(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載され、例えば、レーザ光を投光して、物体から反射されたレーザ光を受光するまでの時間差を用いて物体との距離を計測する距離計測装置が知られている。このような物体検出装置が搭載された車両の台数が多くなると、他の車両が投光したレーザ光を受光する可能性が高くなってくる。このような場合に、自車の距離計測装置が投光した、直後に他の車両が投光したレーザ光を受光すると、その時間差に基づいて、物体との距離を計測してしまうために、誤った距離が計測されるという問題がある。
【0003】
このような問題の対策として、例えば、特許文献1は、対向車からのレーザ光を受光したような場合など、これにより誤検出が生じないことを目的としたレーザ光を目標位置に照射して目標位置の状況を検出する検出装置を開示する。この検出装置は、数種の変調パターンのうち目標位置毎に個別に設定した変調パターンにてパルスレーザ光を変調してレーザ出射部から目標位置に出力する。そして、レーザ出射部から出力したパルスレーザ光の変調パターンとレーザ受光部によって受光したパルスレーザ光の変調パターンがマッチングしたときのみ目標位置に障害物が存在するとして検出し、障害物との距離を測定する。これにより、誤って対向車等からパルスレーザ光を受光しても、これをもとに目標位置の状況を誤検出するおそれが抑制される。
【0004】
また、特許文献2は、レーザ光を用いその反射光を検出して対象物との間の距離を計測する場合に、相互干渉を防止することを目的とした自動車の距離計測方法を開示する。この自動車の距離計測方法は、送信手段から送信する光信号を、車両ごとに割り付けられた車両コードを先頭部に有するフレーム構造とし、受信手段により受信した光信号の車両コードを車両コード識別手段により識別し、受信した光信号が自車のものか他車のものかの判別をし、他車のものであれば自車からの光信号の送信を中止し、他車からの光信号の受信が終了したのちに自車から光信号を送信する。
【0005】
また、特許文献3は、被写体に2次元状のパターンを投影して、被写体までの距離を検出する測距装置が開示されている。例えば、円形のパターンを被写体に投影し、被写体上に投影された円の径を検出して、その検出結果に基づいて被写体までの距離を推定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、特許文献1では、複数のレーザ光パルスを時間軸上において組み合わせたものを照射しているために、単一のパルスを照射して、その反射光を受光して物体までの距離を測定する場合に比べて時間が長くなるという問題がある。また、特許文献2では、計測のための光の前に車両コードのパルス光を追加しているが、全ての光信号を送る時間が長くなるという問題がある。したがって、この両文献に開示する発明では、換言すれば、時間軸上に沿ってパターンが形成されている。そのため、光信号を送る時間が長くなることに加え、パターンを認識するには、時間軸上に形成されているパルス光を全て受光する必要があるため光信号を受光するまでの時間も長くなる。高速に物体を検出する必要がある時には課題が残る。
【0008】
そこで、本発明では、他の車両に搭載される装置との干渉を低減すると共に、高速に物体を検出して距離を計測する車載用距離計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車両に搭載され、周囲に存在する物体との距離を計測する車載用距離計測装置であって、車両特有の所定パターンが2次元状に繰り返されている測定光を投光する投光部と、光を受光すると受光信号を出力する複数の受光素子が2次元状に配置されている受光部と、投光部が投光した時刻と受光部が受光した時刻に基づき、物体との距離を算出する距離検出部と、を備え、距離検出部は、投光部が投光した所定のパターンを有する測定光を受光部が受光した時刻に基づいて、物体との距離を算出する車載用距離計測装置が提供される。
これによれば、距離計測用の測定光に所定のパターンを形成することによって、他の車両に搭載される装置との干渉を低減すると共に、高速に物体を検出して距離を計測する車載用距離計測装置を提供できる。
【0010】
さらに、受光部の各受光素子が出力した受光信号をサンプリングし、複数のサンプリング値を出力する信号処理部と、信号処理部が出力した同時刻の複数のサンプリング値に基づいて、所定パターンを検出するパターン検出部と、をさらに備え、距離検出部は、受光部が受光した時刻として、パターン検出部が所定パターンを検出した複数のサンプリング値の時刻に基づいて、物体との距離を算出することを特徴としてもよい。
これによれば、受光部が受光する光をサンプリングして確実に検出し、所定パターンを検出したサンプリング値の時刻に基づいて物体との距離を算出することにより、高速に距離を計測できる。
【0011】
さらに、所定パターンは、前記車両の車幅方向において非対称であることを特徴としてもよい。
これによれば、自車と対向車のそれぞれ投光する測定光のパターンが同じであっても、非対称のパターンであるため識別が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、距離計測用の測定光に所定のパターンを形成することによって、他の車両に搭載される装置との干渉を低減すると共に、高速に物体を検出して距離を計測する車載用距離計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第一実施例の距離計測装置における自車前方の先行車との距離を計測する場合を説明する説明図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の距離計測装置のブロック図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の投光部が投光する測定光の所定パターンを示す模式図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の受光素子アレイの模式図。
【
図5】本発明に係る第一実施例の信号処理部のブロック図。
【
図6】本発明に係る第一実施例の距離計測装置における投光時刻と受光時刻に基づく距離の計測の仕方を説明する説明図。
【
図7】本発明に係る第一実施例の距離計測装置における各サンプリング時刻における受光素子アレイの受信強度の状態を表す模式図。
【
図8】本発明に係る第一実施例における距離計測装置における受光強度の分布に基づいて自車の測定光の所定のパターンを検出する模式図。
【
図9】本発明に係る第一実施例の距離計測装置における制御方法を示すフローチャート。
【
図10】本発明に係る第一実施例の距離計測装置におけるパターン検出処理方法を示すフローチャート。
【
図11】本発明に係る第一実施例の距離計測装置における、対向車と自車の距離を計測する場合を説明する説明図。
【
図12】本発明に係る測定光の所定のパターンのバリエーションを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例における距離計測装置100を搭載した車両1(自車)が、周囲に存在する物体2である先行車との距離を計測する場合を説明する。距離計測装置100は、車両1の前側バンパー中央付近に備えられ、前方に存する先行車の後部を照射するように設けられている。
【0015】
距離計測装置100は、レーザ光を出力して投光し、先行車の後部に照射されて反射されたレーザ光を反射光として受光する。通常、車の後部には他の部分に比べて光を良く反射するリフレクタが取り付けられているので、そのリフレクタからの反射光を基にして先行車の存在を検出する。距離計測装置100は、後述するように、前方へ拡がる2次元状の測定光を投光するので、先行車が投光されたレーザ光が届く範囲に存在すればその反射光を基にして存在を検出する。また、距離計測装置100は、先行車の存在を検出すると共に、レーザ光を発射してから先行車に反射し帰ってくるまでの時間を計測して自車と先行車との距離を測定する。
【0016】
図2乃至
図5を参照し、距離計測装置100を詳細に説明する。距離計測装置100は、測定光を投光する投光部10と、光を受光すると受光信号を出力する受光部20と、先行車との距離を算出する距離検出部31と、当該装置の全体制御を行う制御部50と、を備える。
【0017】
投光部10は、投光するレーザ光を発光する半導体レーザからなる発光素子12と、発光素子12を駆動する駆動回路11と、レーザ光の強度(振幅)や波長などを変化させる変調手段13と、レーザ光を投光する投光レンズ14を備え、制御部50からの制御を受けて投光する。投光部10は、
図3に例示するように、車両1特有の所定パターンが2次元状に繰り返されている測定光を投光する。本例では、投光部10が投光する測定光は、3X3の格子で1つの所定のパターンが形成され、そのパターンが縦横に8パターン2次元状に繰り返されている。
【0018】
なお、本例では、レーザ光の強度が異なることにより所定のパターンが形成されるものとして説明するが、もちろんこれに限定されるものではない。例えば、波長Aの光を部分的に波長Bとなるよう変調された所定パターンの測定光を投光し、受光部側において波長Aだけを透過させるようなフィルタを備えることによって、受光部において所定のパターンを受光することができる。本図では、灰色部分は、白色部分に比べて投光するレーザ光の強度が低いことを表現している。すなわち、3X3の9つの升目の内、角の4つの升目は、他の升目より投光するレーザ光の強度が低い。この強度差は、反射した光を受光した時に有意な差として得られるように適宜定められる。たとえば、白色部分は灰色部分に比べて5倍強度強くする。
【0019】
また、この所定のパターンは、距離計測装置100が搭載される車両ごとに異なるパターンであることが好ましい。しかし、現実的には所定のパターンは有限個となるため、異なる車両であっても、同じ所定のパターンを用いる距離計測装置100が搭載されることもある。この所定のパターンは受光素子アレイ22の画素数、計測する物体の大きさ、計測すべき距離に応じて適宜定められる。
【0020】
より、具体的には2次元状の測定光が自車の前方に投光されると、測定光は拡散されるため、遠方になるほど測定光の面積が大きくなる。したがって、所定のパターンも遠方になるほど面積が大きくなる。例えば、距離計測装置100に求められる計測可能な距離が最長50mであり、計測すべき物体を例えば車両のリフレクタとする。この場合、自車から投光された測定光は拡散しながら、自車から50m前方に存在する車両のリフレクタに到達するが、拡散され面積が広がった所定のパターンの大きさが、リフレクタよりも小さい必要がある。言い換えれば、リフレクタによって反射される反射光には所定のパターンの全部が含まれている必要がある。つまり、所定のパターンの大きさは、50m先で拡散された大きさと計測対象の大きさを考慮して決定される。
【0021】
また、例えば、距離計測装置100に求められる計測可能な最短距離が1mであり、計測すべき物体を例えば車両のリフレクタとする。この場合、自車から投光された測定光は拡散しながら、自車から1m前方に存在する車両のリフレクタに到達するが、拡散され面積が広がった所定のパターンの大きさが、リフレクタよりも小さい必要がある。そして、リフレクタによって反射された反射光を受光素子が受光した場合には、反射光に含まれている所定のパターンが識別できる程度に受光素子の画素数は多い必要がある。
【0022】
図3にも示すように、受光部20は、投光部10が投光して先行車から反射する測定光を集光する受光レンズ21と、受光レンズ21が集光した測定光を感光し受光信号に変換して結像する受光素子アレイ22を備えるいわゆるCCD(Charge−Coupled Device、電荷結合素子)カメラからなる。すなわち、受光部20は、光を受光すると受光信号を出力する2次元状に配置された複数の受光素子23を有している。受光素子アレイはCMOSカメラでも良く、レーザ光あるいは赤外線などを受光する素子を2次元状に配置したものであれば良い。
【0023】
受光部20が有する受光素子アレイ22は、投光部10の投光する2次元状のレーザ光の升目以上の画素数を有することが好ましく、
図3で示すように上述した投光部10が投光するレーザ光の升目の数と同じ24X24個の画素数を有し、投光したレーザ光の強度分布と同じ解像度で結像できる。
【0024】
距離検出部31は、制御部50から、投光部10が車両1特有の所定のパターンを有するレーザ光を投光した時刻と、受光部20がその所定のパターンを有する反射光を受光した時刻を得る。距離検出部31は、それらの時刻に基づき、レーザ光を発射してから先行車に反射し帰ってくるまでの時間を計測して自車と先行車との距離を算出する。これによれば、距離計測用の測定光に所定のパターンを形成することによって、他の車両に搭載される装置との干渉を低減すると共に、高速に物体を検出して距離を計測する車載用距離計測装置を提供できる。なお、距離検出部31と制御部50は、マイクロコンピュータに備えられる。
【0025】
また、距離計測装置100は、
図2に示すように、さらに、受光部20の各受光素子23が出力した受光信号をサンプリングし、サンプリング値を出力する信号処理部40と、距離検出部31を含みさらにパターン検出部32およびデータ記憶部33を含む演算部30と、距離検出部31が算出した距離情報を使用者に視覚的/聴覚的に報知する報知部60とを備える。
【0026】
信号処理部40は、各受光素子23から受光信号を受ける増幅部41と、増幅部41が増幅した受光信号を受けるサンプリング部42を有する。増幅部41は、
図5に示すように、各受光素子23から受光信号を直接受ける電流電圧変換回路(TIA、トランスインピーダンスアンプ)と増幅器を有し、受光素子23が出力した受光信号が微弱な電流であっても信号強度の差異を検出できるようにする。サンプリング部42は、増幅部41で増幅されたそれぞれの受光信号を所定間隔でサンプリングしA/D変換回路によりデジタル値に変換し、演算部30へそのサンプリング値を渡す。サンプリング部42は、投光部10が投光して反射して戻ってくる測定光に対応する受光信号を、制御部50が指示されるサンプリング開始やそのサンプリング間隔に基づいて処理する。
【0027】
演算部30は、サンプリング時刻記憶部34と受光強度値記憶部35を有するデータ記憶部33を備える。サンプリング時刻記憶部34は、信号処理部40が受光信号をサンプリングしたサンプリング時刻を記憶する。受光強度値記憶部35は、そのサンプリング時刻に対応させて、信号処理部40がサンプリングした受光信号のサンプリング値を受光強度として記憶する。また、演算部30は、データ記憶部33に記憶されている各受光素子23に対応するサンプリング値のうち、同じサンプリング時刻のサンプリング値を用いて、投光部10が投光した車両1特有の所定のパターンを検出するパターン検出部32を備える。すなわち、パターン検出部32は、信号処理部40が出力した同時刻の複数のサンプリング値に基づいて、所定パターンを検出する。
【0028】
距離検出部31は、投光部10が車両1特有の所定のパターンを有するレーザ光を投光した時刻(投光時刻)と、受光部20がその所定のパターンを有する反射光を受光した時刻(受光時刻)に基づき、レーザ光を発射してから先行車に反射し帰ってくるまでの時間を計測して自車と先行車との距離を算出する。信号処理部40がサンプリング値を出力する場合、距離検出部31は、パターン検出部32が車両1特有の所定パターンを検出した複数のサンプリング値に対応しているサンプリング時刻を受光時刻として、先行車との距離を算出する。
【0029】
図6を参照して、信号処理部40がサンプリング値を出力する場合に、距離検出部31が投光時刻と受光時刻に基づいて距離を算出することを説明する。
図6は、ある1つの受光素子23について、投光時刻と受光時刻に基づく距離の計測の仕方を説明する説明図である。
【0030】
最上段は、投光部10が間欠的に投光するパルス状の測定光を示す。光部10は、短い間隔で5つのパルスを1群で投光し、その1群のパルスを断続的に繰り返すように投光する。2段目は、最上段における最初の2つのパルス状の測定光を時間軸において拡大して表現したものである。3段目は、一つ目の測定光の反射光を示しており、4段目はその反射光に対応して受光素子23が出力した受光信号を示している。5段目は、信号処理部40が受光信号を連続値から離散値にするサンプリング値を出力することを示している。
【0031】
信号処理部40は、制御部50から得られる投光部10がパルスを投光し始めた時刻(投光時刻)からサンプリングを開始し、測定光のパルス幅よりも十分に小さい所定の間隔でサンプリングを継続する。サンプリング値は、受光素子23が反射光に対応する受光信号の出力があるまで有意な値は出力されないが、反射光に対応する受光信号の出力があった場合有意な離散値が得られ、ピークを打ったサンプリング時刻を受光時刻とする。したがって、投光時刻から受光時刻までの時間が、パルス光が投光されて反射して受光されるまでの時間であり、物体2までの距離に比例するので、この時間に基づき、車両1(自車)から物体2である先行車までの距離を算定することができる。
【0032】
図7および
図8を参照して、パターン検出部32が信号処理部40の出力した同時刻の複数のサンプリング値に基づいて所定パターンを検出する方法を説明する。
図7は、ピークを打ったサンプリング時刻はTzであり、そのサンプリング時刻Tzより1つまえのサンプリング時刻をTz−1、さらに1つまえのサンプリング時刻をTz−2と表現している。図示していないが、サンプリング時刻Tzより1つあとのサンプリング時刻をTz+1と表現できる。このようにそれぞれのサンプリング時刻毎の受光素子アレイ22が出力した受光信号は、サンプリング時刻記憶部34と受光強度値記憶部35に記憶されている。
【0033】
本図におけるサンプリング時刻Tzでは、先行車のリフレクタからの反射光が自車1に届いた時刻における受光強度を含んでいる。また、自車1が投光した測定光以外の光を受光している部分も例示している。測定光に含まれる自車1の所定のパターン全体が、リフレクタに含まれる程度の大きさであるので、このように受光素子1つのみが強い受光強度で受光することはない。本図は、それら以外の部分は、弱い受光強度の反射光しか受けていない状況を示している。なお、薄い灰色部分は、白色部分に比べて受光強度が小さいことを表現しており、濃い灰色部分は、薄い灰色部分に比べてさらに受光強度が小さいことを示している。
【0034】
図8は、ピークを打ったサンプリング時刻Tzにおいて、パターン検出部32によるパターン検出の仕方を示す。受光素子アレイ22の内、左下の受光素子23を(X1、Y1)、右下の受光素子23を(X24、Y1)、左上の受光素子23を(X1、Y24)、右上の受光素子23を(X24、Y24)と示している。先行車のリフレクタからの反射光と考えられる領域として、(X5、Y8)および(X18、Y8)を中心とするそれぞれ9つの受光素子23からなる領域が存在する。この領域において、それぞれ四隅に位置する受光素子23(中央の受光素子を(Xm、Yn)とした場合、(Xm−1、Yn−1)、(Xm+1、Yn−1)、(Xm−1、Yn+1)、(Xm+1、Yn+1))は、それ以外の受光素子23(中央の受光素子を(Xm、Yn)とした場合、(Xm、Yn−1)、(Xm+1、Yn)、(Xm−1、Yn)、(Xm、Yn+1))に比べると受光強度は小さく、その9つの受光素子23の強度を数値化すると四隅の強度が1に対してそれ以外の受光素子23の強度は5となっていることを示す。
【0035】
図3を参照して上述したように、投光部10が投光した所定のパターンは、同じように、四隅の強度が1に対してそれ以外の受光素子23の強度は5となっていたので、リフレクタからの反射光と考えられる領域の受光強度に基づいて、この反射光は自車が投光したレーザ光に対応する反射光であると検出することができる。こうすることにより、受光部20が受光する光をサンプリングして確実に検出し、所定パターンを検出したサンプリング値の時刻に基づいて物体との距離を算出することにより、高速に距離を計測できる。
【0036】
図9および
図10を参照して、距離計測装置100における制御方法を説明する。なお、フローチャートにおけるSはステップを示す。投光部10は、S100において、制御部50の指示により、所定パターンに変調されたレーザ光を投光する。信号処理部40は、S102において、投光部10が投光したレーザ光の反射光を受光部20が受光して出力した受光信号をサンプリングする。データ記憶部33は、このサンプリング時刻を制御部50からおよびそのサンプリング時刻毎の受光強度値を信号処理部40から得て、記憶する。このサンプリングとそのデータの記憶は、たとえば投光部10が次の投光を行うなどしてサンプリングを終了させるまで継続する。
【0037】
サンプリングが終了した場合、パターン検出部32は、S108において、パターン検出処理を実行する。パターン検出処理は、
図10に示すS200〜S222で説明される。パターン検出部32は、S202において、サンプリング時刻Tzのzを1に、受光素子Xmのmを1に、Ynのnを1にというように初期値にセットする。
【0038】
パターン検出部32は、S204において、サンプリング時刻Tzにおける受光素子(Xm、Yn)およびその受光素子の周囲の受光素子の強度値を読み出す。なお、本実施例では、投光部10が投光するレーザ光の所定のパターンは、上述した9つの受光素子によって受光されているものとする。
【0039】
パターン検出部32は、S206において、受光素子(Xm、Yn)の受光強度およびその受光素子の上下左右の受光強度は同じであるかを検査する。同じであった場合、パターン検出部32は、S208において、受光素子(Xm、Yn)の受光強度は、斜め方向の受光素子(9つの受光素子の内の四隅の受光素子)の受光強度の所定倍(本例では5倍)か否かを検査する。所定倍であった場合、パターン検出部32は、S210において、受光部20が受光した光は、投光部10が投光したレーザ光の所定のパターンに対応した反射光であると判定する。そして、パターン検出部32は、S212において、今の受光素子の位置番号、その受光強度、そのサンプリング時刻を記憶する。
【0040】
パターン検出部32は、S212で受光素子の位置番号等を記憶した場合、S206で同じでなかった場合、S208で所定倍でなかった場合、S214において、m、nの値に1を足す。そして、パターン検出部32は、上記S204〜S214を、mとnが24になるまで、すなわち、受光素子アレイ22のすべての受光素子23についての検出が終了するまで繰り返す。パターン検出部32は、S216において、mとnが両方とも24になったと判定した場合、すなわち、受光素子のすべての検出が終了した場合、S218において、zの値に1を足して、次のサンプリング時刻について上記S204〜S216の処理を繰り返す。そして、パターン検出部32は、S220において、すべてのサンプリング時刻の回数分(本例では10)繰り返して、すべてのサンプリング時刻を終了した場合には、S222において戻る。
【0041】
パターン検出部32が所定パターンを検出した場合、距離検出部31は、S112において、距離検出処理を実行し、車の後部等に取り付けられているリフレクタからの反射光を基にして先行車(物体2)の存在を判別する。リフレクタからの反射光が2つの場合は四輪車両であり、1つの場合は自動二輪車であるというように車種別に判別してもよい。先行車が存在すると検出した場合、距離検出部31は、S116において、投光部10が投光した時刻と受光部20が受光した時刻に基づき、先行車(物体2)との距離を算出する。先行車の存在を検出しなかった場合、距離検出部31は、S120において、先行車(物体2)が無いことを出力する。距離計測装置100は、S118において所定の時間間隔経過後、S100〜S120を繰り返す。
【0042】
なお、投光部10が投光する所定のパターンは、
図11に示すように、車両1の車幅方向において非対称であることが好ましい。
図11は、同じ距離計測装置100を搭載する自車の車両1と対向車(物体2)が対向する場合を示す。距離計測装置100は、基本的に車両特有の所定パターンを備えるが、所定パターンの数には限りがあるので同じ所定パターンを投光する車両同士がすれ違う場合もある。
【0043】
自車1と対向車(物体2)が対向走行する際に、自車1の距離計測装置100と対向車の距離計測装置100とが同期せずに動作するため、自車1の距離計測装置100の投光部10が送信したレーザ光が対向車の距離計測装置100の受光部20により受信され、いわゆる相互干渉が生じることがある。
【0044】
たとえば、対向車は本図(A)に示す所定のパターンを投光し、自車は本図(B)に示すような、9升目の内L字型にレーザ光の強度が低いところがある所定のパターンを投光する。自車からの投光に対応する反射光のパターンを自車から見た場合は、本図(C)のように同じL字型に見える。しかし、自車から対向車が投光するこの所定パターンを見た場合は、本図(D)のように左右反転して見える。このように、投光部10が投光する所定のパターンが車幅方向において非対称である場合、自車と対向車のそれぞれ投光する測定光のパターンが同じであっても、非対称のパターンであるため識別が可能となる。
【0045】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、数量、適用例、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0046】
たとえば、上述した投光部10が投光する所定のパターンは、正方形の9つの升目から形成されていたが、これに限定されるものではなく、数や形は適宜定められる。たとえば、
図12(A)に示すような
図3に示すパターンのバリエーション、本図(B)に示すような
図11に示すパターンのバリエーション、本図(C)に示すようなT字にパターンが入ったバリエーション、本図(D)に示すようなパターンが4X4の升目で形成されているバリエーション、本図(E)にしめすようなパターンが5X5の升目で形成されているバリエーションなどがある。もちろんこれらも例示に過ぎない。また、受光素子アレイ22を構成する受光素子23の数も実施例に限定されるものではない。また、S202〜S220のフローチャートで説明されたパターンのマッチング方法は、これに限定されるものではなく、所定のパターンに応じて適宜効率の良いマッチング方法が採用される。