(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紡績糸が、前記紡績糸の総重量に基づいて、85重量%〜90重量%の疎水性成分と、前記紡績糸の総重量に基づいて、10重量%〜15重量%の親水性成分と、を含む、請求項1に記載の紡績糸。
前記親水性成分が、前記紡績糸の総重量に基づいて、10重量%〜15重量%の、セルロース、セルロース誘導体、コットン、リネン、レーヨン、耐火性レーヨン、ウールおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される親水性繊維からなる、請求項7に記載の紡績糸。
【背景技術】
【0003】
耐炎性織物(「FR」、「耐火性」、「遅炎性」、および「難燃性」織物とも様々に称される)は、一端発火すると、発火源が取り除かれると炎を持続しない傾向がある織物である。多くの研究は、衣類および寝具を含む種々の製品に使用するための耐炎性織物の開発および改善のために行われた。耐炎性衣類は、工業製造および加工(例えば、石油、ガス、および製鉄業)、消防、電力業務、軍事業務、および裸火、突発的火事、瞬間的電気アーク、および/または溶融金属のしぶきに曝露される重大な危険を伴う他の試みのような活動に関与する作業者により着用される場合が多い。非耐炎性作業着は、発火する可能性があり、発火源が取り除かれた後も燃焼し続ける。未処理の天然織物は、その織物が完全に消費されるまで燃焼し続け、非耐炎性合成織物は、溶融および滴下を伴って燃焼し、皮膚に重度の接触熱傷を引き起こす。著しい量の重度および致命的熱傷傷害は、曝露自体によるのではなく、個人の衣類が発火し、燃焼し続けることに起因する。穴および裂けのような障害が発生した衣服は、その織物の防護特性を損ない得るため、防護織物の耐摩耗性も重要である。
【0004】
耐炎織物は、耐炎性となるように処理された織物、および本質的に耐炎性の繊維から作製された織物の両方を含む。前者の種類の織物は、それ自体が耐炎性でないが、織物を耐炎性にする化学組成物をその織物に適用することにより耐炎性になる。これらの種類の織物は、耐炎性組成物が、一般的な洗濯添加物により洗い流され、および/または影響を受ける傾向があるため、繰り返しの洗濯でそれらの耐炎性を失いやすい。対照的に、本質的に耐炎性の織物は、それら自体が耐炎性である繊維から作製されているため、この欠点に悩むことはない。耐炎性衣類の使用は、衣服により被覆された身体領域に熱防護を提供する。防護レベルは、典型的に、織物の重量、構造、および組成物に基づく。発火源が取り除かれた後、耐炎性衣服は自己消化し、身体熱傷の割合を限定する。
【0005】
耐炎性織物は、低い割合の天然繊維を含み得、水の吸着のような限定された快適性を有し得る。耐炎織物は、作業環境において最も頻繁に着用され、皮膚からの汗の吸収を含む快適性は、特に消防のような極限状態において重要な性能因子である。いくらかの割合の天然親水性繊維をFR繊維と合わせることは、快適性および水分ウィッキングにおいていくらかの改善を提供し得るが、これは、典型的にFR性能特性の喪失に至る。アラミド繊維を含むほとんどのFR繊維は、疎水性であり、高い快適性を提供しない。しかしながら、高濃度の親水性繊維を付加することは、水分管理特性および/または耐火特性にマイナスの影響を及ぼし得る。さらに、高い含有率の親水性繊維を有する繊維から作製された衣服は、汗のような水分で過剰飽和状態になり得、高温への曝露時に蒸気熱傷を引き起こし得る。
【0006】
さらに、メタアラミドおよび/またはパラアラミド繊維を含む高い割合のアラミド繊維で作製された織物は、典型的に剛性であり、乏しい柔軟性またはドレープ特性を有し、概して着心地が良くない。高い割合のアラミド繊維で作製された織物の柔軟性は、繰り返しの洗浄により改善され得るが、より疎水性になる傾向がある。したがって、多くの工業労働者、パイロット、および緊急応答者は、快適性を高めるために高い割合のアラミド繊維で作製された衣服を繰り返し洗浄し、新品の衣服を最初に使用する前に何度も洗浄することもある。あいにく、これらの衣服の多くは、繰り返しの洗浄で効果を喪失し得る疎水性および/または親水性コーティングで作製される。したがって、洗浄処理された衣服は、改善された柔軟性を有し得るが、水分管理特性は減少し得る。
【0007】
様々な種類の本質的FR繊維が開発され、モダクリル繊維(例えば、Kaneka Corporation(Osaka,Japan)からPROTEXという名称で販売されているモダクリル繊維、およびFormosa Plastics(Taiwan)により販売されているモダクリル繊維)、PyroTex(Hamburg,Germany)という名称で販売されているアクリル系FR繊維、アラミド繊維(例えば、NOMEXという名称で販売されているメタアラミド繊維およびKEVLARという名称で販売されているパラアラミド繊維、ともにE.I.Du Pont de Nemours and Company (Wilmington,Delaware)、FRレーヨン繊維(Lenzing Group(Austria)からLenzing FRという名称で販売されている)、酸化ポリアクリロニトリル繊維、および他が挙げられる。1つ以上の種類のFRスフを1つ以上の他の種類の非FRスフと混合して、糸が紡績される繊維混合物を生産することは一般的であり、次にその糸は、種々の適用のための織物に編まれるか、または織られる。そのような繊維混合物において、アンチモンおよびハロゲン充填繊維の場合、FR繊維が熱および火炎に曝露されるとき、それらが酸素を置換し、それによりあらゆる火炎を消す傾向がある不燃性ガスを放出するため、FR繊維は、その混合物中の一部の繊維が、それ自体非FR繊維であるとしても、その混合物を耐炎性にする。炭形成、および高い限界酸素指数(LOI)に加えて、多くのFR繊維は不良な熱導体である。非充填FR繊維の場合、高い割合のFR繊維は炭を形成するか、または着用者に防護を提供する他の特徴を呈する。
【0008】
織物の上記性能仕様に加えて、織物が特に衣類に対して実用的であり、かつ商業的に実現可能である場合、他の特性も重要である。例えば、この織物は、繰り返しの業務用洗濯および家庭での洗濯に耐久性であるべきであり、良好な耐摩耗性を有するべきである。さらに、織物は、快適な着心地でなければならない。あいにく、FR混合物の多くは、典型的な環境条件下で快適ではない。そのような場合、着用者は、順守する可能性が低くなる傾向があり、それにより着用者がその衣服を意図されたように使用し続ける可能性を減少させる。したがって、FR織物が良好な水分管理特性、すなわち、汗を逃がし、速やかに乾燥する能力を呈する場合に有益であり、着用者は、加熱状態または冷却状態にならず、および/または織物は、着用者の皮膚を刺激しない。
【0009】
さらに、多くの本質的FR繊維および特にほとんどのアラミド型FR繊維は、染料受容性でない。ほとんどの適用において、染料受容性であるか、または「プリント可能な」FR織物を有することが望ましい。場合によっては、生産者により着色されている繊維が購入され得るが、これは、織物製造者に入手可能な色オプションを限定する。
【0010】
記載される複数の要件を満たす一方で手頃な価格の繊維混合物の選択は、絶えず課題である。いくつかの(FR)繊維、および特に耐熱収縮性である本質的FR繊維は、本明細書に定める通り、比較的高価であり、高い割合のこれらの繊維を糸および織物に織り込むことは、多くの適用に対して法外な費用となり得る。
【0011】
FR織布は、NFPA 2112を含むFR試験プロトコル、および特に熱収縮試験の要件を満たすために良く適している。織布は、比較的密であり、糸の間に空隙容積がほとんどなく、その中で熱収縮する傾向を低減する。編物のような他の種類の織物構造は、それらが典型的により高い多孔性を有するため、より快適な着心地であり得る。しかしながら、編地は、熱収縮要件を満たさないことがある。編地中の糸はループ状であり、したがって従来の織布中の糸ほど拘束されないため、より収縮することができる。
【0012】
そこで、ともに耐炎性であるが、着用者の遵守を改善するように優れた水分管理特性および強度特性も提供する紡績糸、およびそれから作製された織物または衣服に対する必要性が存在する。さらに、繰り返しの洗濯前に着用するのに快適である、本質的FR繊維で作製された耐炎性衣服に対する必要性が存在する。さらに、染料受容性であり、および/または色もしくはパターンをその上にプリントすることができる、紡績糸およびそれから作製された耐炎性織物に対する必要性が存在する。本発明の繊維混合物、糸、織物、および衣服は、これらならびに他の重要な目的に向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これらの図面は、本発明の実施形態のうちのいくつかの図を表し、いかなる方法においても本発明の範囲を限定すると見なされるものではない。さらに、これらの図面は必ずしも原寸に比例するとは限らず、いくつかの特徴は、特定のコンポーネントの詳細を示すために誇張され得る。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定すると解釈されるものではないが、単に本発明を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるものである。
【0023】
本開示の上記および全体で採用されるように、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有することが理解されるべきである。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはこれらのあらゆる他の変形は、非排他的な包括を網羅することを意図する。例えば、要素の一覧を含む工程、方法、項目、または装置は、必ずしもこれらの要素のみに制限されず、かかる工程、方法、項目、または装置に明示的に列挙または内在されない他の要素を含み得る。また「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載の実施形態の要素およびコンポーネントについて記載するために採用される。これは単に便宜のため、および本発明の範囲の大まかな要旨を付与するために行われるものである。本願は、1つまたは少なくとも1つを含むように読み取られるべきであり、また単数は、そうでないことが意味されていることが明白でない限り、複数を含む。
【0025】
本明細書で用いられる場合、紡績糸、織物、またはそれから作製された衣服のような物品に関して、「から本質的になる」という用語は、その糸、織物、または物品が、ポリマーのような記載のコンポーネント(複数可)、材料、または繊維の種類で主に作製され、少量、5重量%未満の追加の処理、コーティング、または仕上げを含み得る。
【0026】
本明細書で用いられる場合、織物に関して、「から実質的に形成される」という用語は、その織物が、織物の総重量に基づいて、特定の繊維混合物または紡績糸組成物の少なくとも50重量%、好ましくは、織物の総重量に基づいて少なくとも75重量%、または好ましくは、織物の総重量に基づいて少なくとも80重量%、およびより好ましくは、織物の総重量に基づいて少なくとも90重量%を含むことを意味する。本明細書に記載の織物は、種々の適用に必要とされるように、追加のコーティングまたは添加物を含み得ることを理解されたい。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「アラミド繊維」という用語は、繊維形成物質が、長鎖合成ポリアミドであり、アミド結合(−CO−NH−)の少なくとも85%が、パラアラミド(p−アラミド)およびメタアラミド(m−アラミド)を含むが、これらに限定されない2つの芳香族環に直接付着している、人造繊維を指す。アラミド繊維は、防弾チョッキおよびラジアルタイヤの材料に用いられる、炭素骨格から分岐する繰り返し芳香族基を持つポリマーで形成された強力な耐熱性繊維である。ポリアラミドとも呼ばれる。パラアラミドの例としては、(ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、例えば、KEVLAR(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company)、TWARON(登録商標)(Teijin Twaron BV)、およびTECHNORA(Teijin Company)が挙げられるが、これらに限定されない。KEVLARは、28〜32グラム/デニールの非常に高い引張り強さ、および顕著な耐熱性を有するパラアラミド繊維である。メタアラミドの例としては、(ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、例えば、NOMEX(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company)、およびCONEX(登録商標)(Teijin Twaron BV)が挙げられるが、これらに限定されない。KEVLARとは異なり、Nomexは、フィラメント形成中に整列することができず、典型的に、パラアラミドまたはKEVLARほど強力ではない。しかしながら、メタアラミドは、優れた耐熱性、耐化学性、および耐放射線性を有する。好ましくは、本明細書に記載の繊維混合物は、構造的繊維を含む。構造的繊維の一例は、p−アラミド、マイクロデニールp−アラミドである。そのような構造的繊維は、優れた熱安定性を特徴とし、高度に不燃性である。これらの繊維は、非常に高い耐熱性を有し、少なくとも700°Fの温度での溶融、滴下、および燃焼に耐える。さらに、それらの限界酸素指数(LOI)値は、好ましくは、約28〜約30の範囲内である。このLOIは、材料の燃焼を持続するために必要なO
2/N
2混合物の最小酸素濃度を表す。LOIは、ASTM試験D 2862−77により決定される。メタアラミドおよびパラアラミドは、本質的に疎水性であるが、場合によっては、少なくとも一時的にそれらを親水性にするように処理され得る。例示の実施形態において、本明細書に記載の繊維混合物は、大部分がアラミド繊維、例えば、約60%のメタアラミドおよび約10%のパラアラミドで構成される。
【0028】
ほとんどのアラミド繊維は、染料受容性でなく、繊維混合物に高濃度で組み込まれるとき、織物に可能な色範囲を著しく限定し得る。しかしながら、いくつかのアラミド繊維は、プリント可能であるか、または染料受容性である。例えば、低結晶化型メタアラミド繊維、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能なNomex 462は、プリント可能なメタアラミドである。さらに、いくつかのメタアラミド繊維は、生産者により着色されたメタアラミドとして入手可能であり、繊維は、その繊維の製造中に着色される。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「モダクリル繊維」という用語は、アクリロニトリルの残基、特に35%〜85%のアクリロニトリル単位を有するポリマーを主に含み、他のモノマーにより修飾され得るポリマーから作製されたアクリル合成繊維を指す。モダクリル繊維は、広範囲のアクリロニトリルのコポリマーから紡績される。モダクリル繊維は、ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されない他のモノマーの残基を含有し得る。この広いカテゴリー内で生産され得るモダクリル繊維の種類は、それらの組成物に依存して、特性の広い変動が可能である。FRアクリル誘導体繊維としては、本明細書で用いられる場合、本明細書に記載のモダクリル繊維、およびPyro−Tex(Hamburg,Germany)という名称で販売されているアクリルFR繊維を含む、アクリルモノマー単位を含む任意の繊維が挙げられる。一般に入手可能なモダクリルのいくつかの例は、Kaneka CorporationによるPROTEX(商標)、KANEKALON(商標)、KANECARON(商標)である。モダクリル繊維は、非溶融、非滴下、および自己消化特性と合わせて、優れた難燃性能を有する。モダクリルは、他の繊維と比較して、いわゆる高いLOI値を有する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「制電性繊維」または導電性という用語は、織物または他の材料に組み込まれたとき、静電気を排除または低減する繊維を指す。好適な繊維としては、金属繊維(鋼、銅、または他の金属)、金属めっきポリマー繊維、および繊維の表面および/または内部にカーボンブラックを組み込むポリマー繊維、例えば、米国特許第3,803,453号、米国特許第4,035,441号、米国特許第4,107,129号等に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。制電性炭素繊維は、好ましい制電性繊維である。導電性繊維の一例は、E.I.du Pont de Nemours and Companyにより生産されるNEGASTAT(登録商標)、ナイロンまたはポリエステルのいずれかである非導電性ポリマーカバーにより囲まれた導電性炭素の炭素コアを含む炭素繊維である。別の制電性繊維の例は、Shakespeare Conductive Fibers LLCから入手可能なRESISTAT(登録商標)であり、微細な炭素粒子がナイロンフィラメントの表面にエンボス加工された繊維である。例として、Bekaert S.A.からBEKINOXおよびBEKITEXという名称で、直径わずか0.035ミリメートルの鋼線が入手可能である。別の制電性繊維は、Noble Fiber Technologiesにより作製されたX−静電製品、金属(銀)層でコーティングされたナイロン繊維である。X静電繊維は、紡績の工程において、メタアラミドのような他の繊維と混合され得る。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「ナイロン繊維」という用語は、ポリアミド合成ポリマーから本質的になる繊維を指す。ポリアミドは、高い耐摩耗性および靭性を有する熱可塑性物質である。ナイロン繊維の繊維混合物への付加は、織物の耐摩耗性を高め得る。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「セルロース誘導体繊維」という用語は、実質的な濃度のセルロース、および/またはセルロース誘導体材料を含む繊維を指す。セルロース誘導体繊維は、綿、セルロース、セルロース誘導体、レーヨンを含むが、これらに限定されない任意の好適な種類のセルロース誘導体繊維、またはその組み合わせを含み得る。セルロース誘導体繊維は、それを耐炎性にする処理を含み得る。ほとんどの場合、セルロース誘導体繊維は、本質的に親水性である。しかしながら、セルロース誘導体繊維は、その繊維を疎水性、親水性、または疎油性にする処理を含み得る。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「親水性」という用語は、それが織物を指すとき、織物が約20秒未満の水平ウィッキングを有することを意味する。糸または糸の混合物は、それから作製された織物が、水平ウィッキングのためのAATCC 79試験方法に基づいて、約10秒未満、およびより好ましくは5秒未満の水平ウィッキング時間を有するとき、親水性であると見なされ得る。例示の実施形態において、親水性繊維成分は、セルロース、セルロース誘導体、ウール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される親水性繊維から本質的になる。例示の実施形態において、親水性繊維は、セルロース、セルロース誘導体、ウール、FRアクリル誘導体繊維、およびこれらの組み合わせから本質的になる。
【0034】
本明細書で用いられる場合、繊維、糸、およびそれから作製された織物に関して、「耐熱収縮性」という用語は、該織物が、NFPA 2112−0.7 Ed、節8.4の耐熱収縮性要件を満たすことを意味し、本明細書に記載の試験に従い、10%未満の収縮を有する。
【0035】
いくつかの特別の繊維は、耐熱収縮性であり、繊維混合物に組み込まれるとき、糸またはそれで作製された織物が熱収縮要件を満たすのを許すために十分な耐熱収縮性を提供し得る。好適な耐熱収縮性繊維としては、FRアクリル誘導体繊維(例えば、PyroTex(Hamburg,Germany)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド繊維(例えば、NOMEXという名称で販売されているメタアラミド繊維、およびKEVLARという名称で販売されているパラアラミド繊維、ともにE.I.Du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)、および同様のFRレーヨン(FR Cotton,Basofill)等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、耐熱収縮性繊維は、親水性および/または染料受容性であり得、本明細書で用いられる場合、その繊維が染料を受容し、その繊維に色を実質的かつ耐久的に付与し得ることを意味する。繊維に色を耐久的に付与することは、その繊維が、3回以上の洗浄サイクル後、および好ましくは10回以上の洗浄サイクル後、より好ましくは25回の洗浄後に、色を実質的に保持することを意味する。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「基礎重量」という用語は、単位面積当たりの織物の重量の測定値を指す。典型的な単位としては、1平方ヤード当たりのオンスおよび1平方センチメートル当たりのグラムが挙げられる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、垂直ウィック高さに関して、耐久性という用語は、30回洗浄垂直ウィッキング高さと、洗浄前垂直ウィッキング高さと、を1から引いた割合差の絶対値である。
1−|(VWH
30−VWH
pw)/VWH
pw)|
式中、VWH
30は、30回洗浄後の垂直ウィッキング高さであり、VWH
pwは、洗浄前の垂直ウィッキング高さである。
【0038】
耐久性に対する用語および計算は、水平ウィッキング、含浸量、WRR、快適帯WRR、総乾燥時間、快適帯乾燥時間、乾燥摩耗、湿潤摩耗、残炎時間、炭化長、予測熱傷率、寸法安定性、耐パイリング性、マーティンデール摩耗等が挙げられるが、これらに限定されない他の性能メトリックスにも同様に適用され得る。さらに、耐久性は、洗浄前試料および例えば、5回洗浄を含む任意の回数の洗浄後の試料に対するデータを使用して計算され得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、重量%という用語は、特に断りのない限り、紡績糸の総重量に基づく重量%を指す。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「衣服」という用語は、人により着用される衣類または衣類付属品の任意の物品を指し、シャツ、ズボン、肌着、上着、履物、被り物、水着、ベルト、手袋、ヘッドバンド、靴下、目出し帽、およびリストバンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「リネン」という用語は(親水性繊維に関連しないとき)、作業者または作業者により使用される座席装置を被覆するために用いられる任意の物品を指し、シート、ブランケット、クッションカバー、車両クッションカバー、およびマットレスカバーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「均質に混合された」という用語は、糸と併せて使用されるとき、糸中のスフ成分の統計的にランダムな混合を指す。
【0043】
本発明は、概して、繊維混合物を含む紡績糸に関し、着用者に対して防護および快適性の両方を提供するように、耐炎性および耐熱収縮性を含む高い熱特性、ならびに水分管理特性のバランスを達成する紡績糸を含む、織物および衣服に関する。さらに、本発明の紡績糸、織物、またはそれから作製された物品は、染料受容性であり得、および/またはその上にプリントすることができる。さらに別の実施形態において、明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、耐炎性であり、少なくとも4cmの垂直ウィッキング高さと、40分未満の快適帯乾燥時間と、を有する高い水分管理特性を有する。
【0044】
したがって、一実施形態において、本発明は、紡績糸およびそれから作製された織物を対象とし、約44重量%〜80重量%のメタアラミド繊維と、約0重量%〜15重量%のナイロン繊維と、約5重量%〜15重量%のパラアラミドと、約2重量%〜5重量%の制電性繊維と、約10重量%〜15重量%の親水性繊維と、を含み、繊維は均質に混合されている。例示の実施形態において、紡績糸は、約85重量%〜90重量%の疎水性成分と、約10重量%〜15重量%の親水性成分と、を含む。いくつかの実施形態において、メタアラミド成分は、染料および/またはプリントを受容するために特異的に設計されたプリント可能なメタアラミドである。プリント可能なメタアラミドは、低結晶化型メタアラミドを含み得る。Nomex 462は、E.I.Dupont Nemours(E.I.du Pont de Nemours)(Wilmington,DE)から入手可能なプリント可能型メタアラミドである。別の例示の実施形態において、生産者により着色されたメタアラミドは、本明細書に記載される繊維混合物中に用いられ得る。さらに、プリント可能であり、生産者により着色されたメタアラミドの任意の組合せは、繊維混合物中に用いられ得る。例示の実施形態において、繊維混合物のパラアラミド繊維成分は、染色または着色されたパラアラミドである。例示の実施形態において、紡績糸のメタアラミド繊維成分は、その紡績糸の総重量に基づいて、約60重量%〜63重量%のレベルで存在し得る。紡績糸のナイロン繊維成分は、その紡績糸の総重量に基づいて、約10重量%〜12重量%のレベルで存在し得る。紡績糸のパラアラミド繊維成分は、その紡績糸の総重量に基づいて、約10重量%〜12重量%のレベルで存在し得る。紡績糸の制電性繊維成分は、その紡績糸の総重量に基づいて、約2重量%〜3.5重量%のレベルで存在し得る。紡績糸の親水性繊維成分は、その紡績糸の総重量に基づいて、約12重量%のレベルで存在し得る。メタアラミド繊維は、紡績糸中に任意の好適な濃度、紡績糸の重量で含まれ得、60%以上、63%以上、65%以上、70%以上、ならびに提供される範囲の間およびそれを含む任意の濃度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
一実施形態において、本明細書に記載の紡績糸は、約55重量%〜70重量%のメタアラミド繊維と、約7重量%〜15重量%のナイロン繊維と、約5重量%〜15重量%のパラアラミドと、約2重量%〜5重量%の制電性繊維と、セルロース、セルロース誘導体、ウール、FRアクリル誘導体繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される約10重量%〜15重量%の親水性繊維と、を含む。本明細書に記載の繊維混合物の親水性繊維成分は、任意の好適な種類の親水性繊維またはその組み合わせを含み得、セルロース、セルロース誘導体繊維、ウール、レーヨン、FRアクリル誘導体繊維、または親水性処理の付加により親水性になった繊維が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、繊維は本質的に親水性であり、それにより、それは親水性処理の付加なしに親水性である。セルロース誘導体は、綿、FR綿、ビスコース、リネン、リヨセル、レーヨン、耐火性レーヨン、またはこれらの組み合わせである。本明細書に記載の紡績糸のセルロース誘導体繊維は、綿、セルロース、リヨセル、セルロース誘導体、レーヨンを含むが、これらに限定されない任意の好適な種類のセルロース誘導体繊維、またはその組み合わせを含み得る。セルロース誘導体繊維は、ウールのように本質的に耐炎性であり得るか、またはそれを耐炎性にするように処理され得る。さらに、セルロース誘導体繊維は、疎水性または親水性であり得、その繊維を疎水性、親水性、または疎油性にする処理を含み得る。
【0046】
例示の実施形態において、本明細書に記載の紡績糸の制電性繊維成分は、導電性であり、例えば、炭素を含む。一実施形態において、制電性繊維は、ナイロンシースを持つ炭素繊維を含む。繊維の任意の好適な構成は、制電性繊維を形成するように使用され得る。
【0047】
パラアラミド繊維成分は、染色または生産者により着色されたパラアラミドであり得る。一実施形態において、パラアラミドおよびメタアラミドの両方が着色されている。記載の通り、メタアラミドは、生産者により着色され得るか、プリント可能であり得、それにより染料を受領し得る。
【0048】
本明細書に記載の紡績糸は、任意の好適な種類の織物に形成され得、水流交絡、フエルト、ニードルパンチ、熱結合または点結合、および湿式の織物、ならびに例えば、平織り、綾織り、デニム織り、および編地を含む織布が挙げられるが、これらに限定されない。織物は、任意の好適な種類の衣服、例えば、ズボン、シャツ、ジャケット、カバーオール、下着、フード、裏地材料等に形成され得る。例示の実施形態において、紡績糸は合撚され、それにより2つの糸が合撚されて、改善された柔軟性、および一方で同時に、同じ重量の単層糸に対して高い耐久性および強度を提供する。2本、3本、4本、5本、5本超等を含むが、これらに限定されない任意の好適な数の糸は、一緒に合撚され得る。別の例示の実施形態において、弾性フィラメントは、合撚糸に組み込まれ得、それにより弾性フィラメントは、その弾性フィラメントの周りの1本以上の紡績糸により基本的に被覆されるか、または包まれる。弾性フィラメントは、Spandex、シリコーン、フルオロエラストマー、ポリウレタン、FR修飾弾性ゴム等を含む、任意の好適な種類の弾性材料を含み得る。弾性フィラメントを有する糸は、それから作製された織物に二方向または四方向伸縮を提供し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の紡績糸は、耐炎性(FR)繊維混合物であり、それによりそれから作製された織物は、NFPA 2112要件を満たす。さらに、この織物は、少なくとも30%の最初の含浸量および/または30回洗浄サイクル後に少なくとも0.45%/分のWRRを有し得る。
【0050】
本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、それを受領された状態で快適な着心地にする最初の柔軟性を有し得、剛性を低減するために繰り返しの洗浄を必要としないことがある。
【0051】
本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、着用者に対する快適性を示す、水分管理特性、または水分管理特性の組み合わせを有する。さらに、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、耐久性水分管理特性、または洗浄により実質的に影響を受けない性能特性を有し得る。例えば、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、次の性能特性のうちのいずれか1つ、または特性の組み合わせを有し得る:5分で少なくとも約3.5cmの洗浄前垂直ウィッキング;30回洗浄後に5分で少なくとも約3.5cmの洗浄前垂直ウィッキング;約5秒未満の洗浄前水平ウィッキング;30回洗浄後に約5秒未満の水平ウィッキング;約60分未満の洗浄前総乾燥時間;30回洗浄後に約90分未満の総乾燥時間;約40分未満の洗浄前快適帯乾燥時間;30回洗浄後に約60分未満の快適帯乾燥時間;約30%を超える洗浄前含浸量;30回洗浄後に約30%を超える含浸量;30回洗浄後に60分未満の快適帯乾燥時間および少なくとも約3.5cmの垂直ウィッキング高さ;30回洗浄後に60分未満の快適帯乾燥時間および約5秒未満の水平ウィッキング時間;30回洗浄後に約30%を超える含浸量および少なくとも3.5cmの垂直ウィッキング高さ;約30%を超える洗浄前含浸量および約5秒未満の洗浄前水平ウィッキング時間;30回洗浄後に約30%を超える含浸量および約5秒未満の水平ウィッキング時間;1分当たり少なくとも約0.45%の洗浄前快適帯放水率(WRR);30回洗浄後に少なくとも約0.30%の快適帯放水率(WRR);1分当たり少なくとも約0.45%の洗浄前放水率(WRR);30回洗浄後に1分当たり少なくとも約0.35%の放水率(WRR);約30%を超える洗浄前含浸量、約5秒未満の洗浄前水平ウィッキング時間、および1分当たり少なくとも約0.45%の洗浄前快適帯放水率(WRR);30回洗浄後に約30%を超える含浸量、約5秒未満の水平ウィッキング時間、および1分当たり少なくとも約0.30%の快適帯放水率(WRR)。
【0052】
本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、本発明の織物の着用者に提供された熱防護を示す、熱特性、または熱特性の組み合わせを有する。本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、米国材料試験協会標準試験ASTM F 1930−2000に従い試験したとき、36%未満の予測全体熱傷を有する第2度および第3度熱傷に対して防護を提供する。例示の実施形態において、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、次の熱性能特性のうちのいずれか1つまたは熱特性の組み合わせ:米国材料試験協会標準試験ASTM 6413に従い試験したとき、約4.0インチ未満の炭化長;米国防火協会 NFPA 1971に従い試験したとき、約8%未満の耐熱および耐熱収縮性値、ならびに米国防火協会NFPA 1971に従い試験したとき(スペーサーなし)、少なくとも約5の熱防護性能値を有し、NFPA2112に従い試験したとき、約5%未満の耐熱性および耐熱収縮性と、米国防火協会NFPA 1971に従い試験したとき(スペーサーなし)少なくとも約5の熱防護性能値と、を有する。
【0053】
例示の実施形態において、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、少なくとも3000の湿潤摩耗を有し、場合によって、米国材料試験協会標準試験ASTM D1424((条件1乾燥、条件2湿潤)に従い試験したとき、対応する乾燥引裂値と少なくとも等しいか、またはそれを超える。
【0054】
図1に示されるように、例示の濃度の繊維混合物が円グラフに提供される。メタアラミドの繊維混合物は、生産者により着色されたものである。15%セルロース誘導体成分は、円グラフの残りから離れて示され、この実施形態において唯一の親水性成分である。したがって、
図1に示される繊維混合物は、85%の疎水性繊維成分および15%の親水性繊維成分で構成される。
図1に示される繊維混合物は、60%のメタアラミドおよび10%のパラアラミドを有する、70%のアラミド繊維を含む。例示の織物1および2は、本明細書において下記のように、
図1に記載の繊維混合物を含む。
【0055】
図2に示されるように、例示の濃度の繊維混合物が円グラフに提供される。メタアラミドの繊維混合物2は、プリント可能であるか、もしくは染料受容性であり、および/またはその上にプリントすることができる。再度、15%セルロース誘導体成分は、円グラフの残りから離れて示され、この実施形態において唯一の親水性成分である。
図2に示される繊維混合物は、61%メタアラミドおよび10%パラアラミドを有する70%超のアラミド繊維を含み、本明細書で後に記載の例示の織物3は、
図2に記載の繊維混合物を含む。
【0056】
本明細書に記載の繊維混合物、およびそれから作製された織物は、
図3および
図4に示されるように、優れた水分管理特性を有する。
図3および
図4に示される織物の全ては平織であり、全てが4.6〜7.0oz/yd
2のほぼ同じ重量を有した。
図3は、含浸量または水重量増加、水平ウィッキング、垂直ウィッキング、総快適帯乾燥時間、および放水率(WRR)を含む、洗浄前水分管理に関連する試験データのチャートである。本発明の織物例1〜3は、高い含浸量値を有し、はるかに低い量の水を吸収する前に10分間沈められる必要がある比較織物に対して、10秒未満で到達した。織物例1〜3は、25%より高い洗浄前含浸量値を有し、30%を超える含浸量値を有する試料もあった。織物例1〜3の全ては、30回洗浄後に30%より高い含浸量値を有した。高い含浸量値は、織物が実質的な量の水/汗を着用者から逃がす能力を有することを示し、それが吸収する速度は、水分/汗を皮膚からその織物に移動させる能力も反映する。比較織物の含浸量値は、それらを濡らすために、その比較織物を水に沈めることにより得られた。比較例1および2は、5%未満の非常に低い洗浄前含浸量値を有した。さらに、織物例1〜3の全ては、5秒未満の水平ウィッキング時間を有した。対照的に、比較織物のうちのいくつかの全ては、100秒超の水平ウィッキング時間を有し、これらの試料が疎水性であったことを示す。比較織物3は、洗浄前に3秒、および25回洗浄後に42秒の水平ウィッキングを有し、これは材料の寿命期間にわたって、水分が体から離れて移動することにおける織物の非一貫性を示す。低い水平ウィッキング時間は、水が織物の表面上で迅速に広がることを示す。これは、織物からの汗のより速い分散および蒸発を可能にするため望ましい。比較織物は、着用者から効果的に水を逃さないであろう。織物例1〜3は、5秒未満の低い水平ウィッキング時間、および約0.5%/分を超える高いWRR率の固有の組み合わせを有した。
【0057】
図4は、30回洗浄された織物試料の水分管理特性を提供する。織物例1〜2は、5秒以下の非常に低い水平ウィッキング時間を有した。比較織物1〜2は、0回洗浄試験および30回洗浄後の両方において100秒超の水平ウィッキング時間を有し、水が試料の表面上で広がらなかったか、またはウィッキングしなかったことを示す。比較例3は、3秒の洗浄前水平ウィッキング時間、および30回洗浄後に42秒の水平ウィッキング時間を有し、この織物が、繰り返し洗浄により親水性が低くなり、したがって耐久性がないことを示す。織物例1〜3の全ては、洗浄前試料および30回洗浄試料の両方に対して、5cm超の高い垂直ウィッキング長を有した。高い垂直ウィッキング高は、水が織物を通じてウィッキングされ、繊維の種類、糸の構造、および織物の構造により影響を受け得ることを示す。比較織物1および2は、非常に低い垂直ウィッキング高を有し、水がその織物を通じてウィッキングしないことを示す。低い水平ウィッキング時間および高い垂直ウィッキング長の組み合わせを維持した唯一の試料であり、それにより耐久性のある水分管理特性を有すると見なされ得る織物例1および2。例3は、プリント織物であり、これもまたこの特性の組み合わせを示し、プリント前形態においてもそうであったが、天然ウィッキング工程に影響を及ぼし得る偽装プリント工程中に疎水性インク、色素、および結合剤でコーティングされた。
【0058】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の繊維混合物、およびそれから作製された織物は、耐炎性(FR)であり、NFPA 2112の要件を満たす。
図5〜7に示されるように、本明細書に記載の繊維混合物で作製された織物は、受領された状態および5回洗濯後の両方で、低い残炎時間、残光時間、および炭化長を有した。3つ全ての織物例の炭化長は、3.6インチ未満であった。洗濯は、FTM 191−5556に従い行った。
【0059】
本明細書に記載の織物例の3つ全ては、ノースカロライナ州立大学のテキスタイル防護および快適性センター(T−PACC)により、PyroManシステムを使用して特徴付けられた。
図8に示されるように、3つ全ての織物例は、36%未満の平均全体予測熱傷を有した。さらに、この平均予測第3度熱傷は非常に低く、3つ全ての織物例に対して8.5%未満であった。
【0060】
織物例3は、熱防護性能(TPP)について、米国防火協会NFPA 1971の下、未洗浄および5回洗浄後の両方でSFI Test Laboratory(Poway,CA)により試験された。さらに、表1に示されるように、スペーサーあり、およびスペーサーなしで試験を行った。全ての場合において、織物例3は、7.5cal/cm
2分を超える平均TPPを有し、4分の1インチスペーサーを使用したとき、平均TPPは、未洗浄試料および洗浄試料の両方に対して12cal/cm
2分を超えた。
【表1】
【0061】
図9は、本明細書に記載の織物例および比較例の寸法安定性データ、ならびに耐摩耗性データを提供する。本明細書に記載の織物例は、AATCC 135に従い試験したとき、わずか2.5%の収縮を伴う高い寸法安定性を有した。さらに、織物例は、7000の乾燥摩耗を有する例のうちの2つより著しく高い耐乾燥および耐湿潤摩耗を有した。織物例の3つ全ては、比較例のそれの2倍である、3000以上の湿潤摩耗を有した。
【0062】
織物例3を、熱収縮またはTexTest(Phenix City,AL)による耐対流熱性ISO 17493について試験した。受領した状態の試料および5回洗浄した試料は、AATCC 135 II,Aiiに従い、500℃に5分間供された。両方の試料の収縮率は、表2において長さ方向および幅方向の両方で報告される。受領した状態の試料および洗浄した試料は、5.5%未満の収縮率を有した。両方の試料は、受領した状態で、および5回の洗浄後にNFPA 1971耐熱性および耐熱収縮性試験の要件を満たした。
【表2】
【0063】
織物試料3の2つの試料は、静電減衰試験のためにFTMS 191、方法5931に提出した。受領した状態の試料は、製造時の状態で洗浄されておらず、洗浄した試料は、5回洗浄されていた。3つの試験試料を織物試料から切り取った。次に、これらの試料を、10%R.H.(相対湿度)および73
°Fで終夜調整した後、試験前に20%R.H.および73
°Fで24時間調整した。FTMS 191−方法5931に記載の試験方法を使用して試験を完了し、その結果が表3に提供される。
【表3】
【0064】
FTMS 191−方法5931は、減衰時間が0.5秒未満であるという要件を有する。この織物は、ほぼ瞬間的な減衰時間でこの要件を満たした。
【0065】
織物例1および2を、Manufacturing Solution Center(Hickory,NC)による家庭における繰り返し洗濯後のアパレル及びその他の織物最終製品の外観に対する手順、AATCC/ASTM TS−008を使用して、色堅牢度およびピリングについて評価した。これらの試料を、AATCC 135に従い、交互の洗浄および乾燥条件で洗濯した。写真基準を用いて、洗浄サイクル後の試料のピリングの程度を評価した。等級5は、優れた耐ピリング性を示し、等級1は、非常に乏しい耐ピリング性を示す。同様に、色落ち評価5は、本質的に色落ちがないことを示し、色落ち評価1は、劇的な退色を示す。結果は、表4に提供される。
【表4】
【0066】
本明細書に記載の3つの織物例を、FTM 191−5450に従い、半インチの水圧低下で1平方フットの試料を通過する空気の立方フィートを測定するFrazier 2000を使用して通気性について試験した。3つ全ての試料は、25を超えるフラジール値を有し、これらの織物のうちの2つは、40を超えるフラジール値を有した。この高い通気性は、特に暑い作業環境において着用するためにより快適な織物に寄与し得る。結果は、表5に提供される。
【表5】
【0067】
本明細書に記載の3つの織物例を、FTM 191−5100に従い、破壊強度について試験した。3つの試料は全て、表6に示されるように、縦糸方向および横糸方向の両方に120lbsを超える破壊強度を有した。
【表6】
【0068】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の様々な繊維混合物を含む糸を対象とし、該繊維は、均質に混合されている。均質な繊維混合物は、本明細書に記載のように、任意の好適な織物に形成され得る。例示の実施形態において、繊維の均質な混合物は、織布に形成される。別の例示の実施形態において、繊維の均質な混合物は、編織物に形成される。
【0069】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の様々な混合物を含む糸から形成された織物を対象とする。織物は、織られているか、または編まれているかのいずれかであり得る。ある特定の実施形態において、織物は、約8.0オンス/平方ヤード(OPSY)未満の目付重量を有する。ある特定の他の実施形態において、織物は、約6.0オンス/平方ヤード(OPSY)未満の目付重量を有する。
【0070】
本明細書に記載の紡績糸は、任意の好適な種類の織物に形成され得、水流交絡、ニードルパンチ、および湿式等の不織布、ならびに例えば、綾織り、リップストップ、平織り、デニム織り、および編地を含む織布が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本明細書に記載の繊維混合物は、編織物に形成され得る。
図11に示されるように、編織を有する織物は、典型的に、綾織り型より多くの開放領域を有する。編地は、快適感を提供するループ糸を含むが、この種類の織り方は、高い熱収縮の影響を受けやすいことがある。しかしながら、
図10に示されるもののようなより密な織り方は、より密に詰まった糸を含み、したがって典型的に、熱収縮試験において編物より性能が良い。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、衣服に形成され得る。ある特定の実施形態において、織物は、それが提供する防護のために、衣服の少なくとも1つの外側部分を形成する。本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、コート、カバーオール、オーバーオール、シャツ、およびズボンを含むが、これらに限定されない上着のような衣服に有用であり得、消防士の出動服、戦闘服、および飛行服に特に有用であり得る。他の実施形態において、織物は、縫い目の数を低減するための単一管状設計で、肌着のような衣服に形成され得る。
【0071】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の紡績糸から作製された織物は、本明細書に提供されるように、米国防火協会 NFPA 1971に従い試験したとき(スペーサーなし)、少なくとも約5cal/cm
2分(カロリー毎平方センチメートル毎分)、好ましくは、最初に少なくとも約5.7cal/cm
2分、3回の洗浄サイクル後に少なくとも約6.7cal/cm
2分の熱および耐熱性能値を有し得る。
【0072】
本発明は、以下の実施例においてさらに定義され、全ての分率および割合は、特に指定のない限り重量による。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示目的のみで提供されることを理解されたい。上述の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、種々の用途および状況に適合するように、本発明に種々の変更および修正を行うことができる。
【実施例】
【0073】
織物を、表7に記載のように、2つの混合で生産した。生産者により着色されたメタアラミド繊維を同色染めに使用し、60%のNomex型メタアラミド、15%のレーヨン、13%のナイロン、10%のパラアラミド、および2%の制電性繊維という比で構成した。染色されていないメタアラミド繊維を、61%のNomex、15%のレーヨン、11%のナイロン、10%のパラアラミド、および3%の制電性繊維という比でプリント織物に用いた。繊維を、均質な混合物に混合し、次にカーディング、ドローイング、およびロービングを通じて処理した。糸を、リング精紡装置上で、好ましくは20/1〜40/1の範囲内の指定のカウントに形成した。使用することができる代替スフ精紡技術としては、エアジェット精紡、コンパクト精紡、リングおよびSIRO精紡、DREF精紡、ならびにオープンエンド精紡が挙げられる。次に、糸を合撚して、20/2〜40/2または有効な10〜20Neの合撚カウントを産出した。次に、織物を、縦糸66×横糸48カウントの平織構造に織り込んだ。さらに、織物を、綾織を有し、縦糸68×横糸50カウントの織物にも織り込んだ。代替実施形態は、編地および不織布、ならびに他の織り構造であり得る。
【0074】
同色染めの場合、織物を標準業界慣習に従ってこすり洗いし、レーヨンおよびナイロン繊維を建染して、生産者により染色された色と一致させた。この時点で、抗菌、パーマネントプレス、耐汚染、防虫、または耐久性撥水を含む性能仕上げが適用され得る。プリント織物も標準業界慣習に従ってこすり洗いし、色素で色付け、迷彩柄でプリントした。次に、織物を防縮加工した。プリント仕上げ工程の間に性能仕上げが適用され得、抗菌、パーマネントプレス、耐汚染、または耐久性撥水を含み得る。
【表7】
比較織物例
【0075】
比較織物は、下の表8に列挙される生産者から供給された。比較織物の繊維含有量が提供される。選択された比較織物は、高いアラミド含有量を有し、繊維混合物でもある。
【表8】
試験方法
【0076】
以下の試験方法を使用して、特に断りのない限り、例示の実施形態および比較材料を評価した。
水重量増加および放水率(WRR)試験方法
【0077】
本発明に従い作製された材料および比較材料の放水率(WRR)を、AATCC MM TS−05Aに従い測定した。
重量測定乾燥試験方法(WRR、乾燥時間および含浸量)
【0078】
本発明に従い作製された材料および比較材料の乾燥時間を、AATCC MM TS−05Aに従い測定した。
【0079】
典型的な試験の場合、4つの2.5×2.5平方インチの試料を使用した。試料のうちの2つは「対照」(参照)織物であり、2つは関心の「試験」織物であった。試料を、調整室において70°Fの温度および65%相対湿度で、試験前に少なくとも4時間調整した。次に、試料を、研究室天秤を使用して正確に0.0001gに計量し、調整乾燥重量を確立した。次に、10mLの蒸留水を25mLビーカーに入れた。試料を沈め、1つの試料をビーカーに5分〜10分沈めて、その試料が完全に濡れるように水中に完全に沈められたことを確認した。100秒以上の水平ウィッキング時間のような不良な水平ウィッキングを呈するか、または呈しない試料でも、記載の通り沈められた場合、水を吸収する。次に、試料をビーカーから取り除き、2片の未使用のAATCC吸い取り紙の間に挟み、脱水機(LabPro Padder)に通した。次に、試料を、取り除いて垂直試料スタンドに固定するまで、水分吸い取り紙に挟んだままにした。発泡体基部により支持されたワイヤループを含む垂直試料スタンドを(ワイヤループの上部は、基部の上部の約15cm上にあり、基部から伸長する平行ワイヤ部分は、約7.5cm離れていた)、乾燥中に試料を支持するために使用した。垂直試料スタンドおよびクリップを天秤上に置き、その天秤を風袋計量した。吸い取った湿潤試料を、クリップを使用してワイヤループの上部に取り付け、試料がワイヤループ内で吊り下がるようにした。試料の重量を記録して、湿潤重量を確立した。湿潤重量と調整乾燥重量との差を記録し、
図3および
図4において含浸量値として提供される。天秤を、Lab Viewソフトウェアを含むデータ取得システムに接続した。重量読み出し値は、コンピューターにより15秒毎に自動的に記録された。試験は、試料重量が調整乾燥重量に対して指定された停止水分レベルに到達した時点で完了した。停止水分レベルは、約0.5%〜1%であった。試験は、Lab Viewにおける停止データ取得により終了した。データファイルを、その試料に対して保存した。
計算および解釈
【0080】
総乾燥時間は、標本が停止重量に到達するのにかかる時間である。
【0081】
総放水率(「WRR」、g/分)は、以下のように計算した。
総WRR=(湿潤標本重量−終了標本重量)/(総乾燥時間)
【0082】
総WRR(%)は、以下のようにそれぞれの総WRR値から計算される。
WRR
総=100×(WRR
試験−WRR
対照)/WRR
対照
【0083】
「快適帯」乾燥時間(分)は、標本の含水量が20%から約1%に減少するのにかかる時間である。
【0084】
「快適帯」WRR(g/分)は、以下のように計算した。
アクティブWRR=(湿潤標本重量−終了標本重量)/(「アクティブ」乾燥時間)
【0085】
WRR(快適帯)は、試験および対照WRR(快適帯)値を使用することを除いて、WRR(総)の場合と同じ方法で計算した。
水平ウィッキング
【0086】
本発明に従い作製された材料および比較材料の水平ウィッキング時間を、AATCC 79、テキスタイルの吸収性に従い測定した。
垂直ウィッキング(AATCC MM TS−06垂直ウィッキング修正ヘインズプロトコル)
【0087】
この試験の目的は、水が、水中に吊り下げた試験標本を垂直にウィックアップする速度を決定することである。500mLの蒸留水を保持することができる平皿を、200mLの水で満たした。長さ(縦糸)および幅(横糸)方向に約10cmの織物の試料を、評価のために切り取った。ペーパークリップを試料の底部に取り付け、その試料の下端を確実に沈めるようにした。上端を結合クリップで水平バーに取り付け、必ず底部ペーパークリップが水中に沈められるようにした。試料を皿の中に下ろし、水が2cmの高さまで試料を上昇するまで分単位で時間を計った。また3分後および5分後に、水が移動した距離を垂直ウィッキング長として記録した。最終ウィッキング長は、5分後の縦糸および横糸ウィッキング長の平均であった。
耐乾燥および耐湿潤摩耗(ASTM D 4966):
【0088】
下記試験方法は、修正されたASTM D 4966−テキスタイル織物の耐摩耗性(マーティンデール摩耗試験方法)2。使用される研磨材は、600超微細グリット3M(9084NA)サンドペーパーであり、織物は、9kPaの圧力に供された。湿潤摩耗試験の場合、織物を水に浸し、0.05MPaの圧力でパディングしわ伸ばし機に通した。Lab−Pro(Dorfstrasse 19 Germany)から入手可能な研究室染色パッダをパディングに使用して、過剰な水を試料から取り除いた。
耐熱性および耐熱収縮性 NFPA 2112−0.7 Ed、節8.4
【0089】
この試験は、500°Fのオーブンで熱に曝露されたときの織物の性能を決定する。それぞれの標本について発火、融解、滴下、または分離の観察を記録し、報告する。標本の幅および長さ方向の変化率を計算する。3つの標本の平均として結果を記録し、報告する。
【0090】
標本のマーキングおよび測定は、AATCC 135家庭における織物の自動洗濯における寸法変化において指定される手順に従い行う。標本を上部にある金属フックにより吊り下げ、標本全体がどのオーブン表面または他の標本からも50mmより近くになく、空気が材料の面に平行であるように、オーブンの中心に置く。指定された通り置かれた標本を、試験オーブン内で5分間、500°Fで曝露した。
テキスタイルの耐炎性(垂直)
【0091】
この試験方法は、標準発火源に対するテキスタイルの反応を決定し、残炎時間、残光時間、および炭化長に対する測定値を導出する。この試験方法により決定される垂直耐炎性は、指定の火炎曝露および適用時間のみに関連する。この試験方法は、標本を静的な通風のない垂直位置で維持し、曝露から生じるものを除いて移動を伴わない。試験方法D6413は、連邦試験標準No.191A方法5903.1から採用され、長年にわたって承認試験に用いられている。
【0092】
試料を、試験される織物から切り取り、火炎室内から垂直に下がる火炎の中に置いた。制御された火炎を、指定の期間試料に曝露した。残炎時間(バーナーを取り除いた後に材料が燃焼し続ける時間の長さ)および残光時間(火炎が消失した後に材料が光る時間の長さ)の両方を記録した。最後に、標本を錘の使用により引き裂き、炭化長(火炎に曝露された織物の縁部から火炎により影響を受けた領域の端部までの距離)を測定した。
PyroManシステムを使用する試験衣服の特徴付け
【0093】
複数のアンサンブルを評価のために提出した。機器を備えた人体模型を使用する突発的火事のシミュレーションに対する防護用耐炎性衣服の評価のためのASTM F 1930−00標準試験方法と同様の手順を用いて、シミュレートされた突発的火事の曝露に対する耐性について衣服を評価した。これらの試験は、ノースカロライナ州立大学のテキスタイル防護および快適性センター(T−PACC)により行われた。
突発的火事試験結果:人体模型試験
【0094】
ASTM F1930−99は、シミュレートされた突発的火事における完全衣服形態の織物を試験するために設計された大規模マネキン試験である。体全体に最大122個の熱センサーを備えるマネキンに試験衣服を着せた後、所定の長さの時間、突発的火事に曝露する。試験は、通常、1.8〜2cal/cm
2秒の熱エネルギーで、2.5〜5.0秒の期間、単層衣服に対して行う。結果は、身体熱傷の割合で報告される。データの一貫性および比較の精度のために、この試験方法は、それぞれの試験において使用されなければならない標準衣服寸法および構成を定義する。試験衣服を、突発的火事に対する業界人材の防護のための耐炎性衣服に関するNFPA 2112標準により、100%綿Tシャツおよびブリーフ上で試験した。
アーク評価:ASTM F 1959/F 1959M−06ae1−衣服用材料のアーク評価を決定するための標準試験方法
【0095】
この試験方法を使用して、84〜120kW/m2(2〜600cal/cm2秒)の熱流束率を生成する、電気アークに曝露された作業者用の耐炎衣服として使用するために意図された材料のアーク評価を測定した。この試験方法は、以下の要件を満たす材料のアーク評価を測定する:試験方法D 6413Aに従い試験したとき、150nm[6インチ]の炭化長および2秒未満の残炎時間。
FTMS 191−方法5931による織物の静電減衰
【0096】
FTMS 191−方法5931は、減衰時間が0.5秒未満であるという要件を有する。この織物は、ほぼ瞬間的な減衰時間でこの要件を満たした。
【0097】
当業者であれば、多くの変更および修正を本発明の好ましい実施形態に対して行うことができ、そのような変更および修正は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行うことができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内に含まれる全てのそのような等価的変形を網羅することが意図される。