(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282219
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】清掃具
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20060101AFI20180208BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20180208BHJP
E01H 1/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
B08B1/00
E21F17/00
E01H1/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-245246(P2014-245246)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-107183(P2016-107183A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】595023677
【氏名又は名称】有限会社西川鉄筋
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】西川 正勝
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−017170(JP,A)
【文献】
特開平09−003837(JP,A)
【文献】
特開平07−138920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00−13/62
B08B 1/00−1/04
B08B 5/00−13/00
E01F 9/00−11/00
E01H 1/00
H01H 1/08
E21F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル等の壁面に固着する支持板(1)に、壁面を拭き払うための帯状体(3)を吊り下げてある清掃具であって、前記帯状体(3)は、下端方向に向かって末広がり状に形成されていると共に、長手方向に沿って芯(3a)を有することを特徴とする、清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の壁面に付着した煤や砂ほこり等の汚れを除去する清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内を自動車が通過する際の風圧を利用して、トンネル内の壁面を清掃する清掃具としては、本願出願人と同一出願人により、後記特許文献のような清掃具が公開されている。
【0003】
特許文献1では、
図5(イ)に示すように、トンネル内の壁面に固着する支持板1に、壁面を拭き払うための帯状体(紐)3を吊り下げた清掃具であって、吊り下げられた帯状体(紐)3が、自動車が通過する際の風圧を利用して揺動又は回転することにより、壁面の汚れを落す構成の清掃具が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5144598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した清掃具は、本願発明者の長年の研究・実験の結果、効率良く汚れを落とす点に関しては問題ないし、時を経るにつれてドンネル壁面に接する回数の増える帯状体3の下部が摩耗して断裁されるような不具合もないが、帯状体3が回転する際に絡みやすく、場合によっては
図5(ロ)に示すように、壁面の汚れを落とす範囲が狭まって清掃効率が落ちてしまうという点で改善の余地があることが判明した。
【0006】
本発明は上記実情を考慮したもので、その解決課題は、トンネル等の壁面の汚れを落とす帯状体が回転する際に絡まず、清掃効率が落ちない清掃具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明は、トンネル等の壁面に固着する支持板に、壁面を拭き払うための帯状体を吊り下げてある清掃具であって、その帯状体は、下端方向に向かって末広がり状に形成されている
と共に、長手方向に沿って芯を有することを特徴とする。なお、ここでいう帯状体とは、風圧を受けると揺動又は回転し、このときにトンネル等の壁面と擦れ合って、壁面に付着している汚れを拭き払うものであって、例として、帯状の布などがあげられる。
【0008】
また、芯としては、帯状体に硬直性を持たせることができるものであればどのようなものでも問題はないが、特に帯状体の表面側、言い換えるならば、トンネル等の壁面と擦れ合わない側に樹脂を塗布することによって芯を形成することが望ましい。
【0009】
なお、帯状体を支持板に吊り下げる方法としては、支持板に帯状体を直接固着したり、留め糸を介して吊り下げる方法でも問題ないが、帯状体はピンによって軸支されると共に、ピンによって軸支されている部位では、二重に折り畳まれていることが望ましい。
【0010】
また、帯状体が、より一層トンネル等の壁面に沿って回転するためには、ピン通し孔のついた玉を帯状体の外側に配置し、帯状体と共に前記ピンによって軸支されていることが望ましいし、帯状体が破損した際に、簡単に帯状体を交換するために、ピンには、係脱可能なピンキャップを備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように、帯状体が下端方向に向かって末広がり状に形成されている構成であれば、より風を受ける面積が大きくなるので、従来のものよりも更に風圧のエネルギーを得て帯状体が回転する力を高めることができると共に、回転の際に帯状体が絡みづらい。
【0012】
そして、更に、帯状体が長手方向に沿って芯を有する構成であれば、帯状体に硬直性を持たせることができるので、従来のものに比べて格段に絡む可能性は低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による清掃具の第一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明による清掃具の第二例を示す斜視図である。
【
図3】(イ)、(ロ)図は、本発明による清掃具の第三例を示す側面図であって、ピンへのピンキャップの脱着状態を示す側面図である。
【
図4】本発明による清掃具の第四例を示す側面図である。
【
図5】(イ)、(ロ)図は、従来の清掃具を示す斜視図であって、(イ)はトンネル内壁面に設置直後の清掃具を示し、(ロ)は帯状体が回転する際に絡まってしまった状態の清掃具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を
図1から
図5を参照して詳細に説明する。まず、本発明の清掃具の第一例は、
図1に示すように、支持板1と、両面粘着テープ2と、帯状体3と、ピン4によって構成されている。
【0015】
支持板1は、帯状体3を吊り下げるためのものであって、本発明の清掃具の第一例ではピン4の一端部が貫通し、固定されている。この支持板1は、厚みが1mm以下のものであることが望ましく、このことによって軽量化を図ると共に、トンネル内の壁面と、清掃具との間の隙間をできる限り小さくしている。なお、支持板1の軽量化は、支持板1と、トンネル内の壁面との接着を強固なものとすると共に、万一、剥離した際にも車などを傷つけにくい効果を持つ。また、トンネル内の壁面と、清掃具との間の隙間が小さいことは、帯状体3が壁面に接し易くなる効果を持つ。
【0016】
そして、支持板1は、帯状体3と接する面に滑性を有していることが望ましく、アクリル板が好適である。アクリル板は、自己潤滑性に優れると共に、軽量化が図れることと、耐候性を有している。なお、ここで用いる耐候性とは、風雨、温度変化などに対し、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質をさす。また、厚さ1mm以下のアクリル板であれば、鋏などによっても簡単に切断可能であるため加工が容易であり、利便性が高い。
【0017】
両面粘着テープ2は、支持板1をトンネル内の壁面に固着するものであって、支持板1と同様、1mm以下の厚さであることと、防水性を有するものであることが望ましい。
【0018】
帯状体3は、風圧を受けると、ピン4を軸にして、揺動又は回転し、このときにトンネル内の壁面と擦れ合って、壁面に付着している汚れを拭き払うものであって、
図1に示すように、下端方向に向かって末広がり状の形状に形成し、回転時の絡み防止機能を持たせている。この帯状体3の長手方向の長さは通常60cm程度であって、帯状体3は、この長さを半径とした円形軌道を描きながら、揺動又は回転する。なお、この長手方向の長さはある程度は短いほうが、より揺動・回転し易くなる傾向があり、30cm程度の長さのものが最も効率のよい清掃を行うことができる。また、帯状体3の幅に関しては、数cm以内のものであることが望ましく、帯状体3の長手方向上端部の幅は1cm程度、長手方向下端部の幅は、上端部の幅の約2倍、2cm程度であることが望ましく、上端から下端にかけて、徐々に幅広形状になることが望ましい。この程度であれば、たとえ帯状体3がちぎれて飛散した場合でも自動車の運転手の視野を妨げたりすることはない。なお、図に示すような帯状体3の生地は、トリコットと呼ばれる経方向に連続したループを形成することにより作成した、ほつれに強い生地が好適であるが、これに限定されるものではない。また、繊維の材質に関しても、天然繊維、再生繊維、合成繊維の種類等を特に限定したものではない。
【0019】
そして、帯状体3は、
図2に示す本発明の清掃具の第二例のように、長手方向に沿って芯3aを有することが絡み防止の観点からより好ましく、少なくとも、帯状体3の下半分、長手方向中央に沿って芯3aを有していることが好ましい。なお、芯3aは、帯状体3に風圧で回転しても絡まないだけの硬直性を持たせられるものであればどんなものでも問題なく、例えば、帯状体3の表面、言い換えるならばトンネル等の壁面と擦れ合わない側に樹脂を塗布することによって芯3aを形成してもよいし、帯状体3の少なくとも下半分、長手方向に沿ってミシンで縫うことによって芯3aを形成してもよいが、帯状体3の表面、言い換えるならばトンネル等の壁面と擦れ合わない側に熱可塑性樹脂を塗布することによって芯3aを形成する場合であれば、帯状体3の回転状態や清掃状況を確認後に、硬直性を容易に調整できるため好適である。また、帯状体3は、ピン4によって支持板1に軸支されているものであるが、その軸支されている部位、言い換えるならば、支持板1と帯状体3とが接する位置では、二重に折り畳まれていることが望ましい。このことにより、帯状体3は、捻じれ難くすると共に、回転軸を安定させることができる。
【0020】
なお、本発明の清掃具の第一例、及び、第二例に示すピン4は、一端部が支持板1を貫通し、固定されているものであって、帯状体3を軸支するものである。そして、このピン4は、タグピンと呼ばれる、両端部がT字状に形成された弾性変形可能な線状のピンであることが望ましい。タグピンであれば、通常はタグガンにより、打つことになるが、タグガンの針をつなげたいもの二つ(場合によっては二つ以上)に通して、タグガンの引き金を引くだけで、タグピンは針の先を通ってつなげたいもの同士を連結するため、清掃具の作成を簡略化できる。なお、帯状体3を支持板1に吊り下げる方法としては、上記のようなピン4を用いた方法でもよいが、支持板1に帯状体3を直接固着したり、留め糸を介して吊り下げる方法でも問題ないし、下記第三例、第四例のものであっても問題ない。
【0021】
本発明の清掃具の第三例は、
図3(イ)、(ロ)に示すように、第一例、及び、第二例と同様、帯状体3はピン4によって軸支されると共に、ピン4によって軸支されている部位では、二重に折り畳まれているものである。しかしながら、ピン4は、第一例、及び、第二例のものとは異なり、支持板1の中央に立設するものであって、対となるピンキャップ6の内側に設けられた被係合部に係脱自在な係合部、例えば環状の突状部を有している。
【0022】
そして、ピンキャップ6は、従来からある一般的な形状、有底状であると共に、ピン4を挿入可能な挿口部を備え、把持しやすいように、挿口部とは反対方向の端部に向かって拡径の外形を有し、挿口部内には、ピン4の少なくとも先端部を納めることが可能なだけの空間を有すると共に、ピン4の係合部に係脱自在な被係合部を有している。そして、ピンキャップ6の素材は、複数回脱着しても壊れにくいように、被係合部を含め、プラスチック等の自己潤滑性があり、弾性変形可能なものが望ましい。なお、ピンキャップ6を使用する際には、
図3(イ)に示すように、まずピン4で帯状体3を貫通、軸支し、その後、
図3(ロ)に示すように、ピンキャップ6を外嵌する。このような構成であれば、帯状体3が破損した際にも、ピンキャップ6を外すだけで、帯状体3を交換できるため、利便性が高い。
【0023】
なお、ピンキャップ6を外嵌する際には、帯状体3がスムーズに回転するように、ピンキャップ6の挿口部側の端面が帯状体3に接触しない状態が望ましく、挿口部内は、ピン4に比べて浅底であることが望ましい。なお、被係合部は、ピンキャップ6がピン4から簡単に外れない形状であることが望ましく、例えば、従来から一般的にあるような釣針や矢じり等が一般的に備えている返し構造を模した形状であることが望ましい。
【0024】
そして、本発明の清掃具の第四例は、
図4に示すように、支持板1と、両面粘着テープ2と、帯状体3と、ピン4と、玉5によって構成されている。
【0025】
玉5は、帯状体3の外側、言い換えるならば支持板1とは反対側に配置し、帯状体3と共にピン4によって支持板1に軸支されるものである。この玉5は、ピン4を通すための孔が開いているものであって、例えば、糸通し孔のついた小さな飾り玉である、いわゆるビーズと呼ばれるもの等が望ましい。そして、この玉5が面積の広いソフトな押しつけを帯状体3に与えることによって、帯状体3は、トンネル内の壁面に張り付きつつも、スムーズに回転することができる。
【0026】
なお、この玉5の外形は特に限定するものではないが、帯状体3が引っ掛からないように丸みを帯びたものが望ましく、且つ、滑性を有するものであることが望ましい。このことにより、帯状体3は、更に揺動又は回転し易くなる。
【0027】
上述した本発明の清掃具を用いたトンネル内の壁面の清掃方法は次の通りである。まず、多数の清掃具を等間隔おきにトンネル内の壁面、より限定するならば内装板に接着する。そして自動車がトンネル内を通過すると、その風圧により、支持板1から吊り下がっている帯状体3が、ピン4を回転軸に、揺動、又は回転する。この時、帯状体3は、回転しながらも、風圧によって軽く壁面に押し付けられることから、壁面に付着している汚れを拭き払うことができる。そしてこの際、本発明の清掃具は、上記構成により絡みづらいため、清掃効率が落ちない。
【0028】
なお、本発明の清掃具は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、両面粘着テープ2を用いることなく、支持板1を接着剤等で壁面に直接固着させても問題はない。また、本発明の清掃具は、トンネル内の壁面の清掃に主に用いられるものであるが、家屋等の壁面や窓等の清掃に用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 支持板
2 両面粘着テープ
3 帯状体
3a 芯
4 ピン
5 玉
6 ピンキャップ