装着されている。
電極361および362の外径が何れも0.76mm以下である。
電極361および362の各々には、導線381および382の各々の先端部が接続されており、導線381および382の各々は、樹脂シャフト35の内部(サブルーメン351および352)および金属シャフト37の内部に挿通され、各々の後端部がコネクタ39に接続されている。
【0048】
また、樹脂シャフト35の外周には、心内電位を測定するためのリング状電極363,364,365,366が装着されている。
これらリング状電極363〜366の各々には、導線383〜386の各々の先端部が接続されており、導線383〜386の各々は、樹脂シャフト35の内部(サブルーメン353〜356)および金属シャフト37の内部に挿通され、各々の後端部がコネクタ39に接続されている。
【0049】
<バルーンカテーテル40>
本実施形態のケミカルアブレーション装置を構成するバルーンカテーテル40は、インナーチューブ41と、アウターチューブ43と、バルーン45と、先端チップ47とを有するオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルである。
【0050】
バルーンカテーテル40を構成するインナーチューブ41は、電極付ガイドワイヤ30を挿通可能な内径のガイドワイヤルーメン415を有する。
このガイドワイヤルーメン415は、電極付ガイドワイヤ30の挿通路となるとともに、アブレーション用の薬液であるエタノールの流路となる。
バルーン45の内部におけるインナーチューブ41の外周(2箇所)には造影マーカー49が装着されている。
【0051】
インナーチューブ41の外径としては0.60〜1.10mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.85mmである。
インナーチューブ41の内径(ガイドワイヤルーメン415の径)としては、電極付ガイドワイヤ30の樹脂シャフト35が挿入された状態であってもエタノールの流路を確保する観点から、0.68mm以上であることが好ましく、更に好ましくは0.70〜1.00mm、好適な一例を示せば0.75mmである。
【0052】
インナーチューブ41の構成材料としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)などの合成樹脂を挙げることができ、これらのうちPEBAXが好ましい。
【0053】
バルーンカテーテル40を構成するアウターチューブ43は、バルーン45を拡張させるための流体の流路となる拡張ルーメン435を有する。
ここに、拡張ルーメン435に供給される流体としては生理食塩水を例示することができる。
【0054】
アウターチューブ43の外径としては1.00〜1.40mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.20mmである。
アウターチューブ43の内径としては0.80〜1.20mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.00mmである。
アウターチューブ43の長さは700〜1300mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1000mmである。
【0055】
アウターチューブ43の構成材料としては、インナーチューブ41の構成材料と同一の合成樹脂を挙げることができ、それらのうちPEBAXが好ましい。
【0056】
バルーンカテーテル40を構成するバルーン45の拡張時における直径としては、通常1.0〜3.0mmとされ、好ましくは1.5〜2.5mmとされる。
バルーン45の長さとしては、通常5〜30mmとされ、好ましくは10〜20mmとされる。
バルーン45の構成材料としては、従来公知のバルーンカテーテルを構成するバルーンと同一のものを使用することができ、好適な材料としてPEBAXを挙げることができる。
【0057】
バルーンカテーテル40を構成する先端チップ47は、インナーチューブ41に連続して、バルーン45の先端より延び出た位置にある。
先端チップ47の外径および内径は、それぞれ、インナーチューブ41の外径および内径と同一である。
なお、先端チップ47の内径(開口径)は、電極付ガイドワイヤ30を構成する樹脂シャフト35の外径よりも大きく、その差は0.05〜0.50mmであることが好ましい。
先端チップ47の長さは1〜10mmであることが好ましく、好適な一例を示せば3mmである。
なお、先端チップ47の外周に複数の側孔を形成してもよく、これにより、先端チップ47の開口より基端側に位置する部位に対しても薬液を投与して当該部位をケミカルアブレーション(焼灼治療)することができる。
【0058】
<Y字コネクタ50>
バルーンカテーテル40の後端側には、Y文コネクタ50が装着されている。
本実施形態のケミカルアブレーション装置を構成するY字コネクタ50には、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415に連通するガイドワイヤポート51と、バルーンカテーテル40の拡張ルーメン435に連通する拡張ポート53とを有している。
【0059】
<止血弁60>
Y字コネクタ50のガイドワイヤポート51には、止血弁60が装着されている。
電極付ガイドワイヤ30は、この止血弁60を介して、Y字コネクタ50のガイドワイヤポート51から、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415に挿入される。
本実施形態のケミカルアブレーション装置を構成する止血弁60は、側注チューブ65を備えており、この側注チューブ65から、アブレーション用の薬液であるエタノールが供給される。
側注チューブ65から止血弁60に供給されたエタノールは、Y字コネクタ50のガイドワイヤポート51から、バルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415および先端チップ47のルーメンに供給され、先端チップ47の開口から噴射される。
【0060】
<ケミカルアブレーションシステム>
本実施形態のケミカルアブレーションシステムは、親ガイディングカテーテルと、子ガイディングカテーテルと、上記のケミカルアブレーション装置とを備えている。
【0061】
本実施形態のケミカルアブレーションシステムを構成する親ガイディングカテーテルの外径は、通常2.4〜3.3mm、好ましくは2.9〜3.1mmとされる。
親ガイディングカテーテルの内径は、通常1.9〜2.8mm、好ましくは2.2〜2.5mmとされる。
【0062】
また、本実施形態のケミカルアブレーションシステムを構成する子ガイディングカテーテルの外径は、親ガイディングカテーテルの内径より小さく、通常1.8〜2.5mm、好ましくは2.1〜2.3mmとされる。
子ガイディングカテーテルの内径は、通常1.5〜2.2mm、好ましくは1.7〜1.9mmとされる。
【0063】
本実施形態のケミカルアブレーション装置(システム)を使用することによれば、下記のような手順でマーシャル静脈(VOM)へのエタノール注入法を実施することができる。
すなわち、電極付ガイドワイヤ30を挿入して電位を測定し、電極付ガイドワイヤ30に沿ってバルーンカテーテル40をマーシャル静脈に挿入し、電極付ガイドワイヤ30を抜去することなく、バルーンカテーテル40の先端チップ40の開口と、電極付ガイドワイヤ30の樹脂シャフト35との隙間からエタノールをフラッシュする。
以下、詳細に説明する。
【0064】
(1)親ガイディングカテーテルの挿入:
先ず、上大静脈からのアプローチにより、親ガイディングカテーテル10の先端を冠状静脈洞(CS)の入口部にエンゲージする。
なお、この段階で、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテル(本実施形態のケミカルアブレーションシステムを構成するものとは別のバルーンカテーテル)を親ガイディングカテーテル10のルーメンに挿入し、冠状静脈洞(CS)の入口部でバルーンを拡張させてオクルージョンするとともに、このバルーンカテーテルの先端チップから造影剤を噴射して冠状静脈洞(CS)を造影することによりマーシャル静脈(VOM)の有無を確認してもよい。
【0065】
(2)子ガイディングカテーテルの挿入:
次に、親ガイディングカテーテル10のルーメンに子ガイディングカテーテル20を挿入して、親ガイディングカテーテル10の先端開口から延び出させた子ガイディングカテーテル20の先端をマーシャル静脈(VOM)の入口部の近傍に位置させる。
【0066】
(3)電極付ガイドワイヤ30の挿入(治療前の電位測定):
予め、電極付ガイドワイヤ30をバルーンカテーテル40のガイドワイヤルーメン415および先端チップ47のルーメンに挿入して、電極付ガイドワイヤ30の先端を、先端チップ47の開口から引き出しておく。このように両者を接続した状態で、電極付ガイドワイヤ30を操作する。
子ガイディングカテーテル20のルーメンに電極付ガイドワイヤ30およびバルーンカテーテル40を挿入し、子ガイディングカテーテル20の先端開口から延び出させた電極付ガイドワイヤ30の先端部分(リング状電極361〜366が装着されている部分)をマーシャル静脈(VOM)に挿入して治療前の電位測定(ペーシング・マッピング)を行う。
なお、電極付ガイドワイヤ30の先端は、一般的な医療用ガイドワイヤの先端と同等の性能を備えているため、先端をシェイピングしてカーブ形状などをつけることができる。そして、一般的な医療用ガイドワイヤと同様の操作を行うことができるため、比較的容易にマーシャル静脈に電極付ガイドワイヤ30を導くことができる。
【0067】
(4)バルーンカテーテル40の挿入とアブレーション治療:
次に、電極付ガイドワイヤ30にインナーチューブ41を嵌挿することによって、電極付ガイドワイヤ30に沿ってバルーンカテーテル40をマーシャル静脈(VOM)に挿入する。
【0068】
図10は、子ガイディングカテーテル20の先端開口から延び出たバルーンカテーテル40が、電極付ガイドワイヤ30に沿って、マーシャル静脈(VOM)に挿入されている状態を示している。
図10に示した状態において、電極付ガイドワイヤ30を構成する樹脂シャフト35の先端部分は、バルーンカテーテル40を構成する先端チップ47の開口から延び出ている。
【0069】
次に、
図10に示した状態、すなわち、電極付ガイドワイヤ30をマーシャル静脈(VOM)に挿入したままの状態で、バルーンカテーテル40のバルーン45を拡張させた後、側注チューブ65からエタノールを注入する。
注入されたエタノールは、止血弁60から、電極付ガイドワイヤ30が挿通されているバルーンカテーテル40のインナーチューブ41(ガイドワイヤルーメン415)および先端チップ47のルーメンを経由し、先端チップ47の開口と樹脂シャフト35との間隙からからマーシャル静脈(VOM)に注入され、これにより、ケミカルアブレーションが行われる。
なお、ケミカルアブレーション(エタノールの注入)は、通常、毛細血管が位置する奥側から開始して、バルーンカテーテルを入口部が位置する方向に段階的に移動させながら複数回(3〜4回)に分けて行われる。
【0070】
(5)治療後の電位測定:
次に、バルーンカテーテル40(インナーチューブ41)に挿入されたままの電極付ガイドワイヤ30により治療後の電位測定(ペーシング・マッピング)を行う。
そして、電位測定の結果、アブレーションが不十分であると判断された場合には、直ちに治療を再開することができる。
【0071】
本実施形態のケミカルアブレーション装置およびケミカルアブレーションシステムによれば、治療前後の電位測定を含むマーシャル静脈へのエタノール注入法に係る手技を簡便に行うことができる。