(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282267
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/40 20060101AFI20180208BHJP
C12N 11/04 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
C12M1/40 Z
C12N11/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-512573(P2015-512573)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-516172(P2015-516172A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】KR2013004166
(87)【国際公開番号】WO2013172601
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2014年11月13日
【審判番号】不服2016-15011(P2016-15011/J1)
【審判請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0052385
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508064724
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スンチュル キム
(72)【発明者】
【氏名】ソンボ キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェユン イム
(72)【発明者】
【氏名】カンジン アン
(72)【発明者】
【氏名】ジンハ キム
【合議体】
【審判長】
大宅 郁治
【審判官】
長井 啓子
【審判官】
山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−120986(JP,A)
【文献】
特開昭58−162292(JP,A)
【文献】
特開2010−131005(JP,A)
【文献】
特開2002−253228(JP,A)
【文献】
特開平4−253744(JP,A)
【文献】
特開平6−141822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12M 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酵素含有物及び賦形剤を含有する混合液が投入される第1のタンク部;
b)前記第1のタンク部の下端部に位置するノズル部であって、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に、ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された液体放出口を有するノズルを含むノズル部;及び
c)前記ノズル部の下側に位置する、塩化カルシウム液が収容され、前記塩化カルシウム液に空気を注入するための空気注入口を含む第2のタンク部;
を含む、酵素固定化ビーズの製造装置。
【請求項2】
前記第2のタンク部内の塩化カルシウム液の表面と前記ノズル部の液体放出口との間の距離が0.1m〜1.5mである、請求項1に記載の酵素固定化ビーズの製造装置。
【請求項3】
前記ノズル部は、前記ノズルを2個以上含む、請求項1に記載の酵素固定化ビーズの製造装置。
【請求項4】
前記第1のタンク部は、混合液または空気投入口を含む、請求項1に記載の酵素固定化ビーズの製造装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つの項に記載の酵素固定化ビーズの製造装置を使用し、前記塩化カルシウム液に空気を注入する工程を含む酵素固定化ビーズを製造する方法。
【請求項6】
前記第1のタンク部に投入される混合液の粘度を3,000cps〜7,000cpsに調節し、前記第1のタンク部の空気投入口に0.1kg/cm2〜3kg/cm2の圧力を加える、請求項5に記載の酵素固定化ビーズを製造する方法。
【請求項7】
直径が0.5mm〜3mmである球状である、請求項5に記載の酵素固定化ビーズを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、タガトースの製造に使用される酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法に関する。
【0002】
より具体的に、本願発明は、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に切断型(ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された形態)の液体放出口が形成されたノズルを含む、酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タガトース(Tagatose)は、ガラクトース(Galactose)の異性質体であって、自然に生成される低カロリーの天然糖の一つとして知られている。タガトースは、砂糖と類似する程度の甘味、すなわち、砂糖の約92%程度の甘味度を示すが、カロリー面では、熱量が砂糖の約38%に過ぎなく、GI(Glycemic index、糖指数)は砂糖の約4%に過ぎないので、砂糖に取って代わる甘味料として脚光を浴びている。
【0004】
さらに、タガトースは、米国食品医薬局(Food and Drug Administration;FDA)でGRAS(Generally Recognized As Safe)として認められ、食品、飲料、健康食品、ダイエット添加物などに甘味料として使用可能であると許可を受けた物質であって、体内摂取時に副作用がほとんどないものとして知られており、その活用が広く期待される物質である。
【0005】
タガトースを生産する方法としては、ガラクトースに触媒を適用して生産する化学的方法と、異性化酵素を用いてガラクトースを異性化させる生物学的方法とがある。化学的生産方法は、経済的な面や収率的な面で有利であるが、高温・高圧の化学工程を要し、工程自体が複雑なだけでなく、産業廃棄物を発生させるなどの問題を有しており、環境にやさしい生物学的生産方法に対する要求が増加している。
【0006】
異性化酵素を用いてタガトースを大量生産する先行技術として、大韓民国登録特許第10―0872694号は、アラビノース異性化酵素を用いてタガトースを大量生産する方法を提供しており、大韓民国登録特許第10―0464061号は、異性化酵素を適切な担体に固定化させ、これにガラクトースを投入し、タガトースへの異性化を誘導する方法を提供している。
【0007】
しかし、生物学的方法の場合、化学的方法に比べて反応工程条件により敏感に反応するので、反応条件を異なる形に調節することによって、工程の効率性、最終生産収率などに大きな差をもたらすようになる。また、異性化酵素を担体に固定して使用しようとする場合、その固定化に使用される装置及びその固定化方法によって製造される担体の性質、固定化程度が異なるようになり、これは、工程効率及び生産収率などを予測しにくくする要素となり、産業経済的な面で見ると、生物学的方法の活発な利用を妨害している。
【0008】
したがって、生物学的方法でタガトースを安定的に大量生産するために、最適化された酵素固定化ビーズの製造装置の開発が要求されており、これを用いて反応効率を高めるように異性化酵素またはその生産能を有する菌体などを担体に効果的に固定化させる方法が開発される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、タガトースの製造に使用される酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
より具体的に、本願発明は、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に切断型(ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された形態)の液体放出口が形成されたノズルを含む、酵素固定化ビーズの製造装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本願発明は、前記酵素固定化ビーズの製造装置を用いて、形態及びサイズが適宜調節され、異性化反応に最適化された酵素固定化ビーズを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、酵素及び/または酵素生産能を有する菌体を固定化させたビーズを製造する装置、及びその装置を用いて酵素固定化ビーズを製造する方法に関する。
【0013】
本願発明の一様態によると、
a)酵素含有物及び賦形剤を含有する混合液が投入される第1のタンク部;
b)前記第1のタンク部の下端部に位置するノズル部であって、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に、ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された液体放出口を有するノズルを含むノズル部;及び
c)前記ノズル部の下側に位置する、塩化カルシウム液が収容された第2のタンク部;
を含む酵素固定化ビーズの製造装置を提供する。
【0014】
本願発明の他の一様態によると、前記第2のタンク部内の塩化カルシウム液の表面と前記ノズル部の液体放出口との間の距離が0.1m〜1.5mである酵素固定化ビーズの製造装置を提供する。
【0015】
本願発明の更に他の一様態によると、前記ノズル部は、前記ノズルを2個以上含む酵素固定化ビーズの製造装置を提供する。
【0016】
本願発明の更に他の一様態によると、前記第1のタンク部は、混合液及び/または空気投入口を含む酵素固定化ビーズの製造装置を提供する。
【0017】
本願発明の更に他の一様態によると、本願発明の前記酵素固定化ビーズの製造装置を使用して酵素固定化ビーズを製造する方法を提供する。
【0018】
本願発明の更に他の一様態によると、第1のタンク部に投入される混合液の粘度を3,000cps〜7,000cpsに調節し、前記第1のタンク部の空気投入口に0.1kg/cm
2〜3kg/cm
2の圧力を加えて酵素固定化ビーズを製造する方法を提供する。
【0019】
本願発明の更に他の一様態によると、本願発明の前記方法によって直径が0.5mm〜3mmである球状の酵素固定化ビーズを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置は、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に切断型(ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された形態)の液体放出口が形成されたノズルを含むことによって、サイズが均一で且つ滑らかな球状に、均一な空隙を有する固定化ビーズを製造するという効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置におけるノズルの下端部の縦断面を簡略に示した図である。
【
図2】本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置を簡略に示した図である。
【
図3】酵素固定化ビーズの製造工程及び装置を簡略に示した図である。
【
図4】従来の酵素固定化ビーズの製造装置における注射針の下端部の縦断面を簡略に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明についてより詳細に説明する。本願明細書に記載されていない内容は、本願発明の技術分野または類似する分野で熟練した者であれば十分に認識して類推可能なものであるので、それについての説明は省略する。
【0023】
本願発明は、タガトースの製造に使用される酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法に関する。
【0024】
より具体的に、本願発明は、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に切断型(ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された形態)の液体放出口が形成されたノズルを含む、酵素固定化ビーズの製造装置及びこれを用いた酵素固定化ビーズの製造方法に関する。
【0025】
本願発明の一様態によると、
a)酵素含有物及び賦形剤を含有する混合液が投入される第1のタンク部;
b)前記第1のタンク部の下端部に位置するノズル部であって、内径が0.1mm〜1mmで、下端部が円筒状で、前記下端部に、ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された液体放出口を有するノズルを含むノズル部;及び
c)前記ノズル部の下側に位置する、塩化カルシウム液が収容された第2のタンク部;
を含む酵素固定化ビーズの製造装置を提供する。
【0026】
前記第1のタンク部は、酵素含有物及び賦形剤を含有する混合液が収容されるタンク、及び前記タンクに混合液及び/または空気を投入できる投入口を含んでもよい。
【0027】
前記第1のタンク部に投入される混合液は、酵素含有物及び賦形剤を含有する。
【0028】
前記酵素含有物は、異性化酵素自体、または異性化酵素生産能を有する菌体や死菌体を含有する物質を意味し、前記異性化酵素は、ガラクトースをタガトースに異性化させる酵素をいい、アラビノース異性化酵素であることが好ましい。
【0029】
本願発明の一様態によると、前記アラビノース異性化酵素生産能を有する菌体は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属組換え菌株であってもよい。
【0030】
前記コリネバクテリウム属組換え菌株は、高度好熱性細菌であるサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)菌株由来のアラビノース異性化酵素をコーディングする遺伝子を用いて組み換えられた菌株であることが好ましい。
【0031】
前記コリネバクテリウム属組換え菌株に対する関連事項は、大韓民国登録特許第10―0872694号を参照する。
【0032】
本願発明の一様態において、前記賦形剤は、アルジネート(alginate)であることが好ましく、二酸化ケイ素溶解液にアルジネートを溶解させたアルジネート溶解液であることがより好ましい。
【0033】
本願発明の一様態によると、前記第1のタンク部の下端にノズル部が位置する。
【0034】
前記ノズル部は、1個以上のノズルを含んでもよい。
【0035】
本願発明の一様態において、前記ノズル部のノズルは、その下端部の内径が0.1mm〜1mm、より好ましくは0.2mm〜0.5mm、最も好ましくは0.3mm〜0.4mmである円筒状であってもよく、前記ノズルの下端部に切断型液体放出口が形成されていてもよい。
【0036】
前記液体放出口とは、前記第1のタンクに投入された混合液が放出される出口を意味し、切断型とは、前記ノズルの縦軸に垂直な方向に切断された形態(ノズルの下端部の縦断面として
図1を参照)を意味する。
【0037】
従来の固定化ビーズ製造機には、注射針(
図4参照)が装着されており、これを用いる場合、ペレット(pellet)型ビーズが製造され、異性化反応の効率を低下させるという問題があった。より具体的に、ペレット型ビーズを用いて異性化反応を行う場合、空隙が均一でなく、これに気質液体(例えば、ガラクトース液)を加えたとき、気質液体の移動負荷率が均一でないことから、異性化反応の効率が低下するという問題が発生する。
【0038】
これに比べて、下端部の液体放出口が切断型で、内径が0.1mm〜1mmである本願発明の前記ノズルを用いると、サイズが均一で且つ滑らかな球状のビーズが製造され、均一な空隙を有するようになることから、気質液体の移動負荷率も均一に付与される。したがって、充填塔(酵素固定化ビーズを充填し、これに気質液体を投入し、異性化反応を行うために用いる設備)内で空隙差による酵素の偏重した使用を防止することができる。
【0039】
本願発明の一様態によると、前記第2のタンク部は、塩化カルシウム液が収容されるタンク、及び前記ノズル部から放出される混合液が滴下されて投入される入口を含む。
【0040】
本願発明の一様態によると、前記第2のタンク部内の塩化カルシウム液の表面と前記ノズル部の液体放出口との間の距離は、好ましくは0.1m〜1.5mに、より好ましくは0.5m〜0.8mに調節することができる。
【0041】
前記範囲内で、第1のタンク部の混合液をノズル部を介して滴下する距離が適宜調節され、滴下する間に混合液を球状のビーズに成形し、過度に高い場所から滴下されて塩化カルシウム液の表面にぶつかる衝撃によってビーズが楕円状に歪むことを防止することができる。
【0042】
本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置の一様態を、
図2を参照してより詳細に説明する。
【0043】
図2において、本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置は、大きく分けて、第1のタンク部a、第2のタンク部b及びノズル部cからなっている。
【0044】
第1のタンク部aの上端部には、混合液及び/または空気投入口が位置しており、第1のタンク部aは、1個以上であってもよく、それぞれ共通的に又は別個に使用されてもよい。
【0045】
第1のタンク部aの下端部にはノズル部cが位置し、ノズル部cには1個以上のノズルが装着されていてもよい。
【0046】
前記ノズルの上端部dには混合液投入口が備えられ、第1のタンク部aに空気が注入(2)されながら前記混合液投入口を介してノズルに混合液が注入される(1)。前記ノズルの下端部eは、円筒状で、液体放出口が切断型に形成されており、これを介して放出された固定化ビーズが滴下(4)されながら滑らか且つ均一な球状に形成され得る。
【0047】
前記ノズルの下端部の液体放出口から放出された固定化ビーズは、第2のタンク部bに収容された塩化カルシウム液に滴下(5)され、前記ノズルの下端部eと前記第2のタンク部b内の塩化カルシウム液の表面との間の距離は0.5m〜0.8mであることが好ましい。
【0048】
本願発明の他の一様態によると、本願発明の前記酵素固定化ビーズの製造装置を用いて酵素固定化ビーズを製造する方法を提供する。
【0049】
酵素固定化ビーズを製造するにおいて、前記第1のタンク部に投入される混合液を製造する方法の好ましい一例は、次の通りである:アラビノース異性化酵素生産能を有する菌体を死菌化させ、その培養液を遠心分離し、死菌体を回収した後、0.4%〜1.0%の二酸化ケイ素溶解液にアルジネートが完全に溶解されるように1.5%〜2.5%の濃度で90±5℃で3時間以上撹拌させて溶解させる。溶解されたことを確認した後、再び冷却水をジャケットに通過させることによってアルジネート溶解液を35±5℃に冷却させる。これは、アルジネートの粘性を増大させると共に、菌体/酵素の混合時における酵素の損傷を防止するためである。
【0050】
その次に、アルジネート溶解液に、分離された菌体を撹拌機で30RPM〜60RPMの回転速度で回転させながら混合させる。アルジネート溶解液は、粘度が高い関係から、撹拌時に回転速度が過度に高いと、混合液中に気泡が形成されるようになり、このように形成された気泡は上部に浮び上がらなくなる現象が発生するが、このような気泡によってビーズの製造作業時にビーズに空気が入り込むことから、ビーズが液の上部に浮び上がる現象が発生するので、撹拌速度を30RPM〜60RPMに調節することが好ましい。
【0051】
酵素固定化ビーズを製造するにおいて、前記第1のタンク部に投入される混合液の粘度は、3,000cps〜7,000cpsであることが好ましい。前記の範囲内では、球状の均一且つ滑らかなビーズを製造することができる。
【0052】
本願発明の一様態によると、酵素固定化ビーズを製造するにおいて、混合液をノズルを介して放出するとき、前記第1のタンク部の空気投入口を介して、好ましくは0.1kg/cm
2〜3kg/cm
2、より好ましくは0.5kg/cm
2〜2kg/cm
2、最も好ましくは0.7kg/cm
2〜1.7kg/cm
2の圧力を加えてもよい。
【0053】
前記の範囲の圧力条件下で、適切な量の酵素含有物及び賦形剤混合液がノズルを通過してビーズに形成され得る。そして、前記混合液がノズルを通過する間、適切な力が加えられることによって球状に近い形態を有するビーズを形成することができる。形成されたビーズの形態が球に近いほど、酵素が効果的に固定されたビーズを得ることができ、ビーズの表面積が増大するという理由で、その後の異性化ステップがより効率的に進められるという利点がある。
【0054】
本願発明の更に他の一様態によると、酵素固定化ビーズを製造するにおいて、前記酵素含有物及び賦形剤混合液を塩化カルシウム液に滴下した後、固定化ビーズが球状を維持できるように前記塩化カルシウム液に空気を注入する工程をさらに行うことができる。
【0055】
塩化カルシウム液に滴下された前記混合液は、これをそのまま放置する場合、その重さによって板状に押される危険があり、板状に押されたビーズは、表面積が減少するなどの理由で、異性化ステップでの活用性が低下するという問題があるので、塩化カルシウム液に空気を注入し、ビーズの形態を球状に維持させることができる。
【0056】
本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置を用いてタガトースを製造する方法の一様態に対する工程別簡略な説明は、次の通りである。
【0058】
2)種核培養したものを1次的に発酵培養する。
【0059】
3)1次的な発酵培養が完了した後、2次的に発酵培養する。
【0060】
4)2次的な発酵培養が完了した後、3次的に発酵培養する。
【0061】
5)3次的な発酵培養が完了した後、4次的に発酵培養する。
【0062】
6)4次的な発酵培養が完了した後、界面活性剤を投入し、熱を加えて死菌させる。
【0063】
7)遠心分離器で菌体のみを回収する。
【0064】
8)回収された菌体をアルジネート及び二酸化ケイ素と混合する。
【0065】
9)混合液を固定化設備に投入し、ビーズを形成する。
【0066】
10)ビーズをガラクトース液に収容して安定化させる。
【0067】
11)ビーズを異性化塔に移送させて充填する。
【0068】
12)ガラクトース液を充填された塔に移送させてタガトースに転換させる。
【0069】
本願発明の酵素固定化ビーズの製造装置を用いてタガトースを製造する場合、高濃度及び/または高純度のタガトースを製造することができ、好ましくは、固形分基準で99%以上の純度を有するタガトースを製造することができる。
【0070】
以下、実施例を記述することによって、本願発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本願発明の一例示に過ぎなく、本願発明の内容がこれに限定されるものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0071】
酵素固定化ビーズの製造
【0072】
(1)酵素含有物及び賦形剤の混合液の製造
【0073】
アラビノース異性化酵素生産能を有する菌体を死菌化させ、その培養液を遠心分離し、死菌体を回収した後、0.7%の二酸化ケイ素溶解液にアルジネートが完全に溶解されるように、2%の濃度で90℃で3時間以上撹拌することによってアルジネートを溶解させた。溶解されたことを確認した後、再び冷却水をジャケットに通過させることによってアルジネート溶解液を35℃に冷却させた。
【0074】
その次に、アルジネート溶解液と前記分離された菌体を、50RPMの撹拌機の回転速度で混合した。
【0075】
(2)混合液の放出
【0076】
混合液の粘度が5,000cpsになることを確認し、これを第1のタンクに投入した後、空気を1.2kg/cm
2の圧力で加えて、アルジネート菌体混合液を、内径が0.3mmである端部が切断型のノズルに通過させ、直径が1.7mmの球状に、第2のタンクに収容された1%塩化カルシウム液に落とした。
【0077】
(3)固定化ビーズの形成
【0078】
ノズルから放出されたビーズは、ノズルの液体放出口との距離が0.6m離れた塩化カルシウム液に空気を注入しながら(air bubbling)落とし、冷却タンクに移送させて2℃で24時間硬化させた。
【0079】
前記酵素固定化ビーズの製造工程及び装置は
図3に示した。
【符号の説明】
【0080】
[装置]
a:第1のタンク部
b:第2のタンク部
c:ノズル部
d:ノズルの上端部
e:ノズルの下端部
[装置]
1:混合液投入
2:空気投入
3:ノズルの上端部の混合液投入口に混合液注入
4:ノズルの下端部の液体放出口から固定化ビーズ放出・滴下
5:第2のタンク部内の塩化カルシウム液に固定化ビーズ滴下