特許第6282234号(P6282234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282234
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   F24H4/02 N
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-11819(P2015-11819)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-136080(P2016-136080A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂元 成彰
(72)【発明者】
【氏名】田邊 智明
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−097990(JP,A)
【文献】 特開2009−041860(JP,A)
【文献】 特開2004−347148(JP,A)
【文献】 特開2010−048518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機により吐出された冷媒を、少なくとも水熱交換器を介して前記圧縮機に環流させる冷凍サイクル部と、
湯水を貯湯する貯湯ユニットから供給された湯水を前記水熱交換器に供給し、前記水熱交換器から吐出された湯水を前記貯湯ユニットに環流させる水流路と、
前記貯湯ユニットから供給された湯水の温度を検出する供給側温度センサと、
前記圧縮機の吐出側の温度を検出する吐出側温度センサと、
前記供給側温度センサおよび前記吐出側温度センサの検出結果に基づいて、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させるか、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器への水の供給の開始タイミングに関わらずに前記冷凍サイクル部の稼働を開始させるかを決定する制御部と、
を備えるヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷凍サイクル部の稼働開始を指示する信号が入力されたとき、前記供給側温度センサにより検出された温度から前記吐出側温度センサにより検出された温度を減算した値が設定値を超える場合、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させ、
前記供給側温度センサにより検出された温度から前記吐出側温度センサにより検出された温度を減算した値が設定値以下の場合、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器への水の供給開始タイミングに関わらずに前記冷凍サイクル部の稼働を開始させる、
請求項1記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
外気温度を検出する外気温度センサを、更に備え、
前記制御部は、前記冷凍サイクル部の稼働開始を指示する信号が入力されたとき、
前記外気温度センサにより検出された外気温度が基準温度未満であり、且つ前記供給側温度センサにより検出された温度から前記吐出側温度センサにより検出された温度を減算した値が設定値を超える場合に、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させる、
請求項2記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記供給側温度センサにより検出された温度から前記吐出側温度センサにより検出された温度を減算した値に基づいて、前記冷凍サイクル部の稼働開始を指示する信号が入力されたときに、前記冷凍サイクル部の稼働を開始させる前に前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させる時間を設定する、
請求項1から3のうちいずれか1項記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
前記供給側温度センサの異常を検出する第1のセンサ異常検出部と、
前記吐出側温度センサの異常を検出する第2のセンサ異常検出部と、を更に備え、
前記制御部は、前記冷凍サイクル部の稼働開始を指示する信号が入力されたとき、
前記第1のセンサ異常検出部により前記供給側温度センサの異常が検出され、または第2のセンサ異常検出部により前記吐出側温度センサの異常が検出された場合には、前記供給側温度センサおよび前記吐出側温度センサの検出結果に関わらず、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させる、
請求項1から4のうちいずれか1項記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項6】
前記水熱交換器へ供給された水を、前記貯湯ユニットにおける貯留部に環流する前に排水する排水部を備え、
前記制御部は、前記冷凍サイクル部の稼働開始を指示する信号が入力されたとき、前記供給側温度センサおよび前記吐出側温度センサの検出結果に基づいて、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させる場合に、前記水熱交換器へ供給させた水が前記排水部から排水されるように前記排水部を制御する、
請求項1から5のうちいずれか1項記載のヒートポンプ給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒートポンプ給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯を貯湯する貯湯タンクと、湯を生成する熱源である冷凍サイクルとを備えたヒートポンプ給湯機が知られている。冷凍サイクルは、水熱交換機や圧縮機を備え、冷媒を循環させることで、冷媒から対象の水に熱を移転させて湯とする。この種のヒートポンプ給湯機においては、貯湯タンク内の湯を循環させて、湯の流路における凍結を防止する凍結防止運転を行う場合がある。これにより、外気温が低い環境にヒートポンプ給湯機が設置された場合であっても、流路の凍結を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−97990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のヒートポンプ給湯機においては、冷凍サイクルが有する圧縮機の吐出側の温度と、貯湯タンクの側から供給された湯または水との温度差が大きい状態で圧縮機の運転を開始させると、圧縮機にかかる負荷が大きくなり、圧縮機の故障や寿命低下を招く場合がある。
本発明が解決しようとする課題は、圧縮機の故障や寿命低下を抑制することができるヒートポンプ給湯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のヒートポンプ給湯機は、冷凍サイクル部と、水流路と、供給側温度センサと、吐出側温度センサと、制御部とを備える。冷凍サイクル部は、冷媒を圧縮する圧縮機により吐出された冷媒を、少なくとも水熱交換器を介して前記圧縮機に環流させる。水流路は、湯水を貯湯する貯湯ユニットから供給された湯水を前記水熱交換器に供給し、前記水熱交換器から吐出された湯水を前記貯湯ユニットに環流させる。供給側温度センサは、前記貯湯ユニットから供給された湯水の温度を検出する。吐出側温度センサは、前記圧縮機の吐出側の温度を検出する。制御部は、前記供給側温度センサおよび前記吐出側温度センサの検出結果に基づいて、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器へ水を供給させた後に前記冷凍サイクル部の稼働を開始させるか、前記貯湯ユニットから前記水熱交換器への水の供給の開始タイミングに関わらずに前記冷凍サイクル部の稼働を開始させるかを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ヒートポンプ給湯機1の構成を示す図。
図2】主制御部80の機能構成を説明するための図。
図3】貯湯運転を説明するための図。
図4】給湯運転を説明するための図。
図5】凍結防止運転について説明するための図。
図6】圧縮機14の吐出側および吸入側の圧力の推移を説明するための図。
図7】入口水温低下運転について説明するための図。
図8】主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャート。
図9】第2の実施形態のヒートポンプ給湯機1の機能構成図。
図10】主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャート。
図11】主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャート。
図12】変形例の貯湯タンクユニット50A〜Cの構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のヒートポンプ給湯機を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、ヒートポンプ給湯機1の構成を示す図である。ヒートポンプ給湯機1は、例えば、ヒートポンプユニット10と、貯湯タンクユニット50とを備える。ヒートポンプユニット10には副制御部48が設けられ、貯湯タンクユニット50には主制御部80が設けられている。主制御部80は、操作部90と通信可能に接続されている。ヒートポンプユニット10及び貯湯タンクユニット50の各部は、主制御部80の制御により制御され、後述する冷凍サイクル部12の各部は、副制御部48により制御される。また、主制御部80は、操作部90から入力された信号に基づいて、ヒートポンプユニット10及び貯湯タンクユニット50を制御する。
【0009】
ヒートポンプユニット10は、冷凍サイクル部12を備える。冷凍サイクル部12は、圧縮機14と、四方弁16と、水熱交換器18と、膨張弁20と、空気熱交換器22とを備える。
【0010】
圧縮機14は、冷媒を圧縮して、第1の冷媒路15へ吐出することで、冷媒を図中の矢印方向へ循環させる。第1の冷媒路15に接続された四方弁16は、圧縮機14から吐出された冷媒を水熱交換器18へ循環させ、空気熱交換器22から吐出された冷媒を圧縮機14の吸入側に循環させる。または、四方弁16は、圧縮機14から吐出された冷媒を空気熱交換器22へ循環させ、水熱交換器18から吐出された冷媒を圧縮機14の吸入側に循環させる。このように四方弁16は、圧縮機14から吐出された冷媒を循環させる方向を切り替える。
【0011】
四方弁16と、水熱交換器18と、膨張弁20と、空気熱交換器22とは、第2の冷媒路24を介して接続されている。水熱交換器18は、圧縮機14から吐出された冷媒の熱を放出させて、貯湯タンクユニット50側から供給された供給水と熱交換することで供給水を湯にする。膨張弁20は、水熱交換器18から吐出された液体となった冷媒の減圧と流量制御を行うことで、液状の冷媒を低温、且つ低圧にする。空気熱交換器22は、膨張弁20から吐出された冷媒を大気と熱交換させて蒸発させる。
【0012】
また、ヒートポンプユニット10は、吐出側温度センサ30と、外気温度センサ32と、供給側温度センサである入口側温度センサ34と、出口側温度センサ35と、循環ポンプ36と、弁37、弁38とを備える。
【0013】
吐出側温度センサ30は、第1の冷媒路15に設置され、圧縮機14の吐出側の第1の冷媒路15内の温度を検出する。外気温度センサ32は、ヒートポンプユニット10の空気熱交換器22に送り込まれる外気の温度を検出する。入口側温度センサ34は、流路40に設置され、水熱交換器18へ供給される水の温度を検出する。出口側温度センサ35は、流路42に設置され、水熱交換器18から流出する水の温度を検出する。各センサ(30、32、34、35)の検出結果は、主制御部80へ入力される。なお、各センサの検出結果は、副制御部48を介して主制御部80へ入力されてもよい。
【0014】
循環ポンプ36は、吐出側が流路40に接続され、吸入側が流路41に接続されている。循環ポンプ36は、貯湯タンク52内の水または湯を流路41側から吸入し、流路40側へ循環させる。弁37は、流路41、流路45、および弁38と接続されている。弁38は、流路42、流路43、および弁37と接続されている。弁37、および弁38は、例えば三方弁である。
【0015】
貯湯タンクユニット50は、縦長円筒状の貯湯タンク52と、ミキシングバルブ54と、三方弁56と、減圧弁58とを備える。また、貯湯タンクユニット50は、給水口60と、排水口62と、給湯口64とを備える。貯湯タンク52は、下部に接続される流路73を介して給水口60から供給される水を貯留し、貯湯タンク52の上部に接続される流路77を介して冷凍サイクル部12により温められた湯を貯湯する。貯湯タンク52内は上方がより高温で、下方が比較的低温となる温度分布を有して湯水を貯留する。流路73は、流路72、減圧弁58、および流路70を介して給水口60と連通する。給水口60は、減圧弁58を介して、流路73およびミキシングバルブ54と連通する。給水口60から供給される水は、減圧弁58により減圧され、流路70、流路72、および流路73を介して貯湯タンク52の底部、または流路70および流路71を介してミキシングバルブ54へ流出される。ミキシングバルブ54は、流路71から流入する水と、貯湯タンク52の上部に接続された流路77から流入する湯を、混ぜ合わせたものを所定の温度にする。ミキシングバルブ54は、水と湯を混ぜ合わせたものを、流路78を介して給湯口64へ流出させる。三方弁56には、流路74、流路75、および流路76が接続されている。
【0016】
図2は、主制御部80の機能構成を説明するための図である。主制御部80は、通信入出力部82と、センサ検出値入力部84と、処理部86とを備える。主制御部80の各機能部は、例えば、ヒートポンプ給湯機1が備えるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することで機能するソフトウェア機能部である。また、主制御部80の各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0017】
通信入出力部82は、操作部90から操作入力された情報を取得する。センサ検出値入力部84は、各センサ(30、32、34、35)が検出した検出値を取得し、処理部86へ出力する。処理部86は、通信入出力部82、およびセンサ検出値入力部84から出力された情報を取得し、取得した情報に基づいて、ヒートポンプユニット10が備える冷凍サイクル部12や、弁37、38、循環ポンプ36などを含む各部を制御する。なお、冷凍サイクル部12の制御は、副制御部48に指示することにより行われる。処理部86が実行する処理の詳細は後述する。
【0018】
操作部90は、制御モードを設定する制御モード設定ボタン、設定温度変更ボタン、表示部などを備える。操作部90は、ヒートポンプ給湯機1の各制御モードや、給湯口64から流出する湯の温度を設定操作するための操作部であり、利用者の操作に応じた信号を主制御部80へ出力する。上述した制御モードは、例えば貯湯運転、給湯運転、凍結防止運転である。また、本実施形態のヒートポンプ給湯機1は、凍結防止運転後に、貯湯運転するときに、各センサの検出結果に基づいて、水温低下運転を行う。以下、各運転モードについて説明する。
【0019】
図3は、貯湯運転を説明するための図である。貯湯運転は、例えば沸上起動運転と、沸上運転とにより構成される。沸上起動運転は、沸上運転を安定的に行うために、沸上運転前に行われる運転である。流路40〜42および貯湯タンク52には、給水口60から供給された湯または水が貯湯されているものとする。ヒートポンプユニット10において、図中、矢印に示すように、圧縮機14で圧縮された冷媒は、四方弁16、水熱交換器18、膨張弁20、空気熱交換器22、四方弁16、圧縮機14の順で循環する。沸上起動運転では、ヒートポンプユニット10を稼働させた状態で、図中の破線の矢印で示すように循環ポンプ36を駆動させ、水熱交換器18の入口側と水熱交換器18の出口側とにある湯または水を、弁37、38を介して水熱交換器18、および流路40〜42内に循環させる。ヒートポンプユニット10の運転開始直後、冷凍サイクル部12内の冷媒、および潤滑油の偏りにより圧縮機14の出力が安定しない場合がある。また、各流路内にある水や低温度の湯を貯湯タンク52へ流入させることを抑制する必要がある。これに対して沸上起動運転を行うことにより、圧縮機14を安定的に出力させると共に、流路40〜42内にある水または低温度の湯を、所定以上の温度にした状態で貯湯タンク52へ流入させることができる。
【0020】
沸上運転とは、貯湯タンク52に貯湯された水を、冷凍サイクル部12を用いた熱交換により温水にすることで、貯湯タンク52に温水を貯湯する運転である。このとき貯湯タンクユニット50において、図中、実線の矢印に示すように、貯湯タンク52に貯湯された水は、循環ポンプ36が稼働することで、流路73、流路45、弁37、循環ポンプ36、流路40の順で循環して、水熱交換器18に流入する。水熱交換器18に流入した水は、水熱交換器18に流入した冷媒の熱が伝えられる。温められた水(湯)は、流路42、弁38、流路46、流路75、流路74の順で循環して、貯湯タンク52に流入する。これにより、貯湯タンク52に湯が貯湯される。
【0021】
図4は、給湯運転を説明するための図である。給湯運転とは、貯湯タンク52に貯湯された湯を、給湯口64を介して湯の需要先であるビルや、工場、家庭の給湯口へ供給する運転である。貯湯タンク52には、貯湯運転により湯が貯湯されているものとする。貯湯タンクユニット50において、図中、矢印に示すように、給水口60から供給される水は、ミキシングバルブ54、および貯湯タンク52の底部から貯湯タンク52内に供給される。この給水口60から供給される水の圧力により、貯湯タンク52の上部に貯湯された湯は、流路77へ押し出され、ミキシングバルブ54において給水口60から供給される水と混合される。混合された温水は、流路78を介して給湯口64から需要先に供給される。
【0022】
図5は、凍結防止運転について説明するための図である。凍結防止運転とは、水熱交換器18の故障を防止するための運転である。ヒートポンプ給湯機1が、低外気温の環境条件で運転停止状態である場合、凍結によって水熱交換器18に亀裂が生じる場合がある。亀裂を防止するため、図中、矢印に示すように、循環ポンプ36の稼働によって、流路74、流路75、流路46、弁37、流路41、流路40の順で、貯湯タンク52内の湯を循環させ、湯を水熱交換器18に流入させる。水熱交換器18に流入させた湯は、流路42、弁38、流路43、流路45、流路72、流路73の順で循環して、貯湯タンク52に流入する。このように、貯湯タンク52に貯湯された湯を水熱交換器18内を循環させることで、水熱交換器18が凍結して故障するのを防止することができる。
【0023】
ところで、一般的に、凍結防止運転を行った直後、貯湯運転を行うと圧縮機14に大きな負荷がかかり故障の原因となる場合がある。長時間、冷凍サイクル部12が稼働しないと、圧縮機14の温度が低くなり、圧縮機14内の冷凍機油の偏りや冷媒の寝込みが発生している。また、凍結防止運転が行われた直後では、水熱交換器18の温度も高くなっており、このような状態で、冷凍サイクル部12の運転を開始すると、運転開始直後に冷媒循環量が安定せず、水熱交換器で冷媒の十分な凝縮が行われず、吐出側圧力が急激に高くなる。また、蒸発器内での冷媒蒸発量も所定より少なくなり、吸入側圧力が急激に低下する原因となる。これにより、想定される圧縮機の吐出圧力と吸入圧力の使用領域を外れる吐出圧力と吸入圧力の組合せとなり、圧縮機の故障や信頼性低下を引き起こす場合がある。
【0024】
図6は、圧縮機14の吐出側および吸入側の圧力の推移を説明するための図である。図中、縦軸は圧縮機14の吐出側の圧力を示し、横軸は圧縮機14の吸入側の圧力を示している。使用領域Sは、圧縮機14の故障が生じないという、ある程度の信頼性を確保した状態で圧縮機14を使用することができる使用領域を示している。図中、圧力推移線L1は、外気温が所定値以上の場合において凍結防止運転した後に、貯湯運転を行った場合の吸入側圧力と吐出側圧力との推移を示しており、図中、圧力推移線L2は、外気温が所定値以下の場合において凍結防止運転した後に、貯湯運転を行った場合の吸入側圧力と吐出側圧力との推移を示している。
【0025】
運転開始時における圧力推移線は、吐出側圧力が上昇する過程で圧縮機14の出力が過剰に大きくなるため、吐出側圧力が急激に上昇し、吸入側圧力が急激に低下する傾向を示す。水熱交換器18付近の温度から圧縮機14の吐出側の温度を減算した温度差T1が大きい場合、温度差T1が小さい場合に較べて、蒸発器下流側の冷媒循環量が小さくなり、圧縮機14の吸入側の圧力が低下する。水熱交換器18の入口側の水温が高いと、水熱交換器18において気体状の冷媒を冷却する熱量が少なくなり、十分に冷媒が凝縮されず気体状の冷媒の割合が高くなる。その結果、空気熱交換器22において液体状から気体状に変化する冷媒の量が少なくなり、圧縮機14の吸入側の圧力が低下する傾向になるからである。なお、吐出圧力Pd、吸入圧力Ps、凝縮温度、室外気温から制御に用いる基準値を算出することもできるが、理論計算式により制御が複雑化する。また、挙動をみるためには凝縮温度と冷媒への凝縮熱量も考慮する必要があり、入口側温度センサ34により検出された水温Twiを検知する必要がある。本実施形態では、Twi−Td(吐出側温度センサ30により検出された温度)を所定値以下の条件を使用することで、制御を簡略化しつつ、正確な条件を得ることができる。
【0026】
外気温が所定値以上の場合、圧力推移線L1の初期値における吸入側圧力は、L2の初期値における吸入側圧力に較べて高いため、圧縮機14を稼働させても圧縮機14の使用範囲に収まる。しかし、外気温が所定値以下の場合、圧力推移線L2の初期値における吸入側圧力は、圧力推移線L1の初期値における吸入側圧力に較べて小さい。このため、圧力推移線L2は、使用領域Sを逸脱する場合がある。この結果、圧縮機14の故障が生じないという信頼性は低下することになる。
【0027】
これに対して、本実施形態のヒートポンプ給湯機1では、吐出側温度センサ30、外気温度センサ32、および入口側温度センサ34により検出された検出結果に応じて、入口水温低下運転後に冷凍サイクル部12の稼働を開始させることで、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制することができる。具体的には、主制御部80は、検出結果が所定の条件を満たす場合、副制御部48に冷凍サイクル部12を稼働させる指示を出力しない状態で、入口水温低下運転を行うように各部を制御する。入口水温低下運転後、主制御部80は、副制御部48に冷凍サイクル部12の稼働を開始させるように指示し、副制御部48は、冷凍サイクル部12の稼働を開始させる。
【0028】
図7は、入口水温低下運転について説明するための図である。入口水温低下運転とは、給水口60の水を水熱交換器18へ供給し、水熱交換器18の入口側と、圧縮機14の吐出側との温度差を小さくする運転である。入口水温低下運転を行うと、図7の矢印で示すように、給水口60から供給される水は、流路70、流路72、流路45、弁37、流路41、流路40の順で循環して、水熱交換器18に流入する。水熱交換器18に流入した水は、水熱交換器18の中を通り、流路42、弁38、流路46、流路75、流路76の順で循環して、排水口62から排出される。この入口水温低下運転により、水熱交換器18の温度が低下して冷媒が十分に凝縮されることで、圧縮機14の吸入側は気体状の冷媒が所定の割合以上となる。これにより圧縮機14の吐出側の圧力上昇を穏やかにするため、圧力推移線が使用領域Sに収まるようにすることができる。この結果、圧縮機14を運転開始直後に圧縮機14にかかる負荷を小さくすることができ、圧縮機14の故障を抑制することができる。図6における圧力推移線L3は、外気温が所定値以下の場合において凍結防止運転した後に、入口水温低下運転を行って貯湯運転を行った場合の吸入側圧力と吐出側圧力との推移を示している。
【0029】
以下、主制御部80の処理部86により実行される処理について説明する。図8は、主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャートである。まず、処理部86が、通信入出力部82から貯湯運転の開始に係る信号が入力されたか否かを判定する(ステップS100)。貯湯運転の開始に係る信号が入力されたときに、処理部86は、貯湯運転開始のプログラムを起動させる(ステップS102)。次に、処理部86は、外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A未満であるか否かを判定する(ステップS104)。外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A以上である場合、処理部86は、冷凍サイクル部12を稼働させるための信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上起動運転を開始させる(ステップS114)。外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A以上である場合、前述した使用領域内において圧縮機14を稼働させることができるためである。
【0030】
外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A未満である場合、処理部86は、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値(減算値)が、設定値Bを超えるか否かを判定する(ステップS106)。減算値が設定値B以下である場合、処理部86は、冷凍サイクル部12を稼働させるための信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上起動運転を開始させる(ステップS114)。減算値が設定値B以下である場合、前述した使用領域内において圧縮機14を稼働させることができるためである。減算値が設定値Bを超える場合、処理部86は、減算値に基づいて水温低下運転を行う時間(水温低下運転時間C)を算出する(ステップS108)。次に、処理部86は、算出した時間の間、水温低下運転を開始する(ステップS110)。水温低下運転時間Cは、例えば減算値の大きさに比例して長くなる傾向である。また、水温低下運転時間Cは、例えば減算値が設定値以上の場合は一定値としてもよい。
【0031】
次に、処理部86は、算出した水温低下運転時間Cが経過したか否かを判定する(ステップS112)。算出した水温低下運転時間Cが経過した場合、処理部86は、水温低下運転を停止して、沸上起動運転を開始させる(ステップS114)。処理部86は、副制御部48に指示することによって、沸上起動運転を開始させる。次に、処理部86は、出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超えるか否かを判定する(ステップS116)。出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超える場合、処理部86は、沸上運転開始を開始させるための信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上運転を開始させる(ステップS118)。これにより、本フローチャートにより実行される処理は終了する。
【0032】
なお、ステップS112の処理を、「処理部86は、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値が、設定値B以下であるか否かを判定する。」と読み替えてもよい。この場合、ステップS108の水温低下時間を算出する処理は省略することができる。
また、ステップ112の処理を、「処理部86は、水温低下運転時間Cが経過しておらず、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値が、設定値B以下であるか否かを判定する。」と読み替えてもよい。
【0033】
以上説明した第1の実施形態によれば、主制御部80は、冷凍サイクル部12の稼働開始を指示する信号が入力されたとき、外気温度センサ32により検出された温度、入口側温度センサ34により検出された水温、および吐出側温度センサ30により検出された温度に基づいて、水温低下運転後に冷凍サイクル部12の稼働を開始させるか、または水温低下運転を行わずに冷凍サイクル部12の稼働を開始させるかを決定する。これにより、圧縮機14の吸入側と吐出側との圧力差が小さい状態で圧縮機14を稼働させることができるため、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制することができる。
【0034】
圧縮機14の使用領域を外れない運転条件とするためには、吐出圧力、吸込み圧力、凝縮温度、水熱交換器18の出口水温等を用いて算出することもできるが、計算過程が煩雑で使用するセンサ類も多く、結果的に誤差が大きくなる恐れがある。本実施形態のように、外気温が所定温度以下の場合に、入口側温度センサ34により検出された水温Twiと吐出側温度センサ30により検出された冷媒温度Tdとの差が設定値B以下か否かによって水温低下運転を行うか判断することができる。これにより、簡易な制御手段で且つ確実に圧縮機14の使用領域を外れた運転を防止し、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制し、信頼性の高いヒートポンプ給湯機1とすることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通する機能等についての説明は省略する。第2の実施形態では、入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障したか否かを判定し、判定結果に応じて所定時間、水温低下運転を行う。
【0036】
図9は、第2の実施形態のヒートポンプ給湯機1の機能構成図である。ヒートポンプ給湯機1は、吐出側温度センサ異常検出部30Dと、外気温度センサ異常検出部32Dと、入口側温度センサ異常検出部34Dと、出口側温度センサ異常検出部35Dとを備える。吐出側温度センサ異常検出部30Dは、例えば吐出側温度センサ30の電圧値を検出する。外気温度センサ異常検出部32Dは、例えば外気温度センサ32の電圧値を検出する。入口側センサ異常検出部34Dは、例えば入口側温度センサ34の電圧値を検出する。出口側温度センサ異常検出部35Dは、例えば出口側温度センサ35の電圧値を検出する。各温度センサ異常検出部(30D、32D、34D、35D)は、検出した電圧値を処理部86へ出力する。処理部86は、例えば各温度センサ異常検出部から出力された電圧値が所定の電圧値以下であるか否かを判定する。処理部86は、所定値以下である温度センサ異常検出部を検出した場合、電圧値が所定値以下であるセンサが故障していると判定する。
【0037】
図10は、主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャートである。まず、処理部86が、通信入出力部82から貯湯運転の開始に係る信号が入力されたか否かを判定し(ステップS200)、貯湯運転の開始に係る信号が入力されたときに、処理部86は、貯湯運転開始のプログラムを起動させる(ステップS202)。次に、処理部86は、外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A未満であるか否かを判定する(ステップS204)。外気温度センサ32により検出された温度が基準温度A以上である場合、処理部86は、沸上起動運転を開始させる(ステップS218)。処理部86は、副制御部48に指示することによって、沸上起動運転を開始させる。
【0038】
外気温度センサ32により検出された温度Toが基準温度A未満である場合、処理部86は、入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障しているか否かを判定する(ステップS206)。入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障している場合、処理部86は、所定時間、水温低下運転を行う(ステップS208)。入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれも故障していない場合、処理部86は、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値(減算値)が、設定値Bを超えるか否かを判定する(ステップS210)。
【0039】
減算値が設定値B以下である場合、処理部86は、冷凍サイクル部12を稼働させるための信号を副制御部48に出力すると共に、沸上起動運転を開始させる(ステップS218)。減算値が設定値Bを超える場合、処理部86は、減算値に基づいて水温低下運転時間Cを算出し(ステップS212)、算出した時間の間、水温低下運転を開始する(ステップS214)。次に、処理部86は、算出した水温低下運転時間Cが経過したか否かを判定する(ステップS216)。算出した水温低下運転時間Cが経過した場合、処理部86は、水温低下運転を停止して、沸上起動運転を開始させる(ステップS218)。次に、処理部86は、出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超えるか否かを判定する(ステップS220)。出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超える場合、処理部86は、沸上運転開始に係る信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上運転を開始させる(ステップS222)。これにより、本フローチャートにより実行される処理は終了する。
【0040】
以上説明した第2の実施形態によれば、外気温度センサ32により検出された温度が基準温度A未満である場合、主制御部80が、入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障しているか否かを判定し、入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障している場合、所定時間、水温低下運転を行う。これにより、入口側温度センサ34、または吐出側温度センサ30のうちいずれかが故障した場合であっても、処理部86が、外気温に基づいて、水温低下運転を行うか否かを判定する。この結果、圧縮機14の吸入側と吐出側との圧力差が小さい状態で圧縮機14を稼働させることができるため、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通する機能等についての説明は省略する。第1の実施形態では、水温低下運転を行う時間を算出し、算出した時間の間、水温低下運転を実行したが、第3の実施形態では、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値(減算値)が、設定値以下となった場合に水温低下運転を停止し、貯湯運転を行う。
【0042】
図11は、主制御部80により実行される入口水温低下運転に係る処理の流れを示すフローチャートである。まず、処理部86が、通信入出力部82から貯湯運転の開始に係る信号が入力されたか否かを判定し(ステップS300)、貯湯運転の開始に係る信号が入力されたとき、貯湯運転開始のプログラムを起動させる(ステップS302)。
【0043】
次に、処理部86は、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値(減算値)が設定値Bを超えるか否かを判定する(ステップS304)。減算値が設定値Bを超える場合、処理部86は、水温低下運転を開始させ(ステップS306)、ステップS304の処理に戻る。減算値が設定値B以下である場合、処理部86は、水温低下運転を停止して、冷凍サイクル部12を稼働させるための信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上起動運転を行う開始させる(ステップS308)。次に、処理部86は、出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超えるか否かを判定する(ステップS310)。出口側温度センサ35により検出された温度Twoが基準温度Dを超える場合、処理部86は、沸上運転開始に係る信号を副制御部48に出力すると共に、ヒートポンプユニット10のその他の部分、および貯湯タンクユニット50の各部を制御して、沸上運転を開始する(ステップS312)。これにより、本フローチャートにより実行される処理は終了する。
【0044】
以上説明した第3の実施形態によれば、主制御部80が、入口側温度センサ34により検出された水温Twiから吐出側温度センサ30により検出された温度Tdを減算した値(減算値)が、設定値以下となった場合に水温低下運転を停止し、貯湯運転を行う。この結果、簡易なロジックで圧縮機14の吸入側と吐出側との圧力差が小さい状態で圧縮機14を稼働させ、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制することができる。
【0045】
(第1〜第3の実施形態における変形例)
以下、第1〜第3の実施形態における変形例について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通する機能等についての説明は省略する。第1〜第3の実施形態における変形例では、貯湯タンク52に加え、更に複数の貯湯タンクユニット52A、52B、52Cを連結さている。
【0046】
図12は、変形例の貯湯タンクユニット50A〜Cの構成を説明するための図である。貯湯タンクユニット50は、流路72に接続された逆流防止弁100を備える。また、貯湯タンクユニット50は、流路45および流路72に接続された流路106に設けられた弁102を備える。貯湯タンクユニット50A〜50Cは、それぞれ貯湯タンク52A〜52Cを備える。貯湯タンク52Aの上部は、貯湯タンク52の底部に連結されている流路110と接続されている。貯湯タンク52Bの上部は、貯湯タンク52Aの底部と連結されている流路120と接続されている。貯湯タンク52Cの上部は、貯湯タンク52Bの底部と連結されている流路130と接続されている。また、貯湯タンク52Cの底部は、貯湯タンクユニット50の流路72と連結されている流路140と接続されている。
【0047】
変形例において貯湯、および給湯がされる場合の動作について説明する。給水口60から供給された水は、図中、矢印に示すように、流路70、流路72、流路106、流路45の順で循環し、水熱交換器18へ流出される。水熱交換器18において湯となった水は、流路46、流路75、流路74を介して貯湯タンク52に流入する。これにより、湯が貯湯される。また、給水口60から供給された水は、図中、矢印に示すように、流路70、流路72、流路140の順で循環して、貯湯タンク52Cへも流入する。貯湯タンク52Cに流入した水は、流路130、貯湯タンク52B、流路120、貯湯タンク52A、流路110、貯湯タンク52、流路77の順で循環して、給湯口64へ供給される。
【0048】
以上説明した変形例によれば、複数の貯湯タンクユニット50、50A〜50Cを備えたため、需要先へ供給する湯量が多い場合であっても、圧縮機14の吸入側と吐出側との圧力差が小さい状態で圧縮機14を稼働させ、圧縮機14の故障や寿命低下を抑制しつつ、需要先へ湯を供給することができる。
【0049】
また、各実施形態では、吐出側温度センサ30と、外気温度センサ32と、入口側温度センサ34とに基づいて水温低下運転を行うか否かを判定したが、入口側温度センサ34に代えて、出口側温度センサ35の検出結果を加えて水温低下運転を行うか否かを判定してもよい。また、各センサに代えて圧縮機14の吐出側の圧力を検出する吐出側圧力検出センサと、圧縮機14の吸入側の圧力を検出する吸入側圧力検出センサとを備え、これらの2つの圧力検出センサの検出値に基づいて、水温低下運転を行うか否かを判定してもよい。この場合、吐出側圧力検出センサの検出値と、吸入側圧力検出センサの検出値との圧力差が設定値以上である場合、水温低下運転を行う。また、吐出側圧力検出センサを用いずに、吸入側圧力検出センサの検出値が設定値以下の場合に、水温低下運転を行ってもよい。
【0050】
なお、各実施形態において、主制御部80が、入口水温低下運転を実行するか否かを決定する場合(図8図10図11)について説明したが、主制御部80に代えて副制御部48が、入口水温低下運転を実行するか否かを決定してもよいし、主制御部80および副制御部48が協働して入口水温低下運転を実行するか否かを決定してもよい。
【0051】
冷媒を圧縮する圧縮機(14)により吐出された冷媒を、少なくとも水熱交換器(18)を介して圧縮機に環流させる冷凍サイクル部(12)と、湯水を貯湯する貯湯ユニット(50)から供給された湯水を水熱交換器に供給し、水熱交換器から吐出された湯水を貯湯ユニットに環流させる水流路(36、40、41、42、45、46)と、貯湯ユニットから供給された湯水の温度を検出する供給側温度センサ(34)と、圧縮機の吐出側の温度を検出する吐出側温度センサ(30)と、供給側温度センサおよび吐出側温度センサの検出結果に基づいて、貯湯ユニットから水熱交換器へ水を供給させた後に冷凍サイクル部の稼働を開始させるか、貯湯ユニットから水熱交換器への水の供給の開始タイミングに関わらずに冷凍サイクル部の稼働を開始させるかを決定する制御部(48、80)とを備えることにより、圧縮機の故障や寿命低下を抑制することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
12…冷凍サイクル部、14…圧縮機、18…水熱交換器、30…吐出側温度センサ、30D…吐出側センサ異常検出部、32…外気温度センサ、32D…外気温度センサ異常検出部、34…入口側温度センサ、34D…入口側センサ異常検出部、36、40、41、42、45、46、75、76…水流路、48…副制御部、50…貯湯タンクユニット、56…弁、62…排水口、80…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12