(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒形の支持体を回転させ、支持体表面に誘電体薄膜層と導電体薄膜層とが交互に多数積層した積層体を形成する積層体形成装置に関し、導電体薄膜層の形成前にパターニング材料を誘電体薄膜層上に付着させるパターニング材料付着装置であって、
支持体の軸方向に延伸し、金属をくりぬいて中実の筐体内に設けられた、パターニング材料を貯留する貯留室と、
貯留室内のパターニング材料を加熱し蒸気を生成する第1ヒータと、
支持体表面に近接対峙して筐体の一面に取り付けられ、前記軸方向に所定間隔あけて複数の噴出孔を設け誘電体薄膜層に向けてパターニング材料の蒸気を当該噴出孔から噴出する噴出面と、
貯留室と噴出孔とを連通する連通路と、
筐体内に前記軸方向に延伸して埋入され、蒸気の連通路または噴出面への凝集を防止すべく連通路を加熱する第2ヒータと、
を具備し、更に、
中実筐体は所定の熱容量を有し、
第1ヒータおよび第2ヒータを共に作動させ、貯留室の液温が所定の温度に到達した以降は第1ヒータをオフにし、第2ヒータのみにて貯留室の液温を維持するヒータ制御部を具備したことを特徴とするパターニング材料付着装置。
【背景技術】
【0002】
従来、小型のフィルムコンデンサ等を効率よく製造する装置として積層体形成装置が知られている。これは、円筒形のクーリングローラを回転させ、異なる固定位置から金属蒸気と樹脂蒸気とをそれぞれ吹きつけることにより順次導電層と絶縁層とを交互に積層させていく装置である。
【0003】
このとき、オイル等のパターニング材料(マスキングオイル)を事前に付着させて当該部分への金属層の形成を阻害して回路ないし素子形成をおこなう。パターニングは様々あるが、代表的にはクーリングローラの周回方向につけられる、幅が数百ミクロンのオイルすじである。このオイルすじは、軸方向に数ミリ隔てて多数つけられる。
【0004】
実際には、クーリングローラの軸方向に配された柱状体であるパターニング材料付着装置を用い、この中にパターニング材料を封入し、等間隔離れた噴出孔から蒸気を吹き出させ、また、クーリングローラが一周する毎に、所定量軸方向へ移動する往復運動をおこなうことによりパタンを形成していく。
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
パターニング材料は、軸方向に並んだ所定の噴出孔から蒸気として吹き出されるが、一旦噴出された蒸気がトラップされてパターニング材料付着装置側に凝集し、目詰まりを起こすなど、精度が求められる微小なオイルすじが十全に形成されない場合がある、という問題点があった。これは、マスキング不良すなわち絶縁不良を起こし、コンデンサ等の製品の歩留りを下げてしまうこととなる。
【0006】
また、パターニング材料はオイルを利用するのが一般的であるが、分子量が全く同一というわけでなく、かつ、170°〜180°といった高温に維持されるので、性状が積層初期と終期によって異なり、条件出しをおこなった直後はともかく、特に、後半にマスキング不良が起こりやすいという問題点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、積層体の不良率を低減するパターニング材料付着装置および積層体形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のパターニング材料付着装置は、円筒形の支持体を回転させ、支持体表面に誘電体薄膜層と導電体薄膜層とが交互に多数積層した積層体を形成する積層体形成装置に関し、導電体薄膜層の形成前にパターニング材料を誘電体薄膜層上に付着させるパターニング材料付着装置であって、支持体の軸方向に延伸し、金属をくりぬいて中実の筐体内に設けられた、パターニング材料を貯留する貯留室と、貯留室内のパターニング材料を加熱し蒸気を生成する第1ヒータと、支持体表面に近接対峙して筐体の一面に取り付けられ、前記軸方向に所定間隔あけて複数の噴出孔を設け誘電体薄膜層に向けてパターニング材料の蒸気を当該噴出孔から噴出する噴出面と、貯留室と噴出孔とを連通する連通路と、筐体内に前記軸方向に延伸して埋入され、蒸気の連通路または噴出面への凝集を防止すべく連通路を加熱する第2ヒータと、を具備
し、更に、中実筐体は所定の熱容量を有し、第1ヒータおよび第2ヒータを共に作動させ、貯留室の液温が所定の温度に到達した以降は第1ヒータをオフにし、第2ヒータのみにて貯留室の液温を維持するヒータ制御部を具備したことを特徴とす
る。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、第2ヒータにより蒸気の温度を維持して噴出孔から誘電体薄膜層へ向けて安定的に蒸気を噴出させ、他所への凝集なく誘電体薄膜層へパターニング材料を付着させることができる。
詳細には、2系統のヒータにより速やかに所定温度まで昇温し、それ以降は、所定熱容量の筐体のもと第2ヒータのみにて製品品質に直結する温度管理ないし蒸気生成管理をおこなうことができ、これにより、蒸気発生を維持しつつ他所への凝集のない安定的なパターニングを実現する。
換言すれば、一般に噴出孔や連通路の全部もしくは一部は微細径であり、かつ、これらが第1ヒータの直接の加熱対象でないため、温度低下に由来する凝集が発生しやすいところ、第2ヒータにより温度維持をおこない凝集を回避する。また、第1ヒータのみでは、温度低下分を見越した高温設定としたとしても、連通路の径と長さ、および、飽和蒸気圧との関係で、必ずしも凝集が回避されないところ、第2ヒータによりにより温度維持をおこない凝集を回避する。すなわち、第2ヒータにより、重畳的な凝集回避を可能としている。
【0011】
なお、パターニングは、多くは多数並行したオイルすじ(幅狭の帯)、すなわち、いわゆるマージンとして形成されるが、必ずしも単調な幅狭帯(の群)に限定されない。交差するパタンであってもよい。
貯留室は、支持体の軸方向に延伸しているが、延伸の態様は長手の一室(一槽)ものとするほか、複数室としてこれらを軸方向に並べた態様とすることもできる。
第1ヒータは、一様加熱の観点から電熱線や電熱棒とすることが好ましいがこれに限定されない。また、第1ヒータは貯留室内に配されパターニング材料中に浸らせるほか、貯留室直下ないし近傍に配し実質的に直接加熱する態様であってもよい。また、第1ヒータは複数(本)設けてもよい。
所定間隔あけてとは、必ずしも隣り合う噴出孔が等間隔であることを意味せず、配置に一定の法則性があればよいものとする。また、噴出孔は1箇所に1つであることに限定されず、複数あってもよい。たとえば、2孔ずつ配置されていてもよい。
第2ヒータは、1本の電熱線または電熱棒とするほか、連通路の上下を挟み、2本ものとして形成する例を挙げることができる。この連通路とは、貯留室と噴出孔とを連通するのであれば特に限定されず、単調な管状であるほか、たとえば、それぞれの噴出孔からの噴出圧を一様とするために中途に介在させる蒸気溜めも、ここでいう連通路に含まれるものとする。したがって、第2ヒータが加熱する連通路とは、連通路部分、と表現することもでき、使用の態様により、噴出面裏側直近などの場所への加熱も、連通路を加熱する、に含まれるものとする。
なお、当然ながら、請求項
2または
3にいう往復手段が備わることを妨げない。
筐体とは、パターニング材料付着装置の筐体をいう。
なお、筐体と各構成との関係は、筐体中に貯留室を設けるとともに第1ヒータも第2ヒータと同様に埋入させる態様が好ましい。噴出面は噴出孔をあけたプレートを筐体表面に取り付ける態様が好ましい。孔径や間隔が異なるプレートを取り替え可能とすることにより、容量の異なるコンデンサを製造可能となる。
なお、温度管理は温度センサを埋め込み直接モニタリングしてもよいし、ヒータへの供給電流値などにより間接的に管理してもよい。
【0012】
請求項
2に記載のパターニング材料付着装置は、請求項
1に記載のパターニング材料付着装置において、装置筐体を前記所定間隔に基づき前記軸方向へ往動させては復動させる往復手段であって往動と復動とを支持体の回転毎に交互に繰り返す往復手段と、噴出孔軸方向の径未満の幅にて装置筐体を微動させる微動手段と、往復手段による往復と微動手段による微動とを切り替える切替手段と、を具備したことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項
2に係る発明は、筐体が停留したままの加熱ではパターニング材料中の分子量の相対的に大きな油分が残存し、積層後半のパターニングの不安定化を招来しやすいところ、微動により撹拌性を高めまた蒸発を促進し、もしくは蒸発ムラを平準化し、パターニングの長時間の安定化を実現する。特に補強層を設ける場合にその形成安定性を高める。
【0014】
所定間隔に基づき往動または復動させる、とは、当該所定間隔の移動量に限定されず当該間隔に基づいて決定ないし設計された移動量を意味する。回転毎とは、一般的には一回転毎であるが、噴出孔の配置ないし配列、誘電体と導電体の材料蒸発制御の態様によっては、複数回転毎であってもよい。微動は、噴出孔軸方向の径未満の振幅であれば、事実上パターニングに影響を与えないが、孔径の1/3程度以下とすることが好ましい。また、微動はパターニングの精度が確保されるのであれば、軸方向に沿った往復運動であることに限定されない。したがって微動とは、振動ないし微振動と表現することもできる。切り替えは、積層厚や回転回数のモニタリング結果を反映させておこなうことができる。
【0015】
請求項
3に記載のパターニング材料付着装置は、請求項
1に記載のパターニング材料付着装置において、装置筐体を前記軸方向へ往復させる往復手段と、往復手段を制御して、支持体の所定の回転位相範囲内にて前記所定間隔に基づく往動と、次の回転における前記所定の回転位相範囲内にて前記所定間隔に基づく復動を、順次繰り返す往復分断制御手段と、往復手段を制御して、支持体の回転毎に、前記所定の位相範囲内にて往動のみならず復動も完了する往復完了制御手段と、往復分断制御手段による制御と往復完了制御手段による制御とを切り替える切替手段とを具備したことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項
3に係る発明は、筐体が停留したままの加熱ではオイルを基本とするパターニング材料中の分子量の相対的に大きな油分が残存し、積層後半のパターニングの不安定化を招来しやすいところ、支持体の所定位相部分を利用して常に筐体を動かすことにより撹拌性を高めまた蒸発を効果的に促進し、もしくは蒸発ムラを平準化し、パターニングの長時間の安定化を実現する。特に補強層を設ける場合にその形成安定性を高める。
【0017】
なお、往復分断制御手段による往動、復動の行路長と往復完了制御手段による往復の振幅とは必ずしも同一でなくてもよい。切り替えは、積層厚や回転回数のモニタリング結果を反映させておこなうことができる。
【0018】
請求項
4に記載の積層体形成装置は、請求項1〜
3のいずれか一つに記載のパターニング材料付着装置を具備したことを特徴とする積層体形成装置である。
【0019】
すなわち、請求項
4に係る発明は、積層体の不良率を低減する積層体形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、積層体の不良率を低減するパターニング材料付着装置を提供することができる。具体的には、本発明(請求項1)は、第2ヒータにより蒸気の温度を維持して噴出孔から誘電体薄膜層へ向けて安定的に蒸気を噴出させ、他所への凝集なく誘電体薄膜層へパターニング材料を付着させることができる。また、本発明(請求項
1)は、2系統のヒータにより速やかに所定温度まで昇温し、それ以降は、所定熱容量の筐体のもと第2ヒータのみにて製品品質に直結する温度管理をおこなうことができ、これにより、蒸気発生を維持しつつ他所への凝集のない安定的なパターニングを実現する。また、本発明(請求項
2)は微動により、そして本発明(請求項
3)は支持体の所定位相部分を利用した常時往復により、いずれも、撹拌性を高めまた蒸発を促進しもしくは蒸発ムラを平準化し、パターニングの長時間の安定化を実現する。
また、本発明(請求項
4)は、積層体の不良率を低減する積層体形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、本発明の積層体形成装置を、チップ形積層メタライズドフィルムコンデンサ用の積層体母素子の製造装置に適用し、これに利用するパターニング材料付着装置をマージンノズルとして説明する。説明の便宜上、以降では、積層体母素子の製造装置を適宜母素子製造装置と称することとする。
【0023】
図1は、本発明を適用した母素子製造装置の概要図である。
図2は、マージンノズルの説明図である。このうち、
図2aは外観斜視図を、
図2bは断面概要図を、
図2cはノズル板の構成概念図を示している。なお、各図においては説明の便宜上必ずしも縮尺は同じでなく、描画比も同一としていない。
【0024】
<母素子製造装置1の概要>
母素子製造装置1は、クーリングローラ10と、樹脂噴出ノズル20と、電子ビーム照射部30と、プラズマ照射部40と、マージンノズル50と、アルミニウム蒸着部60と、プラズマ照射部70と、フィルム送出・巻取部80と、を主要な構成としている。なお、図示は省略するがこれらは、チャンバ内に格納され、成膜時には真空雰囲気となる。
【0025】
クーリングローラ10は、直径80cm幅50cmの円筒形であり軸11を水平にして一方向に回転する。また、その表面は5℃程度に保たれ、金属蒸気や樹脂蒸気の凝集・固化を促進する。
【0026】
樹脂噴出ノズル20は、クーリングローラ10に近接対峙し、軸11方向に長手のスリット状ノズルから樹脂蒸気を噴出する。ここでは、幅40cm、厚み0.5μmの樹脂薄膜が形成される噴出量としている。樹脂としては、仕様に依存するが反応性モノマー樹脂が好ましく、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルエーテルモノマーなどを挙げることができる。
【0027】
電子ビーム照射部30は、樹脂噴出ノズル20によりクーリングローラ10上に付着させた樹脂を硬化させる。
【0028】
また、プラズマ照射部40は、硬化させた樹脂の表面を改質する。
【0029】
マージンノズル50は、軸11方向に長手であり、クーリングローラ10上の樹脂薄膜層に対して3mmの間隔で幅200μm(0.2mm)のすじ、すなわち、マージンが形成されるように噴出孔521からパターニング材料を噴出する。また、マージンノズル50は、軸11方向に往復する。マージンノズル50については、後に詳述する。なお、以降においては、パターニング材料を適宜オイルと称することとする。
【0030】
アルミニウム蒸着部60は、クーリングローラ10に近接対峙し、アルミニウム蒸気を噴出する。ここでは、幅40cm、厚み15nmのアルミニウム薄膜が形成される噴出量としている。
【0031】
プラズマ照射部70は、アルミニウム薄膜上のオイルを除去する。すなわち、アルミニウム蒸着部60により樹脂薄膜層の上にアルミニウム薄膜層が形成されるが、マージンノズル50によるオイルすじ部分はアルミニウムが蒸着せず、プラズマ照射部40によってオイルおよび浮いたアルミニウム部分が除去される。
【0032】
フィルム送出・巻取部80は、製造バッチ間にクーリングローラ10に捲回させる保護フィルム81と、その送出、巻取ローラにより構成される。これにより、クーリングローラ10を粉塵その他の異物から保護し、不良品を低減する。なお、保護フィルム81は、積層体の形成開始前に巻き取って除去し、積層体簿素子はクーリングローラ10に直に積層させる。
【0033】
図3に、母素子製造装置1により形成される積層体母素子Fの部分断面図と、これを切り分け切断部に金属を被覆したチップ形積層メタライズドフィルムコンデンサの断面図である。図示したように、積層体母素子Fは、保護層Fpl−補強層Fsl−素子層Fm−補強層Fsh−保護層Fphの構造となっている。なお、
図3aには、素子層Fm形成時の噴出孔521の往動と復動の位置関係も示した。仕様によるが、保護層Fpl、Fphは、樹脂層のみの30層(クーリングローラ30回転)、補強層Fsl、Fshは、マージンノズル50によるマスキング位置を変えずに、樹脂層とアルミ層が交互に積層した300層から500層程度の層、素子層Fmは、マスキングの位置が互い違いに変わり、樹脂層とアルミ層が交互に積層した2000層から3000層程度の層である。
【0034】
母素子製造装置1の1バッチの操作ないし動作は以下の通りである(適宜順序が入れ替わる場合もある)。
(1)材料の仕込み
(2)クーリングローラ10の表面清掃
(3)保護フィルム81の捲回によるクーリングローラ10の保護
(4)チャンバ内の真空引き
(5)各構成部の条件出し、設定
(6)保護フィルム81の切断、巻取→クーリングローラ10の表面曝露
(7)積層体母素子F形成(保護層Fpl→補強層Fsl→素子層Fm→補強層Fsh→保護層Fph、の順次形成)
(8)チャンバ内の常圧化
(9)クーリングローラ10から積層体母素子の取り外し(割り出し)
【0035】
なお、(7)においては、樹脂噴出ノズル20はその固定位置から定量の樹脂蒸気を噴出し、同様に、アルミニウム蒸着部60はその固定位置からアルミニウム蒸気を放散させているだけであるが、クーリングローラ10が一方向に一定速度で回転することによりその表面にそれぞれの薄膜が交互に多数積層した積層体母素子Fが形成されていく。素子層Fm等は、マージンノズル50の移動により形成される。
【0036】
<マージンノズル50の構成>
次にマージンノズル50について詳述する。
マージンノズル50は、
図2に示したように軸11方向に長手である柱状の筐体51の一面にノズル板52が取り付けられた構成である。このノズル板52は、クーリングローラ10に近接対峙しており、ノズル板52表面に等間隔かつ軸11方向一直線上に配された噴出孔521からオイルを噴出する。ここでは噴出孔521は直径50μmであり、隣り合う噴出孔521の間隔は3mm、ノズル板52(噴出孔521)とクーリングローラ10上の積層体表面との間隔は250μmに設定している。なお、噴出孔521から噴出されたオイルは積層体表面上では幅が200μm(0.2mm)となる。また、積層体はその形成に伴って厚みが増していく。マージンノズル50は、積層体表面とノズル板52との間隔を保つための後退機構を備える(図示は省略する)。
【0037】
筐体51は、軸11方向に延伸した貯留室511が設けられ、この中にオイルが封入されている。オイルすなわちパターニング材料の例としては、エステル系オイル、グリコール系オイル、フッ素系オイルを用いることができる。
【0038】
貯留室511と噴出孔521との間には、両者を連通する連通路53を設けており、貯留室511にて気化されたオイルを導出する。なお、ノズル板52裏には、連通路53の一部である蒸気溜まり531を設けている。蒸気溜まり531を設けることにより、噴出孔521の場所に依存せずその噴出圧を同じにすることができる。
【0039】
筐体51は、上述のように、柱状金属から貯留室511と蒸気溜まり531をくりぬき両者を連通した、所定の熱容量を有する中実の構成部といえる。換言すれば、保温性の高い筐体であるといえる。ここで、貯留室511の下部の筐体51中に2本の第1電熱棒54を軸11方向に挿通している(埋入させている)。また、蒸気溜まり531の直近の筐体51中に第2電熱棒55を1本軸11方向に挿通している(埋入させている)。すなわち、マージンノズル50は2系統のヒータを備えている。
【0040】
第1電熱棒54は、貯留室511を加熱し、オイルの蒸気を生成する。一方、第2電熱棒55は、連通路53からノズル板52にわたる部分を加熱する。第2電熱棒55を設けることにより連通路53(蒸気溜まり531を含む)や噴出孔521におけるオイルの凝集が防止される。すなわち、従来は、ノズル板52が貯留室511から離れた位置にあるので噴出孔521近傍では温度低下が生じ、オイルの凝集が生じやすかったところ、噴出孔521近傍の温度低下を補填すべく、第2電熱棒による加熱をおこなうようにしている。なお、温度低下を見越して第1電熱棒54のみにて貯留室511を加熱したとしても、噴出孔521では飽和蒸気圧との関係で必ずしも効果的な凝集防止とはならない。マージンノズル50は、この点からも凝集回避に優れた構成としているといえる。
【0041】
また、昇温の際には第1電熱棒54と第2電熱棒55を共に作動させ、貯留室511の液温を所定の温度(ここでは170℃前後に設定)に速やかに到達させることができる。更に、筐体51を中実として所定の熱容量を持たせているので、以降は第1電熱棒54をオフにし、第2電熱棒55のみにて貯留室511からのオイルの定常蒸発を維持可能としている。すなわち、温度制御ないし調整も容易としたマージンノズル50であるといえる。
【0042】
なお、マージンノズル50は、貯留室511を初め各部の温度をモニタリングするセンサも備える(図示省略)。また、マージンノズル50の支持機構、往復機構、各種の検出機構は汎用のものを用いることができるのでこれらについても図示は省略する。
【0043】
<マージンノズル50の往復駆動>
次にマージンノズル50の往復駆動について説明する。まず、素子層Fmを形成する際の往復駆動について説明する。
【0044】
マージンノズル50は、素子層Fmを形成する際、クーリングローラ10が一周する毎に軸11方向にそれぞれ所定距離の往動と復動とを繰り返す。すなわち、クーリングローラ10は、等速回転をしているが、マージンノズル50が往動してそのまま停留し、約一周後復動してそのまま停留し、また約一周後往動し、また、一周後復動する。この往動または復動は、クーリングローラ10の10°程度の同位相範囲内(同位置)で素早くおこなわれる。この部分は製品とならず廃棄される。以降において、この位相範囲を廃棄エリアSと称することとする(
図2参照)。実機では10cm程度の周長さ部分である。往動と復動との間はマージンノズル50は停留しているので、オイルすじが誘電体層上に等間隔に形成されていく。
【0045】
なお、上述したように、噴出孔521は3mm間隔であけられているので、これに基づき、往動幅(=復動幅)は3.6mmに設定している(
図3a参照)。噴出孔521径は50μmであるものの、樹脂表面には幅約200μm(0.2mm)のスジとして付着する。振幅を3.6mmとすることにより、金属層に0.4mmの重なりができ、この中間を切断するとコンデンサの半製品をとなる(最終的には切断側面を金属にて被覆しチップ形積層メタライズドフィルムコンデンサが形成される。
図3b参照)。
【0046】
ここで、オイルは、総てが同一の分子量でなく若干のばらつきもあり、また、170℃前後の比較的高温に加熱されるので変質しやすい。しかしながら、素子層Fmの形成時には、いわば、マージンノズル50は、常に動いているといえるので、貯留室511内のオイルはほどよく撹拌されオイルが均質化する。
【0047】
一方、補強層Fsl、Fshの形成時には、常にオイルすじが素子層Fmのオイルすじのおおよそ中間に位置するように筐体51が位置する(
図3a)。すなわち、オイルすじの位置がクーリングローラ10の回転毎に変動しない。したがって、単にマージンノズル50を停留させたままオイルを蒸発させ続けると、特に上層側の補強層Fshの形成時に、分子量の大きなオイルが残留し連通路53や噴出孔521の目詰まりを生じやすくなる。そこで、マージンノズル50は、補強層Fsl,Fshを形成する際に、振動を与える制御、または、廃棄エリアSを利用する制御をおこなう。
【0048】
<マージンノズル50の制御1:振動を与える制御>
図4aは、マージンノズル50の駆動制御を示すブロック図である。マージンノズル50は、往復駆動部91と、微動付与部92と、切替部93と、を有する。
【0049】
往復駆動部91は、上述したように、素子層Fmを形成する際の筐体51の軸11方向への定期的な、そして振幅の大きな往動および復動をおこなわせる駆動部である。実際の往復駆動にはアクチュエータを用いることができる。
【0050】
微動付与部92は、往復駆動部91と異なり、噴出孔521の径未満、ここでは約10μmの振幅とした微振動を定常的に筐体51に付与する駆動部である。実際の微動には、振動モータを用いることができる。
【0051】
切替部93は、往復駆動部91による往復と微動付与部92による微動とを切り替える。具体的には、切替部93は、補強層Fslから素子層Fmへの移行の際に、微動付与部92による微動から往復駆動部91による往復へ、また、素子層Fmから補強層Fshへの移行の際に、往復駆動部91による往復から微動付与部92による微動へと、駆動切替をおこなう。なお、この切替制御は、予め設定しておいたクーリングローラ10の回転回数や回転時間に基づくほか、実際の積層厚みをモニタニングしながら動的に切り替える制御とすることができる。
【0052】
このように、補強層Fsl、Fsh(場合により保護層Fpl,Fph)を形成する際にマージンノズル50を微動させることにより、貯留室511内のオイルの撹拌性を高めまた蒸発を促進しもしくは蒸発ムラを平準化し、パターニングの安定化を実現する。
【0053】
<マージンノズル50の制御2:廃棄部分を利用する制御>
図4bは、上述の制御とは異なる駆動制御を示すブロック図である。マージンノズル50は、往復駆動部95と、往復分断制御部96と、往復完了制御部97と、切替部98と、を有する。
【0054】
往復駆動部95は、筐体51を軸11方向へ往復させる駆動部である。
【0055】
往復分断制御部96は、往復駆動部95を制御して、クーリングローラ10の廃棄エリアSが到来している間に噴出孔521の間隔3mmに基づいて設定された長さである振幅3.6mmの往動を完了させ(そしてそのまま筐体51をその場に停留させ)、クーリングローラ10の次の回転における廃棄エリアSの到来にて同振幅の復動をさせ(そしてそのまま筐体51をその場に停留させ)、これを順次繰り返していく。すなわち、往復分断制御部96は、廃棄エリアS到来中にマージンノズル50の位置を回転毎に断続的に変え、これにより素子層Fmが形成されていく。なお、仕様の態様により振幅を0.6mmや、6.6mmとしてもよい。
【0056】
往復完了制御部97は、往復駆動部95を制御して、クーリングローラ10の回転毎に、廃棄エリアSにて筐体51の往動のみならず復動をも完了させる。すなわち、振幅を短くするか(たとえば、1mm)、往復の速度を速めるかして、廃棄エリアSがマージンノズル50の下にある間に、筐体51をゆらす運動をおこなわせる。
【0057】
切替部98は、往復分断制御部96による往復と往復完了制御部97による往復とを切り替える。具体的には、切替部93は、補強層Fslから素子層Fmへの移行の際に、往復完了制御部97による往復から往復分断制御部96による往復へ、また、素子層Fmから補強層Fshへの移行の際に、往復分断制御部96による往復から往復完了制御部97による往復へと、駆動制御切替をおこなう。なお、この切替制御は、予め設定しておいたクーリングローラ10の回転回数や回転時間に基づくほか、実際の積層厚みをモニタニングしながら動的に切り替える制御とすることができる。
【0058】
往復完了制御部97により、製造プロセス上の必要的廃棄エリアSを利用して、補強層Fsl、Fsh(場合により保護層Fpl,Fph)を形成する際に比較的振幅の大きなゆらしを実現し、貯留室511内のオイルの撹拌性を高めまた蒸発を促進しもしくは蒸発ムラを平準化し、パターニングの安定化を実現する。
【0059】
<実施例>
本発明のマージンノズル50を実装した母素子製造装置1を用い、積層体母素子を製造し、これを切断したコンデンサの半製品を検品したところ、オイルすじの形成不良品の発生率は6%であり、従来のマージンノズルを用いた場合の発生率である18%から著しく低減した。また、オイルすじの寸法精度は25%の向上が見られた。
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、積層体母素子の形成にあたり十全なパターニングを実現でき、積層体の不良率を低減するパターニング材料付着装置および積層体形成装置を提供することができる。