特許第6282225号(P6282225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282225前方焦点距離訂正を有する光学装置のウェハレベルの製作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282225
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】前方焦点距離訂正を有する光学装置のウェハレベルの製作
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   G02B3/00 Z
   G02B3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-526352(P2014-526352)
(86)(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公表番号】特表2014-524597(P2014-524597A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】CH2012000201
(87)【国際公開番号】WO2013026175
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/527,355
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512195902
【氏名又は名称】ヘプタゴン・マイクロ・オプティクス・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HEPTAGON MICRO OPTICS PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラドマン,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】マルック,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】レントゲン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハイムガルトナー,シュテファン
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/074743(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0181854(US,A1)
【文献】 特表2005−539276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 − 1/08
3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(10)を製造するための方法であって、前記方法は、製造異常を少なくとも部分的に補償するための訂正工程を行なうことを備え、前記訂正工程はスペーサウェハ(SW)と呼ばれるウェハを設けることを含み、前記スペーサウェハは前記製造異常を少なくとも部分的に補償するために構成され、前記スペーサウェハ(SW)は多数の概して横方向に延在する領域を含むよう製造され、前記領域の各々におけるスペーサウェハの縦の長さは、それぞれの領域に対して個別に選択され、
前記方法は、前記多数の領域の複数において前記縦の長さを減少させることを備え、前記縦の長さを減少させることは、第1の処理工程を行ない、前記第1の処理工程と異なる第2の処理工程を前記第1の処理工程の後で行なうことを含み、前記第1の処理工程は、前記第2の処理工程と比べて、前記多数の領域のうちの前記複数の領域から、より高い速度で材料を除去して行なわれ、
前記スペーサウェハ(SW)は、互いに異なる材料からなる第1の層(m1)および第2の層(m2)を含み、前記第2の層(m2)はポリマー材からなり、前記材料を除去することは前記第2の層だけに行なわれる、方法。
【請求項2】
前記第1の処理工程は、前記第2の処理工程と、適用された処理技術において異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の処理工程は、前記第2の処理工程と、それぞれの処理工程で用いられるツールにおいて異なる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の処理工程は、前記第2の処理工程と、それぞれの処理工程で用いられる少なくとも1つの処理パラメータにおいて異なる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記縦の長さを減少させることは、切断または機械加工またはレーザアブレーションを用いて達成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記切断または機械加工は、前記複数の領域の各々に対して個別に適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記縦の長さを減少させることは、フライス削りまたはフライス削りツールを用いて達成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記縦の長さを減少させることは、レーザアブレーションを用いて達成される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は光学部品、より特定的にマイクロ光学部品の分野に関する。特に、本発明は、光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置のウェハレベルの製作に関する。本発明は、請求項の冒頭の節に係る方法および器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
WO 2011/156928 A2(2011年6月10日出願)として公開された国際特許出願より、ウェハレベルで製作可能なカメラおよびカメラ用光モジュールが公知である。当該特許出願では、カメラおよびカメラ用光モジュールならびにそれらの製造方法が多少詳細に開示されている。したがって、当該特許出願WO 2011/156928 A2は引用により本特許出願に援用される。
【0003】
用語の定義
「能動光学コンポーネント」:光検知部品または発光部品。たとえば、フォトダイオード、画像センサ、LED、OLED、レーザチップ。
【0004】
「受動光学コンポーネント」:レンズ、プリズム、ミラー、または光学系などの、屈折および/または回折および/または反射によって光の方向を変える光学コンポーネントであり、光学系は、開口絞り、画像スクリーン、ホルダなどの機械的要素も含み得るこのような光学コンポーネントの集まりである。
【0005】
「光電子モジュール」:少なくとも1つの能動光学コンポーネントおよび少なくとも1つの受動光学コンポーネントが含まれる部品。
【0006】
「複製」:所与の構造またはそのネガを再現する技術。たとえば、エッチング、エンボス加工、インプリンティング、鋳造、成形。
【0007】
「ウェハ」:実質的に円盤状または板状の物体であり、一方向(z方向または縦方向)におけるその延在部は、他の2方向(xおよびy方向または横方向)におけるその延在部よりも小さい。通常、(ブランクでない)ウェハ上に、複数の同様の構造または物体が典型的に矩形グリッドで配置されるか内部に設けられる。ウェハは開口または孔を有してもよく、ウェハはその横方向領域の主要部分に材料を含まなくてもよい。多くの文脈において、ウェハは一般的に半導体材料からなると理解されるが、本特許出願においてこれは明らかに限定事項ではない。したがって、ウェハは一般的に、たとえば半導体材料、ポリマー材料、金属およびポリマーまたはポリマーおよびガラス材料を含む複合材料からなり得る。特に、熱硬化性または紫外線硬化性ポリマーなどの硬化性材料が、本発明に関連して対象となるウェハ材料である。
【0008】
「横」:「ウェハ」参照。
「縦」:「ウェハ」参照。
【0009】
「光」:最も一般的に電磁放射であり、より特定的に、電磁スペクトルの赤外線部分、可視部分または紫外線部分の電磁放射。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
本発明の1つの目的は、装置、特に光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置の代替的な製造方法を提供することであり、特に、装置、特に光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置の改善された製造方法を提供することである。さらに、対応する装置、特に光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置、ならびにウェハおよびウェハスタックなどの関連の装置および器具も提供される。
【0011】
本発明の別の目的は、光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置の製造における製造歩留まりを改善することである。
【0012】
本発明の別の目的は、光学系、光電子モジュールおよびカメラなどの光学装置の、特にこれらがウェハスケールで製造された場合の品質を改善することである。
【0013】
さらなる目的が以下の説明および実施形態から明らかになる。
これらの目的の少なくとも1つは、特許請求項に係る器具および方法によって、ならびに/または以下に記載の器具および方法によって、少なくとも部分的に達成される。
【0014】
本発明は特に装置(特に光学装置)およびその製造、ならびに光学装置の製造の際に用いられるウェハ(スペーサウェハ)およびウェハ積層体(スペーサウェハおよび光学ウェハを含む)に関する。本発明は一般に、少なくとも1つの能動光学コンポーネントおよび/または少なくとも1つの受動光学コンポーネントを一般的に含む少なくとも1つの光学部材を備える。当該製造は一般にウェハスケールの製造工程に係わる。
【0015】
装置、特に光学装置の製造時には、たとえば、単に、1つ以上の処理ステップにおいて多少避けられない変化または不正確さのために、製造異常または製造偏差が発生し得る。たとえば、装置が少なくとも1つのレンズ素子を含む場合、ウェハ(光学ウェハと称される)上の複数のそのようなレンズ素子は、名目上は同じ焦点距離を有するにも関わらず、実際は、(若干)異なる焦点距離を有する。
【0016】
本発明者は、ウェハレベルで製造異常を少なくとも部分的に訂正または補償することができ、それによって、装置の歩留まりおよび/または光学特性を改善できることを見出した。
【0017】
このような製造異常をウェハレベルで補償するスペーサウェハが提案されている。より特定的には、スペーサウェハの形状、特にその厚さ(縦の長さ)および厚さの分布(スペーサウェハの横方向にわたる、縦の長さの分布)は、前記製造異常が少なくとも部分的に補償されるような態様で選択される。さらに、代替的にまたは付加的に、求められる補償に寄与するスペーサの他の特性、たとえばスペーサウェハによって形成される光チャネルでの透明な材料といった、材料の選択および/または材料の厚さ(縦の長さ)も提供される。スペーサウェハと呼ばれる提案されているウェハは、受動光学コンポーネントを含み得る。
【0018】
場合によっては、前記製造異常はある程度、再現可能である、または製造工程を繰返し行なうと再現される。このような場合、複製を用いて製造される、製造異常を(少なくとも部分的に)補償するためのスペーサウェハを用いることが有利であり得る。他の製造異常は予測できる態様を示さないようである。場合によっては、光学ウェハで測定を行なうことが役に立ち得る。これにより、製造異常を少なくとも部分的に補償するのに適するスペーサウェハを選択または製造できることになる。
【0019】
本発明において3つの副局面がある。
第1の副局面において、(光学ウェハにわたる)前記製造異常の平均値が、たとえば試料測定に基づき、決定され、その平均値に基づいて選択された厚さ(縦の長さ)を有するスペーサウェハが用いられる。このスペーサウェハは、複数の予め製造されたスペーサウェハから選択する、または製造され得る。この第1の局面において、一般に製造異常の(横の)分布にありうる傾向は無視される。
【0020】
第2の副局面において、このような傾向が利用される。たとえば、光学ウェハで行なわれた測定に基づき、適切なスペーサウェハ、たとえば全体的な傾斜を有するスペーサウェハが用いられる。
【0021】
第3の副局面において、多数の領域を有するスペーサウェハであって、スペーサウェハの厚さ(縦の長さ)が個別の値を有するスペーサウェハを用いることが提案される。たとえば、光学ウェハに含まれる多数の光学部材の各々に対して、前記製造異常に関連する値が定められ、スペーサウェハは各々が前記光学部材の1つに関連する多数の領域を有し、前記領域の各々の厚さ(縦の長さ)は、それぞれの関係のある光学部材に対して定められる値に関連付けられているおよび/またはその値に基づいて選択される。
【0022】
第3の副局面は、複製工程を用いてスペーサウェハを製造することを含むことによって実現でき、製造異常を既に考慮している複製マスタが用いられる。こうして、このような複製マスタを用いて得られたスペーサウェハは、少なくともある程度、製造異常を補償することができる。複製マスタの設計は、製造異常がスペーサウェハによって補償される(特定の)光学ウェハに基づいて、または同じ態様で製造された付加的光学ウェハ(または複数のこのような付加的光学ウェハ)に基づいて、定めることができる。光学ウェハの製造が複製工程を含む場合、特に注意を引くものであり、1対の一致した複製マスタの生成であって、1つは光学ウェハの製造用、もう1つはスペーサウェハの製造用の複製マスタをもたらし、光学ウェハおよびスペーサウェハを含むウェハ対は、特に一致して得ることができ、その結果高い製造歩留まりおよび/または特に高い品質の装置をもたらす。
【0023】
第3の副局面を実現する別の態様は、たとえばフライス削りにより、スペースウェハから材料を局所的に取除く、または材料を追加することを含む。生産速度を上げるために、1つのスペーサウェハを同時に複数の場所で加工できる。
【0024】
第3の副局面は、上記の2つの可能な方法を組合せることによって実現することができる。すなわち、製造異常を事前に考慮した複製マスタを用いた複製により製造されたスペーサウェハを使用し、次に局所的に材料を除去または追加する。後者は微調整工程であり、複製によって得られたスペーサウェハでは補償されなかった製造異常の量を定めるために、(さらなる)測定に基づいている。
【0025】
スペーサウェハが多数の光チャネルを備え、各々が前記光学ウェハの多数の光学部材のいずれかに関連付けられる場合、その光チャネルの長さは、前記製造異常を少なくとも部分的に補償するためのある大きさとして用いることができる。上記の副局面について、以下がたとえば意図される:
−第1の副局面において、前記光チャネルのすべてに対して、前記光チャネルの長さは、上記の平均値になる製造異常を少なくともほぼ補償する値となる;
−第2の副局面において、スペーサウェハにわたる前記光チャネルの長さの横方向の分布は、数学的関数によって記述できるように選択され、前記数学的関数はフィッティング関数から得ることができ、これは前記製造異常の横方向の分布を記述する数学的関数に適合する;
−第3の副局面において、各前記光チャネルの長さは、それぞれの関係のある光学部材の製造異常に対して定められた値に関連付けられたおよび/またはその値に基づいて選択された値となる。
【0026】
前記副局面と無関係に、本発明は分離工程、より特定的にはウェハ積層体を一般になす前記スペーサウェハおよび前記光学ウェハが複数のモジュールに分離される、より特定的には各々が1つの光学部材を含む多数のモジュールに分離される工程を含む。
【0027】
さらに、光チャネルはスペーサウェハを縦に延在する開口、たとえばスルーホールであり得る。さらに、光チャネル(または少なくともいずれかの光チャネル)の中に透明材があり、光チャネルは不透明材によって取囲まれ得る。透明材は光チャネルを完全にまたは部分的に充填し得る。個別に各チャネルに調整された量を与えることにより、前記製造異常を補償することに寄与し得る。たとえば、求められる補償を達成するための2つの方策(または提供または工程)の1つとして、たとえば微調整工程として、与えることができる。
【0028】
特に、以下の実施の形態は、本発明の少なくとも特定の観点において、本発明に対して以下の特徴を有する:
方法:
本方法は装置、特に光学装置を製造するための方法である。本方法は、製造異常を少なくとも部分的に補償するための訂正工程を行なうことを含み、前記訂正工程はスペーサウェハと呼ばれるウェハを設けることを含み、前記スペーサウェハは前記製造異常を少なくとも部分的に補償するよう構成されている。特に、前記製造異常は、名目値からの偏差を含み得る。具体的に、前記製造異常は前記装置の構成の寸法的異常を含み得る。
【0029】
さらに、前記装置は光学部材を含み、より特定的には、前記光学部材は少なくとも1つの受動光学コンポーネントおよび/または少なくとも1つの能動光学コンポーネントを含み得る。
【0030】
一実施の形態において、本方法は前記スペーサウェハを製造する工程を含む。この場合、前記スペーサウェハの製造は、前記製造異常に基づいて一般に行なわれる。
【0031】
上記の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、本発明は前記スペーサウェハを複数の予め製造されたスペーサウェハから選択する工程を含む。特に、前記予め製造されたウェハは、異なる仕様に従い製造され、より特定的には、前記予め製造されたスペーサウェハは、縦の長さが互いに異なる。これは求められる補償(第1の副局面)を達成する相対的に簡単な方法である。
【0032】
1つ以上の上記の実施の形態と組合せることができる一実施例において、前記装置は光学部材を含み、前記光学部材は、光学ウェハと呼ばれるウェハ上に配置される多数の光学部材を製造することによって製造され、前記多数の光学部材は前記光学部材を含む。
【0033】
最後に記載した実施の形態に従う一実施の形態において、前記スペーサウェハは、前記補償を少なくとも部分的に達成するために、1つ以上の概して横方向に延在する領域を示すよう製造され、その領域においてスペーサウェハは概して湾曲した形状を規定し、前記1つ以上の領域の各々は、前記多数の光学部材のうちのいくつかの光学部材によって前記光学ウェハが占める面積ほど大きい面積にわたって延在し、特に前記スペーサウェハはちょうどこのような1つの領域を示し、より特定的には、前記1つの領域はスペーサウェハ全体にわたって実質的に延在する。このようなおよび以下で言及する「概して横方向に延在する領域」は「横方向に規定される領域」であると考えることができる。なぜなら、これらの領域はその横方向の位置および長さによって規定されるからである。これは第2の副局面を実現する1つの態様である。
【0034】
2つの最後に記載した実施の形態の一方または両方に従う一実施の形態において、前記スペーサウェハは概して楔形状または全体的な傾斜を示すよう製造され、より特定的にはスペーサウェハの横方向の面に対して傾斜を有して製造される。これも第2の副局面を実施する1つの態様である。
【0035】
最後に記載した3つの実施の形態の1つ以上と組合せることができる一実施の形態において、前記スペーサウェハは概して横方向に延在する領域を多数含むよう製造され、前記多数の領域の各々は、前記多数の光学部材の一つと関連付けられる。前記領域の各々におけるスペーサウェハの縦の長さは、それぞれの関係のある光学部材の少なくとも1つの特性に基づいて選択される。前記少なくとも1つの特性は焦点距離を含み得る。特に、前記スペーサウェハは複製工程を用いて製造され、前記複製工程で用いられる複製マスタは、前記製造異常を少なくとも部分的に補償するよう設計されている。これは第3の副局面を実施する一つの態様である。
【0036】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、前記スペーサウェハは互いに異なる材料からなる第1の層および第2の層を含む。たとえば、前記第2の層はポリマー材からなる。さらに材料は(特に、上記の概して横方向に延在する領域において)前記第2の層から除去されるが、前記第1の層からは除去されない。前記第1の層は特に(異なる)ポリマーまたはガラスからなる。前記第1および第2の層は2つの互いに接着する板を形成する。
【0037】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、当該方法は第1の処理工程を行い、前記第1の処理工程の後で、前記第1の処理工程と異なる第2の処理工程を行なうことを含む。前記第1および第2の処理工程は、スペーサウェハから材料を除去する、またはスペーサウェハに材料を追加する工程であり得る。特に、前記第1の処理工程が前記第2の処理工程と異なるのは、少なくとも:
−適用された処理技術;
−それぞれの処理工程で用いられるツール;
−それぞれの処理工程で用いられる少なくとも1つの処理パラメータ;
のいずれか1つである。
【0038】
たとえば、前記第1の処理工程は、前記第2の処理工程と比べて、前記多数の領域のうちの複数からより高い速度で材料を除去(または追加)して行なわれる。第2の工程は、たとえば微調整工程であると考えられる。
【0039】
第1の処理工程は第2の処理工程と異なる(横方向に規定される)領域に対して行なわれ得る。これは特にマルチチャネル装置の場合有用であり得る。
【0040】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、前記スペーサウェハは概して横方向に延在する領域を多数含むよう製造され、前記スペーサウェハは、前記多数の概して横方向に延在する領域の各々において、複製材からなる受動光学コンポーネント(たとえばレンズ)を含む。前記訂正工程は複製を用いて前記多数の受動光学コンポーネントを製造することを含み、前記多数の受動光学コンポーネントの各々は、前記スペーサウェハの基板上に複製され、それとともに前記基板とそれぞれの受動光学コンポーネントとの間に配置される複製材の層を形成する前記複製材の付加的部分が複製される。前記領域の各々における複製材のそれぞれの層の縦の長さは、それぞれの領域に対して個別に選択される。本実施の形態は、前記スペーサウェハへの材料の局所的追加を、特定的な態様で実施すると考えられる。光路長および光学コンポーネントの相対的位置は、このような複製材の層の厚さを変える場合に、変えられる。前記スペーサウェハは光学ウェハであると考えられる。なぜなら、前記受動光学コンポーネントを含むからである。
【0041】
最後に記載した実施の形態に従う一実施の形態において、前記装置は光学部材を含み、前記光学部材は光学ウェハと呼ばれるウェハ上に配置される多数の光学部材を製造することによって製造された光学部材であり、前記多数の光学部材は前記光学部材を含み、前記多数の概して横方向に延在する領域の各々は、前記多数の光学部材の一つと関連付けられる。前記領域の各々において、それぞれの層の縦の長さは、それぞれの関係のある光学部材の少なくとも1つの特性に関連付けられる、またはその特性に基づいて選択され、前記少なくとも1つの特性は任意に焦点距離を含む。特に、前記受動光学コンポーネントを複製するために用いられる複製マスタは、前記光学部材の製造異常を少なくとも部分的に補償するために設計されている。
【0042】
第1の観点における装置:
第1の観点において、本特許出願に記載されている製造方法に従って製造された装置が本発明に含まれる。このような装置は、たとえば光電子モジュール、カメラ用モジュール、撮像装置、スマートフォンのような通信装置であり得る。
【0043】
本発明は本発明に従う対応する方法の特徴を有する装置を含み、およびその逆に、本発明に従う対応する装置の特徴を有する方法を含む。
【0044】
当該装置の利点は、対応する方法の利点に基本的に対応し、その逆に、当該方法の利点は対応する装置の利点に基本的に対応する。
【0045】
第2の観点における装置:
第2の観点において、光学ウェハと呼ばれる第1のウェハおよびスペーサウェハと呼ばれる第2のウェハを含む装置が本発明に含まれ、前記光学ウェハは製造異常を有し、前記スペーサウェハは前記製造異常を少なくとも部分的に補償する。当該装置は特にウェハ積層体であり得る。
【0046】
本装置の一実施の形態において、前記スペーサウェハは互いに異なる材料からなる第1の層および第2の層を含み、特に前記第2の層はポリマー材からなり、および/または前記第1の層はガラスからなる、または、たとえば異なるポリマーが第1および第2の層に用いられる。
【0047】
最後に記載した実施の形態に従う一実施の形態において、前記光学ウェハは多数の光学部材を含み、前記スペーサウェハは多数の概して横方向に延在する領域を含み、前記多数の領域の各々は、前記多数の光学部材の一つと関連付けられる。前記領域の各々における前記第2の層の縦の長さは、それぞれの関係のある光学部材の少なくとも1つの特性に関連付けられるまたはその特性に基づいて選択され、特に前記少なくとも1つの特性は焦点距離を含む。ここでは、前記第1の層の縦の長さは前記領域の各々では実質的に同一である。
【0048】
前記スペーサウェハは、複製工程を用いて製造され、および/または前記スペーサウェハは硬化可能ポリマーといった硬化された硬化可能材料からなる。
【0049】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、前記スペーサウェハは多数の光チャネルを形成する。特に、前記多数の光チャネルの各々は、前記スペーサウェハによって形成されるチャネル壁によって取囲まれる。前記チャネル壁が不透明材料からなる場合、光チャネルの少なくとも部分的な光学的分離が得られる。しかし、一般に、チャネル壁は透明材料からもなり得る。
【0050】
さらに、前記多数の光チャネルの1つ以上の光チャネル(特に、前記多数の光チャネルの各々)において、透明材料がある。光チャネルを通過する光は前記透明材料を通る。液体またはやや固化した透明材を通る光路長は、−典型的に真空であるまたは空気が存在する)「通常の」(「充填されていない」開口を通る光路長と一般的に異なる。こうして、前記製造異常の補償を達成または少なくとも寄与するために、前記多数の光チャネルのうちの第1の光チャネルにある前記透明材の量は、前記多数の光チャネルのうちの少なくとも第2の光チャネルにある前記透明材料の量と異なるよう選択できる。
【0051】
複製によって、開口を取囲む多数のチャネル壁を含むウェハを製造することができ、このようなウェハは、たとえば角柱状または管状の開口を有する平たいふるいのように形作られ得る。さらに、前記透明材料は硬化された硬化可能材料であり得る。このような態様で、材料は液体の形でチャネルに充填され、後で硬化される。前記多数の光チャネルのいずれかにある透明材料は、縦に規定された範囲に沿って全体的に、特に前記縦の規定された範囲が前記それぞれのチャネルの端部で終わる場合、それぞれのチャネルを充填する。
【0052】
上記の3つの副局面に類似して、光チャネルに透明材料を(少なくとも)以下の3つの態様で設けることができる:
−光チャネルすべてにおいて前記透明材料の量または厚さが(名目上)同じである;
−光チャネルにある前記透明材料の量または厚さは、スペーサウェハにわたって全体的傾向を規定する;
−光チャネルにある前記透明材料の量または厚さは、スペーサウェハの多数の領域に対して個々に選択される、たとえば各スペーサ部材または光学部材に対して個々に選択される。
【0053】
前記光学ウェハが多数の光学部材を含むのなら、前記光チャネルの各々は前記光学部材のいずれかと一般に関連付けられる。
【0054】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、前記スペーサウェハは多数の概して横方向に延在する領域および前記概して横方向に延在する領域すべてにわたって延在する基板を含み、前記スペーサウェハは前記多数の概して横方向に延在する領域の各々において受動光学コンポーネント(たとえばレンズ)を含む。前記多数の概して横方向に延在する領域の各々において、ある材料層が前記基板とそれぞれの受動光学コンポーネントとの間にあり、各前記領域のそれぞれの層の縦の長さは、それぞれの領域に対して個々に選択される。特に、前記層は受動光学コンポーネントと同じ材料からなり、より特定的には、前記層の各々は、それぞれの受動光学コンポーネントとともに一体的部分を形成する。さらに、前記受動光学コンポーネントは複製材からなるおよび/または複製を用いて製造される。受動光学コンポーネントが同時に1工程でそれぞれの関連する材料層とともに製造されるのなら、前記製造異常の補償はほんの少しの手間だけで達成できる。
【0055】
最後に記載した実施の形態に従う一実施の形態において、前記光学ウェハは多数の光学部材を含み、前記多数の光学部材の各々は前記多数の概して横方向に延在する領域の一つと関連付けられ、前記領域の各々において、それぞれの領域における層の縦の長さは、それぞれの関係のある光学部材の少なくとも1つの特性に関連付けられるまたはその特性に基づいて選択され、特に前記少なくとも1つの特性は焦点距離を含む。
【0056】
前に記載した1つ以上の実施の形態と組合せることができる一実施の形態において、前記光学ウェハは複製工程を用いて製造される、および/または本発明に従う対応する方法の特徴を有して、硬化された硬化可能材(特に、硬化された硬化性材料)からなる。
【0057】
本発明は、本発明に従う対応する装置の特徴を有する方法、およびその逆に、本発明に従う対応する方法の特徴を有する装置を含む。
【0058】
本発明の利点は対応する装置の利点に基本的に対応し、およびその逆に、装置の利点は対応する方法の利点に基本的に対応する。
【0059】
さらなる実施の形態および利点は、請求項および図面から明らかとなる。
図面の簡単な説明
以下に、実施例および添付の図面によって本発明はより詳細に説明される。図面は非常に簡略化された態様で示される。
【0060】
説明される実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の第1の副局面を示す、断面図である。
図2】本発明の第1の副局面を示す、断面図である。
図3】本発明の第2の副局面を示す、断面図である。
図4】本発明の第3の副局面を示す、断面図である。
図5】分離工程を示す、断面図である。
図6】本発明の第3の副局面の特定の実施の形態を示す、断面図である。
図7】本発明の第3の副局面の別の特定の実施形態を示す、断面図である。
図8】本発明の局面を示す、断面図である。
図9】本発明の局面を示す、断面図である。
図10】本発明の局面を示す、断面図である。
図11】本発明の局面を示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
図1および図2は、本発明の上記の第1の副局面を概略的に示す断面図である。
【0063】
ウェハ積層体100またはその詳細は図1および図2に示され、スペーサウェハSW、および2つの光学ウェハOW1およびOW2を含む。多数の装置10は、このようなウェハ積層体100から得ることができ、各々はスペーサ部材Sおよび2つの光学部材O1およびO2を含む。
【0064】
図3に示されるように、1つの光学ウェハ(参照符号OW)しかない可能性もある。
各光学部材は少なくとも1つの受動光学コンポーネントL、たとえば、図1および図2の例ではレンズ素子Lを含み、装置10当たり4つのレンズ素子Lを含み、光学部材O1およびO2の各々に対して2つある。スペーサ部材Sは、たとえば光学部材が他の装置または部材に固定される場合、光学部材および/または少なくとも1つの受動光学コンポーネントLと別の装置または部材との間に明確に定められた距離を確実にするために用いることができる。ここでは、前記距離は通常非常に重要である、特にコンポーネントまたは素子Lの焦点距離といった特徴的な大きさを考慮する際、重要である。
【0065】
たとえば、製造上の理由により、受動光学コンポーネントL(の組)の焦点距離は、各装置10では同一でないことも起こり得る。
【0066】
スペーサウェハSWはこのような問題を是正する助けとなる。
たとえば、複数の装置10の焦点距離の平均値を定めることができる。そして、この平均値が名目値から(十分に大きい程度)ずれると、厚さtのスペーサウェハを用いることができ、これは特にその偏差がある場合に適するものとなる。これは図1および図2に示される。図2において、(平均)焦点距離の対応する偏差を補償するために、より厚いウェハが用いられる。
【0067】
異なる厚さ(縦の長さ)のスペーサウェハを予め製造し、これらのうちの1つを、補償するべき定められた(平均)偏差に基づいて選択することができる。または、適切な厚さのスペーサウェハが特定的に作成される。
【0068】
スペーサウェハSWは複製を用いて、または複製の手段を用いることによって、容易に作ることができる。
【0069】
スペーサウェハSWは、部分的に、または全体が、不透明材料からなり得る。このような不透明材料を設けることにより、装置10に不所望な光の伝搬が入出力されるのを防止する。
【0070】
図3は、図1および図2と同じ態様で、本発明の上記の第2の副局面を示す。
ここで、焦点距離の偏差に全体的な傾向が観測され、これは変動する厚さ、たとえば全体的に楔形状である、または全体的に楔形状のプロファイルを有するスペーサウェハSWを用いることによって、補償される。
【0071】
このようなスペーサウェハSWは、研磨を用いて製造することができる。
もちろん、焦点距離のもっと複雑な傾向または分布、たとえば湾曲した形状、いくつかの互いに傾斜した面などを有する形状に対して、ウェハにわたる他の特徴的な大きさも補償することができる。
【0072】
図4は、図1図2および図3と同じ態様で、本発明の上記の第3の副局面を示す。
ここで、各装置10において、スペーサウェハを通る光チャネル7の長さは、それぞれの装置の受動光学コンポーネントの偏差(製造異常)を少なくとも部分的に補償するために、個別に調整される。
【0073】
これは、スペーサウェハから材料を除去すること、たとえば機械加工、フライス削り、または孔開け、またはレーザアブレーションによって達成される。一般に、名目値(名目焦点距離)からの偏差は、各装置(ウェハを装置10に分離する前)の各々に対して定められ、機械加工、またはフライス削りまたは孔開けまたはレーザアブレーションは、スペーサウェハが分離される前に、個別になされる。
【0074】
スペーサウェハの光チャネル7の長さを増加させる、またはスペーサウェハの厚さを局所的に増加させることもできる。これは、たとえばインクジェット技術により、(局所的に)スペーサウェハに材料を追加することによって達成される。
【0075】
図5は分離工程を示し、それによりウェハ積層体は個別の装置10に分離される。分離は参照符号101がある線に沿って行なわれる。
【0076】
図6は第3の副局面(図4参照)の特定の実施の形態を示す。スペーサウェハSWはここでは特定の形状を有する。この特定の形状は、スペーサウェハSWの厚さを局所的に減少させる、特に厚さを減少させるために回転ツールが用いられる場合に、たとえば機械加工またはフライス削りまたは孔開けによって行なわれる場合に、促進させる。このようなジオメトリを有するスペーサウェハSWの製造は、たとえば複製を用いることによって達成できる。図6の右部分は、斜視図において、スペーサウェハの一部、より特定的には分離工程の後に見られるスペーサウェハの部分を示し、特にその分離工程において、スペーサウェハを含むウェハ積層体は多数の単一装置10に分離される。
【0077】
図6の右部分に示されるように、スペーサウェハは一方側において(より特定的には、ウェハ積層体100においてレンズ素子Lから、および光学ウェハOW2から反対側に向いている側において)、たとえば各装置に対して、多数のリング形状の部分を有する。(材料を除去することによって得られる)高さの調節は、この側で行なわれ、より特定的にはこれらリング状の部分で行なわれる。
【0078】
図1図2図4図5、および図6において、2つの光学ウェハOW1およびOW2の間において、付加的スペーサウェハといった他のウェハがある、または対応する構造は光学ウェハOW1およびOW2の一方に含まれ得る。
【0079】
1つ以上の光学ウェハの製造は複製を用いて達成することができ、特に1つ以上の受動光学コンポーネントL(レンズ素子L)の製造は、複製を用いて、または複製手段により、達成できる。
【0080】
図7は、本発明の第3の副局面の別の特定の実施の形態の断面図である。本実施の形態において、光学ウェハに含まれる1つ以上の受動光学コンポーネントの製造異常は、1つ以上の他の受動光学コンポーネントの製造において補償される。より特定的には:
本実施の形態において、第1の受動光学コンポーネント(より特定的には、レンズ素子L)の製造異常は、第2の受動光学コンポーネント(より特定的には、レンズ素子L′)の製造において補償され、特に、前記第2の受動光学コンポーネントは製造の際、前記第1の受動光学コンポーネントがその製造の際に含まれるウェハと異なるウェハに含まれる。
【0081】
図7はウェハ積層体100の一部を概略的に示し、光学ウェハOWと、ウェハSWとを含み、ウェハSWは(別の)光学ウェハとして呼ぶ方が相応しいが、本特許出願で用いられる用語との互換性を高めるために、スペーサウェハSWと呼び、さらに基板ウェハPWと、光学ウェハOWおよびスペーサウェハSWの間に(これらの間の縦の距離を規定する)スペーサウェハSW′と、基板ウェハPWおよびスペーサウェハSWの間に(これらの間の縦の距離を規定する)スペーサウェハSW″とを含む。
【0082】
光学ウェハOWは、受動光学コンポーネントLと、任意に、図7に示されるように、その反対面にさらなる受動光学コンポーネントを含む。スペーサウェハSWは、受動光学コンポーネントL′と、任意に図7に示されるように、その反対面においてさらなる受動光学コンポーネントを含む。基板ウェハPWはマルチピクセルディテクタ、たとえば画像検出器といった光検出素子20を含むことができ、ウェハOWおよびSWの受動光学コンポーネントを通る光を検出する。
【0083】
図7のウェハ積層体100は、マルチチャネル装置、たとえばアレイカメラまたはコンピューテーショナルカメラを製造するために用いることができる。この場合、ウェハ積層体100を個々の装置に分離することは、太い縦の破線に沿って行なうことができ、対応する装置は、たとえば3×3チャネルアレイを有する9チャネル装置であり得る。図7に示される実施の形態は、単一のチャネル装置を得るために見られるものであり得る。さらに、点線の矩形によって示される単一チャネルC参照。
【0084】
各チャネルの全体の焦点距離に対して、レンズ素子Lが特に重要であると考える(焦点距離は、製造異常を救済するために調整されるべき特徴的な大きさの一例である)のなら、スペーサウェハSW上の個別のレンズ素子Lの偏差は、より特定的にはその製造の際に、さらにより特定的にはレンズ素子L′の製造の際に、補償することができる。すなわち、以下の態様で行なわれる:
各個別のレンズ素子Lについて、所望の(名目上の)焦点距離値からの偏差を定めることができ、そこからスペーサウェハSWの基板3およびそれぞれのレンズ素子L′の間にある材料の層Yの厚さは、その偏差を補償するのに適する厚さとして定めることができる。厚さを変えることにより、補償を行なうことができる。なぜなら、それぞれのチャネルの光路長さの変動に影響するからである。
【0085】
このような方法は、レンズLおよびL′の少なくとも一方が、特にレンズLおよびレンズL′の両方が、複製を用いて製造する場合に特に有用である。たとえば以下のとおりである:
多数のレンズLを製造するために構成されている複製ツールを用いてレンズLが作成されると、個別のレンズLの形の偏差はウェハOWの同じ場所でほぼ同じ態様で起こり得る。なぜなら、複製ツールの形状の不完全性はこのような不完全性の主要な要因となるからである。この偏差についての知識をレンズL′の製造に用いることができる。レンズL′は複製により基板3上に作られ、各レンズL′は1つの処理であって層Yと同じ複製処理(したがって同時に)製造され、各個別の層の厚さは、(同じチャネルの)対応するレンズLの前記不完全性を補償するために調整される。これは多数のレンズL′を製造するための複製ツールを用いた場合、高精度で達成できる。図7において、3つの異なるチャネルの3つの異なる厚さd1、d2およびd3が示される。
【0086】
すなわち、レンズ素子Lの名目値からの偏差についての知識は、多数のレンズL’を製造するための複製ツールの製造に用いることができる。すなわち個別に選択された層厚さd(d1、d2およびd3)の層Yを提供する複製ツールは、複製ツールを用いた時に作成される。これらの厚さd1、d2およびd3はレンズLの前記偏差(製造異常)を補償するために適切に選択される。
【0087】
もちろん、このような補償のために、チャネルの他の受動光学コンポーネントを1つ以上用いることもでき、さらにチャネルの1つ以上の他の受動光学コンポーネントの製造異常を補償することもできる。
【0088】
図7に示される受動光学コンポーネントは(実際に示されるような)屈折性のあるものであり得るが、そのうちの1つ以上は回折性のものまたは回折性かつ屈折性のものであり得る。さらに、これらは必ずしもレンズである必要はない。
【0089】
さらに、基板ウェハPWは一般に任意である。この場合、スペーサウェハSW″(および受動光学コンポーネントL′がある面と反対側の面にある、スペーサウェハSW上にある他の任意の受動光学コンポーネント)がなくてもよいこともある。
【0090】
図8から図10は、本発明のさらに可能な局面および実施の形態を示す。図8から図10は、断面図において、ウェハ積層体100を示し、これは名目値からずれている焦点距離といった製造異常を少なくとも一部が有する受動光学コンポーネントLを含む光学ウェハOWと、スペーサウェハSW2と、光学ウェハOWおよびスペーサウェハSW2の間の所望の(縦の)距離を確実にするためのスペーサウェハSW1とを含む。ウェハ積層体の1つの特性は、スペーサウェハSW2が異なる(しかし透明な)材料の2つの層m1およびm2を含むことである。たとえば、層m1はガラスからなり、層m2はポリマーからなる;または2つの異なるポリマー材が層m1およびm2に対して用いることができる。より一般的には、光学ウェハOWに面する層(m1)は機械的安定性を提供するために設けられ、他方の層(m2)(より特定的には、それをなす材料)は、層m1(の材料)よりも機械的安定性が低い。さらに/または、スペーサウェハSW2から材料を除去する方法または処理を考慮して、層m2の材料は層m1の材料よりも除去しやすい。
【0091】
スペーサウェハSW1おびSW2を1つのスペーサウェハとして見ることもできる。さらに、層m1およびm2をそれぞれ別個のスペーサウェハとして考えることもできる。
【0092】
より具体的に、図9および図10に示されるように、光学ウェハOWの製造異常を補償するための材料の除去は、層m2だけで行なわれる。
【0093】
さらに、図8から図10は、より具体的には図9および図10は、2つの(または一般的に3つ以上)の処理工程において、スペーサウェハSW(または具体的には層m2)から、材料を除去することができる。この場合、図9図8のウェハ積層体100に第1の処理工程を適用することによってもたらされるウェハ積層体を示し、図10図9のウェハ積層体100に第2の処理工程を適用することによって得られるウェハ積層体を示す。たとえば、両方の処理工程がフライス削りによって行なわれる場合、第1の処理工程において第2の処理工程と異なるフライス削りツールを用いて、さらにはより速い送り速度で、行なうことができる。さらに、処理工程において異なる処理技術、たとえば最初にレーザアブレーションを行ない、その後でフライス削りを行なう、またはこの逆を組合せることもできる。
【0094】
第2の処理工程は、特に(スペーサウェハSW2の局所厚さに対する)微調整工程であり得る。
【0095】
さらに、図9および図10はたとえば2×2チャネルアレイ(図9および図10参照)を有する4チャネル装置といったマルチチャネル装置の場合での可能な処理を示すものと見ることができる。図9に示されるように、1つの装置10に対して第1の処理工程を個別に行ない、各チャネルC(図10参照)に対して第2の処理工程を別個に行なうことができる。
【0096】
図11は本発明のさらに可能な局面を示す。断面図において、スペーサウェハSW(またはその一部)はいくつかのスペーサ部材Sを含んで示される。スペーサ部材Sは、不透明材料(一般に光学的分離のため)からなるチャネル壁30によって取囲まれる光チャネル7を含む。光チャネル7は部分的に固化透明材40、たとえば硬化可能ポリマーで充填される。
【0097】
図11に示されるようなスペーサウェハSWを得るために、多数のスルーホールを含むウェハを設けることができる。たとえば、単にチャネル壁30からなるふるいのような形のウェハを設けることができる。このようなウェハは、たとえば複製処理を用いて一体的部分として得ることができる。次に、液体の硬化可能材料がスルーホールに充填され、その後硬化される、たとえば重合化される。この際、前記ウェハは液体材がスルーホールから流れ出るのを避けるために、シリコーンマットのような基板上に配置することができる。硬化の後、充填された材料は透明材料40となる。高品質の光学面を有するために、このように得られたウェハに研磨工程を適用することもできる。
【0098】
図11に示されるようなスペーサウェハSWを得る1つの態様において、孔に充填される液体材の量は各光チャネル7に対して個別に選択され、それにより製造異常の求められる補償を達成または向上させるために、光路長を調整する。別の態様では、充填する材料の量は、スペーサウェハのすべての光チャネル(たとえばすべてのスルーホール)において、(少なくとも名目上は)等しい。硬化の後、処理工程が行なわれ、光チャネル個々に対して追加の(または同じ)液体硬化可能材料を加える、および/または光チャネルの個々に対して前記液体硬化可能材料の一部を除去する。このような微調整工程は、しかし上記の第1の態様の場合にも適用することができる。
【0099】
液体材料を充填するために、たとえばディスペンサ(フリップチップなどをアンダーフィルするためのエレクトロニクス製造で既知)を用いることができる。材料を除去するために、機械加工、またはフライス削り、または孔開け、またはレーザアブレーションを用いることができる。
【0100】
光チャネル7の透明材料を設けることにより、それ自体で製造異常の補償を達成し得る。なぜなら、光チャネルを通る光の光路長は、少なくとも一つの透明材料よりも(明確に)大きい屈折率の場合、透明材料の量または縦の長さに一般に依存するからである。しかし、光チャネル7の透明材料を設けることと、光チャネル7の異なる幾何学的長さを提供することとの組合せも可能である。後者の場合、製造異常の求められる補償を最適化するために、たとえば、微細調整として、上記の2つのうち、一方を他方の後に行なうことができる。
【0101】
上記で明らかとなるように、本発明はウェハスケールで高精度の光学装置を非常に高い歩留まりで大量生産できるようにする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11