特許第6282238号(P6282238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282238
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】過熱蒸気再利用装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   F22G 5/14 20060101AFI20180208BHJP
   F22G 1/16 20060101ALI20180208BHJP
   F22B 37/26 20060101ALI20180208BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F22G5/14
   F22G1/16
   F22B37/26 A
   F22B35/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-24976(P2015-24976)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-200487(P2015-200487A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-70805(P2014-70805)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰広
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−286178(JP,A)
【文献】 特開2010−284115(JP,A)
【文献】 特開2006−226561(JP,A)
【文献】 特開2008−057876(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0014311(US,A1)
【文献】 特開平11−089722(JP,A)
【文献】 特開2001−046005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0022909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 1/16
F22G 5/12
F22G 5/14
F22B 35/00
F22B 37/26
A23L 5/00
A23L 5/10
A21B 1/00
A47J 27/00
A47J 27/16
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、
前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、
前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、
前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気が前記過熱蒸気利用部から前記過熱蒸気生成部に至るまで沸点以上の温度に保持するように加熱する加熱装置とを備え、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御することを特徴とする過熱蒸気再利用装置。
【請求項2】
過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、
前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、
前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、
前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気に含まれる空気を除去する空気除去装置とを備え、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御することを特徴とする過熱蒸気再利用装置。
【請求項3】
過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、
前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、
前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、
前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気を加圧する加圧装置とを備え、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御することを特徴とする過熱蒸気再利用装置。
【請求項4】
飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部と、
過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、
前記過熱蒸気生成部に前記飽和水蒸気生成部により生成された飽和蒸気を供給する蒸気供給流路と、
前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、
前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と、
前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気に含まれる水分を除去する気水分離装置と、
前記気水分離装置により分離された水を前記飽和蒸気生成部に戻す水戻し流路とを備え、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御することを特徴とする過熱蒸気再利用装置。
【請求項5】
前記蒸気供給流路に設けられるとともに、前記蒸気戻し流路が接続されて、前記蒸気戻し流路から前記利用済み蒸気を吸引するスチームエジェクタを備える請求項1乃至の何れか一項に記載の過熱蒸気再利用装置。
【請求項6】
過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気が前記過熱蒸気利用部から前記過熱蒸気生成部に至るまで沸点以上の温度に保持するように加熱する加熱装置、前記利用済み蒸気に含まれる空気を除去する空気除去装置又は前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気を加圧する加圧装置とを備えた過熱蒸気再利用装置の使用方法であって、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を調整することを特徴とする過熱蒸気再利用装置の使用方法。
【請求項7】
飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部と、過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、前記過熱蒸気生成部に前記飽和水蒸気生成部により生成された飽和蒸気を供給する蒸気供給流路と、前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気に含まれる水分を除去する気水分離装置と、前記気水分離装置により分離された水を前記飽和蒸気生成部に戻す水戻し流路とを備えた過熱蒸気再利用装置の使用方法であって、
前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を調整することを特徴とする過熱蒸気再利用装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気を再利用する過熱蒸気再利用装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、過熱蒸気を用いて、被処理物の洗浄、乾燥又は殺菌を行う過熱蒸気処理装置が考えられている。
【0003】
ここで、蒸気は、沸点温度の水が沸点温度の蒸気に状態変化するのに必要な潜熱が一番大きく、例えば700℃の過熱蒸気では、60℃の水を130℃の飽和蒸気にする熱量と、130℃の飽和蒸気を700℃の過熱蒸気にする熱量との比は、およそ2:1である。つまり、利用後の蒸気を廃棄することは、大きな熱量損失となるため、再利用することが望ましい。
【0004】
過熱蒸気を再利用する装置としては、特許文献1に示すように、熱処理室内の温度に基づいて、過熱装置から熱処理室へ供給される過熱蒸気の温度及び供給量と、過熱装置の蒸気入口側へ戻す過熱蒸気の戻し流量を制御するように構成された熱処理装置がある。
【0005】
しかしながら、上記の熱処理装置では、熱処理室内の温度に基づいて、過熱装置の蒸気入口側へ戻す過熱蒸気の戻し流量を制御しているため、熱処理室を通過した利用済みの蒸気のうち一部は排出され、熱量損失の問題を根本的に解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、利用済みの過熱蒸気を有効活用して熱量損失を抑えるとともに、過熱蒸気を生成するために水から飽和蒸気を生成する熱量を可及的に少なくすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る過熱蒸気再利用装置は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計とを備え、前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を、蒸気戻し流路により、過熱蒸気生成部に戻すように構成しているので、利用済み蒸気を廃棄することにより生じる熱量損失を抑えることができる。また、利用済み蒸気を水に状態変化させることなく、潜熱を有した状態で過熱蒸気生成部に戻しているので、これによっても熱量損失を抑えることができる。さらに、過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と、過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量との差に基づいて、蒸気供給流路から過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御するので、水から飽和蒸気を生成するための熱量を可及的に少なくすることができる。
【0010】
より具体的には、前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量に対して、前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量の不足分を、蒸気供給流路から過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量で補うことが望ましい。
【0011】
蒸気戻し流路には、前記流量計をはじめ種々の装置が設けられることになる。そうすると、利用済み蒸気の一部が蒸気戻し流路を通過する途中で冷却されて水に戻ってしまい、種々の問題が生じる。例えば、利用済み蒸気が冷却されて生じた温水は排出されるため、熱量損失になってしまう。また、利用済み蒸気と温水とが混ざり合い、又は高温機器や低温機器に接触して液化と気化とを繰り返す状況下では、蒸気温度の安定化を図ることが困難である。さらに、蒸気の液化と気化による体積の大きな変動に伴って生じるウォーターハンマーによる配管や計器などの損傷に繋がることがある。
これらの問題を解決するためには、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気が前記過熱蒸気利用部から前記過熱蒸気生成部に至るまで沸点以上の温度を保持するように加熱する加熱装置を備えることが望ましい。
加熱装置の具体的な実施の態様としては、例えば配管を誘導加熱する誘導加熱装置や、配管を通電加熱する通電加熱装置であることが考えられる。さらに、蒸気戻し流路の終点(蒸気戻し流路と過熱蒸気生成部との接続部分(過熱蒸気生成部への入口部分))における蒸気温度を検出して、当該蒸気戻し流路の終点における蒸気温度が沸点以上の温度になるようにカスケード制御することが望ましい。
【0012】
過熱蒸気を利用する過熱蒸気利用部や蒸気戻し流路を完全な密閉状態にすることは難しいため、蒸気戻し流路から過熱蒸気生成部に戻る利用済み蒸気に空気が混合することが考えられる。このため、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気に含まれる空気を除去する空気除去装置を備えることが望ましい。これならば、利用済み蒸気から空気を除去することができ、過熱蒸気の低酸素化及び高い伝熱特性を得ることができる。
【0013】
前記蒸気供給流路に設けられるとともに、前記蒸気戻し流路が接続されて、前記蒸気戻し流路から前記利用済み蒸気を吸引するスチームエジェクタを備えることが望ましい。これならば、スチームエジェクタの作用によって、利用済み蒸気を外部の駆動力を用いることなく、過熱蒸気生成部に戻すことができる。
【0014】
過熱蒸気再利用装置の具体的な実施の態様としては、飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部を備え、前記蒸気供給流路が、前記飽和蒸気生成部及び前記過熱蒸気生成部を接続するものであることが望ましい。
これならば、過熱蒸気再利用装置に水を供給するだけで過熱蒸気利用部に過熱蒸気を供給することができる。また、過熱蒸気再利用装置の外部に設けられた別の飽和蒸気生成装置を不要にすることができ、それらを接続する外部配管を不要にすることができる。
【0015】
蒸気戻し流路を流れる利用済み蒸気は、加熱装置によって沸点以上の温度となるように加熱されても、蒸気戻し流路における温度が低い部分(例えば蒸気戻し流路を形成する配管や、蒸気戻し流路に設けられた種々の装置等)に接触して、利用済み蒸気の一部が水に戻ってしまう場合がある。このため、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記利用済み蒸気に含まれる水分を除去する気水分離装置と、前記気水分離装置により分離された水を前記飽和蒸気生成部に戻す水戻し流路とを備えることが望ましい。
【0016】
また本発明に係る過熱蒸気再利用装置の使用方法は、過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部と、前記過熱蒸気生成部に飽和蒸気又は過熱蒸気を供給する蒸気供給流路と、前記過熱蒸気生成部により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部と、前記過熱蒸気利用部を通過した利用済み蒸気を前記過熱蒸気生成部に戻す蒸気戻し流路と、前記蒸気戻し流路に設けられ、前記過熱蒸気生成部に戻される利用済み蒸気の流量を測定する流量計とを備えた過熱蒸気再利用装置の使用方法であって、前記過熱蒸気生成部により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と前記流量計により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、前記蒸気供給流路から前記過熱蒸気生成部に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、利用済みの過熱蒸気を有効活用して熱量損失を抑えるとともに、過熱蒸気を生成するために水から飽和蒸気を生成する熱量を可及的に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の過熱蒸気再利用装置の構成を模式的に示す図。
図2】変形実施形態の過熱蒸気再利用装置の構成を模式的に示す図。
図3】変形実施形態の過熱蒸気再利用装置の構成を模式的に示す図。
図4】変形実施形態の過熱蒸気再利用装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る過熱蒸気再利用装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る過熱蒸気再利用装置100は、利用済み蒸気を排出することなく循環させて被処理物の処理に再利用するものであり、図1に示すように、水から飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部2と、当該飽和蒸気生成部2により生成された飽和蒸気から過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部3と、当該過熱蒸気生成部3により生成された過熱蒸気が供給される過熱蒸気利用部4とを備えている。
【0021】
飽和蒸気生成部2は、例えば誘導加熱方式又は通電加熱方式のものであり、水が導入される導入ポート21及び飽和蒸気を導出する導出ポート22を有する。誘導加熱方式の場合には、導入ポート21及び導出ポート22を有する例えばコイル状の中空導体管(不図示)と、当該中空導体管を誘導加熱する誘導コイル(不図示)と、当該誘導コイルに交流電圧を印加する交流電源回路(不図示)とを備えたものであり、当該誘導コイルに交流電圧を印加することによって、中空導体管に誘導電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管に導入された水を飽和蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。また、通電加熱方式の場合には、導入ポート21及び導出ポート22を有する例えばコイル状又は直管状の中空導体管(不図示)と、当該中空導体管に直流電圧を印加する直流電源回路(不図示)とを備えたものであり、中空導体管に直流電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管に導入された水を飽和蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。何れの方式の場合であっても、中空導体管に印加する電圧又は中空導体管に流れる電流を制御することによって、中空導体管の導出ポート22から導出される飽和蒸気の温度を制御する。
【0022】
過熱蒸気生成部3は、前記飽和蒸気生成部2と同様、例えば誘導加熱方式又は通電加熱方式のものであり、飽和蒸気が導入される導入ポート31及び過熱蒸気を導出する導出ポート32を有する。誘導加熱方式の場合には、導入ポート31及び導出ポート32を有する例えばコイル状の中空導体管(不図示)と、当該中空導体管を誘導加熱する誘導コイル(不図示)と、当該誘導コイルに交流電圧を印加する交流電源回路(不図示)とを備えたものであり、当該誘導コイルに交流電圧を印加することによって、中空導体管に誘導電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管に導入された飽和蒸気を過熱蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。また、通電加熱方式の場合には、導入ポート31及び導出ポート32を有する例えばコイル状又は直管状の中空導体管と、当該中空導体管に直流電圧を印加する直流電源回路とを備えたものであり、中空導体管に直流電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管に導入された飽和蒸気を過熱蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。何れの方式の場合であっても、中空導体管に印加する電圧又は中空導体管に流れる電流を制御することによって、中空導体管の導出ポート32から導出される過熱蒸気の温度を制御する。
【0023】
過熱蒸気利用部4は、過熱蒸気によって被処理物を熱処理(例えば洗浄、乾燥、焼成又は殺菌)するものであり、被処理物を収容するとともに、密閉空間又は略密閉空間を形成する被処理物収容部41と、当該被処理物収容部41に設けられ、過熱蒸気が導入される導入ポート42と、被処理物収容部41で生じたドレン水を排出するドレン排出ポート43と、被処理物収容部を通過した利用済み蒸気を排出する蒸気排出ポート44とを有している。
【0024】
そして、この過熱蒸気再利用装置100において、飽和蒸気生成部2と過熱蒸気生成部3とは、飽和蒸気生成部2により生成された飽和蒸気を過熱蒸気生成部3に供給する蒸気供給流路L1(以下、飽和蒸気供給流路L1という。)により接続されている。具体的に飽和蒸気供給流路L1は、飽和蒸気生成部2の導出ポート22と過熱蒸気生成部3の導入ポート31とを接続するものである。
【0025】
また、過熱蒸気生成部3及び過熱蒸気利用部4とは、過熱蒸気生成部3により生成された過熱蒸気を過熱蒸気利用部4に供給するための過熱蒸気供給流路L2により接続されている。具体的に過熱蒸気供給路L2は、過熱蒸気生成部3の導出ポート32と、過熱蒸気利用部4の導入ポート42とを接続するものである。
【0026】
そして、本実施形態の過熱蒸気再利用装置100は、過熱蒸気利用部4を通過した利用済み蒸気を過熱蒸気生成部3に戻す蒸気戻し流路L3を有する。本実施形態の蒸気戻し流路L3は、利用済み蒸気を飽和蒸気生成部2及び過熱蒸気生成部3の間の飽和蒸気導入流路L1に戻すことにより、利用済み蒸気を導入ポート31を介して過熱蒸気生成部3に戻すものである。具体的に蒸気戻し流路L3は、過熱蒸気利用部4の蒸気排出ポート44と、飽和蒸気導入路L1とを接続するものである。なお、蒸気戻し流路L3は、飽和蒸気導入流路L1に接続されることなく、過熱蒸気生成部3に直接接続される構成としても良い。
【0027】
この蒸気戻し流路L3には、過熱蒸気利用部4の蒸気排出ポート44側から、加熱装置5、不純物除去装置6、気水分離装置7及び流量計8が、この順で設けられている。
【0028】
加熱装置5は、利用済み蒸気が過熱蒸気利用部4から過熱蒸気生成部3に至るまで沸点以上の温度(例えば100℃以上)を保持するように加熱するものである。この加熱装置による温度制御は、例えば蒸気戻し流路L3の終点、本実施形態では蒸気戻し流路L3及び飽和蒸気供給流路L1の接続部分における利用済み蒸気の温度を図示しない温度センサにより検出して、当該検出された利用済み蒸気の温度が沸点以上の温度となるようにカスケード制御することが考えられる。この加熱装置5により利用済み蒸気を過熱蒸気生成部3に至るまで沸点以上の温度を保持するように加熱しているので、液化に伴う熱量損失、蒸気温度の変動及びウォーターハンマーによる損傷を抑えることができる。
【0029】
不純物除去装置6は、過熱蒸気による熱処理により生じた不純物を利用済み蒸気から除去するものである。この不純物除去装置6は、除去すべき物質毎に適した装置を選定又は製作する必要があるが、当然のことながら、沸点以下の低温に冷却して不純物を除去する装置は適さない。つまり、不純物除去装置6は、沸点以上の温度において、利用済み蒸気から不純物を除去する性能を有するものである。なお、不純物除去装置6が、利用済み蒸気を沸点以上の所定の高温に加熱して成分分解して除去するものであっても良いが、この場合は、前記加熱装置5にその役割を分担させるように構成しても良い。
【0030】
気水分離装置7は、利用済み蒸気に含まれる水分を除去するものである。この気水分離装置7には、当該気水分離装置7により分離されたドレン水を飽和蒸気生成部2に戻す水戻し流路L4が接続されている。具体的に水戻し流路L4は、飽和蒸気生成部2の導入ポート21に接続されたタンク11に接続されている。なお、タンク11には、水戻し流路L4の他に、水供給流路L5が接続されている。
【0031】
流量計8は、過熱蒸気生成部3に戻される利用済み蒸気の流量を測定するものである。本実施形態では、後述する空気除去装置9、不純物除去装置6及び気水分離装置7により、空気、不純物及び水が除去された利用済み蒸気の流量を測定するように構成されている。これにより、過熱蒸気生成部3に戻される利用済み蒸気の流量を精度良く測定することができる。
【0032】
また、蒸気戻し流路L3において、加熱装置5及び不純物除去装置6の間には、空気除去装置9が設けられている。この空気除去装置9は、利用済み蒸気に含まれる空気を除去するものであり、例えば、空気溜まり空間を形成するチャンバと、当該チャンバに設けられた排出弁とを備えたものである。この空気除去装置9により利用済み蒸気に含まれる空気を除去しているので、過熱蒸気の低酸素化を図り、高い伝熱特性を得ることができる。
【0033】
さらに、蒸気戻し流路L3には、過熱蒸気発生部3に戻す利用済み蒸気の圧力を調整するための圧力調整機構10が設けられている。
【0034】
この圧力調整機構10は、過熱蒸気利用部3を通過した利用済み蒸気の圧力の低下を元に戻すものであり、加圧ポンプ等の加圧装置101及び減圧弁等の減圧装置102から構成されている。本実施形態では、加圧装置101は、不純物除去装置6及び気水分離装置7の間に設けられており、減圧装置102は、気水分離器7及び流量計8の間に設けられている。これら加圧装置101及び減圧装置102により、蒸気戻り流路L3から飽和蒸気供給流路L1に戻される利用済み蒸気の圧力を、飽和蒸気生成部2の導出ポート22から導出された飽和蒸気の圧力と同じ圧力となるように制御している。これにより、利用済み蒸気が再利用されて生成された過熱蒸気の圧力低下を防止することができる。
【0035】
このように構成された過熱蒸気再利用装置100における過熱蒸気の再利用に伴う動作について説明する。
【0036】
運転の初期段階においては、飽和蒸気生成部2により飽和蒸気を生成するとともに、過熱蒸気生成部3により過熱蒸気を生成して過熱蒸気利用部4に過熱蒸気を供給する。そうすると、過熱蒸気利用部4を通過した利用済み蒸気が、蒸気戻り流路L3を通って、飽和蒸気供給流路L3及び過熱蒸気生成部3に戻る。
【0037】
この段階において、前記流量計8により測定された利用済み蒸気の流量に基づいて、飽和蒸気供給流路L1から過熱蒸気生成部3に供給される飽和蒸気の流量、つまり、飽和蒸気生成部2により生成する飽和蒸気の流量を制御する。
【0038】
具体的には、過熱蒸気生成部3により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と、流量計8により得られた利用済み蒸気の流量との差に基づいて、飽和蒸気供給流路L1から過熱蒸気生成部3に供給する飽和蒸気又は過熱蒸気の流量を制御する。より詳細には、飽和蒸気供給流路L1から過熱蒸気生成部2に供給する飽和蒸気の流量(Q3)を、過熱蒸気生成部3により生成すべき所望の過熱蒸気の流量(Q1)に対する、流量計8により得られた利用済み蒸気の流量(Q2)の不足分(Q1−Q2)としている。
【0039】
本実施形態では、飽和蒸気生成部2及びタンク11の間の流路にマスフローコントローラ等の流量調整機構を設けており、当該流量調整機構を制御して飽和蒸気生成部2に供給する水の量を制御することによって、飽和蒸気生成部2から過熱蒸気生成部3に供給される飽和蒸気の量を制御するようにしている。なお、前記流量調整機構の制御は、図示しない制御装置により自動的に行うことが考えられる。その他、飽和蒸気生成部2の電源回路を図示しない制御装置で制御することによって、生成される飽和蒸気の流量を制御しても良いし、飽和蒸気供給流路L1にマスフローコントローラ等の流量調整機構を設けることによって、当該流量調整機構を図示しない制御装置で制御することによって、飽和蒸気供給流路L1から過熱蒸気生成部3に供給される飽和蒸気の流量を制御しても良い。
【0040】
次に、本実施形態の過熱蒸気再利用装置100を用いた過熱蒸気リサイクル試験の結果について説明する。
【0041】
1.運転条件
過熱蒸気出力温度 250℃
飽和蒸気温度 130℃
入水量 32.75kg/h
電力量 29.83kW
【0042】
2.計算
飽和蒸気生成電力 24.37kW
過熱蒸気生成電力 =全電力量−飽和蒸気生成電力量
=29.83−24.37
=5.46kW
32.75kgの過熱水蒸気生成電力は、2.72kWであるから、
リサイクル蒸気分電力 =5.46−2.72
=2.74kW
【0043】
250℃蒸気が100℃で帰還していると仮定すると(未計測)、2.74kW電力で100℃→250℃に昇温できる蒸気量は、約33kgとなる。
【0044】
帰還蒸気温度が100℃以上250℃以下であることを考えると、少なくとも33kg以上の蒸気量がリサイクルされていると判断できる。
合計蒸気量 =32.75+33
=65.75kg/h
リサイクル蒸気量 =33kg/h
【0045】
また、電力的には、リサイクル蒸気量33kg/hに飽和蒸気生成電力分が含まれており、その値は24.56kW/hである。
したがって、リサイクルされている蒸気には、電気量にして2.74+24.56=27.3kWに相当するエネルギーが含まれている。
つまり、リサイクルしない場合の250℃過熱蒸気を65.75kg/h生成するのに必要な電力約54.4kW(=24.37+24.56+5.46)に対し、約50%がリサイクルされている計算となる。
【0046】
このように構成した過熱蒸気再利用装置100によれば、過熱蒸気利用部4を通過した利用済み蒸気を、蒸気戻し流路L3により、過熱蒸気生成部3に戻すように構成しているので、利用済み蒸気を廃棄することにより生じる熱量損失を抑えることができる。また、利用済み蒸気を水に状態変化させることなく、潜熱を有した状態で過熱蒸気生成部3に戻しているので、これによっても熱量損失を抑えることができる。さらに、過熱蒸気生成部3により生成すべき所望の過熱蒸気の流量と、過熱蒸気生成部3に戻される利用済み蒸気の流量との差に基づいて、飽和蒸気供給流路L1から過熱蒸気生成部3に供給する飽和蒸気の流量を制御するので、水から飽和蒸気を生成するための熱量を可及的に少なくすることができる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の過熱蒸気再利用装置100は、飽和蒸気生成部2を有するものであったが、飽和蒸気生成部2を有さないものであっても良い。この場合、図2に示すように、過熱蒸気再利用装置100とは別に設けられた飽和蒸気生成装置(不図示)により生成された飽和蒸気を受け取る飽和蒸気導入ポートP1を有しており、この飽和蒸気導入ポートP1に飽和蒸気供給流路L1が接続されている。また、過熱蒸気再利用装置100には、飽和蒸気生成部2に水を供給するためのタンク11が設けられていないため、気水分離装置7により分離されたドレン水は、外部の飽和蒸気生成装置のタンク(不図示)にドレン水を戻す構成とすることが考えられる。
【0048】
また、前記実施形態では、過熱蒸気生成部3は、前段に設けられた飽和蒸気生成部2により生成された飽和蒸気を受け取る構成としているが、飽和蒸気生成部2が飽和蒸気をそれ以上に加熱して過熱蒸気を生成するものの場合には、過熱蒸気を受け取り、受け取った過熱蒸気をさらに加熱して、過熱蒸気利用部4に供給する所望温度の過熱蒸気を生成する構成としても良い。
【0049】
また、図3及び図4に示すように、前記蒸気供給流路L1にスチームエジェクタ12を設けて、当該スチームエジェクタ12に蒸気戻し流路L3を接続する構成としても良い。これにより、スチームエジェクタ12の内部に形成される負圧空間に前記蒸気戻し流路L3から利用済み蒸気が吸引されて、その利用済み蒸気が過熱蒸気生成部3に戻される。このようにスチームエジェクタ12を用いることにより、蒸気戻す流路L3に設けられる種々の装置を不要にしても利用済み蒸気を過熱蒸気生成部に戻すことができ、過熱蒸気再利用装置の構成を簡略化することができる。
【0050】
さらに、蒸気戻り流路L3に設けられる各装置の配置順は、前記実施形態に限られず、適宜変更することができる。
【0051】
その上、過熱蒸気利用部4により生じたドレン水を飽和蒸気生成部2の前段に設けられたタンク11に戻す構成としても良い。
【0052】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100・・・過熱蒸気再利用装置
L1 ・・・飽和蒸気供給流路
L2 ・・・飽和蒸気供給流路
L3 ・・・蒸気戻し流路
L4 ・・・水戻し流路
2 ・・・飽和蒸気生成部
3 ・・・過熱蒸気生成部
4 ・・・過熱蒸気利用部
5 ・・・加熱装置
6 ・・・不純物除去装置
7 ・・・気水分離装置
8 ・・・流量計
9 ・・・空気除去装置
101・・・加圧装置
102・・・減圧装置
11 ・・・タンク
図1
図2
図3
図4