特許第6282273号(P6282273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282273多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282273
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/63 20060101AFI20180208BHJP
   G01N 21/66 20060101ALI20180208BHJP
   G01N 21/71 20060101ALI20180208BHJP
   G01N 21/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01N21/63 Z
   G01N21/66
   G01N21/71
   G01N21/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-524769(P2015-524769)
(86)(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公表番号】特表2015-524565(P2015-524565A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2013066043
(87)【国際公開番号】WO2014020046
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】1257556
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502205846
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロンベ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ギユモル ジャン‐フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラマーレ アモリ
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−224476(JP,A)
【文献】 特開2008−224432(JP,A)
【文献】 特表2009−540284(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0236542(US,A1)
【文献】 特表2003−521670(JP,A)
【文献】 国際公開第99/023466(WO,A1)
【文献】 特開平03−285146(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0000434(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0150428(US,A1)
【文献】 特開2010−174181(JP,A)
【文献】 Matthew P.Peloso et al.,Polarization analysis of luminescence of the characterization of silicon wafer solar cells,APPLIED PHYSICS LETTERS 98,2011年,Page.171914-1〜171914-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/74
G01N 21/84−21/958
H01L 21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための方法であって、
前記材料にルミネッセンス信号を放出させるために前記材料を励起することと、
前記材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、前記材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおいて、可変偏光角で前記ルミネッセンス信号を検出することと、
前記材料の前記事前設定の空間領域における前記メッシュの各点で、前記メッシュの前記点について検出された前記信号から、前記偏光角に応じて、正弦波の和によりモデル化される前記ルミネッセンス信号の変調の特性のデータを推定することと、
前記事前設定の空間領域における前記メッシュの前記点のすべてにわたる前記特性データの表現を生成することと、
前記特性データの表現から、結晶の少なくとも1つの構造特性を分離することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記変調されたルミネッセンス信号のモデルは、式:
【数1】
であり、式中、Ilumは、前記ルミネッセンス信号の強度を表し、Aは、前記ルミネッセンス信号の振幅パラメータであり、θは、前記ルミネッセンス信号の前記偏光の解析角度を表し、φは、位相基準に対する前記ルミネッセンス信号の位相シフトのパラメータであり、Aは、前記ルミネッセンス信号の前記強度の最小値を表すパラメータであり、nは、厳密に正の整数であり、kは、1からKの範囲の自然数の総和のインデックスであり、前記推定された特性データは、前記振幅、位相シフト、周波数、および/または最小値パラメータ、あるいはこれらの組み合わせの1つに対応することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項に記載の方法であって、前記ルミネッセンス信号はカメラを用いて検出され、前記材料上の前記事前設定の空間領域のメッシュは、選択により、前記カメラのセンサにおける点に対応することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料を励起することは、前記材料に光ルミネッセンス信号を放出させるために光源を用いて前記材料を光励起することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料を励起することは、前記材料にエレクトロルミネッセンス信号を放出させるために、前記材料上に配置された複数の電極にわたって電源を用いて前記材料を電気的に励起することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料を励起することは、前記材料に熱ルミネッセンス信号を放出させるために熱源を用いて前記材料を加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
多結晶半導体材料の結晶構造を解析するためのシステムであって、
前記材料にルミネッセンス信号を放出させるために前記材料を励起するように構成された、前記材料を励起するための手段と、
前記材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、前記材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおいて、可変偏光角で前記ルミネッセンス信号を検出するための手段と、
データ処理ユニットと、
を備えるシステムであって、前記データ処理ユニットは、
メモリ手段および入力/出力インターフェースモジュールに作動的に結合されたコンピュータプロセッサであって、前記メモリ手段が、前記メッシュの各点について検出された前記信号に対応するデータを記憶するように構成される、コンピュータプロセッサと、
解析器であって、前記コンピュータプロセッサによって実行され、
前記材料の前記事前設定の空間領域における前記メッシュの各点で、前記メッシュの前記点について検出された前記信号から、前記偏光角に応じて、正弦波の和によりモデル化される前記ルミネッセンス信号の変調の特性のデータを推定し、
前記事前設定の空間領域における前記メッシュの前記点のすべてにわたる前記特性データの表現を生成し、
前記特性データの表現から、少なくとも1つの構造特性を分離するように構成された解析器と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の解析システムであって、前記解析器は、式
【数2】
の前記変調されたルミネッセンス信号のモデルに応じて、特性データを推定するようにさらに構成され、式中、Ilumは、前記ルミネッセンス信号の強度を表し、Aは、前記ルミネッセンス信号の振幅パラメータであり、θは、前記ルミネッセンス信号の前記偏光の解析角度を表し、φは、位相基準に対する前記ルミネッセンス信号の位相シフトのパラメータであり、Aは、前記ルミネッセンス信号の前記強度の最小値を表すパラメータであり、nは、厳密に正の整数であり、kは、1からKの範囲の自然数の総和のインデックスであり、前記推定された特性データは、前記振幅、位相シフト、周波数、および/または最小値パラメータ、あるいはこれらの組み合わせの1つに対応することを特徴とする解析システム。
【請求項9】
請求項7および8のいずれか1項に記載の解析システムであって、前記検出手段はカメラを備え、前記材料上の前記事前設定の空間領域のメッシュは、選択により、前記カメラのセンサにおける点に対応することを特徴とする解析システム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の解析システムであって、前記材料を励起するための手段は、前記材料に光ルミネッセンス信号を放出させるために光励起信号を放出するように構成された光源を備えることを特徴とする解析システム。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか1項に記載の解析システムであって、前記材料を励起するための手段は、前記材料にエレクトロルミネッセンス信号を放出させるために、前記材料上に配置された複数の電極にわたって電気信号を放出するように構成された電源を備えることを特徴とする解析システム。
【請求項12】
請求項7から9のいずれか1項に記載の解析システムであって、前記材料を励起するための手段は、前記材料に熱ルミネッセンス信号を放出させるために前記材料を加熱するように構成された熱源を備えることを特徴とする解析システム。
【請求項13】
プロセッサに関連付けられたメモリにロード可能なコンピュータプログラムであって、前記プロセッサによる前記プログラムの実行の際、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法のステップを実装するためのコード部分を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムであって、
前記プログラムは、圧縮または符号化によって、表現するデータのセットを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項15】
1つ以上のプログラムを表現するデータのセットを含む、コンピュータによって実行可能なプログラムを記憶するための非一時的媒体であって、前記1つ以上のプログラムは、メモリ手段および入力/出力インターフェースモジュールに作動的に結合された処理ユニットを備えるコンピュータによる前記1つ以上のプログラムの実行の際、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法に従って前記コンピュータに推定を実行させ表現を生成させる、多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための命令を含むことを特徴とする非一時的媒体。
【請求項16】
多結晶半導体材料の結晶構造を解析するためのデータ処理ユニットであって、
メモリ手段および入力/出力インターフェースモジュールに作動的に結合されたコンピュータプロセッサであって、前記メモリ手段が、励起された前記材料から放出されたルミネッセンス信号に対応するデータを記憶するように構成され、前記ルミネッセンス信号が、前記材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点ごとに、前記材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおいて可変偏光角で検出される、コンピュータプロセッサと、
解析器であって、前記コンピュータプロセッサによって実行され、
前記材料の前記事前設定の空間領域における前記メッシュの各点で、前記メッシュの前記点について検出された前記信号から、前記偏光角に応じて、正弦波の和によりモデル化される前記ルミネッセンス信号の変調の特性のデータを推定し、
前記事前設定の空間領域における前記メッシュの前記点のすべてにわたる前記特性データの表現を生成し、前記表現が前記材料の構造特性を分離し、
前記特性データの表現から、少なくとも1つの構造特性を分離するように構成された解析器と、
を備える、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための技法に関し、特に、光電池で使用される多結晶吸収材の構造の特性を評価するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の代替として光起電エネルギーが魅力的であるため、多くの光電池を利用したソーラーパネルなどの製品の開発が行われている。
【0003】
光起電製品の市場の発展により、この分野の研究開発が活発になっており、この研究開発の取り組みの一部は、既存の製品を改良し新しい世代の製品への道を開くために使われる材料の特性を評価するための方法の開発を対象としている。さらに、これらの市場におけるブームにより、(特に変換効率の点で)品質および期待性能への適合についての試験を定義すること、また性能を試験および解析するための手順を開発することが必要であり、これらの手順は、大量生産の要求に適合しなければならない。
【0004】
特に、多結晶半導体材料ベースの光電池の場合に当てはまり、そのために結晶構造または結晶微細構造における欠陥を検出するための技法が開発されている。たとえば、M.ペロソ(M.Peloso)、B.ホークス(B.Hoex)、およびA−G.アバリー(A−G.Aberle)による論文「Polarization analysis of luminescence for the characterization of silicon wafer solar cells」(Applied Physics Letters 98,171914(2011))は、解析される電池により放出されたエレクトロルミネッセンス信号の偏光を解析することによって光電池における欠陥を解析するための方法を説明している。
【0005】
欠陥の検出とは別に、多結晶材料の構造または微細構造の特性を評価するための技法も開発されている。多結晶材料の構造または微細構造は、一般に、ESBD(電子後方散乱回折)モードで動作する走査型電子顕微鏡を使用して、あるいはTEM(透過型電子顕微鏡)を使用して特性を評価される。これらの材料特性評価ツールは、困難となり得る準備が解析される試料に必要とされるので使用するのが難しく、そのため、これらのツールは、大量生産の状況で品質および適合試験の要件に対応しない。具体的には、これらの技法を用いるために、解析される試料を、その表面を研磨して粗さを除去することにより準備する必要がある。この準備は実施が面倒であり、試料の解析は、たとえば、材料研磨ステップにより発生する加工硬化に関する問題により、不可能なことがある。
【0006】
偏光ラマンスペクトルマッピングの技法も、多結晶材料の構造または微細構造の特性を評価するためのものとして考えられるが、これは、実際、高スペクトル品質のレーザおよび非常に高い分解能のスペクトロメータを必要とするため高価である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Polarization analysis of luminescence for the characterization of silicon wafer solar cells”,Peloso Matthew et al., Applied Physics Letters 98,171914(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、上記に概説した多結晶材料の特性を評価するための技法の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための方法であって、材料にルミネッセンス信号を放出させるために材料を励起することと、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、材料のバンドギャップの幅以上の周波数バンドにおいて、可変偏光角でルミネッセンス信号を検出することと、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、メッシュの点について検出された信号から、偏光角に応じて、正弦波の和によりモデル化されるルミネッセンス信号の変調の特性のデータを推定することと、事前設定の空間領域におけるメッシュのすべての点にわたる特性データの表現を生成することを含む方法を提供する。
【0010】
本提案方法は、前述の技法と比較して、多結晶材料の構造特性の簡易、迅速、かつ廉価な特性評価を可能にする利点がある。特に、本提案方法は、非破壊的(試料を分解しない)であり、試料準備を必要としない。したがって、試料が解析された後に試料を再使用して、製造中に試料を解析することができる(たとえば、光電池に関して、基板上の堆積によって材料を成長させるプロセス中に、成長プロセスが事前的に満足な結果を与えるかを確認する)。したがって、本提案方法は、製造のすべての段階における製品のインサイチュの解析および試験を可能にするので、特に大量生産の要求に適合している。
【0011】
本提案方法は、好適には、式:
【数1】
の変調されたルミネッセンス信号のモデルを用いて実装することができ、式中、Ilumは、ルミネッセンス信号の強度を表し、Aは、ルミネッセンス信号の振幅パラメータであり、θは、ルミネッセンス信号の偏光の解析角度を表し、φは、位相基準に対するルミネッセンス信号の位相シフトのパラメータであり、Aは、ルミネッセンス信号の強度の最小値を表すパラメータであり、nは、厳密に正の整数であり、kは、1からKの範囲の自然数の総和のインデックスであり、推定された特性データは、振幅、位相シフト、周波数、および/または最小値パラメータ、あるいはこれらの組み合わせの1つに対応する。
【0012】
さらに、カメラを用いてルミネッセンス信号を検出することを考えることができ、その場合、事前設定の空間領域におけるメッシュが、選択により、カメラのセンサにおける点に対応する。
【0013】
本方法の第1の実施形態では、材料によって放出されるルミネッセンス信号を光ルミネッセンスによって生成するために光励起が用いられる。
【0014】
本方法の第2の実施形態では、材料によって放出されるルミネッセンス信号をエレクトロルミネッセンスによって生成するために電気的励起が用いられる。
【0015】
本方法の第3の実施形態では、材料によって放出されるルミネッセンス信号を熱ルミネッセンスによって生成するために材料の熱的加熱が用いられる。
【0016】
別の態様によれば、多結晶半導体材料の結晶構造を解析するためのシステムが提供され、このシステムは、材料にルミネッセンス信号を放出させるために材料を励起するように構成された、材料を励起するための手段と、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、材料のバンドギャップの幅以上の周波数バンドにおいて、可変偏光角でルミネッセンス信号を検出するための手段と、データ処理ユニットとを備え、データ処理ユニットは、メモリ手段および入力/出力インターフェースモジュールに作動的に結合されたコンピュータプロセッサであって、メモリ手段が、メッシュの各点について検出された信号に対応するデータを記憶するように構成される、コンピュータプロセッサと、解析器であって、コンピュータプロセッサによって実行され、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、メッシュの点について検出された信号から、偏光角に応じて、正弦波の和によりモデル化されるルミネッセンス信号の変調の特性のデータを推定し、事前設定の空間領域におけるメッシュの点のすべてにわたる特性データの表現を生成するように構成された解析器とを備える。
【0017】
一実施形態では、解析システムの解析器が、
【数2】
の変調されたルミネッセンス信号のモデルに応じて、特性データを推定するようにさらに構成され、式中、Ilumは、ルミネッセンス信号の強度を表し、Aは、ルミネッセンス信号の振幅パラメータであり、θは、ルミネッセンス信号の偏光の解析角度を表し、φは、位相基準に対するルミネッセンス信号の位相シフトのパラメータであり、Aは、ルミネッセンス信号の強度の最小値を表すパラメータであり、nは、厳密に正の整数であり、kは、1からKの範囲の自然数の総和のインデックスであり、推定された特性データは、振幅、位相シフト、周波数、および/または最小値パラメータ、あるいはこれらの組み合わせの1つに対応する。
【0018】
一実施形態によれば、解析システムの検出手段はカメラを備え、材料上の事前設定の空間領域のメッシュは、好適には、カメラのセンサにおける点に対応するように選択される。
【0019】
さらに、材料を励起するための手段は、材料に光ルミネッセンス信号を放出させるために光励起信号を放出するように構成された光源、または、材料にエレクトロルミネッセンス信号を放出させるために、材料上に配置された複数の電極にわたって電気信号を放出するように構成された電源、または、材料に熱ルミネッセンス信号を放出させるために材料を加熱するように構成された熱源を備えることができる。
【0020】
別の態様によれば、プロセッサに関連付けられたメモリにロード可能なコンピュータプログラムであって、プロセッサによるプログラムの実行の際、本提案方法のステップの少なくとも一部を実装するためのコード部分を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0021】
別の態様は、1つ以上のプログラムを表現するデータのセットを含む、コンピュータによって実行可能なプログラムを記憶するための非一時的媒体であって、1つ以上のプログラムは、メモリ手段および入力/出力インターフェースモジュールに作動的に結合された処理ユニットを備えるコンピュータによる1つ以上のプログラムの実行の際、本提案方法に従ってコンピュータに推定を実行させ表現を生成させる、多結晶半導体材料の結晶構造を解析するための命令を含む非一時的媒体に関する。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する非限定的な例示的実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態による本提案方法の実装を示す図である。
図2】第1の実施形態による本提案方法の別の実装を示す図である。
図3】第2の実施形態による本提案方法の実装を示す図である。
図4】第3の実施形態による本提案方法の実装を示す図である。
図5】本提案方法を実装するためのコンピュータシステムを示す図である。
図6a】多結晶CIGSe材料をベースにした試料について本提案方法に従って得られた位相シフトパラメータφのマッピングの例を示す図である。
図6b】単結晶CIGSe材料をベースにした試料について本提案方法に従って得られた位相シフトパラメータφのマッピングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明において、より完全な理解を可能にするために多数の具体的な詳細を提示する。しかしながら、実施形態によってはこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは当業者には理解できよう。また、説明を不必要に複雑にするのを避けるために周知の特徴について詳細に説明しない。さらに、ある同じ機能を有する構成要素、装置、手段、および要素は、複数の図で同じ参照番号によって参照されることがあり、これらの構成要素、装置、手段、および要素の繰り返しは、場合により省略または略記されることがある。
【0025】
本提案方法は、好適には、種々のタイプの多結晶半導体材料、たとえば、III−IV族の多結晶半導体材料(たとえば、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、またはアンチモン化ガリウム(GaSb)など)、II−VI族の多結晶半導体材料(たとえば、テルル化カドミウム(CdTe)、またはその合金もしくは誘導体(カドミウムが亜鉛もしくは水銀で部分的に置換可能であり、テルルがセレンで部分的に置換可能である)など)、CIGSなどのカルコパイライト構造を有する多結晶合金、あるいは多結晶シリコンと共に使用され得る。CIGSは、本明細書では、一般に、CuInSe族、またはその派生合金(銅が銀で置換可能であり、インジウムがアルミニウムもしくはガリウムで部分的に置換可能であり(Cu(In,Ga)Se)、セレンが硫黄またはテルルで部分的に置換可能である)として理解される。
【0026】
さらに、本提案方法は、好適には、1つ以上の多結晶半導体材料ならびに他の材料を含む試料の解析のために使用され得る。多結晶半導体材料に含まれる種々の多結晶半導体材料は、特にそれらの結晶構造に関して異なる特性を示し得る。当業者には理解されるように、本提案方法は、解析される試料に含まれる材料のうちの1つのみに適用されてもよく、あるいは解析される試料に含まれるそれらの材料のうちのいくつかに連続的に適用されてもよく、その場合、本提案方法による種々の解析パラメータは、各結晶構造解析のターゲットの多結晶半導体材料に応じて、特に、解析される材料の励起波長およびルミネッセンス信号の検出波長を選択することにより、適合され得る。
【0027】
図1は、第1の実施形態による本提案方法の実装を示す。
【0028】
図1は、解析される多結晶半導体材料の試料(1)、および試料(1)の方向に光励起信号を放出するように構成された光源(2)を示している。この光励起信号は、試料(1)にルミネッセンス信号を放出させるように適合される。したがって、光源(2)は、解析される材料の吸収領域に対応するスペクトル範囲で選択される。光源(2)は、たとえば、レーザ光源またはインコヒーレント光源とすることができる。
【0029】
光源によって生成された励起信号は、解析される試料の一部分のみを励起するという意味で局所的である。この局所励起を得るために、レーザ光源によって生成された励起ビームを集束するための手段、たとえば、レーザ光源(2)と解析される試料(1)との間に配置された集束レンズ(3)などを使用することが可能である。集束レンズの焦点距離は、実際には、所望される解析分解能および使用される光源に応じて選択される。たとえば、多結晶CIGS材料の試料では、焦点距離4mmおよび開口数0.8の顕微鏡レンズを使用して、結晶のサイズすなわち1μmより小さい表面の局所励起を得ることができる。励起レーザビームは試料(1)によって吸収され、光励起信号のエネルギーの一部は、励起された材料によって自然放出された光ルミネセンス信号の形態で消散される。
【0030】
この実施形態における励起レーザビームの集束が試料(1)の局所励起のセンチメートルからサブミクロンの尺度の空間分解能を可能にするために、対応する分解能を有するこのデータ取得段階の要件に応じてメッシュを定義することが可能である。これにより、本提案方法は、たとえば、微晶質太陽電池の研究のための要件を満たす、高い空間分解能(典型的には0.5から10μm)を達成することが可能になる。
【0031】
試料(1)は、半導体材料からなり、(「伝導帯」と呼ばれるエネルギー帯に対応する)第1のエネルギー準位、および(「価電子帯」と呼ばれるエネルギー帯に対応する)第2のエネルギー準位を有する。電子のエネルギー遷移は、主に伝導帯の状態と価電子帯の状態との間で行われる。価電子帯と伝導帯は、「バンドギャップ」として知られるエネルギーギャップに関連付けられる、エネルギーギャップEgapによって分離される。このエネルギーギャップは、バンドギャップエネルギーとも呼ばれる。光源によって放出された光子がギャップEgapより低いエネルギーを有するとき、価電子帯内の電子に伝達されるエネルギーは、それらを伝導帯に昇進させるのには不十分であり、それらは価電子帯を離れない。ギャップEgapより小さいエネルギーで励起された材料は透過的である。他方で、光源により放出された光子がエネルギーギャップEgapより大きいエネルギーを有するとき、それらは、電子正孔対(ここで「正孔」は伝導帯内へ移動された電子の価電子帯における不在を指す)を作ることによって、価電子帯から伝導帯に昇進させるのに十分なエネルギーで材料の電子の一部を励起する。このように作られた電子正孔対は、光ルミネッセンスの現象によって光子を再結合し放出する。放出された光子のエネルギーは、バンドギャップエネルギーに近い。
【0032】
バンドギャップエネルギーは、(シリコンについて1.1eV、CIGS材料CuInSeについて1.12eV、CIGS材料CuGaSeについて1.65eVの値の)試料(1)の材料の特性である。したがって、光源(2)は、試料(1)の材料に特有となる価電子帯と伝導帯の間のエネルギーギャップEgapより大きいエネルギーの信号を放出するように適合される。たとえば、1.12eVのギャップを有するCuInGaSe(CIGS)タイプの多結晶半導体材料を含む試料では、2.33eV(532nm)のシングルモードレーザが励起源(2)として選択される。
【0033】
次いで、光ルミネッセンスによって放出された光信号は、データ取得段階で偏光の配向の種々の値について検出され記憶される。
【0034】
ルミネッセンス信号の検出は、解析される材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおいて行われる。ルミネッセンス信号の検出周波数バンドを解析ターゲットの材料の特性バンドギャップ幅に調節することにより、解析される材料の結晶構造の情報を収集することが可能になる。このようにして、解析される材料の結晶母体の特性である波長の検出を実行することが可能である。
【0035】
光ルミネッセンス信号の検出は、たとえば、2つの検出レンズ(図1に示すような検出レンズ(5)および(6))を用いて実行することができ、試料は、実質的に第1のレンズの物体焦点面に配置される。この方式の利点の1つは、2つの検出レンズ(5)(6)の間に偏光子(4)を配置することが可能なことである。次いで、光ルミネッセンス信号は、所望のレベルの精度および感度を達成するように、たとえば光電子増倍管のタイプから選択され得る、検出器(7)により、検出光学系(5)(6)の出力で検出される。たとえば、上述のようなCIGSタイプの場合、近赤外線(1000nm>λ>1200nm)で最適スペクトル感度を有するInGaAsタイプの光電子増倍管を検出器として選択することができる。変形形態として、本提案方法を実装するためにスペクトロメータが検出器(7)として使用されてもよく、これは、ルミネッセンス信号の強度を表現するデータの取得に加えて、ルミネッセンス信号の強度の周波数分布(波長)を表現するデータの取得を可能にする。
【0036】
したがって、データ取得は、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、偏光の配向の種々の値についてルミネッセンス信号を検出することによって行われ、それにより、ルミネッセンス信号の解析がこの信号の偏光の配向の種々の値について可能になる。以下の段落でルミネッセンス信号の偏光解析の方法の2つの例を説明する。
【0037】
第1の方法によれば、回転される検出光学系と解析される試料との間に配置された試料のルミネッセンス領域に適合された直線偏光子の配向の複数の値についてルミネッセンス信号の測定が行われる。
【0038】
第2の方法によれば、偏光子の前に配置された(λ/2タイプの)波長板を回転することによって、偏光の配向の複数の値についてルミネッセンス信号の測定が行われる。
【0039】
このようにして、メッシュの各点で、5°程度のステップで−90°から+90°に配向の角度θを変化させることにより、波長板の偏光子の複数の配向θの値についてルミネッセンス信号の検出および記録を進めることが可能である。もちろん、配向の角度θの変化の間隔は、配向の角度θの変化のステップが可能なように、本提案方法の範囲から逸脱せずとも、解析される材料の特性および必要とされる解析精度に応じて、異なる形式で選択され得る。
【0040】
したがって、解析される試料の空間領域における点からなるメッシュは、前もって定義される。メッシュの各点は、ルミネッセンス信号を自然放出するように光源(2)により局所的に励起される。このルミネッセンス信号の検出は、メッシュの各点で、ルミネッセンス信号の偏光の配向θの種々の値について行われる。
【0041】
メッシュの各点でルミネッセンス信号を局所的に励起し解析するために、変換テーブルを使用して集束レンズ(5)の焦点面で試料(1)が移動される。たとえば、前述のCIGS試料の場合、xyテーブルと呼ばれる圧電テーブルを使用して、解析される試料を移動することができる。
【0042】
メッシュの各点で、所望の分解能に応じて選択された(たとえば5°の)ステップで偏光子の角度θを修正することにより、偏光の配向の種々の値についてルミネッセンス信号の検出が実行される。したがって、メッシュの各点において、θi+1=θ+Δθの偏光子角度の離散値の集合(θi=Nmin…Nmaxについてルミネッセンス信号の強度値Ilum(θ)を検出し記録することが可能である。
【0043】
検出器(7)は、検出データを記録するためのメモリを備え、あるいは変形形態として、メモリに対するまたはデータ記憶用のメモリ(9)を備えるデータ処理ユニット(8)に対するインターフェースを備える。
【0044】
ルミネッセンス信号のデータの取得の段階に続いて、たとえばデータ処理ユニット(8)によって行われるデータ処理の段階が行われる。データ処理は、偏光子の角度θに応じたルミネッセンス信号の強度Ilumの変化の正弦波モデルの1つ以上のパラメータの、検出器(7)により取得されたデータからの測定を含む。本提案方法の好ましい実施形態では、正弦波モデルのタイプは、
【数3】
であり、式中、Ilumは、ルミネッセンス信号の強度を示し、Aは、ルミネッセンス信号の振幅パラメータであり、θは、ルミネッセンス信号の偏光の解析角度を表し、φは、位相基準に対するルミネッセンス信号の位相シフトのパラメータであり、nは、厳密に正の整数であり、A(オフセット)は、ルミネッセンス信号の強度の最小値を表すパラメータであり、kは、1からKの範囲の整数の総和のインデックスである。測定値Ilumは、種々の角度の偏光を解析するための偏光子によるフィルタリングの後のルミネッセンス信号の強度を示す。たとえば角度が変更される偏光子によって偏光解析が行われる本実施形態では、変数θは、偏光子の角度に対応する。たとえば偏光子の前に配置された波長板であってその回転角度が変更される波長板によって、偏光解析が行われる場合では、変数θは、波長板の回転の角度に対応する。両方の場合において、変数θは、ルミネッセンス信号の偏光の配向の角度に対応する。パラメータA、φ、n、および/またはA(オフセット)は、メッシュの各点で取得された種々の測定値と正弦波モデルを比較することによって推定される。メッシュの各点について取得されたデータを正弦波モデルと対応させることにより、取得データに最も一致するこのモデルのパラメータの推定値が抽出される。したがって、このデータ処理段階の結果として、正弦波モデルの1つ以上のパラメータの推定値が、メッシュの各点について求められる。
【0045】
すると、本提案方法の範囲にありながら、求めた推定値を組み合わせて、これらのパラメータの組み合わせの推定値を求めることが可能である。
【0046】
Kは、1以上の自然数であり、結晶構造の解析の目的で要求されるモデル化精度に応じて、たとえば、1または2に等しくあるいは2より大きくなるように選択され得る。
【0047】
得られるモデルが実験データと満足にフィットする最小のKの値を定義するように反復して続行することも可能である。Kの最適値の選択に関する増加Δのこの反復プロセスは、K+Δの値が、先行のK値より収集実験データとのフィットの点で満足度が低い理論モデルを導くことになるまで、継続され得る。
【0048】
実験的に取得されたデータに対する、選択された理論モデル(前述の例では、
【数4】
のタイプの正弦波モデル)のフィッティング(「数値モデル化」という用語が使用されることもある)は、要求されるパラメータの所望の精度で推定値を抽出するために、相関法、たとえば、最小二乗法またはマイヤー(Mayer)フィッティング法に従って行われる。各点におけるデータの取得の分解能の細かさ(特に、偏光子の角度θの変化の増分Δθに対して選択される値)が、選択されたモデルのパラメータの推定値について、おおむね迅速かつ精密なフィッティングを可能にする。
【0049】
選択されたモデルの実験的に取得されたデータに対するフィッティング、および選択されたモデルのパラメータの推定が、材料(1)の空間領域における事前設定のメッシュの各点で行われるので、所与のパラメータに対して推定された値のすべてのメッシュ点についての表現、ひいては各パラメータまたはそれらの組み合わせの空間的変化のマッピングを生成することが可能である。
【0050】
正弦波モデルのタイプ
【数5】
の考えられる例において、データの処理は、振幅パラメータ(A)の値、位相シフトのパラメータ(φ)の値、周波数パラメータ(n)の値、および/または最小値パラメータA(オフセット)の値、あるいはこれらのパラメータのいくつかの組み合わせの推定を、メッシュの各点について可能にすることができ、これにより、振幅パラメータ(A)、位相シフトのパラメータ(φ)、周波数パラメータ(n)、および/または最小値パラメータA(オフセット)、あるいはこれらのパラメータのいくつかの組み合わせのマッピングを作成することが可能になる。
【0051】
より詳細には、例として提案されるモデル
【数6】
を用いると、多結晶CIGS材料について、パラメータφおよびAと結晶構造の局所的配向特性の間の相関があることを観察することができる。
【0052】
各パラメータについての、偏光子の角度に応じたルミネッセンス信号の変化の空間分布のそれらの表現により、解析される材料の種々の構造特性を、表現されたパラメータに応じて分離することが可能になる。たとえば、振幅Aおよび位相シフトφは、解析される材料の結晶軸の配向と相関があり得る。また、これらのパラメータは、検査される材料の結晶欠陥の存在に関連付けてもよい。
【0053】
さらに、材料の結晶軸の絶対配向を求めるために、実験装置の較正がなされてもよい。これを行うために、X線回折などの解析の方法によって結晶配向が前もって定義されている単結晶試料を使用することが可能である。すると、解析パラメータは、較正材料の上記結晶配向に関連付けることができる。
【0054】
微晶質CIGS試料の場合に、結晶配向と明白な相関がない光ルミネッセンス強度の空間的差異が観測される。しかしながら、φパラメータのマッピングの表現は、たとえば、解析される材料の粒度のサイズである数μmの空間領域に対応するモザイク性を明らかにする。さらに、単結晶CIGSの試料において、フィッティングパラメータの空間的変化は観測されない。これにより、本明細書に提示の方法が、特に、材料の結晶特徴の明示および結晶の識別を可能にすることを、より良く認識することができる。
【0055】
図6aは、試料の結晶構造に対応する空間領域が識別され得る、多結晶材料CuIn1−xGaxSe2(CIGSe)をベースにした試料について、本提案方法に従って得られた位相シフトパラメータφのマッピングの例を表す。図6bに表されるマッピングとの差異は明らかであり、図6bは、単結晶CIGSe材料をベースにした試料について、本提案方法に従って得られた位相シフトパラメータφのマッピングの例を表す。図6bの解析される試料の単結晶構造は、図6aのマッピングでは観測されない均質性である位相シフトパラメータのマッピングの均質性により明らかである。
【0056】
この局所的励起を伴う光ルミネッセンスによる解析の方法により、より大きな分解能、たとえばミリメートルあるいは一般的に100μm程度の材料上の解析面に対応する分解能での作業を禁止することなしに、一般的には1μmより小さな非常に細かい分解能を達成することが可能になる。多結晶CIGSの粒サイズは、たとえば、一般的にμm程度であり、その利用可能な分解能が、ブーム中の薄膜光起電市場のCIGSなどの微晶質材料の解析に新しい可能性を開く。さらに、それは、(想定される用途として材料特性評価が目的であるか欠陥の検出が目的であるかを問わず)通常3μm未満の厚さの薄膜の材料の解析に適切であり、マイクロメートルの寸法の結晶構造を製品の表面で示し得る(これは必ずしも常に当てはまらない)光起電製品で使用される。したがって、たとえば、結晶構造の所望の配向特性で膜の成長が達成されていることを確実にするために、膜成長過程の光電池の薄膜を高い精度で特性評価することが可能である。
【0057】
データ処理ユニット(8)は、プロセッサ、メモリ、データ記憶ユニット(9)、ならびにネットワークインターフェースおよび着脱可能記憶媒体の読み書きのためのメディアリーダなど他の関連するハードウェアユニット(図示せず)を含む、コンピュータ、コンピュータのネットワーク、または他の装置とすることができる。着脱可能記憶媒体は、たとえば、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオ/多用途ディスク(DVD),フラッシュドライブなどとすることができる。着脱可能記憶媒体は、データ処理ユニット(8)によって実行されると、本明細書に記載の提案方法の実装の例のデータ取得および/または処理段階をデータ処理ユニット(8)に実行させる命令を含む。着脱可能記憶媒体は、データ処理段階を実行するように構成された解析エンジン(または解析器)を実装および実行するための命令を含むことができる。解析エンジンのいくつかの部分は、プロセッサによる実行のためにメモリにロードされるように、着脱可能記憶媒体、着脱可能装置、またはローカルデータ記憶装置(9)の所与のインスタンス上で命令として記憶することができる。具体的には、実施形態を実施するためにコンピュータによって読み取り可能なソフトウェア命令またはプログラムコードが、コンパクトディスク(CD)、ローカルもしくはリモート記憶装置、ローカルもしくはリモートメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、または任意の他のコンピュータ可読記憶装置などの非一時的コンピュータ可読媒体に、一時的または永続的に全体または一部が記憶され得る。
【0058】
解析エンジンはメモリに常駐するプログラムの形態で説明されているが、特定用途向け集積回路(ASIC)としてハードウェア形態で、またはハードウェア要素とソフトウェア要素の組み合わせの形態で実装されてもよい。
【0059】
図2は、ダイクロイックミラーが使用される、第1の実施形態による本提案方法の別種の実装を示す。
【0060】
解析される多結晶半導体材料の試料(1)が、光源(20)(たとえば、横単一モードレーザ)により放出され集束レンズ(30)によって解析点で集束される励起信号によって励起される。この光励起信号は、試料(1)にルミネッセンス信号を放出させるように適合される。光励起信号はさらに、ルミネッセンス信号と集束レンズ(30)の間に配置されたダイクロイックミラー(50)を横切るように適合される。光源(20)は、たとえば、レーザ光源またはインコヒーレント光源とすることができる。
【0061】
光ルミネッセンス信号は、検出光学系(30)、(50)および(60)によって検出器(7)に向けて送られる。特に、ダイクロイックミラー(50)は、励起信号から光ルミネッセンス信号を分離するように適合され位置付けられる。偏光子(40)は、偏光子の配向θの種々の値について光ルミネッセンス信号を解析することができるように、ミラー(50)と第2の検出レンズ(60)の間に配置される。
【0062】
ダイクロイックミラーを使用する本提案方法のこの変形実施形態により、局所的励起、およびメッシュの各点におけるルミネッセンス信号の解析の、前述と異なる方法を使用することがさらに可能になる。具体的には、変換テーブルの使用の代わりとして、検出/励起光学系と集束レンズ(30)の間に配置された(たとえば圧電型の)方向付け可能ミラーを使用してレーザ励起ビームを移動することが可能である。
【0063】
図3は、第2の実施形態による本提案方法の実装を示す。
【0064】
図3は、解析される多結晶半導体材料の試料(100)、および試料(100)の方向に光励起信号を放出するように構成された光源(200)を示している。この光励起信号は、試料(100)にルミネッセンス信号を放出させるように適合される。したがって、光源(200)は、解析される材料の吸収領域に対応するスペクトル範囲で選択される。光源(200)は、たとえば、レーザ光源またはインコヒーレント光源とすることができる。
【0065】
光源によって生成された励起信号は、解析される領域の表面のほぼすべてを励起するという意味で大域的である。したがって、本提案方法のこの実施形態では、解析される材料の表面の所与の領域のみを局所的に励起するために励起信号を集束するいずれの手段も使用されない。先に説明した実施形態と同様に、光源(200)は、試料(100)の材料に特有となる価電子帯と伝導帯の間のエネルギーギャップEgapより大きいエネルギーの信号を放出するように適合される。
【0066】
このように、この実施形態では、試料は、大域的に励起され、ルミネッセンスの画像は、好ましくはデジタルカメラであるカメラ(700)によって記録される。
【0067】
光ルミネッセンス信号の検出は、たとえば、光ルミネッセンス信号を反射するように適合され位置付けられたダイクロイックミラー(500)を配置することにより、図3に示すように行うことができる。偏光子(400)の様々な配向について、カメラが、偏光子(400)によってフィルタリングされた光ルミネッセンス信号を検出するように、配向が変更される偏光子(400)がカメラ(700)の前に配置される。そして、光ルミネッセンス信号が、カメラ(700)によって検出され、たとえば、このカメラはCCDタイプのものが選択され得る。他のタイプのカメラ、たとえば、InGaAs技術を使用する赤外線(IR)検出カメラ、またはCMOS検出器カメラなどが、本提案方法のこの実施形態を実装するために使用されてもよい。
【0068】
カメラ(700)は、解析される材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおけるルミネッセンス信号の検出をする能力があり、かつそのような検出を行うよう構成されるように、選択される。この実施形態では、解析される材料の結晶母体の特性である波長が、カメラを用いて検出される。
【0069】
先に説明した実施形態と同様に、データの取得は、材料の事前設定の空間領域におけるメッシュの各点で、偏光の配向の種々の値についてルミネッセンス信号を検出することによって行われるが、この実施形態では、メッシュが好適にはカメラ(700)のセンサにおける点に対応するように選択され得ることのみ異なる。
【0070】
このようにして、カメラ(700)によって感知された画像が(メッシュの各点で)検出され記録され、画像は、5°程度の増分で−90°から+90°に配向の角度θを変化させることにより、偏光子(400)の複数の配向θの値についてルミネッセンス信号を検出することによって生成される。もちろん、偏光子の配向の角度θの変化の間隔は、配向の角度θの変化の増分と同様に、本提案方法の範囲から逸脱することなく、解析される材料の特性および所望の解析精度に応じて、異なる形式で選択され得る。
【0071】
先に説明したルミネッセンス信号の偏光の解析の方法の例(線形偏光子の配向の変化、または偏光子の前に配置された波長板の配向の変化)は、本提案方法の本実施形態に適用可能であることに留意されたい。
【0072】
したがって、メッシュの各点で、たとえば、所望の分解能に応じて選択された(たとえば5°の)増分で偏光子の角度θを修正することにより、偏光の配向の種々の値についてルミネッセンス信号の検出が行われる。したがって、θi+1=θ+Δθの偏光子角度のN個の離散値の集合(θi=Nmin…Nmaxについてのルミネッセンス信号に対応する画像のセットを検出し記録することが可能である。
【0073】
第2の実施形態による本提案方法の実装の一例では、ハイパースペクトル撮像装置が、ルミネッセンス信号の強度を表現するデータに加えてルミネッセンス信号の強度の周波数分布を表現するデータを取得するように、カメラ(700)の前に配置される。
【0074】
取得データは、N個の画像(Imi=1…Nの集合の形態をとり、各々は、偏光子の配向の値θについて、解析される材料によって材料解析の所定の領域にわたり放出される光ルミネッセンス信号に対応する。
【0075】
カメラ(700)は、検出画像を記録するためのメモリを備え、データ記憶用にメモリ(900)をやはり備えるデータ処理ユニット(800)にデータ交換インターフェースを介して接続される。
【0076】
ルミネッセンス信号のデータの取得の段階に続いて、たとえばデータ処理ユニット(800)によって行われるデータ処理段階が行われ、データ処理は、偏光子の配向θに応じたルミネッセンス信号の強度Ilumの変化の正弦波モデルの1つ以上のパラメータについての取得データの測定を含む。データ処理ユニット(800)により行われるデータの処理は、第1の実施形態による本提案方法を実装する文脈で上述した処理に対応する。
【0077】
大域的励起を用いた光ルミネッセンスによるこの解析方法は、実行の速度、実装の簡素さ、および解析の細かさの間の好適な折り合いをもたらす。大域的励起では、局所的励起で得られる細かさの分解能を達成できないが、大量生産工程におけるその実装に特によく適合される実装の速度および簡素さがもたらされる。さらに、先に説明した方法と同様に、大域的励起を用いる光ルミネッセンスによるこの解析方法は、製造中、たとえば光起電製品用の膜成長で実装することができ、それにより、製造の進行した段階で、修正可能なまたはそうでない欠陥を検出することが可能であり、したがって、かなりの製造コストを回避することが可能である。
【0078】
図4は、第3の実施形態による本提案方法の実装を示す。
【0079】
図4は、解析される多結晶半導体材料を含む光電池(101)の試料、および電流発生器(201)を示しており、電流発生器の出力(201a;201b)は、電池(101)の電力(101a;101b)に電気的に接続されている。発生器(201)により供給される電気信号は、光電池(101)にエレクトロルミネッセンス信号を放出させるように適合される。
【0080】
電気励起信号は、電池(101)の多結晶半導体材料が励起され、励起された材料の表面全体にわたってエレクトロルミネッセンス信号を自然放出するように適合される。特に、電源(201)は、解析される電池(101)の多結晶半導体材料に特有となる価電子帯と伝導帯の間のエネルギーギャップEgapより大きいエネルギーの電気励起信号を生成するように適合される。
【0081】
光信号による励起の文脈で上述した本提案方法の後続のステップ(およびそれらの変形形態)は、エレクトロルミネッセンス信号の生成を行う本実施形態に適用可能である。
【0082】
たとえば、図4に示すように、材料により放出されたエレクトロルミネッセンス信号を、好ましくはデジタルカメラであるカメラ(701)によって記録することが可能である。さらに、カメラ(701)の前に偏光子(401)を配置することが可能であり、偏光子の配向は、上述のようにカメラ(701)が偏光の種々の配向についてエレクトロルミネッセンス信号を検出するように変更される。そして、エレクトロルミネッセンス信号が、カメラ(701)によって検出され、たとえば、このカメラはCCDタイプのものが選択され得る。他のタイプのカメラ、たとえば、InGaAs技術を使用する赤外線検出カメラ(IR)、またはCMOS検出器カメラなどが、本提案方法のこの実施形態を実装するために使用されてもよい。
【0083】
ここでもやはり、カメラ(701)は、解析される材料のバンドギャップの幅以上の幅の周波数バンドにおけるルミネッセンス信号の検出をする能力があり、かつそのような検出を行うよう構成されるように、選択される。この実施形態では、解析される材料の結晶母体の特性である波長が、カメラを用いて検出される。
【0084】
エレクトロルミネッセンス信号の検出、エレクトロルミネッセンス信号データの取得、および取得データの処理は、光ルミネッセンス信号に関して先に説明した実施形態のいずれかに対応するステップに応じて行うことができる。エレクトロルミネッセンスによるこの解析方法は、特に製造品質および期待性能への適合を測定するための試験に関連して、製造された光電池の解析に特によく適している。
【0085】
多結晶半導体材料の結晶構造の解析を実行する態様は、使用されるプラットフォームと独立して、実質的に任意のタイプのコンピュータ上に少なくとも部分的に実装され得る。たとえば、図5に示すように、図1から4に示すデータ処理ユニット(8)(800)およびメモリ(9)(900)に対応し得る、またはこれらの要素に作動的に結合され得るコンピュータシステム(600)は、データ処理ユニット(601)を備え、データ処理ユニットは、中央装置(CPU)または他のハードウェアプロセッサなどの1つ以上のプロセッサ(602)、関連するメモリ(603)(たとえば、ライブメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、フラッシュメモリなど)、記憶装置(604)(たとえば、ハードディスク、CDまたはDVDのような光ディスク、フラッシュメモリキーなど)、ならびに現在のコンピュータの多くの他の典型的な要素および機能(図示せず)を備える。
【0086】
また、データ処理ユニット(601)は、ユニット(601)とシステム(600)の入力/出力手段との間の様々なインターフェースを制御する入力/出力インターフェースモジュール(605)を備える。実際、システム(600)は、キーボード(606)、マウス(607)、マイクロホン(図示せず)のような入力手段も備えることができる。さらに、コンピュータ(600)は、モニタ(608)(たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)モニタ、プラズマディスプレイモニタ、または陰極線管(CRT)モニタ)のような出力手段を備えることができる。コンピュータシステム(600)は、ネットワーク接続インターフェース(図示せず)を介して、ネットワーク(609)(たとえば、ローカルネットワーク(LAN)、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN)、または任意の他の同様のタイプのネットワーク)に接続することができる。多数の異なる種類のコンピュータシステム(たとえば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、または、コンピュータによって読み取り可能な命令を実行できる任意の他のコンピュータシステム)が存在しており、上述の入力および出力手段は、現在知られているまたは将来開発される他の形態をとり得ることは、当業者には理解できよう。
【0087】
一般に、コンピュータシステム(600)は、提示した解析方法の1つ以上の実施形態を実施するために必要な入力および/または出力のための少なくとも最小限の処理のための手段を備える。たとえば、プロセッサ(602)は、解析器を実装するためのコード部分を含むコンピュータプログラムを実行するように構成することができ、解析器は、提示した解析方法の種々の実施形態に従って、ルミネッセンス信号の変調の1以上の特性データを推定し、特性データの表現を生成するように構成される。選択される記憶装置(604)は、好ましくは、メッシュの各点について検出された信号に対応するデータを記憶することができる。
【0088】
表現を推定し生成するように構成された解析器は、ソフトウェアパッケージの形態で説明されているが、ハードウェアの形態、またはハードウェアとソフトウェア命令の組み合わせの形態で実装されてもよい。
【0089】
さらに、コンピュータシステム(600)は、コンピュータシステム(600)により提供される解析方法に従って取得データを処理する目的でメモリに取得データを記憶するように、ルミネッセンス信号検出器に作動的に結合されることが好適である。また、変形形態として、任意の既知の手段によって処理すべきデータがメモリ(604)に記憶されるように提供がされ得るが、これは、ルミネッセンス信号の検出に使用される検出器とコンピュータシステム(600)との間の直接接続を必ずしも伴わない。
【0090】
さらに、上述のコンピュータシステム(600)の1つ以上の要素が、リモート位置に設置されネットワークで他の要素に接続されてもよいことは、当業者には理解できよう。さらに、1つ以上の実施形態が、複数のノードを含む分散システムに実装されてもよく、そこで、実装の各部(たとえば、2ドメイン解析ツールの種々の構成要素)は、分散システム内の別々のノードに配置され得る。1つ以上の実施形態において、ノードはコンピュータシステムに対応する。変形形態として、ノードは、関連する物理メモリを有するプロセッサに対応することがある。また、ノードは、分割されたメモリおよび/または分割された資源を有するプロセッサに対応することがある。さらに、1つ以上の実施形態を実施するためのソフトウェア命令は、コンパクトディスク(CD)、フロッピー(登録商標)ディスク、テープ、または任意の他のコンピュータ可読記憶装置などのコンピュータ可読媒体上に記憶することができる。
【0091】
選択された実施形態に応じて、本明細書に説明された各方法の特定の動作、処理、イベント、または機能は、それらが説明された順序と異なる順序で行われまたは発生してもよく、または追加もしくは組み合わされてもよく、あるいは状況によっては、それらが行われないまたは発生しないこともあり得る。さらに、特定の実施形態では、特定の動作、処理、またはイベントが、順次ではなく同時に行われまたは発生する。
【0092】
多結晶半導体材料の結晶構造の解析が、限られた数の実施形態に関して説明されているが、本明細書に説明されたような多結晶半導体材料の結晶構造の解析の定義から逸脱せずに他の実施形態が考えられ得ることは、本明細書に慣れ親しんだ当業者には理解できよう。多結晶半導体材料の結晶構造の解析の定義は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b