特許第6282220号(P6282220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282220
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】過熱水蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/28 20060101AFI20180208BHJP
   F22G 1/16 20060101ALI20180208BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20180208BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20180208BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20180208BHJP
   H01F 30/14 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F22B1/28 Z
   F22G1/16
   H01F27/24 B
   H01F27/24 E
   H01F27/28 L
   H01F30/14
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-257354(P2014-257354)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-135231(P2015-135231A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-263905(P2013-263905)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰広
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−163229(JP,A)
【文献】 特開2012−163230(JP,A)
【文献】 特開2009−105253(JP,A)
【文献】 特開2011−155079(JP,A)
【文献】 特開昭61−248508(JP,A)
【文献】 特開2009−283159(JP,A)
【文献】 米国特許第04571487(US,A)
【文献】 特開2001−297867(JP,A)
【文献】 会社紹介・製品情報(4) トクデン株式会社 TOKUDEN CO., LTD.,紙パ技協誌 8月号,宮内 雅浩 紙パルプ技術協会,第67巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/28
F22G 1/16
H01F 27/24
H01F 27/25
H01F 27/28
H01F 30/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主座変圧器及びT座変圧器からなるスコット結線変圧器と、
前記主座変圧器の出力により通電加熱されて、水から飽和水蒸気を発生させる第1加熱用金属体と、
前記T座変圧器の出力により通電加熱されて、前記第1加熱用金属体により発生した飽和水蒸気から過熱水蒸気を発生させる第2加熱用金属体とを備え、
前記主座変圧器の入力側の2相のうち一方に電圧又は電流を制御する第1制御機器が設けられており、
前記T座変圧器の入力側である1次コイルの一端側に電圧又は電流を制御する第2制御機器が設けられており、
前記第1制御機器及び前記第2制御機器により、前記主座変圧器の出力電圧と前記T座変圧器の出力電圧とを個別に制御する過熱水蒸気発生装置。
【請求項2】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方が、脚鉄心の周りに巻回された1次コイルと、前記脚鉄心の周りに前記1次コイルに重ねて巻回された2次コイルとを有している請求項1記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項3】
前記2次コイルが、中空金属体からなり、前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体を構成している請求項2記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項4】
前記1次コイルが、前記脚鉄心周りにおいて前記2次コイルの内側及び外側にそれぞれ重ねて巻回されている請求項2又は3記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項5】
前記1次コイルが、中空金属体からなり、前記第1加熱用金属体に流入する水を予熱するものである請求項2乃至4の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項6】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方が、単巻変圧器である請求項1乃至5の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項7】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方の脚鉄心が、インボリュート形状に湾曲された湾曲部を有する多数の磁性鋼板を放射状に積層して円筒状に形成した円筒状のインボリュート鉄心である請求項1乃至6の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項8】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方の脚鉄心の上下に接続される継鉄心が、変形巻鉄心により構成されている請求項1乃至7の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項9】
前記主座変圧器の鉄心及び前記T座変圧器の鉄心が一体形成されたものである請求項1乃至8の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項10】
前記スコット結線変圧器が、
スコット結線された誘導コイルが巻回される2つの主脚鉄心と、
前記2つの主脚鉄心に生じる磁束の共通の通路になる共通脚鉄心と、
前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心の上下それぞれを連結する継鉄心とを備え、
前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心が、平面視においてそれぞれが三角形の頂点に位置するように配置され、
前記継鉄心が、平面視において前記共通脚鉄心を屈折点として折れ曲がっている請求項1乃至9の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項11】
前記2つの主脚鉄心の一方及び前記共通脚鉄心の間の距離と、前記2つの主脚鉄心の他方及び前記共通脚鉄心の間の距離とが、互いに等しい請求項10記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項12】
前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心が、平面視においてそれぞれが直角三角形の頂点に位置するように配置され、
前記共通脚鉄心が、前記直角三角形の頂点のうち直角である頂点に位置するように配置される請求項10又は11記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項13】
前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体が、複数の金属要素を重ねて形成されたものであり、当該複数の金属要素の間に内部流路が形成されている請求項1乃至12の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項14】
前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体が、円筒状をなす第1の金属要素と、当該第1の金属要素に挿入して設けられた円筒状をなす第2の金属要素とを備え、
前記内部流路が、前記第1の金属要素の内面及び前記第2の金属要素の外面により形成されている請求項13記載の流体加熱装置。
【請求項15】
前記第1の金属要素及び前記第2の金属要素の少なくとも一方が、前記内部流路が螺旋状となるように加工されている請求項14記載の流体加熱装置。
【請求項16】
前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体が、幅方向一端面及び幅方向他端面に開口する流路形成孔が形成された金属板を変形し、前記幅方向一端面及び前記幅方向他端面を接合して形成されたものであり、
前記幅方向一端面の開口及び前記幅方向他端面の開口が繋がることにより内部流路が形成されている請求項1乃至12の何れか一項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項17】
前記金属板には、幅方向一端面から幅方向他端面まで直線状に延び、前記金属板の幅方向に対して傾斜した複数の流路形成孔が形成されており、
前記幅方向一端面及び前記幅方向他端面を接合することで互いに異なる前記流路形成孔の開口が繋がり、螺旋状の前記内部流路が形成されている請求項16記載の流体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコット結線変圧器を用いた過熱水蒸気発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気の生成方法としては、水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気発生段階と、この飽和水蒸気をさらに加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生段階との2段階で行われることが一般的である。
【0003】
そして、20℃の水から130℃の飽和水蒸気を発生させる熱量と、130℃の飽和水蒸気から1279℃の過熱水蒸気を発生させる熱量との比は、1対1となるので、高温の過熱水蒸気を発生させる電気回路には、三相交流電源をスコット結線変圧器によって2つの単相回路に変換した後に、2つの単相回路の出力電圧を個別に制御して、飽和水蒸気と過熱水蒸気とを発生させることで、三相交流電源の電流値を均一に近づけることができる。
【0004】
ここで、スコット結線変圧器の1次側の三相それぞれに、電圧又は電流を制御する制御素子を設けた場合には、T座変圧器の1次コイルを流れる電流が主座変圧器の1次コイルに流れ込む。このため、主座変圧器の1次コイルに流れる電流は、T座変圧器の1次側の制御素子と、主座変圧器の1次側の2相それぞれの制御素子との両方の影響を受けるとともに、主座変圧器の入力電圧が変わるとT座変圧器の入力電圧も変わることになる。したがって、スコット結線変圧器の1次側の三相それぞれに制御素子を設けても、2つの単相回路の出力電圧を個別制御することは出来ない。
【0005】
以上から、2つの単相回路それぞれに、電圧又は電流を制御する制御素子を設けて、2つの単相回路の出力電圧を個別に制御することが一般的である。そして、このスコット結線変圧器を過熱水蒸気発生装置に用いた場合には、2つの単相回路に加熱導体管が接続される構成となる。
【0006】
ところが、過熱水蒸気を発生させるための加熱導体管は低抵抗であるため、単相回路は大電流回路となり、当該大電流回路に制御素子を設けることは事実上困難である。したがって、図17に示すように、スコット結線変圧器による2つの単相回路に制御素子を設けると共に、さらに2つの単相回路の出力を低圧大電流に変換する2式の単相変圧器を設ける構成とすることが行われている。つまり、この方法では、スコット結線変圧器1式と、単相変圧器2式の計3式の変圧器が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−248508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、スコット結線変圧器を用いた過熱水蒸気発生装置において、装置構成を簡略化することができるとともに、主座変圧器の出力電圧とT座変圧器の出力電圧とを個別に制御することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る過熱水蒸気発生装置は、主座変圧器及びT座変圧器からなるスコット結線変圧器と、前記主座変圧器の出力により通電加熱されて、水から飽和水蒸気を発生させる第1加熱用金属体と、前記T座変圧器の出力により通電加熱されて、前記第1加熱用金属体により発生した飽和水蒸気から過熱水蒸気を発生させる第2加熱用金属体とを備え、前記主座変圧器の入力側の2相のうち一方に電圧又は電流を制御する第1制御機器が設けられており、前記T座変圧器の入力側である1次コイルの一端側に電圧又は電流を制御する第2制御機器が設けられており、前記第1制御機器及び前記第2制御機器により、前記主座変圧器の出力電圧と前記T座変圧器の出力電圧とを個別に制御することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、主座変圧器の入力側の2相のうち一方に第1制御機器を設け、T座変圧器の入力側である1次コイルの一端側に第2制御機器を設けているので、主座変圧器の出力電圧とT座変圧器の出力電圧とを個別に制御することができる。これにより、スコット結線変圧器の特徴を生かしつつ、過熱水蒸気温度の制御を容易に行うことができる。また、従来のように主座変圧器及びT座変圧器の出力側に2台の単相変圧器を設ける必要も無いので、装置構成を簡略化することができる。
本発明では、主座変圧器の入力側の2相のうち一方に第1制御機器を設けて、第1加熱用金属体に印加される主座変圧器の出力電圧を制御して飽和水蒸気を発生させる。主座変圧器の1次コイルの両端は電源に接続されているので、主座変圧器の出力電圧は、巻数比に応じた値となる。
ところが、T座変圧器の1次コイルが主座変圧器の1次コイルに中心点に接続され、T座変圧器の1次コイルから主座変圧器の1次コイルに電流が流れ込むので、主座変圧器の第1制御機器を最小まで絞っても、主座変圧器の出力電圧は、T座変圧器の出力電圧に対して、最大約66%が残留する。ここで、過熱水蒸気温度を2000℃に設定した時の飽和水蒸気発生熱量と過熱水蒸気発生熱量との比は、1.0:1.79のため、第1加熱用金属体が設けられる単相回路(飽和水蒸気発生側単相回路)と第2加熱用金属体が設けられる単相回路(過熱水蒸気発生側単相)との電流比は、0.75:1.0となり、その残留量は、問題とならない。もちろん過熱水蒸気温度が2000℃未満の場合は、飽和水蒸気発生に必要な電流の比が大きくなるので、残留分は問題にならない。また、過熱水蒸気は2000℃よりも大きい温度では、水素と酸素に分離して過熱水蒸気として存在し得ないことから、残留電流値が問題になる領域は無い。
T座変圧器の第2制御機器によってT座変圧器の出力電圧は制御されるが、主座変圧器に流れ込む電流は第1制御機器を遮断しても、第1制御機器を設けていない他方の相に電流が流れるので、電流が制御されることは無い。また、主座変圧器の第1制御機器によって、T座変圧器の出力電圧が変動するが、第2加熱用金属体(過熱水蒸気発生用加熱用金属体)の温度に基づく電流制御を行っているので、問題になることは無い。
さらに使用方法としては、まず過熱水蒸気の発生量の設定を行い、過熱水蒸気の発生量が決まれば、例えば温度130℃に設定した飽和水蒸気に要する熱量は常に一定であるので、T座変圧器の出力電圧に影響を与えるような主座変圧器の出力電圧の変動は生じない。
その上、主座変圧器の出力電圧を大きく変動しない値に大まかに制御して、飽和水蒸気温度が130℃前後に多少変動しても、過熱水蒸気温度は、第2加熱用金属体(過熱水蒸気発生用用金属体)の温度に基づいて、T座変圧器の第2制御機器により詳細に制御する仕組みであることから、過熱水蒸気温度の制御に支障が発生することは無い。
【0011】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方が、脚鉄心の周りに巻回された1次コイルと、前記脚鉄心の周りに前記1次コイルに重ねて巻回された2次コイルとを有していることが望ましい。
【0012】
そして、前記2次コイルが、中空金属体からなり、前記第1加熱用金属体及び/又は第2加熱用金属体が、前記2次コイルにより構成されていることが望ましい。
これならば、変圧器の2次コイルと加熱用金属体との電気接続が無くなり、効率の良い過熱水蒸気発生装置を構成することができる。
【0013】
前記1次コイルが、前記脚鉄心周りにおいて前記2次コイルの内側及び外側にそれぞれ重ねて巻回されていることが望ましい。
これならば、1次コイルの間に2次コイルが挟まれる構成となり、漏れ磁束を低減することができ、設備効率を上げることができる。
【0014】
前記1次コイルが、中空金属体からなり、前記第1加熱用金属体に流入する水を予熱するものであることが望ましい。
これならば、1次コイルを構成する中空金属体で発生する抵抗熱及び鉄心の熱を水に与えることができ、設備効率を向上させることができる。
【0015】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方が、単巻変圧器であることが望ましい。
このように1次コイル及び2コイルを単巻結線することで、1次コイルと2次コイルとの間の絶縁を簡素にすることができ、製作し易くなるとともに、事故発生のリスクを低減することができる。
【0016】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方の脚鉄心が、インボリュート形状に湾曲された湾曲部を有する多数の磁性鋼板を放射状に積層して円筒状に形成した円筒状のインボリュート鉄心であることが望ましい。
これならば、一次コイル(例えば中空導体管などの中空金属体)を脚鉄心に密着して巻回することができ、鉄心で発生する熱を効率良く水の予熱に利用することができる。また、円形鉄心は、方形鉄心に比べて、同じ断面積であれば外周長が最短となるので、一次コイル(例えば中空導体管などの中空金属体)の使用量を低減することができる。
【0017】
前記主座変圧器又は前記T座変圧器の少なくとも一方の脚鉄心の上下に接続される継鉄心が、変形巻鉄心により構成されていることが望ましい。
これならば、断面円形の脚鉄心との衝合部を同じ円形にすることが簡単である。
【0018】
前記主座変圧器の鉄心及び前記T座変圧器の鉄心が一体形成されたものであることが望ましい。
これならば、スコット結線変圧器を構成する変圧器を2式から1式にすることができ、装置をコンパクトにすることができる。
【0019】
前記スコット結線変圧器が、スコット結線された誘導コイルが巻回される2つの主脚鉄心と、前記2つの主脚鉄心に生じる磁束の共通の通路になる共通脚鉄心と、前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心の上下それぞれを連結する継鉄心とを備え、前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心が、平面視においてそれぞれが三角形の頂点に位置するように配置され、前記継鉄心が、平面視において前記共通脚鉄心を屈折点として折れ曲がっていることが望ましい。
これならば、前記2つの主脚鉄心及び前記共通脚鉄心が、平面視においてそれぞれが三角形の頂点に位置するように配置されるとともに、前記継鉄心が、平面視において前記共通脚鉄心を屈曲点として折れ曲がっているので、前記2つの主脚鉄心間の距離を小さくして、鉄心全体の幅方向の寸法を小さくし、省スペース化を図ることができる。
【0020】
前記2つの主脚鉄心の一方及び前記共通脚鉄心の間の距離と、前記2つの主脚鉄心の他方及び前記共通脚鉄心の間の距離とが、互いに等しいことが望ましい。
これならば、一方の前記主脚鉄心及び前記共通脚鉄心の間の磁路長さと、他方の前記主脚鉄心及び前記共通脚鉄心の間の磁路長さとが等しくなるので、前記2つの主脚鉄心の磁気特性が互いに同等となり、効率よく三相電源から2つの単相回路に変換することができる。
【0021】
前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体が、複数の金属要素を重ねて形成されたものであり、当該複数の金属要素の間に内部流路が形成されていることが望ましい。
これならば、加熱用金属体が複数の金属要素を重ねて形成し、それらの金属要素の間に内部流路が形成されているので、金属要素が持つ柔軟性により、誘導加熱による熱変形に耐える構造とすることができる。これにより、熱変形による破損等の可能性が小さい過熱水蒸気発生装置を提供することができる。
【0022】
前記加熱用金属体が、円筒状をなす第1の金属要素と、当該第1の金属要素に挿入して設けられた円筒状をなす第2の金属要素とを備え、前記内部流路が、前記第1の金属要素の内面及び前記第2の金属要素の外面により形成されていることが望ましい。
これならば、変圧器の脚鉄心を第1の金属要素の内側に配置する構成により、前記加熱用金属体を誘導加熱することができる。このとき、加熱用金属体の内径側部分を単一部材(第1の金属要素)から形成されているので、熱変形に強い構造とすることができる。
【0023】
前記第1の金属要素及び前記第2の金属要素の少なくとも一方が、前記内部流路が螺旋状となるように加工されていることが望ましい。
このように内部流路を螺旋状にすることで、誘導加熱された金属要素との接触面積を大きくするとともに、流体流速を速くすることができ、熱交換効率を向上させることができる。また、第1の金属要素及び第2の金属要素の少なくとも一方に螺旋状の凹溝が形成されることになるため、金属要素が薄板要素の場合には特に機械的強度を向上させることができる。
ここで、第1の金属要素及び第2の金属要素に施される変形加工としては、それら金属要素が薄板要素の場合には、水圧等の液圧によって変形させるバルジ加工(ハイドロフォーミング)や、螺旋状の凹部又は凸部が形成された型に沿って駒(ローラ)等によって加圧変形させる加工等が考えられる。また、前記金属要素が所定の肉厚を有する厚板要素の場合には、前記第1の金属要素又は前記第2の金属要素の少なくとも一方に、例えば切削加工等の機械加工により変形させることが考えられる。
【0024】
前記第1加熱用金属体又は前記第2加熱用金属体が、幅方向一端面及び幅方向他端面に開口する流路形成孔が形成された金属板を変形し、前記幅方向一端面及び前記幅方向他端面を接合して形成されたものであり、
前記幅方向一端面の開口及び前記幅方向他端面の開口が繋がることにより内部流路が形成されていることが望ましい。
これならば、流路形成孔が形成された金属板を変形して内部流路を有する加熱用金属体を形成しているので、加熱用金属体全体の剛性を高めることができ、誘導加熱による熱変形に耐える構造とすることができる。これにより、熱変形による破損等の可能性が小さい過熱水蒸気発生装置を提供することができる。
【0025】
前記金属板には、幅方向一端面から幅方向他端面まで直線状に延び、前記金属板の幅方向に対して傾斜した複数の流路形成孔が形成されており、前記幅方向一端面及び前記幅方向他端面を接合することで互いに異なる前記流路形成孔の開口が繋がり、螺旋状の前記内部流路が形成されていることが望ましい。
このように内部流路を螺旋状にすることで、誘導加熱された加熱用金属体との接触面積を大きくするとともに、流体流速を速くすることができ、熱交換効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
このように構成した本発明によれば、スコット結線変圧器を用いた過熱水蒸気発生装置において、装置構成を簡略化することができるとともに、主座変圧器の出力電圧とT座変圧器の出力電圧とを個別に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態に係る過熱水蒸気発生装置の構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態のスコット結線変圧器の構成を模式的に示す平面図及び正面図。
図3】同実施形態の加熱用金属体の構成を示す斜視図。
図4】過熱水蒸気発生装置と同等回路の試験装置を示す図。
図5】過熱水蒸気を発生させる熱量と過熱水蒸気温度との関係を示す特性グラフ。
図6】変形実施形態のスコット結線変圧器の構成を模式的に示す平面図。
図7】変形実施形態における加熱用金属体の平面図、正面図及び側面図。
図8】変形実施形態における加熱用金属体のA−A’線断面図。
図9】変形実施形態における加熱用金属体の平面図、正面図及び側面図。
図10】変形実施形態における加熱用金属体のB−B’線断面図。
図11】変形実施形態の加熱用金属体の断面図。
図12】変形実施形態における加熱用金属体の平面図及び正面図。
図13】変形実施形態における加熱用金属体のC−C’線断面図。
図14】変形実施形態における加熱用金属体を構成する金属板の展開図。
図15】変形実施形態における加熱用金属体を構成する金属板の展開図。
図16】変形実施形態における加熱用金属体を構成する金属板の展開図。
図17】従来の過熱蒸気発生装置の構成を示す模式図。
【0028】
以下に本発明に係る過熱水蒸気発生装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0029】
本実施形態に係る過熱水蒸気発生装置100は、流体が流通する加熱用金属体を通電加熱することにより過熱水蒸気を発生させるものであり、図1に示すように、三相交流電源8からの三相交流を2つの単相交流に変換するスコット結線変圧器2と、当該スコット結線変圧器2の二相交流により通電加熱される第1加熱用金属体3及び第2加熱用金属体4とを備えている。
【0030】
スコット結線変圧器2は、主座変圧器2MとT座変圧器2Tとからなる。また、本実施形態の主座変圧器2Mの鉄心及びT座変圧器2Tの鉄心は、一体形成されたものである。
【0031】
第1加熱用金属体3は、スコット結線変圧器2の主座変圧器2Mの出力側に接続されて、主座変圧器2Mの出力電圧が印加されて通電加熱される導体管であり、流体導入ポート3p1及び流体導出ポート3p2を有している。そして、流体導入ポート3p1から水が導入されて、流体導出ポート3p2から飽和水蒸気が導出されるものである。本実施形態の第1加熱用金属体3は、図3に示す中空導体管からなる主座変圧器2Mの2次コイル2bにより構成されている。これにより、主座変圧器2Mの2次コイル2bと第1加熱用金属体3との電気接続が無くなり、効率の良い過熱水蒸気発生装置100を構成することができる。
【0032】
第2加熱用金属体4は、スコット結線変圧器2のT座変圧器2Tの出力側に接続されて、T座変圧器2Tの出力電圧が印加されて通電加熱される導体管であり、流体導入ポート4p1及び流体導出ポート4p2を有している。そして、流体導入ポート4p1から前記第1加熱用金属体3により発生した飽和水蒸気が導入されて、流体導出ポート4p2から所定温度に加熱された過熱水蒸気が導出されるものである。本実施形態の第2加熱用金属体4は、図3に示す中空導体管からなるT座変圧器2Tの2次コイル2dにより構成されている。これにより、T座変圧器2Tの2次コイル2dと第2加熱用金属体4との電気接続が無くなり、効率の良い過熱水蒸気発生装置100を構成することができる。
なお、図1では、第2加熱用金属体4の流体導入ポート4p1は、中間接続管7を介して、第1加熱用金属体3の流体導出ポートに接続されている。
【0033】
そして、本実施形態のスコット結線変圧器2は、図2に示すように、主座変圧器2Mの1次巻線(以下、主座1次コイル2a)及び2次巻線(以下、主座2次コイル2b)が巻回される第1の主脚鉄心(主座脚鉄心21)と、T座変圧器2Tの1次巻線(以下、T座1次コイル2c)及び2次巻線(以下、T座2次コイル2d)が巻回される第2の主脚鉄心(T座脚鉄心22)と、前記2つの主脚鉄心21、22に生じる磁束の共通の通路になる共通脚鉄心23と、前記2つの主脚鉄心21、22及び共通脚鉄心23の上下それぞれを連結する継鉄心24とを備えている。
【0034】
主座1次コイル2aの両端には、三相(U相、V相、W相)のうち二相(例えばV相、W相)が接続される。また、T座1次コイル2cの一方の端は、主座1次コイル2aの中点に接続され、T座1次コイル2cの他方の端は、三相のうち主座1次コイル2aに接続されない残りの一相(例えばU相)が接続される。具体的には、主座1次コイル2aの偶数巻き数Nに対し、T座1次コイル2cの巻き数を(√3/2)Nとして、T座1次コイル2cの一方の端を主座1次コイル2aのN/2の位置に接続するように構成されている。
【0035】
また、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23は、インボリュート形状に湾曲された湾曲部を有する多数の磁性鋼板を放射状に積層して円筒状に形成した断面略円形のインボリュート鉄心により構成されている。そして、主座脚鉄心21及びT座脚鉄心22は同寸法のものであり、主座脚鉄心21の横断面積S1と、T座脚鉄心22の横断面積S2とは互いに等しい。また、共通脚鉄心23の横断面積は、主座脚鉄心21及びT座脚鉄心22の横断面積S1、S2の√2倍である。具体的には、図2に示すように、共通脚鉄心23の直径が、主座脚鉄心及びT座脚鉄心の直径をdとした場合に、(√2)0.5dである。
【0036】
さらに、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23は、スコット結線変圧器2を上面から見た平面視において、それぞれが三角形の頂点の位置になるように配置されている。本実施形態では、平面視において、主座脚鉄心21の中心と共通脚鉄心23の中心とを結ぶ線と、T座脚鉄心22の中心と共通脚鉄心23の中心とを結ぶ線とのなす角度が、120度となるように構成されている。また、本実施形態では、2次コイル2b、2dが中空導体管からなっており、主座脚鉄心21及び共通脚鉄心23の中心間距離と、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の中心間距離とが互いに異なる。具体的には、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の中心間距離の方が大きい。これは、T座変圧器2Tの2次コイル用中空導体管は、過熱蒸気を生成するので高温になるため、当該中空導体管を包むための断熱材により、T座変圧器2Tの巻回径が大きくなるためである。
【0037】
継鉄心24は、変形巻鉄心により構成されており、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の上面を互いに連結する上継鉄心24aと、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の下面を互いに連結する下継鉄心24bとからなる。この上継鉄心24a及び下継鉄心24bは、それぞれ平面視において共通脚鉄心23を屈折点として折れ曲がっている。本実施形態の各継鉄心24a、24bは、共通脚鉄心23の中心を屈曲点として、くの字状に折れ曲がっている。
【0038】
このように構成したスコット変圧器用鉄心100によれば、主脚鉄心21、22と、共通脚鉄心23とが平面視においてそれぞれが三角形の頂点に位置するように配置されるとともに、継鉄心24が、平面視において共通脚鉄心23を中心にくの字に折れ曲がっているので、主脚鉄心21、22の距離を小さくして、鉄心全体の幅方向の寸法を小さくし、省スペース化を図ることができる。
【0039】
しかして本実施形態の過熱水蒸気発生装置100は、図1に示すように、主座変圧器2Mの入力側の2相のうち一方に、電圧又は電流を制御する第1制御機器5が設けられている。なお、図1では、主座変圧器2Mの入力側のV相に第1制御機器5であるサイリスタ等の半導体制御素子を設けている。また、T座変圧器2Tの入力側である1次コイル2cの一端側(T座1次コイル2cのU相側又は中点O側)に、電圧又は電流を制御する第2制御機器6が設けられている。この第2制御機器6も、前記第1制御機器5と同様、サイリスタ等の半導体制御素子を用いたものである。そして、図示しない制御装置が、第1加熱用金属体3の温度及び第2加熱用金属体4の温度を用いて前記第1制御機器5及び前記第2制御機器6を制御することによって、主座変圧器2Mが第1加熱用金属体3に印加する出力電圧とT座変圧器2Tが第2加熱用金属体4に印加する出力電圧とを個別に制御するように構成されている。なお、制御装置は、第1加熱用金属体3の温度を、第1加熱用金属体3に設けた温度センサから取得し、第2加熱用金属体4の温度を、第2加熱用金属体4に設けた温度センサから取得する。
【0040】
次に、図4に示す過熱水蒸気発生装置100と同等回路の試験装置を用いた試験結果を説明する。なお、主座1次コイル2aの巻き数は44であり、T座1次コイル2cの巻き数は38であり、各変圧器2M、2Tの2次コイル2b、2dの巻き数は22とした。
【0041】
以下の表1は、第1制御機器5によりV相を遮断して、第2制御機器6により入力電圧(Eu−w(V))を変化させた場合の、各部の電圧及び電流を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
ここで、本試験では、変圧器の2次巻線抵抗が、a−Oa回路及びb−Ob回路ともに、0.16Ωと高いため、出力電圧が低下して巻数比に応じた出力電圧が出ていない。2次巻線抵抗による電圧低下分を修正すると、Eu−o(V)、Eo−w(V)、T座変圧器の出力電圧(Ea−o(V))及び主座変圧器の出力電圧(Eb−o(V))は、以下の表2の通りとなる。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すように、第1制御機器5によりV相を遮断して、第2制御機器6によりEu−w(V)を変化させた場合には、T座変圧器2Tの出力電圧に対して、主座変圧器2Mの出力電圧が、約66%残留していることが分かる。
【0046】
ここで、表1におけるEu−w=158(V)の項を見ると、1次コイルにおけるu−o間とo−w間との分担電圧は、それぞれ、114.4(V)と43.1(V)となっており、巻数比である38Tと22Tとの比の分担になっていない。これは、主座変圧器2Mの鉄心及びT座変圧器2Tの鉄心が一体形成されて共通脚鉄心があるとはいえ、磁気回路は別々に構成されているので、1T当たりの分担電圧が同じになっていないためである。Eu−w(V)は、それぞれの励磁インピーダンスの比により分担されており、励磁インピーダンスは磁路の長さ、磁束密度、ギャップ長、巻数等によって決まるものである。つまり、T座変圧器2Tの出力電圧に対する主座変圧器2Mの出力電圧の残留電圧の比は、T座変圧器2Tの励磁インピーダンスに対する主座変圧器2Mの主座一次コイル2aの巻数を半分とした場合の励磁インピーダンスの比となる。
【0047】
次に、以下の表3に、第2制御機器6により制御電流を一定に保ち(EU−W(V)≒158(V))、第1制御機器5により主座変圧器2Mの入力電圧(EV−W(V))を変化させた場合の、各部の電圧及び電流を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示すように、第1制御機器5により主座変圧器2Mの入力電圧(EV−W(V))を約1.8倍に変化させることにより、T座変圧器2Tの出力電圧(Ea−o(V))が約18%変動する結果となっている。
【0050】
次に、以下の表4に、第1制御機器5により制御電流を一定に保ち(EV−W(V)≒158(V))、第2制御機器6により入力電圧(EU−W(V))を変化させた場合の、各部の電圧及び電流を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4に示すように、主座変圧器2Mの出力電圧(Eb−o(V))は、T座変圧器2Tの出力電圧(Ea−o(V))の変化に影響を受けない結果となっている。
【0053】
次に、以下の表5に、第2制御機器6によりU−O間電圧を一定(≒101(V))に保った状態で、第1制御機器5により主座変圧器2Mの入力電圧(EV−W(V))を変化させた場合の、各部の電圧及び電流を示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5に示すように、T座変圧器2Tの出力電圧(Ea−o(V))は一定に保たれており、主座変圧器2Mの出力電圧(Eb−o(V))が制御されている結果となっている。
【0056】
ここで、飽和水蒸気を発生させる熱量を1としたときの、過熱水蒸気を発生させる熱量と過熱水蒸気温度との関係を示す特性グラフを図5に示す。
【0057】
過熱水蒸気温度が200℃のときは0.059、過熱水蒸気温度が748℃のときは0.5、過熱水蒸気温度が1279℃のときは1.0、過熱水蒸気温度が1752℃のときは1.5、過熱水蒸気温度が2000℃のときは1.79となっている。
【0058】
また、過熱水蒸気温度と三相交流電源の各相の電流値の関係を、以下の表6に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
表6から分かるように、過熱水蒸気温度1279℃では、各相の電流比が1:1:1でバランスしており、2000度では、各相の電流比が1.223:1:1となり、748℃では、各相の電流比が0.756:1:1となり、200℃では、各相の電流比が0.278:1:1となる。したがって、過熱水蒸気と呼ばれる最低温度の200℃から極限温度の2000℃の範囲において、1相の電流値がゼロとなるような極端な電流のアンバランスは発生しない。
【0061】
このように構成した本実施形態の過熱水蒸気発生装置100によれば、主座変圧器2Mの入力側の2相のうち一方に第1制御機器5を設け、T座変圧器2Tの入力側に第2制御機器6を設けているので、主座変圧器2Mの出力電圧とT座変圧器2Tの出力電圧とを個別に制御することができる。これにより、スコット結線変圧器2の特徴を生かしつつ、過熱水蒸気温度の制御を容易に行うことができる。また、従来のように主座変圧器2M及びT座変圧器2Tの出力側に2台の単相変圧器を設ける必要も無いので、装置構成を簡略化することができる。
【0062】
また、主座変圧器2Mの鉄心及びT座変圧器2Tの鉄心が一体形成されたものであり、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23が、平面視においてそれぞれが三角形の頂点に位置するように配置され、継鉄心24が、平面視において共通脚鉄心23を屈折点として折れ曲がっているので、2つの主脚鉄心21、22間の距離を小さくして、スコット結線変圧器2全体の幅方向の寸法を小さくし、省スペース化を図ることができる。また、スコット結線変圧器2を構成する変圧器を2式から1式にすることができ、装置をコンパクトにすることができる。
【0063】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0064】
例えば、前記実施形態では、各変圧器2M、2Tの2次コイル2b、2dが中空導体管から形成されており、前記各加熱用金属体3、4が、前記2次コイル2b、2dにより構成されたものであったが、第1加熱用金属体3及び第2加熱用金属体4が、各変圧器2M、2Tの2次コイル2b、2dに接続されて通電加熱されるものであっても良い。また、主座変圧器2M又はT座変圧器2Tの何れか一方の2次コイルが中空導体管からなり、第1加熱用金属体3又は第2加熱用金属体4の何れか一方が、2次コイルにより構成されるものであっても良い。
【0065】
また、主座変圧器2M又はT座変圧器2Tの少なくとも一方において、1次コイルが、脚鉄心周りにおいて2次コイルの内側及び外側にそれぞれ重ねて巻回されているものであっても良い。これにより、1次コイルの間に2次コイルが挟まれる構成となり、漏れ磁束を低減することができ、設備効率を上げることができる。
【0066】
さらに、1次コイルを中空導体管等の中空金属体から構成して、第1加熱用金属体3に流入する水を予熱する構成としても良い。これにより、1次コイルを構成する中空金属体で発生する抵抗熱及び鉄心の熱を水に与えることができ、設備効率を向上させることができる。
【0067】
その上、前記実施形態では、主座変圧器2Mの鉄心及びT座変圧器2Tの鉄心を一体形成しているが、主座変圧器2Mの鉄心及びT座変圧器2Tの鉄心を別々の鉄心としても良い。
【0068】
加えて、前記実施形態の主座変圧器2M及びT座変圧器2Tを単巻変圧器としても良い。これならば、1次コイルと2次コイルとの間の絶縁を簡素にすることができ、製作し易くなるとともに、事故発生のリスクを低減することができる。
【0069】
さらにその上、主座脚鉄心21の中心と共通脚鉄心23の中心とを結ぶ線と、T座脚鉄心22の中心と共通脚鉄心23の中心とを結ぶ線とのなす角度は、120度に限られず、例えば図6に示すように、90度としても良い。つまり、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23が、平面視において、それぞれが直角三角形の頂点に位置するように配置され、共通脚鉄心23が、直角三角形の頂点のうち直角である頂点に位置するように配置されるものであっても良い。これならば、前記実施形態よりも、スコット結線変圧器全体の幅方向の寸法を小さくし、省スペース化を図ることができる。
【0070】
さらに加えて、前記実施形態では、主座脚鉄心21及び共通脚鉄心23の中心間距離と、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の中心間距離とが互いに異なるものであったが、主座脚鉄心21及び共通脚鉄心23の中心間距離と、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23の中心間距離とが互いに等しいものであっても良い。つまり、主座脚鉄心21、T座脚鉄心22及び共通脚鉄心23が、平面視において、それぞれが二等辺三角形の頂点に位置するように配置されており、各継鉄心24a、24bは、共通脚鉄心23の中心に対して左右対称形状となっている。これならば、2つの主脚鉄心21、22の磁気特性が互いに同等となり、効率良く三相交流電源から2つの単相回路に変換することができる。
【0071】
また、前記第1加熱用金属体及び前記第2加熱用金属体の構成としては、前記実施形態のように中空導体管に限られず、以下のように構成しても良い。以下、第1加熱用金属体及び前記第2加熱用金属体を区別せずに、単に加熱用金属体11という。
【0072】
図7及び図8に示すように、加熱用金属体11が、複数の金属要素12、13を重ねて形成されたものであり、当該複数の金属要素12、13の対向面の間に内部流路Rが形成されている。この加熱用金属体11には、前記内部流路Rに流体を供給するための外部配管が接続される導入ポートP1が形成されるとともに、加熱された流体を外部に導出するための外部配管が接続される導出ポートP2が形成されている。
【0073】
具体的に前記加熱用金属体11は、円筒状をなす第1の金属要素12と、当該第1の金属要素12に挿入して設けられた円筒状をなす第2の金属要素13とを備えており、当該第1の金属要素12の内面及び第2の金属要素13の外面とにより前記内部流路Rが形成される。本実施形態の内部流路Rは、前記加熱用金属体11の一端部から他端部に亘って形成された螺旋状をなすものである。内部流路Rの一端部には、前記導入ポートP1が連通しており、内部流路Rの他端部には、前記導出ポートP2が連通している。つまり、前記導入ポートP1は加熱用金属体11の第1の金属要素12の軸方向一端部に設けられており、前記導出ポートP2は加熱用金属体11の第1の金属要素12の軸方向他端部に設けられている。
【0074】
より詳細には、前記第1の金属要素12は、加熱用金属体11の外径側部分を形成する例えばSUS306L等の金属薄板(例えば厚さ2mm)製の金属製円筒体である。この第1の金属要素12には、前記螺旋状の内部流路Rを形成するために、その内面に径方向外側に向かって凹んだ螺旋状の凹溝121が形成されている。この螺旋状の凹溝121を形成するために第1の金属要素12は変形加工が施されている。この変形加工としては、例えば、水圧等の液圧によって変形させるバルジ加工(ハイドロフォーミング)や、螺旋状の凹部又は凸部が形成された型に沿って駒(ローラ)等によって加圧変形させる加工等が考えられる。
【0075】
また、第2の金属要素13は、加熱用金属体11の内径側部分を形成する例えばSUS306L等の金属薄板(例えば厚さ2mm)製の金属製円筒体である。この第2の金属要素13には、前記螺旋状の内部流路Rを形成するために、その外面に径方向内側に向かって凹んだ螺旋状の凹溝31が形成されている。この第2の金属要素13の螺旋状の凹溝131は、前記第1の金属要素12の螺旋状の凹溝121に対応するように同一高さに同一ピッチで形成されている。この変形加工としては、水圧等の液圧によって変形させるバルジ加工(ハイドロフォーミング)や、螺旋状の凹部又は凸部が形成された型に沿って駒(ローラ)等によって加圧変形させる加工等が考えられる。さらに、第2の金属要素13の外径寸法は、前記第1の金属要素12の内径寸法と略同一であり、第2の金属要素13は、圧入、焼きばめ又は冷やしばめ等によって、第1の金属要素12に挿入して設けられる。
【0076】
そして、第1の金属要素12及び第2の金属要素13の軸方向両端部(加熱用金属体11の軸方向両端部11a、11b)のみに、流体漏れ防止用のシール加工が施されている。このシール加工としては、例えば溶接が考えられる。
【0077】
この構成により、加熱用金属体11の軸方向両端部11a、11bは液密にシールされるが、第1の金属要素12の凹溝121間の内面と、第2の金属要素13の凹溝131間の外面とが面接触する(図8の部分拡大図参照)。
【0078】
この構成により、加熱用金属体11が複数の金属要素(第1の金属要素12及び第2の金属要素13)を重ねて形成し、それらの金属要素12、13の間に内部流路Rが形成されているので、金属要素12、13が持つ柔軟性により、誘導加熱による熱変形に耐える構造とすることができる。これにより、熱変形による破損等の可能性が小さい過熱水蒸気発生装置を提供することができる。
【0079】
加熱用金属体11が円筒状であるので、変圧器の脚鉄心を第1の金属要素12の内側に配置する構成によって、加熱用金属体11を誘導加熱することができる。このとき、加熱用金属体11の内径側部分を単一部材(第1の金属要素12)から形成されているので、熱変形に強い構造とすることができる。
【0080】
また、内部流路Rが螺旋状をなすものであり、誘導加熱された金属要素12、13との接触面積を大きくするとともに、流体流速を速くすることができ、熱交換効率を向上させることができる。また、第1の金属要素12及び第2の金属要素13に螺旋状の凹溝121、131が形成されることになるため、金属要素12、13の機械的強度を向上させることができる。
【0081】
さらに、第1の金属要素12及び第2の金属要素13の軸方向両端部のみに、流体漏れ防止用のシール加工が施されているので、第1の金属要素12及び第2の金属要素13の熱膨張差による変形差を機械的に吸収することができる。
【0082】
前記図7及び図8では、第1の金属要素及び第2の金属要素の両方に凹溝が形成されたものであったが、何れか一方に凹溝を形成するものであっても良い。例えば、図9及び図10に示すように、第1の金属要素12を、前記実施形態と同様に螺旋状の凹溝121を形成したものとし、第2の金属要素13を、変形加工を施していない等断面形状の円筒体としても良い。このような構成により、第1の金属要素12のみに螺旋状の凹溝12を形成すればよく、第2の金属要素13に変形加工を施す必要がないため、加工工数及び加工コストの低減、変形金型の簡易化が可能となる。なお、第2の金属要素13を、前記実施形態と同様に螺旋状の凹溝を形成したものとし、第1の金属要素12を変形加工を施していない等断面形状の円筒体としても良い。
【0083】
また、加熱用金属体11の軸方向両端部11a、11bのみを溶接等によりシール加工しているが、内部流路の間における第1の金属要素12及び第2の金属要素13の面接触部分をスポット溶接等により溶接しても良い。
【0084】
さらに、第1の金属要素12及び第2の金属要素13を互いに異なる板厚又は材質で構成しても良い。これならば、それぞれの金属要素の電気抵抗値や機械的強度を調整した構造にすることができる。例えば、変形加工を施した金属要素は機械的強度が増すことになるので、板厚を薄く設定することができる。また、内径側の金属要素は外径側の金属要素よりも周長が短く電気抵抗値が小さくなるので、内径側の金属要素を薄くしたり、固有抵抗が高い材質にすることで、外周側の金属要素と同等の温度上昇値にすることができる。
【0085】
その上、前記実施形態では金属要素が薄板要素であったが、金属要素が所定の肉厚(例えば20mm)を有する厚板要素であっても良い。この場合、図11に示すように、例えばSUS306L等の円筒体である第2の金属要素3の外面に螺旋状の凹溝加工を施して、その外側に、例えばSUS306L等の円筒体である第1の金属要素2を焼きばめや冷やしばめ等により嵌入して構成しても良い。なお、前記凹溝加工としては、例えば切削加工等の機械加工である。そして、第1の金属要素2及び第2の金属要素3の軸方向両端部(加熱用金属体1の軸方向両端部1a、1b)のみに、流体漏れ防止用のシール加工(例えば溶接)を施す。なお、第2の金属要素3だけでなく、前記実施形態のように、第1の金属要素2の内面に、第2の金属要素3の螺旋状の凹溝31に対応するように同一高さに同一ピッチで凹溝加工を施しても良い。また、第1の金属要素2の内面のみに凹溝加工を施しても良い。
【0086】
また、図12及び図13に示すように、前記加熱用金属体11が、幅方向一端面10a及び幅方向他端面10bに開口する流路形成孔10xが形成された金属板10を円筒状に変形し、幅方向一端面10a及び幅方向他端面10bを接合して形成されたものである(図12参照)。そして、幅方向一端面10aの開口及び幅方向他端面10bの開口が繋がることにより前記内部流路Rが形成されている。この加熱用金属体11には、前記内部流路Rに流体を供給するための外部配管が接続される導入ポートP1が形成されるとともに、加熱された流体を外部に導出するための外部配管が接続される導出ポートP2が形成されている。
【0087】
具体的に金属板10は、図14に示す金属板10を円筒状に変形して形成されている。この金属板10は、矩形平板状をなす例えばステンレス鋼などの導電性金属板である。なお、内部に流路形成孔10xが形成可能な程度であり、且つ円筒状に変形可能な程度の板厚を有している。そして、この金属板10には、幅方向一端面10aから幅方向他端面10bまで直線状に延び、前記金属板10の幅方向に対して傾斜した複数の流路形成孔10xが形成されている。この複数の流路形成孔10xは、互いに平行となるように同一ピッチで形成されている。
【0088】
ここで、流路形成孔10xの形成方法としては、図14の部分拡大図に示すように、金属板10の厚み方向一端面10cに直線状の溝10Mを形成し、溝10Mを蓋体10Tで覆い溶接することによって形成することが考えられる。これにより、流路形成孔10xを容易に形成することができる。また、この方法により、幅方向一端面10a及び幅方向他端面10bの間で曲がった流路形成孔10xも形成することができる。
【0089】
そして、金属板10の幅方向一端面10a及び幅方向他端面10bを溶接することで互いに異なる流路形成孔10xの開口が繋がり、螺旋状の内部流路Rが形成される。より詳細には、金属板10の幅方向一端面10a及び幅方向他端面10bを接合することで、互いに隣接する流路形成孔10xの開口が繋がる。つまり、互いに隣接する流路形成孔10xにおいて、一方の流路形成孔10xの幅方向一端面10aの開口と、他方の流路形成孔10xの幅方向他端面10bの開口とが繋がる。このようにして、加熱用金属体1の内部に1本の螺旋状の内部流路Rが形成される。この内部流路Rの一端部には、前記導入ポートP1が連通しており、内部流路Rの他端部には、前記導出ポートP2が連通している。これらポートは、展開状態の金属板10又は円筒状に変形された後に溶接される。
【0090】
このように、流路形成孔10xが形成された金属板10を変形して内部流路Rを有する加熱用金属体11を形成しているので、加熱用金属体11全体の剛性を高めることができ、誘導加熱による熱変形に耐える構造とすることができる。これにより、熱変形による破損等の可能性が小さい過熱水蒸気発生装置を提供することができる。
【0091】
加熱用金属体11が円筒状であるので、変圧器の脚鉄心を加熱用金属体11の内側に配置する構成によって、加熱用金属体11を誘導加熱することができる。このとき、加熱用金属体11が単一円筒部材から形成されているので、熱変形に強い構造とすることができる。
【0092】
また、内部流路Rが螺旋状をなすものであり、誘導加熱された加熱用金属体11との接触面積を大きくするとともに、流体流速を速くすることができ、熱交換効率を向上させることができる。
【0093】
例えば、図12及び図13の加熱用金属体11では、内部流路が1本の螺旋状流路であった、流路形成孔のピッチ又は傾斜角度を変更することで、2本以上の螺旋状流路を有する構成としても良い。また、加熱用金属体の内部流路が途中で分岐するように構成しても良い。
【0094】
また、加熱用金属体の内部流路は螺旋状に限られず、図15に示すような流路形成孔が形成された金属板を用いても良い。
【0095】
さらに、前記実施形態では、金属板の溝を形成して、当該溝を蓋体で閉塞することによって例えば断面矩形状の流路形成孔を形成するものであったが、図16に示すように、金属板10の幅方向一端面10a又は他端面10bの少なくとも一方から、例えばドリル等の切削工具を用いて断面円形状の流路形成孔(貫通孔)10xを形成するものであっても良い。
【0096】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
100・・・流体加熱装置
2 ・・・スコット結線変圧器
21 ・・・主座脚鉄心(主脚鉄心)
22 ・・・T座脚鉄心(主脚鉄心)
23 ・・・共通脚鉄心
24 ・・・継鉄心
2M ・・・主座変圧器
2a ・・・1次コイル
2b ・・・2次コイル
2T ・・・T座変圧器
2c ・・・1次コイル
2d ・・・2次コイル
3 ・・・第1加熱導体管(第1加熱用金属体)
4 ・・・第2加熱導体管(第2加熱用金属体)
5 ・・・第1制御機器
6 ・・・第2制御機器
図1
図2
図3
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