(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薄型化のために従来のスティックポインタの操作突起を突出量の少ない平坦な形状に変更した場合、操作突起に歪みが生じにくくなるため操作性が低下し、これにより操作者による押圧力及びその方向を正確に検出することが難しくなるという問題がある。
【0006】
これに対して、歪みセンサに代えて静電容量センサを用いた場合には、歪みセンサによる圧力分布に代わって、静電容量分布を得ることはできる。しかし、薄型化と小型化のために、ポインティングデバイスの専有面積を広げずに平坦な形状とした場合、操作者による押圧の位置や方向を判別することが難しいことから、操作者が意図する移動方向の検出は困難である。
【0007】
そこで本発明は、薄型化と小型化を実現することができ、かつ、操作者による押圧力及び押圧方向を正確に検出することができる入力機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の入力機器は、基板上に入力凸面を備え、入力凸面に対する操作者の指の動作に応じた入力を受け付ける入力部と、入力部からの出力信号に基づき、指の動作を判断する判断部と、を有する入力機器であって、
静電容量を検出するための検出電極が基板上に設けられ、検出電極を覆うように入力凸面が配置され、入力凸面は、基板から上方へ曲面状に突出するように設けられ、
頂部から周縁部に至る斜面を有し、検出電極は、斜面を構成する複数の分割領域に対応する複数の電極に分割され、入力凸面の頂部は、操作者から見て手前側に設けられており、入力部は、指の動作に応じて変化する静電容量を検出することを特徴としている。
【0009】
曲面状に突出する入力凸面に対する指の動作を静電容量によって検出するため、薄型化と小型化を実現しつつ、正確な検出を行うことが可能となる。
【0011】
また、静電容量の検出を平面状の検出電極で行い、指の動作を曲面状の入力凸面に対して行うことにより、小さな専有面積の中で正確な検出が行うことができる。
【0013】
さらに、指の移動方向が判別しやすくなるため、正確な検出を行うことが可能となる。
【0015】
しかも、頂部を手前側に設けた曲面形状にすることによって、奥行き方向における静電容量の検出データを均等にすることができ、これによりさらに正確に指の動作を検出することができるようになる。
【0018】
本発明の入力機器において、判断部は、指が斜面の分割領域のいずれに接触又は接近したかを判断することが好ましい。
【0019】
これにより、指の移動方向が判別しやすくなるため、正確な検出を行うことが可能となる。
【0020】
本発明の入力機器において、検出電極は、指の腹に対応する面積を有することが好ましい。
これにより、小さな面積で指先の動きを正確に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、薄型化と小型化を実現するとともに、操作者による押圧力及び押圧方向を正確に検出することができる入力機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る入力機器について図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0024】
各図には、基準座標としてX−Y−Z座標が示されている。Z方向は、入力機器としてのポインティングデバイス10の高さ方向に沿っており、X−Y面はZ方向に直交する面である。以下の説明において、Z1−Z2方向から見た状態を平面視といい、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向ということがある。
【0025】
図1(A)は本実施形態における基板20の構成を示す側面図、
図1(B)は検出電極30が形成された基板20の構成を示す側面図、
図1(C)はポインティングデバイス10の構成を示す側面図である。
図2(A)は基板20の構成を示す平面図、
図2(B)は検出電極30が形成された基板20の構成を示す平面図、
図2(C)はポインティングデバイス10の構成を示す平面図である。
図3は、ポインティングデバイス10の構成を示すブロック図である。
図4(A)はは入力凸面40の奥側斜面43に操作者の指Fが接触した状態を示す側面図、
図4(B)は入力凸面40の手前側斜面44に操作者の指Fが接触した状態を示す側面図である。
【0026】
ポインティングデバイス10は、パソコンやタブレット端末などのためのキーボードに用いる入力機器であって、
図1と
図2に示すように、基板20上に検出電極30を形成し、さらに、検出電極30を覆うように入力凸面40を配置した構成を備える。
【0027】
基板20は、非導電性材料、例えばガラス又はプラスチックで平面視円形状に形成される(
図2)。
【0028】
検出電極30は、導電性材料で形成され、例えば銅箔のエッチング、ITO(酸化インジウム・スズ)のスパッタリングによって所定のパターンに形成される。
図2(B)に示すように、検出電極30は、円形の基板20の中心20cに関して等角度ごとに、第1検出電極31、第2検出電極32、第3検出電極33、及び第4検出電極34を有する。これらの4つの検出電極31〜34は互いに絶縁されている。検出電極30は、基板20の中心20cを円の中心とする所定の直径の円形部分21には形成されておらず、4つの検出電極31〜34の平面形状は輪帯状となっている。
【0029】
検出電極30は、XY平面において、操作者の指の腹の範囲に対応する面積となるように形成されている。ここで、指とは、入力凸面40を操作することが想定される、大人の人差し指、中指、 又は親指である。指の腹とは、
図4に示す、指の先端Tから遠位指節間関節Dまでの範囲の内側部分Bである。検出電極30の大きさは、指の腹と同等又はそれ以下であることが好ましく、例えば、平面視で直径8.5〜10mmであるとよい。これにより、操作者の指を大きく動かさずにポインティングデバイス10を操作できるため、周りに配置したキーに対する誤操作を防ぎつつ、小さな面積で構成することができる。
【0030】
4つの検出電極31〜34においては、接地部(GND)との間の静電容量の変化を検出する。より具体的には、検出電極31〜34のいずれにも指が接近していないときは、各検出電極と接地部の間の寄生容量に応じて、各検出電極に電流が流れる。ここで、いずれかの検出電極に指が接近すると、指が接近した検出電極と指との間が容量結合されるため、その分だけ静電容量(自己容量)が増大し、これにより電圧印加時に検出電極に流れる電流も増大する。このため、指が接近した検出電極からの出力信号と、それ以外の検出電極からの出力信号とに基づいて、指の位置を特定することができ、4つの検出電極31〜34を用いて連続的に測定することによって操作者の指の動きを検出することができる。
【0031】
一方、検出電極30と基板20との間に駆動電極を形成した構成も可能である。この場合、駆動電極に電圧を印加すると、4つの検出電極31〜34のそれぞれと駆動電極との間に電位差が発生し、各検出電極と駆動電極の間の静電容量(相互容量)に応じて、各検出電極に電流が流れる。ここで、いずれかの検出電極に指が接近すると、指と、検出電極の間も容量結合されるため、その分だけ検出電極と駆動電極の間の静電容量が減少し、これにより電圧印加時に検出電極に流れる電流も減少する。このため、指が接近した検出電極からの出力信号と、それ以外の検出電極からの出力信号とに基づいて、指の位置を特定することができ、指の位置を連続的に測定することによって操作者の指の動きを検出することができる。
【0032】
入力凸面40は、非導電性材料、例えば合成樹脂の成形により、検出電極30を覆うように、基板20から上方へ、すなわちZ1方向へ曲面状に突出するように形成される。
図1(C)に示すように、入力凸面40は、XY平面において基板20の中心20cに対応する位置が頂部41となり、頂部41から周縁部42に至る斜面からなる半球状の形状を備える。上述のように基板20において中心20cを中心とする円形部分21には検出電極が形成されていないため、頂部41に対応する位置には検出電極が形成されていないこととなる。また、
図2(C)に示すように、入力凸面40の斜面は、4つの検出電極31〜34にそれぞれ対応するように、頂部41について等角度に分割された4つの分割領域40a、40b、40c、40d(分割領域)を有する。本実施形態では、入力凸面40の平面形状を、基板20と同一直径の円形状としているが、検出電極30を覆う形状であれば、入力凸面40の平面形状は基板20の直径より小さくてもよいし、楕円形状であってもよい。
【0033】
操作者の指が、入力凸面40の斜面のいずれかの分割領域に接触又は接近すると、接触した領域の下方に位置する検出電極に指が接近することになるため、その検出電極について静電容量が増大する。また、入力凸面40上において複数の分割領域間で指を動かすと、移動に応じて、分割領域に対応する複数の検出電極において静電容量が増減する。
【0034】
図3に示すように、4つの検出電極31〜34は静電容量算出部51に接続されている。静電容量算出部51は、4つの検出電極31〜34から出力された検出信号に基づいて、それぞれの検出電極について静電容量を算出する演算回路であり、算出結果を判断部52へ出力する。ここで、検出電極30、入力凸面40、及び静電容量算出部51は、入力凸面40に対する指の動作に応じた入力を受け付ける入力部として機能する。
【0035】
判断部52は、静電容量算出部51による算出結果に基づいて、指の位置及び動作を判断する。判断部52は、静電容量が増大した検出電極に対応する位置に指があると判断し、複数の検出電極において静電容量が増減した場合には、静電容量が減少した検出電極に対応する位置から静電容量が増大した検出電極に対応する位置へ指が移動したものと判断する。このとき、判断部52は、指の移動方向に対応する方向に、パソコン等の画面上のカーソル(ポインタ)を移動させるポインティング動作の指示信号をパソコン等へ出力する。
【0036】
また、判断部52は、指の位置が、所定時間以上(例えば0.5秒以上)にわたって一定の位置にとどまっているときは、操作者が入力凸面40の斜面の分割領域の1つを押圧し続けていると判断し、頂部41から上記領域へ向かう方向にパソコン等の画面上のカーソルを移動させる指示信号を出力する。
【0037】
操作者の指の動作に対応したカーソル移動量の算出は、より具体的には次のように行う。第1検出電極31の検出信号に基づいて静電容量算出部51で算出された静電容量をa、同様に第2検出電極32の検出信号に基づいて算出された静電容量をb、第3検出電極33の検出信号に基づいて算出された静電容量をc、第4検出電極34の検出信号に基づいて算出された静電容量をdとしたとき、奥行き方向(Y1−Y2方向)の移動量は次式(1)によって算出し、左右方向(X1−X2方向)の移動量は次式(2)によって算出する。
【0038】
((a+b)−(c+d))/(a+b+c+d) (1)
((a+d)−(b+c))/(a+b+c+d) (2)
【0039】
ここで、上式(1)、(2)による移動量の算出は、分母の(a+b+c+d)が閾値より大きいときに行うことが好ましい。これにより、正確な移動量を算出することができ、この移動量に基づいた正確なポインティング動作を行わせることが可能となる。上記閾値は、ポインティングデバイス10の形状、材質、ユーザーが所望する感度等に応じて設定する。
【0040】
パソコン等においては、判断部52において上式(1)又は(2)を用いて算出された、奥行き方向と左右方向の移動量に基づいて、画面上のカーソルの移動量(Δx、Δy)を算出し、この算出結果に応じてカーソルを移動させる。
【0041】
図5(A)は変形例におけるポインティングデバイス110の構成を示す側面図、
図5(B)は
図5(A)の平面図である。
図1と
図2に示すポインティングデバイス10においては、XY平面において基板20の中心20cに対応する位置に入力凸面40の頂部41を配置していたが、これに代えて、
図5(A)、(B)に示すように、操作者から見て手前側、すなわち基板20の中心20cよりもY2側の所定範囲に頂部を配置するとさらに好ましい。
図5(A)、(B)に示すポインティングデバイス110においては、
図1と
図2に示すポインティングデバイス10と同様に基板20上に検出電極30を形成した後に、検出電極30を覆い、かつ、操作者から見て手前側に頂部141を配置した入力凸部140が形成されている。この入力凸面140は、
図1と
図2に示す入力凸面40と同様に、非導電性材料の成形により、基板20から上方へ突出するように形成される。
図5(A)、(B)に示すように、入力凸面140は、XY平面において基板20の中心20cよりもY2側であって、検出電極30が設けられている位置20dに対応する位置が頂部141となり、頂部141から周縁部142に至る斜面からなる曲面状の形状を備える。
【0042】
図6は、入力凸面の頂部の位置をY2方向にオフセットした量と検出電極における検出の感度の関係を示すグラフである。
図7(A)は
図6のオフセット量Aに対応するポインティングデバイス10の側面図、(B)は
図6のオフセット量Bに対応するポインティングデバイス110の側面図、(C)は
図6のオフセット量Cに対応するポインティングデバイス210の側面図である。
図6の横軸はオフセット量であって、「A」は
図1、
図2、及び
図7(A)に示すポインティングデバイス10を用いた場合を示し、「B」は
図5及び
図7(B)に示すポインティングデバイス110を用いた場合を示し、「C」は
図7(C)に示すポインティングデバイス210を用いた場合を示している。
図7(C)に示す入力凸面240においては、
図7(B)に示す入力凸面140よりも、さらに操作者の手前側にずらした位置に配置した頂部241を有する。この頂部241は、
図7(C)に示すように、検出電極30が設けられていない位置20eに対応する位置に配置されている。
図6においては、入力凸面の奥側(Y1側)の斜面に指が接触した場合を破線と白抜きの丸印で示し、手前側(Y2側)の斜面に指が接触した場合を実線と黒の丸印で示している。
【0043】
図6に示すように、
図7(A)に示すポインティングデバイス10を用いた場合(
図6のオフセット量A)では、手前側の斜面よりも奥側の斜面に指が接触した場合の方が感度が低くなり、
図7(C)に示すポインティングデバイス210を用いた場合(
図6のオフセット量C)では、手前側の斜面よりも奥側の斜面に指が接触した場合の方が感度が高くなっている。これらに対して、
図7(B)に示す入力凸面140を用いた場合(
図6のオフセット量B)では、手前側の斜面と奥側の斜面における検出感度がほぼ同一になっている。この結果より、入力凸面の頂部の位置によっては、操作者が同じ 操作量で指を入力凸面に接触させても、指や手の構造や入力凸面に対する手の位置等により、入力凸面の手前側斜面に指を接触させた場合と、奥側斜面に指を接触させた場合とで検出される静電容量が同等にならないことが分かる。さらに、
図6のオフセット量Bのように、頂部の位置を調整することによって、静電容量をバランスよく検知することが可能となる。
【0044】
以上のように構成されたことから、上記実施形態及び変形例によれば、次の効果を奏する。
【0045】
(1)曲面状に突出する入力凸面40に対する指の動作を静電容量によって検出するため、入力凸面40の位置によって検出電極との距離が変化することから、操作者がパソコン等の画面上でカーソルを移動させたい方向に対応する斜面に指を触れることにより、その斜面に対応する位置の検出電極の静電容量が増大し、ほかの位置の検出電極の静電容量は減少する。このため、小型化と薄型化を実現するだけでなく、指の動作を正確に検出できることから、操作者の意思に即したカーソル移動を実現することができる。
【0046】
これに対して、単に薄型化して平坦な形状としたポインティングデバイスや、指の腹の形状に合わせて凹面形状としたポインティングデバイスでは、その表面の全面に常に指が接触してしまうため、指を傾けたりしても検出される静電容量に変化が生じないことから、操作者が希望する方向を検出することができない。
【0047】
(2)検出電極30が基板20上に設けられ、検出電極30を覆うように曲面状の入力凸面40が配置されているため、小さな専有面積の中で指の移動空間を確保できることから、正確な検出が行うことができる。
【0048】
(3)検出電極30が、入力凸面40が有する4つの分割領域40a〜40dにそれぞれ対応する4つの検出電極31〜34に分割されているため、指の移動方向が判別しやすくなることから、正確な検出を行うことが可能となる。
【0049】
(4)基板20において、頂部41に対応する円形部分21に検出電極が設けられていないため、頂部41を挟んだ検出電極間の離間距離が広がるため、入力凸面40の斜面のどの領域からどの領域に指が移動したのかが判別しやすくなることから、判断部52による判断の精度を高めることができる。
【0050】
(5)検出電極30が、操作者の指の腹に対応する面積を有することにより、小さな面積で指先の動きを正確に検出することが可能となる。
【0051】
(6)入力凸面の頂部を、操作者から見て手前側であって、所定範囲内に設けることにより、奥行き方向における静電容量の検出データを均等にすることができ、これによりさらに正確に指の動作を検出することができるようになる。
【0052】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。