(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、美容器の一実施形態を図面に従って説明する。
図1〜
図3に示すように、この実施形態の美容器11は、全体としてほぼハート形の扁平形状を呈している。美容器11の本体12は合成樹脂よりなり、その一側面には、本体12の外形と相似形をなす側面ほぼハート形の第1電極13(
図1参照)が固定されている。
図2に2点鎖線で示すように、本体12の他側面を形成する蓋板125は本体フレーム(図示しない)の一部に対する爪(図示しない)の係合により着脱可能に構成されている。
【0010】
本体12には、一縁部としての第1縁部121と、その第1縁部121に隣接する他縁部としての第2縁部122とが設けられている。第1縁部121は本体12の長手方向に沿って緩い凹状の湾曲形状をなしている。第2縁部122は、複数(実施形態では2つ)の凸状湾曲部123を並設することによって構成されている。第2縁部122の各凸状湾曲部123は第1縁部121より短く形成され、その曲率は、第1縁部121の曲率より大きい。両凸状湾曲部123間は狭くなっているとともに、両凸状湾曲部123間には大きな曲率の凹状湾曲部124が形成されている。
【0011】
図4及び
図5に示すように、第1縁部121は、人体肌の頬のカーブにほぼ沿った形状をなしており、本実施形態では第1縁部121の一部(より詳細には、後述するランプ19より先細形状側)が細幅帯状の第2電極14を構成している。そして、第1縁部121の、ランプ19より第2縁部122側の部分と、それに連なる第2縁部122全体が第3電極15を構成している。詳しくは後述するが、第1電極13と第2電極14、及び第1電極13と第3電極15との間にはそれぞれ電位差が形成される。
【0012】
図1に示すように、前記本体12内には、制御部17等を構成するマイコン等が回路基板18に搭載された状態で収納されている。また、本体12内には電源としての電池16が着脱可能に収容されている。この電池16は、前記蓋板125を開放することによって交換できる。
【0013】
図6に示すように、制御部17は、ドライバ171を介して第1電極13と第2電極14との間に基本的に一方極性の電流を流すイオン導入モードと、第1電極13と第3電極15との間に極性が交互に入れ替わる電流を流す微弱電流モードを実行するよう構成されている。ただし、イオン導入モードにおいては、一方の極性(マイナス)のパルス電流が所定数(例えば、10〜30回)供給されるごとに他方の極性のパルス電流が所定数(例えば、1〜3回)供給される。
【0014】
また、本体12は、発光ダイオード(LED)よりなる前記ランプ19を外装するとともに、バイブレータ20,21を内蔵している。ランプ19は、第1縁部121と第2縁部122との間の位置に配されている。このランプ19は、第1電極13と第2電極14との間の通電状態及び第1電極13と第3電極15との間の通電状態をそれぞれ異なる色で点灯表示する。また、一方のバイブレータ20は第2電極14に近接して配置され,他方のバイブレータ21は第3電極15に近接して配置されている。これらのバイブレータ20,21は、偏心分銅を有するモータよりなる。
【0015】
制御部17には、
図6に示すように、電池16、ランプ19、各バイブレータ20,21が接続されるとともに、ドライバ171、検出部172を介して各電極13,14,15に接続されている。制御部17は、これら各部の制御を動作可能に構成されている。ドライバ171は、各電極13,14,15間に電流を供給する機能、第1電極13から人体に流れる電流を取り込み、電池16のマイナス極へと電流を還流させる機能等を備えている。
【0016】
ドライバ171は、各電極間に電流を一定値に保つ定電流回路を備え、第1電極13と第2電極14との間には、イオン導入用の電流値、第1電極13と第3電極15との間には、微弱電流用の電流値を設定可能に構成されている。更にドライバ171は、第1電極13と第2電極14の間、第1電極13と第3電極15との間に供給する電流のオンオフ及び極性を制御する機能を有している。
【0017】
本例のドライバ171は、第1電極13、第2電極14及び第3電極15と、人体との接触状態に応じて美容器11の動作を変更する機能を備えている。つまり、本例のドライバ171は、第1電極13及び第2電極14の双方と人体とが接触している場合には、
図7に示すイオン導入モード(リセットパルス含む)を実行するように美容器11の動作を制御する。同様に、第1電極13及び第3電極15の双方と人体とが接触している場合には、制御部17及びドライバ171は
図8に示す微弱電流モードを実行するように美容器11の動作を制御する。一方、第1電極13と第2電極14の少なくとも一方、または第1電極13と第3電極15の少なくとも一方が人体と接触していない場合には、制御部17及びドライバ171は各電極と人体とが接触していないことを検知して、美容器11の動作を停止制御する。人体との接触状態は、第1電極13から出力した検出信号が、第2電極14、又は第3電極15に入力されるか否かで判断している。つまり、人体の一部位(例えば手の指)が第1電極13に接触し、第2電極14または第3電極15と人体の他部位(例えば頬)とが接触していれば、人体を介して、閉回路(外部回路)が形成され、第2電極14または第3電極15に検出信号が微弱になった状態で入力される。そして、第1電極13と第2電極14または第3電極15とに人体が接触していなければ、上記検出信号は、第2電極14又は第3電極15に入力されることはない。検出部172は上記検出信号が第2電極14又は第3電極15に入力されたか否かを検出して、制御部17及びドライバ171は美容器11の動作を制御している。
【0018】
なお、第1電極13と、第2電極14及び第3電極15のいずれもが人体に接触した場合には、第1電極13と第2電極14とが人体に接触したと判断する制御がなされる。
また、制御部17は、第1電極13及び第2電極14、または第1電極13及び第3電極15が人体と接触していると判断された場合に、ランプ19及び対応するバイブレータ20,21を駆動させる駆動信号を出力するよう構成されている。
【0019】
次に、前記のように構成された美容器の作用を
図9のステップS1〜S10(以下、「ステップ」を省略する)よりなるフローチャートを参照しながら説明する。
この美容器11を使用しない待機状態においては、制御部17及びドライバ171は、人体検知のために、第1電極13と、第2電極14及び第3電極15との間にパルス電流を供給する。そして、この待機状態においては、検知用のパルス電流は連続ではなく、一定時間間隔で供給されるため、低消費電力モードが設定されて(S1)、電力の無駄な消費が回避される。これにより、当該検知用のパルス電流に基づく検出信号が第2電極14又は第3電極15に入力されたか否かを検出部172が検出して人体肌を検知する肌検知動作が開始される(S2)。
【0020】
この美容器11を用いて、人体肌Sにおける広い部位、例えば顔面の頬Cや額等をマッサージする場合、使用者は、美容器11を使用する前に、予め負の電荷を帯びた美容成分を肌に塗布しておく。なお、本例において、上記美容成分としては、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウムが使用される。続いて、
図4に示すように、本体12を第1縁部121及び第2縁部122と反対側の縁部から把持すると、指Fが第1電極13に当接される。この状態で、本体12上の凹状に湾曲した第1縁部121を頬C等に接触させながら肌面に沿って移動させることにより、第1縁部121の凹状湾曲面により、頬C等が物理的にマッサージされ、血流促進やリンパ流改善が可能になる。
【0021】
このとき、第1縁部121に設けられた第2電極14が頬C等に当接されるため、第1電極13と第2電極14との間が人体を介して通電可能な状態になる。これにより、ドライバ171の検出部172は上記検出信号が第2電極14に入力されたことを検出し、肌が検知される(S3)。そして、上記検出信号は第2電極14に入力されたことから(S4)、ドライバ171により第1電極13と第2電極14との間に
図7に示す負極性のパルス電流が供給されて、イオン導入モードが開始される(S5)。
【0022】
このように負の電荷を帯びた美容成分を含む化粧水等を頬C等にあらかじめ塗布しておけば、その美容成分と美容器11からのパルス波とが反発し合い、頬C等の肌S内に浸透させやすくなる。このように、美容器11による物理的なマッサージだけでなく、それと同時に肌内部への美容成分の浸透を促進させるといった相乗的な美容効果を期待できる。
【0023】
そして、第2電極14が長く、緩やかに凹状に湾曲しているため、第2電極14全体を頬C等に接触させて広い範囲を同時にマッサージできる。従って、短時間で簡単にマッサージすることができる。
【0024】
また、前記第1電極13と第2電極14との間に負極性のパルス電流が供給されている間は、ランプ19が所定の色(例えば青色)で点灯されて、両電極13,14間が通電している状態(通電状態)であることが表示される。それとともに、本体12内の第1縁部121側のバイブレータ20が作動されて、両電極13,14間が通電状態であることが振動により報知される(S5)。このため、両電極13,14間が通電状態であることを、ランプ19の点灯表示及びバイブレータ20の振動報知によって適切に確認することができる。そして、本体12の第1縁部121上の第2電極14が頬C等から離間されたとき、第1電極13と第2電極14との間が通電していない状態(非通電状態)になって、両電極13,14間へのパルス電流の供給が停止されるとともに、ランプ19及びバイブレータ20の作動が停止される(S6、S7)。
【0025】
次に、この美容器11を用いて、人体肌Sにおける狭い尖った部分、例えば顔面の顎Jや鼻等をマッサージする場合には、前記の場合と同様に、本体12に設けられた第1電極13に指Fを当接させるようにして本体12を把持する。この状態で、
図5に示すように、本体12上の第2縁部122を顎J等に対して、隣接した一対の凸状湾曲部123で顎J等の部分を前後から挟むように当接させる。その後、本体12を顎J等に沿って後方に移動させると、第2縁部122の両凸状湾曲部123により、顎J等の部分が物理的にマッサージされる。
【0026】
このとき、第2縁部122上の第3電極15が顎J等に当接されて、第1電極13と第3電極15との間が人体を介して通電可能な状態になる。これにより、ドライバ171の検出部172は上記検出信号が第3電極15に入力されたことを検出し、肌が検知される(S3)。そして、上記検出信号は第2電極14ではなく第3電極15に入力されたことから(S4)、制御部17及びドライバ171の制御により、両電極13,15間に
図8に示す微弱電流モードが開始される(S8)。この微弱電流モードでは、
図8に示すように、正極性と負極性が交互に入れ替わる矩形波をなすパルス電流が供給される。この微弱な電流を与えつつ、隣接した一対の凸状湾曲部123間で顎Jのラインに沿って本体12を移動させてマッサージすることにより、単にマッサージするだけの場合と比較して、肌の活性化作用等の相乗効果が期待できる。
【0027】
そして、この場合、第3電極15は凹状湾曲部124の両側が突出しているために、顎J等の尖った部分であっても、第3電極15を同部分から外れたり、滑り落ちたりすることなく、安定させてマッサージを行うことができる。
【0028】
さらに、この第1電極13と第3電極15との間へのパルス電流の供給時には、ランプ19が前記の場合とは異なった色(例えばピンク)で点灯されて、両電極13,15間の通電状態が表示される。それとともに、本体12内の第2縁部122側のバイブレータ21が作動されて、両電極13,15間の通電状態が振動により報知される。このため、両電極13,15間の通電状態を、ランプ19の点灯表示及びバイブレータ21の振動報知によって適切に確認することができる。そして、第2縁部122に形成された第3電極15が顎J等から離間されたとき、第1電極13と第3電極15との間が非通電状態になって、両電極13,15間へのパルス電流の供給が停止される(S9、S10)。
【0029】
また、前記とは逆に、第2電極14によって顎J等の狭い部分を、第3電極15により頬C等の広い部分をそれぞれマッサージすることも可能である。
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0030】
(1)把持可能な本体12の側面に第1電極13が設けられている。本体12の他の部分には緩やかな凹状に湾曲した縁部121が設けられている。その縁部121には人体肌Sに当接可能であるとともに、第1電極13との間に電位差が形成される長い第2電極14が設けられている。
【0031】
このため、この美容器11においては、本体12に設けられた第1電極13に指Fを当接させるように本体12を把持した状態で、凹状に湾曲した縁部121を人体肌Sにおける頬C等の広い部分に接触させながら移動させることにより、頬C等の広い部分を短時間でマッサージすることができる。このとき、第1電極13と第2電極14との間に負極性のパルス波を主としたイオン導入モードが実施される。この頬C等の施術部分に予め負に帯電した美容成分を塗布しておけば、美容器11による物理的なマッサージ効果だけでなく、所謂イオン導入法による美容成分の浸透効果も期待できる。
(2)美容器11は、第1電極13と第2電極14(または第3電極15)との双方が人体と接触していると判定された場合に、イオン導入モード(または微弱電流モード)を開始させる手段を有している。そのため、イオン導入モード(または微弱電流モード)の作動と停止との切り替えのためのスイッチを美容器1に設ける必要がない。
【0032】
このため、使用者がスイッチ操作をする必要がなく、使用しやすいものとなる。また、美容器1にスイッチを配設する必要がなくなることは、部品点数の低減効果や、美観を維持するといった副次的な効果も期待できる。
【0033】
(3)前記本体12の他の部分に前記縁部121と異なる大きな曲率で湾曲する第2縁部122が並設されている。その第2縁部122には人体肌Sに当接可能であるとともに、第1電極13との間に電位差が形成される第3電極15が設けられている。
【0034】
このため、人体肌Sにおける頬C等とは異なった顎J等の狭い部分をマッサージする場合に好適なマッサージ効果を得ることができる。特に、第3電極15は凹状湾曲部124の両側が突出しているために、顎J等の尖った部分であっても、第3電極15が同部分から外れたり、滑り落ちたりすることなく、安定させてマッサージを行うことができる。
【0035】
(4)前記本体12が扁平状に形成され、前記第1電極13が本体12の側面に設けられている。
このため、美容器11の使用に際して本体12を摘むようにして把持した場合に、第1電極13に対して指Fを自然に当接させることができる。また、美容器11の不使用時には、第1電極13が上方側となるように本体12を机上等に載置すれば、第1電極13が本体12の縁部121,122に設けられた第2電極14及び第3電極15と短絡するおそれを最小限に抑えることができる。
【0036】
(5)前記本体12に第1電極13と第2電極14及び第3電極15との間の通電状態を表示するランプ19が設けられている。このため、ランプ19の点灯表示により、第1電極13と、第2電極14又は第3電極15間の通電状態を容易に確認することができる。
【0037】
(6)前記本体12に第1電極13と、第2電極14又は第3電極15との間の通電状態を報知するバイブレータ20,21が設けられている。
このため、バイブレータ20,21の報知動作によって、電極13,14,15間の通電状態が把持している手の感触を通じて容易に確認される。また、バイブレータ20,21から発生する振動により、電極14,15と肌の接触部分及びその周辺部分は、リンパの流れがよくなったり、血行が促進されたり、新陳代謝が向上されたりする等の効果を得られる可能性がある。その結果、美容器1は、体感できる美容効果をより向上させることができるものとなる。
【0038】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・第3電極15を設けないようにすること。
・第2電極14から微弱電流モードが付与されるようにするとともに、第3電極15からイオン導入モードが付与されるようにすること。あるいは、第2電極14及び第3電極15から付与されるパルス波が、いずれもイオン導入モードが付与されるようにすること、またその逆の微弱電流モードが付与されるようにすること。
・第3電極15の位置(第2縁部122)に、第2電極14を設け、第3電極15を設けないようにすること。
・上記以外にも第2電極14、及び/又は第3電極15に付与するモードを変更すること。例えば、電流の流れを第2電極14又は第3電極15から流れるようにし、肌内部に存在する電荷を帯びた汚れや老廃物等を電位差によって肌表面に移動させて除去するイオン導出モード、低周波パルスを付与するEMS(Electro Muscle Stimulation)モード、等電気的刺激により美容効果が期待できるものであればよい。
・本体12の形状を変更すること。例えば、本体12を凹状の湾曲縁部及び凸状の湾曲縁部を有する三日月形にして、一方の縁部に第2電極を、他方の縁部に第3電極を設けること。
・本例の美容器1は、付加機能として電極と肌との接触検知機能を有しているが、これらの機能を有していない美容器であっても、肌に通電する電流波形を制御することによって美容効果の向上が見込めることは言うまでもない。