特許第6282232号(P6282232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282232抗体及びそのFcフラグメントの酵素化学的糖鎖改変
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282232
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】抗体及びそのFcフラグメントの酵素化学的糖鎖改変
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20180208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180208BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20180208BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20180208BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180208BHJP
【FI】
   C12P21/08ZNA
   A61K39/395 C
   A61K39/395 L
   A61K39/395 V
   A61P35/00
   A61P31/18
   A61P37/06
   !C07K16/00
   !C12N9/26 Z
   !C12N15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-556776(P2014-556776)
(86)(22)【出願日】2013年2月11日
(65)【公表番号】特表2015-507925(P2015-507925A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013025553
(87)【国際公開番号】WO2013120066
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/597,468
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510043043
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ メリーランド,ボルティモア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ライ−シー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ウェイ
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0263828(US,A1)
【文献】 特表2009−539870(JP,A)
【文献】 特開平07−002895(JP,A)
【文献】 Jonathan J.Goodfellow,An Endoglycosidase with Alternative Glycan Specificity Allows Broadened Glycoprotein Remodelling,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2012年 5月 2日,Vol.134, No.19,p.8030-8033
【文献】 Wei Huang,Chemoenzymatic Glycoengineering of Intact IgG Antibodies for Gain of Functions,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2012年 7月 2日,Vol.134, No.29,p.12308-12318
【文献】 Thomas A.Bowden,Chemical and Structual Analysis of an Antibody Folding Intermediate Trapped during Glycan Biosynthesis,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2012年10月 1日,vol.134, No.42,p.17554-17563
【文献】 Maria Allhorn,EndoS from streptococcus pygenes is hydrolyzed by the cysteine proteinase SpeB and requires glutamic acid 235 tryptophans for igG glycan-hydrolyzing activity,BMC Microbiology,2008年 1月 8日,Vol.8, No.3,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00−19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のオリゴ糖部分を有するコアフコシル化若しくは非フコシル化抗体又はそのFcフラグメントを調製する方法であって、
コアフコシル化若しくは非フコシル化GlcNAc−アクセプタを含む抗体又はFcフラグメントを提供するステップと、
化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)エンドグリコシダーゼ−S Asp233突然変異体を使用して、前記コアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−アクセプタを活性オリゴ糖供与体と酵素的に反応させるステップであって、前記活性オリゴ糖供与体が、所定の数及びタイプの糖残基を含むオリゴ糖部分を保持し、酵素反応を介して、前記活性オリゴ糖供与体が前記コアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−アクセプタと共有結合し、それによって前記所定のオリゴ糖部分を有する前記フコシル化若しくは非フコシル化抗体又はFcフラグメントを調製するステップと、
を含み、
前記突然変異体が、D233Q(配列番号:2)部位特異的突然変異又はD233A(配列番号:3)部位特異的突然変異を含む突然変異体から選択される、方法。
【請求項2】
前記活性オリゴ糖供与体が、合成オリゴ糖オキサゾリン又はシアル酸付加オキサゾリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成オリゴ糖オキサゾリンが、二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖、十糖、又は十一糖オキサゾリンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性オリゴ糖供与体が、付加的な生物活性治療剤又はタグをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記付加的な生物活性治療剤又はタグが、薬物、毒素、蛍光プローブ、ビオチン、PEG、脂質、又はポリペプチドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コアフコシル化GlcNAc−アクセプタが、アルファ−1−6−フコシル−GlcNAc含有抗体又はFcフラグメントである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コアフコシル化又は非フコシル化抗体が、17b、48d、A32、C11、2Gl2、F240、IgGlb12、19e、X5、TNX−355、セツキシマブ、リツキシマブ、ムロモナブ−CD3、アブシキマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ・オゾガミシン、アレムツズマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、I−131トシツモマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ナタリズマブ、エタネルセプト、IGN101、ボロシキマブ、抗CD80mAb、抗CD23mAb、CAT−3888、CDP−791、エラプツズマブ、MDX−010、MDX−060、MDX−070、マツズマブ、CP−675,206、CAL、SGN−30、ザノリムマブ、アデカツムマブ、オレゴボマブ、ニモツズマブ、ABT−874、デノスマブ、AM108、AMG714、フォントリズマブ、ダクリズマブ、ゴリムマブ、CNTO 1275、オクレンズマブ、HuMax−CD20、ベリムマブ、エプラツズマブ、MLN1202、ビジリズマブ、トシリズマブ、オクレリズマブ、セルトリズマブペゴル、エクリズマブ、パキセリズマブ、アブシキシマブ、ラニビジムマブ、メポリズマブ及びMYO−029からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、がんを治療する治療剤、HIVの治療剤、毒素、別の受容体に反応する前記修飾抗体とは異なる抗体、抗原、ケモカイン及びサイトカインからなる群から選択される付加部分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
均一なコアフコシル化若しくは非フコシル化IgG糖タンパク質又はIgG−Fcフラグメントを合成する方法であって、
(a)不均一な又は望ましくないN−グリカンを含むコアフコシル化若しくは非フコシル化IgG糖タンパク質又はIgG−Fcフラグメントを提供するステップと、
(b)コア均一なフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−IgGアクセプタを形成するために、エンド−H、エンド−F3、エンドS及びエンド−Aからなる群から選択された酵素を用いて前記不均一な又は望ましくないN−グリカンを除去するステップと、
(c)規定された数及びタイプの糖残基を有するN−グリカンを含む所望のオリゴ糖成分を有する、オリゴ糖含有オキサゾリンを提供するステップと、
(d)化膿性連鎖球菌エンド−S Asp233突然変異体を使用して、前記オリゴ糖含有オキサゾリンで前記コアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−IgGアクセプタを酵素的にグリコシル転移し、それによって前記規定された数及びタイプの糖残基を有する均一なコアフコシル化若しくは非フコシル化IgG糖タンパク質又はIgG−Fcフラグメントを形成するステップと、
を含み、
前記突然変異体が、D233Q(配列番号:2)部位特異的突然変異又はD233A(配列番号:3)部位特異的突然変異を含む突然変異体から選択される、方法。
【請求項10】
前記オリゴ糖含有オキサゾリンが、二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖、十糖、又は十一糖オキサゾリンである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記コア−フコシル化GlcNAcアクセプタが、アルファ−1−6−フコシル−GlcNAc含有抗体又はFcフラグメントである、請求項又は1に記載の方法。
【請求項12】
修飾抗体又はそのFc−フラグメントを合成する方法であって、
GlcNAc−タンパク質アクセプタを形成するために、フコシル化若しくは非フコシル化N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分を含む抗体又はFcフラグメントを提供するステップであって、前記フコシル化又は非フコシル化N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分が前記抗体の前記Fc領域に位置するステップと、
所定の数の糖を有する前記修飾抗体又はそのFcフラグメントを形成するために、化膿性連鎖球菌エンド−S Asp233突然変異体酵素の触媒で、前記所定の数の糖を有するオリゴ糖オキサゾリンと前記GlcNAc−タンパク質アクセプタをグリコシル転移するステップと、
を含み、
前記突然変異体酵素が、D233Q(配列番号:2)部位特異的突然変異又はD233A(配列番号:3)部位特異的突然変異を含む突然変異体から選択される、方法。
【請求項13】
前記修飾抗体が、がんを治療する治療剤、HIVの治療剤、毒素、別の受容体に反応する前記修飾抗体とは異なる抗体、抗原、治療用ポリペプチド、前記オリゴ糖オキサゾリンに結合したケモカイン及び/又はサイトカインを含む付加部分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Fc−シアル酸付加グリコフォームを示す静脈内免疫グロブリン(IVIG)製剤を合成する方法であって、
Fc N−グリカンを保有するIVIGを提供するステップと、
GlcNAc−アクセプタを形成するためにエンド−H、エンド−F3、エンドS及びエンド−Aからなる群から選択されるエンドグリコシダーゼを使用して前記Fc N−グリカンを脱グリコシル化するステップであって、前記GlcNAc−アクセプタが前記IVIGの前記Fc領域に位置し、前記GlcNAc−アクセプタがコアフコシル化又は非フコシル化されるステップと、
シアル酸付加IVIGを形成するために、配列番号:2及び配列番号:3を含むエンド−S突然変異体からなる群から選択される酵素の触媒で、所定の数の糖残基を有するシアログリカンオキサゾリンで前記IVIG上の前記GlcNAc−アクセプタをグリコシル転移するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
D233Q(配列番号:2)及びD233A(配列番号:3)からなる群から選択される少なくとも1つの化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の政府の権利
[001] 本発明は、国立衛生研究所から授与された助成金番号GM080374及びGM096973による政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
[002] 本出願は、2012年2月10日出願の米国仮出願第61/597,468号に対する優先権を主張し、その内容はあらゆる意味で参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[003] 技術分野
[004] 本発明は、糖タンパク質合成に関し、特にグリコシル転移活性及び限られた加水分解活性を保有する化膿性連鎖球菌からの組換え型及び突然変異エンドS、すなわち、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの使用、及びそれにより、抗体−Fcドメインの効率的なグリコシル化リモデリングを提供することに関する。
【背景技術】
【0004】
[006] IgG型のモノクローナル抗体(mAbs)は、がん、自己免疫及び感染症の治療に使用される重要なクラスの治療用タンパク質である(1〜3)。IgG抗体は、柔軟なヒンジ領域によって連結された2つの可変Fabドメイン及び1つの定常(結晶性)Fcドメインを含む3つの異なるタンパク質ドメインを形成するのに関わる2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる。Fabドメインは抗原結合を担当し、Fcドメインは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)などのFc受容体媒介のエフェクター機能に関与する(2,4)。Fcドメインは、保存されたN−グリコシル化部位(N297)に2つのN−グリカンを保持するホモ二量体である。結合されたオリゴ糖は相当の構造不均一性がある二分岐性複合型であり、図1に示すように、そのN−連鎖七糖コアをコアフコース(Fuc)、二分N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、末端ガラクトース(Gal)、及び末端シアル酸(Sia)で様々に修飾することができる(5〜7)。X線結晶学及びNMR構造研究によると、Fcグリカンは2つのCH2/CH3サブドメインに挟まれ、Fcドメインとの間に複数の非共有相互作用を有する(8〜14)。これらの研究は、様々なFcグリカンの結合はFcドメインのコンフォメーションに明確な影響を及ぼし得ることを示しており、抗体のエフェクター機能に関連する個々のFc受容体との相互作用のために適切なFcドメイン構造を維持するのにグリコシル化の重要な役割を示唆している(8〜14)。
【0005】
[007] Fc N−グリカンの微細構造が抗体の炎症誘発性及び抗炎症性活性の重要な決定因子であることもさらに実証された(2,15)。例えば、コアフコースの欠損、及び二分GlcNAc部分の結合は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の原因であるFcγIIIa受容体(FcγRIIIa)に対する抗体の親和性を劇的に向上させる(11,16〜18)。このように、in vivo抗がん効能を改良するために、低フコース含量mAbsを探求している(19,20)。他方で、健康な献血者数千人の血清からプールした静脈内免疫グロブリン(IVIG)のマイナーな構成部分である末端α−2,6−シアル酸付加Fcグリコフォームは最近、関節リウマチ(RA)のマウスモデルでIVIGの抗炎症活性の活性種であることが確認された(21〜23)。しかし、市販のIgG類は、モノクローナル抗体及びIVIGを含め、通常はグリコフォームの混合物として存在し、それは個々の治療活性にとって最適ではない。例えば、がん治療に現在使用されているモノクローナル抗体の主要なFcグリコフォームは、コアフコシル化されていて、これは活性化受容体FcγRIIIaに対して比較的低い親和性を有し、特に親和性が低いFcγRIIIa−F158対立遺伝子多形を有する患者に対する低い効能を示す(2,19,20)。
【0006】
[008] IgG抗体の生体機能及び治療結果に対するグリコシル化の影響は、抗体のグリコシル化を制御する方法の開発に多大な関心を引き起こしている。1つの方法は、哺乳類、植物、及び酵母の宿主細胞などの様々な発現系で、産生中にグリカンの生合成経路操作を通してグリコシル化のプロフィールを制御することである(24〜30)。このようにグリコシル化を制御した結果、ADCC活性が改良された低フコース又は非フコシル化モノクローナル抗体が産生される。しかし、この方法で生成することができるグリコフォームは限られており、大抵の場合、規定された均一なグリコフォームの完全な制御は困難である。
【0007】
[009] モノクローナル抗体リツキシマブなどの市場にある幾つかの治療用糖タンパク質薬の最近の分析は、様々な期間に産生された様々なバッチからのグリコシル化のプロフィールに有意の変化があることを示した(31)。この分析は、糖タンパク質系薬剤の一貫した産生を維持することが困難であることを示唆し、規制上の懸念も引き起こしている。何故なら、Fcグリコシル化の変化は治療の効能に影響を及ぼす可能性が非常に高いからである。
【0008】
[010] 糖タンパク質のグリコシル化の不一致及び不均一性に対応する代替的方法は、不均一なN−グリカンを切り取り、酵素的グリコシル化によって糖鎖を伸長させることによってグリコシル化のリモデリングを実行することである(32,33)。このような酵素グリコシル化は、最近、基質としてグリカンオキサゾリンを使用する幾つかのエンドグリコシダーゼ及びそのグリコシンターゼ突然変異体のグリコシル転移活性によるFcグリコシル化リモデリングの酵素化学的方法を使用することによって説明されている(34〜36)。このリモデリング方法は2つのステップからなる。すなわち、グリコシル化部位の第一GlcNAcのみを残すために、エンドグリコシダーゼによってすべての異種N−グリカンを切り取るステップと、次にエンドグリコシダーゼ触媒のグリコシル転移反応を介して明確に規定されたN−グリカンを一括して元に加えるステップである(32)。
【0009】
[011] 最近の研究で、Fcドメインの酵母又はCHO細胞の発現と、その後の酵素脱グリコシル化/再グリコシル化方法による酵素化学的リモデリングとを組み合わせることによって、IgG−Fcドメインのグリコシル化操作が達成できることが実証された(34〜36)。Arthrobacter protophormiaeからのエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、すなわちエンドAは、基質として様々な合成N−グリカンコアオキサゾリンを使用することにより、GlcNac含有Fcドメインをグリコシル化するのに極めて効率的であることが示されている(34,35)。それにもかかわらず、最新技術の方法の限界が明白である。すなわち、(a)エンドAもエンドM(Mucor hiemalisからの別のエンドグリコシダーゼ)も、組換え型mAbs及びIVIGの主要なグリコフォームであるコアフコシル化されたIgG−Fcドメイン(35)を変換することができず、(b)エンドD突然変異体は、Man3GlcNAcコアをフコシル化されたGlcNac−Fcドメイン(36)に結合させることができたが、エンドD、エンドA、エンドM、及びそれらの突然変異体(36〜39)のいずれも、インタクトな複合型N−グリカンをフコシル化又は非フコシル化GlcNac−Fcドメインに転移させることができず、(c)複合型N−グリカンでのインタクトな完全長IgG抗体のグリコシル化リモデリングはまだ達成されていない。
【0010】
[0012] 糖タンパク質グリコシル化リモデリングのために効率的な酵素脱グリコシル化/グリコシル化システムを開発しようとして、Nグリカンのキトビオースコアのβ−1,4−グリコシド結合を開裂することによってインタクトなIgG抗体のFc N−グリカンを加水分解することができる化膿性連鎖球菌からのエンドS、すなわち、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)が注目されている(40〜42)。エンドSは、供与体基質としてManGlcNAcオキサゾリンを使用してGlcNAc受容体をグリコシル化することができる作用などのグリコシル転移活性を有する。しかし、野生型エンドSは非常に活性の高い加水分解活性も有し、したがって合成及びグリコシル化リモデリングに野生型エンド−Sを使用した場合、グリコシル化したIgG産物も急速に加水分解する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0013] 以上のエンドSの既知の活性を鑑みて、低下した加水分解活性とともにグリコシル転移活性を示す突然変異体エンド−Sを提供すると有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0014] 本発明は、IgG抗体及びそのFcフラグメントを合成するために加水分解活性が低下し、グリコシル転移活性が増大した組換え型エンド−S及びその選択された突然変異体を提供し、所望の糖鎖がコアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−IgGアクセプタに付加される。したがって、本発明により、治療用抗体及びそのFcフラグメントを合成、リモデリングし、in vivoでの半減期の延長、免疫原性の低下、in vivo活性の強化、標的指向能力の向上、及び/又は治療剤を送達する能力などの特定の生物活性を提供することができる。
【0013】
[0015] 一態様では、本発明は、化膿性連鎖球菌のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(配列番号:1)及びその突然変異体のグリコシル転移活性を提供し、突然変異体はそれに対して少なくとも95%の相同性を有し、コアフコシル化及び非フコシル化GlcNAc−IgGアクセプタの両方に対してグリコシル転移活性を示し、エンドグリコシダーゼによって(活性化した糖オキサゾリンの形態の)オリゴ糖が一括してフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−IgG(又はそのFcフラグメント)に転移して、IgGの新しいグリコフォーム(又はそのFcフラグメント)を形成することができる。
【0014】
[0016] 別の態様では、本発明は、著しく向上したグリコシル転移効率、及び低下又は消失した産物加水分解活性を示すエンド−S突然変異体を提供する。突然変異体は、Asp−233における突然変異などの部位特異的な突然変異を含むことが望ましい。突然変異体はD233Q(配列番号:2)及びD233A(配列番号:3)を含むが、これらに限定されない。
【0015】
[0017] さらに別の態様では、本発明は、IgG抗体の均一なコアフコシル化又は非フコシル化グリコフォームを調製する酵素化学的方法を提供し、該方法は、
a.コアフコシル化GlcNAc−IgG、非フコシル化GlcNAc−IgG又は対応するIgG−Fcフラグメントからなる群から選択されるアクセプタを提供するステップと、
b.活性化したオリゴ糖部分を前記アクセプタに転移し、均一なフコシル化又は非フコシル化糖タンパク質を生成するために、化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体の存在下で、前記アクセプタを活性化オリゴ糖部分を含む供与体基質と反応させるステップと、を含む。
【0016】
[0018] さらに別の態様では、本発明は、所定のオリゴ糖部分を有するコアフコシル化IgG又はIgG−Fcフラグメントを調製する方法を提供し、該方法は、
a.アスパラギン結合コアフコシル化N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含むコアフコシル化IgGアクセプタを提供するステップと、
b.エンドグリコシダーゼ−S D233Q(配列番号:2)及びD233A(配列番号:3)突然変異体の存在下で前記コアフコシル化IgGアクセプタを活性オリゴ糖供与体と酵素的に反応させるステップであって、活性オリゴ糖供与体は、所定の数及びタイプの糖残基を含むオリゴ糖部分を保有し、該オリゴ糖部分は前記コアフコシル化IgGアクセプタと共有結合し、それにより所定のオリゴ糖部分を有するコアフコシル化IgG又はIgG−Fcフラグメントを調製するステップと、を含む。
【0017】
[0019] さらに別の態様では、本発明は、均一なコアフコシル化糖タンパク質又は非フコシル化糖タンパク質を合成するための供与体基質として、グリカン又はオリゴ糖オキサゾリン、フッ化グリコシル、アジ化グリコシル又はアリルグリコシドなどの活性オリゴ糖部分を提供する。活性オリゴ糖部分はオリゴ糖オキサゾリンであることが好ましい。
【0018】
[0020] さらに別の態様では、本発明は、均一なフコシル化又は非フコシル化単量体抗体又はそのFcフラグメントを調製する酵素化学的方法に関し、該方法は、
コアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−抗体又はそのFcフラグメントから選択されたアクセプタを提供するステップと、
化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体の存在下で、前記アクセプタを供与体基質と反応させるステップであって、該供与体基質は、規定された数及びタイプの糖残基並びに特異的結合タイプを有する所定のオリゴ糖成分を含み、それにより均一なフコシル化又は非フコシル化単量体抗体又はそのFcフラグメントを提供するステップとを含む。一実施形態では、フコシル化GlcNAc含有タンパク質はアルファ−1−6−フコシル−GlcNAc−タンパク質である。
【0019】
[0021] 別の態様では、本発明は、所定の数及びタイプの糖残基並びに特異的結合タイプがある所定のオリゴ糖成分を有するオリゴ糖で抗体又はそのFcフラグメントをリモデリングする方法に関し、該方法は、
a.Fc N−グリカンを含むコアフコシル化抗体又はそのFcフラグメントを提供するステップと、
b.Asn結合GlcNAc部分を生成するために、前記コアフコシル化抗体又はFcフラグメントを加水分解エンド酵素で処理するステップと、
c.配列番号:2及び配列番号:3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するエンド−S突然変異体の存在下で、オリゴ糖をAsn−結合GlcNAc部分に結合させ、それにより所定のオリゴ糖成分を付加させるステップと、を含む。
【0020】
[0022] さらに別の態様では、本発明は、規定された数及びタイプの糖残基並びに特異的結合タイプがある所定のオリゴ糖成分を有するオリゴ糖で、コアフコシル化又は非フコシル化IgG又はIgG−Fcフラグメントをリモデリングする方法に関し、該方法は、
a.均一なN−グリカンを保有する天然又は組換え型原料から得たコアフコシル化又は非フコシル化IgG又はIgG−Fcフラグメントを提供するステップと、
b.ペプチドドメインに最も近く位置する2つのGlcNAc残基間の結合を加水分解するために、前記天然又は組換え型IgG又はIgG−Fcフラグメントをエンド−酵素(効率的な加水分解活性がある野生型エンドグリコシダーゼ又は組換え型エンドグリコシダーゼ)で処理し、それによってコアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−アクセプタを保有する脱グリコシル化タンパク質を形成するステップと、
c.化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体でのグリコシル転移を通して天然ベータ−1,4−グリコシド結合を再構成するために、所定のオリゴ糖成分を前記GlcNAc−アクセプタに結合させ、それにより前記所定のオリゴ糖成分を付加して、コアフコシル化又は非フコシル化IgG又はIgG−Fcフラグメントをリモデリングするステップと、を含む。
【0021】
[0023] 適用可能なオリゴ糖オキサゾリンには高マンノース型、雑種型、シアログリカンオキサゾリン及び複合型N−グリカン、さらに特異的タグのような選択的に修飾されたそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。均一なコアフコシル化又は非フコシル化IgG抗体及びIgG−Fcフラグメントの非常に効率的な酵素化学的合成のために、供与体基質として二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖、十糖、又は十一糖オキサゾリンを使用することが好ましい。
【0022】
[0024] さらに別の態様では、本発明は修飾抗体又はそのフラグメントを合成する方法に関し、該方法は、
a.前駆物質としてFc N−グリカンを保有する天然に存在するIgG抗体、組換え型抗体又はFcドメインを提供するステップと、
b.Fcドメインを脱グリコシル化してGlcNAc−アクセプタを形成するために、野生型エンド−Sなどのエンドグリコシダーゼを使用してFc脱グリコシル化するステップであって、該GlcNAc−アクセプタは前記抗体のFc領域に位置し、GlcNAc−アクセプタはコアフコシル化又は非フコシル化されるステップと、
c.所定の数の糖残基を有する修飾抗体を形成するために、配列番号:2及び配列番号:3を含むエンド−S突然変異体からなる群から選択される酵素の触媒で、所定の数の糖残基を有するオリゴ糖オキサゾリン又はシアログリカンオキサゾリンで前記天然に存在するIgG抗体、組換え型抗体又はFcドメインのGlcNAc−アクセプタをグリコシル転移するステップと、を含む。
【0023】
[0025] さらに別の態様では、本発明はFc−シアル酸付加グリコフォームを示す静脈内免疫グロブリン(IVIG)をリモデリングする方法を提供し、該方法は、
a.Fc N−グリカンを保有するIVIGを提供するステップと、
b.GlcNAc−アクセプタを形成するために野生型エンド−Sを含むエンドグリコシダーゼを使用して前記Fc N−グリカンをFc脱グリコシル化するステップであって、該GlcNAc−アクセプタは前記IVIGのFc領域に位置し、GlcNAc−アクセプタはフコシル化又は非フコシル化されるステップと、
c.シアル酸付加IVIGを形成するために、配列番号:2及び配列番号:3を含むエンド−S突然変異体からなる群から選択される酵素の触媒で、所定の数の糖残基を有するシアログリカンオキサゾリンで前記GlcNAc−アクセプタをグリコシル転移するステップと、を含む。
【0024】
[0026] 本発明の別の態様は、抗炎症活性を向上させるために、少なくとも90%の均一なシアル酸付加Fcグリコフォームを含む組成物を含むIVIG製剤を提供し、前記シアル酸付加Fcグリコフォームは、脱グリコシル化IVIGのFc領域に位置するGlcNAc部分と所定の数の糖残基を有するシアログリカンオキサゾリンを結合する化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体を使用して合成される。
【0025】
[0027] さらに別の態様では、本発明はコアフコシル化又は非フコシル化IgG抗体又はIgG−Fcフラグメントを合成する方法に関し、該方法は、
a.天然又は組換え型IgG抗体又はIgG−Fcフラグメントを提供するステップであって、該組換え型IgG又はIgG−Fcは酵母、昆虫、植物、及び任意の哺乳類発現系を含むが、これらに限定されない典型的なタンパク質発現系から産生されるステップと、
b.コアフコシル化又は非フコシル化GlcNAc−含有タンパク質を形成するために、エンド−H、エンド−A、エンド−S及び/又はエンド−F3からなる群から選択される酵素によってN−グリカンを除去するステップと、
c.鎖中に規定された数及びタイプの糖残基を含む所望のオリゴ糖成分を有する、糖オキサゾリン又はシアログリカンオキサゾリンを提供するステップと、
d.所望の数の糖残基を有する糖オキサゾリン又は所望の数の糖及びシアル酸残基を有するシアログリカンオキサゾリンで前記フコシル化又は非フコシル化GlcNAc−含有タンパク質を、化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体からなる群から選択されるエンドグリコシダーゼで酵素グリコシル転移し、それにより所望の数の糖残基及び/又はシアル酸の伸長部を有する均一なコアフコシル化又は非フコシル化IgG抗体又はIgG−Fcフラグメントを形成するステップと、を含む。
【0026】
[0028] 規定された数及びタイプの糖残基がある所定のオリゴ糖成分を有するオリゴ糖オキサゾリン又はシアログリカンオキサゾリンは、がん、HIV又は他のウイルスを治療するような治療剤又は治療薬、細胞原形質膜上の受容体を活性化する物質、細胞内の化学的性質に影響する薬剤、細胞の物理的性質、遺伝子、遺伝子類似体、RNA、RNA類似体、DNA、DNA類似体に影響する薬剤、CCR5又はCD4などの表面受容体のアミノ酸配列、特定の抗体に対する親和性を有する抗原構造、gp120、gp41又はgp160などの受容体リガンドのアミノ酸配列、受容体拮抗物質、受容体遮断物、酵素、酵素基質、酵素阻害物質、酵素調整物質、治療用タンパク質、タンパク質類似体、代謝産物、代謝産物類似体、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド類似体、抗原、抗原類似体、抗体又はそのフラグメント、抗体類似体、別の受容体細菌、ウイルス、無機イオン、金属イオン、金属クラスタ、ポリマー、蛍光性化合物及びこれらの任意の組み合わせに対して反応性である修飾抗体とは異なる抗体などの付加的な部分又はタグをさらに含んでもよいことが想定される。
【0027】
[0029] したがって、本発明は、症状を治療する生物活性を有する治療薬又は治療剤を送達する送達デバイスをさらに提供し、該送達デバイスは、所定の糖鎖又はシアログリカンを有するリモデリングしたIgG又はIgG−Fcフラグメント、及び末端糖残基又はシアル酸に結合した治療剤又は治療薬を含む。
【0028】
[0030] 本発明は、HIV関連のモノクローナル抗体を修飾することを想定し、それには17b、48d、A32、C11、2Gl2、F240、IgGlb12、19e、X5、TNX−355及びF91が含まれるが、これらに限定されず、すべてが市販されている。
【0029】
[0031] がん又は他の疾患に関連する別の抗体も、特定の受容体に個々に適合し、それにより生物活性を向上させるためにリモデリングすることができ、モノクローナル抗体はセツキシマブ、リツキシマブ、ムロモナブ−CD3、アブシキマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ・オゾガミシン、アレムツズマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、I−131トシツモマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ナタリズマブ、エタネルセプト、IGN101(Aphton)、ボロシキマブ(Biogen Idec及びPDL BioPharm)、抗CD80mAb(Biogen Idec)、抗CD23mAb(Biogen Idel)、CAT−3888(Cambridge Antibody Technology)、CDP−791(Imclone)、エラプツズマブ(Immunomedics)、MDX−010(Medarex及びBMS)、MDX−060(Medarex)、MDX−070(Medarex)、マツズマブ(Merck)、CP−675,206(Pfizer)、CAL(Roche)、SGN−30(Seattle Genetics)、ザノリムマブ(Serono及びGenmab)、アデカツムマブ(Sereno)、オレゴボマブ(United Therapeutics)、ニモツズマブ(YM Bioscience)、ABT−874(Abbott Laboratories)、デノスマブ(Amgen)、AM108(Amgen)、AMG714(Amgen)、フォントリズマブ(Biogen Idec及びPDL BioPharm)、ダクリズマブ(Biogent Idec及びPDL BioPharm)、ゴリムマブ(Centocor及びSchering-Plough)、CNTO 1275(Centocor)、オクレンズマブ(Genetech及びRoche)、HuMax−CD20(Genmab)、ベリムマブ(HGS及びGSK)、エプラツズマブ(Immunomedics)、MLN1202(Millennium Pharmaceuticals)、ビジリズマブ(PDL BioPharm)、トシリズマブ(Roche)、オクレリズマブ(Roche)、セルトリズマブペゴル(UCB、以前のCelltech)、エクリズマブ(Alexion Pharmaceuticals)、パキセリズマブ(Alexion Pharmaceuticals及びProcter & Gamble)、アブシキシマブ(Centocor)、ラニビジムマブ(Genetech)、メポリズマブ(GSK)、TNX−355(Tanox)、又はMYO−029(Wyeth)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0030】
[0032] 本発明のさらに別の態様は、最初に不均一な糖鎖を含む抗体をリモデリングする方法に関し、該方法は、
a.元のグリコシル化部位に結合した単フコシル化又は非フコシル化GlcNAc部分を残すために、エンドグリコシダーゼで抗体から不均一な糖鎖を除去するステップと、
b.タグ付き抗体を生成するために、エンドグリコシダーゼ触媒グリコシル転移により、少なくとも1つのタグがあるコアオリゴ糖又はシアログリカンオキサゾリンをフコシル化又は非フコシル化GlcNAc部分に転移するステップであって、前記エンドグリコシダーゼは配列番号:2及び配列番号:3を含むエンド−S突然変異体からなる群から選択されるステップと、を含む。
【0031】
[0033] タグ部分は、抗原、がん又はHIV用などの治療薬、毒素、蛍光プローブ、ビオチン、PEG種、脂質、又はヌクレオチドを含むことができるが、これらに限定されない。
【0032】
[0034] 別の態様では、本発明は、D233Q(配列番号:2)及びD233A(配列番号:3)からなる群から選択される少なくとも1つの化膿性連鎖球菌エンド−S Asp−233突然変異体を含む組成物を提供する。
【0033】
[0035] さらに別の態様では、本発明は、所定のオリゴ糖部分を有するコアフコシル化又は非フコシル化抗体又はそのFcフラグメントの実質的に均一な製剤を提供し、実質的に均一な製剤は上述した方法のいずれかによって産生される。このような均一な製剤を含む組成物も提供される。
【0034】
[0036] さらに別の態様では、本発明は、治療対象の生物活性を調整するのに十分な量で所望のグリコシル化状態及び/又はシアル酸付加形態を有するリモデリング抗体を使用した治療法を提供する。
【0035】
[0037] 本発明の他の態様、特徴及び実施形態は、以下の開示及び特許請求の範囲からさらに十分に明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】[0038]典型的なIgG抗体及びFc N−グリカンの構造を示す。a)機能領域を示すヒトIgGのアルファ骨格構造(PDBコード1HZHに基づいてモデリング)。b)FcドメインのAsn−297に結合した完全長二分岐複合型N−グリカンの構造。
【化1】
図2】[0039]エンドS(配列番号:4)とエンドF3(配列番号:5)の配列アラインメントを示す。
図3A】[0040]均一な天然及び選択的に修飾したグリコフォームへのリツキシマブのグリコシル化リモデリングの概略図を示す。
【化2】
図3B】[0040]均一な天然及び選択的に修飾したグリコフォームへのリツキシマブのグリコシル化リモデリングの概略図を示す。
【化3】
図4A】[0041]リツキシマブのグリコシル化リモデリングのSDS−PAGE及びESI−MS分析を示す。(a)SDS−PAGE分析:レーン0、タンパク質マーカ;レーン1、市販のリツキシマブ;レーン2、エンドS脱グリコシル化リツキシマブ(1);レーン3、(1)とシアログリカンオキサゾリン(2)の間のエンドS−D233A触媒反応によるグリコシル転移産物(3);レーン4、(1)と(2)のエンドS−D233Q触媒反応によるグリコシル転移産物;レーン5、脱グリコシル化リツキシマブ(1)とMan3GlcNAcオキサゾリン(4)の間のエンドS−D233Q触媒反応によるグリコシル転移産物(5);レーン6、脱グリコシル化リツキシマブ(1)とN3Man3GlcNAcオキサゾリン(6)の間のエンドS−D233Q触媒反応によるグリコシル転移産物(7)。(b)市販のリツキシマブの重鎖のESI−MS(逆畳込み解析後)。
図4B】[0041]リツキシマブのグリコシル化リモデリングのESI−MS分析を示す。(c)脱グリコシル化リツキシマブ(1)のESI−MS。(d)グリコシル転移産物(3)のESI−MS。
図4C】[0041]リツキシマブのグリコシル化リモデリングのESI−MS分析を示す。(e)グリコシル転移産物(5)のESI−MS。(f)グリコシル転移産物(7)のESI−MS。
図5A】[0042]リツキシマブの非フコシル化均一なグリコフォームへの酵素リモデリングを示す。
【化4】
図5B】[0042]リツキシマブの非フコシル化均一なグリコフォームへの酵素リモデリングを示す。
【化5】
図6】[0043]リツキシマブの非フコシル化G2グリコフォームへの糖鎖工学のSDS−PAGE及びESI−MS分析を示す。(a)SDS−PAGE分析:レーン0、タンパク質マーカ;レーン1、市販のリツキシマブ;レーン2、エンドS脱グリコシル化リツキシマブ(1);レーン3、脱フコシル化産物(8);レーン4、糖鎖改変したG2グリコフォーム。(b)脱フコシル化リツキシマブ(8)の重鎖のESI−MS(逆畳込み解析後)。(c)糖鎖改変したG2リツキシマブ(10)の重鎖のESI−MS。
図7】[0044]ヒトIVIGの部位特異的なFc糖鎖改変を示す。
【化6】
図8】[0045]IVIGのFab及びFcからの2AB−標識化N−グリカンの蛍光HPLCプロフィールを示す。a)ネイティブIVIG Fc由来。b)糖鎖改変したIVIG Fc由来。c)ネイティブIVIG Fab由来。d)糖鎖改変したIVIG Fab由来。グリカン構造は以下の成分を含む。
【化7】
図8-1】[0045]IVIGのFab及びFcからの2AB−標識化N−グリカンの蛍光HPLCプロフィールを示す。a)ネイティブIVIG Fc由来。b)糖鎖改変したIVIG Fc由来。c)ネイティブIVIG Fab由来。d)糖鎖改変したIVIG Fab由来。グリカン構造は以下の成分を含む。
【化8】
図9A】[0046]G2−リツキシマブ及び市販のリツキシマブとFcγ受容体、すなわち、FcγRIIIa−V158(A)との結合の典型的なSPRセンサグラムを示す。抗体を、タンパク質A捕捉によって固定化し、40μg/mL(1.33μM)から開始して2倍の連続希釈で前記Fcγ受容体を注入することによって結合を分析した。
図9B】[0046]G2−リツキシマブ及び市販のリツキシマブとFcγ受容体、すなわち、FcγRIIIa−F158(B)との結合の典型的なSPRセンサグラムを示す。抗体を、タンパク質A捕捉によって固定化し、40μg/mL(1.33μM)から開始して2倍の連続希釈で前記Fcγ受容体を注入することによって結合を分析した。
図9C】[0046]G2−リツキシマブ及び市販のリツキシマブとFcγ受容体、すなわち、FcγRIIb(C)との結合の典型的なSPRセンサグラムを示す。抗体を、タンパク質A捕捉によって固定化し、40μg/mL(1.33μM)から開始して2倍の連続希釈で前記Fcγ受容体を注入することによって結合を分析した。
図10】[0047]図1の規定と同じ記号で、PNGaseF処理によって放出されたFc N−グリカンのMALDI−TOF MSを示す。
図11】[0048]図1の規定と同じ記号で、エンドS処理によって放出されたFcN−グリカンのMALDI−TOF MSを示す。
図12A】[0049]リツキシマブのLC−MS分析を示す。a)還元リツキシマブのLCプロフィール、b)軽鎖のESI−MS。
図12B】[0049]リツキシマブのLC−MS分析を示す。c)軽鎖の逆畳込み解析MS。
図12C】[0049]リツキシマブのLC−MS分析を示す。d)重鎖のESI−MS、e)重鎖の逆畳込み解析MS。
図13】[0050]PNGaseF処理によって市販及び糖鎖改変したリツキシマブサンプルから放出した2−AB−標識N−グリカンの蛍光HPLCプロフィールを示す。a)市販のリツキシマブ由来、b)シアル酸付加リツキシマブ(3)由来、c)非フコシル化リツキシマブ(10)由来。
【化9】
図14】[0051]野生型エンドSによるグリコシル転移のSDS−PAGE分析を示す。レーン0、タンパク質マーカ;レーン1、市販のリツキシマブ;レーン2、エンドS脱グリコシル化リツキシマブ(1);レーン3〜7、脱グリコシル化リツキシマブ(1)とシアログリカンオキサゾリン(2)との間のグリコシル転移反応のモニタリング;レーン3、15分;レーン4、30分;レーン5、1時間;レーン6、2時間;レーン7、4時間。
図15A】[0052]ウシの腎臓α−フコシダーゼでのフコース(α2,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)の脱フコシル化のLC−MSモニタリングを示す。リツキシマブの重鎖の逆畳込み解析ESI−MSプロフィールを示した(FG−Rx、フコース(α2,6)GlcNAc−リツキシマブの重鎖;G−Rx、GlcNAc−リツキシマブの重鎖)。a)α−フコシダーゼで2日間インキュベート、b)α−フコシダーゼで7日間インキュベート。
図15B】[0052]ウシの腎臓α−フコシダーゼでのフコース(α2,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)の脱フコシル化のLC−MSモニタリングを示す。リツキシマブの重鎖の逆畳込み解析ESI−MSプロフィールを示した(FG−Rx、フコース(α2,6)GlcNAc−リツキシマブの重鎖;G−Rx、GlcNAc−リツキシマブの重鎖)。c)α−フコシダーゼで14日間インキュベート、d)α−フコシダーゼで20日間インキュベート。
図16】[0053]IVIG糖鎖改変のSDS−PAGE分析を示す。レーン0、タンパク質マーカ;レーン1、市販のIVIG;レーン2、エンドSによる脱グリコシル化後のIVIG(11);レーン3、シアログリカンオキサゾリンでのエンドS−D233Q触媒グリコシル転移後のIVIG(12)。
図17】[0054]図17のA及びBは、それぞれ化膿性連鎖球菌エンドS Asp−233突然変異体D233Q(配列番号:2)及びD233A(配列番号:3)のアミノ酸残基を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0055] 本発明は、産物を加水分解せずに活性グリカンオキサゾリンからの複合型N−グリカンを脱グリコシル化したインタクトな抗体へ転移させることができる顕著なグリコシル転移効率を示す新規のグリコシンターゼ、すなわち、エンドS Asp233突然変異体を提供する。ここで、グリコシンターゼエンドS Asp233突然変異体は、インタクトな抗体のコアフコシル化及び非フコシル化GlcNAc−Fcドメインの両方に効率的に作用して、規定された様々なIgGグリコフォームを提供することが判明した。さらに、抗体及び静脈内免疫グロブリンは、向上された抗炎症活性を有する完全にシアル酸付加したFcグリコフォームに変換した。さらに、本発明は、ADCC活性が増大し、FcγIIIa受容体結合活性が向上した均一なグリコフォーム、及び他のグリコフォームにさらに変換することができるアジド標識グリコフォームを提供する。
【0038】
[0056] 本発明の実施には、他に指示しない限り、当技術分野の技能に含まれる免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び遺伝子組換えDNAの従来の技術を用いる。例えばSambrookらのMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版(1989)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(編集F. M. Ausubel他、(1987))、METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ(Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH(編集M. J. MacPherson、B.D. Hames及びG.R. Taylor(1995))、編集Harlow及びLane(1988)、ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE(編集R. I. Freshney(1987))を参照されたい。
【0039】
[0057] 本明細書で述べる本発明の態様は、「〜からなる」及び/又は「基本的に〜からなる」態様を含むことが理解される。
【0040】
[0058] 定義
[0059] 本明細書で使用する「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味することがある。特許請求の範囲で使用する「a」又は「an」という言葉は、「含む」という言葉と組み合わせて使用した場合、1つ又は複数を意味することがある。本明細書で使用する「別の」は、少なくとも2つ目以上を意味することがある。
【0041】
[0060] 本明細書で使用する「生物活性」は、例えば分子親和性又はその結果の生化学又は生理学的効果、受容体親和性又はその結果の生化学又は生理学的効果、非受容体親和性又は生化学又は生理学的効果、効能、生体利用効率、吸収、分布、代謝又は排出などの薬力学的及び薬物動態学的特性を指す。
【0042】
[0061] 本明細書で使用する「糖」は、酸化又は非酸化炭水化物含有分子を指し、それには単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、又は多糖、例えばN−アセチルグルコサミン、マンノース、ガラクトース、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、ブドウ糖、フルクトース、フコース、ソルボース、ラムノース、マンノヘプツロース、N−アセチルガラクトサミン、ジヒドロキシアセトン、キシロース、キシルロース、アラビノース、グリセルアルデヒド、蔗糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、セロビオース、又はL−又はD−異性体のこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。糖はさらに、天然、遺伝子組換え、合成、及び/又は半合成で産生されるこのような分子を指す。
【0043】
[0062] 本明細書で使用する「均一」は、コアフコシル化糖タンパク質又は非フコシル化糖タンパク質を指し、オリゴ糖成分は同じ数及びタイプの糖残基の少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%を含む。
【0044】
[0063] 本明細書で使用する「タンパク質」又は「糖タンパク質」は、ペプチド及びグリコペプチドという用語と代替可能である。
【0045】
[0064] 本明細書で使用する「相同性」は、アミノ酸配列が2つのポリペプチド間に実質的な同一性又は類似性を有し、基準ポリペプチドとの少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の類似性を有することを指す。ポリペプチドの場合、配列間に上述した相同性を得る比較の長さは通常、少なくとも25アミノ酸、あるいは少なくとも50アミノ酸、より好ましくは少なくとも100アミノ酸、及び最も好ましくは200以上のアミノ酸である。実質的に同一又は相同のポリペプチドには、エンドグリコシダーゼの機能を破壊しないアミノ酸配列の位置に配置された付加、切断、内部欠失又は挿入、保存的又は非保存的置換、又は他の修飾が含まれる。当業者には、実質的に活性を変化させずに他の化学的に類似した残基で修飾又は置換することができる多数のアミノ酸が認識される。
【0046】
[0065] 本明細書で使用する「調整する」は、本発明のグリコシル化操作の抗体を非グリコシル化操作の抗体と比較した場合に、以上で定義したような「生物活性」の上昇又は低下を指す。
【0047】
[0066] 本明細書で使用する「免疫グロブリン分子」又は「抗体」は、抗原に特異的に結合する抗原結合部位又は細胞受容体に結合するFc領域を含む分子を指す。構造上、自然に発生する最も単純な抗体(例えばIgG)は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、つまり2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む。天然の免疫グロブリンは、IgD、IgG、IgA、IgM及びIgEなどの数種類の分子を含む大きい分子のファミリーを表す。この用語は、ハイブリッド抗体、又は変性抗体、及びそれらのフラグメント、例えばFcフラグメントも含む。
【0048】
[0067] 抗体は、本明細書で述べるような従来の技術でフラグメント化し、フラグメントは抗体全体について述べるのと同じ方法で有用性に合わせてスクリーニングすることができる。免疫グロブリン分子のFabフラグメントは、相互に共有結合し、抗原と特異的に結合することができる免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の免疫活性部分を含む免疫グロブリン分子の部分で構成された多重結合タンパク質である。Fab及びFcフラグメントは、当技術分野で周知の方法を用い、パパインで実質的にインタクトな免疫グロブリン分子をタンパク分解することによって調製することができる。しかし、Fab又はFcフラグメントは、当技術分野で知られている方法を用い、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の所望の部分を適切な宿主細胞内で発現させることによっても調製することができる。
【0049】
[0068] 抗体に関して本明細書で使用する「実質的に純粋」は、自然な状態で付随する汚染物質又は抗体を得るプロセスで発生又は使用した汚染物質から分離されているという意味である。この用語はさらに、単一の部位又は複数の部位におけるグリコシル化を含む状態でも、その状態でなくても、単一のグリコシル化状態を有する所望の産物を含む。通常、抗体は、重量で、製剤中の抗体の少なくとも60%を構成する場合、実質的に純粋である。例えば、製剤中の抗体は、重量で、所望の抗体の少なくとも約75%、特定の実施形態では少なくとも約80%、特定の実施形態では約85%、特定の実施形態では少なくとも約90%、特定の実施形態では少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約99%である。実質的に純粋な抗体には、自然に、遺伝子組換えで、又は合成で産生した抗体が含まれる。
【0050】
[0069] 本明細書で使用する「治療上有効量」は、疾患又は状態の症状の改善又は治療をもたらす量を指す。
【0051】
[0070] 本発明の修飾コアフコシル化又は非フコシル化糖タンパク質及びさらに好ましくは抗体又はそのフラグメントにタグとして結合させるのに有用な抗原は、外来抗原、内在性抗原、そのフラグメント、又は同じ機能的活性を有する変異体でよい。
【0052】
[0071] 本明細書で使用する「内在性抗原」は、細胞タンパク質、免疫調節剤、又は治療剤などのレシピエント動物の細胞又は組織に天然に存在するタンパク質又はその一部を指す。
【0053】
[0072] 本明細書で使用する「外来抗原」は、レシピエント動物の細胞又は組織に対して外来性であるタンパク質又はそのフラグメントを指し、ウイルスタンパク質、寄生タンパク質、免疫調節剤、又は治療剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
[0073] 外来抗原は、タンパク質、抗原フラグメント、又はウイルス及び寄生虫病原体に由来するその抗原フラグメントでよい。
【0055】
[0074] あるいは、外来抗原は合成遺伝子によってコードされることができ、従来のDNA遺伝子組換え法を使用して作成することができ、合成遺伝子は、ウイルス及び寄生虫病原菌に由来する抗原又はその一部を発現することができる。これらの病原体は、ヒト、家畜又は野生動物の宿主で感染性であり得る。
【0056】
[0075] 外来抗原は、動物宿主に侵入、その中でコロニ形成、又は複製する前に、又はその間に、任意のウイルス又は寄生虫病原体が発現する任意の分子であり得る。
【0057】
[0076] ウイルス抗原が誘導されるウイルス病原体には、インフルエンザウイルス(分類ID:59771)などのオルソミクソウイルス;RSV、HTLV−1(分類ID:39015)及びHTLV−II(分類ID:11909)などのレトロウイルス;EBV(分類ID:10295)、CMV(分類ID:10358)又は単純ヘルペスウイルス(ATCC#:VR−1487)などのヘルペスウイルス;HIV−1(分類ID:12721)及びHIV−2(分類ID:11709)などのレンチウイルス;狂犬病などのラブドウイルス;ポリオウイルス(分類ID:12080)などのピコルナウイルス;ワクシニア(分類ID:10245)などのポックスウイルス;ロタウイルス(分類ID:10912);及びアデノ随伴ウイルス1(分類ID:85106)などのパルボウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
[0077] ウイルス抗原の例には、ヒト免疫不全症ウイルス抗原Nef(米国アレルギー感染症研究所HIV保管カタログ#183;GenBank登録#AF238278)、Gag、Env(米国アレルギー感染症研究所HIV保管カタログ#2433;GenBank登録#U39362)、Tat(米国アレルギー感染症研究所HIV保管カタログ#827;GenBank登録#M13137)、Rev(米国アレルギー感染症研究所HIV保管カタログ#2088;GenBank登録#L14572)、Pol(米国アレルギー感染症研究所HIV保管カタログ#238;GenBank登録#AJ237568)、及びgp120のT細胞及びB細胞エピトープ;B型肝炎表面抗原(GenBank登録#AF043578);VP4(GenBank登録#AJ293721)及びVP7(GenBank登録#AY003871)などのロタウイルス抗原;血球凝集素(GenBank登録#AJ404627)などのインフルエンザウイルス抗原;核タンパク質(GenBank登録#AJ289872);及びチミジンキナーゼ(GenBank登録#AB047378)などの単純ヘルペスウイルス抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
[0078] 細菌性抗原が誘導される細菌病原体には、ミコバクテリウム種、ヘリコバクタピロリ、サルモネラ種、赤痢菌種、大腸菌、リケッチア種、リステリア種、レジオネラ肺炎、シュードモナス種、ビブリオ種、及びライム病ボレリアが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
[0079] 細菌病原体の防御抗原の例には、CFA/I綿毛抗原及び非熱耐性毒素の非毒性B−サブユニットなどの毒素原性大腸菌の菌体抗原;百日咳菌のパータクチン、百日咳菌のアデニル酸シクラーゼ溶血素、破傷風菌の破傷風毒素のフラグメントC、ライム病ボレリアの細胞表層タンパク質A、発疹チフスリケッチア及び発疹熱リケッチアの防御準結晶表層タンパク質、リステリオリシン(「Llo」及び「Hly」としても知られる)、及び/又はリステリア菌の超酸化物不均化酵素(「SOD」及び「p60」としても知られる);ピロリ菌のウレアーゼ、及び炭疽菌の致死毒素及び/又は防御抗原の受容体結合ドメインが含まれる。
【0061】
[0080] 生物兵器又は病原体からの抗原の例には、天然痘、炭疽病、野兎病、ペスト、リステリア、ブルセラ症、肝炎、ワクシニア、ミコバクテリア、コクサッキーウイルス、結核、マラリア、エーリキア症及び細菌性髄膜炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
[0081] 寄生虫抗原が誘導される寄生虫病原体には、熱帯熱マラリア原虫(ATCC#:30145)などのマラリア原虫種;トリパノゾーマ−クルージ(ATCC#:50797)などのトリパノゾーマ種;ランブル鞭毛虫(ATCC#:30888D)などのシアルジア種;ウシマダニ種;バベシア−ミクロチ(ATCC#:30221)などのバベシア種;赤痢アメーバ(ATCC#:30015)などのエントアメーバ種;アイメリア−マキシマ(ATCC#:40357)などのアイメリア種;リーシュマニア種(分類ID:38568);マンソン住血吸虫(GenBank登録#AZ301495)などの住血吸虫種;マレー糸状虫(GenBank登録#BE352806)などのブルギア種;肝蛭(GenBank登録#AF286903)などのファシダ種;イヌ糸状虫(GenBank登録#AF008300)などのイヌ糸状虫種;バンクロフト糸状虫(GenBank登録#AF250996)などのブケレリア種;及び回旋糸状虫(GenBank登録#BE588251)などのオンコセルカ種が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
[0082] 寄生虫抗原の例には、熱帯マラリア原虫(GenBank登録#M22982)及び三日熱マラリア原虫(GenBank登録#M20670)などのサーカムスポロゾイト抗原などのマラリア原虫種の前赤内期抗原;肝臓期抗原1(LSA−1と呼ばれる;GenBank登録#AF086802)などのマラリア原虫種の肝臓期抗原;メロゾイト表面抗原1(MSA−1又はMSP−1とも呼ばれる;GenBank登録#AF199410)などのマラリア原虫種のメロゾイト期抗原;ガラクトース特異的レクチン(GenBank登録#M59850)又は高セリン赤痢アメーバタンパク質などの赤痢アメーバの表面抗原;大形リーシュマニア(GenBank登録#Y00647)の63kDaの糖タンパク質(gp63)又は大形リーシュマニアの46kDAの糖タンパク質(gp46)などのリーシュマニア種の表面タンパク質;マレー糸状虫(GenBank登録#U77590)のパラミオシン;マンソン住血吸虫(GenBank登録#W06781)のトリオースリン酸イソメラーゼ;コルブリフォルミス毛様センチュウ(GenBank登録#M63263)の分泌グロビン様タンパク質;肝蛭(GenBank登録#M77682)のグルタチオン−S−転移酵素;ボビス住血吸虫(GenBank登録#M77682);日本住血吸虫(GenBank登録#U58012);及びボビス住血吸虫及び日本住血吸虫のKLHが含まれるが、これらに限定されない(上記のBashir他)。
【0064】
[0083] 腫瘍特異的抗原の例には前立腺特異的抗原(PSA)、TAG−72及びCEA、ヒトチロシナーゼ(GenBank登録#M27160)、チロシナーゼ関連タンパク質(TRPとも呼ばれる;GenBank登録#AJ132933)、及び腫瘍特異的ペプチド抗原が含まれる。
【0065】
[0084] 移植抗原の例には、T細胞上のCD3分子及びHLA A、HLA B、HLA C、HLA DR及びHLAなどの組織適合抗原が含まれる。
【0066】
[0085] 自己免疫抗原の例には、自己免疫脳脊髄炎に対する治療用ワクチン(GenBank登録#D88762)に有用なIASベータ鎖;インシュリン依存性1型糖尿病に対する治療用ワクチン(GenBank登録#NM013445)に有用なグルタミン酸脱炭酸酵素;グレーブス病に対する治療用ワクチン(GenBank登録#NM000369)に有用なチロトロピン受容体(TSHr)及び白斑に対する治療用ワクチン(BenBank登録#NM000550)に有用なチロシナーゼ関連タンパク質1が含まれる。
【0067】
[0086] タグ付き抗体又はそのフラグメントの作成に使用することができるHIV薬には、ヌクレオシドRT阻害剤、CCR5阻害剤/拮抗薬、ウイルス侵入阻害剤及びその機能的類似体などの抗ウイルス剤が含まれるが、これらに限定されない。特に、抗ウイルス剤は、ジドブジン(ZDV、AZT)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、ジダノシン(ddl)、ザルシタビン(ddC)、アバカビル(ABC)、エミリビン(FTC)、テノホビル(TDF)、デラビラジン(DLV)、エファビレンズ(EFV)、ネビラピン(NVP)、サキナビル(SQV)、リトナビル(RTV)、インジナビル(IDV)、ネルフィナビル(NFV)、アンプレナビル(APV)、ロピナビル(LPV)、アタザナビル、コンビビル(ZDV/3TC)、カレトラ(RTV/LPV)、トリジビル(ZDV/3TC/ABC)などのヌクレオシドRT阻害剤;
[0087] SCH−C、SCH−D、PRO140、TAK779、TAK−220、RANTES類似体、AK602、UK−427、857、モノクローナル抗体などのCCR5阻害剤/拮抗薬;及びフゼオン(T−20)(エンフビルチド)、NB−2、NB−64、T−649、T−1249、SCH−C、SCH−D、PRO140、TAK779、TAK−220、RANTES類似体、AK602、UK−427、857などのウイルス侵入阻害剤;及びその機能的類似体又は等価物でよい。
【0068】
[0088] 様々なコアフコシル化糖タンパク質及び非フコシル化糖タンパク質を、本発明の方法により修飾できる、又は末端糖と共役する治療剤として使用できることが想定され、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、副腎皮質刺激ホルモン誘導体(例えばエビラチド)、アンギオテンシン、アンギオテンシンII、アスパラギナーゼ、心房性ナトリウム利尿ペプチド、心房性ナトリウム利尿剤ペプチド、バシトラシン、ベータ−エンドルフィン、血液凝固因子VII、VIII及びIX、血液胸腺因子(FTS)、血液胸腺因子誘導体、ボンベシン、骨形態形成因子(BMP)、骨形態形成タンパク質、ブラジキニン、セルレイン、カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(CGRP)、カルシトニン、CCK−8、細胞増殖因子(例えばEGF、TGF−アルファ、TGF−ベータ、PDGF、酸性FGF、塩基性FGF)、セルレイン、ケモカイン、コレシストキニン、コレシストキニン−8、コレシストキニン−パンクレオザイミン(CCK−PZ)、コリスチン、コロニ刺激因子(例えばCSF、GCSF、GMCSF、MCSF)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)、サイトカイン、デスモプレシン、ジノルフィン、ジペプチド、ジスムターゼ、ダイノルフィン、エレドイシン、エンドルフィン、エンドセリン、エンドセリン拮抗ペプチド、エンドセリン、エンケファリン、エンケファリン誘導体、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガラニン、消化管抑制ポリペプチド、ガストリン放出ポリペプチド(GRP)、ガストリン、G−CSF、グルカゴン、グルタチオンペルオキシターゼ、グルタチオペルオキシターゼ、性腺刺激ホルモン(例えばヒト慢性性腺刺激ホルモン及びそのアルファ及びベータサブユニット)、グラミシジン、グラミシジン、成長因子(EGF)、成長ホルモン放出因子(GRF)、成長ホルモン、ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(h−ANP)、ヒト胎盤性ラクトゲン、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、インタフェロン、インタフェロン(例えばアルファ−、ベータ−及びガンマ−インタフェロン)、インタロイキン(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12)、腸管ポリペプチド(VIP)、カリクレイン、キョートルフィン、ルリベリン、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、塩化リゾチーム、メラニン刺激ホルモン(MSH)、メラニン細胞刺激ホルモン、メリチン、モチリン、ムラミル、ムラミルジペプチド、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子(例えばNT−3、NT−4、CNTF、GDNF、BDNF)、神経ペプチドY、ニューロテンシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、膵臓ポリペプチド、パンクレオザイミン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ペンタガストリン、ポリペプチドYY、脳下垂体アデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAPs)、血小板由来成長因子、ポリミキシンB、プロラクチン、タンパク質合成刺激ポリペプチド、PTH関連タンパク質、リラキシン、レニン、セクレチン、血清胸腺因子、ソマトメジン、ソマトスタチン誘導体、スーパーオキシドジスムターゼ、タフトシン、テトラガストリン、トロンボポエチン(TPO)、胸腺液性因子(THF)、チモポエチン、チモシン、サイモスチムリン、胸腺ホルモン放出ホルモン、胸腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、トリプシン、タフトシン、腫瘍成長因子(TGF−アルファ)、腫瘍壊死因子(TNF)、チロシジン、ウロガストロン、ウロキナーゼ、血管作用性小腸ポリペプチド、及びバソプレシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
[0089] コアフコシル化及び非フコシル化糖タンパク質は、細胞接着、腫瘍転移、病原体感染、及び免疫反応などの多くの生物学的事象に重大な役割を果たす生体分子の重要なクラスである。本明細書で上述したように、フコシル化又は非フコシル化糖タンパクの構造及び機能の研究における主要な問題は、その構造的微小不均一性である。天然及び組換え型フコシル化又は非フコシル化糖タンパク質は、通常、ペンデントオリゴ糖の構造のみが異なるグリコフォームの混合物として産生される。
【0070】
[0090] 抗体などのリモデリングした糖タンパク質は、付加的な官能基又はタグを導入するために、グリコシル転移、及び選択的連結(例えばクリックケミストリー、シュタウディンガー反応など)を含むが、これらに限定されない必要な、又は望ましい別の構造的修飾を受けることができる。官能基は任意の適切なタイプでよく、それには毒素、特殊抗原(アルファ−Galなど)、放射性核種、光活性種、PEGsなどが含まれるが、これらに限定されない。糖タンパク質は、糖タンパク質のアジド官能基と目的の官能基部分を保有するアルキンとの「クリックケミストリー」付加環化反応で触媒反応させることができる。アジド官能基とアルキン官能基を個々の連結成分中で切り替える(switch)ことができ、糖タンパク質はアルキニル官能基で官能化されることができ、目的の部分を含むアジド官能基を有する化合物と反応させることができる。クリックケミストリー反応のために他の連結対を考案できることも理解される。
【0071】
[0091] 本明細書で述べる方法により産生されるコアフコシル化及び非フコシル化抗体又はそのフラグメントは、診断及び治療に使用することができる。市場で使用されている、及び/又は現在臨床試験中であるモノクローナル抗体などの治療用タンパク質の約3分の2は、糖タンパク質である。しかし、天然及び組換え型糖タンパク質の様々なグリコフォームの構造的不均一性は、糖タンパク質系薬剤を開発する際に大きな障壁となる。何故なら、異なるグリコフォームは異なる生物活性を有することがあり、発現中均一なグリコフォームへのグリコシル化の制御は、極めて困難であるからである。以前にエンドグリコシダーゼの1クラスのグリコシル転移活性を発見したことは、糖タンパク質の治療及び診断の可能性を向上させるグリコシル化操作の分野における大きな進歩であり、本発明のエンド−S突然変異体は、加水分解のマイナス面がなく、天然及び組換え型のコアフコシル化及び非フコシル化糖タンパク質をグリコシル転移することができる。
【0072】
[0092] 本発明の特徴及び利点を、以下の非限定的な実施例によりさらに詳細に示す。
【実施例】
【0073】
[0093] エンドSグリコシンターゼ突然変異体の生成及びインタクトなモノクローナル抗体リツキシマブのグリコシル化リモデリングへのその使用
[0094] グリコシンターゼは以前は、加水分解中にオキサゾリニウムイオンの中間形成を促進する役割を果たす重要なアスパラギン(Asn)残基の部位特異的突然変異によって、エンドA、エンドM及びエンドDなどの幾つかのGH85エンドグリコシダーゼ(ENGase)から作成されていた(36〜39、43)。エンドSはグリコシドヒドロラーゼ科18(GH18)に属するエンドグリコシダーゼであり(40,41)、これはエンドF1、エンドF2及びエンドF3と同じGH科であり、最近、グリコシル転移活性を有することが示された(44)。エンドF3などの他のGH18エンドグリコシダーゼで実証されたように、エンドS触媒の加水分解も、オキサゾリニウムイオン中間体の形成に関与する基質補助メカニズムによって進行するという仮説(45)に基づき、オキサゾリニウムイオン形成を促進する役割を果たす残基の同定及び突然変異によって、エンドSから潜在的グリコシダーゼが作り出された。以前のエンドF3に関する構造及び突然変異誘発研究は、GH85科酵素の場合のようにアスパラギン残基ではなく、位置165にあるアスパラギン酸残基(D165)が、オキサゾリン形成を促進する役割を果たし、E167残基が触媒加水分解の一般酸/塩基であることを示している(45)。エンドSとエンドF3との配列アラインメント(図2)により、触媒作用のためのエンドSの2つの重要な残基、すなわち、図2に示すように、オキサゾリニウムイオン形成を促進する役割を果たすD233残基(エンドF3のD165に対応する)、及びグリカン加水分解における一般酸/塩基残基としてのE235残基(エンドF3のE167の等価物)が同定された。機能的には、D233残基が、GH85エンドグリコシダーゼであるエンドA、エンドM及びエンドDそれぞれのN171、N175、及びN322とも同等であるはずである。このように、オキサゾリニウムイオン中間体を介して基質補助メカニズムで進行するエンドA、エンドM及びエンドDからグリコシンターゼを生成する方法(36〜39)に従い、図17に示すように、2つの特異的突然変異体D233A(配列番号:2)及びD233Q(配列番号:3)を、エンドS(配列番号:1)の部位特異的突然変異によって生成した。これらの突然変異体も野生型エンドSも、GST融合タンパク質として高い収率(30〜40mg/L)で大腸菌中に発現し、グルタチオン親和クロマトグラフィで精製した。
【0074】
[0095] 治療用モノクローナル抗体であるリツキシマブを、モデルmAbとして使用し、酵素の脱グリコシル化活性及び潜在的グリコシル転移活性を検査した。市販のリツキシマブの主要Fcグリカンは、図10に示すように、PNGaseFによって放出されたN−グリカンのマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛程時間型質量分析(MALDI−TOF MS)によって明らかにされたように、それぞれG0F、G1F及びG2Fグリコフォームと命名された0〜2個のガラクトース部分を保有するコアフコシル化二分岐性複合型オリゴ糖である。リツキシマブをエンドS−GST融合タンパク質(ここでは野生型エンドS又はエンドSと呼ぶ)で処理すると、急速に脱グリコシル化し、図11に示すような対応するFC N−グリカン(還元端にGlcNAcが1個しかない)、及びグリコシル化部位(N297)にフコシル化GlcNAc二糖部分(Fucα1,6GlcNAc)を保有する脱グリコシル化されたリツキシマブを提供する。これらの結果は、インタクトなIgGに対する野生型エンドSの驚くべきFcグリカン−加水分解活性を確認し、mAbsのグリコシル化リモデリングの第一のステップにおける有用性を示唆する。次に、図3A及び図3Bに示すように、アクセプタとして脱グリコシル化リツキシマブを、供与体基質として幾つかの合成グリカンオキサゾリンを使用して、エンドS及びその突然変異体のグリコシル転移の可能性を検討した。グリコシル化リモデリングのプロセスを、図4に示すように、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及び液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)でモニタした。リツキシマブの重鎖及び軽鎖が、還元条件でそれぞれ約50kDa及び約25kDaに現れた(図4Aのa、レーン1)。野生型エンドSでの脱グリコシル化の後、重鎖が約48kDaに単一の帯として現れ、リツキシマブの(それぞれ重鎖からの)2個のN−グリカンが除去されたことを示唆した(図4Aのa、レーン2)。脱グリコシル化リツキシマブ(1)及び合成シアログリカンオキサゾリン(2)(構造は図3Aを参照)(供与体/アクセプタ、50:1、モル比)を突然変異体エンドS−D233Aでインキュベートすると、グリコシル転移産物(3)が与えられ、その重鎖は単一の帯として現れ、脱グリコシル化リツキシマブ(1)より約2kDa大きかった(図4Aのa、レーン3)。この結果は、新しいN−グリカンがそれぞれのFc重鎖に結合したことを示唆する。(1)及び(2)をエンドS−D233Qでインキュベートすると、同じグリコシル転移産物が与えられた(図4Aのa、レーン4)。興味深いことに、インタクトな抗体のFcドメインで基本的に定量的なグリコシル転移がインキュベーション1時間内に達成された。これより長時間のインキュベーション(10時間)では、グリコシル転移産物が加水分解しないことが判明した。これらの結果は、2つのエンドS突然変異体が、産物を加水分解せずにインタクトな脱グリコシル化IgGを複合型N−グリカンでグリコシル化できる新しい効率的なグリコシンターゼであることを示す。
【0075】
[0096] グリコシル転移はLC−MS分析でさらに特徴付けられた。リツキシマブの重鎖及び軽鎖を、図12に示すようにLC−MS条件で分離した。軽鎖MSデータの逆畳込み解析で、23044の質量が与えられ、これはリツキシマブ軽鎖の質量計算値(M=23042Da)(47)と矛盾しなかった。重鎖のMSデータの逆畳込み解析では、図4Aのグラフbに示すように、3つの別個のm/z種、すなわち、50508、50670及び50834が与えられ、これは重鎖グリコフォームの理論的質量、それぞれG0FはM=50515Da、G1FはM=50677Da、及びG2FはM=50839Da(47)と良好に一致した。脱グリコシル化リツキシマブ(1)の重鎖の逆畳込み解析エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、図4Bのグラフcに示すように、49420に単一の種を示し、これはFucα1,6GlcNAc二糖部分(計算値M=49420Da)を保有する重鎖と十分に一致する。グリコシル化リモデリングの後、図4Bのグラフdに示すように、グリコシル転移産物(3)の重鎖から51426に単一のピークが観察され、リツキシマブの脱グリコシル化重鎖に2006Daが追加されていた。この結果は、対応する糖オキサゾリン(2)からのシアログリカンが重鎖に結合していることを示す。グリコシル転移産物のSDS−PAGE上の単一の帯及び適切なMSスペクトルは、グリコシル転移が、リツキシマブのFcドメインの2つのグリコシル化部位で基本的に定量的であったことを明白に示唆する(Fcホモ二量体の2つの部位のいずれかが不完全にグリコシル化すると、還元後にFucα1,6GlcNAc−重鎖が観察されることになる、M=49420Da)。N−グリカンがFcドメインのGlcNAcに特異的に結合することをさらに確認するために、Asn−グリカン連結間のアミド結合を特異的に加水分解するPNGaseFで処理することによってグリコ−リモデリングしたリツキシマブ(3)からN−グリカン全体を放出した。放出されたN−グリカンを蛍光タグ2−アミノベンズアミド(2−AB)で標識し、蛍光高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)及びMS分析にかけた。LC−MS分析は、放出されたN−グリカンがコアフコース及び末端シアル酸を保有する予想された二分岐複合型N−グリカンであったことを明白に明らかにし、これは図13bに示すように、約92%のジシアル酸付加N−グリカン及び約8%のモノシアル酸付加N−グリカンで構成されていた。N−グリカンの組成物は、グリコシル転移に使用した対応するN−グリカンオキサゾリン(2)に見られる比率と十分に整合した。この結果で、転移N−グリカンが脱グリコシル化リツキシマブのGlcNAcプライマに特異的に結合したことが確認された。
【0076】
[0097] 本明細書で述べる結果は、エンドS及びエンドS系グリコシンターゼを組み合わせて使用することにより可能になった高効率の脱グリコシル化−再グリコシル化プロトコルを通して、完全長の天然複合型N−グリカンをFcドメインに一括転移させたインタクトなIgGモノクローナル抗体のグリコシル化リモデリングの最初の報告である。グリコシル転移が完了した後、産物を単純タンパク質A親和クロマトグラフィで精製し、明確に規定された均一なグリコフォームにした。市販のリツキシマブは、図13aに示すように微量のシアル酸付加グリコフォームしか含有していないことを指摘しておかねばならない。シアル酸付加Fc及びIgGは抗炎症活性を有すると提唱されているので、十分にシアル酸付加したFc N−グリカンを保有する糖鎖改変リツキシマブは抗炎症機能を得ることができ、したがってその治療領域はがん治療から自己免疫疾患の治療まで拡大できる可能性がある(21,22)。
【0077】
[0098] シアル酸付加複合型N−グリカンオキサゾリン(2)に加えて、エンドS突然変異体はMan3GlcNAcコアオキサゾリン(4)(48)及びアジドタグ付きN3Man3GlcNAcオキサゾリン(6)(49)を使用してリツキシマブ糖鎖改変するのに同等に効率的であって、図3Aに示すように、それぞれ対応する均一なグリコフォーム(5)及び(7)が形成された。グリコシル転移産物(5)の重鎖の逆畳込み解析ESI−MSは、図4Cのグラフeに示すように50112に単一の種を示し、これはMan3GlcNAc2グリカンを保持するリツキシマブ重鎖の分子量計算値(M=50109Da)に十分一致した。同様に、グリコシル転移産物(7)の重鎖の逆畳込み解析ESI−MSは、図4Cのグラフfに示すように50143に単一の種を示し、これはN3Man3GlcNAcグリカンを保有するリツキシマブ重鎖の分子量計算値(M=50134Da)に良好に合致した。この場合も、これらの結果はグリコシル転移が基本的に定量的であることを示す。供与体/アクセプタのモル比を25:1まで減少させても、なお転移は効率的であり、エンドSグリコシンターゼ突然変異体の驚くべきグリコシル転移効率を暗示することに留意されたい。特に、Fc N−グリカンのコアのアジド官能基をインタクトなモノクローナル抗体に選択的に導入することにより、クリックケミストリーを通して抗体の部位特異的修飾がさらに可能になり(50,51)、これは標識付け及び標的指向目的に、又はさらに構造と活性との関係を研究するために抗体グリコフォームの多様性を拡大するために使用することができる。
【0078】
[0099] 野生型エンドSも、エンドS突然変異体と同じ条件で、グリカンオキサゾリン(2及び4)での脱グリコシル化リツキシマブ(1)のグリコシル転移について試験し、LC−MSでモニタして対応するグリコシル転移産物の一時的な形成しか観察されず、これは恐らく野生型酵素による産物がその場で迅速に加水分解されたためであろう。最近、Scanlan、DavisらがエンドSの基質特異性に関して独立した研究を報告し、脱グリコシルIgGの効率的なグリコシル転移のために野生型エンドSがMan3GlcNAcオキサゾリンを使用できることを実証した(42)。この明らかな観察結果の矛盾に対応するために、この最近の報告(42)に従い、低い温度(4℃)で、使用する酵素の量をはるかに少なくして、野生型エンドSのグリコシル転移効率を再評価した。変更したこの条件を用い、図14に示すように、初期インキュベーション期間に野生型エンドSによる複合糖オキサゾリン(2)での脱グリコシル化リツキシマブ(1)の重大なグリコシル転移が観察されたが、インキュベーションを継続すると、産物は徐々に加水分解された。このように、野生型エンドSを使用する場合はグリコシル転移産物を捕捉するために、反応条件を慎重に制御しなければならない。実際的な応用で、エンドSグリコシンターゼ突然変異体は、産物の加水分解活性がないので、効率的かつ完全なグリコシル転移の選択肢になるはずである。
【0079】
[00100] 非フコシル化及びガラクトシル化G2グリコフォームを提供するリツキシマブの糖鎖改変
[00101] 抗がん療法には非フコシル化IgGグリコフォームが望ましい。何故なら、Fc N−グリカンのフコース含有率が低いmAbはin vitroでADCC活性の向上を、in vivoで抗がん有効性の向上を示し、FcγIIIa受容体の親和性が低いF158対立遺伝子を保有する患者では特にそうであることが以前に実証されている(16〜19、52)からである。既存のフコシル化mAb(哺乳類の細胞で産生される組換え型mAbの主要グリコフォーム)を非フコシル化mAbに効率的に変換する効率的な方法はなかった。この問題に対応するために、一連の市販のα−フコシダーゼを試験したが、インタクトなリツキシマブ中でα1,6−フコースを除去できるものはなかった。図5A及び図5Bの概略図を参照されたい。これらの結果は、α−1,6−フコース部分がFcドメイン及び/又は複合N−グリカンによって遮蔽され、α−フコシダーゼへのアクセスを不可能にしているかもしれないことを意味する。脱グリコシル化の後、得られたリツキシマブのFuc(α1,6)GlcNAcグリコフォームが、α−フコシダーゼへよりアクセス可能になるかもしれないとの理論を立てた。したがって、Fuc(α1,6)GlcNAc部分のみを保持する脱グリコシル化リツキシマブ(1)で、幾つかの市販のα−フコシダーゼの活性を試験した。ウシ腎臓からの非特異的α−フコシダーゼは実際に穏やかな活性を有し、脱グリコシル化リツキシマブ(1)からフコース残基を除去し、GlcNAc−含有リツキシマブ(8)を与えられることが判明した(図15A及び図15B参照)。α−フコシダーゼの穏やかな活性により、エンドS−脱グリコシル化リツキシマブの完全な脱フコシル化を達成するために比較的大量のα−フコシダーゼ及び長い反応時間が必要であったが、このα−フコシダーゼの活性の発見は、更なる糖鎖改変のために脱フコシル化リツキシマブ前駆物質(8)を得る代替法を提供する。
【0080】
[00102] 次に、シアル酸付加N−グリカンオキサゾリン(9)(38)でグリコシル転移して、基本的に定量的な変換で均一な非フコシル化G2グリコフォーム(10)を提供するために、グリコシンターゼエンドS−D233A及びエンドS−D233Qも(8)中の非フコシル化GlcNAcを認識するのに効率的であると判定された(図5)。産物をタンパク質A親和クロマトグラフィで精製した。糖鎖改変した産物(10)の同一性及び純度は、図6に示すようにSDS−PAGE及びLC−MS分析で確認した。脱フコシル化リツキシマブ(8)は、49274に単一の種を示し(図6b)、フコースの除去が確認された(GlcNAc−リツキシマブの重鎖の計算値、M=49274Da)。グリコシル転移産物(10)の重鎖の逆畳込み解析ESI−MSは、50695に単一の種として現れ(図6c)、これはアシアリル化二分岐複合型N−グリカン、すなわち、Gal2GlcNac2Man3GlcNAc2を保有するリツキシマブ重鎖の分子量計算値(M=50693Da)と十分一致した。比較研究で、突然変異体D233A及びD233Qはフコシル化GlcNAc−リツキシマブ(1)及び非フコシル化GlcNAc−リツキシマブ(8)の両方をグリコシル転移のアクセプタとして認識したが、該2つのグリコシンターゼ突然変異体はアクセプタとしてフコシル化GlcNAc−リツキシマブ(1)を優先し、非フコシル化アクセプタ(8)よりグリコシル転移反応が高速であることも判明した(データは示さず)。まとめると、これらの実験結果により、市販のモノクローナル抗体から非フコシル化及び完全にガラクトシル化した均一なグリコフォームを作成する複合の酵素的方法が明らかになった。その結果である非フコシル化及びガラクトシル化リツキシマブは、以前の研究で示唆された(2,16〜20、52)ように、改良されたADCC及びCDCエフェクター機能を得ると予想される。
【0081】
[00103] 十分にFcシアル酸付加したIVIGグリコフォームを提供するIVIGの部位選択的Fc糖鎖改変
[00104] リツキシマブのグリコシル化リモデリングが成功したことにより、抗炎症活性を向上させることを目的としたIVIGの糖鎖改変のための酵素化学的方法の考察が促進された。IVIGは、数千人の健康なドナーの血漿から精製されてプールされたIgG画分である。最近の研究は、微小なα2,6−シアル酸付加Fcグリコフォームは、関節リウマチのマウスモデルで実証された(21,22,53、54)ように、抗炎症活性を与えるIVIG中の活性種であることを示唆している。シアル酸付加FcグリコフォームはIVIGのマイナーな構成部分であるので(55)、末端Fcシアル酸付加に対するIVIGの抗炎症活性の依存性により、防御を与えるためにIVIGの高用量(1〜2g/kg)の注入が必要である理由が部分的に説明される。ヒトα−1,6−シアリル転移酵素(ST6Gal−I)を使用してFc及びIVIGの直接的なシアル酸付加を試みたが、効率は低く、大抵の場合、主要産物としてモノシアル酸付加グリコフォームしか得られなかった(22,56)。さらに、FABグリカンにシアル酸付加した場合、IVIGのFABドメインの約30%がN−グリコシル化され、IVIGのFcシアル酸付加グリコフォームのレクチン強化の効率が低下することになる(2,57)。したがって、FABグリコシル化を変化させずに、シアル酸付加N−グリカンでFc特異的糖鎖改変が達成できれば非常に望ましい。
【0082】
[00105] エンドSは、穏やかな条件でFABドメインのN−グリカンを加水分解せずにIVIGのFcドメインを選択的に脱グリコシル化できることが判明した。さらに、図7に示すように、エンドS−D233Q突然変異体によってシアログリカンオキサゾリン(2)でIVIG(11)の脱グリコシル化Fcドメインを選択的にグリコシル化し、Fc完全シアル酸付加IVIG(12)を提供することができた。最初にSDS−PAGE分析で糖鎖改変をモニタした。図16に示すように、重鎖の帯のサイズ変化で示すように、IVIGの脱グリコシル化及び再グリコシル化が明白であった。IVIGの糖鎖改変の部位選択性をさらに特徴付けるために、パパイン分解(58)によってFABドメインとFcドメインを切断した。Fcドメインをタンパク質A親和クロマトグラフィで分離し、フロースルーに残されたFABドメインは、高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)システムのサイズ排除クロマトグラフィで分離した。次に、2−アミノベンズアミド(2−AB)(59)で標識したPNGaseF処理によってFc及びFAB N−グリカンを別個に放出し、HPLC(蛍光検出及び定量化)によって分析してMSで特徴付けした。IVIGの糖鎖改変前後のFAB及びFc N−グリカンのプロフィールを図8に示した。IVIGのFcグリコシル化パターンは、モノクローナル抗体リツキシマブのFcグリコシル化より複雑であることが判明した。主要成分としてのG0F、G1F及びG2Fグリコフォームに加えて、多量のモノシアル酸付加(ピーク2及び7)グリコフォーム(約10%)及び二分GlcNAc−含有グリコフォーム(ピーク13〜15)(5%)があった(図8a)。(エンドS−脱グリコシル化及びその後のエンドS−D233Qによるシアログリカンオキサゾリン(2)でのグリコシル転移で)糖鎖改変した後のFcグリコシル化は、主要なグリコフォーム(>90%)として完全シアル酸付加グリカン(ピーク1及び6)を示した(図8b)。興味深いことに、FABグリコシル化パターンは、少量の完全シアル酸付加グリコフォーム(ピーク6)が生成されることを除き、糖鎖改変プロセスの前後で同様であった(図8cと図8dを比較)。これらの結果は、エンドS系グリコシル化リモデリングプロセスが、FABグリコシル化があっても、インタクトなIgG抗体のFc N−グリカンに対して高選択性であることを示す。本発明のFc糖鎖改変方法は驚くほど選択的で効率が高く、そのことにより、市販のIVIGを、マウスモデルを使用した以前の研究で実証された(21,22,53,54)ように、向上した抗炎症活性を示すことが予測される完全Fc−シアル酸付加IVIG製剤に変換する新規の道を提供する。
【0083】
[00106] 糖鎖改変したリツキシマブの刺激性Fcγ受容体(FcγRIIIa)及び抑制性Fcγ受容体(FcγRIIb)との結合
[00107] 表面プラズモン共鳴(SPR)分析で、個々のFcγ受容体(FcγRIIIa−F158、FcγRIIIa−V158及びFcγRIIb)に対するリツキシマブのリモデリングしたグリコフォームの親和性を試験した。本発明者の最近報告した手順(35)に従い、リツキシマブグリコフォームをタンパク質Aチップ上で部位特異的に固定化し、様々な濃度のFcγ受容体を検体として注入した。予測通りに、非フコシル化G2グリコフォームは、市販のリツキシマブと比較した場合、図9に示すように低親和性及び高親和性の両方のFcγIIIa受容体、FcγRIIIa−F158及びFcγRIII−V158に対して大幅に向上した親和性を示した。FcγRIIIa−F158及びFcγRIIIa−V158に対するG2グリコフォーム(10)の結合のKD値は、それぞれ123±11及び12±2nMであり、それはBIAcore T100評価ソフトウェアを使用して、結合データを1:1定常状態モデルに当てはめることによって取得した。他方で、FcγRIIIa−F158及びFcγRIIIa−V158に対する市販のリツキシマブの結合のKD値は、それぞれ1042±155及び252±18nMと推定された。したがって、低親和性及び高親和性Fcγ受容体(FcγRIIIa−F158及びFcγRIIIa−V158)に対する糖鎖改変G2グリコフォームの親和性は、それぞれ市販のリツキシマブより約9倍及び20倍高かった。他方で、G2グリコフォーム及び市販のリツキシマブは、抑制性Fcγ受容体FcγRIIbに対して同等の親和性を実際に示し、Kd値はそれぞれ2.3±0.5及び2.0±0.7μMであった。これらの結果は、糖鎖改変したリツキシマブで有利な機能の明白な増加を明らかにする。高親和性FcγRIIIa−結合グリコフォームの効率的な製剤は、一般的MAbでの治療に対する反応が低い又は反応しないがん患者で見られるFcγ受容体多形の問題に対応するために、臨床的に重大であることを指摘しておかねばならない。これらの患者では、そのFcγRIIIa−F158対立遺伝子は、高親和性受容体FcγRIIIa−V158対立遺伝子と比較して、リツキシマブなどの治療用mAbに対して親和性が低い(52,60,61)。Fcγ受容体媒介のエフェクター機能は、HIV−中和抗体に対する防御免疫を達成するために重要なメカニズムであることも示唆された(62)。したがって、本明細書で述べる糖鎖改変方法は、機能研究、さらに生物医学的用途にとって貴重なモノクローナル抗体の様々な規定されたグリコフォームを産生する上で広い用途を見出すことができる。
【0084】
[00108] 本明細書で、インタクトなIgG抗体の糖鎖改変に対する効率的な酵素化学的方法を説明する。部位特異的突然変異によって生成された2つの新しいエンドS系グリコシンターゼは、対応するグリカンオキサゾリンからのシアル酸付加及びアシアリル化及び複合型N−グリカン、さらに選択的に修飾されたN−グリカンコアをインタクトなFc−脱グリコシル化抗体に転移することができる広範な基質特異性を実証している。さらに、脱グリコシル化/再グリコシル化方法は、α−フコシダーゼが適切に併用される場合、コアフコシル化及び非フコシル化IgG抗体の両方に効率的である。これらの新しい発見は酵素化学的方法の範囲を大幅に拡大し、インタクトなモノクローナル抗体を既存の方法ではこれまで得ることが困難であった様々な特定のグリコフォームに効率的に変換することが可能になった。この糖鎖改変方法は、治療の有効性が改善され、及び/又は新しい機能を得た生物学的に類似し、及び/又は生物学的に向上した生物製剤の開発を促進できることが予想される。
【0085】
材料及び方法
[00109] Premium Health Services Inc.(メリーランド州コロンビア)を通してモノクローナル抗体リツキシマブ(リツキサン、Genentech Inc.、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)及びIVIGを購入した。以前に報告された手順(38,46)に従って、シアログリカンオキサゾリン(2)及びアシアロ複合型グリカンオキサゾリン(5)を合成した。ウシ腎臓α−1−フコシダーゼをSigma(ミズーリ州セントルイス)及びProzyme(カリフォルニア州ヘイワード)から購入し、Arthrobacter protophormiaeからのエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンドA)及びMucor hiemalisからのエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンドM)及びその突然変異体を、報告された手順(38)に従って大腸菌から過剰産生した。PNGaseFをNew England Biolabs(マサチューセッツ州イプスウィッチ)から購入した。
【0086】
[00110] 液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)
[00111] Hypersil GOLDカラム(1.9μm、50×2.1mm)を有するLXQシステム(Thermo Scientific)でLC−MSを実施した。IgGサンプルを0.5%のβ−メルカプトエタノールで処理し、60℃で15分間加熱してから、LC−MS測定にかけた。分析は、0.1%の蟻酸を含有する10〜40%のMeCNの線形勾配で溶出させ、60℃で10分以内、0.25mL/分の流量で実施した。
【0087】
[00112] エレクトロンスプレイオン化質量分析(ESI−MS)及びマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛程時間型質量分析(MALDI−TOF MS)
[00113] ESI−MSスペクトルを、Waters Micromass ZQ-4000単四重極質量分析計で測定した。MALDI−TOF MSは、Autoflex II NIALD-TOF質量分析計(Bruker Daltonics、マサチューセッツ州ダルトニックス)で実施した。計器は、ProteoMass Peptide MALDI-MS較正キット(MSCAL2、Sigma/Aldirich)を使用して較正した。中性のグリカンには2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)のマトリクスを使用し、産生グリカンには2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)を使用した。
【0088】
[00114] エンドS及び突然変異体の過剰発現及び精製
[00115] 野生型エンドSを、以前に報告された手順(40,63)に従い、M. Collin博士(スウェーデン、ルンド大学)が親切にも提供してくれたプラスミドpGEX−エンドSを使用して大腸菌で過剰産生し、精製した。製造業者の指示に従ってGENEART部位特異的突然変異キット(Invitrogen)を使用して、2つのエンドS突然変異体、D233A及びD233Qを生成した。pGEX−エンドSプラスミドをテンプレートとして使用し、LA Taqポリメラーゼ(日本、タカラ)をPCRに使用した。突然変異をDNA配列で確認し、BL21(DE3)に形質転換した。形質転換体を、100mg/Lのカルベニシリンを含有するLuria-Bertani媒質中で培養し、0.1mMのイソプロピル−β−d−チオガラクトピラノシドで16時間、25℃で誘導した。1700gで15分間、4℃で遠心分離し、細胞を採取した。細胞ペレットを、リゾチーム及びPMSFを含むリン酸緩衝食塩水(pH7.4)中に懸濁させた。溶解混合物を16000gで20分間、4℃で遠心分離した。遠心分離後、細胞溶解からの上澄みを3mLの50%グルタチオン−セファロース4B樹脂(Ge Healthcare)に塗布した。サンプルを、穏やかに揺動し、25℃で60分間インキュベートした。樹脂を100mLのカラム(PD-10、GE Healthcare)に適用し、PBSで5回洗浄した。500μLのグルタチオン溶出緩衝液(50mMのトリス−HCl、10mMのグルタチオン、pH8.0)をカラムに添加し、室温で5分間インキュベートし、採取して、次に3回繰り返した。溶出したフラクションをプールし、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0)に対して一晩、4℃で透析分離した。次に、Amicon超遠心分離フィルタ10kDa(ミリポア)を使用してタンパク質サンプルを濃縮した。濃縮したタンパク質サンプルをSDS−PAGEで分析し、Nano-Drop 2000c分光測光器を使用してタンパク質濃縮物を数量化した。野生型エンドSの過剰産生の収率は約40mg/Lであり、突然変異体の収率は約30mg/Lであった。
【0089】
[00116] (Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)を与える野生型エンドSによるリツキシマブの脱グリコシル化
[00117] トリス−Cl緩衝液(50mM、pH8.0、2mL)中に市販のリツキシマブ(20mg)をエンドS(30μg)で1時間、37℃でインキュベートした。LC−MS及びSDS−PAGE分析は、重鎖上のN−グリカンが完全に切断していることを示した。反応混合物を、トリス−Cl緩衝液(20mM、pH8.0)で事前平衡化したタンパク質A−アガロース樹脂(5mL)のカラム上で親和クロマトグラフィにかけた。カラムをトリス−Cl(20mM、pH8.0、25mL)及びグリシン−HCl(20mM、pH5.0、20mL)で続けて洗浄した。結合IgGをグリシン−HCl(100mM、pH2.5、20mL)で放出させ、溶出フラクションを即座にトリス−Cl緩衝液(1.0M、pH8.8)で中和した。Fcフラグメントを含有するフラクションを化合させ、遠心濾過(Amicon Ultra遠心フィルタ、Millipore、マサチューセッツ州ビルリカ)で濃縮し、(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)(18mg)を得た。LC−MS:(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)の重鎖に対し計算、M=49420Da(47)、(m/z)49420であると判明(逆畳込み解析データ)。
【0090】
[00118] エンドS突然変異体D233A又はD233Qによるシアログリカンオキサゾリン(2)での(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)のグリコシル転移
[00119] トリス緩衝液(50mM、pH7.4、2mL)中に(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)(10mg)及びシアログリカン−オキサゾリン(2)(10mg)を入れた溶液を、エンドS突然変異体D233A又はD233Q(200μg)で30℃でインキュベートした。間隔をあけてアリコートを採取し、LC−MSで分析した。2〜3時間後、LC−MSのモニタリングで(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)が完全に反応し、完全にシアル酸付加したN−グリカンを保有するグリコシル転移産物(3)が得られたことが示された。反応混合物を、上述した手順に従ってタンパク質A−アガロースカラム上で親和クロマトグラフィにかけた。産物を含有するフラクションを化合させ、超遠心分離で濃縮して、シアル酸付加リツキシマブ(3)(11mg、定量)が得られた。LC−MS:完全シアル酸付加N−グリカンを保有する(3)の重鎖に対し計算、M=51421Da、(m/z)51426であると判明(逆畳込み解析データ)。
【0091】
[00120] エンドS−D233QによるMan3GlcNAcオキサゾリン(4)及びアジド−タグ付きMan3GlcNAcオキサゾリン(6)での(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)のグリコシル転移
[00121] (3)を調製して対応する産物を与えるために、上述したようにグリコシル転移を実施した。糖鎖改変したリツキシマブ(5及び7)のLC−MS分析:フコシル化Man3GlcNAc2 N−グリカンを保持する(5)の重鎖に対し計算、M=50109Da、(m/z)50112であると判明(逆畳込み解析データ);フコシル化アジド−Man3GlcNAc2 N−グリカンを保有する(7)の重鎖に対し計算、M=50134Da、(m/z)50143であると判明(逆畳込み解析データ)。
【0092】
[00122] ウシ腎臓α−フコシダーゼによる(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)の脱フコシル化
[00123] 0.05のアジ化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液(500mM、pH5.5、200μL)に(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)(2mg)を入れた溶液を、ウシ腎臓からのフコシダーゼ(Prozyme、5U)で37℃でインキュベートした。間隔をあけてアリコートを採取し、LC−MSで分析した。20日後、LC−MSのモニタリングで、(Fucα1,6)GlcNAc−リツキシマブ(1)が完全に脱フコシル化し、産物のGlcNAc−リツキシマブ(2)が得られたことが示された。反応混合物を、上述した手順に従ってタンパク質Aのカラム上で親和クロマトグラフィにかけた。産物を含有するフラクションを化合させ、超遠心分離で濃縮してGlcNAc−リツキシマブ(2)(2mg、定量)が得られた。LC−MS:GlcNAc部分を保有するGlcNAc−リツキシマブ(2)の重鎖に対し計算、M=49274Da、(m/z)49274であることが判明(逆畳込み解析データ)。
【0093】
[00124] D233Q突然変異体によるアシアリル化複合型グリカンオキサゾリン(5)でのGlcNAc−リツキシマブ(4)のグリコシル転移
[00125] トリス緩衝液(50mM、pH7.4、0.5mL)にGlcNAc−リツキシマブ(4)(2mg)及びオキサゾリン(5)(5mg)を入れた溶液を、エンドS−D233Q(200μg)で37℃でインキュベートした。間隔をあけてアリコートを採取し、LC−MSで分析した。2時間後、LC−MSのモニタリングで、4が完全に反応し、対応するグリコシル転移産物(6)が得られたことが示された。反応混合物をタンパク質Aのカラム上で親和クロマトグラフィにかけた。産物を含有するフラクションを化合させ、超遠心分離で濃縮して、非フコシル化リツキシマブグリコフォーム(6)(2mg、定量)が得られた。LC−MS:非フコシル化N−グリカンを保有する(6)の重鎖に対し計算、M=50693Da、(m/z)50695であると判明(逆畳込み解析データ)。
【0094】
[00126] エンドSによるIVIGのFcドメインにおける部位特異的脱グリコシル化
[00127] トリス−Cl緩衝液(50mM、pH8.0、2mL)中に市販のIVIG(20mg)をエンドS(配列番号:1)(30μg)で1時間、37℃でインキュベートした。残基をタンパク質Aのカラム上で親和クロマトグラフィにかけ、(Fucα1,6)GlcNAc−IVIG(20mg、定量)が得られ、このFc N−グリカンを除去して、N297部位にα1,6−フコシル化GlcNAcを残した。
【0095】
[00128] D233Q突然変異体によるシアログリカンオキサゾリン(2)での(Fucα1,6)GlcNAc−IVIGのグリコシル転移
[00129] トリス緩衝液(50mM、pH7.4、2mL)中に(Fucα1,6)GlcNAc−IVIG(3mg)及びシアログリカン−オキサゾリン(2)(3mg)を入れた溶液をD233Q突然変異体(配列番号:2)(60μg)で30℃でインキュベートした。2時間後、SDS−PAGE分析で、(Fucα1,6)GlcNAc−IVIGが完全に反応し、グリコシル転移産物が得られたことが示された。反応混合物をタンパク質Aのカラム上で親和クロマトグラフィにかけ、グリコ−リモデリングしたIVIG(3mg、定量)が提供され、そのFc N−グリカンをリモデリングして、完全にシアル酸付加した複合型N−グリカンにした。
【0096】
[00130] 表面プラズモン共鳴(SPR)結合実験
[00131] Biacore T100計器(GE Healthcare、米国)を使用し、表面プラズモン共鳴(SPR)でIgG及びFcγ受容体の様々なグリコフォーム間の結合を測定した。標準的な第一アミンカップリング化学を用いてpH4.5でCM5バイオセンサチップ(Ge Healthcare)上に5000RUのタンパク質Aを固定化し、IgGの様々なグリコフォームを捕捉した。タンパク質Aを注入せずに、基準のフローセルを同様に調製した。HBS−P緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、0.05%v/v界面活性剤P20)にIgGの個々の各グリコフォームを入れて10μL/分でタンパク質Aの表面上に注入し、150RUの捕捉レベルに達した。FcγIIIa及びFcγIIb受容体の連続希釈を10μL/分で注入した。各サイクルの後、10mMのHClを10μL/分で30秒注入することにより、表面を再生した。BIAcore T100評価ソフトウェアを使用してデータを1:1 Langmuir結合モデルに当てはめ、平衡定数(KD)データを取得した。
【0097】
[00133] 参照文献
[00134] 本明細書で引用された全ての参照文献の内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
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図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図8-1】
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
【配列表】
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